【SS】しずく「あなたのことが―――」

しずかす SS


1: 2021/01/21(木) 23:07:52.62 ID:rPtDp3a2
SSを書くのはこれが初めてです。どうか温かい目で見ていただけると嬉しいです。


「私は桜坂しずくのことが好きだからっ!」

私の世界を色付けてくれた人、中須かすみさん。あの日、私は彼女に救われた。

…あの出来事から約1年、私たちは進級し、3年生の先輩方は卒業していった。

寂しい気持ちはあるが時間は戻らない。別れと同時に新しい出会いもやってくるのだ。新入生歓迎会も近づいており、学校には活気に満ち満ちている。

かすみ「お待たせしず子~!また寝坊しちゃったぁ~…」

しずく「かすみさん…もう4日連続ですよ?」

ここ1ヶ月ほど、かすみさんはいつも寝坊してくる。…いつもなら週に1、2回あるかどうかなのに。新入生歓迎会が楽しみなのだろうか。

かすみ「うぅ…だってスクールアイドルの動画みてたり新歓の出し物考えてたら3時になってて…」

しずく「早く寝ないと肌に悪いよ?あっ…頭に埃ついてる。」ヒョイッ

かすみ「え”!とってくれたの?ありがと!」ニコッ

太陽のように眩しい笑顔。かすみさんは今日もかわいいな。そんな笑顔に憧れると同時に少しドキドキする。

6: 2021/01/21(木) 23:11:40.21 ID:rPtDp3a2
かすみ「ん?しず子、耳赤くない?」

しずく「…今日はちょっと暑いからね」

かすみ「ふ~ん、てっきりかすみんの可愛さにやられたかと思ったのに~~」

しずく「もしかしたらそうかもしれないよ?」

かすみ「そうやってすぐかすみんをいじるのやめて!!」プイ

しずく「怒ってるかすみさんもかわいい……っ!」

つい本音が出てしまった。

かすみ「あー!またかすみんで遊んだ!!」

…本当にかすみさんって人は。

しずく「ふふっ…早くしないと次のゆりかもめに間に合わないよ?」

かすみ「うう~!待ってよしず子~!」

13: 2021/01/21(木) 23:21:47.69 ID:rPtDp3a2
スクールアイドルフェスティバル以来、私たちは本当に仲良くなっている。クラスメイトに「もしかして付き合ってる?」と言われる位には。恥ずかしいけれど嬉しい気持ちの方が勝る。

…かすみさんも同じ気持ちなら…なんて妄想もしてしまう。


学校の正門前

しずく「今日も同好会一緒に行く?」

かすみ「…あ、今日は先に行ってもらっていい?」

しずく「わかった。じゃあお昼にまた」

かすみ「うん!お昼は一緒に食べられるよ!今日はなんと~!かすみん特製のコッペパンも持ってきました!」

しずく「寝坊してまで作ってこなくてもいいんだよ?確かにかすみさんのコッペパンは本当に美味しいけど…」

かすみ「寝坊の話はなしなし!じゃあまた後でね!」

私も教室に向かう。かすみさんのコッペパンもあるし午前の授業は頑張れそう。お昼が楽しみだ。

23: 2021/01/21(木) 23:35:43.33 ID:rPtDp3a2
お昼


歩夢「夏服の移行期間っていつからだっけ?」

愛「来月からかな!愛さんはいつも半袖でいたいんだけどね~!」

かすみ「愛先輩って冬でも長袖まくってますよね?みてるこっちが凍っちゃいますよ…」

愛「だって長袖だと目一杯体動かせないんだもん!愛さんを呼ぶ声も聞こえるしいつでも動ける格好じゃなきゃね!コールだけに!今のは「呼ぶ」のコールと凍るをかけてて…」

侑「あははははっ!!お腹痛くなっちゃうからやめてよ~!」

何やら楽しそうな声が聞こえる。常に明るい雰囲気。この同好会の良いところだ。みていて微笑ましい。

しずく「ごめんなさい!授業が長引いちゃって…今日は先輩方もいるんですね」

24: 2021/01/21(木) 23:43:20.45 ID:rPtDp3a2
愛「かすかすがコッペパン作ってきたって連絡きたからみんなで食べようと思ってね!」

