【SS】希「エリチまた違う子連れ込んでる…」

SS


1: 2014/09/29(月) 23:59:27.43 ID:6trD5995.net
職員室で用事を済ませいつものように生徒会室へ向かう

希「少し遅くなっちゃったけどエリチちゃんとやってるかな」

生徒会室の前につきドアノブに手をかけると中から何やら声が聞こえてきた

?「だ、ダメです…。誰か来たら…」

ドアノブにかけていた手が一瞬止まる

絵里「平気よ。希は職員室だし他の生徒は見回りに行ってるから」

?「で、でも……っあ」

絵里「体は正直なのね」

?「やぁっ…!」

見知らぬ人の声と聞き覚えのあるあの人の声

ため息を一つつきドアノブにかけていた手を一気に回す

希「エリチ…、何してるん…?」

絵里「希」

机の上に座りエリチの前で足を広げていた女の子は目が合うとささっと身なりを整え慌てて生徒会室を出て行った

リボンの色からして1年生…

4: 2014/09/30(火) 00:13:41.39 ID:y22diGN5.net
希「後輩にまで手つけたん?」

絵里「だって私のこと好きっていうから」

緩んでいたリボンを直し髪を整えたエリチは何事もなかったように机に置かれていた資料に目を通し始めた

その横に私も座り職員室で預かった資料に目を通す

慣れって恐いななんてつくづく思う

絵里「…み」

絵里「希?」

希「え?あ、ごめん。ぼーっとしてたわ」

絵里「この資料なんだけど…」

顔を近づけ資料を見せるエリチの首筋にキスマークを見つけ痛む胸ももう慣れてしまった

希「エリチ、これ」

絵里「ん?絆創膏?」

希「首、ついてんで」

6: 2014/09/30(火) 00:25:30.71 ID:y22diGN5.net
絵里「あら、ほんと」

手鏡で確認し自分の首筋についていたキスマークをなぞると私に首を向ける

希「?」

絵里「自分じゃつけにくいから希つけてよ絆創膏」

はぁ…と小さいため息を漏らし言われたとおりに絆創膏の包装を外しエリチの首筋に手を伸ばす

白くて透き通る肌に思わず生唾を飲み込むと同時にこの首筋にキスした人がいるんだという現実を目の当たりにする…

希「はい、できた」

絵里「ありがとう」

笑顔を浮かべまた資料整理に戻るエリチの横顔に目を向ける

真剣な眼差しで作業する横顔に胸がうるさいほど鼓動を刻む

私も好きって言ったらあの子みたいにしてくれるん…?

希「…好き」

絵里「え?」

11: 2014/09/30(火) 01:26:20.20 ID:y22diGN5.net
絵里「…えっと」

明らかに動揺した顔

そして私から視線を逸らした

やっぱうちじゃダメなん…?

希「いやー、この窓から見る夕日好きやなって」

絵里「あ、ああ…ほんと綺麗よね」

そういわれて安心しきったようなエリチの顔にまた胸がズキンと痛む

なんで…なんでうちじゃ…

そこから会話が途切れ紙のこすれる音だけが響く生徒会室で私は今日も不毛な恋を続けている


次の日

いつものように職員室で用事を済ませ生徒会室へ向かう階段の前で一人の女の子と目が合った

あの子昨日の…

そのままその横を通り過ぎようとしたところで声をかけられる

16: 2014/09/30(火) 03:34:37.60 ID:y22diGN5.net
?「あの…」

希「?」

振り返るとその子は両手を胸の辺りに置きもじもじと何かいいにくそうに私を見つめていた

希「何かお話?」

恐がらせないように優しくそう言うと彼女は意を決したように私へ言葉を投げかけた

?「あ、あの!希先輩は絵里先輩と付き合ってるんですか!」

希「え?…ああ、なんやそんなことか。付き合ってないよ、うちとエリチは」

?「そうなんですか!」

わかりやすいくらいに笑顔を見せる彼女に私は「好きやけどね」とは言えなかった…

?「引き止めてすいません。…失礼します!」

嬉しそうに駆けていく彼女の背中を見送り天を仰ぐ

希「付き合ってる…か」

そうだったらあんなことしてるエリチにもはっきりやめて!なんて言えるんやけどね…

今のうちにはそれを言う資格なんかない…

17: 2014/09/30(火) 03:46:10.24 ID:y22diGN5.net
絵里Side

「あっ…!やぁ…」

名前だけしか知らない子のお腹や首筋に舌を這わせ女の子の象徴でもある膨らみに手を添える

「あ、絢瀬さん…!」

頭をぐいっと引き寄せられそのまま胸に顔を埋めた

絢瀬さん

そう呼ばれるのは好きじゃない…

1年生のころ希は私をそう呼び止めた

希「あ、あの!」

絵里「あなたは?」

希「私…うち東條希!あの絢瀬さん!一緒に帰ろう!」

絵里「どうして?」

希「どうしてって一緒に帰りたいからや」

絵里「…勝手にすれば…」

希「うん。勝手にする」

18: 2014/09/30(火) 03:53:51.07 ID:y22diGN5.net
それから何度か希と帰ってるうちに名前で呼び合うようになって

一緒に生徒会にも入って

目まぐるしく変わる日常の中で希は…希だけは私の心の支えだった

だけど…




元会長「絢瀬さん」

絵里「はい」

元会長「ここ間違えてるわよ」

絵里「す、すみません!」

前任の生徒会長は勉強もスポーツも何でもこなす文武両道な人で

厳しくもあったが後輩を気にかけてくれる私の憧れの人だった

希「エリチ大丈夫?うちも手伝おうか?」

絵里「ううん。これは私の仕事だから。希は先帰ってて」

元会長「私が残るから心配しないで東條さんはもう帰っていいわよ」

希「それじゃあ…」

21: 2014/09/30(火) 04:23:18.57 ID:y22diGN5.net
私と先輩しかいない夕暮れが差し込む生徒会室にペンを走らせる音だけ響いていた

絵里「あの先輩、これは私一人で終わらせるので先輩も…」

元会長「いいのよ。私も残ってやらなきゃいけない仕事があったし、それにそれのチェックしないといけないしね」

そう言ってウィンクした先輩につい笑みがこぼれる

絵里「ありがとうございます」

もう一度訂正箇所にペンを走らせているとふいに先輩に肩を叩かれた

絵里「…先輩?どうしました?」

元会長「絢瀬の髪綺麗よね。地毛?」

髪を触られ思わず体がびくんと反応した

絵里「は、はい。祖母がロシア人なので…」

元会長「じゃあクォーターなの?」

絵里「は、はい」

自分の中の防衛反応なのか先輩のほうを振り向けずにいる私の顎を先輩が掴み無理矢理誘う

元会長「目も綺麗な青色ね…」

22: 2014/09/30(火) 04:34:19.06 ID:y22diGN5.net
絵里「あ、ありがとうございます…」

そう言って退けようとした手を掴まれ唇に何か柔らかいものが触れた

絵里「…っ!…いや!」

先輩を押しのけ部屋を出ようと走り出す私の手を先輩は掴むとそのまま机に押し倒された

絵里「な、なんでこんなこと…」

元会長「潤んだ瞳に青がよく映えるわ」

私の頬に先輩の手が触れ体を強張らせると先輩の手はそのまま首筋のほうへ移っていった

絵里「やめっ…やめてください…!」

元会長「肌も白くて素敵…」

見たことのない先輩の笑みに体がガクガクと震えていた

元会長「大丈夫よ絢瀬さん。恐がらなくてもちゃんと優しくするから…」

絵里「…い…や…。やだ…!やめ…!」

それからのことはほとんど覚えていない…

ただ気づいたら夕日もすっかり落ち暗くなった室内で裸になった私を先輩が見下ろしていた

元会長「そろそろ暗いから帰りましょうか。絢瀬さん」

30: 2014/09/30(火) 20:56:38.21 ID:y22diGN5.net
次の日

学校に着くと希がすぐに駆け寄ってきた

希「おはよエリチ」

絵里「おはよ…」

あんなことがあり上手く希の顔が見れないでいる私の顔を希は心配そうに覗き込んだ

希「エリチ大丈夫?調子悪い?」

絵里「う、ううん。大丈夫…!早く教室行きましょ」

先輩とあったこと希に知られたら絶対軽蔑される…

そう思って何も言い出せなかった

放課後

いつものように生徒会会議があり先輩と顔を合わせる

昨日あんなことがあったのに他の生徒に普通に接してる先輩を見てあれは夢だったのかなんて思う

でも…

元会長「絢瀬さん」

絵里「は、はい」

32: 2014/09/30(火) 21:02:57.74 ID:y22diGN5.net
両肩にそっと手を置かれ耳元で先輩が囁く

元会長「今日も居残りお願いね」

絵里「…っ」

体が震え冷や汗までも浮かべる私の表情に気づいたのか 隣にいた希が優しく声をかけてくれる

希「エリチ?大丈夫?」

元会長「じゃあ、終わった人から解散しましょうか」

そんな希の言葉を遮って先輩が声をあげると室内に他の生徒の「はーい」という声がこだました

希「エリチ…?」

絵里「大丈夫…大丈夫だから…」

心配させまいと作った笑顔が引きつっていないか、ちゃんと笑えてるかわからない

でも希には…希にだけは知られたくない…


「先輩さようならー」

元会長「さようならー」

次々に他の生徒が帰っていく中 室内には私と希、元会長3人だけが残っていた

希「エリチ、そろそろ帰ろっか」

33: 2014/09/30(火) 21:08:52.68 ID:y22diGN5.net
絵里「ごめん…。また今日も居残りだから」

希「えー、今日もなん?」

絵里「うん…。ごめんね」

希「じゃあ待ってようかな」

鞄を抱え椅子の背もたれにもたれかかった希に先輩が声をかける

元会長「あとは私が残るから東條さんは帰っていいわよ」

希「いえ、どうしても今日はエリチと帰りたいので」

私に笑顔を向けそう答える希に思わず涙がこぼれそうになった…

元会長「そう?でももう遅いしねー。絢瀬さんはどう?」

絵里「え…?」

元会長「東條さん残ってくれるみたいだけど終わりそう?」

昨日のあの笑顔を向けられ目をそらした

これは断れってことなのかしら…

チラっと先輩の顔を窺うと表情一つ変えず私をじーっと見つめていた

絵里「…っ…ごめん…!まだ終わりそうにないから先に帰って希」

37: 2014/10/01(水) 03:09:01.23 ID:yEYKalh+.net
希「え、でも」

絵里「帰って!」

自分でもびっくりするほど大きな声が出た

絵里「ご、ごめん…。でも本当に平気だから…」

希「…わかった。じゃあまた明日ね、エリチ」

それ以上何も言わず鞄を抱えながら生徒会室を出て行く希の背中を見つめながら涙がこぼれた

絵里『行かないで…行かないで希…』

心の中で何度も叫んだ

でも生徒会室のドアは静かに閉まりこぼれていた涙を先輩に指でなでられる

元会長「ふふっ、絢瀬さんの泣いた顔私好きよ」



どれくらい時間が過ぎたのだろうか

荒くなった呼吸を整えながら乱れた衣服を整えている私に先輩が囁いた

元会長「じゃあまた明日ね、絢瀬さん」

生徒会室を出て行った先輩の背中を見送り暗くなった室内で私は静かに涙をこぼした

38: 2014/10/01(水) 03:17:13.24 ID:yEYKalh+.net
だるい体を起こし静まり返った廊下を抜け下駄箱に向かうと足元で何かにぶつかった

