【SS】かすみ「サンパチマイク」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


1: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:34:12.25 ID:rHd0PL/L
しずく「かすみさん進路決まった?」

かすみ「うーん……やりたい事とか別にないし」

しずく「まだそんな事言ってるの!?もう2月だよ!」

しずく「先輩達が見たら呆れちゃうよ?」

かすみ「へーそー」

しずく「今からでも滑り込めるとこ探さないと」

しずく「一緒に探してあげるから話だけでも聞きに行ってみよう?」

かすみ「めんどくさい」

しずく「かーすーみーさん……」ギロッ

かすみ「ひ、ひぃっ!分かった分かったからぁ」
 
2: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:34:48.24 ID:rHd0PL/L
かすみ「てか、しず子は女優志望でしょ?大学なんて行かなくたっていいのに」

しずく「それとこれとは別!良い演技をする為には深い見聞と教養が必要なの」

かすみ「へー」


とまぁ、こんな具合に高三のかすみは何をするにしても無気力。気の抜けた風船です。

どのくらい無気力かと言うと、使い古したゲームボーイアドバンスSPのパカパカする部分くらい無気力。もうユルユルのフニャフニャです。

え?例えが分かりづらい?養成所で嫌と言うほど聞いた言葉です。こんなんだから売れないんでしょうか?

ちなみに、平成生まれの癖にDSではなくゲームボーイで例えてしまうといった青さも、私達の中ではあるあるです。
 
3: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:36:04.34 ID:rHd0PL/L
かすみ「しず子ってば急なんだから」

しずく「パンフレットで見たより広いね、ここの校舎」

しずく「なかなか綺麗だしいいんじゃない?ここなら入試も……

かすみ「ごめんしず子!ちょっとトイレ!」

しずく「もう」





かすみ「ふぅー…漏れるとこだった」

かすみ「…………」ポチポチ

かすみ(あれ?今日24日だったっけ)

かすみ(……やばっ!せつ菜先輩の大ライブの日じゃん!)

かすみ(行かなきゃ)
 
5: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:37:20.14 ID:rHd0PL/L
しずく(かすみさんったらいつまでトイレしてるの……)





しずく「かすみさーん?」

しずく(全部空室……)


将来を案じて説明会に付いて来てくれた友達を、見知らぬ大学のキャンパスにひとり置いて行ってしまう疑いようもないクズ。

しかし、幸か不幸かこの大ライブこそがこのクズの人生を左右する大きな転機となるのです。
 
6: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:39:04.41 ID:rHd0PL/L
「「NSC東京25期生大ライブ!首席は”スカーレット・かしまし”だぁぁあ!!」」

「「”スカーレット・かしまし”に大きな拍手を!!」」

かすみ「はわぁーっ!!」パチパチパチ





かすみ「せつ菜先輩!!凄いです!!ピンで優勝しちゃうなんて!!」

せつ菜「ありがとうございます」
 
7: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:39:29.15 ID:rHd0PL/L
かすみ「やっぱりこれからTVとか出ちゃうんですか!?」ワクワク

せつ菜「ははは、大ライブに優勝したくらいでTVなんて出られませんよ」

せつ菜「一応この後正式に事務所所属となるのですが、卒業さえ出来れば皆そうですよ」

せつ菜「最初はカメリハやエキストラ等の裏方の仕事。暫くは下積み生活です」

かすみ「大変そうですね……」

せつ菜「かすみさんも良かったら入りませんか?」

かすみ「へ?」

せつ菜「NSC」

かすみ「へ、はぁぁあ!?」
 
8: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:39:48.58 ID:rHd0PL/L
せつ菜「ちょうど相方を探していたところなんです」

かすみ「無理無理無理!かすみんそんなの無理ですぅ!」

せつ菜「かすみさんの事ですから進路も決まってないんでしょ?」

かすみ「とは言ってもですねぇ……」

せつ菜「他に大好きな事ないんでしょ?」

かすみ「それはぁ……」

せつ菜「お笑いの話をしている時くらいですよ。かすみさんが笑顔を見せてくれるの」
 
9: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:40:32.37 ID:rHd0PL/L
そんなこんなで乗せられて今に至ります。はい、チョロい。


せつ菜先輩さえいなければ、かすみはこんな泡(あぶく)みたいな稼業に手を出す事なんてなかったでしょう。


せつ菜先輩さえいなければ、四畳半のボロアパートに二人、わんわん泣いたあの夜もなかった事でしょう。


このお話はそんな天才芸人・優木せつ菜と無気力系クズ・中須かすみの、泥臭くも輝かしい十年間の記録です。


さて、フリが長くなってしまいましたがいよいよ開演です!

明転飛び出しでお願いします!!
 
11: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:45:01.68 ID:rHd0PL/L
「「どうもー無敵級*ポテトフライですお願いしまーす」」

かすみ「最近電車とか乗ると思うんですけど、マナー悪い人って多くないですか?」

せつ菜「あ、分かります。お化粧してる人とか……」

かすみ「そうそう」

せつ菜「ほんとにやめて欲しいですよね……」ペッ

かすみ「へいへいへい!?」

せつ菜「……?」

かすみ「あんたの事です!まさしく!今何吐いた!」

せつ菜「このガム味がしなくなったので……」

かすみ「化粧よりタチ悪いから!!」

せつ菜「……?」

かすみ「まぁいいです、今後恥かかない為にもここで練習しときましょ」

せつ菜「練習ならさっきしましたよね?今はオーディションの本番中ですよ……」

かすみ「マ・ナ・アの練習!!私がマナー悪い人やるんで、ちゃんと注意してください」

かすみ「…………」ピロリロリン♪ピロリロリン♪

せつ菜「なんですかその音は😡」

かすみ「…………」ピロリロリン♪ピロリロリン♪

せつ菜「今時そんなの使う人いませんよ!完全にポケベルの音じゃないですか!」

かすみ「どこツッコんどんねん」

かすみ「とっさに関西弁出ちゃったじゃないですか、出さすな恥ずかしい」

かすみ「こういうのは演技だから!擬音なんてこれでいいんですよ」

せつ菜「え、演技だったんですか…………私とお笑いやるって言ってくれたのも」ウルウル

かすみ「遡りすぎぃ!もういいです」

「「どうもありがとうございましたーー」」
 
12: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:45:50.33 ID:rHd0PL/L
審査員「………はいありがとうございましたーー」

かすみ「…………」

せつ菜「…………」

かすみ「あ、あのぉ……」

かすみ「どうでしたか……?」

審査員「うん、なんか見たことあるよね」

審査員「あとメタ多すぎ、リアリティに欠けるというかさぁ……」
 
14: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:48:00.53 ID:rHd0PL/L
せつ菜「参考になります……」

審査員「次の人もいるから、はやく帰って」

かすみ「あ、ありがとうございましたー」

せつ菜「ありがとうございました!」





かすみ「なんですかあの審査員…分かったような事言って」

せつ菜「そんな事言うと聞こえてしまいますよ」

かすみ「別にいいです、せつ菜先輩のネタは世界一面白いのに……」

せつ菜「そんな訳ないじゃないですか、あれで満足していては売れるなんて夢のまた夢ですよ」

せつ菜「バイトあるので行きますね」

かすみ「行ってらっしゃい」
 
15: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:52:33.50 ID:rHd0PL/L




コンビ結成から五年が経とうとしておりました。

NSCにいた頃は、25期・首席のせつ菜先輩が、26期となる私達の為に、養成所内でチューターとして尽くしてくれていました。

チューターの時のせつ菜先輩といえば鬼教官と恐れられるほどに厳しくて怒鳴ってばかり。ネタ合わせ中の優しいせつ菜先輩とのギャップには、いつも疲弊しておりました。

規則だから仕方ないんだそうで。
 
16: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:53:03.29 ID:rHd0PL/L
かすみ「ただいまー」

しずく「おかえりかすみさん」

しずく「どうだった?オーディション」

かすみ「全っ然ダメ、やっぱり舞台に立った事もない審査員に私達のネタなんて分かりっこないんだよ」

しずく「言うねwかすみさん」
 
17: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:53:41.64 ID:rHd0PL/L
かすみ「そっちのオーディションこそどうだったの?」

しずく「この時間に家にいるって事は見れば分かるでしょ」

かすみ「あら失礼」

しずく「このっ」コツコツ

かすみ「ちょっやめてよー」アハハハ

かすみ「はぁーー……」

かすみ「売れたいねぇ……」

しずく「売れたい」
 
18: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 21:54:40.88 ID:rHd0PL/L
しず子は大学を卒業してすぐ、アミューズに所属しました。


ミス慶応に選ばれ、業界からそこそこ顔が知れていたしず子ですら、バイトとオーディションを繰り返す日々です。

一体女優業というのはどれほど狭き門なんでしょうか。


似たような生活をしていた私に同棲を持ち掛けてくれた時は本当に救われました。


人間、生きていく為には最低限雨風を凌げる寝蔵が必要なわけで。それに掛かる費用が半分になるだけで、人はこうも文化的な生活が送れるようになるのだと、感心すらしてしまったものです。
 
21: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 22:01:27.55 ID:rHd0PL/L
かすみ「しず子、次のお仕事なんだった?」

しずく「エキストラ、来週の土曜」

かすみ「あ、かすみんも」

しずく「え、ほんと?現場被るかもね」

かすみ「それはきついって」

しずく「なんのドラマ?」

かすみ「今やってる月九の」

かすみ「代々木のスタバでお茶してる女A」

しずく「は!?私それのBなんだけど!」

かすみ「えっ最悪」

しずく「本番で笑かしたりしないでよ」

かすみ「するわけないじゃん」
 
22: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 22:02:01.88 ID:rHd0PL/L
ー代々木

かすみ「…………」

しずく「…………」

かすみ「…………」(ブロブフィッシュの真似)

しずく「………っ」プルプル

「「はいカット!」」

「「おつかれさまでしたー」」

かすみ「しず子、帰りに……

しずく「お疲れ様でしたぁ♪」
 
23: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 22:02:34.08 ID:rHd0PL/L
偉い人「お疲れ様、あれ?君どっかで見たことあるなぁ」

しずく「ほんとですか!?ありがとうございます♪アミューズの~…………」

かすみ「…………」

かすみ「けっ」


ピロロン

ーーーーーーーーーーーーー
かすみさんこれからネタ合わせ出来ますか?

勿論です!
ーーーーーーーーーーーーー

かすみ「………」ニヒヒ
 
24: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 22:03:18.79 ID:rHd0PL/L
かすみ「おつかれさまでしたー」

偉い人「君もこの子のお友達?これから飲みに行くんだけど一緒にどう?」

かすみ「すみませんこの後ネタ合わせがあるので」

しずく「ちょ、ちょっとかすみさん!」
 
25: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 22:11:43.80 ID:rHd0PL/L
せつ菜「それで断って来ちゃったんですか!?」

かすみ「はい」

せつ菜「あっはは、トガってますねぇ」

かすみ「せつ菜先輩に言われたくないですよ」

かすみ「折角NSCで主席取ったのに、よしもと辞めちゃうなんて」

せつ菜「かすみさんがNSC卒業出来なかったからでしょ?」

かすみ「うぐ…ごめんなさい」
 
26: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 22:14:05.17 ID:rHd0PL/L
一度ネタ見せの授業に遅刻してしまい、当のせつ菜先輩からクビを言い渡された時は、完全に終わったと思いました。落第生を解雇するのも、チューターの重要なお仕事なのです。


そんなダメダメな私ともコンビを続けると言ってくれたせつ菜先輩は、自らよしもとを退社。

首席なだけあって、ちょくちょく∞ホールの上位ランキングに名を連ねていた”スカーレット・かしまし”のキャリアに終止符を打ち、無敵級*ポテトフライとして始動しました。

あの時、私の事なんて見捨ててくれていたら、せつ菜先輩はもっともっと上にいけたのに。
 
31: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 22:45:04.20 ID:rHd0PL/L
せつ菜「いいんです、今の事務所の方が合ってますし」

かすみ「でもくれる仕事エキストラとスーパーの営業くらいですよ」

せつ菜「うぐ…小さい事務所なので」

かすみ「やっぱ地道にオーディション受けるしかないんですかねーー」ハァー

せつ菜「その為のネタ合わせですよ」

かすみ「そうでした」
 
32: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 22:45:37.60 ID:rHd0PL/L
ーーーーーーーーーーーーー
「「どうもー無敵級*ポテトフライですおねがいしまーす」」

かすみ「最近電車とか乗ると思うんですけど、マナー悪い人って多くないですか?」

せつ菜「あ、分かります。お化粧してる人とか……」

以下略)
ーーーーーーーーーーーーー


かすみ「やっぱ掴みとかいれませんか?覚えやすいやつ」

かすみ「無敵級*ポテトフライです!ポテトはケンタッキー派です。いや聞いてません」

かすみ「とかどうですか?」

せつ菜「うーん……」
 
33: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 22:46:37.03 ID:rHd0PL/L
かすみ「なんでいつも掴みいれるの嫌がるんですか?」

せつ菜「嫌ではないのですが……コンビ名を覚えてもらうのが目的なら入れたくないんです」

せつ菜「ネタは自己紹介ではありませんから」

かすみ「…………なんかかすみんが恥ずかしいじゃないですか」プク

せつ菜「どのくらい?」

かすみ「あの夏の日くらい」

せつ菜「どの!」

かすみ「あはは」

せつ菜「やっぱりボケは私の方がいいですね」

かすみ「うわっ二重で恥ずかしい思いさせて来たこの人」
 
34: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 22:56:04.79 ID:rHd0PL/L
せつ菜「今日はそろそろ解散にしましょうか」

せつ菜「メタいボケが多いのはまた直しておきます」

かすみ「かすみんはいいと思うんだけどなぁーあのボケ」

せつ菜「では」

かすみ「お疲れ様でした」





かすみ「ただいまー」ガチャッ
 
35: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 23:04:49.60 ID:rHd0PL/L
かすみ(そっか…しず子ってば偉い人と飲んでるんだった)

かすみ「どうもー無敵級*ポテトフライですお願いしますー…」ボソボソ

かすみ(うーーん……)


しずく「たらいまぁ~~……」ガチャッ

かすみ「わっ、しず子おかえり」

しずく「ふへへへ~……」

かすみ「って酒臭っ」

かすみ「機嫌いいね、お偉いさんと何話してきたの」

しずく「別にぃ~…………」zzzz

かすみ「もう、先にお風呂入っちゃうよ」スタスタ

かすみ(ん?……これって)ピラッ


テレ東深夜枠:ミス・ユニバース10名が1からコント作ってみました!ガチネタ決定戦


かすみ「…………」
 
36: (SB-iPhone) 2021/04/26(月) 23:14:34.84 ID:rHd0PL/L
ー翌朝

かすみ「おめでとうしず子、凄いじゃん」

しずく「えっ」

かすみ「テレ東でしょ、深夜とはいえ凄いよ」

しずく「ちょっと勝手に見たの!?」

かすみ「落ちてたんだもん」

しずく「///」

かすみ「コント作るんだ、かすみんも手伝おうか?」

しずく「いいよいいよ」

かすみ「でもしず子コントなんて作った事ないでしょ?」

しずく「作家さんが作るから」

かすみ「え?ミス・ユニバースが1から作るって……」

しずく「あぁ、あれはただの謳い文句だから」

かすみ「そうなんだ……」
 
38: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 03:32:36.25 ID:NFK5xKGP
かすみ「バイト行ってくるね……」ガチャ





かすみ(はぁ……)


プルルルルルル


かすみ「はいもしもし、マネージャー?」

かすみ「えっ!?この後ですか!?」

かすみ「…………大丈夫です」
 
39: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 03:35:07.00 ID:NFK5xKGP
ーバ先

かすみ「お願いします……!今日だけなんです……」

店長「今日だけって毎回毎回……」

かすみ「いつか必ず埋め合わせはします……!」

店長「埋め合わせはいいよ」

かすみ「え?ほんとですか?」

店長「もう来なくていいから」

かすみ「…………」
 
40: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 03:37:25.99 ID:NFK5xKGP
せつ菜「はぁ…はぁ!かすみさん!」

かすみ「遅いですせつ菜先輩!」

かすみ「このオーディションの為にバイトクビになったんですから」

せつ菜「すみません……一回くらいはネタ合わせ出来ますかね?」

かすみ「はい」
 
41: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 03:39:05.33 ID:NFK5xKGP
「「どうもー無敵級*ポテトフライですお願いしまーす」」





せつ菜「ただですねお客様…こちらの物件はつい先日自〇がありまして……」

かすみ「うわっ事故物件ですか…お化けが出るとか?」

せつ菜「はい…長~い黒髪を垂らして…」

かすみ「長い黒髪…おっかないですね…」

せつ菜「低身長巨乳」

かすみ「低身長巨乳…はい?」

せつ菜「左にサイドテールを作った女性の幽霊です」

かすみ「左にサイドテール……え?」チラッ

せつ菜「あ”あ”あ”あ”あ”」

かすみ「ひぃぃいいい!?もういいです」


「「どうもありがとうございましたー」」
 
42: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 03:42:05.62 ID:NFK5xKGP
審査員「…………」

かすみ「…………」

せつ菜「…………」

かすみ「ど、どうですか……?」

審査員「…………さぁ」

かすみ「さぁって……!」ボソボソ

せつ菜「かすみさん……」ボソボソ

せつ菜「ありがとうございました!!」

かすみ「ありがとうございました」
 
44: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 05:27:03.87 ID:NFK5xKGP
かすみ「…………チッ」ゲシッ