かすみ「かすかすじゃなくてかすみんです!!コッペパンあげませんよ?」

愛「あはは~ごめんごめん」

しずく「そういえば璃奈さんの姿がありませんね?せつ菜さんは…仕方ないですけど」

愛「『クラスメイトに勉強を教えてあげるから』って言ってたよ~かすみんのコッペパンすごく欲しがってたから放課後に渡してあげてね!」

かすみ「…」

しずく「?かすみさん?」

26: 2021/01/21(木) 23:53:15.98 ID:rPtDp3a2
かすみ「あ、えーとかすみん寝不足でぼーっとしてて…」

侑「また夜中までスクールアイドルの動画見てるでしょー?もうちょっと健康に気を使ってね?」

かすみ「それしず子にも同じようなこと言われましたよぉ…」

歩夢「みんなかすみちゃんのこと心配してるだけだよ?」

かすみ「なんか恥ずかしいですう…!」


こんな他愛もない会話を続けていくうちにあっという間にお昼休みが終わってしまった。

なんて幸せなんだろう。「こんな時間がいつまでも続けばいいのに」心からそう思った。


28: 2021/01/22(金) 00:01:05.76 ID:LmrZM5Am
放課後

せつ菜「しずくさんが一人来るのはで珍しいですね?いつもはかすみさんと一緒に来るはずなのに」

しずく「『先に行ってて』と言われたので…また成績のことで怒られているのでしょうか…心配です」

せつ菜「本当にしずくさんとかすみさんは仲がいいですよね。まるで姉妹を見ているようです」

しずく「姉妹だなんて…そんな///」

愛「おぉ~?ちょっと嬉しいと思ってるな~?しずく~?」

しずく「もう!からかうのはやめてください!私はかすみさんではありません!」

歩夢「とりあえずかすみちゃんと侑ちゃんが来るまでここで待ってよっか」

璃奈「そうだね。うう…かすみちゃんのコッペパン…早く食べたい…璃奈ちゃんボード『げっそり』」

30: 2021/01/22(金) 00:10:19.22 ID:LmrZM5Am
ガチャ

かすみさんが来た。あとは侑さんだけ……あれ?

かすみさんの表情が暗い?どうしたのだろう。しかも制服のままだ。いつもなら着替えてから部室に来るはずなのに。

せつ菜「どうかしました?」

同好会の皆さんも不思議がっている。

かすみさんは口を開く。誰もが予想していなかった言葉を。

かすみ「――私、同好会を少しの間お休みします」

同好会一同「?」

32: 2021/01/22(金) 00:17:45.98 ID:LmrZM5Am
学業関連で何か問題があったのだろうか。せつ菜さんも同じことを思っていたようだ。

せつ菜「学業のことで何か問題がありましたか?勉強のことなら私に任せ」

かすみ「違うんです」



かすみ「…この同好会にいると…かすみんのやりたいスクールアイドルができなくなっちゃうんです」

しずく「…え?」

言葉の意味が理解できない。文章としては理解できるけど私の体がその発言を受け付けていないような感覚…。

せつ菜「どういうことです?私たちの活動内容に不満がありました?そういうことでしたら遠慮なく言ってくださいね」

かすみ「…いえ、そういうことではないんです」

頭がこんがらがってきた。

愛「新歓も近いんだし、これからが本番ってところなのにいきなりどうしちゃったの…!」

歩夢「いきなりなんて何か理由があるはずだよね?せめて理由だけでも」

かすみ「理由だけは…今は…」

かすみさんの視線が少しだけ私の方向に寄せられた気がした。心臓が大きく高鳴った。1回大きく「ドクンッ」となった後、「バクバクバク…」と続け様に心臓が動く。胸が痛い。