絵里「え、なに?」

びっくりしてぶつかった場所を見るとそこには鞄を抱えながら寝息をたててる希が座り込んでいた

絵里「な…んで」

希「…ん…。あ、エリチ終わったん?」

目をこすりながらゆっくり立ち上がりこんな汚れた私に笑顔を向ける希

絵里「…うぅ…く…」

溢れてくる涙を抑えきれずそのまま希の胸に顔を埋めた

希「ちょ、エリチ?どうしたん?」

絵里「…ごめん…なさい…。ごめんなさい…希…」

それ以上何も言わずただ謝り続ける私の頭を優しく撫でる希

希『絢瀬さん!一緒に帰ろう!』

ふいに頭に中で蘇るあの日の言葉

ごめんなさい ごめんなさい希…

もうあの頃の私には戻れない…

46: 2014/10/01(水) 23:09:53.17 ID:yEYKalh+.net
それから私は幾度か先輩に抱かれ、先輩が卒業したあとも

やけになって好きと言われればだれかれ構わず手をつけた

この頃になるともう希の顔さえまともに見れなくなっていた…



「…さん」

絵里「…」

「絢瀬さん?どうしたの?」

そして今日も私は名前しかよく知らない女の子を抱いている…

絵里「絢瀬さんはやめて…。そう呼ばれるの好きじゃないの」

「…じゃあなんて…っあ!やぁ!」

絵里「なんでもいいわよ。名前呼ぶ余裕があるなら」

彼女の胸の先端を強めに噛むと彼女はびくんびくんと体を震わせそのまま机の上に倒れこんだ

ガチャ

空いたドアから希が顔を覗かせた

絵里「…希」

55: 2014/10/03(金) 01:53:09.57 ID:kazOopZ1.net
希Side

生徒会室のドアを開けると見慣れた光景…

「きゃっ!」

慌てて衣服を整えている女の子と乱れた服装でこっちを見つめていたエリチから視線を外し

そのまま椅子に腰をかけた

希「そろそろみんな戻ってくるからエリチもリボンちゃんとして」

「し、失礼しましたー…」

バタン

女の子が出て行き生徒会室にはうちとエリチの二人きり

乱れた衣服と髪を整えエリチがうちの横の椅子に腰をかけた

絵里「…今日は何か重要なことあったかしら」

希「今度廃校の件でOBの人達も来るってさっき先生が言ってたで」

絵里「え…」

その言葉を聞いてエリチの顔色がみるみる変わっていくのがわかった

56: 2014/10/03(金) 01:59:19.66 ID:kazOopZ1.net
希「エリチ…?」

絵里「…あ…、えっと、なんでもないわ…」

なんでもないと言う割りには机に置かれた手が震え額には汗が浮かんでいた

希「えっと…、OBへの連絡はうちがするからエリチはそのときの資料作り任せてもええ?」

絵里「え、ええ…」

OBという言葉に反応し何かに怯えたようにガタガタ震えてる

そういえば前もこんなことあったような気がする…

そうあれは元会長とエリチが居残りで仕事をしてた日…

エリチがうちの胸で泣いた日…

あの日も同じように何かに怯えていた

希「エリチ…、あのさ、元会長と何かあったん?」

絵里「え…?」

びっくりした様子でうちのほうを見つめる

絵里「ど、どうして…?」

希「だってなんか怯えてるみたいやから」

57: 2014/10/03(金) 02:04:55.72 ID:kazOopZ1.net
絵里「それは…」

ガチャ

「ただいま戻りましたー!」

エリチが何か言いかけたところで他の役員が戻ってきて話が途切れた

絵里「お、おかえりなさい。大丈夫だった?」

「はい!もうばっちりですよー!」

さきほどのまでのことが嘘みたいに気丈に振舞うエリチ

何言いかけたん…?

先輩とやっぱり何かあったん…?

エリチ…うちに何隠してるん…?

聞きたいことは山ほどあった

でもエリチはきっとそれを話すことも恐れている

希「本人に直接聞くかな…」

にぎやかになった生徒会室から出て誰もいない空き教室へ入った

携帯を手に取りある場所に電話をかける

58: 2014/10/03(金) 02:10:28.74 ID:kazOopZ1.net
希「あ、もしもし。突然すいません、東條です。あの今度少しお時間ありますでしょうか」

希「はい、はい。失礼します」ガチャ

エリチ…本当にあの時何があったん…

うちの胸で泣いたあの日…

あの日からエリチはうちの前で涙を見せることも、うちに触れることもしなくなった

希「エリチ…何を一人で抱えてるん…」



それから数日後

うちは一人カフェに入りある人を待っていた

元会長「東條さん!」

希「あ、先輩。お久しぶりです」

元会長「急に電話来たからびっくりしちゃった」

希「すいません」

元会長「いいのいいの。廃校のことでしょ?私達にも何かできることあったら言ってね」

希「はい。ありがとうございます。そのこともなんですけど、今日は他にも話がありまして」

68: 2014/10/04(土) 03:34:54.35 ID:UaZjwbyw.net
元会長「他に?なにかしら」

話し始めようとしたところで店員さんが現れ少し乗り出していた体を椅子に戻した

「ご注文は?」

元会長「アイスコーヒーを一つ」

「かしこまりました」

元会長「それで他に話って?」

卒業してからそんなに日が経っていないのにメイクが変わり髪も染めている先輩がすごく大人に見える

希「大学ってやっぱり大変ですか?」

いきなり聞くのは気が引けたのでまずは差し支えのない話から進めていく

元会長「うーん。大変といえば大変だけど今のうちだけかなって感じはするわ」

元会長「東條さんは進学希望?」

希「エリチ…あっ、絢瀬さんと同じところに行くつもりです」

元会長「そう…」

エリチの名前を出した途端先輩の目が少し泳いだのがわかった

やっぱり二人は何かを隠してる

69: 2014/10/04(土) 03:42:04.92 ID:UaZjwbyw.net
元会長「絢瀬さんは元気?」

希「はい。しっかり生徒会長してますよ」

元会長「そう。良かったわ」

店員さんが持ってきたアイスコーヒーに口をつけた先輩にうちはついにあの質問を投げかけた

希「あの、昔…絢瀬さんと何かありましたか?」

少しの沈黙

元会長「どうして?」

希「あの日…、先輩と絢瀬さんが放課後残ってた日、絢瀬さん泣いてたんです」

元会長「絢瀬さんがそれで何か話したの?」

張り詰めたような空気に思わず生唾を飲み込んだ

希「いえ、何も話してくれません…」

元会長「じゃあ話したくないことなんでしょうね」

希「でも…!」

元会長「友達のあなたにも隠してること私の口から聞いてどうするの?」

希「それは…」

70: 2014/10/04(土) 03:53:12.71 ID:UaZjwbyw.net
元会長「まあ、あなたに言いたくないのもわかるけど」

そう言って笑みを浮かべながらコーヒーを口に含んだ先輩に私はそれ以上何も言えず俯いた

希「うちって頼りないんですかね」

おどけて笑って見せたつもりだけどたぶん顔引きつってる…

元会長「うーん、頼りないとかじゃなくて嫌われたくないってことじゃないのかなー」

希「嫌われたくない…?」

元会長「そう。絢瀬さんの考えてること大体わかるもの」

そう言ってにやっと笑いながらストローの先端をペロっと舐めた先輩に体に恐怖が走る

元会長「じゃあそろそろ行くわ。廃校の件また連絡してちょうだい」

机に1000円札を置き店をでていく先輩を見送るとそのまま椅子の背もたれにもたれかかった

希「なんだったん今の…」

75: 2014/10/05(日) 03:01:26.61 ID:5q3qYIQ8.net
絵里Side

いつもと変わらぬ放課後だけど一つ違うとしたら今日は希がいないこと

用事あるって慌てて帰ったけどなんだったのかしら

「それじゃまた明日ー」

絵里「はい。気をつけて」

「はーい」

役員みんなを見送り私も帰るために身支度を進めていると生徒会室のドアが開く音

絵里「何か忘れ物?」

役員の誰かと思い顔をあげるとそこには…先輩がいた

元会長「久しぶり絢瀬さん」

思わず持っていた筆箱を机の下に落とししゃがみこんだ

どうして…なんでいるの…

そんなことが頭を巡りしゃがみこんだまま立ち上がれないいる私の元に

先輩の足音が段々近づいてくるのを感じる

絵里「…っ」

76: 2014/10/05(日) 03:10:53.77 ID:5q3qYIQ8.net
元会長「生徒会室なんにも変わってなくて安心したわ。まあ卒業してからそんなに日も経ってないし当たり前よね」

