【SS】愛「やば、カナちゃんと目合わせられない……」【ラブライブ！虹ヶ咲】

愛「螺旋丸！」ｷﾞｭｵｵｵﾝ

彼方「万華鏡明輪眼！」ｷﾞﾝ




愛（あの眼はやばい！）

ビュン

ミア「彼方は何をしたんだ？」

栞子「かなり焦っていましたが……」

璃奈「愛さん大丈夫！？」

愛「大丈夫！　飛雷神で飛んだから」

彼方「うーん、愛ちゃんを妹にしようと思ったのに。流石は“虹ヶ咲の黄色い閃光”だよ～」

愛「カナちゃんの眼は絶対見たらだめだよ」

ミア「明輪眼でしょ？」

愛「いや、“万華鏡明輪眼”だよ。やられたら解いてあげられないかも」

彼方「もーなんでみんな知ってるの？　一族の秘密なのに！」

前作
せつ菜「彼方さんに避けられている気がします……」

　

璃奈「ねえ、彼方さんがいるってことは……」

愛「そうそうカナちゃん、せっつー達知らない？」

彼方「彼方ちゃんと一緒にいるよ。姉妹だからね～」

ミア「何言ってんだ……近くにはいないみたいだけど」

愛「さっきからすり抜けたり吸い込んだり、あれが右眼の能力？　やっぱ時空間忍術？」

彼方「そうだよー愛ちゃんより凄いんだよ」

栞子「愛さん以上の時空間忍術！？　そんな馬鹿な」

愛「さしずめ4人は時空間の中ってとこかな」

璃奈「どうする？」

愛「逃げるために4人を置いてってくれれば良いかな。盾にされたら引くしかないけど」

ビュン

彼方「後ろのクナイかぁ」

愛「土遁・紋砂（もんじゃ）の術！」ｹﾞﾛｹﾞﾛｹﾞﾛ

ドチャドチャドチャ

ﾉﾚcｲ´✇ω=)ｽｩ

彼方「愛ちゃんは大人しくしてもらうよ～」ｶﾞｼｯ

愛「！？」

彼方「眠威」ｽﾞｫｫ

栞子「火遁・燃香（もえか）の術！」🔥

彼方「おっと」ｽｩ

ﾋﾞｭﾝ

愛「くそっ、眼を見ないのもキッツいなぁ」

璃奈「攻撃は当たらないし眼を見ても見なくても攻撃に対処できない……」

ミア「隙が無いじゃないか」

愛「隙は作るしかないっしょ。作戦Cで！」
　

彼方「愛ちゃんは吸い込みたいな」

愛「行くよ！」ｼﾞｬｷﾝ

≡≡　◎＝＝＜＞　≡≡　◎＝＝＜＞
       ≡≡　◎＝＝＜＞

彼方「あのクナイは……」

クナイ：友愛之剣

彼方「マーキング付きだね。飛ばれると厄介だよ～」ｷﾞｭｫｫ

ﾉﾚcｲ´✇ω=)　＜＞＝＝◎

愛（わざわざクナイを吸い込んだ？　なんで……）

栞子「水遁・相氾沙湧（あいほんしゃわ）！」

シャー

璃奈「雷遁・電光暴弩（でんこうぼーど）」

バチバチバチ

彼方「痛ぁ！？　もう！」ｽｩ

ミア「秘術・紐育（ニューヨーク）」

シュルシュルシュル

愛「螺旋丸！」

彼方（愛ちゃんの周りだけ電撃が来てない……近づいた瞬間に実体化して吸い込むよ）

ﾉﾚcｲ´=ω=)🖐　　　🌀✋ζ㎗òヮóﾘ
　

術解説

＜土遁・紋砂の術＞
月島に伝わる土遁忍術で水分を含んだ土砂を生成し操る。足を取られると身動きがとりづらくなる。特製のへら状クナイで硬度を変化させ固めることが出来る。土がない場合は口から吐き出して使用する。