34: 2021/01/22(金) 00:24:01.57 ID:LmrZM5Am
かすみ「…ごめんなさい、失礼します」

しずく「かすみさん!待って…!」

パタン

しずく「あっ…」

かすみさんが行ってしまった。追いかけたい。理由を聞いて、悩みがあるなら一緒に解決したい。

でも私の足は何故かいうことをきかなかった。突然の出来事だったので足が震えている。

同好会の部室に沈黙が訪れる。私を含め皆、状況の整理が追いついていないようだ。

侑「お待たせー!職員室に用事があって遅れちゃった…ってあれ?なんかみんな暗い顔してる?かすみちゃんもいないね?」

璃奈「それが…かすみさんが突然同好会をお休みするって…璃奈ちゃんボード『唖然』」

侑「えっ?!どうして?!」

しずく「理由は言えないそうです…」

侑「……」

37: 2021/01/22(金) 00:30:48.35 ID:LmrZM5Am
愛「誰かかすみんがこうなっちゃった理由わかる?しずくはかすみんと何かあった?」

しずく「いえ…私にもわかりません。そもそも同好会を抜けたい、というような話も聞いたことがありません…」

かすみさんの話を聞いた限りでは同好会に何か原因があるわけではないようだ。あの私に向けられたような視線…あれは本当に私に向けられていた?

歩夢「本当にどうしちゃったんだろう…」

とにかく、かすみさんとお話ししないと。

しずく「私、かすみさんを探しに行きます!」

愛「愛さんたちも手分けして探すよー!」

せつ菜「そうですね!今日の同好会の活動ははかすみさん捜索大作戦です!」

歩夢&侑&璃奈「おー!」



…1時間ほど探しただろうか。ついにかすみさんを見つけることはできなかった。かすみさんは先に帰ってしまったようだ。そのまま今日の同好会の活動は終了してしまい、久しぶりに、本当に久しぶりに一人で帰った。

しずく「……」

太陽のような笑みを私に向けてくれていた彼女がいない帰り道は、暗い海の中を一人漂っているようで私の心をこれでもかというくらい締め付けた。

7: 2021/01/21(木) 23:13:10.53 ID:lYV6w/d4
連投規制には気を付けてね
投稿間隔を10分おきくらいにするのが一番安全

47: 2021/01/22(金) 20:27:07.75 ID:LmrZM5Am
>>1です。上の方のアドバイスの通り、10分おきに更新していこうと思います



3日後…

(かすみさん、私にできることがあったらなんでも相談して。同好会のみんなも相談に乗ってくれるはず。一人で悩まないでね。)

あのメッセージを送信してから3日…既読すらついていない。私はかすみさんを探したあの日以来、演劇部の方で活動していたので同好会にも顔を出せていない。

お昼も演劇部のミーティングがあり、同好会の皆さんと相談できる時間が作れなかった。同好会のグループラインもあの日から更新が止まっている。


侑とのメッセージ

しずく(かすみさんのことが心配です。かすみさんからメッセージや電話は来ましたか?)

侑(私からメッセージは送ってみたけど「今度歩夢先輩と一緒に遊びませんか?」っていうメッセージしかこなかったよ…同好会については無視されちゃった)

他のメンバーにも同じ内容のメッセージを送ってみる。しかしどの部員にもメッセージは返ってきたが、同好会のことについては触れてくれなかったそうだ。

…私のメッセージだけには返信してくれなかった。胸騒ぎがする。

48: 2021/01/22(金) 20:37:17.79 ID:LmrZM5Am
いつもの待ち合わせ場所にもかすみさんの姿はなく、今日も一人で登校。お昼休みにかすみさんの教室と学食に立ち寄ってみたが、かすみさんの姿はない。

かすみさんのことが気になってしまって頭から離れない。授業に集中できない。このままでは演劇の練習にも、これからも続けていくであろう同好会の活動にも影響が出るはずだ。

放課後

しずく「ああ、時よ、この縺れをほぐすのはお前、…私じゃない。」

演劇部部長(以下部長)「ストップ!しずくー、なんか台詞にキレがないよ?体調悪い?」

しずく「…いえ、少し疲れましたがまだまだ大丈夫です。新歓も近いですし、もっと練習しないと…」

部長「同好会の発表にも出るんだよね?あんまり無理しちゃいけないよ~?」

部長「じゃあとりあえず休憩しよっか!みんな~15分休憩!」

しずく「ふぅ…」

スマホの通知を見てみる。かすみさんからの返信はいまだに来ない。かすみさんなら相談があるとすぐに電話をくれるはずだし、もしかして本当に私が原因…?私のことがいきなり嫌いになってしまったとか…?