先輩の足音が近づいてくるたびに体の震えが増していくのがわかる

忘れたはずだった…

ううん、ずっと忘れたかった…

でもずっと私の心の中に残り苦しめ続けるその人が私の前にしゃがみこみ頬を優しく触れる

元会長「絢瀬さんも全然変わってない。クス」

腰が抜けその場にへたれこんだ私に先輩は覆いかぶさるように顔を近づけてくる

元会長「青い瞳もこの白い肌も何にも変わってない。やっぱ素敵だわ絢瀬さん」

絵里「なんで…なんでここに…」

元会長「今日東條さんが尋ねてきてね、私達に何かあったんじゃないかって疑ってるの」

その言葉に思わず先輩の腕を強く掴んだ

絵里「まさか話して…!」

元会長「まさか。私から話しても何のメリットもないじゃない」

ほっとし強めていた手を緩めると先輩は私の髪をそっと掴み自分の口元へと持っていった

元会長「でもどうして東條さんに言わなかったの?」

77: 2014/10/05(日) 03:25:32.72 ID:5q3qYIQ8.net
絵里「そんなの…」

いえるわけない…

言ったら希はきっと軽蔑する…

元会長「嫌われたくなかった?」

絵里「…嫌われてもいいんです…」

元会長「え?」

絵里「嫌ってくれたほうが傷は浅くて済むから…どっちみちあの頃には戻れない…先輩と出会う前の私達にはもう戻れない!」

もう戻れない…

元会長「私のせいってことかしら?」

絵里「そうよ!あんたのせいで私は…!」

バチンという鈍い音と共に頬に広がる痛み

絵里「…え」

先輩は叩いたほうの私の頬に優しく触れると悲しそうな顔で私を見つめていた

元会長「痛かった?ごめんね。でも絢瀬さんがいけないのよ」

絵里「私は…!」

78: 2014/10/05(日) 03:34:46.06 ID:5q3qYIQ8.net
言いかけた言葉を遮るようにもう一度頬を叩かれる

絵里「…っ」

口に鉄の味が広がり頬は先ほどよりも痛む

元会長「ほら、絢瀬さんの綺麗な顔をこれ以上傷つけたくないのよ。だからね、あなたは私の言うこと聞いてればいいの」

今更抗って私は何がしたいんだろう…

自身の正当化…? それとも今更希の元に帰れるとでも思ったのかしら…

今までのことが頭の中を巡り笑いがこみあげてきた

絵里「は…ははは…はは」

私だって先輩と一緒じゃないか…

元会長「絢瀬さん?」

絵里「すみません…。先輩…」

頬に触れていた手が優しく私を撫ぜ首筋、鎖骨へと降りていく

元会長「わかってくれればいいの」

先輩の顔に笑みがもれ私の脱力した私の体を先輩の手が何度も行き来する

88: 2014/10/06(月) 22:14:47.85 ID:S5/SCHIA.net
希Side

カフェを出て学校までの道のりの間ずっとエリチのことを考えていた

あの日何があったのか

どうしてあんなに震えているのか

なんでうちに何も言ってくれないのか…

色んなことが頭を巡りその分だけエリチの笑った顔を忘れそうなる…

希「そういえば、最近エリチの笑った顔見てないな…」

生徒会の仕事で見せるキリっとした顔も好きだけど、でもやっぱり

私の前でだけ見せてくれてた笑顔が一番好き

絵里『希!』

そうやって笑顔で私の名前を呼んでくれるエリチが好きなんや…



希「失礼しました」

職員室で先生に今日のOGとの報告をして昇降口へ向かおうとした体を止め生徒会室へと足を進めた

希「まだエリチ残ってるかな」

92: 2014/10/07(火) 00:37:21.17 ID:5ko3UhlH.net
生徒会室がある階につくと電気がもれていた

希「あ、やっぱりまだ残ってるやん」

そのまま生徒会室のほうへ向かうと同時に話し声らしきものが聞こえてくる

希「エリチのほかに誰か残ってるんやろか…?」

首を傾げながらドアノブに手をかけ扉を開く

希「エリチ、こんな時間まで何し…」

言いかけた言葉が止まり目の前の光景に思考が停止する

ワイシャツがはだけ胸を露わにし、机の上に寝そべるエリチと

そんなエリチのスカートの中に顔を入れていた先輩

絵里「の、希…!」

慌てて起き上がり胸を隠しながらうちに背中を向けるエリチ

その体は小刻みに震えている

元会長「あら、見つかっちゃった」

カフェで見たような笑みを浮かべ口元を拭う先輩は震えていたエリチの髪をそっと撫でた

希「なに…してるんですか…?」

94: 2014/10/08(水) 03:10:49.24 ID:1pLHGAXw.net
元会長「なにって…ねぇ」

困ったように笑う先輩と私のほうを一切見ず震え続けるエリチ
うちはそれ以上何も言わずエリチの傍に歩み寄るとブレザーをそっと肩に被せた

絵里「…希…?」

今にも泣きそうな顔で私を見上げるエリチをうちはぎゅっと抱きよせた

希「先輩、今日はもう帰ってください」

聞かなくてもわかるこの状況

今にでも殴ってしまいそうな怒りを抑えながらそう言ううちの言葉に先輩は小さなため息を一つついた

元会長「そうね。今日はもう帰るわ」

身だしなみを整え生徒会室から出て行く先輩

まだ震え続けているエリチの肩をそっと掴んだ

希「帰ろうっか」

絵里「…どうして…」

希「ん?」

絵里「どうして何も聞かないの…?」

希「聞いてほしいん?」

95: 2014/10/08(水) 03:20:22.19 ID:1pLHGAXw.net
絵里「それは…」

そう言ったまま黙ってしまったエリチ

うちは大きく深呼吸をするとちいさく微笑んだ

希「別にエリチが話したくないんだったら別にええよ」

絵里「希…ごめんなさい…ごめん…」

涙を瞳いっぱいに溜めうちにすがるように泣きじゃくるエリチをそっと抱きしめる

前にもこんな光景を見た…

昇降口でうちの胸で涙を流し謝り続けていたあのときと一緒…

これで何となくわかったような気がする…

あの時生徒会室で何が起きてたのか

どうしてもっと気づいてあげれなかったんだろうとい罪悪感と同時に先輩にたいする怒りがどんどんこみ上げてきた

希「エリチ…ごめんな…」

絵里「どうして希が謝るのよ…?」

希「ごめん…」

エリチに涙を見せないようにぎゅっとエリチを抱き寄せ静かに涙をこぼした

103: 2014/10/09(木) 01:06:52.67 ID:mA3hzg5s.net
次の日

登校してきたばかりのエリチと廊下ですれ違った

希「おはようエリチ」

できるだけ顔に出さないようにいつものように笑みで声をかける

絵里「おはよう」

そんなうちにエリチも少し困ったような、何か言いたげな笑顔で挨拶を返した

希「今日の生徒会なんやけど、うち今日もOGのところ回らないとあかんから」

絵里「ええ、聞いてるわ。よろしくね」

希「うん。あと昨日のことなんやけど…」

そう言いかけたところで教室から顔を覗かせたクラスメイトがエリチを呼んだ

「絢瀬さーん!ちょっとー!」

絵里「ごめん、呼ばれてるからもう行くわね」

希「うん」

うちに背を向け歩き出したエリチのポニーテールがなびき首筋には真新しいキスマークのあと

昨日の…

104: 2014/10/09(木) 01:13:19.97 ID:mA3hzg5s.net
うちは携帯を手に誰も使ってない教室へ入りある場所へ電話をかけた

元会長「もしもし?」

希「もしもし、東條です」

元会長「あら、どうしたの?もしかして昨日のこと?」

希「そうです。今日少し時間とってもらえませんか?」

元会長「…いいわ。あのカフェでいいかしら?」

希「はい」

そのあと時間を決め電話を切った

携帯を持つ手に自然に力が入り少し手の平が痛んだ

希「エリチごめん…」

エリチが言いたがらなかったこと、聞いてほしくなかったこと

すべて先輩から聞いてしまうことをどうか許して…

それでもエリチのことが知りたかった

傷ついて泣いてるエリチをほってはおけなかった

107: 2014/10/10(金) 02:15:50.21 ID:JFNmbleB.net
放課後、エリチにOGに会いに行く旨を伝え学校をあとにした

カフェへ入るとまだ先輩は来ていないようだった

「いらっしゃいませ。お客様1名様でよろしいでしょうか?」

希「あ、あとから一人来ます」

「かしこまりました。席へご案内します」

通された席に腰をかけホットコーヒーを頼んだ

希「ふぅ…」

自分を落ち着かせるように息を吐いた

恐怖なのか、武者震いなのか、手が少し震えている

希「震えてるなんてうちほんま情けないな…」

微笑を浮かべ運ばれてきたコーヒーを口に運ぶと同時に入り口のドアが開き先輩が入って来た

元会長「ごめんね。少し遅くなっちゃった」

昨日なにもなかったかような態度で接してきたのでこっちのほうが戸惑った…

希「いえ、来たばっかりなので」

元会長「そう?すいません、ホット一つ」

108: 2014/10/10(金) 02:24:58.97 ID:JFNmbleB.net
先輩の分のコーヒーが運ばれてくる間少し沈黙が続いた

聞きたいことがありすぎて何から話していいのかわからない…

元会長「絢瀬さんのこと聞きたいんでしょ?」

沈黙を破り話し始めたのは意外にも先輩のほうからだった

希「はい…。お二人は付き合ってるとかそういうのなんですか…?」

元会長「まさか」

希「じゃあなんで…!」

元会長「なんでかしらね。しいて言うならあの青い瞳、綺麗なブロンドの髪、白い肌、私が支配できたらどんな快感なんだろうっていう興味本位かしら」

そんな理由で!と言いかけた言葉を飲み、怒りで震えるこぶしを握り締めた

元会長「それに私と絢瀬さんはよく似てるわ」

昨日と同じような不敵な笑みを浮かべうちをじっと見つめる先輩

希「もう…」

元会長「ん?」

希「もうエリチに近づかないでください…お願いします…」

本当は下げたくない頭を下げ先輩に懇願する

109: 2014/10/10(金) 02:36:32.95 ID:JFNmbleB.net
これ以上先輩の口からエリチのことを聞いてしまったら本当に殴ってしまいそうだ…