＜火遁・燃香＞
無数の小さな火球を素早く飛ばす術。広範囲に広がる火球はイルミネーションのようだと言われている。

＜水遁・相氾沙湧＞
線状の水流を撒き散らす術。攻撃力は皆無だが、手軽に広範囲を水浸しにすることが可能で、雷遁の効力を上げる、火遁の威力を下げる、「秘術・紐育」の強化など、応用力は高い。元は敵の通信機を破壊するために作られた術。

＜雷遁・電光暴弩＞
広範囲に電撃を放つ術。威力は低く妨害程度だが、味方にだけ当たらないようにといった制御ができる。水浸しの敵には威力が上がる。

＜秘術・紐育＞
チャクラを吸い取る紐を操り敵の身動きを封じる術。刃物や熱には弱いが術を吸収して再生し紐がさらに伸びる。敵を拘束すると敵のチャクラを吸い取り続ける。封印札を付けた紐で敵を巻くことで封印術としても使える。
　

≡ﾉﾚcｲ´=ω=)🖐　　🌀✋ζ㎗òヮóﾘ≡

≡ﾉﾚcｲ´✇ω=)🖐　🌀✋ζ㎗òヮóﾘ≡

ガシッ

彼方（勝った……！）

ビュン

彼方「えっ！？」

愛「木の葉がこの子の敗因ってね！　木の葉だけに！」

ギュルギュルギュルギュル

彼方「ぐあああああああああ！！！！」

栞子「いつの間にマーキングを！？」

璃奈「いや、彼方さんの髪に引っかかってた葉っぱ。マーキングがついてる」

ミア「前の接触時に仕掛けたのか。直接マーキングを出来ないから」

愛（下に鎧着てる？　……まさか！？）ｷﾞｭﾙｷﾞｭﾙｷﾞｭﾙｷﾞｭﾙ
　

彼方「――」ｽｩ

鎧：ガシャン

彼方「はぁ、はぁ、はぁ……」ｾﾞｴｾﾞｴ

栞子「なっ！？」

ミア「shit! 効いてない！」

愛「いや、効いてたらヤバかった。それに鎧くらいで防げる術じゃない」

彼方「ゴボッ！」ﾋﾞﾁｬｯ

璃奈「どういうこと？　それになんか様子が変」

彼方「そろそろ限界……」ｾﾞｴｾﾞｴ

ギュオン

せつ菜「えっ……お姉ちゃん！？」

彼方「みんな逃げて……ゴホゴホ」ｾﾞｴｾﾞｴ

愛「やっぱりか……カナちゃんにこれ以上ダメージを与えるのも、あの眼を使わせるのもダメ」

栞子「そんな無茶な」

愛（考えろ……すり抜けすら使えないくらい大きな隙を作るには……）

ミア「彼方に生半可な陽動じゃあ意味がない……せつ菜達の確保を優先する？」

愛「りなりーとしおってぃーはせっつー達の足止めを！　ミアチは合図のタイミングでカナちゃんを封印！」
　

かすみ「か、かすみんボックス！」ﾄﾞﾛﾝ

[cι˘σ ᴗ σ˘*][cι˘σ ᴗ σ˘*][cι˘σ ᴗ σ˘*][cι˘σ ᴗ σ˘*][cι˘σ ᴗ σ˘*]