そんなの考えるだけで頭が痛くなる。

50: 2021/01/22(金) 20:49:43.78 ID:LmrZM5Am
部長「し~ずく!そんな暗い顔しない!ほらっアクエリ!」

しずく「ありがとうございます」

今の部長は去年のクールな部長とは正反対の性格だ。

とても明るく、部の雰囲気は常に良い。演劇指導に関しても去年の部長に負けないくらい熱心で、今年も質の高い演劇ができそうだ。

部長「どうしちゃったの?ここ3日くらい元気ないね?演劇で何か引っかかることあるの?それとも同好会で何かあった?」

しずく「……はい。実は同級生が突然同好会を休むと言い出してしまって~………」

部長「…そっか。話を聞く限りかすみって子は同好会の活動に不満はないけど休みたい。…休む理由は言いたくないし相談もしたくない、ねぇ…こりゃ複雑な事情がありそうだね」

しずく「…ええ。彼女は悩みがあればすぐ私に相談してくれるのですが…」

部長「はははっ。かわいいところあるね!……でもしずくに視線が向けられていた気がする、か…。」

部長「しずくって意外と勘鋭いし、言い方は悪いけどもしかしたら本当にしずくが原因なのかもしれないね。でも同好会を休んじゃう前まではしずくとはすっごく仲が良かったんだよね?別にしずくを嫌いになったわけじゃ無いと思うよ?」

しずく「…はい。そう言ってもらえると少し救われます。でも私のことが嫌いでは無い、だけど私を避けている…?どうして…」

部長「んー…とりあえず今日は帰っていいよ。いつもとは違う道に行ったり、同好会のみんなと相談したりして頭冷やしてきな?しずくが暗い顔してるなんてらしくないしね!」

しずく「ありがとうございます」ペコリ

部長「はいよ!笑顔だよ!しずく!」ニコッ

しずく「…ありがとうございます」ニコッ

51: 2021/01/22(金) 21:01:01.53 ID:LmrZM5Am
この後、私は侑さんと歩夢さん、璃奈さんに相談をすることにした。幸いにも今日は同好会の活動がなく、3人で遊んでいたようだ。愛さんは実家の手伝い、せつ菜さんは後輩のために生徒会の手伝いをしている。2人にも相談したかったが仕方ない。