せつ菜「電柱に罪はありませんよ」

かすみ「でも……」

せつ菜「飲みに行きましょうか」
 
45: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 05:27:49.72 ID:NFK5xKGP
ー居酒屋


ワイワイガヤガヤ

せつ菜「あ”ーー大体ですねぇ…笑いというのはぁ……ヒック」

かすみ「飲み過ぎですって……」

せつ菜「幼稚園で子供に魚の絵を描かせたら、切り身を描く子がいるって問題になっていたのは知っていますかぁ……?」

かすみ「あー…なんかネットニュースで見ました……」

せつ菜「バカ!!」

かすみ「えぇー…」
 
46: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 05:28:37.06 ID:NFK5xKGP
せつ菜「切り身の方が実生活に根差してるじゃないですかあー……そんな子の芽を摘んでしまうなんて今の教育は間違っていまーーす……」

せつ菜「その子はルネ・マグリットの生まれ変わりなんです……」

かすみ「ルネ・マグリットの代表作知ってますか?」

せつ菜「向日葵」

かすみ「あちゃー、インテリぶるから」

せつ菜「えへ、えへへへ」
 
47: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 05:30:18.28 ID:NFK5xKGP
かすみ「この伝票に飴の絵描いてみてください」

せつ菜「飴ですかぁ……?」カキカキ

🍭🍬

せつ菜「ぐへ……我ながら上手れす」

かすみ「やっぱそんな感じですよね」

かすみ「現代の日本社会に置いてよく見る飴って、四角いビニールに個包装されたやつじゃないですか?」

せつ菜「たしかに……」
 
48: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 05:31:28.80 ID:NFK5xKGP
かすみ「日本でそんな飴売ってんのKALDIかLOFTかヴィレヴァンくらいですよ」

せつ菜「かすみさんもまだまだですねぇ……記号ですよ記号ぉ~……」

かすみ「記号」

せつ菜「四角いビニールだと飴なのかお煎餅なのかチョコレートなのか分からないでしょ……」

せつ菜「世間では複雑な真実よりも分かりやすい記号の方が重宝されるんですよーーー………」グデェ

かすみ「じゃあ魚の切り身もダメじゃないですか」

せつ菜「それはいいんです!!」

かすみ「もう、あははは」

せつ菜「えへへへへへ」
 
50: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 06:03:11.67 ID:NFK5xKGP




かすみ「あ”ーーー」フラフラ

せつ菜「お”ぉーー」フラフラ

かすみ「はぁー……ちょっと休憩ー」ドサッ

せつ菜「ぐへへへ……歩いてすぐですからぁ今日はうちに泊まりなさい」

かすみ「関東一の喧嘩番長にみぞおち食らった時くらい吐きそうなんで無理です……」

せつ菜「例えが月並みで心配なのでうちに連れ帰って修行が必要です」

かすみ「いいじゃないですか月並みでーー」

かすみ「ベタを笑う者はベタに泣きますよーー」

せつ菜「ベタで笑ってるんならいいじゃないですか」

かすみ「確かに……」
 
51: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 06:03:42.85 ID:NFK5xKGP
せつ菜「いつも始発までどうしてるんですかぁ」

かすみ「タクシー…とか…」

せつ菜「分かってますよ!タクシー乗るお金なんてないんでしょーー」

かすみ「うぅー……その辺のベンチで寝てますよー……」

せつ菜「想像してたのと違います」

せつ菜「せめて座敷童子と夜が明けるまで鬼ごっこでもしてて欲しかったです」

かすみ「ふふっw」

せつ菜「あはははは」

かすみ「夜中に何言ってんですかw」
 
52: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 06:04:22.22 ID:NFK5xKGP
せつ菜「さぁーうちに行きますよぉ」ガシッ

かすみ「ちょっ!やめやめやめい」

せつ菜「あっははははw」

かすみ「いいですってもー」

せつ菜「…………」ズルッ

かすみ「うわぁぁああ!高円寺の路上でち   出させないでください!!」

せつ菜「かすみさんのち   は高円寺ですかーーまだまだですね」

せつ菜「私のち   は六本木ですーー」

かすみ「だから何言ってんですかw」

せつ菜「このっ」ガシッ

かすみ「もう、あはははは」

せつ菜「あっははははw」
 
53: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 07:05:25.88 ID:NFK5xKGP
この時はただ毎日が楽しかったんです。

モラトリアムという言葉がありますが、大学も出ていないかすみは芸に縋り付く事でモラトリアムを謳歌しようとしていたのかもしれません。


ただ、そんなものがいつまでも通用する筈がなく、この魑魅魍魎が跋扈する”芸能界”という世界にあっては、友情すらも砂のお城のように、音もなく崩れていくものなのかもしれません。


この街で迎えた五度目の夏は、甘ったるい金木犀の香りに呑まれ、いつしか過ぎ去っていました。
 
54: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 07:26:34.49 ID:NFK5xKGP
かすみ「どうもーー無敵級*ポテトフライですーお願いしまーす……」ボソボソ

かすみ「彼女欲しいですよねー分かりますー……」ボソボソ


しずく「たらいま~……ヒッ」ガチャ

かすみ「しず子!収録どうだった?」

しずく「ん~?んふふ……」zzzz

かすみ「またそんな潰れちゃって……最近多いよ」

しずく「女優は作家さんに気に入られてなんぼなの~……」zzzz

かすみ「深い教養と見聞がー、なんて息巻いてたくせに」
 
55: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 07:31:05.29 ID:NFK5xKGP
しずく「…………かすみさんこそどうなの?こないだのネタ見せ」

かすみ「まだ分かんない、結果待ち」

しずく「新しいギャグは出来た~?」

かすみ「ギャグもコントもやんないよ、私達は漫才しかしないから」

かすみ「水着着てコントしたらウケが取れる女優さんとは違うの」

しずく「…………」イラッ

しずく「へ~かっこいい~……」

かすみ「…………」
 
57: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 10:35:05.99 ID:NFK5xKGP




せつ菜「え!?劇場のレギュラーですか!」

マネージャー「うん、小さい劇場の前座だけどね」

かすみ「全然いいです!!」

せつ菜「かすみさん!!」

かすみ「せつ菜先輩!!」

せつ菜「やりました!!」

マネージャー「ワンステ300円だけどね」

かすみ「べ、別にいいです…!」
 
58: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 10:48:14.12 ID:NFK5xKGP
「「どうもーー無敵級*ポテトフライですお願いしますーー」」

せつ菜「彼女欲しいですね」

かすみ「分かります」

せつ菜「どうやったら出来るでしょうか……」

かすみ「趣味とか持ったらどうですか?若い子に人気の趣味とか持つと、女の子と知り合えたりするかもですよ」

せつ菜「若い子の趣味ですか」

かすみ「ですです」

せつ菜「進研ゼミとか?」

かすみ「若すぎる!大人であのテキスト開いていいのは赤ペン先生と井沢拓司くらいですからね…」

かすみ「大人のかっこいい趣味といえばダーツ、ビリヤード、ナイトプールとかその辺ですよ」

せつ菜「ナイトプール!いいですね」

かすみ「でしょ」

せつ菜「水泳帽は持って行った方がいいですか?」

かすみ「でら!いりません…大人になってあれ着用していいのは記録出したい奴か町の変わり者だけです」

せつ菜「でも私はきちんと着用したいんですよねぇ…」

かすみ「う~ん変わり者、町の変わり者になっちゃいましたね…残念」

せつ菜「黒いラテックスのやつ」

かすみ「記録出す方でした!変わり者らしく白いメッシュのやつにしといてください…」

せつ菜「ちゃんと名前書いておいた方がいいですかね」

かすみ「あーどんどん変わり者…自分の持ち物に名前を書かなくなる事を人は大人と呼ぶんですよ…」

せつ菜「ジェー…エー…」

かすみ「えぇ…ローマ字ですか…気色悪い…」

せつ菜「ジー・エー・アイ・エム・オー」

かすみ「キャー!JAGAIMO☆じゃがいもって書いちゃいました!突然のじゃがいもやめてください……」

せつ菜「それで……」

かすみ「いや次行くな!理由をください理由を!突然のじゃがいも(理由なし)はこの国では極刑って決まってますからね!?」

せつ菜「ちょうど今狙ってる子もナイトプール行きたいって言ってたんですよ」

かすみ「え!?いいじゃないですか!是非誘ってあげてください」

せつ菜「でもその子、伝書鳩でしか誘いに応じてくれないんです……」

かすみ「よっしゃそいつも変わり者!!お似合いですよ今すぐメッシュの水泳帽買ってきてくださいー……」

「「どうもありがとうございましたーー」」
 
59: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 10:54:49.09 ID:NFK5xKGP
………………

………………

かすみ「…………」

せつ菜「…………」

パチ…パチ…パチパチ

コペ子「はぁー」キラキラ
 
60: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 11:22:39.69 ID:N1SMebcB
コペ子「最高でした!」

せつ菜「そんな事言ってくれるのあなただけですよ」

コペ子「ネタってどちらが書かれてるんですか?」

かすみ「まぁ二人で…やりながら」

せつ菜「……は?」
 
64: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 12:39:25.14 ID:N1SMebcB
せつ菜「私ですよね?ネタ書いてるの…」

かすみ「そ、そうですかね……?二人でやりながら作ってるつもりでしたけど……」

せつ菜「すみません今日はお先に帰ります」

かすみ「お疲れ様でした」

せつ菜「…………」
 
65: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 12:53:17.77 ID:N1SMebcB




かすみ(やっちゃったー……)

かすみ「ただいまー」ガチャ

しずく「おかえり」

かすみ「何見てるの?」

しずく「こないだ収録した深夜の番組」

かすみ「へ、へー…」

ワッハッハッハ! アッハッハッハ! パチパチパチ!

かすみ「…………」

アリガトウゴザイマシター! ツヅキマシテー

かすみ「…………」

かすみ「…………」ピッ

しずく「えっなんで消すの?」

かすみ「見てらんない」

しずく「え……?」
 
66: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 12:55:13.87 ID:N1SMebcB
かすみ「ほとんど下ネタじゃん…こんなの…お客さんもしず子のネタじゃなくて体見てるだけだよ……」

しずく「…………妬いてるんだ」

しずく「本業のかすみさんより、女優の企画もののバラエティの方がウケてて悔しい!?」

かすみ「うるさい……!」

しずく「…………私、出ていくから」

かすみ「え……?」

しずく「…………荷物はまた取りに来るから」

かすみ「待って」

しずく「…………」ガチャッ
 
67: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 13:18:01.90 ID:N1SMebcB
かすみ「…………」

かすみ「…………」ブンッ

ガシャァンッ!

かすみ「…………」ゼェゼェ


ピロロン
ーーーーーーーーーーーーー
今からネタ合わせしませんか?

怒ってないんですか…?さっきの事

私の方こそすみませんでした…骨組みは私ですが、出来上がったネタは実際二人でやりながら修正したものですから…
ーーーーーーーーーーーーー
 
69: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 13:25:03.22 ID:N1SMebcB




かすみ「白バイです止まりなさい止まりなたっ

かすみ「ごめんなさい……」

せつ菜「今日これで5回目ですよ?」

かすみ「すみません……」

せつ菜「少し休憩しましょうか」
 
70: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 13:36:36.82 ID:N1SMebcB
せつ菜「かすみさんこの所余裕ないですよ」

かすみ「もう九月になっちゃったし……」

せつ菜「小さい劇場とはいえレギュラーも貰えた事ですし、前よりは前進してるじゃないですか」

せつ菜「テレ東のあの企画の事ですか?しずくさんの」

かすみ「えっ見たんですか!?」

せつ菜「ネタ番組は全てチェックしてますから」

かすみ「…………しず子が目指してるのはレッドカーペットでしょ…女優が深夜のバラエティなんかで脱いだら、もうその道に行けませんよ」

せつ菜「生きる為に必死になるのは格好悪い事ですか?」

かすみ「でも……作家が作ったベタベタのボケで……」

せつ菜「”ベタを笑う者はベタに泣く”かすみさんの台詞ですよ」

かすみ「覚えてたんですか……潰れてたのに」

せつ菜「相方との会話は一言一句ネタの材料です、忘れる筈ないじゃないですか」

かすみ「せつ菜先輩……」

せつ菜「今日はもう帰りましょうか」
 
72: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 14:58:38.15 ID:N1SMebcB
魑魅魍魎が跋扈する芸能界において、最後に笑う人間は二種類しかおりません。


求められたものに完璧に応え、顧客の理想に近づく努力が出来る人間。

秘めたる狂気が声援に変わるその日まで、己の表現を追求し続けられる人間


一見相反する二者ではありますが、生きるという強い意志は共通しております。


かすみがそのどちらでもないという事に、この時分はまだ気付いておりませんでした。
 
73: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 15:08:08.45 ID:N1SMebcB
かすみ「どうもーーー

せつ菜「じゃあかすみさん、お客さんとして来てください」

かすみ「おぉ~はやっ…無敵級*ポテトフライですお願いしますーーー」

せつ菜「居酒屋の店員が全員服のブランドだったら面白くないですか?」

かすみ「おぉ~…おお?」

せつ菜「皆んなー、バイトリーダーのユニクロです!!」

かすみ「あぁかわいらしい…」

せつ菜「今日は新人バイトが挨拶に来てるので自己紹介してください!」

かすみ「あぁ新人バイトの挨拶…ありましたけど」

せつ菜「今日から入ります!トミーヒルフィガーです」

かすみ「あっトミー入ってきた…いい子そう」

せつ菜「気軽にヒルフィガーって呼んでください」

かすみ「トミーって呼ばして貰っていいですか?あんまヒルフィガーって呼ばないですよ…」

せつ菜「同じく今日から入りました!安藤です!」

かすみ「安藤さん…普通の人もいるんですね」

せつ菜「ニコニコ笑顔で頑張ります!」

かすみ「……あっニコアンドかな!これ…なんかルール掴めてきました」

せつ菜「あぁ!?新人の挨拶なんていらねぇんだよ!」

かすみ「うわ怖い先輩…まぁたまにいますけど」

せつ菜「トットロトットーロー♪ガチャッ、もしもしママ~?」

かすみ「ギャップ!!怖い先輩の癖に着信音トトロってギャップ先輩でした…」

せつ菜「クレームが入ったたみたいです!」

かすみ「クレーム…大変ですね」

せつ菜「クレーム対応ですか…よし!私達皆んなで行きましょう!」

かすみ「……ウィーゴー先輩!!あんま皆んなで行かないですよこういうとき…」

せつ菜「クレームですか…じゃあ私はお先に帰ります」

かすみ「あぁ自由な後輩もいるんですね…

せつ菜「お疲れ様でした」

かすみ「あっもしかしてGU!?見逃すとこでした…」

せつ菜「お待たせしましたー!お茶で…ガシャンッ」

かすみ「あっ…こぼしちゃった…」

せつ菜「あ…あすみすみ…あ…すみま……あ…あああ」バタバタ

かすみ「大丈夫?落ち着いて」

せつ菜「あ…あ…あわわわわわ」バタバタ

かすみ「チャオパニックちゃん!?落ち着いた方がいいよこういうときこそ…」

せつ菜「皆んな落ち着いて!ちゃんとしないと西松店長に怒られますよ!」

かすみ「店長西松や…もういいですー」

「「ありがとうございました」」
 
74: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 15:12:00.29 ID:N1SMebcB




後輩「お疲れ様でした!お二人のネタ見させていただきました!」

せつ菜「ありがとうございます」

後輩「ネタってどちらが書かれてるんですか?」

せつ菜「あぁネタなら二人で

かすみ「中川の方」

後輩「えっ中川さんが!?参考にさせて貰ってもいいですか!?」

せつ菜「構いませんよ」

後輩「もし良かったらこの後飲みに行きませんか?お二人の話聞かせてください」

せつ菜「すみません…私はこの後夜勤が入っているので」

かすみ「私はいけるよ」

後輩「ほんとですか!?」
 
75: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 15:19:10.03 ID:N1SMebcB
ー居酒屋

後輩「姉さんの事めっちゃ尊敬してます」

かすみ「姉さんって…馴れ馴れしくなんのはやっ」

後輩「いいじゃないですか姉さん!」

かすみ「……ここは私が奢るよ」

後輩「あざっす!!」

後輩「ところで、こないだのテレ東のやつ見ました?ミスコン上位達がこぞってネタやるやつ」

かすみ「あー見たよ」

後輩「……しょーーじきキツくなかったですか?」

かすみ「え?」

後輩「特にあの桜坂しずく?っていう女優……顔が可愛いからウケてたけど、”女優なのにこんな下品な事出来ちゃう私凄いでしょ?見て?”って感じがプンップンして……」

かすみ「…………」
 
76: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 15:25:09.72 ID:N1SMebcB
後輩「…………ここだけの話なんですけど、プロデューサーと寝たらしいんですよ…あの女優」