栞子「口寄せ・腕下流潰し（わんげるつぶし）の術」ﾊﾟｯﾊﾟｯﾊﾟ

そらまめ「ゲコッ」ｽﾞﾄﾞｰﾝ

[cι˘× ᴗ ע*][cι˘× ᴗ ע*][cι˘× ᴗ ע*][cι˘× ᴗ ע*][cι˘× ᴗ ע*]ぺしゃんこ

かすみ「あ゛あ゛っ！？」

せつ菜「どうにかお姉ちゃんを連れて……影分身の術！」ﾄﾞﾛﾝ

分身せつ菜×3
　

歩夢「土遁・魔運土（まうんと）の術！」ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ

そらまめ「ゲコゲコ」ｶﾞｶﾞｯ

歩夢「防がれた！？」

そらまめ（水遁・鉄砲玉）ﾊﾞｼｬ　ﾊﾞｼｬ

分身せつ菜「土遁・野駄（やだ）！」ｽﾞﾄﾞｰﾝｽﾞﾄﾞｰﾝ

⁄/*ｲ`＾ᗜ＾ﾘ⛰⛰⛰ 💧💧💧💧🐸
　

術解説

＜かすみんボックス＞
自動で動き回るダンボール製の忍具。物を運んだり投げたり程度しかできないが、数を活かして様々なことが出来る。ダンボールなのですぐに潰される。

＜口寄せ・腕下流潰しの術＞
網油木山の大蝦蟇そらまめを口寄せし、敵を押しつぶす術。そらまめは何が入っているか分からない箱の中に手を入れた物だけが契約できる特別な忍蝦蟇で、水遁や土遁を扱う。

＜土遁・魔運土の術＞
大量の土で敵を覆い尽くす術。防ぐのはかなり難しく決まれば強力だが、上を取られるとめっぽう弱い。

＜土遁・野駄＞
地面を足で叩きつけ、地ならしを起こしたり地面を不規則に隆起させる術。
　

璃奈「雷遁・安乱（アラン）」ﾊﾞﾁﾊﾞﾁﾊﾞﾁ

分身せつ菜「風遁・数透矛（すとうむ）っ！」ｼｭﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞ

⁄/*ｲ`＾ᗜ＾ﾘ☽☽☽⚡⚡⚡从||>ᴗ<||从

栞子「火遁・火飛散（ぴっぴさん）！」ｺﾞｫｫ

分身せつ菜「水遁・大布（だいぶ）！」ｻﾞｯﾊﾟｰﾝ

⁄/*ｲ`＾ᗜ＾ﾘ　💧💧💧🔥🔥🔥🔥ᶘｲ^⇁^ﾅ川

璃奈「うわぁ！？」ﾋﾞｭｵｵｵ

栞子「ぐっ……！」ｻﾞﾊﾞｰﾝ

せつ菜（本体）「今です！」

璃奈「せつ菜さん、隙」

せつ菜「璃奈さん！？　じゃあさっきのは」

从||>ᴗ<||从：ｷﾞｭｲｰﾝ

璃奈「白秘技・浄瑠璃奈璃」

父：ｶﾞｺﾝｶﾞｺﾝ

母：ｶﾀｶﾀｶｶﾀｶﾀ　ガチャン

アラン：ﾊﾞﾁﾊﾞﾁﾊﾞﾁ

せつ菜「傀儡人形でしたか……」

かすみ「りな子！？」

璃奈「動かないで」

せつ菜「囲まれてしまいましたね」
　

術解説

＜雷遁・安乱＞
まっすぐに電撃を放つ術。シンプルな術だがこの術は傀儡人形から放つことが可能で、傀儡人形との連携の際に用いる術。

＜風遁・数透矛＞
透明な風の刃を無数に放ちながら、渦上の突風を広範囲に放つ術。風遁の中でも特に火遁との連携に向いた術。

＜火遁・火飛散＞
口から放たれた炎が一気に広範囲に拡散する術。元々「火遁・燃香の術」が「火遁・燃火（もえぴ）」「火遁・火飛（ぴっぴ）」「火遁・燃火飛（もえぴっぴ）」と様々派生した結果、この術になった。

＜水遁・大布＞
「水遁・大瀑布の術」よりもさらに高く果てなく水を打ち上げ一気に落とす術。うかつに山中で使用すると土砂崩れを引き起こすほどの威力を誇る。

＜白秘技・浄瑠璃奈璃＞
猫型人形のアラン、自分の姿を模した人形の从||>ᴗ<||从、父、母の4機の傀儡一家を同時に操る奥義。操者の操縦のみならず自立行動する特殊な傀儡で本体との同時攻撃を仕掛ける。ちなみに璃奈の本当の両親は普通に生きている。
　