元会長「それは無理なお願いね」

希「お願いします…」

元会長「人に物を頼むときはそれ相応の等価が必要だと思わない?東條さん」

にやっと笑みを浮かべコーヒーカップの淵をなぞりながらこっちを見つめる先輩にうちは目線をを逸らした

希「なにが…なにが望みなんですか…?」

元会長「それは…ねぇ」

言わなくてもわかるでしょ?と言いたそうな目線を向ける先輩

握りこぶしをさらに強く握り覚悟を決めるように目を瞑った

希「わかり…ました…」

その言葉に先輩はまた不敵な笑みを浮かべ机越しにうちの髪をそっと撫でた

元会長「素晴らしい友情ね」

希「…っ」

エリチ…ごめんなさい…

118: 2014/10/12(日) 01:15:54.88 ID:QTBm2BlJ.net
絵里Side

希に先輩とのことを見られ話さなきゃと思うのに希の顔を見るとどうしても切り出せなかった

希は私に何も聞かず、いつもどおりに接してくれている

だけど…

私の中の罪悪感が胸の奥を苦しめ続けていた

絵里「ふぅ…」

役員がみんな帰り希もOGとの件で先に帰っていたので一人生徒会室でため息をついた

絵里「今日はこれくらいにしておこうかな」

書類を机の上でトントンと整え帰り支度を進めていると生徒会室のドアがそっと開く

絵里「ん?誰?」

「あの…」

絵里「あなた…」

どこかで見た顔、リボンと仕草で何となくあの時の下級生かと察した

絵里「どうしたの?もう下校時間とっくに過ぎてるわよ」

とくに気にも留めずその子の横を通り過ぎドアノブに手をかけたところで背中に温かい感触が伝わってきた

216: 2014/10/14(火) 01:16:25.96 ID:1H/p5LN4.net BE:507381658-2BP(0)
腰に腕を回され抱きつかれてるんだとわかった

絵里「なに?どうしたの?」

後輩「あの…また…」

絵里「また?」

後輩「私、本当に絵里先輩のこと好きなんです!」

ぎゅっと腕に力が入りさらに彼女の体温が背中越しに伝わってきた

その体は震え、鼓動が早くなってるのも感じた

いつもの子達も「好き」と言ってくれるけど必ず泣いてしまうか、そのまま避けられしまうか

そして好きでも嫌いもない彼氏持ちの子の暇つぶしの相手に付き合う関係までにしかならなかった

だからこんなに真剣に気持ちをぶつけられたのは初めてかもしれない

絵里「そう…。ありがとう。でもね…」

そこまで言って次の言葉をためらう私に彼女は不思議そうにチラっとこっちの様子を窺った

はぁ…

深いため息をし意を決し話し始める

絵里「あなたの気持ちは嬉しいわ。でも、私は好きって言われれば誰でもいいの」

218: 2014/10/15(水) 02:32:53.01 ID:IaTe+vU6.net BE:507381658-2BP(0)
その言葉に反応せずたださらにぎゅっと腕を回される

絵里「だからああいうことをしたことであなたが本気になってしまったのならごめんなさい」

ぎゅっと握られた腕をとりそっと彼女のほうへ向き直ると今にも泣きそうな顔を浮かべていた

目じりに溜まっていた涙を優しくすくいあげ彼女に出来る限りの笑顔を向けた

絵里「私みたいな最低な人間よりももっとふさわしい人があなたにはいると思うわ」

「…じゃない」

絵里「え?」

「絵里先輩は最低な人間なんかじゃありません!」

生徒会室に響く少し震えた声

彼女の目じりに溜まっていたはずの涙は幾度も頬を伝って落ちていた

「絵里先輩は最低なんかじゃないです…」

絵里「…あなたは本当の私を知らないから…」

「じゃあ教えてください…」

絵里「…ダメよ」

今まで誰からも向けられたことのない熱い視線に心が揺れそうになり彼女に背を向ける

219: 2014/10/15(水) 02:48:51.80 ID:IaTe+vU6.net BE:507381658-2BP(0)
後輩「知りたいんです!本当の絵里先輩のこと」

背を向けた私の前に回りこみまたも熱い視線をこちらに向ける

絵里「…ほら、もう帰るわよ」

話題を変えかえ うとする私の手はぎゅっと掴まれた

「私じゃ…私じゃ絵里先輩の力になりませんか…?」

絵里「え…」

後輩「絵里先輩気づいてないかもしれないですけど…私とシてるとき絵里先輩たまに悲しそうな、切なそうな顔してました…」

知らなかった…

そんな顔をしていたなんて今まで誰からも言われたことなんてなかったから…

後輩「本当は誰かに助けてもらいたかった…何か気づいてほしかったんじゃないですか…?」

絵里「な、何を言って」

まるで心を見透かされてるような言葉に動揺を隠せないでいると彼女は握っていた手を自分のほうへ引き寄せぎゅっと私を包み込んだ

後輩「私が守ってあげますよ絵里先輩」

今までそんなに話したこともない、会ったこともない彼女にかけられた言葉

それなのになんで涙が止まらないんだろう…

222: 2014/10/17(金) 02:08:35.38 ID:5loYBqk0.net BE:507381658-2BP(0)
どれくらい時間が経ったのかわからないけどすでに外は真っ暗になっていた

絵里「ごめんなさい…。もう帰らないとね」

涙で濡れた頬を拭い彼女と生徒会室を出た

泣き顔を見られたのなんて希以来だわ…

後輩に泣き顔を見られた自己嫌悪と照れくささで彼女のほうをまともに見れない…

彼女も何も話さずただ廊下に二人分の足音が響いていた

そういえば今日は希、顔出さなかったわね

そう思いながら携帯を取り出すと亜里沙からメールが届いてた

絵里「亜里沙?」

『今日は雪穂の家にお泊りします。ママもパパもいないからお姉ちゃん一人だけど大丈夫?』

後輩「?」

絵里「あ、妹からメールで」

後輩「妹さんいたんですね」

絵里「ええ。今日家に誰もいないからって」

後輩「そう…ですか」

223: 2014/10/17(金) 02:18:51.97 ID:5loYBqk0.net BE:507381658-2BP(0)
希が学校に寄らないなんて珍しいし様子見に行こうと思ってからちょうど良かったわ

絵里「じゃあ、私寄っていかなきゃいけないところからあるからここで失礼するわね。あなたも気をつけて帰って」

そういい残し門を出ようとした私の手はぎゅっと掴まれた

絵里「…?」

後輩「あのこれ私のアドレスと携帯の番号です。いつでも…いつでも待ってますから」

それだけ言うと彼女は私とは別方向の道へパタパタと走っていった

小さな可愛いメモ帳に書かれたアドレスと番号

かけることもメールすることもないとは思ったけどなぜかその場でクシャクシャに丸めることも出来ず制服のポケットにそっと閉まった



希の家のマンションにつくと電気は点いておらずまだ帰ってきていない様子だ

絵里「こんな時間まで何してるのかしら希」

一応部屋の前まで行きインタホーンを押すが応答はない

絵里「やっぱ留守か…」

二人分買った弁当のうちの一つをドアノブにかけ帰ろうかとUターンすると

マンションの下のほうで車が止まる音と女性の声が聞こえてきた

232: 2014/10/20(月) 03:07:40.05 ID:MZ31zdf3.net BE:507381658-2BP(0)
聞き取れないほどの声だったのになぜか私は誘われるかのようにマンションの下、声のするほうへ顔を向けた

街灯に照らされた車の横で二人の女性が何か話してるが見えた

後姿で顔は見えずただわかるのはうちの高校の制服を着てる子がいるということだけ

絵里「あの制服うちのね」

希以外にもここに生徒の誰かが住んでたのね

あんまり見るのも悪いと思い顔を背けようとしたとき制服の少女の頬にもう一人の女性がキスをするのが見えた

絵里「え、ちょっ」

あまりのことに動揺しそらそうとした目がそらせず二人の姿をじっと見つめていた

しばらくすると車は走り去っていきずっと私に後姿を向けていた制服姿の少女がこちらのほうへ体を向けた

その際街灯に照らされたその子の顔がはっきりと見え…

絵里「え…希…?」

242: 2014/10/21(火) 03:09:40.54 ID:B1xJ8tco.net BE:507381658-2BP(0)
まさか…と思いもう一度よく彼女の顔を見ようと凝らした見てみたけど

希らしき女性はすでにエントランスに入っていき見えなくなっていた

絵里「嘘…」

あれは本当に希…?

でも音ノ木坂の制服を着てた…

いやでもあれは希に似た生徒が住んでるだけよ…

そう自問自答を頭の中で繰り返しているとこっちに近づいてくる足音が聞こえてくる

希「エリチ…?」

絵里「希…」

希「どうしたん?こんな時間に」

嘘であってほしいと思っていたのにさっき下で見た制服を着た少女が今私の目の前に立っているという現実に

溢れでそうな涙を堪え見られないように目元を腕で覆った

絵里「希こそこんな時間までどこ行ってたのよ…」

希「…うん。ちょっとOGの人と話し込んでしもうて」

絵里「そう…」

243: 2014/10/21(火) 03:21:15.55 ID:B1xJ8tco.net BE:507381658-2BP(0)
希「あ、お弁当買ってきてくれたん?ありがとう。お茶入れるからはよあがって」