後輩「そりゃ抱くよなーー……顔の可愛い若手にちょっと華持たせてやるだけでいいんだから」

かすみ「……あんたにしず子の何が分かんの!!!」

かすみ「生きる為に必死になるのはそんな悪い事なの!?!?」

後輩「え……?姉さん?」

かすみ「姉さんなんて呼ばないで!!!」

後輩「あっすみませ…

かすみ「帰る!!!」タッタッタッ
 
77: (SB-iPhone) 2021/04/27(火) 15:29:21.79 ID:N1SMebcB




かすみ「…………」ガチャッ

かすみ「あっ……来てたんだ」

しずく「うん、荷物取りに来ただけ」

かすみ「ごめんね…本当に」

しずく「いいよ」

かすみ「行っちゃうんだね」

しずく「うん」

かすみ「頑張ってね……」

しずく「……かすみさんも」

しずく「それじゃ」ガチャッ
 
82: (SB-iPhone) 2021/04/29(木) 07:13:26.79 ID:xe2pa9Ny
かすみ「…………」

かすみ「どうもー無敵級*ポテトフライですー……」ボソボソ

かすみ「…………うぅー」

かすみ(飲み直そ……)

かすみ「…………」ガチャッ
 
83: (SB-iPhone) 2021/04/29(木) 07:13:46.76 ID:xe2pa9Ny
ーコンビニ

店員「ありがとうございましたー」

かすみ「どうも」ウィーン

かすみ「…………」スタスタ

かすみ「……あれ?」

かすみ「果林先輩!?」

果林「あら?かすみちゃん!?」
 
84: (SB-iPhone) 2021/04/29(木) 07:14:01.46 ID:xe2pa9Ny
かすみ「やっぱ果林先輩ですか!!綺麗になってて一瞬誰か分かりませんでした」

果林「かすみちゃんは相変わらずね」

かすみ「今何してるんですか?」

果林「今……ねぇ…い、色々よ……」

果林「かすみちゃんこそ何してるの?」

かすみ「か、かすみんも色々…です…あははは」

かりかす「んー?」ミアワセ
 
85: (SB-iPhone) 2021/04/29(木) 07:14:18.83 ID:xe2pa9Ny
ーかすみ宅

かすみ「もう!言ってくださいよぉ!」アハハ

果林「かすみちゃんこそ水臭いじゃない」

果林「まさかかすみちゃんが芸人さんだなんてねぇ」

かすみ「果林先輩は大方予想通りでしたけど」

果林「私なんかはモデルとは言わないわよ……」

果林「高校の頃表紙飾ってた雑誌によしみで出さしてもらってるだけ……そこでももう最年長よ」

かすみ「か、かすみんもそんな感じです……」

果林「ふふっ、かすみちゃんはまだまだ若いじゃない」

かすみ「うぅー……」
 
86: (SB-iPhone) 2021/04/29(木) 07:15:07.07 ID:xe2pa9Ny
果林「あら?こんな派手なの着るのね」バサッ

かすみ「あ……それかすみんのじゃないです……しず子が忘れて行ったんだ」

果林「しずくちゃんが?」

かすみ「はい、同棲してて……」

果林「へぇ!いいじゃない楽しそうで」

かすみ「でももう出てっちゃいました……」

果林「あら……喧嘩?」

かすみ「喧嘩なんかじゃありません……」

かすみ「かすみが一方的に悪いので……」

果林「そう……」

かすみ「果林先輩……」

果林「何かしら?」

かすみ「また……たまにこうして飲みませんか……?一人だと落ち着かなくて……」

果林「いいわよ、むしろ有難いくらい」

果林「私は仕事柄あまり飲めないけど、こうしてお話してるだけでも楽しいもの」

かすみ「先輩…!」パァ
 
87: (SB-iPhone) 2021/04/29(木) 07:21:33.06 ID:xe2pa9Ny
しず子が家を出て三ヶ月が経ちました。

相変わらずTVのお仕事は貰えませんが、それでもちょこちょこ劇場には呼ばれるようになりました。

少ないですが、応援してくれるファンの方も増えて、かすみは幸せでした。
 
88: (SB-iPhone) 2021/04/29(木) 07:24:36.03 ID:xe2pa9Ny
かすみ「どうもーーー

せつ菜「背低い方が中川です」

かすみ「1cm差~むず~、無敵級*ポテトフライですお願いしまーす」

せつ菜「まぁあの、私達も生きていますしね」

かすみ「生きてますよ、ここに」

せつ菜「生きている限りにおいて、絶対に勝ち続けたいですよね」

かすみ「勿論です、決して負けたくはないです」

せつ菜「勝つと言っても、うおおお!って感じで勝つのではなく……」

かすみ「……?拳勝ちじゃないって事ですか?」

せつ菜「もっとこう、精神的に勝って行きたいと思っていまして…」

かすみ「なるほど」

せつ菜「この間もいつものように街を歩いていまして…」

かすみ「はい」

せつ菜「停めていた自転車に戻ってみると、カゴに空き缶が入っていました」

かすみ「それは最悪ですね…」

せつ菜「しかしです、私はこう思ったんです」

かすみ「どう思ったんですか?」

せつ菜「ここにまたひとつ、誰かの喉の潤った証が刻まれたと」

かすみ「うぉ…あれですね、お釈迦さんとISSEY MIYAKEとのハーフみたいな考え方ですね…」

せつ菜「どういう事ですか?」

かすみ「悟ってもいるし、かつオシャレです」

せつ菜「そういう事ですか、そうです、これで私の勝ちなんです」

かすみ「なるほど勝つってそういう事ですか」

せつ菜「こないだも勝ったんです」

かすみ「というと?」

せつ菜「静かーな喫茶店で、読書でもしようと座ってたんです」

かすみ「はい」

せつ菜「隣の席に、凄くうるさい四人組の女子高生が」

かすみ「かないませんね」

せつ菜「しかし、こう思ったんです」

かすみ「どう思ったんですか?」

せつ菜「『お前の仕事は、十五で嫁ぎ、健康な跡継ぎとなる男の赤ん坊を産む事だけだよ』と親戚中から罵られ、人知れず涙を流していた娘さんはもうこの国にはいないんだ、と」

かすみ「はっ…………!」

せつ菜「うん」

かすみ「今回に関してはもうぶっっち切りで勝ちですよ」

せつ菜「ぶっち切ったんですよ」

かすみ「将来先輩の銅像が立つくらいの勝ち方です」

せつ菜「銅像は立つんですよ」

かすみ「はぁ…立ちますね」

せつ菜「立ちます、私の横顔もコインになります」

かすみ「あっコインには…なりますね確実に」

かすみ「んで、先輩の優しさは地中海の塩ですね」

せつ菜「どういう事ですか?」

かすみ「濃い、濃いからー…もういいですー」

「「どうもありがとうございましたーー」」
 
89: (SB-iPhone) 2021/04/29(木) 07:26:25.26 ID:xe2pa9Ny




かすみ「お疲れ様でしたー」

せつ菜「手紙届いてますよ」

かすみ「おぉ!読んでください!」

せつ菜「どれどれ……『設定が分かりづらい、テンポも悪いし、ボケ数も少ない……』」

かすみ「はぅ……」
 
90: (SB-iPhone) 2021/04/29(木) 07:26:41.18 ID:xe2pa9Ny
せつ菜「こっちは……『かすかすめっちゃ可愛い♪かすかすの事一生応援してます!』」

かすみ「ふぇ!?見してください!」

せつ菜「職業歯科助手……あっ電話番号まで載ってます」

かすみ「ちょっと控えさせてください」メモメモ

せつ菜「ダメです」バッ

せつ菜「ファンに手出したら終わりですよ!」

かすみ「冗談ですーー」

せつ菜「もう、あはは」

かすみ「あはははw」
 
91: (SB-iPhone) 2021/04/29(木) 07:39:53.28 ID:xe2pa9Ny
マネージャー「お疲れー」ガチャッ

せつ菜「お疲れ様です!!」

かすみ「お疲れ様です」

マネージャー「良かったよ」

せつ菜「本当ですか!?」

マネージャー「うん、中須のやる気のないツッコミ、うちは好きだなぁ」

かすみ「ありがとうございます!!」

マネージャー「ところでさ、これ受けてみる?」ペラッ

かすみ「え……?これなんですか?」

マネージャー「年末の深夜。まだTV出た事ない若手を10組集めて1組1分でネタやらせるんだって」


せつ菜「え……?TVですか!?」

マネージャー「君らも来年で6年目だし、結果残して貰わないとね」

かすみ「ありがとうございます!!!!」ペコッ

せつ菜「ありがとうございます!!!!」

かすみ「先輩!!!」

せつ菜「かすみさん!!!」ギュッ

せつかす「~~~~!!!」

マネージャー「喜ぶのはオーディション受かってからにしてよね」
 
92: (SB-iPhone) 2021/04/29(木) 08:03:47.81 ID:xe2pa9Ny




かすみ「…………」ウキウキ

かすみ「…………」ガチャッ

果林「おかえり~」

かすみ「もう、来てたんですか」

果林「ふふっ」

かすみ「ここは溜まり場じゃないですよ」

果林「あらいいじゃないの、それより機嫌いいわね」

かすみ「TVのオーディション受けさせて貰える事になったんですよ!!」

果林「本当!?凄いじゃない!」

かすみ「まだ受かってもないですが」

果林「ううん!おめでたい事よ!」

果林「…………それよりかすみちゃん、ちょっと姿勢悪いんじゃない?」

かすみ「へ?」
 
94: (SB-iPhone) 2021/04/29(木) 08:22:05.14 ID:xe2pa9Ny
果林「ちょっと、そこから歩いてきて頂戴」

かすみ「……こうですか?」スタスタ

果林「あら…背中曲がってるわよ」ググッ

かすみ「ひ、ひぃぃ」

果林「立って」

かすみ「こうですか?」

果林「ダメ、曲がってる」ググッ

かすみ「うぅぅ…これ以上は腰痛いですよぅ」

果林「若いのに何言ってるんだか」

かすみ「ひえぇ…」

果林「TVとなると見た目も大事でしょ?」

果林「ところで二人は衣装なんかはどうしてるの?」

かすみ「衣装……ですか…考えた事なかったです」

果林「うふふふふ♡」

かすみ「……?」
 
100: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 07:19:20.07 ID:tpqqMDXr
ー伊勢丹

果林「いくわよー!」

かすみ「もう…果林先輩ったら強引なんですから」

せつ菜「衣装……ですか?」

果林「そっ、お揃いの衣装着た方がいいでしょ?」

かすみ「でも……かすみん達見た目で売れようなんて思ってませんから」

せつ菜「あははwやっぱりまだトガってますね」

果林「キミ達だって人前に立つお仕事してるんだもの、TVのオーディションともなると尚更」

果林「別にオシャレしろって言ってるんじゃないの、二人がどういう人間か、それをまず見た目で伝えてあげた方が内容も入って来やすいわよ?」

かすみ「うぅー…」
 
101: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 07:19:42.47 ID:tpqqMDXr
果林「これなんてどうかしら?」

せつ菜「……ちょっと可愛すぎやしませんか?」

果林「うーん……二人はどういうネタしてるの?」

かすみ「それはー…」
 
102: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 07:30:01.13 ID:tpqqMDXr
果林「なるほどね、二人の芸風なら思い切って黒ずくめとかどうかしら?」

せつ菜「く、黒ずくめ……」

果林「ファッションに関するネタも多いみたいだし、ヨウジとかどうかしら…」

せつ菜「ヨヨヨヨウジですか!?」

かすみ「高すぎますって!」

果林「これとかいいんじゃない?特にかすみちゃんの雰囲気にぴったり……」

かすみ「無理無理無理ですぅ!」

せつ菜「…………」ボー

果林「まぁ最終的に決めるのは二人だけど」

せつ菜「買いましょう、かすみさん」

かすみ「え!?」

せつ菜「かすみさんもちょうどバイト代入ったとこでしょ?」

かすみ「で、でもですねぇ……」

せつ菜「暫くは極貧生活ですが……」

果林「あら、これを機に二人ももやし生活始めてみる?」

せつ菜「望むところです!」

かすみ「わ、分かりましたよぉ!買います買ってやります!」
 
103: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 07:50:07.53 ID:tpqqMDXr




せつ菜「こんなに高いお買い物したの初めてです!」ペカー

かすみ「笑ってる場合じゃないですよ……タイも靴も買うお金残してないなんて……」

果林「タイくらいなら作ってあげましょうか?」

かすみ「ほ、ほんとですか!?」

果林「えぇ、一応専門学校で学んだもの」

せつ菜「ありがとうございます!!」

かすみ「ありがとうございますぅ!」

かすみ「靴はー……」

せつ菜「おっ、あそことかどうですか」

かすみ「閉店セール全品500円……って本気ですか?」

果林「ヨウジのセットアップに500円の靴……逆になんか凄そうね……」

せつ菜「話のネタになるじゃないですか」

かすみ「500円の靴が…?」

せつ菜「はい!セットアップに全財産使って、靴買うお金がなかったって!あ、いっその事、靴だけ別の色にしますか?」
 
果林「そうね……逆にありなんじゃない?うわっこれとか酷い色……」

せつ菜「あっははwどうやって染めたんですかこれ」

かすみ「目痛くなるくらいの赤と黄色ですね……」

せつ菜「これにしましょう!!」
 
104: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 07:59:03.09 ID:tpqqMDXr




せつ菜「果林さん!今日は本当にありがとうございました!」

果林「構わないわよ、タイはオーディションまでに必ず作っておくから」

かすみ「ありがとうございます!」ペコッ

果林「二人はこれからネタ合わせ?」

かすみ「はい!」

果林「そう、じゃあお先に失礼するわね」

せつ菜「また今度!」

果林「えぇ、それじゃ」

せつかす「ありがとうございました!!」
 
105: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 08:06:45.93 ID:tpqqMDXr
果林先輩の尽力もあって、私達ははじめてお揃いの衣装を手に入れました。

ヨウジヤマモトのセットアップ、上下12万……ぐぬぬ……

これでもお店で一番安いのを選んだんですよ?

作って貰っておいてなんですが、果林先輩がフェルト切りっぱなしのなんちゃって蝶タイを持ってきた時は、流石にビビりました。

オーディション、受かってるといいなぁ……。
 
106: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 08:20:14.66 ID:tpqqMDXr
ーかすみ宅

かすみ「…………」グヌヌ

せつ菜「…………」ドキドキ

果林「ちょ、ちょっとこっちまで緊張しちゃうじゃない」

かすみ「うぅぅー…………」

せつ菜「おねがいしますおねがいしますおねがいします……」ブツブツ

かすみ「…………」

せつ菜「…………」

せつ菜「収録は明日です……今日電話が来なかったら……」

かすみ「はぁー……もう無理じゃないですかぁ……」

せつ菜「そんな事ありません!!」

果林「…………」




プルルルルルルルル


せつ菜「!?!?……だい!マネージャー!?」ガチャッ

かすみ「だいって……」

せつ菜「は、はい…すみません///」
 
107: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 08:22:43.18 ID:tpqqMDXr
せつ菜「ほんとですか!?!?」

かすみ「えっ」

せつ菜「はい!はい!明日!!勿論!!」

かすみ「えっ……」ポロ…ポロ…

果林「うそっ、やったの!?」


せつ菜「ありがとうございました!!」ガチャッ

せつ菜「かすみさん!!!」

かすみ「せ、せつ菜先輩!!!」ポロ…ポロ…

せつ菜「明日12時からスーパーの営業貰いました!!」

かすみ「おい!!!嘘って言え!!」

せつ菜「嘘です!!年末のネタ番組受かりました!!」

かすみ「~~~~~!!!」

かすみ「せんぱぁぁぁい!!!」ダキッ

せつ菜「かすみさん!!!」ギュゥゥ

果林「やだっ……二人ったら……こっちまで」ポロポロ

かすみ「果林先輩も!!」ギュゥ

果林「ちょ、ちょっと…!」

せつ菜「三人で掴み取った勝利ですよ!!」ギュゥ

果林「や、やだ……苦しい……苦しいったらぁ…」

かすみ「あははは」

せつ菜「あっはははw」

果林「……ふふっ」
 
109: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 09:17:43.57 ID:tpqqMDXr
せつ菜「かすみさん!!早速打ち合わせしましょう!やるネタは……」

かすみ「勿論です!」

せつ菜「うぅー…!収録は明日ですよねぇ……どうしましょうか……!」アタフタ

かすみ「もう今日は泊まっていってください」

せつ菜「助かります!!」

果林「あら、また背中曲がってるわよ」ググッ

かすみ「うぅー…」

果林「二人が完璧な立ち姿勢を身につけるまで、私も帰らないから」

かすみ「ひ、ひぃぃいっ」

果林「うふふ」
 
110: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 09:24:54.92 ID:tpqqMDXr




せつ菜「はぁ…はぁ……結局朝までネタ合わせと姿勢改善の訓練に付き合っていただきましたね……」

かすみ「あ”ーーー、モンスター5本飲んだんで大丈夫です」

果林「ふぁぁ……私もこれからバイトだったわ……」

せつ菜「果林さん、何から何までありがとうございました!!」

果林「ううん、お安い御用よ……私も久々に馬鹿やって楽しかったわ」

かすみ「ほんっとうにありがとうございました!」

果林「それじゃあ一緒に家を出ましょうか」ガチャッ



果林「収録遅れちゃダメよ」

かすみ「果林先輩もバイト遅れないように!」

果林「ふふ、分かってるわよ」

果林「それじゃ、私はこっちだから」

せつかす「ありがとうございました!!」
 
111: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 09:41:08.00 ID:tpqqMDXr
ーーーーーーーーーーーーー