～～～～～～～～～～～～

愛（足止めは大丈夫そうだね）

愛「影分身の術！」ﾄﾞﾛﾝ

彼方「また厄介な……」

愛＆愛「「さらに――変化！」」ﾄﾞﾛﾝ ﾄﾞﾛﾝ

果林（愛）＆果林（愛）「「お色気・おんなじ子同士の術！」」

彼方「！？！？！？」

果林（愛）「ミアチ！」

ミア「Now or never!」シュルシュルシュル

［∋∞封∞∈］

彼方「……」封

歩夢「お姉ちゃん！」

栞子「やりました！」

愛「しずく！」ｻｻｯ

彼方？「……ぁぁ……」

愛「ダメだ、術が解けなくなってる」

ミア「What’s？　しずく？　どういうことだ？」
　

愛「門仲封印！」

ズドォ

彼方？「ぐっ」ﾄﾞﾛﾝ

しずく「……」

せつ菜「な、なんでしずくさんが」

愛「せっつー、今すぐ里に戻ることを約束して。歩夢とかすみんも。カナちゃんはせっつー達の姉なんかじゃない！　カナちゃんの術で洗脳されてたんだ！」

せつ菜「信じられません……でも」

愛「じゃあしずくは何のためにこんなことしたって言うんだ！　せっつー達を里に連れ戻す為だ！」

かすみ「そ、そんな……」

愛「死ぬかもしれないとわかっててやったんだ！　しずくの覚悟を無駄にするな！」

せつ菜「……わかりました。愛さんに従います。歩夢さん、かすみさん、いいですね」

歩夢「うん、しずくちゃんを信じる」

かすみ「お願いします。しず子を助けてください！」

愛「よし！　りなりー！」

璃奈「うん」

父、母、アラン、从||>ᴗ<||从：ドロン

愛「しおってぃーとかすみんは里に戻ってエマっちに知らせて。歩夢、応急処置お願い」

ミア「かなり弱ってるな」

歩夢「怪我は治してるけど、それだけじゃないみたい」

愛「桜鳳の術で明輪眼を多用したからね。血経限界のコピーは演撃部隊の掟で固く禁じられている」

しずく「せつ、な……さん」

せつ菜「しずくさん！？」

しずく「掟も……守れない、クズな私でしたが……ゴホッ！」

せつ菜「そんなこと言わないでください！　隊長でありながら仲間を守れなかった私が一番クズな忍です！」
　

術解説

＜お色気・おんなじ子同士の術＞
変化の術の応用のおいろけの術をさらにアレンジした術。代り映えのない同じ姿に変化するため敵の趣味嗜好を知らなければ効果を期待できない決め打ちの術。

＜門仲封印＞
対象にかかっている術や発動している術を封印し、元の状態に戻す術。

用語解説

＜演撃部＞
虹ヶ咲の里の特殊部隊の一つ。変化のエキスパート集団で、潜入など特殊な任務を専門とする。禁術・桜鳳はこの部隊で継承されており、演撃部の掟により使用に制限がかけられている。一般部隊との兼任をする者もいる。
　