話し込んでたって…

キスをしてたのはじゃあ何だったの…

そんなこと聞く勇気もなく心の中で黒い何かがうずまいていくのがわかった

絵里「…どうして嘘つくの…?」

希「え?」

絵里「本当は恋人と会ってたんでしょ…」

希「な、何言うてん、エリチ」

明らかに動揺した顔を浮かべドアの鍵をあけようと背を向けた希に

自分でもわからない怒りを覚え希の背中越しに扉に両手をついた

ドンっという鈍い音が響き背を向けていた希がこっちへ振り返る

希「エリチ!?」

絵里「…っ」

そのときに見えた首筋に残る赤い痕…

力が抜けるように両手を扉から離すと私はそのまま希に背を向け歩き出した

249: 2014/10/22(水) 20:42:33.89 ID:H7/Jfupp.net
希「エリチ?」

絵里「ごめんなさい。今日は帰るわ…」

それだけ言い残しマンションを出ると希の部屋があるほうを見上げた

希はまだその場に立っていて私に軽く手を振っていた

それに軽く笑顔で返すと私はどこへ向かうでもなくただその場から逃げるように歩き出した



しばらく歩き近くの公園のベンチに腰をかけ空を仰いだ

星空は見えずどんよりとした雲が広がって今にも雨が降りそう

絵里「…バカよね…」

こんな汚れた私をいつも笑顔で見守ってくれていた希が私のこと好きなんじゃないか

なんて自惚れていた自分がバカバカしく思えて

寂しく思えて

絵里「…バカすぎて…」

次第に視界がぼやけていき涙と共にぽつ、ぽつと降ってきた雨が私の頬を濡らしていった

255: 2014/10/23(木) 04:45:53.64 ID:ECgt9d6g.net
どれくらい経ったんだろう…

ポケットに入れていた携帯を取り出そうとポケットに手を入れるとなにか紙に触れそれを取り出した

絵里「これ…」

『後輩「あのこれ私のアドレスと携帯の番号です。いつでも…いつでも待ってますから」』

あの子の携帯の番号がかかれた紙

雨で濡れ文字が薄くなっていたけどなんとか読めるその番号に私は電話をかけていた

プルルル

とコール音が続きしばらくするとあの子の声が耳元で響いた

後輩「もしもし?」

絵里「…」

電話をかけたものの何を話せばいいのかわからず言葉が出てこない

後輩「もしもし?どちらさまですか…?」

私は何をやってるんだろう…

あの子に電話したってしょうがないじゃない…

電話を切ろうと携帯を耳元から離そうとすると「もしかして先輩ですか?」という声がかすかに聞こえた

262: 2014/10/24(金) 02:57:29.64 ID:3jfNfmLU.net
絵里「えっと…」

思わず答えてしまった声が聞こえたのか「やっぱり先輩なんですね」という声が電話口から響いた

私はもう一度携帯を耳元につける

絵里「ごめんなさい、急に電話して…」

後輩「いえ!全然嬉しいです!それよりどうかしたんですか?」

絵里「あ、うん…。なんとなく…ね」

一瞬の静寂

後輩「もしかして先輩今外ですか?」

絵里「え?…ええ」

後輩「どこですか?行きます!」

絵里「え!こ、公園…」

彼女の勢いに押されるようにそう答えると

後輩「わかりました!」

という元気な返事とともに電話は切れた

絵里「公園ってだけでわかるのかしら…」

264: 2014/10/24(金) 03:08:15.21 ID:3jfNfmLU.net
ふぅ…とため息をつきどんよりとした空を見上げる

雨はまだ降り続き私の体中を冷たく濡らしていく

もう一度携帯の画面に目を向け着信履歴から希の名前を見つけるとそのまま私はかけようかかけまいか迷っていた

希…

色んな日々が頭を巡りまた溢れ出してきた涙を隠していた雨が突然止まり私は下げていた顔をあげた

すると目の前には息を切らした後輩の姿…

後輩「先輩なんで傘さしてないんですか!」

ほっとしたような嬉しいようなよくわからない感情がわきあがり私は思わず彼女をそっと抱き寄せていた

後輩「せ、先輩?」

絵里「ごめんなさい…。しばらくこのまま…」

冷たくなった体に伝わる彼女の温もりはいつも私を優しく包んでくれる希と重なって

溢れる涙を抑えきれなくなっていた

271: 2014/10/25(土) 03:38:34.77 ID:gT55bcUp.net
絵里「あったかい…」

ぽかぽか火照るような彼女の温かさに頭がぼーっとして意識が遠のいていくがわかった

絵里「あれ…」

後輩「先輩?大丈夫ですか?」

絵里「ごめんなさい…頭がぼーっと…」

後輩「先輩!」

そのまま私は彼女に身をゆだねるように倒れこんだ

遠のいていく意識の中、私はやっぱり希のことを考えていた…

私を置いて走っていく希の背中を見送るだけしかできない

そんな夢を


絵里「…ん」

目が覚めると見慣れた天井と慣れたベッドの感触

絵里「私…」

重たい体を持ち上げるとおでこに乗っていたタオルがぽとっと落ちた

そしてベッドの脇で眠る後輩の姿が目に入った

279: 2014/10/27(月) 04:29:53.27 ID:otlUNFfG.net
絵里「えっと…」

辺りを見回してみると見慣れた家具や小物

後輩「んっ…先輩?」

ベッド脇で寝ていた後輩が目を覚まし私のほうへ顔を向けた

絵里「私あのあと…」

後輩「あのあとすごい熱で倒れたんですよ先輩。家の場所わからなかったので生徒手帳見ちゃいました」

そういって差し出された生徒手帳を受けとると彼女はもう一つ私に何か手渡した

後輩「あとこれ…」

差し出された写真に写っていたのは私と希

仲良くなって初めて二人で撮った写真だった

後輩「生徒手帳開いたら一緒に挟まってて…すいません勝手に見ちゃって…」

申し訳なさそうに俯いてしまった彼女に私はそっと微笑んだ

絵里「いいのよ。どうせ捨てるつもりだったから」

後輩「…え?でも大切なものなんじゃ…」

絵里「ただの友達がこんな写真肌身離さず持ってたら嫌でしょ?」

280: 2014/10/27(月) 04:43:40.44 ID:otlUNFfG.net
後輩「そんなこと…」

絵里「いいのよ本当に」

そう言ってゴミ箱に写真を捨てる

捨ててしまった写真を見ると気持ちが揺らいでしまいそうで私はすぐに視線を逸らしベッドにそのまま腰をかけた

後輩はゴミ箱と私の顔を交互に見ると困ったような視線を私向けた

そんな空気を断ち切るかのように鳴り響いたインターホン

絵里「亜里沙かしら」

逃げるように部屋から出て玄関のドアと開けるとそこには希が立っていた…

希「おはよ、エリチ」

絵里「な、え?、希?どうして」

希「今日、土曜やけど生徒会の仕事あるから一緒に行こうって言ったやん」

絵里「あ、ああ、そういえばそうだったわね…」

昨日の今日で希に会いいつものように振舞えずしどろもどろになる私をよそに

希は何事もなかったようにいつものように玄関で靴を揃え私の家へあがる

希「今日亜里沙ちゃんいないん?」

281: 2014/10/27(月) 04:58:27.21 ID:otlUNFfG.net
絵里「え、ええ…。雪歩ちゃんのところに…」

後輩「先輩?」

私の部屋のドアが開き後輩が顔を覗かせる

一瞬止まる空気に私は「あちゃー…」と思いつつも希がどういう反応をするのか少し期待していた…

希「えっと、お邪魔やったかな?」

苦笑いを浮かべた希はすぐに脱いでいた靴をはきなおしこちらに背を向けた

後輩「あ…!ち、ちがうんです東條先輩!昨日、先輩雨で…!」

絵里「ごめんなさい希。さっきに行っててくれる?」

後輩の言葉を遮るように割って入った私の言葉に一瞬びっくりした顔を向けた希は

いつものように優しく微笑み「わかった」とだけ言い部屋を出て行った

あの雨の中ずっと外にいたこと知られたくなかった…

知ってしまったらきっと察しのいい希はわかってしまう…

昨日私が全て見てしまっていたことも、傷ついていたことも…

そして希からあの女性との関係を話されることが恐かった…

絵里「はぁ…」

292: 2014/10/29(水) 03:14:58.02 ID:zI4rPsvB.net
下がりきってない熱のせいで頭がぼーっとしその場に座り込んだ

後輩「大丈夫ですか!」

絵里「ええ、大丈夫よ…。早く支度しないと」

後輩「まだ熱下がってないのにダメですよ!」

重い体を引きずるように部屋へ向かうとクローゼットから制服を取りだした

絵里「生徒会長である私がこんな大変な時に休むわけにいかないのよ」

後輩「でも…」

絵里「そろそろ妹も帰ってくると思うからあなたも早く家に帰ったほうがいいわ。親御さんも心配してるでしょ」

まだ何か言いたげに私を見つめていた彼女はそれ以上何も言わず近くにあった自分の制服の上着に袖を通した



絵里「昨日は本当にありがとう。感謝してるわ」

家の前でそう彼女に告げると彼女は大きく首を横に振り私に抱きついた

後輩「またいつでも呼んでくださいね」

彼女の気持ちを利用し優しさに甘えてしまった罪悪感でその言葉に何も答えられず

ただ寂しそうに私を見上げる彼女の唇にそっと自分の唇を重ねた

293: 2014/10/29(水) 03:30:13.15 ID:zI4rPsvB.net
希Side

カフェを出て先輩の車に乗り込んだうちは先輩のほうを一切見ずただ流れていく景色をずっと見つめていた

だから自分がどこに向かってるのかも、今先輩がどんな顔をしてるのかもわからなかった

元会長「着いたわ」

そう言って車が止まった場所は見慣れたマンションの前だった

希「ここ…」

元会長「役員の住所と連絡先くらい頭に入ってるわ」

希「うちの家でってことですか…?」

家族とエリチ以外いれたことない部屋

エリチとのたくさんの思い出が詰まった部屋でうちのことを穢すつもりなんか…

怒りに震える手をぎゅっと握り締めた

元会長「私別に絢瀬さんと同じことするとは一言も言ってないわよ」

希「じゃあ何が望みなんですか…」

元会長「それは追々…ね?」

またあの笑み…

294: 2014/10/29(水) 03:47:44.32 ID:zI4rPsvB.net
元会長「今日はもう遅いから送ってあげただけよ」

希「そう…ですか」

少し残る不安と先輩の笑みに恐怖を覚えながらも車から出ようとすると

先輩に腕を掴まれ首筋に唇を押し当てられたのがわかった

希「ちょっ…!なにす…っ!」

慌てて離れ車から降りると先輩も車から出てきた

希「…失礼します」

マンションへ入ろうと先輩の横を通り過ぎたときまた腕を掴まれ今度は唇が触れる寸前まで顔を近づけられる

元会長「楽しみだわ。東條さんが私の望みかなえてくれるの」

希「…っ」

先輩を振り切るようにマンションホールへ入りエレベーターを待ってる間何度も何度もエリチの名前を頭の中で叫んだ

エリチ…エリチ…会いたい…

自分の家の階につき部屋の近くまで行くと今すごく会いたかった人が立っているのが見え涙が溢れそうになる…

希「エリチ…?」

301: 2014/10/30(木) 02:54:23.04 ID:qZT2vGPB.net
絵里「希…」

今にも抱きつきたい衝動を抑えエリチの前まで行くとエリチは何か言いたそうにうちのほうをじっと見つめていた

希「どうしたん?こんな時間に」

鞄から鍵を探しながらそう聞くとエリチは小さな声がこう聞き返してきた

絵里「希こそこんな時間までどこ行ってたのよ…」

さっきまでのことが頭を過ぎり思わず体がびくっとはねた

希「…うん。ちょっとOGの人と話し込んでしもうて…」

絵里「そう…」

エリチに悟られないように目を逸らすとドアノブにビニール袋がかかっているのが見えた

希「あ、お弁当買ってきてくれたん?ありがとう。お茶入れるからはよあがって」

話題をそらすようにそう続けた私にいつもとはちがう声のトーンのエリチが話を続ける

絵里「どうして嘘つくの?」

希「え?」

絵里「本当は恋人と会ってたんでしょ…」

希「な、何言うてん、エリチ」

303: 2014/10/30(木) 03:24:38.70 ID:qZT2vGPB.net
さっきの見られてた…?