司会「さぁー続いていきましょう、無敵級*ポテトフライ!」


司会「紹介文、『うおおおおおおお!!!!皆んなーー!!!会いたかったよーー!!!』…………すっごい元気w繋いでみましょうか、無敵級*ポテトフライー」


せつ菜「…………」

かすみ「こんちは」


司会「テキットーやなぁーw紹介文の元気どこ行ってんw」

せつ菜「…………」ゴソゴソ

司会「おっ、なんか書いてくれてる」

せつ菜「…………」パッ

司会「『うおおおおおお!!!!』ってええわぁ!それじゃあ早速ネタやっていただきましょう!無敵級*ポテトフライですー!」
 
112: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 09:44:18.03 ID:tpqqMDXr
かすみ「どうもーーー

せつ菜「ういっすー!」

かすみ「ういっすー!って言うなー無敵級*ポテトフライですお願いしますー」

せつ菜「こないだ、大都会を歩いていたんです」

かすみ「大都会を歩いてたんですか」

せつ菜「大都会は今、大変ですよ」

かすみ「どうなってたんですか?」

せつ菜「子供みんな迷子なんです」

かすみ「そ、そんな事はないんじゃないですか?」

せつ菜「みんな迷子です」

かすみ「そうなんですか……?」

せつ菜「あれは…歳の頃五歳ほどの、ナポリタンの柄の服を着た女の子が一人で泣いていたんです」

かすみ「どうしたんですかね……んで服の柄もどうしたんですかね」

せつ菜「『どうしたんだい?お嬢ちゃん?迷子かい?』って聞いたんです」

せつ菜「そしたら違うと」

かすみ「ほう…」

せつ菜「じゃあどうして泣いてるの?と聞いたら……」

かすみ「はい」

せつ菜「『昨日三食ご飯を食べたというのに、今日も三食食べないといけないなんてー』って泣いてたんです」

かすみ「食べたらいいじゃないですか!一日三食食べられる事がどれほど幸せな事か…」

せつ菜「はい、勿論言ってあげたんです。『とても幸せな事だよ』って」

せつ菜「そしたら『それは分かっている』なんて言うんです」

かすみ「じゃあ何故泣くのか…」

せつ菜「『分かってはいるけど、ただちょっと虚しくもあるのさ』って言ってました」

かすみ「……それ歳の頃五歳ほどのお嬢さんが言ってたんですか」

せつ菜「そうなんです」

かすみ「まぁ子供は時として、哲学の言葉を口にしますからね……」

せつ菜「そうでしょ」

かすみ「ですです」

せつ菜「それを聞いて『あっ、この子はもう大丈夫だ』と思ったんです」

かすみ「確実に大丈夫です」

せつ菜「で、踵を返して歩いていたら、歳の頃七歳ほどのボンゴレロッソの柄の服を着た坊ちゃんが泣いていたんです」

かすみ「えっ子供の間で今スパゲッティの柄流行ってる……?」

せつ菜「ちょっと分かりません」

かすみ「そうですか」

せつ菜「『どうしたんだい?坊っちゃん?迷子かい?』って聞いたんです」

せつ菜「そしたら違うと」

かすみ「ほう…」

せつ菜「『じゃあどうして泣いてるんだい?』って聞いたら……」

かすみ「はい」

せつ菜「『ワイの中に鬼がおるのや』って言って泣いてたんです」

かすみ「ゔぇっ!?」

せつ菜「『ワイの中に鬼がおるのやけども、鬼を追い払いたいのやけども、鬼がおってのワイやさかいに、鬼を追い払うわけにはいかへんのや、でも鬼がおるのがかなんのや』って言って泣いてたんです」

かすみ「その男の子は……めっちゃ関西弁です、関西弁なんでもういいですー」

「ありがとうございました」
 
113: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 09:57:10.00 ID:tpqqMDXr




司会「ふっwテキトーーやなぁーw」

女優「えっ…何が起きたんですか?w」

俳優「僕あれ好きです、ツッコミの方の、関西弁なんでもういいですってw」

司会「理由になってへんからね……w関西嫌いなの?w」

かすみ「大好きです」

司会「わからんわからんw」

司会「なんと!ボケの中川の方はNSC25期を主席で卒業と!」

女優「おぉ!」

司会「あれ?中須の方はNSC出てへんねや」

せつ菜「私がクビにしました」

司会「待って待って待ってwどういうこと?w」
 
117: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 12:21:49.71 ID:tpqqMDXr




共演者「お、お疲れ様でしたー……」

せつ菜「お疲れ様でした!!」

かすみ「お疲れ様でしたー」

共演者「えっ…あ、お二人ってもっと話しづらい感じかと思ってました!」

せつ菜「あ、あはは……この格好なら無理もありませんね」

共演者「この後皆んなで打ち上げなんですけど、無敵級フライドポテトさんも良かったらどうですか!?」

かすみ「無敵級*ポ・テ・ト・フ・ラ・イ!!」

共演者「あっ……失礼しました……」

せつ菜「構いませんよ!」

かすみ「かすみんも是非!」


共演者「良かった!フライドポテトさんも来てくれるって!」

かすみ「このぉ……!」

せつ菜「か、かすみさん…!」
 
118: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 12:35:38.22 ID:tpqqMDXr
ー居酒屋


ワイワイガヤガヤ

せつ菜「お疲れ様でしたーー!!」

「すいません!フライドポテトひとつ!……ううん、フ・ラ・イ・ドポテト」

かすみ「いじんな!」

「あっははは」



せつ菜「いいですかぁー…笑いというのはぁー……」グデェ

かすみ「また潰れちゃって……」

せつ菜「皆んなーー!!会いたかったよーー!!!」ボロンッ

かすみ「ひぃぃっ!ち   出さないでください!!」

せつ菜「せつ菜⭐︎スカーレットストーム!!」コロコロコロ


共演者「よっ!」ゲシッ


せつ菜「はうっ…………!」

せつ菜「な、なんで蹴るんですかぁぁあ……」

共演者「そこにち   があったからです」

かすみ「先輩のち   は山じゃないです!!」



ドッ!!


「あっはっはっは!」
 
122: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 15:03:04.13 ID:tpqqMDXr
ーかすみ宅



果林「はぁ……今年ももうおしまいねぇ……」

せつ菜「果林さん、本年はたいっへんお世話になりました!!」ペコッ

かすみ「来年も宜しくお願いいたします!」ペコッ

果林「……ふふっ、何よ改まって」

せつ菜「お蕎麦作ったんです!お二人も食べますか?」

果林「え、遠慮しておくわ」

かすみ「か、かすみんも遠慮しておきます」

せつ菜「美味しいのに」ズルズル

果林「二人とも、そろそろ始まるわよ」


せつ菜「あっそうでした」ピッ


カチッ カチッ カチッ

ゴーン!!


かすみ「あけましておめでとうございます!」

果林「おめでとう」

せつ菜「おめでとうございます!年越しと同時に私達の姿がTVで見られるなんて、最高です!!」



“若手芸人発掘アパート、おもしろ荘”

“今年も名もなき若手芸人達の熱きネタバトル!”


かすみ「はわぁーっ!」ウキウキ

せつ菜「あ、このコンビのツッコミの方です!私のち   蹴ったの!」

果林「…………ふふっ」
 
124: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 15:22:14.25 ID:tpqqMDXr
“……関西弁なんでもういいですー”


果林「ふふっ」

せつ菜「あ、かすみさん少し噛んでますね」

かすみ「うぐ…すみません」


“ありがとうございました”


果林「ふふっ、何よこの終わり方……面白いわぁ……」

せつ菜「本当ですか!?」

かすみ「えへへぇ、もっと褒めてくれていいんですよ♪」

果林「面白い……二人とも本当に面白い……」

せつ菜「ありがとうございます!!」

果林「本当に………っ」ポロ…ポロ…
 
125: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 15:24:33.93 ID:tpqqMDXr
かすみ「か、果林先輩?」

せつ菜「え……?泣くほどですか?」

果林「…………ごめん…ごめんなさい……やだっ……私ったらなんで……」

かすみ「だ、大丈夫ですか……?」

果林「………大丈夫、大丈夫だから……ちょっと……っほんとに困ったわね……」

せつ菜「果林さん……?」

果林「……すぅーー、ごめんなさいね……二人の晴れ舞台だっていうのに」

かすみ「……どうしたんですか?」

果林「……私ったら本当ダメね……今日みたいにおめでたい日は笑顔で過ごしたかったんだけど……」

せつ菜「…………どういう事ですか?」
 
126: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 15:51:22.89 ID:tpqqMDXr
果林「………はぁー……やっと落ち着いたわ」

かすみ「涙のワケを教えてください」


果林「…………私ね、モデル辞めて田舎に帰ろうと思うの」

かすみ「え……?」

せつ菜「どうしてですか!?果林さんスタイルもいいし…センスだって!!」

果林「ううん、そんな事言ってくれるのは自分達だけ……」

果林「私も今年で27でしょ……?去年の間に結果残せなかったら、いい加減見切りつけるって決めてたの……」

かすみ「そんな…嫌です!」

果林「前にも言ったけど、今だって高校の頃表紙飾ってた雑誌によしみで出さして貰ってるだけ……これ以上は迷惑よ」

せつ菜「果林さん……」

果林「……この話はおしまい!湿っぽくしちゃってごめんなさいね」

果林「明日は三人で初詣にでもいきましょうか」
 
127: (SB-iPhone) 2021/04/30(金) 16:10:41.78 ID:tpqqMDXr
この街で聞く六度目の鐘の音は、いやに重たく、ずしりと腹の底に留まり続けました。


高校時代から誰よりも気丈で、私達の憧れの的だった果林先輩の背中は、その時やけに小さく見えました。


東京という街の地面は、夢破れた者の屍で出来ていると、そんな話を聞いた事があります。私たち残された者は、その屍を踏み抜きながら、この街で戦っていくんだと思います。


その年のおみくじは、大吉でした。
 
134: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 10:23:30.96 ID:3Xy7XZfh
五月

一方の私達はというと、年の瀬のTV出演の影響もあって、業界内で徐々に顔を覚えてもらえるようになりました。

まだゴールデンは1本も取れていませんが、深夜とAbemaの収録が週に3回ほど。

ラジオに関しては冠番組を持たせてもらえるまでに至ったんですよ?

今思えば、この時期がコンビとしては最盛期でした。
 
135: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 10:24:37.12 ID:3Xy7XZfh
せつ菜「無敵級*ポテトフライのアゲタテでした」

かすみ「会いましょう、また来週、必ず」





かすみ「お疲れ様でしたー」

せつ菜「お疲れ様でした」

マネージャー「おつかれー、この調子でゴールデンのレギュラーも取ってよね」

かすみ「取ります、絶対!」

マネージャー「良い心意気で」
 
136: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 10:25:18.29 ID:3Xy7XZfh
マネージャー「君らもちょくちょく話題になってきた事だし、はいこれ!」ドサッ

せつ菜「え……?これって……」

マネージャー「た・ん・ど・く」

かすみ「単独!?」

せつ菜「た、た、単独ライブですか!?」

マネージャー「君ら、今やうちの事務所のイチオシ芸人だからね。構成作家さんにプッシュして、なんとかハコ借りたんだよ」

せつ菜「ありがとうございます!!」

かすみ「ありがとうございますぅ!」
 
137: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 10:26:09.68 ID:3Xy7XZfh
マネージャー「顔の利く作家さんだから、単独で結果残せば、ゴールデンも考えたげるって」ニヤニヤ

かすみ「ゔぇ!?」

せつ菜「本当ですか!?」

マネージャー「頑張って」

かすみ「絶対天下取ります!」

せつ菜「ありがとうございました!!」


後輩「あ、お疲れ様です」ガチャッ

せつ菜「お疲れ様です」

マネージャー「あ!二人もちょっと来て!はいこれ次の単独!」

マネージャー「君らはうちのイチオシ芸人だから~……」


かすみ「あっ」

せつ菜「彼らのチラシはカラーなんですね……」

かすみ「かすみん達白黒……」
 
138: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 10:46:02.01 ID:3Xy7XZfh
ー喫茶店

せつ菜「ちょっと凹みますね」

かすみ「いいじゃないですかー…」

かすみ「七人の侍も、ゴダールの勝手にしやがれも、かっこいいのは皆モノクロです」

せつ菜「遺影も白黒ですしね!」

かすみ「最近の遺影はカラーです」

せつ菜「はぁー」

かすみ「次は絶対カラーにしてやりましょう」
 
140: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 11:06:00.85 ID:3Xy7XZfh




せつ菜「ねぎ塩カルビコッペパンと、ジャージー牛乳コッペパン」

かすみ「…………」ゴソゴソ

せつ菜「いいですいいです、隙あらば小銭出そうとしないでください」

かすみ「でも」

せつ菜「芸人の世界では先輩が後輩に奢るのが当然ですよ」

かすみ「ありがとうございます、でもそうやって他の後輩にもお金使いすぎてんじゃないですか…」

せつ菜「慕ってくれる方がいるのは幸せな事です」

かすみ「確かに仕事は増えてきてますけど、あんま散々しちゃダメですよー」

せつ菜「勿論です!」

せつ菜「そこのベンチで食べましょうか」
 
141: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 11:07:09.66 ID:3Xy7XZfh
>>140
散々→散財
 
142: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 11:11:15.96 ID:3Xy7XZfh
かすみ「ねぎ塩カルビひと口ください」

せつ菜「どうぞ!ジャージー牛乳もひと口食べていいですか?」


かすみ「ふぁー……」ポチポチ

かすみ「……え!?しず子、連ドラの主演決定だって!!」

せつ菜「しずくさんが!?」

かすみ「随分遠いとこに行っちゃいましたねぇー……」

せつ菜「負けていられませんね、私達も単独を成功させれば晴れてゴールデンでレギュラー……!」

かすみ「あっ、ゴミ捨ててきますよ」

せつ菜「ありがとうございます」
 
143: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 11:12:10.42 ID:3Xy7XZfh
“おんぎゃあ!おんぎゃあぁ!”


せつ菜「…………」チラッ


“おんぎゃあ!びええええ!”


せつ菜「…………」ジー


“びええええ!!”


母「あっ、すみません!ほらほら……」

せつ菜「いえいえ!可愛いですね!」
 
144: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 11:12:42.10 ID:3Xy7XZfh
せつ菜「尼さんの、右目に止まる、蠅二匹」

母「は、はい……?」

せつ菜「凡人の、墓石に止まる、蠅二匹」

“びええぇぇぇ!!ぎゃぁぁぁあ!!”


かすみ「ちょっ!せつ菜先輩何やってんですか!」
 
145: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 11:13:20.22 ID:3Xy7XZfh
かすみ「すみません……」

母「あ、あはは……」

せつ菜「おかしいですねぇ……」

かすみ「泣き止むワケないじゃないですか……なんですかそれ…」

せつ菜「昨日考えた蠅川柳です」

せつ菜「蠅どもの、対極にいる、パリジェンヌ」


“びやぁぁぁああ!!あ”あ”あぁぁ!”


せつ菜「何故なんでしょうか……」

母「ちょ、ちょっと…!」
 
146: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 11:14:35.16 ID:3Xy7XZfh
かすみ「すみませんすみません…ほら、せつ菜先輩…!蠅川柳では赤ちゃん笑わないですって」

せつ菜「どうしたら笑うんでしょうか……」

かすみ「もっとこう……ベロベローみたいな……」

せつ菜「なんですかそれは、例え赤子でも本気で挑まなければなりませんよ」

かすみ「通じませんって…」

せつ菜「じゃあかすみさんやってみてください…」

かすみ「え…うぅー……べろべろばぁ♪」


“ぎゃぁぁぁぁぁあああああ!!!”


母「い、いい加減にしてください……!」
 
148: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 12:53:07.18 ID:3Xy7XZfh




かすみ「怒られちゃったじゃないですかぁ……」

せつ菜「怒られるくらいがちょうどいいのかもしれませんね」

かすみ「何ですかそれ…」

せつ菜「ここいらでネタ合わせして、今日はお開きにしましょうか」

かすみ「はい」

せつ菜「単独となると尺の自由度は高めだと思うので、10分ネタ中心に組んでみました」

かすみ「おぉ!ありがとうございます!」

せつ菜「入りからお願いします」
 
149: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 13:18:18.33 ID:3Xy7XZfh




かすみ「あ”ーーーすみません噛んじゃいました」

せつ菜「本番までに直してくれれば大丈夫ですよ」

かすみ「その作家さんも見に来るんですかね……」

せつ菜「当然です」

かすみ「あ”ーー緊張してきた」

せつ菜「あまり根詰めても良くないですよ」

かすみ「なんたってゴールデンが掛かってますから……」

せつ菜「今日はもうお開きにしましょうか、自宅で発声練習しておいてください」

かすみ「はい……」

せつ菜「では」スタスタ

かすみ「あれ…?せつ菜先輩こっちじゃないんですか?」

せつ菜「ん?あぁ…他の事務所の後輩がTVに出たので、お祝いに飲みに行くんです」

かすみ「あんまお金使いすぎないでくださいね」

せつ菜「分かっています」

かすみ「忙しくなってきたとはいえ、総所得に関してはバイトしてた時よりマイナスなんですから……」

せつ菜「大丈夫です、では!」
 
150: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 13:38:30.27 ID:3Xy7XZfh
ー居酒屋

ワイワイガヤガヤ

せつ菜「若手の若手の登・竜・門!!」

「あははは!」バシッ!