どうして桜鳳の術で姉さんだけ演じることが出来ないんだろう？

私の記憶では姉さんとずっと過ごし、一緒に修行も沢山したはずなのに

そしてこの一点の違和感が次々と他の違和感を浮き彫りにした

私たちは姉さんの妹だというのにお互いのことを名前で呼び合っている、姉妹にしては術の系統が違い過ぎる

血が繋がっていないにしても不自然だった

怖くて姉さんにこのことを聞けなかった

自分の存在が、感じているものが偽りであるかもしれないという感覚

真実を知るのがとても怖かった


隙を見て姉さんを観察して、やっと演じられるようになった

姉さんやせつ菜さん達の眼を盗んで桜鳳の術を使って分かった

姉さんの眼は幻術で徹底的な刷り込みによる洗脳が出来る

間違いない。私たちは偽の記憶を刷り込まれている

その事実を妹である私たちに教えていないのが何よりの証拠だった

そしてこの術の対象は私たち4人ということになる

この状況を何とかできるのは私しかいない

でもどうする？

彼方さんに感づいていることを悟られてはいけないし、みんなを説得できるか分からない

どうすれば……
　

彼方さんの睡眠時間が妙に長いと思っていたけど、理由が分かった

万華鏡明輪眼の代償として眠くなるみたい

ここ数日は特に眠そうにしていて、一日12時間では済まなそう

そこで彼方さんが寝ている隙に彼方さんに成りすますことにした

私は理由を付けて休んでることにして、4人で里の近くに行く

そこで里の忍に私が負けて全員拘束されれば里に戻れる

そうすれば洗脳も解かれるはず

問題は2つ

長時間、禁術である桜鳳の術を使い続けるリスク

恐らく自我を失い里に戻るという目標を忘れ、里の忍と本気で戦うことになる

血経限界に肉体が耐えられる保証もない

……3人だけでも里に戻さなくては
　

オフィーリア「ワン！」

しずく「ありがとうオフィーリア。愛さんの小隊かぁ……彼方さんが負ける相手には十分かな」

オフィーリア「クゥン……」

しずく「……いい子だから、私が居なくても悪戯しちゃだめだよ？」

ドロン

しずく「怖いから鎧着ておこう。愛さん相手に全部すり抜けは出来そうもないし」

しずく「桜鳳の術」ﾄﾞﾛﾝ

彼方（しずく）「みんなー。今日はここに行こうと思うんだけど」

彼方（しずく）「しずくちゃんは具合が悪いから宿でお留守番するって」

ゾロゾロ

彼方「……zzz」

～里の近く～

彼方（しずく）「この人数は目立つから、ちょっと眠威空間に入ってて」ｽﾞｫｫ
　

愛「螺旋丸！」

彼方（しずく）「万華鏡明輪眼！」ｷﾞﾝ

眼に全身のチャクラを吸い上げられ、一気に疲労感が襲う

眼がズキズキと痛む。身体の細胞という細胞が悲鳴を上げる

もし愛さんが逃げてなかったらここで私は死んでいた

左眼はもう無理かもしれない

私は近江一族の近江彼方。黄色い閃光相手だって余裕を崩さない

私は抜け忍。里の忍でも容赦はしない

私は……私は……
　

右眼の方は負担が少ない。それでも体中が軋むような感覚に襲われる

中忍の私でも愛さんの不意打ちを避けられるあたり、この眼は便利だった

“愛ちゃん”を吸い込んでしまえば勝ちも同然。この眼を攻略できる忍はいない

マーキング付きクナイも吸い込んでしまえば無力

“彼方ちゃん”に不可能はない

電撃が当たらなくなった瞬間実体化して飛雷神で飛ぶよりも速く吸い込む

“愛ちゃん”は私が実体化したのを確認してから螺旋丸を当てるはず

掴んだ。私の勝ち。私は黄色い閃光を上回った
　

やられた。愛さんを見くびっていた

桜坂しずくが黄色い閃光に敵うはずがなかった