動揺を隠すようにエリチに背を向け玄関の鍵を開けようとするが手が震え上手く開かない

するとドンっという音と共に背中越しにエリチを感じびっくりして思わず振り返った

希「エリチ!?」

一瞬見えたエリチの表情は今にも泣きそうな…寂しそうな…そんな目をうちに向けていた

希「エリチ…?」

すぐにエリチはうちから顔を逸らし背を向けると肩から落ちた鞄をかけ直しながら小さな声で

絵里「ごめんなさい。今日は帰るわ…」

そう呟き行ってしまった

あの目は何やったろう…

そう思うと同時に胸の奥で何かがズキンと痛んだ



部屋に入りエリチが持ってきた弁当を開けるとうちの大好きな焼肉弁当

希「ほんまエリチはどんどん好きにさせるんやから…罪な女やなまったく」

嬉しいような、恥ずかしそうようなそんな笑みを浮かべ制服のブレザーのボタンに手をかけると外で雨の音が響いていることに気づいた

310: 2014/10/30(木) 16:27:43.74 ID:qZT2vGPB.net
窓のほうに近寄り外を見るとすごい雨

希「エリチ大丈夫かな」

鞄に入れていた携帯を取り出し履歴からエリチを探しかけようとしたが躊躇った

希「そんなにうちから遠くないし大丈夫かな」

かけるのをやめ携帯を机の置くと着替えの続きをしに寝室へ向かった

この時エリチに電話をかけなかったことを後々後悔するなんて思ってもみなかった…



希「…ん」

目覚ましと小鳥のさえずりの音で目を覚ますとまだ眠たい体を起こしカーテンを開けた

昨日の雨はすっかりあがり綺麗な青空が広がっていた

希「いい天気」

いつものように軽く朝食を済ませ身支度も整えるといつもよりは少し遅い時間に家を出た

今日は休みだけど生徒会の仕事がある日

エリチの家につき部屋の前までいくとインターホンを押す

しばらくするとガチャとドアが開きいつもなら亜里沙ちゃんが出るのに今日は珍しくエリチ本人が出てきた

317: 2014/10/31(金) 02:32:37.79 ID:8pjt24gO.net
希「おはよ、エリチ」

絵里「な、え?、希?どうして」

何時間かぶりに見たエリチの顔は赤く目を泳がせ動揺してるのが目に見えてわかった

希「今日、土曜やけど生徒会の仕事あるから一緒に行こうって言ったやん」

絵里「あ、ああ、そういえばそうだったわね…」

しきりに後ろを気にしながら話すエリチに疑問を抱きながらもエリチ越しに家の中をチラっと覗いた

そして脱いだ靴を脱ぎ揃えながらさっきから気になっていたことを聞いた

希「今日亜里沙ちゃんいないん?」

絵里「え、ええ…。雪歩ちゃんのところに…」

するとふいにエリチの部屋のドアが開き見たことのある女の子が顔を覗かせた

後輩「先輩?」

あ…

その顔を見てすぐに誰だかわかった

あの日生徒会室で見た1年生の子

希「えっと、お邪魔やったかな?」

318: 2014/10/31(金) 02:53:59.98 ID:8pjt24gO.net
エリチは一度関係を持った子と二度することなんて早々ないことくらい知ってた

だから気持ちだけは絶対に彼女達に向いてないと…

気持ちだけはうちにちょっとでも向いてくれていると心のどこかで信じてた

なのに…

後輩「あ…!ち、ちがうんです東條先輩!昨日、先輩雨で…!」

絵里「ごめんなさい希!」

そんな後輩の子の言葉に振り向いたうちを突き放すようにエリチの声が玄関に響いた

絵里「先に行っててくれる…?」

希「…わかった」

いつものように笑顔で返してみてもエリチは最後までうちの目を見てはくれなかった…

エレベーターを待つ間ズキンズキンと何度も胸が痛み制服をぎゅっと握り締めた

一切目を合わせてくれなかったエリチのあれは拒絶…

希「なんや元からうちに勝ち目なんて一つもなかったんやな…」

他人を寄せ付けないエリチの傍にいれる自分がほんの少し

エリチの中で一番であるんじゃないかと思っていたことがおかしく思い変な笑みがこぼれた

321: 2014/11/01(土) 03:43:48.16 ID:HluQSoaq.net
学校に着くと役員数名がすでに来ていて軽く挨拶を交わすといつもの自分の席へ腰をかけた

エリチはまだ来てないみたい

今朝のことが頭を過ぎり泣きそうになるのを堪え俯いた

うちがこんな顔してたらエリチが困るやん…

軽く自分の頬をペシっと叩き渇を入れる

希「よし!今日はなんやったっけ?」

役員「えっと、廃校の件であがったOGの意見と保護者の意見をまとめて~」

役員の子の話に耳を傾けていると生徒会室のドアが開きエリチが入ってきた

絵里「おはよう」

役員の子たちに挨拶をしながらうちのほうへ歩いてくるエリチのほうが見れず顔を逸らしていると

絵里「おはよ…」

と一言うちに話かけそのままいつもの席についた

すぐに「おはよう」と返そうしたけど上手く言葉が出ずすぐにエリチは役員の子達に囲まれ仕事に追われてしまった

希「…はぁ」

せっかく渇いれたのにこれじゃ全然ダメやん…

322: 2014/11/01(土) 03:55:39.03 ID:HluQSoaq.net
割り振られた仕事にみんなが走り回ってる間

いつの間にか生徒会室にはうちとエリチの二人っきりになっていた

ペンを走らせる音と紙のこすれる音、部活動をしている生徒の声だけが室内に響いていた

なんか話さないと…

そう思うのにいつものように話題が上手く出てこず無言だけが続いてた

絵里「…はぁ…」

ふいについたエリチのため息に思わずそっちへ顔を向けるとエリチは辛そうな顔を浮かべ額には尋常じゃないほど汗が滲んでいた

希「エリチ大丈夫?具合悪いん?」

絵里「平気よ…。ちょっと疲れただけ…」

そういいながらも息も荒くペンを掴む手は少し震えていた

すぐにエリチのほうへに駆け寄り額に手を添える

希「やっぱり。すごい熱あるやん!」

絵里「平気よ…。ちょっと休めば大丈夫だから」

希「何言うてるん!早く保健室行かないと」

絵里「でも…」

328: 2014/11/03(月) 04:05:48.30 ID:3Xs3gogq.net
半ば強引にエリチの手を取り保健室へ連れていくと休日ということもあって先生は不在だった