せつ菜「………っぅ!」

せつ菜「最近の子はパワーが有り余ってますね……」

「おい!お前次何飲む!?」

せつ菜「遠慮せず言ってくださいね」

「あざっす!!」

「自分、このでっかい舟盛り頼んでもいいですか!?」

せつ菜「勿論!芸人の世界では先輩が後輩に奢るのが当然ですから」

「うおお!中川さんかっけぇっす!」
 
151: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 13:53:43.38 ID:3Xy7XZfh
せつ菜「次行きますよぉーー……」フラフラ

「中川さん飲み過ぎですってwww」

せつ菜「このぉ」ガシッ

「ちょ!いたいいたい!」

せつ菜「遠慮してるんでしょ!?本当はああいうお店が大好きなんでしょ!?」

「えぇー…………まぁ好きですけど」

せつ菜「行きますよ!!!」

「まじっすか!!」

せつ菜「……んあぁー……ちょっと待っててください」ゴソゴソ

「ほんとに大丈夫ですか?」

せつ菜「なんの……なんの」フラフラ
 
152: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 14:01:53.97 ID:3Xy7XZfh
ーアコム無人機

せつ菜「お”ぉーー……」フラフラ

ピッ ピッ ガチャッ

せつ菜「……ふふふ」





せつ菜「お待たせしましたぁ!」

せつ菜「早速行きましょう!!」

「中川さん無理してないすか…?」

せつ菜「このっ!いつから先輩にそんな口を聞くようになったんですかぁー」グググ

「あははっwいたいたい!ちょ!」

せつ菜「ぐへへへへへ」
 
154: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 22:43:03.89 ID:3Xy7XZfh
「どうもーーー」

かすみ「わぁーありがとうございます!」

せつ菜「劇場ってこんなに人入れるものなんですね」

かすみ「ほんっとにありがとうございます」

せつ菜「ありがたいです」

かすみ「初単独です」

せつ菜「単独ライブのタイトルって凄い大事なんですよ?」

かすみ「そうです」

せつ菜「多分皆さんも困ると思いますよ、タイトル決める時」

かすみ「やりませんって…そんなポンポンポンポン、身内に単独ライブ開く人いますか…?」




 
155: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 22:43:30.84 ID:3Xy7XZfh
せつ菜「もしも、タイムマシンが出来たらどこに行き、何をしたい?」

せつ菜「私はね、どこにも行きたくないし、何もしたくない」

せつ菜「どうか、タイムマシンが発明されませんように」

かすみ「…………今のが小説の出だしなら、玄人をグッと引きつけてましたよ」

せつ菜「いけそうですか?」

かすみ「いけそういけそう」

せつ菜「まぁそんなポエティックな事を言ってみたんですけれど、実は私タイムトラベルを2回した事があるんですよ」

かすみ「あっ…タイムトラベルを2回した事があるんですか」

せつ菜「そうなんです」

かすみ「いいじゃん」

せつ菜「でしょ」

かすみ「どっちでした?」

せつ菜「どっち……あ、未来も過去も両方行った事がありますが…まぁでも別にって感じでした」

せつ菜「未来なら、3年後に行った事があります」

かすみ「3年後…近いですね…どんな感じでした」

せつ菜「3年後、ゴミの分別のパターンが増えてました」

かすみ「え!?細かくなるんですか……」

せつ菜「そうなんです……」

せつ菜「燃えるゴミ、燃えないゴミ、缶、ペットボトル……で次、貝」

かすみ「貝……?縄文時代のように、貝塚が復活してた?」

せつ菜「そうです……何故貝を集めているかというと、国民一人一人持たされるんですよ、貝を」

かすみ「なんでですか?」

せつ菜「貝の柄って、一つとして同じ物がないんですよ、この柄で一人ずつ識別して…まぁマイナンバーみたいなものです」

かすみ「えっマイナンバー、並びに貝持っとかなきゃダメなんですか?」

せつ菜「そうなんです……だから病院とか行っても”保険証or貝”って書いてるんです」

かすみ「あっ貝出してもいけるんですか」

せつ菜「そうなんです……選べるんです」

かすみ「えぇー…やですね…なんでそんな事になっちゃったんですか?」

せつ菜「もう機械とかが信用出来なくなったみたいです」

かすみ「3年後!?」

せつ菜「パソコンとか機械とかってすぐ故障するじゃないですか…だから”パソコンってモロない?皆貝持っとこうぜ”って事になって……」

かすみ「えぇ!?」

せつ菜「それで皆で貝持ってるんです」

かすみ「文明って脆いんですね……」

せつ菜「3年後の未来はそんな感じでした」

かすみ「そっかぁ……」

せつ菜「そんなもんです、タイムトラベルなんて」
 
156: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 22:45:04.54 ID:3Xy7XZfh
せつ菜「過去の方は……あれは50年ほど前でした」

かすみ「割と最近ですね」

せつ菜「そうなんです…50年前の舞鶴でした」

かすみ「舞鶴……!京都の北の?」

せつ菜「はい、舞鶴、歩いてたら畑だらけでした」

かすみ「ほう……」

せつ菜「そこはキャベツ畑で、キャベツいっぱいありますね…なんて思って歩いていたら」

かすみ「はい」

せつ菜「遠くの方からカタンカタンという音が…」

かすみ「はい」

せつ菜「その音の方を見てみたら、ガイコツがキャベツの上を全力で走ってました」

かすみ「…50年前の舞鶴、ガイコツいるんですか?」

せつ菜「そう…完璧なフォームで…MIZUNOのCMくらい完璧なフォームでした」

かすみ「ガイコツが……?」

せつ菜「そうなんです…キャベツを2個飛ばしで走ってました」

かすみ「結構運動神経いいんですね」

せつ菜「走ってたんですけど、急にツルテンと転けて、パラパラパラ……と全て土になってしまいました」

かすみ「え…?え…なんでそんな脆い癖に調子乗って2個飛ばしなんてするんですか?」

せつ菜「私もそう思います…少しワンパクだったんでしょう」

かすみ「ワンパクガイコツだったんですか」

せつ菜「でも、ちゃんと土に還ったんですよ?」

かすみ「はい」

せつ菜「さっき、キャベツを2個飛ばしで走っていたって言ったでしょ?」

かすみ「はい」

せつ菜「ガイコツの触れていた部分だけ、全部レタスになったんです」

かすみ「ゔぇ!?」

せつ菜「……これがレタスの起源なんです」

かすみ「違います、なんでそんな嘘つくんですか?」

せつ菜「起源なんです」

かすみ「違います違います」

せつ菜「キャベツとレタスは兄弟ですから」

かすみ「違うますもん、先輩知ってますか?」

せつ菜「はい?」

かすみ「レタスっていうのは、宇宙が地球にプレゼントしてくれた瑞々しい緑の手紙なんです」

せつ菜「そうなんですか?」

かすみ「瑞々しい緑の手紙なんで…もういいですー」

「ありがとうございました」
 
158: (SB-iPhone) 2021/05/01(土) 23:43:01.24 ID:3Xy7XZfh




かすみ「お疲れ様でした」

せつ菜「お疲れ様でした」

マネージャー「二人ともお疲れ、こちらお話していた作家さん」


作家「はじめまして」


かすみ「あ!お疲れ様でした!」ペコッ

せつ菜「お疲れ様でした!!見に来ていただいてありがとうございました!!」ペコッ

作家「緑の手紙なんでもういいですー!」

かすみ「わぁ!やってくれてる!」

作家「わははは」

せつ菜「ありがとうございます!」

作家「俺は好きだなぁ…かすみちゃんのやる気のない感じ」

かすみ「ほんとですか!?ありがとうございます!」

作家「お客さんの入りも良かったし、ゴールデンにも出してあげたいんだけど……」

せつ菜「……お願いします!」ペコッ

作家「……1回、かすみちゃんがネタ書いてみるか」

かすみ「……え?」

作家「はは…二人のテンションは好きなんだけど……ゴールデンとなると、菜々ちゃんの書く設定って人選ぶだろ…?」

せつ菜「……分かりました」

作家「それに、かすみちゃんの方は女優のしずくちゃんと一緒に住んでたんだろ?」

かすみ「え……?」

作家「聞いてるよ、大人気女優と名もなき若手芸人の熱き友情、ゴールデンに出すならこれでプッシュして行きたいんだよねぇ」

かすみ「でも…しず子とは…」

作家「ははっ、それも聞いてるよ、相手もプロなんだからその辺は上手くやってくれるさ」

かすみ「…………」

せつ菜「…………分かりました」

せつ菜「次は中須がネタを書きます……どうかよろしくお願いします」ペコッ

作家「話が早くて助かるよ、それじゃまた連絡するから!」

せつ菜「ありがとうございました!」

かすみ「……あ、ありがとうございました」
 
159: (SB-iPhone) 2021/05/02(日) 06:11:13.75 ID:SEYAWCVD




かすみ「なんかすいません」テクテク

せつ菜「あんまり気負わないでください」

かすみ「しず子、私の事話してくれてたんですね……」

せつ菜「何暗い顔してるんですか!ゴールデンですよ!!」

かすみ「…………」


ピーポーピーポー ピーポーピーポー


せつ菜「あっほら!救急車ですよ!かすみさんを迎えに来たんじゃありませんか!?」

かすみ「えぇ……」

せつ菜「うわっ!駅前のもんじゃ屋さん潰れてますよ!愛さんも苦労したんですね……」

かすみ「別に愛先輩の店じゃないですって」

せつ菜「あっははは」


その日のせつ菜先輩は、普段からは考えられないほどに面白くなかった。
 
163: (SB-iPhone) 2021/05/02(日) 09:22:50.78 ID:SEYAWCVD
せつ菜先輩は生粋のアホであります。


せつ菜「行きますよぉー!せつ菜⭐︎スカーレットストーム!」

「あーあー…グラスひっくり返しちゃって…」

せつ菜「あっはははは!」


日々、ワケの分からない中川節を、何故か人を惹きつける美声で唱え、ほんの少しのバラ銭をいただき、その日暮らしで生きています。
 
164: (SB-iPhone) 2021/05/02(日) 09:23:08.34 ID:SEYAWCVD
せつ菜「ここは私の奢りですから!!」

「あざっす!」

「いよいよフライドポテトさんの時代来ましたね!」


世間すらも問答無用で置き去りにしてしまう、せつ菜先輩は尊い。
 
165: (SB-iPhone) 2021/05/02(日) 09:23:24.25 ID:SEYAWCVD
せつ菜「お”ぉーー…次!次です!」

「中川さんまた借りたんですか……」

せつ菜「後輩が先輩のお財布を心配するもんじゃありません!!」


私はせつ菜先輩になりたかったのかもしれません。しかし、私の資質では到底せつ菜先輩になれる筈もなく。
 
166: (SB-iPhone) 2021/05/02(日) 09:24:18.27 ID:SEYAWCVD
「中川さん今日はありがとうございました!!」

せつ菜「なんの……なんの」フラフラ





せつ菜「お”ぉーー……」ゲロゲロゲロ

せつ菜「あぁー………」フラフラ

せつ菜「…………」ドサッ

せつ菜「ふひ…ふへへへ」
 
167: (SB-iPhone) 2021/05/02(日) 09:28:17.56 ID:SEYAWCVD
プルルルルルルル


かすみ「はい、なんですか」ガチャッ

せつ菜『ふひ……かすみさん』

かすみ「もー…また後輩と飲んでたんですか?」

せつ菜『面白い事思いついたんです』

かすみ「……今次のゴールデンのネタ書いてるんで、後にしてください」

せつ菜『ふみまへん』

かすみ「……切りますよ?」

せつ菜『…………』ゲロゲロゲロ

かすみ「……?もしもし?もしもーし?」


かすみ「切れた……」
 
168: (SB-iPhone) 2021/05/02(日) 10:24:19.46 ID:SEYAWCVD
ースタジオ

司会「今日は大人気女優桜坂しずくさんに来ていただきましたー!!」

しずく「お願いします♪」

司会「しずくちゃん最近ハマってる事があるとか」

しずく「私、お笑いを見るのが大好きで!」

司会「へー!しずくちゃんお笑いなんか見るんや!」

しずく「そうなんです」

司会「どんな芸人さん見るの?」

しずく「最近だと、無敵級*ポテトフライさんとか……」

司会「シブッ!?あんま女優さんの口からその二人の名前聞かへんけどね」

司会「なんでも、無敵級*ポテトフライの二人とは高校の同級生なんやとか……」

しずく「そうなんです!特にツッコミの中須かすみさんとは一緒に住んでたんです!」

司会「へー!じゃあ今度呼んでネタやってみる?」

しずく「ほんとですか!?」
 
169: (SB-iPhone) 2021/05/02(日) 10:31:17.93 ID:SEYAWCVD




しずく「お疲れ様でしたぁ♪」

作家「お疲れ!しずくちゃんバラエティもいけるね」

しずく「ほんとですか!?」

作家「無敵級*ポテトフライ、知り合いの事務所の若手なんだけど、どうしてもゴールデンでも売り出して欲しいって言うもんだから、どんどん絡んであげてよ」

しずく「勿論です♪」

作家「ありがとう!特にしずくちゃんとかすみちゃんとの絡みは映えると思うから!」

しずく「頑張ります!」

作家「頼もしいなぁ、まぁ今日のところはお疲れ」

しずく「ありがとうございました♪」



しずく「…………」
 
180: (たこやき) 2021/05/04(火) 06:15:32.50 ID:pfo+zzjS
ー翌朝


かすみ「あ”ーー……」

かすみ(やっと書けたぁ………)

かすみ(…………zzzz)


プルルルルルルルル


かすみ(…………!)ビクッ

かすみ「はい……なんですか朝早くに」

マネージャー「もしもし中須?前話したゴールデンの件、作家さんが打ち合わせしたいって言ってるからすぐに来て」

かすみ「え…作家さんが!?分かりました!」
 
181: (SB-iPhone) 2021/05/04(火) 06:15:36.24 ID:NtuPsdRz
ー翌朝


かすみ「あ”ーー……」

かすみ(やっと書けたぁ………)

かすみ(…………zzzz)


プルルルルルルルル


かすみ(…………!)ビクッ

かすみ「はい……なんですか朝早くに」

マネージャー「もしもし中須?前話したゴールデンの件、作家さんが打ち合わせしたいって言ってるからすぐに来て」

かすみ「え…作家さんが!?分かりました!」
 
182: (SB-iPhone) 2021/05/04(火) 06:16:13.23 ID:NtuPsdRz




かすみ「はぁ…はぁ…お待たせしました!」

マネージャー「挨拶挨拶…!」

かすみ「あっ…おはようございます!お疲れ様です!」

作家「……お疲れ」

かすみ「……せ、先輩は?」

マネージャー「まだ来てないんだよ……!携帯も繋がらないし…何やってんだよあいつ…!」

かすみ「……え?」

作家「かすみちゃん、ネタは書けた?」

かすみ「は、はい…一応!」

作家「見してもらっていい?」

かすみ「はい…!」
 
183: (SB-iPhone) 2021/05/04(火) 06:19:56.66 ID:NtuPsdRz
作家「…………ふむ」ペラッ

かすみ「ど、どうですかね…」

作家「いいんじゃない?」

かすみ「ほんとですか!?」

作家「うん、これなら設定も分かりやすいし」

作家「あと1個、元気でフレッシュな名乗りとかがあればいいんだけどなぁ……」

かすみ「名乗り…ですか…」

作家「そうだなぁ…”無敵級*ポテトフライ!行ってみよーー!”……これでいこう」

かすみ「そ、そこは相方と相談して…」

作家「かすみちゃんさぁ…来てない奴の心配してる暇ないんじゃない?」

かすみ「…………」

作家「こっちは何人もの若手を世に出して来たんだから、そこは任せといてよ」

かすみ「……分かりました」
 
184: (SB-iPhone) 2021/05/04(火) 06:25:23.86 ID:NtuPsdRz
作家「あと収録にはしずくちゃんも来るから、絡みとか考えといてね」

かすみ「……しず子ですか?」

作家「うん、高校の同級生同士、良い絵期待してるよ」

かすみ「……分かりました」

作家「それじゃ、収録は来週だから菜々ちゃんにも言っておいて」

かすみ「はい…ありがとうございました!」

作家「はいお疲れ」

かすみ「お疲れ様でした!」



かすみ(せつ菜先輩……)プルルルルルル


“おかけになった電話はお客様のご都合によりおつなぎできません”