鎧を着ていたとはいえ、螺旋丸の直撃。右眼も使い過ぎた

もう3人を出さないとまずい

彼方（しずく）「みんな逃げて……ゴホゴホ」ｾﾞｴｾﾞｴ

最期の大見得を切った

物語は終幕

宿敵は倒れ平和が訪れる

物語の出来がその結末で決まるというのなら、私の物語は傑作ではないとしても

ほどほどに上出来だったと思いたいな……
　

～某所～

⛈ザー　ザー　⚡ゴロゴロ

姫乃「まだ止みませんねぇ。この時期にこの地域でこうも降るのはおかしいのですが」

彼方「……」

スタスタスタ

彼方「……」ﾋﾞｼｬﾋﾞｼｬ

姫乃「お体に障りますよ……」

彼方「……」

姫乃「冷酷な貴女が今何を考えているのか、それはわかりませんが……ここからだと泣いているように見えますよ。妹さん達のことなら残念でしたねぇ」

彼方「いや」

姫乃「？」

彼方「そばに居なくても、姉妹であることには変わりないよ。それに――」

🌤

彼方「雨が、止んだねぇ」
　

～数週間後～

ランジュ「ここが“明月（あかつき）”のアジトね……今も使われているとしたらだけど」

コツコツコツコツ

ランジュ「どんな相手でも、何人相手だろうと、このランジュが負けるわけないのだけど」

コツコツコツコツ

ランジュ「そうは言っても、“会いたくはなかった”わ。彼方」

彼方「来たのはランジュちゃんでしょ～？　つれないなぁ」

ランジュ「彼方、あなたはここで始末する。運よく死ななかったら――」

彼方（来る――）

ランジュ「――里でたっぷりお話ししましょう！　嵐遁・励挫鎖苛素（レイザーサーカス）！」ｷﾞｭｲｲｲｲｲﾝ

彼方「眠威」ｽｩ
　

ランジュ「すり抜けた！？」

ガシッ

彼方「じゃあね、ランジュちゃん」ｷﾞｭｵｵｵｵｵ

ランジュ（分身）「――」ﾄﾞﾛﾝ

ランジュ「嵐遁・躯印打武（クインダム）！」

彼方「上から！？」

チュドーンチュドドドドドドドーン

ランジュ「これもすり抜けたようね」

彼方「ランジュちゃん、さては知ってるな？　この眼の能力を」

ランジュ「ええ、直接戦ったせつ菜や愛、それとしずくからたっぷりとね」

彼方「それは困ったねぇ」ﾆｺﾆｺ

ランジュ「その割には嬉しそうな顔ね」

彼方「さてさて、どうしたものかねぇ」
　

彼方「今回ばかりは彼方ちゃんから行くよー。火遁・透夜火（すやぴ）の術！」

ランジュ「一体何を……熱っ！？」

彼方「ランジュちゃんには見えないよねぇ」

ランジュ「見えない……炎……！」ﾒﾗﾒﾗ

彼方「彼方ちゃんが本気を出せばこんなものだよ～」

ランジュ（水分身）「――」ﾊﾞｼｬ

ランジュ「水遁・水龍弾の術！」

彼方「水分身なんかじゃ彼方ちゃんの眼は誤魔化せないんだぜ～。火遁・災煉透（サイレント）の術」

ランジュ「炎が見えなくても関係ない！　全部飲み込んであげるわ！」
　

術解説

＜嵐遁・躯印打武＞
天に向かって無数のレーザーを放ち、一気に降り注ぐ術。レーザーの軌道は自在にコントロールできる。

＜火遁・透夜火の術＞
目には見えない炎の球を放つ術。ろうそくの外炎のように完全燃焼をしている炎のみで構成されている火球は、青白く暗い色をしているため非常に視認性が悪い上に温度も高い。ただし術の規模が小さく速度も遅い。元々野営時に暖を取りたいが光や音が邪魔で眠れないと悩んでいた忍が開発した術。

＜火遁・災煉透の術＞
「火遁・透夜火の術」の上位の術。炎の移動速度は遅いままだが規模が桁違いで、炎が彼方まで広がり風を斬ると言われている。さらに炎の軌道は自在に操ることが出来るため、何らかの方法で炎を感知しなければ躱しきることは困難を極める。
　