職員室で事情を説明して鍵を受け取るとエリチを保健室のベッドへ寝かせた

絵里「ほんとに平気なのに…」

希「38度も熱あるのに何言うてるん。まったくエリチはすぐ一人で抱え込むんやから」

絵里「…ごめんなさい」

子供のようにしゅん…と落ち込むエリチにうちは微笑みながらそっとエリチの頭を撫でた

希「あとはうちと役員の子で回すからとりあえず寝とき」

氷枕をエリチに渡すと額にそっと手を添えた

希「エリチ、会長としての責任感あるのはわかるけどこういうときくらいはもっと周りを頼ってくれんと」

絵里「そうね…。ごめんなさい。迷惑かけるわね」

希「迷惑って、うちと役員のみんなはそのためにいるんやで?だから迷惑なんて誰も思ってるわけないやん」

希「むしろもっと頼ってほしいってみんな思ってるんやけどね」

そういって意地悪そうな笑みを浮かべるとエリチも優しく微笑んだ

絵里「今度からは素直に甘えさせてもらうわ」

希「今日からやろ?」

331: 2014/11/04(火) 04:20:39.66 ID:meO5yaZv.net
その言葉にエリチは微笑みながら小さく頷いた

希「ほら、もういいから寝て」

ゆっくり促すように横にならせるとエリチが目を瞑るのを見届け保健室を出た

久しぶりにエリチと他愛もない会話をした気がして顔がニヤけていくのが自分でもわかる

役員「あ、希先輩!」

ふいに名前を呼ばれニヤけていた顔を普段の表情にさっと戻す

危なかったぁ…

希「どうしたん?」

役員「生徒会室にいなかったので、絵里先輩は?」

希「エリチは体調悪いみたいやから今日は休ませてあげよ」

役員「え!絵里先輩大丈夫なんですか?」

希「大丈夫大丈夫。ただの風邪やから。その資料うちが代わりに見るから生徒会室もどろか」

役員「はい!」

エリチの笑った顔を見てからうるさいくらいに鳴る鼓動

エリチの心の中にはうちなんていないのかもしれない…でも、やっぱりうちはエリチのこと好きや…

332: 2014/11/04(火) 04:34:21.67 ID:meO5yaZv.net
絵里Side

絵里「…ん」

いつの間にか寝ていたのか目が覚めると部活動をする生徒の声も聞こえなくなり室内は夕日でオレンジ色に染まっていた

絵里「今何時…」

まだ熱が下がりきってないのか重たい体を起こしベッドから降りるとカーテンを開けた

夕日の眩しさに目を細めながら時計を見ると時計は16時過ぎをさしていた

生徒会の仕事はとっくに終わってるはず

ふらつく体でなんとか歩きながらドアのほうへ寄っていくとすぐ傍にあったソファーに誰かが眠っているのが目に入った

絵里「…希」

座りながら寝息をたてている希の横には二人分の鞄があった

絵里「もしかして私が起きるの待ってて…」

夕日に照らされた希の綺麗な横顔に導かれるように希の傍まで歩いていくとその場にしゃがみこみそっと希の髪に触れた

絵里「希…」

好きよ…

例えあなたの目に私が映っていなくても…

340: 2014/11/05(水) 02:42:02.18 ID:54512XXk.net
希「…ん…エリチ?」

希が目を覚まし慌てて手を引っ込めた

絵里「ごめんなさい。起こしちゃったかしら」

希「ううん。それよりエリチもう大丈夫なん?」

絵里「まだ少しぼーっとするけど大丈夫よ。ありがとう希」

希「ううん」

希は軽く伸びをすると私と自分の分の鞄を持ち立ち上がった

希「帰ろっか」

絵里「ええ」

保健室を出て昇降口に向かう途中目の前を歩く希の首筋に目を向ける

うっすらとまだ残るキスマークの痕に胸がズキンと痛んだ

希「エリチ?」

ふいに振り向いた希と目が合う

絵里「…ん?」

希「大丈夫?なんか辛そうな顔してるけど」

341: 2014/11/05(水) 02:50:01.98 ID:54512XXk.net
絵里「大丈夫よ。行きましょ」

悟られないようににこっと笑いながら立ち止まっていた希の横を通り過ぎ歩きだした

いっそ告白して潔く振られたほうがいいのかな

そう考えても見たけどそうなったら希と友達に戻れる自信がない…

だけど希が恋人とのしるしを付けながら私の前で笑っている姿に耐えられる自信もない…

こんなことなら…

絵里「…好きになるんじゃなかった…」

希「ん?」

後ろを歩いていた希が私の前に出てきて首をかしげた

希「エリチ今なんか言った?」

絵里「…ううん。なんでもないわ」

こんなに辛いならもう誰も好きになんてならない…

私は好きの気持ちを胸の奥へ奥へとしまいこんだ…

345: 2014/11/05(水) 22:48:51.00 ID:54512XXk.net
希Side

生徒会の仕事を何とか役員とうちだけで回し終わらせた

達成感とやっぱりエリチの存在の大きさを思い知らせた

希「やっぱエリチはすごいなぁ…」

そんなエリチの傍に入れる優越感とも似た感情に思わず笑みがこぼれた

役員「希先輩、お疲れ様です」

希「お疲れー」

最後の役員の子を見送り生徒会室の鍵を閉めると二人分の鞄を手に保健室へ向かった


希「エリチー?」

そーっと小さな声でエリチがねていたベッドのカーテンを開けるとエリチは小さな寝息を立てていた

起こさないようにエリチの額にそっと手を添える

希「まだちょっと熱いかな」

冷えピタ的なものなかったかなあ

そう思いエリチの傍を離れようとしたとき急に腕をぎゅっと掴まれた

絵里「…で」

346: 2014/11/05(水) 22:56:38.19 ID:54512XXk.net
希「ごめん、起こしてもうたかな?」

振り返るとエリチは目を瞑ったまま何かに魘されてるかのように眉間にしわをよせていた

絵里「…行かないで…」

希「エリチ?」

絵里「…行かないで希…」

その瞬間ふっと掴まれていた腕がはなされエリチはまた寝息を立て始めた

希「エリチ…。何か恐い夢でみ見たん?」

寝息を立て聞こえるはずもないエリチにうちはそう語りかけ

汗で濡れていた頬をそっと撫でた

希「…エリチこそうちを置いて行かないで…」

うちエリチのこと好きなんよ…

こんなことしちゃうくらい好きなんや…

エリチの唇にそっと自分の唇を重ねた

351: 2014/11/06(木) 03:00:48.44 ID:FBc5gyHF.net
絵里「…ん」

エリチの声にバッと体を離すと自らした行為にびっくりし口元をぎゅっと押さえた

動揺を隠し切れずエリチの傍から離れると近くのソファーに腰をかけた

希「ははっ…段々気持ちも行動も抑えきれなくなってきてるやん…」

人って動揺しすぎるとほんまに笑いがこみ上げてくるんやな…

そんなことに関心しつつまだ残るエリチの唇の感触にそっと自分の唇をなぞった

希「…柔らかかったな…って、うちは変態か!」

自分でノリツッコミをして余計に恥ずかしくなり顔がどんどん火照っていくがわかる

希「…はぁ…ほんまにエリチとキスしちゃった…」

鏡を見なくてもきっと今真っ赤な顔してる…

心臓もどくんどくんと跳ね 頭の中はエリチのことでいっぱいになっていた

希「…諦めるつもりやったのに…」

うるさいくらい体中が『エリチが好き』だと伝えている

希「…好きって…言っちゃおうかな…」

そう呟きながら眠気に体を預けた

361: 2014/11/07(金) 01:50:34.75 ID:17Cc90bD.net
希「…ん」

目が覚めると室内はオレンジ色に染まり日が暮れていた

うちいつの間に…

そして何か髪に伝わる感触

希「エリチ…?」

そのほうへ目を向けるとエリチの顔が至近距離にあり一瞬びくっと体がはねた

絵里「ごめんなさい。起こしちゃったかしら」

そう言って立ち上がりうちに背を向けたエリチ

もしかして今うちの髪…

そんな期待が頭を巡った

希「ううん。エリチもう大丈夫なん?」

絵里「まだ少しぼーっとするけど大丈夫よ。ありがとう希」

希「ううん」

エリチ、耳まで赤いのは熱のせいなん?

それとも…

362: 2014/11/07(金) 01:55:55.28 ID:17Cc90bD.net
希「帰ろっか」

絵里「ええ」

そんな顔されたら期待しちゃうやん…

照れたように目線をずらすエリチにとくんと胸が騒いだ

顔がほころぶの悟られないようにエリチの前を歩き保健室の扉を開けた

しかしエリチはぼーっとしたままついてこない

希「エリチ?」

絵里「…ん?」

さっきまでとは違う顔を見せうちをじっと見つめていた

希「大丈夫?なんか辛そうな顔してるけど」

絵里「大丈夫よ。行きましょ」

そう笑って返したエリチだけどやっぱりさっきまでとは違くて…

先を歩くエリチへ慌てて駆け寄った

絵里「…じゃなかった…」

希「ん?エリチ今なんか言った?」

366: 2014/11/07(金) 02:00:54.28 ID:17Cc90bD.net
絵里「…ううん。なんでもないわ」

また何か一人で抱えてるんエリチ…

そう思ったと同時に体が動いていて

絵里「…希?」

うちはエリチの腕をぎゅっと掴んでいた

絵里「どうしたの?」

希「ほんまは言わないつもりやったんやけど…」

そこまで切り出したところで言葉が詰まった

振られたあとのこと考えてなかった…

でもここまで言ってしまったらもう!

希「あの…ね…」

絵里「どうしたの希?変よ?」

ああもうどこまで鈍感なんエリチ

こんな自分でもわかるほど顔真っ赤にして目も合わせられなくて

言葉につまるほど言いたいことなんて決まってるやん…

370: 2014/11/07(金) 02:15:41.66 ID:17Cc90bD.net
希「うちエリチのこと…」

そう言いかけたときエリチの腕がかすかに震えているのがわかった

希「…エリチ?」

エリチのほうへ顔をあげるとエリチはうちではなく昇降口のある一点をずっと見つめていた

その視線のほうへ目を向けるとうちもエリチも見慣れた人が立っていて

うちはエリチの腕を引っ張り自分の後ろへと隠した

絵里「…希?」

元会長「お休みの日にこんな時間まで残ってるなんてやっぱり廃校の件厳しいの?」

希「そんなことないです。みんな精一杯動いてるので」

先輩はうちの後ろに隠れているエリチのほうをじっと見つめながら笑みを浮かべた

元会長「手、貸しましょうか?寄付金くらいならうちで出せると思うけど?」

エリチの顔色を窺ってるのかうちとはいっこうに視線の合わない先輩に苛立ちを隠しつつ冷静に言葉を返す

希「大丈夫です。うちらでなんとかしてます。…あなたの手なんか絶対に借りない…」

聞こえるか聞こえないかくらいの声でそう呟くと後ろにいたエリチもすっと前に出てきた

希「エリチ?」

377: 2014/11/09(日) 02:55:38.96 ID:0ta+xkUI.net
絵里「これは現生徒会の仕事です。私が…私と希とみんなで何とかします」

真っ直ぐに先輩を見つめるエリチの体は少し震えていた

だけどその顔はいつもの仕事モードのキリっとしたエリチの顔でうちの頬が少し緩む

そのエリチの顔に先輩は一瞬唖然としてすぐにいつもの顔の戻りに笑顔を見せた

元会長「それもそうね。今の生徒会はあなた達が作ってるんですものね」

先輩は笑みを浮かべた顔を崩さないままうちとエリチのほうへ近づいてきた

エリチは体がびくっとはね足を後ろにそっと下げるとうちの手をぎゅっと握る

元会長「東條さん」

自分の名前ではなくうちを呼んだことにびっくりしたのかエリチは目を見開きうちのほうへ顔を向けた

希「なん…でしょうか」

元会長「あの件のことでお話があるから今度時間作ってもらえない?」

あの不敵な笑み…

絵里「希…?」

不安そうにうちを見つめるエリチの手をぎゅっと握り返す

希「わかりました…」

386: 2014/11/11(火) 03:03:57.33 ID:EKtJ/Qxu.net
先輩が帰りすでに暗くなった帰り道を二人で歩く

エリチは何かうちに言いたそうにチラチラとこっちを見ていた

そりゃ気になるよね…

希「エリチ」

絵里「は、はい!」

突然名前を呼ばれてびっくりしたのか声が裏返ったエリチにうちはくすっと笑った

希「先輩の言ってたこと気になるんやろ?」

絵里「…え、ええ…。でも希が話したくないなら私は別に…」

希「うちと先輩が話すことなんて廃校の件以外にあるわけないやん」

絵里「でも…私まだあなたに何も…」

あの日のことエリチはまだうちに何も話してくれていない

でも先輩からほとんど聞いてしまったことうちもエリチに話せていない…

希「ほんまエリチは心配性やなぁ」

絵里「だって…!」

希「わかった。エリチにちゃんと会う日言うし、当日は他の役員の子と一緒に行く、それでええ?」

387: 2014/11/11(火) 03:12:32.37 ID:EKtJ/Qxu.net
まだ納得してないような顔を浮かべながらもエリチは小さくこくんと頷いた