侑「メッセージの方でも言ったと思うんだけど私と歩夢は一回かすみちゃんと一緒に遊んだんだよね」

歩夢「うん。それでかすみちゃんに休んでる理由聞いたんだけど『今は話せません。』の一点張りで…」

侑「それ以上追求しても可哀想だからその話は終わりにしちゃった」

しずく「そうですか…しかし同好会のメンバーが嫌いではないという話は本当のようですね」

侑「私たちとはいつもの感じで話しかけてくれてたからその辺については問題なさそうだねー」

歩夢「そうだね。かすみちゃん特製のコッペパンもすごく美味しかったよ!」

璃奈「コッペパンのお話聞いてたらお腹すいちゃった…璃奈ちゃんボード『はらぺこ』」

侑「はははっ。私も喉渇いちゃった。じゃあダイバーシティーでなんか食べてこっか」

同好会が嫌いになったわけではなかった。これで不安要素は少しだけなくなった。ほんの少しだけれど。

歩夢「そんな暗い顔しないで。私たちがいるんだから安心していいよ」ニコッ

しずく「…ありがとうございます」ニコッ

53: 2021/01/22(金) 21:12:03.96 ID:LmrZM5Am
ダイバーシティーにて

侑「ねーねー璃奈ちゃん、アールグレイアフォガートフラペチーノって早口で言える?」

璃奈「アールグレイアフォガーとぷらぺ…っ!」

侑「あははっ!かわいいなあ璃奈ちゃん!!」

璃奈「うう…璃奈ちゃんボード『はわわ』」

歩夢「はははっ。恥ずかしがってる璃奈ちゃんもかわいいよ!」

しずく「ふふっ。璃奈さんは愛嬌があって本当に可愛らしいですね」

璃奈「うあわあ…璃奈ちゃんボード『むんっ』」

同好会の皆さんと一緒にいるのはすごく楽しい。不安や悩みも忘れられる。

だけど私には絶対に解決しなくてはならない問題がある。

侑「…っと、本題に入ろっか。」

しずく「…はい」

54: 2021/01/22(金) 21:26:20.68 ID:LmrZM5Am
侑「まずは状況整理から始めよっか」

私はかすみさんからの返信が来ないこと、あの日以来かすみさんと会って話していないことを伝えた。

侑「話してくれてありがとう。かすみちゃんは今、同好会から離れてる。さっきも言ったけど私たちがかすみちゃんと会った時、私たちを嫌っているようには見えなかったし、活動内容も今までの練習、かすみちゃんの言動を見てきた限りだと不満はないように見えるね。」

侑「でもしずくちゃんからは避けている。だからこの件はしずくちゃんが関係している、ということでいいかな?」

しずく「はい。ここまで情報がまとまっているなら、この件は私が関係しているということで間違い無いと思います。」

歩夢「でもあの日まではずっと仲良しだったもんね。眩しいくらいだったよ…」

しずく「少し恥ずかしいですね…歩夢さんと侑さんだって負けていませんでしたよっ!」

歩夢「そ、そうかな」@cメ*˶˘ ᴗ ˘˵リ?

侑「はーいそこそこ!私も恥ずかしいからやめてね!」

55: 2021/01/22(金) 21:38:30.51 ID:LmrZM5Am
璃奈「……うん、とりあえずしずくちゃんは強引にでも直接かすみちゃんに会って話さないとダメかもね。このままじゃ何も進まないよ」

しずく「それは分かっているのですが…」

璃奈「かすみちゃんとお話するのが怖いの?」

しずく「…ええ。理由がなんであれ、私がかすみさんの大好きな居場所を奪ってしまったんです。もしかしたら本当に私のことを嫌いになったのかもしれない…そう考えると少し体が震えてしまいます」

璃奈「でも一歩を踏み出さないと。……踏み出さないと何も始まらないよ」

璃奈「私は愛さんが手を差し伸べてくれたからここにいる。本当は私も愛さんみたいにかすみちゃんを助けてあげたいけど、私や他のみんなじゃその役はつとまらない。しずくちゃん以外はね」

璃奈「しずくちゃんがかすみちゃんに手を差し伸べてあげなきゃ」

57: 2021/01/22(金) 21:49:10.81 ID:LmrZM5Am
璃奈さんの言葉は私の心大きく響いた。言葉以上の何かを感じた。そして思い出した。あの時のことを。

『私は、桜坂しずくのことが好きだから!』

あの一言で私は一歩を踏み出せた。あの時にかすみさんがいたからこそ。

今度は私が、かすみさんが歩き出すために私が動かなきゃ。そして私の声でかすみさんを大好きな場所に導いてあげるために…!