ジュワー

ランジュ「相〇された！？」

彼方「透夜火の術の上位の術だよ。規模は比べ物にならないけどね～」

ランジュ「水遁・破奔流！」ﾊﾞｼｬﾊﾞｼｬ

彼方「そっちじゃないよ？」

ジュワー

ランジュ「！　炎がこんな近くまで来てたなんて……」

彼方「いつまで持つかな？　ランジュちゃん」

ランジュ「くっ……」

彼方「ふわぁ……そろそろ終わり――」

ザッパーン！！！

彼方「！？」

ザッ

ランジュ「露一手给你们看看（私の力を見せてあげるわ）」

https://i.imgur.com/PHQuYjz.png

彼方「ふーん、やっぱりランジュちゃんは凄いね」

ランジュ「ここからはランジュの本気、仙人モードよ　准备好没？（準備は良い？）」
　

ランジュ（影分身）「仙法・雷切！」ﾁﾁﾁﾁﾁﾁ

彼方（速いけど見切れるよ。カウンターのチャンス！）ｽｯ

ランジュ（影分身）「どうかしら？」ﾋﾗﾘ

彼方「うおっ！？」ｽｩ

ランジュ「今よ！　仙法・嵐遁悠都比亞（ユートピア）！」ﾋﾞﾋﾞﾋﾞﾋﾞﾋﾞ

彼方「嘘でしょ……ビーム太すぎるよ」

ランジュ「逃げ場はないわ。諦めなさい」

彼方「まあ効かないんだけどね」ｽｩ

ズドーン


～眠威空間～

彼方「全身ビームに飲み込まれちゃったよ。直径1キロくらいあったんじゃないかな」

彼方「……」

彼方「外で何が起きてるのか全然わからないねぇ」

彼方「……」

彼方「なんか長くない？　まだビームの中？」

彼方「あ、戻り始めた」
　

～現実空間～

彼方「やっと終わった～」

ランジュ「本当に全部すり抜けちゃうのね」

彼方「そうだよ～ってええっ！？　地面がない！？」ﾋｭｰ

ランジュ「その穴、深さは5ｋｍあるわ」

彼方「それは死んじゃうから～……眠威！」ｽﾞｵｵ

影分身ランジュ1「させると思う？」ﾋﾞﾋﾞﾋﾞ

彼方「むぅ、すり抜けしかないか」ｽｩ

影分身ランジュ2「時空間移動は失敗ね！」

彼方（隙を見て壁に近づくか……）

ランジュ「雷遁！」　分身1「風遁！」　分身2「水遁！」

ランジュ「仙法・猛曼颱羅（もうまんたいら）！」
　

術解説

＜仙法・嵐遁悠都比亞＞
直径1キロの極太ビームを放つ術。曲げることもできるがそもそも曲げずとも躱されることはない。その威力は山をも消し飛ばし、地面に向けて放てば巨大な大穴を作ることが出来る。


＜仙法・猛曼颱羅＞
雷遁、風遁、水遁を同時に放つことで巨大な嵐を起こす連携仙術。仙術チャクラによる圧倒的質量の水遁に大木をなぎ倒すほどの威力の風遁を加え、さらに広大な森をも焼き尽くす雷遁を加えて破壊の限りを尽くす。どんな強敵がどれほどの数居ようとも、全く問題無い。
　

