【SS】海未「降ってきましたか」 絵里「あら、ほんと」

海未「先ほどから空が暗いとは思っていましたが」

絵里「買い出し組は大丈夫かしら」

海未「一応、傘を持っていくようにと穂乃果には言っておきました」

絵里「なら大丈夫でしょう。ことりやにこもいることだし」

海未「そうだといいいのですが」
　

絵里「一年生組はどうしてるのかしら」

海未「曲作りでしたよね」

絵里「順調に進んでいればいいのだけれど」

海未「試作段階のものを聞かせてもらいましたが、すばらしい曲でした。きっと大丈夫でしょう。花陽と凛もついていることですし」

絵里「だといいんだけど」
　

海未「そういえば、希はまだ生徒会の仕事を？」

絵里「そうよ。私も手伝うって言ったんだけど、自分のやり残しは自分で片付けるって聞かなくって」

海未「すみません。私たちもお手伝いできればよかったのですが」

絵里「いいのよ。もとはと言えばきちんと引き継がなかった私たちが悪いんだし」

海未「そんなこと――」

絵里「あなたたちも気を付けなさいよ。引き継ぎって色々と面倒なんだから」

海未「……穂乃果にもよく言っておきます」
　

絵里「さて。私たちもそろそろやるべきことをやらないとね」

海未「……はい」

絵里「ほら、そんな顔しないの。海未の歌詞、みんな楽しみにしてるわよ」

海未「…………」

絵里「それじゃあ、書けたら言ってね」

海未「……分かりました」

…………
………
……
…
　

海未「…………」ｶﾘｶﾘｶﾘ

絵里「…………」

海未「…………」

絵里「できたの？」

海未「……一応は」

絵里「よし！　みーせてっ！」

海未「…………」ｸﾞｯ

絵里「…………」

海未「…………」ｸﾞｸﾞｯ

絵里「あの、手を離してもらえるかしら」

海未「で、ですが……」
　

絵里「もう何曲も書いてるじゃない。今さら恥ずかしがってどうするの」

海未「何曲書こうと恥ずかしいものは恥ずかしいのです！」

絵里「だからって、それじゃ私のいる意味がないじゃない」

海未「そ、それは……」

絵里「…………」

絵里「……あっ、希。仕事終わったの？」

海未「えっ？」

絵里「隙ありっ！」

海未「あっ！」
　

海未「えりっ！　ずるいです！」

絵里「こうでもしないと進まないじゃない。えっと、なになに」

海未「うぅぅ……」

絵里「まっくらな秋の空と同じように、あなたを想う私のこころも――」

海未「ちょ、ちょっと！　声に出さないでくださいっ！」

絵里「え？　どうして？」

海未「どうしてもなにも……！　と、とにかく、声に出すのは禁止です！」

絵里「まぁ、いいけれど」
　

絵里「――うん。悪くないと思うわ」

海未「そ、そうですか？」

絵里「ええ。でも、なんか最後まですっきりしないというか、もやもやしたまま終わっちゃうのね」

海未「はい。今回の曲はそのような気持ちがテーマですから」

絵里「でも、やっぱり最後はもう少し明るくてもいいんじゃないかしら？　このままだとあまりにも暗すぎる気がするわ」

海未「……なるほど。では、少し手を加えてみます」

絵里「うん。頑張って」

…………
………
……
…
　

海未「だから、今回の曲はその暗さこそがテーマだと言っているではありませんか」

絵里「でも、どんな暗闇にだって少しは光があるはずでしょう。そういったことを歌詞にしてもいいんじゃないかって私は思うの」

海未「……分かりました。そこまで言うのなら絵里が書いてみてください」

絵里「えっ！？」

海未「全部とは言いません。絵里の書けるところまでで構いませんから」

絵里「わ、分かったわ。少し待ってて」

…………
………
……
…
　

絵里「……ふぅ」

絵里（とりあえずできたけど……）

海未「絵里？」

絵里「は、はい！」

海未「書けたのならば見せて頂けませんか？」

絵里「え、えぇ……」

海未「それでは――」

絵里「…………」ｸﾞｯ

海未「…………」

絵里「…………」ｸﾞｸﾞｯ

海未「……あの、絵里？」

絵里「ちっ、違うのよ！」
　

海未「…………」

絵里「だ、だからっ、その、心の準備というか」

海未「…………」

海未「穂乃果！　びしょ濡れではありませんか！」

絵里「えっ！？」

海未「えいっ」

絵里「あっ！？　ちょ、ちょっと海未！？」

海未「先ほどのお返しです。読ませて頂きますね」

絵里「ぐぅ……」

…………
………
……
…
　

海未「――ふふっ」

絵里「な、なによ」

海未「いえ。とても可愛らしい歌詞だと思いまして」

絵里「なっ！///」

海未「絵里はこんなことを考えていたのですね」

絵里「も、もういいでしょ！///　返してっ！///」

海未「はい、それでは――」

ｶﾞﾁｬｯ

穂乃果「たっだいまー！」
　

海未「穂乃果、お疲れさまでした。雨は大丈夫でしたか？」

穂乃果「大丈夫！　海未ちゃんのおかげでね！」

ことり「急に降ってくるんだもん。びっくりしたよね」

絵里「お疲れさま。収穫はあった？」

にこ「もちろん。まっ、衣装はなんとかなりそうね」

穂乃果「あれっ、これって歌詞？　みーせーてっ！」

絵里「あっ」
　

穂乃果「ふむふむ」

ことり「……すてきな歌詞だけど、これ、いつもの海未ちゃんっぽくないかも」

穂乃果「うん。穂乃果もそう思う」

海未「それは絵里が書いたものです」

にこ「えっ！？　あんたが書いたの！？」

絵里「……なによ」

にこ「別にぃ。ただ、こーんなかわいい歌詞を元生徒会長さんが書くなんて思わなかったニコ！」

絵里「……っ！///　にこっ！///」

ｶﾞﾁｬｯ!

凛「にゃーっ！」
　

凛「真姫ちゃんのすっごい曲完成したよ！」

真姫「ちょっと！　ハードル上げないでっ！」

花陽「あっ、穂乃果ちゃんたちも帰ってきてたんだね」

穂乃果「うん！　ほら、これっ！　絵里ちゃんが書いたんだって」

絵里「ちょっと穂乃果っ！　一回返しなさいっ！」

にこ「えぇー？　にこにーは絵里ちゃんのかわいい歌詞好きだけどなー」

絵里「このっ……！」

ことり「海未ちゃんの書いたのはこっち？　みせてっ！」

海未「あっ！　そ、それはまだ試作中で」

穂乃果「穂乃果もみたーいっ！」

海未「ですからそれは――！」

…………
………
……
…
　

―部室前―


ｷﾞｬｰｷﾞｬｰ


希「…………」

希「やっと片付けて帰ってきたら、なんか面白そうなことになっとるなぁ」

希「……ふふっ」

希「それじゃあ、うちも仲間に入れてもらおうかな」


ｶﾞﾁｬｯ


希「ただいまーっ！」


おわり
　

お付き合い頂きありがとうございました

下記の企画に参加させて頂きました


SS祭り企画集計用スレ
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