かすみ「……はぁ?」
 
185: (SB-iPhone) 2021/05/04(火) 06:30:51.66 ID:NtuPsdRz




かすみ「はぁ……はぁ……」

かすみ「…………」ピンポーン


ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン


せつ菜「ふぁぁ……かすみさん?」ガチャッ

かすみ「……先輩!?ふぁぁじゃないですよ!何回も電話したのに!」

せつ菜「ごめんなさい……止められてしまってて……」

かすみ「は!?なんでそんな事になるんですか!?」

せつ菜「ごめんなさい……」

かすみ「それになんですかこの部屋…電気も付けないで……」カチッ

かすみ「え……?」

せつ菜「そ、その……電気も……あはは」

かすみ「は!?もう入りますよ!?」

せつ菜「ちょ、ちょっと…!」
 
187: (SB-iPhone) 2021/05/04(火) 08:58:29.89 ID:NtuPsdRz




せつ菜「作家さんが……それは本当に申し訳ありませんでした……」

かすみ「それもですが、どうして言ってくれなかったんですか……こんなになるまで」

せつ菜「申し訳ありませんでした……」

かすみ「理由を聞いてるんです!」

せつ菜「……相方に心配を掛けたくはなかったので」

かすみ「……心配以上に迷惑掛けてるじゃないですか」

せつ菜「ごめんなさい……」

かすみ「はぁ……」

せつ菜「…………」

かすみ「今一番大事な時期なんですよ…!せつ菜先輩だって分かってますよね!?」

せつ菜「…………」


かすみ「もういいです。少ないですが…これで止められてた分だけでも払ってください…あとスタジオまでのタクシー代」

せつ菜「かすみさん儲かってるんですね」

かすみ「ギャラは一緒のはずです」

せつ菜「自分が情けないです……」

かすみ「反省してください…あとこのネタでOK貰いましたから、収録までに覚えておいてください」ペラッ

せつ菜「かすみさん、これ……」

かすみ「……なんですか」

せつ菜「入りのこの名乗りって必要でしょうか……?」

かすみ「……打ち合わせで決まったんです。来なかった人が口挟まないでください」

せつ菜「……すみません」


かすみ「それじゃ」ガチャッ
 
193: (SB-iPhone) 2021/05/06(木) 05:35:47.73 ID:LOGfONUG
かすみ「どうも!無敵級*ポテトフライです!」

せつ菜「行ってみよーー!!」

せつ菜「はぁー……」

かすみ「はぁーってなんですか!行ってみよーって言った直後じゃないですか」

せつ菜「はっ…!無敵級*ポテトフライです!行ってみよー!」

かすみ「やりましたって!」

せつ菜「やりましたっけ!?」

かすみ「集中してください!大丈夫ですか?」

せつ菜「おかしいですね……病気かもしれません」

かすみ「病気ですか!?大丈夫ですか?」

せつ菜「うぅー…調子悪いです」

かすみ「えぇ!?じゃあ皆さんに症状聞いてもらいましょう」
 
194: (SB-iPhone) 2021/05/06(木) 05:38:05.81 ID:LOGfONUG
せつ菜「うぅ…最近心臓がバクバクするんです……」

かすみ「動機の疑いが……?」

せつ菜「はい……ある特定の女の子の事を考えたら……」

かすみ「……恋じゃないですか」

せつ菜「いや、その子の事を考えた時だけですよ」

かすみ「恋ですよ!その子に恋してるんですって」

せつ菜「いや、突発性拡張型心筋症」

かすみ「なんですか!?聞いた事ない病気!長めの聞いた事ない病気やめてください」

せつ菜「トッパツセイカクチョウガタシンキンショウです」

かすみ「早口言葉みたいになってますから!」

せつ菜「大体こういう時はトッパツセイカクチョウガタシンキンショウです」

かすみ「聞き取れませんって!恋です!恋なら二文字です」

せつ菜「あと、キュンってする時もあります」

かすみ「恋です!胸キュンですよそれ」

せつ菜「いや、突発性拡張型心キュン症」

かすみ「心筋症みたいに言わないでください!」

せつ菜「これは関係ないと思うんですが……」

かすみ「なんですか」

せつ菜「いつもの何気ない景色がキラキラ輝いて見える」

かすみ「恋です!それは確実に恋です!」

せつ菜「気付いたらスキップしてしまう」

かすみ「いや恋です!そんな人絶対恋してます!」

せつ菜「あと最近、グミ美味しい」

かすみ「あっ知りません!それは知りませんって」

せつ菜「グミがキラキラ輝いて見える」

かすみ「酸っぱいパウダーですよそれ!舐めてたら分かります」

せつ菜「酸っぱいパウダー付いてないグミもキラキラ輝いて見える」

かすみ「知りませんって……」

せつ菜「あ、私ってパンクロックしか聞かないじゃないですか?」

かすみ「そうなんですか…?」

せつ菜「今一番ハマってるのが、ドリカムの未来予想図」

かすみ「恋です!未来予想しちゃってるのは恋です!」

せつ菜「Ⅱですよ?」

かすみ「Ⅱが一番いいんですよ!めちゃくちゃいいんですからⅡは!」

せつ菜「あ、私って映画は七人の侍が一番好きじゃないですか?」

かすみ「シブいですね…」

せつ菜「今のナンバー1は、恋空」

かすみ「あっ恋って言った!!恋ですって!」

せつ菜「O型の人とB型の人って相性いいって言うじゃないですか?」

かすみ「あー聞いた事あります」

せつ菜「その子B型で、私O型なんです」

かすみ「はいはい…」

せつ菜「という事は相性は……?」

かすみ「いいんじゃないですか…?」
 
195: (SB-iPhone) 2021/05/06(木) 05:38:43.62 ID:LOGfONUG
せつ菜「イェス!イェス!」タッタッタッ

かすみ「恋じゃないですか!舞い上がってハケちゃって……帰ってきてください」

せつ菜「…………」ルンルン

かすみ「あっ何気ないスキップ出てる!!絶対に恋じゃないですか!」

せつ菜「かすみさん……」

かすみ「なんですか…」

せつ菜「運命って……あるのかな」

かすみ「運命ですか…ありそうですけどね」

せつ菜「私………」

かすみ「はい」

せつ菜「…………恋した」

かすみ「あっ恋したって言った!!最初から言ってくださいよ!先輩の話は終わりが見えないんですよ!」

せつ菜「なんて言いました?」

かすみ「終わりが見えないんです!」

せつ菜「そりゃ見えませんよ」

かすみ「どういう事ですか?」

せつ菜「だって恋は…」

かすみ「ん…?」

せつ菜「盲目って言うじゃないですか……」

かすみ「ヒュ~」

「ありがとうございました」
 
196: (SB-iPhone) 2021/05/06(木) 05:42:20.28 ID:LOGfONUG




しずく「あっははははw」

司会「しずくちゃんハマってるねw」

しずく「大好きなんですw」

司会「さて、そんな無敵級*ポテトフライのお二人ですが、今夜はスタジオにお呼びしております!どうぞ!」

かすみ「こんにちは~」

せつ菜「こんにちは」
 
197: (SB-iPhone) 2021/05/06(木) 05:43:08.77 ID:LOGfONUG
司会「ツッコミの中須はしずくちゃんと一緒に住んでたんやね」

しずく「そうなんです!」

司会「なんと本日は!お二人が住んでいたというお部屋にカメラがお邪魔しております!」

かすみ「え!?聞いてませんよ!?」

しずく「懐かしいです」

かすみ「ちょっと!勝手に写さないでくださいって!」

司会「普段クールな中須が慌てるんはなかなか貴重ですからねw」
 
198: (SB-iPhone) 2021/05/06(木) 05:44:12.01 ID:LOGfONUG
司会「はい…カメラ…何々?ネタ帳……」

しずく「あっネタ帳ならそこの引き出しに」

かすみ「ちょっとしず子!?」

司会「開けてみましょか、おっ出てきた!」

かすみ「ちょっと待ってくださいって!」

司会「何々……”作品名:無題”……うわっ!これは恥ずかしいw」

かすみ「あああああ!?」
 
200: (SB-iPhone) 2021/05/06(木) 09:16:06.95 ID:LOGfONUG



せつ菜「…………」

「…………川は?」

せつ菜「…………」

司会「中川は?」

せつ菜「え、あ!すみません!」

司会「高校時代のしずくちゃんは中川から見てどうやった?」

せつ菜「は、はい!何事にも凄く熱心で」

司会「親かw」

司会「すいません今のカットで」

せつ菜「すみません……」

司会「お次はしずくちゃんと中須の思い出の食べ物があると!」

しずく「そうなんです!」
 
201: (SB-iPhone) 2021/05/06(木) 09:35:37.20 ID:LOGfONUG




かすみ「せつ菜先輩何やってんですか…!」ヒソヒソ

せつ菜「申し訳ありません……」ヒソヒソ

かすみ「一体何考えてたんですか…!」

せつ菜「すみません……しかし、引き出しを開けるのが面白い事なのでしょうか……」

かすみ「仕方ないじゃないですか…!お茶の間ではあれが求められてるんです」


司会「二人ともお疲れ」


せつ菜「お疲れ様でした!」

かすみ「あっお疲れ様でした!来週も宜しくお願いします」

司会「ほんまにかすかすで大丈夫か~?」

かすみ「かすかすじゃなくてかすみんですぅ!」

司会「あっははwそれじゃまた来週」

かすみ「ありがとうございました!」

せつ菜「あ、ありがとございました!」
 
203: (SB-iPhone) 2021/05/06(木) 19:19:34.77 ID:LOGfONUG
作家「良かったよ」

せつかす「お疲れ様でした!」

作家「こちら、この番組のプロデューサーさん」

かすみ「……!お疲れ様です!本日はありがとうございました!」ペコッ

せつ菜「ありがとうございました!」ペコッ


プロデューサー「ん?うん」


しずく「この後3人で飲みに行くんだけど、かすみさん達もどう?」

かすみ「いいの!?是非!」

せつ菜「同席させていただきます!」

プロデューサー「何それwかてぇよ」
 
204: (SB-iPhone) 2021/05/06(木) 19:20:10.29 ID:LOGfONUG
ー西麻布

作家「お疲れ、しずくちゃんとかすみちゃんの絡み最高だったよ!」

しずく「ありがとうございます♪」

プロデューサー「しずく、今度中須とネタやってみっか」

しずく「いいんですか!?」

作家「いいね、かすみちゃんネタ書いてやってよ」

かすみ「は、はい…!」

せつ菜「…………」

プロデューサー「飲まねぇの?」

せつ菜「い、頂いてます!」
 
205: (SB-iPhone) 2021/05/06(木) 19:21:47.69 ID:LOGfONUG
月九女優と若手芸人の組み合わせはお茶の間ウケも良く、初のゴールデンは大盛況でした。

無敵級*ポテトフライとしては、以前から呼ばれていた劇場やラジオの他に、グルメ番組やネタ番組の出番も増えました。

綱渡りのようなせわしない日々は、私から情緒をも取り除き、あれから何度季節が巡ったのか分かりません。

いつしか、夜のバラエティには私だけが呼ばれるようになっていました。
 
212: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 13:51:25.10 ID:v8BVfhO9
ー劇場 楽屋

かすみ「お疲れ様ですせつ菜先輩」

せつ菜「やっぱり、こっちでもかすみさんの書いたネタやりませんか?」

かすみ「何言ってんですか、かすみんが書くのはバラエティの時だけです」

せつ菜「今やそっちのイメージの方が強いですし、ウケもいいと思います」

かすみ「……かすみんがほんとにやりたいのはせつ菜先輩のネタです……それに劇場のお客さんは皆嫌ってますよ、私の書いたネタ」

せつ菜「そんな事は……」
 
213: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 13:51:37.36 ID:v8BVfhO9
かすみ「……じゃあこれとかどう思いますか?」ペラッ

せつ菜「ふむ……いいんじゃないでしょうか?」

かすみ「どの辺ですか?」

せつ菜「内容もキャッチーですし、分かりやすいと思います」

かすみ「…………」

せつ菜「かすみさん?」

かすみ「いいです、辞めましょう」

せつ菜「え……?かすみさ」

かすみ「収録あるんで行きますね」

せつ菜「頑張ってください」
 
215: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 18:18:09.85 ID:v8BVfhO9
しずく「今日も頑張って漫才していきましょう」

かすみ「皆さん……かすかすのここ、しず子専用ですよ♪」

しずく「…たまに出ていきたい時もあるんですけどもね」

かすみ「へっ!」

しずく「最近思うのが街歩いててもマナーの悪い人が……

かすみ「盛り上げる為に一発ギャグしてもいい?」

しずく「あっダメです。私あなたの一発ギャグ凄く嫌いなので」

しずく「街歩いてるとね、マナーの悪い人多k……

かすみ「かす♪かすかすかす♪」

しずく「やめろって言ってるでしょ!」バシッ

かすみ「えへ…えへへ…///」

しずく「なんで照れてるの…気持ち悪い」

しずく「で、街歩いてるとマナー悪い人多いなって思うんですよ」

かすみ「かすかすの下半身もマナーが悪いぞ♪」

しずく「…それはノータッチで行きますけどもね」

しずく「この間電車に乗ってたんですけどね、座ってたら目の前におばあさんが立ってたんです。そういう時かすみさんならどうする?」

かすみ「うるせぇ」

しずく「あ、ダメだこいつ会話出来ない」

しずく「大体こういう人って知らんぷりするんですよね」

かすみ「寝たふりだよ!」バシッ

しずく「タチ悪いな!」バシッ

しずく「譲んなきゃダメでしょ…皆さんならどうしますかそういう時?」

かすみ「膝カックンでしょ!」バシッ

しずく「やるわけないでしょ!」バシッ

しずく「そんなひどい事するわけないでしょ、謝って」

かすみ「ごめんね♪」

しずく「…謝ったので許してあげて欲しいんですけどもね」

しずく「であの座っててm……

かすみ「ただ貴様だけはお婆さんにコブラツイストかけると思いますけどね!」ビシッ

しずく「指を指すな!」バシッ

しずく「コブラツイストなんてかけるわけないでしょ……」

しずく「で、私お婆さんに勇気出して声かけたんですよ。”おばあさんn……

かすみ「ナンパしてんじゃないよ!」バシッ

しずく「ナンパなわけないでしょ!」バシッ

しずく「お婆さんは恋愛対象には入らないでしょ……」

かすみ「私は入るよ!!」バシッ

しずく「すごいなあんた!」バシッ

しずく「さっきから邪魔しないでよ、話進まないじゃん!かすみさんとやってても全然楽しくない!」

かすみ「しず子それ本気で言ってるの?」

しずく「いや本気で言ってたらここに立ってないよ……」

しずかす「……えへへへへ///」

しずく「でね、譲ってあげたらお婆さんに優しい人ですねって言われたんです」

かすみ「おっ、カップル成立だね♪」

しずく「だからナンパじゃないよ!いい加減にして」

「どうもありがとうございました!」
 
216: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 18:18:42.26 ID:v8BVfhO9




しずく「……お疲れ様」

かすみ「……おつかれ」

作家「お疲れ!二人ともほんとに大人気だね」

しずく「お疲れ様です♪」

かすみ「……いつになったらコンビで呼んでくれるんですか」

作家「この組み合わせが一番数字取れるもんだから、プロデューサーも首を縦に振らなくってさ……」
 
217: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 18:19:00.74 ID:v8BVfhO9
作家「今若手に同じお題でネタ作らせる番組やろうって話してるんだ。決まったらすぐ声掛けるから」

かすみ「ほんとですか…?約束ですよ!」

作家「分かってるよ、今日プロデューサーが赤坂で美味しい鶏鍋の店取ってくれてるんだ。二人とも来るよね?」

しずく「勿論です!」

かすみ「……ありがとうございます」
 
219: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 19:10:31.61 ID:v8BVfhO9
ー赤坂


プロデューサー「お前ら最近調子いいな」

しずく「ありがとうございます!」

プロデューサー「いっその事しずくも芸人を本業にしちゃえば?」

しずく「勘弁してください!」

プロデューサー「ははw」

作家「でもほんとに無敵級*ポテトフライより人気出ちゃうなんてねw」

プロデューサー「そういえばお前の相方何してんの?」

かすみ「劇場とか……深夜のネタ番組とかにたまに出てます」
 
220: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 19:11:22.92 ID:v8BVfhO9
作家「無敵級*ポテトフライの方でも、あともう一個おしゃれなギャグとかあればなぁ」

かすみ「ギャグ…ですか」

プロデューサー「何悩んでんだよw既にいいの持ってんじゃん」

しずく「かす♪かすかすかす♪」

作家「これだよこれw騙されたと思ってコンビの方でもやってみなって」

かすみ「分かりました…作ってみます」

プロデューサー「でもあいつ華がないからなぁ」

かすみ「…………」


プルルルルルルルル


かすみ「あっ…すみません…ちょっとお手洗い行って来ます……」ガチャ
 
221: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 19:13:23.33 ID:v8BVfhO9
かすみ「もしもし」

せつ菜『収録お疲れ様です』

かすみ「ありがとうございます」

せつ菜『今ってどこにいるんですか?”

