歩夢「過ごした時間の長さは関係ない」【ラブライブ!SS】

あゆむ SS


206: 2020/12/15(火) 00:22:18.82 ID:oarneXkT
>>120 侑ちゃんを取られたくない

学校

歩夢「…せつ菜ちゃん、ちょっといいかな?」

せつ菜「…!!は、はい」ガタッ

侑「…あ、おーい歩夢、今日なんで先に…」

歩夢「!…っ、せつ菜ちゃんっ」グイッ

せつ菜「あ、わっ…!」

侑「え…」

侑「歩夢……今私のほう見た、よね…?」

ーーーーー

空き教室

せつ菜「あ、あの、歩夢さん…!」

歩夢「あ…ご、ごめんね、引っ張っちゃった」

せつ菜「……私の家に連れて行ったとき、私も引っ張っちゃいましたから」

歩夢「お互い様、かな?」

せつ菜「はい!」

歩夢「……せつ菜ちゃんを呼んだのはね。この前の、返事をしようと思って」

せつ菜「は、い……」ギュ

歩夢(……ごめんね)

歩夢「……せつ菜ちゃんは、ずっと好きに全力だったよね」

せつ菜「?……私、なりに」

歩夢「私、素敵だなって思ってた」

せつ菜「あ…歩夢さん…」

歩夢(私は……せつ菜ちゃんみたいに、なれなかった)

歩夢「……私でよければ、付き合ってほしいです」ペコ

せつ菜「……えっ!い、いいんですか!?」

歩夢「うん」

歩夢「……私もせつ菜ちゃん、好きだよ」ニコ…

せつ菜「……っ!」

208: 2020/12/15(火) 00:44:23.65 ID:oarneXkT
せつ菜「……」ブンブン

せつ菜「嬉しいです!これからよろしくお願いします!」

歩夢(ごめんね、侑ちゃん、せつ菜ちゃん。やっぱり、どうしても渡したくないの)

歩夢(……たとえ自分のものにならなくても)

歩夢「せつ菜ちゃん、お願いがあるんだけどいいかな」

せつ菜「は、はい!」

歩夢「あの…侑ちゃんには、せつ菜ちゃんから伝えてくれる?」

せつ菜「わかりました!私から報告します」

歩夢「……ありがとう。ごめんね、ちょっと…会いたくなくて」

せつ菜「…?」

歩夢(せつ菜ちゃんから言われれば、侑ちゃんも諦めてくれるよね…)

歩夢(……合わせる顔も、ないしね)

209: 2020/12/15(火) 00:51:33.12 ID:oarneXkT
ーーーー

せつ菜「あ、侑さん!」

侑「せつ菜ちゃん!…ねえ、今日はちょっと歩夢と帰らせてくれないかな」

せつ菜「…え」

侑「や、その…ちょっと話があって……」

侑「…ほら、前二人だけでって誘ったときにするつもりだったんだけどさ、あのとき三人で行ったからまだ話せてないんだ)

せつ菜「あぁ…!あのときはすみませんでした!ありがとうございました」

侑「……うん、だからさ」

せつ菜「でも、二人だけというのはだめですね」

侑「え?あ、あはは、なんでせつ菜ちゃんがそんなこと言うの?」

せつ菜「実はそれをご報告に来たのですが…」

せつ菜「私と歩夢さんは今日からお付き合いすることになったからです!」

侑「……ぇ、」

せつ菜「なので、二人きりというのはちょっと…申し訳ないのですが」

せつ菜(他の人ならいいのですが……歩夢さんはまだ侑さんのことが好きですから…)

211: 2020/12/15(火) 00:54:47.97 ID:oarneXkT
侑「……先、越されちゃったね」

せつ菜「え?」

侑「……ごめん、せつ菜ちゃん。私も歩夢が好きなんだ」

せつ菜「……ぇ…?」

せつ菜(そんな、じゃあ二人は両想い…?)