しずく「私!かすみさんの家に行ってきます!!」

侑&歩夢&璃奈「行ってらっしゃい!!」

これでもかというくらい全力で駅に向かう。…あの大きいロボットが虹色に光っている。

59: 2021/01/22(金) 22:00:56.11 ID:LmrZM5Am
…どれくらい走っただろうか。足が革靴に擦れて踵が痛い。だけど走りつづける。



ピンポーン

かすみ「はーい」

ガチャ

かすみ「…っ!?」

パジャマ姿のかすみさんが目に入る。

しずく「ハァ…ハァ…かすみさん…ハァ…お話があります!」

かすみ「……とりあえず中に入って」

60: 2021/01/22(金) 22:11:34.24 ID:LmrZM5Am
かすみの部屋にて

かすみ「…落ち着いた?」

しずく「ありがとう…お風呂まで入らせていただいて…しかも替えの服まで…」

かすみ「別にいいよ、汗だくだったし…」

かすみ「……」モジモジ

しずく「……」

部屋が静寂に包まれる。1分くらいだっただろうか。

しずく「かすみさん…私が」

かすみ「しず子、まずかすみんの話を聞いてほしい」

しずく「…うん」

かすみさん、緊張している?顔が真っ赤だ。

少しの沈黙のあと…

かすみ「ごめんなさい!」

しずく「…え?」

私から話を切り出すつもりだったが、出鼻を挫かれてしまい少し驚いた。しかし想像はできていた。かすみさんはそういう人だから。そういうところが好きなのだ。

62: 2021/01/22(金) 22:20:54.81 ID:LmrZM5Am
かすみ「…同好会のみんなが嫌いだったり、しず子が嫌いで避けていたわけじゃなかったの。これは本当だよ?」

かすみ「でも…でも…私がスクールアイドルを続けるためには一旦同好会から、…いやしず子から離れなきゃいけないと思ったの」

原因は私からか…。でも私から…私から離れなくてはならなかった?

かすみ「本当に身勝手なのは分かってる。同好会のみんなには本当に悪いことをしちゃった。勝手に私の考えをみんなに理由言わずに押し付けて…」

しずく「気にしないで大丈夫。同好会のみんなは怒ってないよ。むしろ皆んなかすみさんのこと心配してる。」

しずく「…でも、理由だけは教えて欲しいな?」

20秒ほどの沈黙の後、かすみさんは口を開く。

63: 2021/01/22(金) 22:33:06.80 ID:LmrZM5Am
かすみ「私はみんなから可愛いって言われることが本当に好きだったの。果林先輩、愛先輩、せつ菜先輩、しず子……かすみんよりも魅力的な人たちがいっぱいいる中でかすみんだけの可愛いをファンのみんなに伝えて、褒められることが本当に好きだった……あ、もちろんかすみんが一番可愛くて魅力的だけどね?」

かすみさんと話している。ただそれだけで嬉しさが込み上げてきた。もう泣きそうだ。だけどかすみさんの言葉は一語一句、私の頭に焼き付けなくてはならない。

かすみ「…でもその感情は少しずつ変わっていったの。スクールアイドルフェスティバルが終わって、いろんなイベントで私たちが呼ばれるようになってきた頃かな…私の好きは…ファンのみんなに可愛いを伝えることより、しず子に『可愛い』って褒められることの方が好きになっていっちゃったの」

…っ!?

かすみ「しず子に毎回身だしなみを整えてもらって、一生懸命歌って、ステージ裏に帰ってきた時にしず子から『今日も可愛かったよ』って言われるのが何よりも嬉しくって嬉しくって仕方なかった」

かすみさんの中で『私は桜坂しずくのことが好き』という感情が膨れ上がってしまった…ということ?私としては本当に嬉しい…けれどかすみさんにとっては足枷になっていた…。

64: 2021/01/22(金) 22:43:37.60 ID:LmrZM5Am
かすみ「でもこれだとダメかなって」

かすみ「たった一人のためのスクールアイドル。悪いことじゃないし、スクールアイドルを続ける理由にはなると思う。でもファンのみんなにかすみんの可愛いを伝えたいっていう思いもちゃんとあった」

かすみ「この1ヶ月くらい家に帰ってからずっと悩んでた。『本当にこのままでいいのかな』って」

かすみさんの顔がだんだんと涙ぐんだ顔になっていく。それでもかすみさんは話を続ける。

かすみ「でもあの日私は決めたの。みんなのスクールアイドルになろうって…しず子には本当に申し訳なかったけど…だ…だから私は一回同好会を抜けて…う、ううぅ…」ポロポロ

ああ、かすみさんはこんなにも悩んでいたんだ。みんなのために、私のために悩んでいたんだ。私たちに悟られないように…すぐ感情を出してしまうかすみさんが同好会に迷惑をかけまいと…