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！！！！！！！！！！！！！！！！

彼方「凄い威力と範囲だねぇ……！」

ランジュ「彼方のすり抜けの弱点は知っているわ。すり抜け続けられるのは5分が限界だって」

彼方「……しずくちゃんか」

ランジュ「今から10分間、この嵐の中に閉じ込めるわ」

彼方（それは本当にまずいなぁ。“アレ”を使っても10分耐えられる保証はないよ……）

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！！！！！！！！！！！！！！！！

―――

――

―
　

ランジュ「はぁ、はぁ……仙人モードでも10分はギリギリね」

彼方「……」ﾊﾞﾀﾘ

ランジュ「……」

彼方「……」ﾋﾟｸｯ

ランジュ「雷切！」ﾊﾞﾁﾊﾞﾁﾊﾞﾁﾊﾞﾁ

―――

――

―

ランジュ「ラ！？　ここはどこ！？」

彼方「その術、早すぎて自分の眼が追いつかないんでしょ？　だから仙人モードの危険感知で補っていた」

ランジュ（これが……姉読の幻術……解ける気がしないわ）

彼方「それじゃあ今から72か月間、ランジュちゃんは彼方ちゃんの妹になりまーす」
　

―
――
―――

ランジュ「お姉ちゃん！　お腹が空いたわ！」

彼方「今日はカレーだよ～」

ランジュ「きゃぁっ♡　お姉ちゃんのカレー大好きよ！」

彼方「ランジュちゃんのためにお肉たっぷりにしたからね♡」

ランジュ「ﾓｸﾞﾓｸﾞ……美味しいわ！」

彼方「お肉美味しい？」

ランジュ「お肉も美味しいけど、お姉ちゃんの味がするわ♡」

彼方「もーランジュちゃんってばー♡　はい、あーん♡」

ランジュ「あーん♡」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

―――
――
―

「嵐遁・励挫鎖可素！」

彼方「！」

チュドーン

ランジュ（本体）「躱したみたいね。すり抜けはもうでき……！？」

彼方「幻術の効きが弱いと思ったら影分身かぁ。まさかまだそんなチャクラが残ってたなんて」ﾃｸﾃｸ

ランジュ「なんで……私は幻術を喰らってなんか」

彼方「ただの幻術だって侮っちゃいけないんだぜ～。影分身は術者に経験値を還元する術、だよねぇ」

ランジュ「お、お姉ちゃん……！」

彼方「ねえランジュちゃん。“お姉ちゃん”と一緒に来ない？」
　

彼方がゆっくりと近づいてくる

頭ではわかっている

今が絶好のチャンスだと

それでも彼方の顔を見るたび、声を聴くたび、匂いを感じるたびに身体が言うことを聞かなくなる

気付けばランジュはお姉ちゃんに抱きしめられていた

この温もりをランジュは知っている

彼方「ちょっと休んでてね。ランジュちゃん♡」

ほんの一瞬、理性を取り戻したけど、既にランジュの身体は彼方の右眼に吸い込まれていた

もう、間に合わなかった
　

「ダイナマイトエントリー！」

彼方「うわぁ！？」ｽｩ

「間一髪、間に合ったようね」

ランジュ「ラ！？」

果林「増えん（ぞうえん）よ！」

彼方「おっとこれはまずいねぇ」

侑「ランジュちゃん！」

遥「大丈夫ですか！？」

ランジュ「侑、遥……怪我はないわ。でも幻術を喰らったから戦力にはなれない」

果林「喰らっても耐えてるのね」

ランジュ「喰らったら終わりだと思っていいわ。おね、彼方も消耗してるからもう何度も使えないと思うけど」

遥「だったら私が！」

彼方「へえ、遥ちゃんは“その眼”でやる気なの？」

遥「くっ……」

果林「別にその必要はないでしょ。明輪眼の対処は簡単よ」

侑「え？　どうやるんですか？」

果林「相手の足を見て動きを見切ればいいのよ！」
　

ランジュ「いや無理ラ」

侑「いくら何でもそれは……」

遥「私は何とかできるかもしれないけど……」

彼方「ランジュちゃんは諦めて帰ろっかな」

果林「逃がすわけないでしょ」

彼方「ランジュちゃん。お願い♡」

ランジュ「！」ｶﾞﾊﾞｯ

果林「ちょ、ランジュ！？　何してるの！？」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

彼方「じゃあねぇ」ｽﾞｫｫｫ

遥「お姉ちゃん！」

彼方「彼方ちゃんと“同じ眼”を持って“あの場所”に来たら相手してあげるよ」

遥「！」

ランジュ「ご、ごめんラ！」ﾊﾟｯ

果林「待ちなさい！」ﾀﾞｯ

彼方「果林ちゃんは来ちゃダメだよ～」ｽﾞｫｫｫ
　

遥「お姉ちゃん……」ｸﾞｯ

侑「ねえ、さっき彼方さんが言ってたのって」

遥「場所はわかります。眼のことも……」

果林「一人で来いって、ねえ。居場所がわかるならエマでも何でも連れていくわよ」

侑「いや虹影をそんな簡単に」

果林「せつ菜やランジュがやられてるのよ？　もうエマじゃないと手に負えないわ」

ランジュ「あの様子、まだ隠し玉があるわ。どうやってランジュの術を破ったのかわからなかったもの」

遥「いえ、一人で行かせてください。姉の不始末は私が片付けます」

果林「……その強情さ、誰に似たのかしら。でもはっきり言って勝算はないわ」

遥「だから果林さん。ランジュさんも、私に修行を付けてください！」

ランジュ「！」
　

果林「あら、随分贅沢なこと言うのね」

遥「里中の皆さんと修行してお姉ちゃんを連れ戻します！」

侑「私も協力するよ！　……人を集めてくる方で」

果林「だったらまずは体術の修行ね。彼方の眼で追いつけても体で追いつかせないようにするために」

ランジュ「ランジュもとっておきの術を教えるわ！　明輪眼との相性もばっちりよ！」


遥「お姉ちゃんは絶対連れ戻す！」





おわり