かすみ「未来惑星ガニメデです」

せつ菜『あっはははwなんですかそれw』

かすみ「ふっw」

せつ菜『で、どこなんですか?』

かすみ「赤坂です」

せつ菜『赤坂!それはまた大層なとこで飲んでますね』
 
222: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 19:13:56.67 ID:v8BVfhO9
かすみ「……せつ菜先輩はどこにいてるんですか?」

せつ菜『高円寺です。一人なので一緒に飲もうかと思ったのですが、迷惑でしたね…」

かすみ「……い、いきます!」

せつ菜「え……?でも」

かすみ「すぐ行くんで…!」
 
223: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 19:14:51.70 ID:v8BVfhO9
かすみ「すみません」ガチャ

プロデューサー「腹でも痛いの?」

かすみ「すみません……今日ちょっと…お先に失礼してもいいですか?」

プロデューサー「え、お前帰んの?」

かすみ「実はちょっと風邪気味で……あんま居すぎて写しちゃってもいけないので…」

プロデューサー「え!そういうの早く言えよ、まぁいいや、お疲れ」
 
224: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 19:15:21.58 ID:v8BVfhO9
かすみ「すみません、ありがとうございます……」

作家「お、お疲れ」

かすみ「すみません、お疲れ様です……」ガチャッ


しずく「すみません私もちょっとお手洗いに」ガチャ
 
225: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 19:16:04.64 ID:v8BVfhO9



しずく「ちょっとかすみさん、風邪なんか引いてないでしょ?」

かすみ「ゲホッゲホッ……」

しずく「……プロデューサーに連れて来てもらってるんだよ?」

かすみ「分かってるけどぉ…」

しずく「ほんとに分かってる!?今一番大事な時期なんだよ!?」

かすみ「ごめん!しず子!」

かすみ「今の私には治療が必要なの」タッタッタッ

しずく「あっ…」

しずく「もう……」
 
226: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 20:16:11.79 ID:v8BVfhO9
ー高円寺

かすみ「はぁ……はぁ……」

せつ菜「あっ!お疲れ様です!」

かすみ「お疲れ様です、こうして二人で飲むの久しぶりですね」

せつ菜「そうでしたっけ?」

かすみ「あれ……?せつ菜先輩それなんですか?」

せつ菜「あぁ、これですか…えへへ…私もリボン付けてみたんです///」

かすみ「え……」

せつ菜「似合ってますか!?」

かすみ「…………」
 
229: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 20:35:10.61 ID:v8BVfhO9
せつ菜「本物の漫才師というのは、極端な話、野菜を売っていても漫才師なんです」

せつ菜「準備したものを定刻に来て発表する人間も偉いですが……自分が漫才師だという事に気付かずに生まれてきて……おとなしく良質な野菜を売っていて……ここまでがまず本物のボケなんです」

かすみ「そうなんですか?」

せつ菜「で、それに全部気付いてる人間が一人で舞台に上がって」

せつ菜「僕の相方ね、自分が漫才師だという事を忘れて生まれて来ましてね、アホやから未だに気付かんと野菜売ってまんねん。何野菜売っとんねん!」

せつ菜「……っていうのが、本物のツッコミなんです」

かすみ「はい」

せつ菜「でもあれですね……本当にそんな事しても誰も笑わないので、それくらいの気持ちで大人も子供も神様も笑わせないといけませんね」

かすみ「なんとなく分かります」
 
230: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 20:35:51.27 ID:v8BVfhO9
せつ菜「お”ぉー……」フラフラ

かすみ「あ”ーー……」フラフラ

せつ菜「今日はもううちに泊まりなさいぃ」

かすみ「八仙飯店の肉まん食べちゃった時の5倍吐きそうなんで無理です……」

せつ菜「あっはははw放送コード引っかかりますよ」

かすみ「この会話は電波には乗りませんよー」

せつ菜「本当に乗ってないか確認しないといけないので連行します」ガシッ

かすみ「いたいたい!」
 
231: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 20:36:08.34 ID:v8BVfhO9
せつ菜「…………」ズルッ

かすみ「あ”あ”あ”!また!」

せつ菜「ほーほー…赤坂の料亭に行ってち   も成長しましたね」

かすみ「高円寺のままでいいですぅ!」

せつ菜「あっはははw」

かすみ「もうwあははw」
 
234: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 21:14:33.74 ID:v8BVfhO9




かすみ「お邪魔しまーーす……」ガチャ

せつ菜「何もないですが」カチッ

かすみ「ちゃんと電気戻ったんですね」

せつ菜「先月も1回止まりましたが」

かすみ「もー何やってんですか」

せつ菜「えへへ……///」ピッ


“かすかすのここ、しず子専用ですよ♪”

“たまに出ていきたくなるんですけどね”


せつ菜「あっかすみさん出てますよ」

かすみ「あっすみません…!消しましょ消しましょ」

せつ菜「いえ、いいですよ」

かすみ「ぅ……」
 
235: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 21:31:28.45 ID:v8BVfhO9
“しーずー子ー……?”

“気持ち悪いよ!”



せつ菜「ふむ…………」

かすみ「…………」



“アッハッハッハッハ !”



せつ菜「なるほど」

かすみ「…………」



TVから流れる笑い声が、この薄い壁に何度も反響して、ついさっきまで路上で騒いでいたせつ菜先輩の笑い声と重なりました。
 
236: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 21:32:28.32 ID:v8BVfhO9
“かすみさんの馬鹿!知らない!”

“しず子それ本気で言ってんの?”



せつ菜「…………」

かすみ「………っ」



日常のしょうもない私は、せつ菜先輩をいくらでも笑わせる事が出来るのに、舞台に立つ私でせつ菜先輩は笑わない。



“本気で言ってたら一緒に漫才してないよ”

“えへへへへへ~”

“キャーーーーーッ !”



せつ菜「…………」

かすみ「…………」ボロッ…
 
238: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 22:00:09.81 ID:v8BVfhO9
私は結局、世間というものを置き去りには出来ませんでした。



“かすかすかす♪”

“キャーーーーーーッ !”

“ありがとうございました!”

“アッハッハッハッハ !”

“パチパチパチパチパチ !”



せつ菜「なるほど」

かすみ「………っ」ポロポロ



せつ菜先輩は世界一面白い。

でも今は、それが悔しくて堪らない。
 
239: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 22:01:16.67 ID:v8BVfhO9
せつ菜「2分ネタですか?」

かすみ「…………どうでしたか」

せつ菜「へ?いいんじゃないですか?」

かすみ「……面白かったかですか?」

せつ菜「それは」

かすみ「……そんなにダメでしたかね」

せつ菜「…………」
 
241: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 22:11:52.21 ID:v8BVfhO9
せつ菜「ふむ……もっとかすみさんの好きなように、やりたいネタやればいいんじゃないですか?」

かすみ「…………出来ないんですよ」

せつ菜「考え過ぎじゃありませんか?もっと肩の力抜いt

かすみ「…………このネタじゃダメですか」

せつ菜「ダメという事はないのですが…普段のかすみさんはもっと面白いって知ってるので、かすみさんならもっと出来るって思ってしまうんです」

かすみ「……なら」

せつ菜「……?」

かすみ「……ならせつ菜先輩がTV出て面白い事やればいいじゃないですか」

せつ菜「…………」
 
242: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 22:15:51.88 ID:v8BVfhO9
かすみ「先輩ももっと愛想振りまいて…ゴールデンに呼んでもらえるようになって……普段劇場でやってるようなネタやればいいじゃないですか……っ!」

せつ菜「…………そう思います」

かすみ「……それになんですかそのリボン」

せつ菜「…………」

かすみ「それしず子の真似ですよね……?」

せつ菜「…………」
 
243: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 22:18:44.12 ID:v8BVfhO9
かすみ「それ付けてるせつ菜先輩、自信無さそうに見えますよ」

せつ菜「…………」

かすみ「せつ菜先輩、自分が面白いと思った事なら赤ちゃん相手でも妥協しないって言ってましたよね……?」

せつ菜「…………」

かすみ「それ付けるのが面白い事なんですか……?」ポロポロ

せつ菜「…………可愛いなって思って」ポロッ…

せつ菜「一度付けてみたかったんです……」ポロポロ

かすみ「可愛くないですよ…っ」ポロポロ
 
244: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 22:26:20.67 ID:v8BVfhO9
せつ菜「…………」スクッ

せつ菜「…………」スタスタ


かすみ「………っ…ぅ……ぅ」


ゴソゴソ

ゴソゴソ


かすみ「………ぅ……っ」



せつ菜「見てください!かすみさん!」



かすみ「……?」

せつ菜「エマさんの寝そべりにリボン付けて、それを撫でながら漫才したら面白いと思いませんか!?しかも最後まで誰もその事には触れないんです!」

かすみ「…………もう……w誰も笑いませんって」
 
245: (SB-iPhone) 2021/05/07(金) 22:38:21.87 ID:v8BVfhO9
ー後日


かすみ「…………」ポチポチ


ーーーーーーーーーーーーー
この間はすいませんでした…

酔っていて全く覚えてないのですが、私に何かしました?
ーーーーーーーーーーーーー


かすみ「もう……」


ーーーーーーーーーーーーー
はっ!もしかして私の部屋にワニガメの卵置いていったのかすみさんですか!?
ーーーーーーーーーーーーー


かすみ「ふっ…w」ポチポチ


ーーーーーーーーーーーーー
違います!ワニガメってワードどっから出てきたんですか


ーーーーーーーーーーーーー
 
247: (SB-iPhone) 2021/05/08(土) 09:32:08.46 ID:W9Zo/coT
ースタジオ前


かすみ「お疲れ様でした……」テクテク

作家「お疲れ、残念だったね」

かすみ「…………」

作家「やっぱり菜々ちゃんの方はゴールデンに出すのどうしても難しくってさ」

かすみ「…………」

作家「この後予定は?」

かすみ「と、特に…」

作家「ならメシでもどう?火鍋の美味い店があるんだ」

かすみ「いいんですか?」

作家「うん、すぐ近く」

かすみ「…………」
 
248: (SB-iPhone) 2021/05/08(土) 09:39:39.49 ID:W9Zo/coT
作家「……コンビの方のネタも独特な空気感があっていいよね」テクテク

作家「レタスは宇宙が地球にプレゼントしてくれた瑞々しい緑の手紙なんです……ってw」

作家「俺はああいうの好きなんだけどなぁ…」

かすみ「ありがとうございます…」

作家「……心配しなくてもかすみちゃんにはいつでも声掛けるからさ」

かすみ「…………」
 
249: (SB-iPhone) 2021/05/08(土) 09:40:42.11 ID:W9Zo/coT
作家「今作ってる番組もかすみちゃん呼ぼうかって話が出てるんだ」

かすみ「ありがとうございます…」


作家「…………」テクテク


かすみ「…………」テクテク


かすみ「あっあの……」

作家「ん?」

かすみ「ちょっと今日…やっぱり失礼します……」

作家「え……?」

かすみ「すいません……」クルッ

かすみ「…………」スタスタ




それ以来、私達はTVに出演する事もなくなりました。
 
253: (SB-iPhone) 2021/05/08(土) 23:43:40.66 ID:PnL8buo2
かすみ「どうもーーー

せつ菜「右から超合金、超合金、レアメタル、超合金…」

かすみ「トランスフォーマーの世界の褒め方するなー無敵級*ポテトフライですお願いしますー」

せつ菜「この間道を歩いてたんですよ」

かすみ「道を歩いてたんですか…いいですね」

せつ菜「いいでしょ」

せつ菜「道を歩いてたら突然ミョウガみたいな犬を見かけたんです」

かすみ「ミョウガみたいな犬!?なんですかそれ」

せつ菜「色が全体的にパープルで、尻尾の方がグリーンというグラデーションです」

かすみ「グラデーションですね」

せつ菜「ミョウガみたいですねなんて思いながら見ていると、向こうから歩いて来るんです」

かすみ「ほう…」

せつ菜「近くに来たところでよくよく見てみたら、ミョウガみたいな犬じゃなかったんです」

かすみ「なんだったんですか?」

せつ菜「ミョウガだったんです」

かすみ「ミョウガだったんですか?どういう了見ですか?」

せつ菜「ミョウガに首輪が付いていて、ミョウガ自身が自発的に歩いてたんです」

かすみ「マジでどういう事ですか?」

せつ菜「マジでどういう事ですか?って思って、飼い主の人に”これは何なんですか?”って聞いたんです」

かすみ「あっ聞いたんですね」

せつ菜「そしたら飼い主の人が『この子は何も失っていないのに何かを取り戻そうとしているのよ』って仰ったんです」

かすみ「へ!?」

せつ菜「あれですよ…勿論私の聞きたかった答えとは違いましたよ」

かすみ「ですよね!」

せつ菜「そうです…まずこれが何なのか教えてくれないと…」

かすみ「そうですよね」

せつ菜「こいつの内面的な事がどうのはまだ早いんです」

かすみ「勿論です、そんで、何も失ってないはずのミョウガが一体何を取り戻そうっていうんですか?」

せつ菜「まぁ…人であれミョウガであれ、後悔の一つや二つあるんだと思います……感銘を受けました!」

かすみ「何にですか!?」

せつ菜「少し羨ましくもあったんです」

かすみ「先輩もミョウガと散歩したかったんですか?」

せつ菜「いえ…自発的に歩いているミョウガ自身であるとか、それを散歩と称して連れている人間、彼らの在り方そのもの、この自由が羨ましかったんです」

かすみ「はぁ…先輩って昔から自由という言葉に憧れてるアンニュイ堕天使みたいなとこありますもんね」

せつ菜「そうなんです…思わず1997年に作られたワインを一杯飲みたい気持ちでいっぱいでした」

かすみ「1997年に一体何の思い入れがあるんですか?何があった年なんですか?」

せつ菜「香港返還」

かすみ「はっ…失った物を取り返した年ですもんね…失った物を取り返した年なんでもういいですー」
 
254: (SB-iPhone) 2021/05/08(土) 23:44:11.96 ID:PnL8buo2




かすみ「お疲れ様でした」

せつ菜「お疲れ様でした、やはり劇場のお客さんは温かいですね」

かすみ「そうは言っても今もうここくらいしか出番ないですよ……」

せつ菜「見に来てくれる方がいるだけでも幸せな事です」
 
255: (SB-iPhone) 2021/05/08(土) 23:44:52.92 ID:PnL8buo2
かすみ「出番ない日だけでもバイトしようかなぁ……」

せつ菜「何言ってるんですか、こういう時期こそ芸を磨く絶好のチャンスですよ」

かすみ「せつ菜先輩だって今の生活苦しいんじゃないですか…?」

せつ菜「衣装を購入した時のもやし生活に比べればこれしきです」

せつ菜「書きかけのネタの続きが浮かんだので、今日はお先に帰りますね」

かすみ「お疲れ様です」

せつ菜「では!」
 
256: (SB-iPhone) 2021/05/08(土) 23:45:12.64 ID:PnL8buo2



後輩「お疲れ様です…姉さん」

かすみ「あっお疲れ」

後輩「この後ちょっといいですか…?」

かすみ「ん?いいけど…どしたの?」
 
257: (SB-iPhone) 2021/05/08(土) 23:48:20.90 ID:PnL8buo2
ー居酒屋

かすみ「話ってなに?」

後輩「うっ…………すみませんでした!!!」

かすみ「えっどしたの急に」

後輩「実は……前からちょくちょく中川さんに飲みに連れて行って貰ってたんです」

かすみ「知ってるけど」

後輩「中川さん……僕らの前ではすごいおっきい顔するっていうか……わざわざ高い店連れて行ってくれたり、何軒もハシゴしたり……」

かすみ「うん」
 
259: (SB-iPhone) 2021/05/08(土) 23:51:46.08 ID:PnL8buo2
後輩「流石に最近は断るようにしてたんですけど……その時に作った借金で今首回ってないみたいなんです……」

かすみ「は!?!?私には返し終わったって……」

後輩「中川さん……相方には絶対に弱さを見せないみたいなとこあるじゃないですか…?」

かすみ「そんな事……」

後輩「もう何遍もバイトするよう勧めてんすよ……でもコンビの大事な時期だからって言って聞いてくれなくて……」
 
261: (SB-iPhone) 2021/05/09(日) 00:00:40.71 ID:Yr6eTLAi
後輩「すみません……僕らのせいで」

かすみ「……あんたらのせいじゃないよ、私のせい」

後輩「…………」

かすみ「あーーー」

かすみ「もう駄目だね」

後輩「姉さん……」
 
262: (SB-iPhone) 2021/05/09(日) 00:01:48.76 ID:Yr6eTLAi
かすみ「話してくれてありがと」

後輩「……へ?」

かすみ「おかげで踏ん切りついたよ」

後輩「…………っ」

後輩「うぅ……すみません……すみません……っ」
 
263: (SB-iPhone) 2021/05/09(日) 00:02:27.62 ID:Yr6eTLAi
かすみ「いい歳して泣くな!今日は私が奢るからさ」

後輩「……姉さんだって……っ」

かすみ「か、かすみn…私は泣いてなんか……え…?」ボロッ

かすみ「ちょ……なんで……っ」ボロボロ
 
266: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 08:14:20.28 ID:i3/dqUb/




せつ菜「……分かりました」

かすみ「…………っ」ポロポロ

せつ菜「本当にありがとうございました」

かすみ「……ぇ…っぐ」ポロポロ

せつ菜「何泣いてるんですか!こんな私に10年も付いて来てくれるなんてそう出来る事ではありませんよ、自信持ってください!」

せつ菜「…………」ズルッ

せつ菜「……かすみさんちょっと勃ってますよ?」

かすみ「……っ…ぅ勃ってません…!勃起しながら号泣なんて性欲強い赤ちゃんですか…」

せつ菜「あっははw…」




芸の事に関してあれ程までに頑固だったせつ菜先輩は、意外にもすんなり解散を受け入れてくれました。


コンビの決め事で私の要望が通ったのはこれが初なのではないか、と思います。


事務所に私達が解散する事を告げると、幾つかの決まっていた営業の仕事だけは消化してから、という事になりました。
 
268: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 11:23:28.55 ID:i3/dqUb/
かすみ「どうもーーー」

せつかす「無敵級*ポテトフライですお願いします」

せつ菜「世界の常識を覆す為に、この道に入りました!私達が覆せたのは、努力は必ず報われるという素敵な言葉だけです」

かすみ「駄目じゃないですか!それ」

せつ菜「感傷に流されすぎて、自分の思っている事が上手く伝えられない時ってあるじゃないですか?」

かすみ「ありますけど」

せつ菜「なので、敢えて今から反対の事を言います。そう宣言をした上で、自分の思っている事と逆の事を全力で叫べば、思いが明確に伝わると思うんです」

かすみ「……最後までややこしい事言いますね」

せつ菜「やれば分かります!」

かすみ「ほんとですか…?」
 
269: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 11:24:01.01 ID:i3/dqUb/
せつ菜「かすみさん!」