侑「…やっぱり気づいてなかったんだ。私、かなりみっともないことしちゃってたと思うんだけどな」

侑「無理やり二人の間に割り込もうとしたりさ…」

せつ菜「……歩夢さんのことしか見えていなかったかもしれません。侑さんに辛い思いをさせていたら、ごめんなさい」

侑「…無意識にね、歩夢はずっと私と一緒にいてくれると思ってたんだ。私から頼んだことなんて一度もなかったのに」

侑「…だから、せつ菜ちゃんには申し訳ないけど私も歩夢に告白したい」

212: 2020/12/15(火) 00:59:18.56 ID:oarneXkT
せつ菜「だ、だめ、です…」

せつ菜(歩夢さんは侑さんが好きなのに、侑さんに告白されたら…!)

侑「…ごめん」

せつ菜(いや、嫌だ、叶ったばかりなのに。受け入れてもらえたと思ったのに)

せつ菜(取られたくない…取られたくない…!)

せつ菜「……」

せつ菜「ちがいますよ、侑さん。そうじゃなくて」

侑「え?」

せつ菜(……)

 歩夢『せつ菜ちゃんは、綺麗だよ』

せつ菜(……ごめんなさい、歩夢さん)


せつ菜「……歩夢さんが侑さんに会いたくないと言っていたんです」

221: 2020/12/15(火) 21:35:24.04 ID:oarneXkT
>>212から

侑「!?そ、そんなわ、け…」

侑「……あ…」

せつ菜「……あんな、顔を見て逃げるような……歩夢さんに何をしたんですか?」

せつ菜(…歩夢さんが侑さんのことを避ける理由……なんでしょう?)

せつ菜(…苦手分野ですね。一般論から考えましょう……人が誰かに会いたくない理由は『嫌い』『苦手』『恥ずかしい』『後ろめたい』…)

せつ菜(嫌い、苦手はありえないから…私と付き合っているから恥ずかしい…?そのような様子には見えませんでしたが、絶対にないとは…)

侑「……わから、ない。嫉妬して怒っちゃったことはあるけど、少し前だし…」

せつ菜「そうですか…」

せつ菜(……?)

せつ菜(考えてみれば、歩夢さんが侑さんの様子に気がつかないわけがない。でも、侑さんが嫉妬しているとわかっていたならどうして私と…?)

せつ菜(……嫉妬していることにだけ気づいていた?)

せつ菜(…それなら消去法で、歩夢さんは侑さんが好きなのは私だと思っていたのでは?…とすると、歩夢さんの視点では私と侑さんが両想いだったわけで…)

せつ菜(なるほど…侑さんから私を取ってしまったと思って…『後ろめたい』ということですね)

せつ菜(…つまり私と付き合ったのも、断ったら侑さんが私に告白すると思ったから…ですか…)ギュ...

侑「せつ菜ちゃん?おーい?」

せつ菜「っ、す、すみません。…歩夢さんの様子を思い出していました」

せつ菜(…いえ、むしろ私にとっては幸運だったと思うべきですね)

222: 2020/12/15(火) 21:38:09.45 ID:oarneXkT
せつ菜(歩夢さんが侑さんを避ける理由も分かりましたが、それより今私がやらなければいけないのは……)

侑「考えててもわからないし、やっぱり歩夢と直接話すよ」

侑「それで、好きだって……ちゃんと伝える」

せつ菜「っ…!」

せつ菜(……考え ……もっと……!)

せつ菜(侑さんが歩夢さんに告白した時点で勘違いは解消してしまう……遠ざけ続けるのにも限界が……どうすれば……)

せつ菜「……!」

せつ菜(……いや、違う)


せつ菜(告白、させればいい)

223: 2020/12/15(火) 21:39:59.97 ID:oarneXkT
せつ菜「……侑さんはつまり…侑さんが告白すれば、歩夢さんは私を振って侑さんを取ると思っているんですよね?」

侑「そ、そういうわけじゃ…!」

せつ菜「違うんですか?」

侑「……ごめん、そうだね」

侑「歩夢は…私のことを昔から好きでいてくれたんだ。今だって、きっとせつ菜ちゃんより…」

せつ菜「っ…そんなことないです!」

侑「…ごめん……酷いこと言ってるのはわかってる」

せつ菜「……」

せつ菜「……わかりました」

侑「え?」

せつ菜「そこまで言うのなら……いいでしょう。歩夢さんに告白してきてください」

せつ菜「私からも伝えておきますから」

224: 2020/12/15(火) 21:43:47.27 ID:oarneXkT
侑「や、やめてよ…自分で言うから」

せつ菜「……私も連絡しておかないと、歩夢さんは侑さんのことを避けると思いますが…」

侑「う……」

せつ菜「歩夢さんのためにも、待ち伏せはあまり…ですから、明日以降に」

侑「っ…そう…だね」

せつ菜「私も、これで振られたら諦めます。侑さんも…お願いします」

侑「……」コク

せつ菜「……約束ですよ」


せつ菜(……ごめんなさい)