65: 2021/01/22(金) 22:54:13.58 ID:LmrZM5Am
ギュッ

かすみ「…しず子?」

かすみさんの鼓動が伝わってくる。優しい音だ。

しずく「私のために悩んでくれて、ありがとう。そして…ごめんなさい。私のせいでかすみさんの大好きな居場所を…」ホロリ

ああ…涙が出てきてしまった。だけど続けなきゃ。

しずく「かすみさん…私は、あなたがどんな色になっても私は応援する。だから私のことは心配しないでね?かすみさんはかすみさんの信じる道、信じるかわいいを全力で駆け抜けるだけでいい。私はそんなスクールアイドル『中須かすみ』のことが大好きだから」

しずく「…でも、もしもかすみさんが乗り越えなければいけない壁に当たった時…その時は遠慮なく桜坂しずくを頼って。あなたの迷いも不安も全部、私が抱きしめてあげる」

66: 2021/01/22(金) 23:03:25.41 ID:LmrZM5Am
新入生歓迎会当日―――

かすみ「しず子~!緊張するよ~!助けて~!」

しずく「大丈夫大丈夫。かすみならできるよ」ナデナデ

かすみ「えへへ…ありがとう///」

かすみ「…終わったらまたしてくれる?」

しずく「ふふ…もちろんだよ、かすみ」

侑「すっかり仲良くなっちゃって…しずくちゃんどんなこと言ったんだろう」ヒソヒソ

愛「でも本当に良かったよ~かすみんが元気出してくれて~」ヒソヒソ

せつ菜「でも…恥ずかしいですよ…本番前にあんな甘酸っぱいの見せられるとニヤニヤが止まりません…!」ヒソヒソ

璃奈「歩夢さん、顔真っ赤だよ?りなちゃんボードのコピー、いる?」

歩夢「…本当に?じゃあひとつもらおうかな…」

67: 2021/01/22(金) 23:11:13.29 ID:LmrZM5Am
アナウンス「まもなく、スクールアイドル同好会の部活動紹介です。皆さん席についてください」

まっすぐな瞳、太陽よりも眩しい笑顔。かすみとお話ししたあの日からからかすみは今まで以上に輝いているように感じる。

…私だけに見せてほしいという気持ちもほんの少しだけある。恥ずかしいし胸がドキドキするから直接言わないけれど。

でも彼女が選んだ道だ。私はそれを応援するだけでいい。     

   …しず子

…でもいつか言いたい。     

   いつか言ってみたいことがあるんだ。

かすみ…     

   しず子…

スクールアイドルとしてじゃなく、一人の女の子として、あなたのことが――

~完~

70: 2021/01/22(金) 23:19:29.47 ID:LmrZM5Am
拙い文でしたが最後までお付き合いいただきありがとうございました!
展開が無理矢理だったりしずくの内面描写を描きすぎて結構読みづらい文章になってしまいました…機会があったら何か書いていこうと思います!

69: 2021/01/22(金) 23:18:36.27 ID:HJRiGnp9
お疲れ様でした
綺麗なしずかすありがとう

73: 2021/01/22(金) 23:28:17.29 ID:MbR7lGA1
乙乙
綺麗な言葉選びに丁寧な内面描写……これが初SSとか将来有望ですよぉ…♡(恍惚)
またSSどしどし書いてください♡

74: 2021/01/23(土) 00:06:39.49 ID:mztAG2NF
ありがとう

75: 2021/01/23(土) 01:48:20.64 ID:g3Fb++00
すごく綺麗だった。アイドルでいる間は心に秘めておくというのもいいね

76: 2021/01/23(土) 02:07:52.39 ID:kRP68t4X
初SSでなんて良質なしずかすを書いてくれたんだ
呼び捨てのしずく新鮮だな、浄化されたよ

72: 2021/01/22(金) 23:21:52.11 ID:jqXY0UAg
jΣミイ˶º ᴗº˶リ 最高です

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1611238072/

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