かすみ「なんですか…?」

せつ菜「かすみさんは本当に漫才が上手いですねぇ」

かすみ「……いや喜びかけましたよ……!逆の事言ってますもんね」

せつ菜「かすみさんは一切噛まないし…愛嬌もあるし…大金持ち…最高ですね!!」

かすみ「腹立ちますね!なんなんですか…」

せつ菜「天才ですね!!」

かすみ「しばきますよ?」

せつ菜「……まぁそんな、大天才のかすみさんにも幾つか大きな欠点があります」

かすみ「え…?聞かしてください…」
 
270: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 11:25:00.82 ID:i3/dqUb/
せつ菜「部屋汚い」

かすみ「…しょぼい!確かに部屋は小綺麗にしてますけど…他にあるでしょ…」

せつ菜「犬触れない」

かすみ「犬めっちゃ触れるんですよ……殆どの人そうですよ!?」

せつ菜「……相方が素晴らしい才能の持ち主」

かすみ「え……?」
 
271: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 11:25:52.85 ID:i3/dqUb/
せつ菜「……そんな素晴らしい才能を持った相方に10年間文句ばかり言って全然付いて来てくれませんでしたね!!」

かすみ「…………」

せつ菜「そんなかすみさんとずっと一緒だったので、全っ然楽しくありませんでした!」

かすみ「…………」

せつ菜「私が世界で一番不幸です!」

かすみ「………は」
 
272: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 11:28:40.10 ID:i3/dqUb/
せつ菜「あとお客さん!あなた達は本当に賢いですね!こんな売れっ子で将来性のある芸人のライブに一切お金も払わず連日盗み見して……おかげで毎日苦痛でした!!」

かすみ「……く、口悪いですって」

せつ菜「私の夢は、子供の頃から漫才師になる事ではありませんでした」

かすみ「子供の頃から漫才師になりたかったんですか…」

せつ菜「絶対に、漫才師にだけはならないと決めていました」

せつ菜「それが……こんな相方と出会ってしまったばっかりに、漫才師なんかになってしまったんです」

せつ菜「そのせいで私は死んだんです。かすみさんに〇されたようなものなんです!」

せつ菜「あっ!人〇し!」

かすみ「……言いすぎですって」
 
273: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 11:29:31.34 ID:i3/dqUb/
せつ菜「たまに…私達の事を褒めてくれる方もいるんです」

せつ菜「それがすっごく嬉しくて……人生を肯定されたような……そんな喜びを得る訳なんです」

せつ菜「……そんな中水を指してくるのがあなた達です」

せつ菜「あなた達は『無敵級*ポテトフライは最低だ、見たくもない』とか言って……私達の人生を否定してくる訳ですよ!」

せつ菜「ほんとに……大っ嫌いでした……!」

せつ菜「何を一生懸命聞いてるんですか!早く帰ってください!」

かすみ「…………」
 
274: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 11:32:13.73 ID:i3/dqUb/
せつ菜「無敵級*ポテトフライは今日が最後の舞台ではありません」

せつ菜「……これからも毎日皆さんとお会い出来ると思うと嬉しくてたまりません」

せつ菜「私はこの10年間を糧に、生きて行きません」

せつ菜「なのでどうか皆さんもテキトーに死んでください」

かすみ「やめてください!」

せつ菜「かすみさんも死ね!私が知ってる中で一番不幸になってください!」

かすみ「……おかしいでしょ…」
 
275: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 11:34:14.82 ID:i3/dqUb/
せつ菜「何笑ってるんですか」

かすみ「先輩も笑ってるじゃないですか……」

かすみ「さっきから暴言吐いて……お客さん泣かせて……どうすんですかこれ…」

かすみ「漫才っていうのはお客さんを笑わせるものなんです……こんなの…どこが漫才なんですか」

せつ菜「なら、最後の最後に常識を覆す漫才が出来たという事ですね!」
 
276: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 11:35:01.07 ID:i3/dqUb/
せつ菜「……かすみさんも最後に言う事ないんですか?」

かすみ「お客さん……私は皆さんに……全っ然感謝していません」ペコッ

せつ菜「かすみさん……」

かすみ「…………」

せつ菜「最低ですね……」

かすみ「いや逆の事言ってますから!!もういいです!」


かすみ「…ありがとうございました」

せつ菜「ありがとうございました!」
 
278: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 11:41:16.68 ID:i3/dqUb/
もっと漫才がしたい。

せつ菜先輩の声は本当によく通る。



私の、永遠にも思えた救いようのない日々は、決してただの馬鹿騒ぎなんかではなかった、とそう断言出来ます。

それは駄目な竜宮城みたいなものだったかもしれないけれど、せつ菜先輩じゃなければ、こんな狂った日々を十年も続ける事など出来なかったと思います。

私の事を信用して、ここまで連れて来てくれたのに。

悔しい思いとか、辛い思いとかいっぱいしましたよね?

ごめんなさい。
 
281: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 15:56:19.85 ID:E+fdefzD
ー数年後

かすみ「お待たせしました」

かすみ「こちらの物件なんですけど…自由に見ていただいて」

客「ありがとうございます!」

客2「すげぇ…!スクワット式トイレットルームだぜ!」

客「いやただの和式便所だろ!」

客2「うんこしながら足腰鍛えられるなんて最高だろ!」

客「用足しながらそんな事出来るわけねぇだろ!」

客2「俺はタイミングよく出す自信がある!」

客「それ失敗したら大惨事だかんな!?」


かすみ「…………」

客「あっ…すみません……」

客2「僕ら……芸人目指してて!春から越して来ようと思ってるんです!」

かすみ「そうなんですね」
 
282: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 15:57:24.52 ID:E+fdefzD
客「この部屋って漫才の練習しても大丈夫ですかね?」

かすみ「あー…ここはちょっと大きい声出せないので」

客「あー…」

かすみ「あっ…!でも芸人さん目指すんだったらこの物件はオススメだと思います」

かすみ「近くに大きい公園があって…そこなら思いっ切りネタ合わせ出来ると思います」

客「公園かー」

客2「ネタ合わせって、お姉さんお笑い詳しいんですね」

客「もしかしてめちゃめちゃお笑いファンだったり!」

かすみ「あ…まぁ…そんな感じです」

客「僕ら絶対天下取るんで!」

客2「見ててください!」

かすみ「…頑張ってください!」

客「あざっす!!」

かすみ「あははは」
 
283: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:00:12.96 ID:E+fdefzD




かすみ「ふぅ」ポチポチ


ピロロン

ーーーーーーーーーーーーー
お久しぶりです!元気にしていますか?

先輩!ずっと連絡もくれず何やってたんですか!
ーーーーーーーーーーーーー
 
284: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:02:32.05 ID:E+fdefzD
ー居酒屋


せつ菜「お久しぶりです!」

かすみ「せつ菜先輩!もう…今まで何してたんですかぁ!」

せつ菜「あれから真面目に働いて…走り回ってなんとかお金作りました」

かすみ「返せたんですか?」

せつ菜「まだ途中ですが、危ないとこだけでも何件か返済しました」

かすみ「何やってんですかぁ…」

せつ菜「かすみさんも借金だけはダメですよ、借金取りは本当に恐ろしいです…」

かすみ「しませんってば」


せつ菜「かすみさん…」スッ

かすみ「な、なんですか!?」

せつ菜「…………」ニギッ

かすみ「…………は?」サワ

かすみ「なんですか………これ」サワサワ
 
285: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:03:03.49 ID:E+fdefzD
せつ菜「おち   取ってみました」

かすみ「…………」

せつ菜「私は今までキャラクターというものを否定していましたが、ようやく気付いたんです」

せつ菜「キャラクターに負けるような面白い事は全っ然面白い事じゃないんです!」

かすみ「無理……無理無理無理」

せつ菜「え…?」

かすみ「……誰が笑うんですか?」
 
286: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:05:22.22 ID:E+fdefzD
せつ菜「え…wこれでまたTVに出てみようと思ったのですが」

かすみ「出れるわけないじゃないですか……っ!!」ガタッ

せつ菜「…………」ビクッ

かすみ「女性がち   取って…一体誰が笑うんですか……?」

せつ菜「…………」

かすみ「……せつ菜先輩は……もし女性にち   が無かったら面白いなーくらいの……そのくらいの感覚だったと思うんですよ」

せつ菜「…………」

かすみ「でも世の中には…っ性の問題とか……差別の問題とかで悩んでる人がたくさんいるんです…!」

せつ菜「…………」
 
287: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:06:25.37 ID:E+fdefzD
かすみ「そういう人がせつ菜先輩の事見たら……どう思いますか?」

せつ菜「不愉快な気持ちになる……」

かすみ「そうですよね!?」

かすみ「……全員がせつ菜先輩みたいな性格なら、或いは、せつ菜先輩が本当に純粋な気持ちで男性になりたいのであれば…何の問題もないですよ…でも……っ!でもそうじゃないですよね……!?」

せつ菜「…………」

かすみ「そういうのを馬鹿にする悪い人達がたくさんいるんです…」

せつ菜「…………」
 
288: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:07:21.04 ID:E+fdefzD
かすみ「勿論せつ菜先輩にそのつもりがないのは知ってますよ……でも…!せつ菜先輩の事を知らない人間がそれ見たら、その人達と一緒だと思われますよ……」

せつ菜「…………」

かすみ「……せつ菜先輩に悪気がないのは知ってますよ……知ってますけど……」

かすみ「世間を完全に無視する事は出来ないんですよ…!」

せつ菜「……かすみさん…もう言わないでください……」ポロッ

せつ菜「私が悪いです……本当に馬鹿でした」ポロポロ

かすみ「…………っ」

せつ菜「……っ…ひぐ……ぅ」ポロポロ
 
290: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:22:10.98 ID:E+fdefzD
かすみ「…………」

せつ菜「……ぅ……ぅ」

かすみ「…………花火…」

かすみ「花火……見に行きませんか?」

せつ菜「……え?」

かすみ「先輩…!花火見に行きましょうよ」

せつ菜「……今頃やってますかね」

かすみ「やってますって…行きましょう!」
 
291: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:24:52.23 ID:E+fdefzD
ー新幹線


かすみ「もうすぐ着きますね、熱海」

せつ菜「高校の修学旅行を思い出します」

かすみ「楽しかったですよね、北海道」

せつ菜「え!私京都でしたよ」

かすみ「あっ北海道はかすみん達の代からでした」

せつ菜「いいなぁぁあ!」

かすみ「えへ♪」

せつ菜「かすみさん」

かすみ「なんですか?」

せつ菜「一緒にお風呂入れなくてごめんなさい……」

かすみ「やかましいです!」
 
292: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:25:15.98 ID:E+fdefzD
せつ菜「というか私……どっちに入ればいいんでしょうか……」

かすみ「女風呂に決まってるでしょ…」

せつ菜「え……?でも…このお股見たら皆さんパニックになりませんかね…私他人に迷惑かけるのだけは嫌なんです…」

かすみ「他人に迷惑かける天才じゃないですか…」
 
295: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:43:38.39 ID:E+fdefzD
ピューーーーー

ドォーーーン ! パチパチパチ…



せつ菜「うおおおおお!!!」

かすみ「あっはははは」

せつ菜「見てください!かすみさん!」

かすみ「見てますよ!」

せつ菜「綺麗です…」

かすみ「はわぁー…」パチパチ



ピューーーーー

パァーーーーンッ!!パラパラパラ…



せつ菜「かすみさん……」ニギッ

かすみ「やめてください!!情緒もクソもない…」

せつ菜「この感触が懐かしいです……」

かすみ「馬鹿な事するからです!ほら次の上がりますよ」

せつ菜「このっ」グググ

かすみ「いたいいたいたい!!潰れますって!」

せつ菜「あっはははw」
 
296: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:44:10.86 ID:E+fdefzD
ー旅館

女将「お待たせいたしました」

せつ菜「すみません、あと二杯ずつ貰っていいですか?」

女将「えぇ勿論、お客さん観光ですか?」

せつ菜「土地の神です」

女将「………あはははw」

せつ菜「かすみさん!」ウキウキ

かすみ「完全にスベってたじゃないですか…」
 
297: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:44:41.58 ID:E+fdefzD
せつ菜「かすみさんロビーのポスター見ましたか?」

かすみ「ん?なんですかそれ?」

せつ菜「熱海お笑い大会!優勝賞金10万円!明日ですよ!」

かすみ「そんなのあるんですね」

せつ菜「一緒に出ましょうよ!」

かすみ「出ませんよ…もう締切終わってるでしょ」
 
298: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:45:14.81 ID:E+fdefzD
せつ菜「何とかなりますって…女将さん、あれって今からでも出れるんですか?」

女将「あぁまだ空いてるので飛び込みでも大丈夫みたいですよ」

かすみ「うわっ全然人気ないじゃないですかw」

せつ菜「やりましょう!」

かすみ「やりませんて」

せつ菜「私達もう素人みたいなものですし、参加だけでも!」

かすみ「やですぅ!」
 
299: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:48:53.46 ID:E+fdefzD
せつ菜「師匠の頼みが聞けないんですか!?」

かすみ「もう引退したじゃないですかぁ…」

せつ菜「芸人には引退なんてないと思うんです」

かすみ「はい?」

せつ菜「かすみさんは十年間、面白い事を考え続けた訳です。それでずっと劇場で人を笑わせて来た訳でしょ?」

かすみ「…たまに誰も笑わない時もありましたけど」

せつ菜「たまに…でもずっと笑わせて来た訳です」

せつ菜「それはかすみさんがとてつもない特殊能力を身につけたという事なんです」

せつ菜「ボクサーのパンチと一緒です。彼ら、無名であっても引退していても簡単に人〇せるじゃないですか?」
 
300: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:50:37.59 ID:E+fdefzD
せつ菜「ただし、芸人のパンチは殴れば殴るほど人を幸せに出来るんです」

せつ菜「なので他の仕事で食べて行くようになっても、これからも笑いでどつきまくってください!」

せつ菜「かすみさんのようなパンチを持ってる人間、他のどこにもいませんから!」

かすみ「……ありがとうございます」
 
301: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:51:38.38 ID:E+fdefzD
せつ菜「だからやりましょうよ!!」

かすみ「やりませんって!」

せつ菜「やーりーまーしょーうー!!」

かすみ「もう…折角来たんですから温泉でも浸かってゆっくりしましょうよぉ」

せつ菜「………っ!」ガタッ

かすみ「なんですか急にぃ…」

せつ菜「とんでもないネタを思い付きましたよ……!」
 
302: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:55:43.42 ID:E+fdefzD
せつ菜「あのね!漫才中ずっと隣にホームレスのおじさんを立たせとくんです!」

かすみ「えぇ?」

せつ菜「私達はその事には全く触れずに漫才を続けるんですが、突然おじさんが家族に宛てた感動的なポエムを読み出すんです!」

かすみ「なんですかそれw」

せつ菜「で、そのあと~………




こうしている今でも、せつ菜先輩の心臓は動いています。

それはやかましい程に、日々を全身全霊で生きています。

臆病でも、ただの勘違いでも、救いようのない馬鹿だったとしても、生きている限りバッドエンドなんてないんだと思います。

かすみん達はまだ途中です。

これから続きをやるんです。




せつ菜「やりましょう!漫才!」

かすみ「やりませんってw」
 
303: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:56:31.31 ID:E+fdefzD
おしまい
 
304: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 16:58:30.43 ID:E+fdefzD
読んでくださった方ありがとうございました。

元ネタは火花です。

ネタパート元ネタ

パンプキンポテトフライ さん
ときヲりぴーと さん
Dr.ハインリッヒ さん
オードリー さん
 
306: (SB-iPhone) 2021/05/10(月) 17:05:33.12 ID:J8FnA3Sx
おつ。火花ってこんな話だったのか
 
307: (らっかせい) 2021/05/10(月) 17:21:58.56 ID:A+r9wz57
夢を持つ事は辛いことでもあるんだよなぁ
でも無いよりは持った方がずっと楽しく生きられるよね
面白かったです乙
 
308: (茸) 2021/05/10(月) 18:14:31.61 ID:Ah7N86ho
希望のある終わり方で良かったわ
しずくはどうなったのか気になる
 
309: (たこやき) 2021/05/10(月) 18:20:07.26 ID:RXQhFLHc
火花読んだことなかったわ
これ火花だったのか
 
310: (光) 2021/05/10(月) 19:13:37.85 ID:p6pK42mO
この2週間ほんとに楽しかった
ありがとう
 
315: (光) 2021/05/11(火) 08:19:00.73 ID:Kilbu/19
サンパチマイクってどう言う意味かと思ったらこれ
https://www.sony.jp/pro-audio/products/C-38B/
 
316: (たこやき) 2021/05/11(火) 22:19:24.09 ID:XvwGhNd6
当初はかすみがとんがっていたのが身の程を知るごとにとんがりはかすんでいって
一方せつ菜先輩は相方の期待に応えるかのように常識が壊れていく
2人の交点のような一瞬に輝いたと同時にすでにせつ菜の借金問題で崩壊が始まっているのが切ない
元ネタとされているコンビたちについて調べてみるとまたおもしろいね
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1619440452/

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