225: 2020/12/15(火) 21:47:39.55 ID:oarneXkT
せつ菜自室

せつ菜「……」ピッピッ

せつ菜「……」

歩夢『…もしもし、せつ菜ちゃん?』

せつ菜「歩夢さん…あの、お付き合いしたことを侑さんに伝えました」

歩夢『…うん、ありがとう……侑ちゃん、何か言ってた…?』

せつ菜「それが、その……」

せつ菜(……ごめんなさい)
せつ菜「……私のほうが好きだから……今からでも告白させてほしいと、言われました」

歩夢『…っ!?』

歩夢『せ、せつ菜ちゃんは、それでっ…!?』

せつ菜(……そう受け取りますよね。歩夢さんの認識なら)

せつ菜「もちろん私は断りましたよ」

歩夢『あ…う、うん…よかった』

せつ菜「……私は歩夢さんが好きですから」

227: 2020/12/15(火) 21:49:26.81 ID:oarneXkT
歩夢『……ありがとう』

せつ菜「あの……歩夢さんは、その」

歩夢『私も…せつ菜ちゃんのこと、好きだよ』

せつ菜「…そう、ですよね!自分のほうが好きだと言う侑さんに、歩夢さんも私のことを好きだと言ってくれたと伝えたのですが」

せつ菜「……」ドクン...ドクン...

せつ菜「その、実は……侑さんが歩夢さんに告白すれば、歩夢さんは私とは別れて…侑さんを取ると言われて」

せつ菜「歩夢さんは…私より侑さんのほうが好きだからと……」

歩夢『っ……!?』

228: 2020/12/15(火) 21:59:08.11 ID:oarneXkT
せつ菜「最初はその場でそんなことないと言い返したのですが……つい、だったら告白すればいいと言ってしまいました」

せつ菜「……本当はこれを歩夢さんに言ったら意味がないのですが……どうしても不安で…」

せつ菜(私は……よくもこんな……)ズキ...

せつ菜(…何を今更…私は…私の好きを離したくない…!)

せつ菜「……歩夢さんのことを信じられなくて、ごめんなさい」

歩夢『ぁ…う……』

せつ菜「……私は歩夢さんが好きです」

せつ菜(大好き…なんです…)

せつ菜「告白のときに言った通り、本当に侑さんのほうが好きでも…構いません。……ですが」


せつ菜「歩夢さんに振られて、侑さんに取られるぐらいなら……いっそ私が侑さんと」

歩夢『!!』

歩夢『こ、断るよ!断るに決まってる…!』

せつ菜「……」

せつ菜「……変なことを言ってごめんなさい。歩夢さんがそう言ってくれるなら、私はずっと歩夢さんの恋人でいますから」

歩夢『……そう、だよね』

歩夢『教えてくれてありがとう、せつ菜ちゃん』

229: 2020/12/15(火) 22:03:40.78 ID:oarneXkT
せつ菜「会いたくないと言っていたのにすみません。多分、侑さんから連絡が行くと思いますので…」

歩夢『……うん』

せつ菜「あの、私が話してしまったと侑さんには」

歩夢『……言えないよ…』

せつ菜「……そう、ですよね」

歩夢『それじゃあ…またね』

せつ菜「はい、また」

せつ菜「……」ピッ

せつ菜(やり、ました…)

せつ菜(これで…これで侑さんが告白しても歩夢さんには届かない)

せつ菜「…っ」ズキズキ

せつ菜(…これでいいんです!歩夢さんだって、好きに全力なところを褒めてくれた!)

せつ菜(…歩夢さんは私の恋人です。絶対渡さない……いつか、ちゃんと好きになってもらって…そうしたら……)

せつ菜「……私は、歩夢さんの好きを利用して…侑さんの好きを嘘にしたんですね…」

せつ菜「……」

232: 2020/12/15(火) 22:12:11.63 ID:oarneXkT
後日談


歩夢「せつ菜ちゃん、今度服買いに行かない?」

せつ菜「行きたいです!いつですか?」

歩夢「今週の土曜日にね、夏服のセールが始まるんだって!少しお店見てからお昼ご飯食べよう?」

せつ菜「……!……わかりました!」

歩夢「……大丈夫?」

せつ菜「だ、大丈夫です」

歩夢「うーん……居眠りしない?」

せつ菜「……午後からでもいいでしょうか」

歩夢「もー、早く言えばいいのに…」

せつ菜「す、すみません…今週はレポートが多くて…」

歩夢「ふふ、せつ菜ちゃんは仕方ないなぁ」ニコ

せつ菜「……」ニコ

せつ菜(歩夢さんは、高校の頃よりも柔らかい笑顔を向けてくれるようになりました)

せつ菜(……でも、まだ…違う)

233: 2020/12/15(火) 22:14:38.88 ID:oarneXkT
歩夢「もうすぐ夏休みだけど、せつ菜ちゃんはご実家には帰る?」

せつ菜「今年も歩夢さんに合わせるつもりです!母が会いたがっているので…」

歩夢「う、嬉しいけど緊張するなぁ…」

せつ菜「た、短時間にしますから!…去年はお盆に帰りましたよね」

歩夢「……うん。でも、今年は少しずらそうかなって」

せつ菜「……わかりました」

せつ菜(去年は…同じく帰省していた侑さんと鉢合わせてしまった。侑さんは一瞬辛そうな顔をした後、昔のように話してくれましたが)

せつ菜(……歩夢さんは、一度も侑さんと目を合わせなかった)

せつ菜(私の服の裾をずっと掴んでいて……私はそれを頼られているのだと思うことにしました)

せつ菜(……まだ私に侑さんを取られないようにしているだなんて、考えたくないですから)

歩夢「……あ!ねえ、せつ菜ちゃんこれ見て!」

せつ菜「なんですか?……制服性愛情依存症!?し、新シリーズじゃないですか!!」

歩夢「懐かしいね、せつ菜ちゃんの家でアニメ見たなぁ」

235: 2020/12/15(火) 22:26:16.51 ID:oarneXkT
せつ菜「そうですね……突然母が帰ってきて…あの時の歩夢さんはかっこよかったです!」

歩夢「もう、何回言うの?」クス

せつ菜「す、すみません、つい…」

歩夢「せつ菜ちゃんに誘われて、初めてアニメショップに行ったのもこの頃だったよね」

歩夢「……楽しかったなぁ」フワ

せつ菜「っ…!」

せつ菜(歩夢さんが記憶の中の侑さんに向ける笑顔は、今もとても優しい)

せつ菜(優しくて……寂しそうで、悲しそうで)

せつ菜(……いつか私に向けてほしかった笑顔をぼろぼろに痛めつけたような、そんな微笑み)

歩夢「…せつ菜ちゃん?どうかした?」

せつ菜「……い、え…」

236: 2020/12/15(火) 22:30:42.60 ID:oarneXkT
せつ菜(最近、ずっと考えていることがある)

せつ菜(もしかしたら…もしかしたら私が切望したあの笑顔は失われてしまったのではないか…他ならぬ私が壊してしまったのではないか、と…)

せつ菜(日々を重ねればきっと『いつか』はやってくると思っていた。……でも、そうだとしたら過ごした時間の長さは関係ないんじゃないか、なんて…)

せつ菜「っ……歩夢さん…!」ギュッ

歩夢「わ!?く、苦しいよ、せつ菜ちゃん……突然どうしたの?」ナデ

せつ菜「歩夢さんは…!歩夢さんは、私のこと好きですか…?」

歩夢「…うん」ナデナデ

歩夢「好きだよ、せつ菜ちゃん」ニコ

せつ菜「……」

せつ菜(私は、もう二度と……)

せつ菜「…ありがとうございます」ニコ


せつ菜「……ごめんなさい」


せつ菜ルート2 完


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