希「ほな、うちはスーパー寄って帰るからここで」

絵里「私も一緒に行くわ」

希「ええよ。すぐそこやし」

絵里「そう。じゃあ気をつけてね」

希「エリチも」

エリチに手を振り別れうちはポケットに入れていた携帯を取り出した電話をかけた

希「あ、もしもし。東條です。あの話今からでもいいですか…?」

元会長「いいわよ。じゃああそこのカフェで」

希「…はい」

ごめんエリチ…

ごめん…



カフェにつくとすでに先輩の姿がありこっちに気づくと手を振り手招きをした

希「すいません。急に」

395: 2014/11/12(水) 03:34:10.88 ID:C1z83Lmh.net
先輩「大丈夫よ」

オーダーをとりに来た店員に「すぐ帰りますので」とだけ告げると先輩のほうへ向き直った

希「要件は何ですか…?」

先輩「今来たばかりでもうその話?」

希「これ以上エリチに嘘つきたくないんです…だから…」

無意識にスカートを握り締めていた手をさらにぎゅっと強めた

先輩「…わかったわ」

先輩はコーヒーを一口飲むとうちのほうへ顔を向けた

先輩「これを見て」

そう言って先輩は鞄から出した紙をうちの前へ出した

希「留学…?」

先輩「そう。今度留学するの」

希「これと何の関係が?」

先輩「要件は、この留学についてくること。って言ったらどうする?」

希「え…?」

397: 2014/11/12(水) 03:44:03.32 ID:C1z83Lmh.net
元会長「お金のことなら心配しないで。全部私の家が出すから」

希「…ちょっ、ちょっと待ってください!急にそんな…」

元会長「別に断ってもいいのよ。この話、元々絢瀬さんに話すつもりだったから」

急なことで頭が真っ白になり紙を持つ手が自然に震えていた

希「…ちょっと考えさせてください…」

元会長「そうよね。急な話だし、ご両親のこともあるだろうし。返事はいつでもいいわ。留学は来年だからそれまでにくれれば」

これが条件だなんて…

エリチの笑顔を取り戻せるはずなのに、うちはそんなエリチのそばにいれなくなってしまう…

頭の中を色んなことが巡り泣きそうになるのを堪え俯いた

絵里「希」

ふいに聞こえたうちを呼ぶエリチの声

幻聴?それとも夢?

そう思っているとまた「希」と名前が呼ばれた

元会長「あら、絢瀬さん」

絵里「希、何してるの?」

414: 2014/11/14(金) 03:58:34.28 ID:QeOqWWoW.net
希「エリチ、どうしてここに…」

絵里「希こそどうして…」

嘘をつかれたことへの悲しさと少し怒りにみちたエリチの表情にうちは顔を背けた

元会長「ほら、絢瀬さんにも言えない話もあるのよ」

先輩のフォローともとれる発言にもエリチは耳を傾けずに真っ直ぐにうちを見つめているのが何となくわかった…

絵里「希?」

その問いはうちの口から言えってことやんな…

でもこの状況でなに説明しても言い訳になってしまう…

何も言わないうちにしびれを切らしたのかうちから視線を外し先輩のほうへと顔を向けたエリチは

少し怒ったような口調で話し始めた

絵里「希と何話してたんですか…」

先輩は小さなため息をつくと机の上の資料をエリチに渡した

元会長「気づかれちゃったものはしょうがないわよね」

絵里「…留学?」

元会長「そう、今度留学するの」

415: 2014/11/14(金) 04:07:49.54 ID:QeOqWWoW.net
絵里「それと希が何の関係があるんですか…?」

さっきまでの口調とは違い少し声は震え弱弱しくなっていくエリチに先輩は顔色一つ変えずにそれを告げた

元会長「東條さんにも一緒に来てもらおうと思って」

絵里「…え」

一瞬固まる空気にスカートの裾を掴んでいた手にも力が入る

エリチの顔が見れない…

絵里「何言ってるの?冗談でしょ?希」

希「…ごめん」

俯いたままのうちにはエリチが今どんな顔してるのかもわからなかった

だけど次の瞬間にはうちはエリチの手に引かれカフェの外へと飛び出していた

希「エリチ…?」

ただうちの手を引き夜道を歩き続けるエリチの背中からは今エリチが怒ってるのか、

泣いてるのか、それともあきれた顔をしてるのか読み取ることはできない

しばらく歩き続けるとうちの家が見えてきてエリチの足も止まった

希「エリチ…」

416: 2014/11/14(金) 04:12:20.00 ID:QeOqWWoW.net
まだうちに背を向けたままのエリチ

希「ごめん…エリチ」

そう言ってマンションホールへ入ろうとしたうちを引き止めるようにエリチが小さく呟いた

絵里「ダメよ…」

希「…え?」

絵里「…私は留学なんて認めない…」

希「…でも」

でもあれは先輩の条件…

あれを飲まないとまたエリチが傷ついてしまう…

うちだって本当はエリチと離れるのはいや…

でもそれ以上にエリチから笑顔がなくなってしまうのがいや…

だから…

絵里「希は!」

急に大きな声をあげたエリチに驚くと同時にうちは暖かい何かに包まれた

そして目の前いっぱいに広がるエリチの優しい匂い…

417: 2014/11/14(金) 04:21:20.53 ID:QeOqWWoW.net
絵里「希は…ずっと私の隣にいないとダメなの…!」

子供みたいなことを言って耳元すすりなくエリチ

それを受け止めるようにそっと背中をそっとさすった

エリチがうちのこと大事にしてくれてるのはわかってる

でもエリチが一緒にいたいって気持ちとうちが一緒にいたいって思う気持ちはきっと

かみ合ってるようで合ってないんやで…

希「ありがとう…。でも離れてても友達は友達やろエリチ」

精一杯の笑顔を作り涙で濡れたエリチの頬を拭った

絵里「…友達…か」

希「エリチ?」

またうちから顔を逸らし背を向けたエリチはいつもとは違う感じがして…

絵里「そうよね…。希にはちゃんと恋人がいるんだものね」

希「…恋人?…なんのこと?」

驚いた顔を浮かべ振り向いたエリチ

こっちのほうがびっくりなんやけど…と心で思いながらも目を見開いたままエリチに首をかしげた

436: 2014/11/18(火) 03:09:24.72 ID:PiXh83NU.net
絵里「だって…この前…」

希「…?」

エリチの言ってることがよくわからず首をかしげていると視界からふとエリチが消えた

希「エリチ!」

その場に座り込んだエリチに慌てて同じようにしゃがみこみ声をかけた

希「大丈夫?」

絵里「…なによもう…全部私の勘違いだったの…?」

独り言なのかうちに語りかけているのかもわからないほどの声で呟いたエリチはまたうちのことをぎゅっと抱きしめた

希「エリチ?」

絵里「…やっぱり留学なんて絶対行かせない…」

さっきよりぎゅっと強く抱きしめられ少し苦しい

希「エリチ…っ、痛い…!」

絵里「ずっと…ずっと言わないつもりだった…」

絵里「先輩とあんなことになって…もう希の傍にはいられないって思ってた…」

静かにそう耳元で語りだしたエリチの腕が少し緩み痛みが段々と和らいでくる

438: 2014/11/18(火) 03:20:33.33 ID:PiXh83NU.net
絵里「いっそ嫌われてしまえばいいって思って色んな子に手も出して…」

そういって少し言葉を詰まらせたエリチの背中をそっと撫でる

希「うん…」

絵里「…でも、希は…希は変わらず私に笑顔を向けてくれた…」

耳元ですすり泣くエリチの震える声が響く

絵里「それが嬉しいって思うと同時にすごく…苦しかった…」

希「うん…」

必死に何かを伝えようとするエリチにうちはただ頷きその言葉に耳を傾け続けた

絵里「あなたを諦めきれない気持ちが…苦しかったの…」

ぎゅっと抱きしめられていた腕がほどかれエリチの綺麗な瞳が目の前で揺れていた

そして…

絵里「…好きなの…」

希「え…?」

絵里「…私、希のことが好きなの…」

好き…?

455: 2014/11/21(金) 04:20:18.07 ID:s0dSlMLo.net
絵里Side

好き

そう呟いてから自分の発した言葉の意味を理解した

慌てて希のほうへ顔を向けると希は案の定何の反応もないままただ私の顔をじっと見つめていた

ダメだ…絶対に引かれた…嫌われた…

一生言わないつもりだったのに…!

そう心の中で泣き叫びながら今の言葉の言い訳を必死で頭の中で巡らせた

でもこういうときに限って私の頭はフル回転してくれなくて…

絵里「違っ…!」

ただその一言だけが自分の口からもれた

希「違うん…?」

絵里「違っ…!くない…けど…。ああ!もう!言わないつもりだったのよ本当は…」

顔が赤くなっていくのが自分でもわかり恥ずかしさで希に背を向けた

絵里「…ごめんなさい。引いたでしょ…?」

希の顔を見るのが恐く振り向けないでいるとドンッと言う背中を少し押されるような感覚のあと背中にあたたかいぬくもりが広がった

456: 2014/11/21(金) 04:30:01.30 ID:s0dSlMLo.net
絵里「希…?」

希「…引くわけないやん…」

そういったあと少し流れた沈黙

そして…

希「…うちも好き…エリチのこと」

絵里「希…」

振り返ろうとした体を希にぎゅっと固定された

希「見ちゃダメ!」

絵里「えっ、ど、どうして」

希「今うち嬉しいのと恥ずかしいのでたぶん変な顔してるんやもん…」

そんなこと言われたら…余計見たくなるのはどうしてなのかしら…

腰にまわされていた希の腕をとり希のほうへ振り返ると希は俯きながら私の胸へ頭をぽんと当てた

絵里「希」

希の頬にそっと手を添え少し強引に自分のほうへ顔を向かせた

その顔は今まで見たことないくらいに真っ赤に染まり私を見つめる瞳はかすかに潤んでいた

473: 2014/11/25(火) 04:14:40.19 ID:Q4AQguSj.net
希Side

絵里「ほんと、真っ赤」

悪戯っぽい笑顔を向けるエリチ

希「あんまり見ないで…」

目線を逸らし両頬に添えられたエリチの手を下ろそうとするとエリチはまたうちの顔を自分のほうへ引き寄せた

絵里「見るわよ。こんな希の可愛い顔、私にだけ向けられてると思うと嬉しいだもの」

希「…ずるいなぁ、エリチは…」

そんなこと言われたらもう目逸らせないやん…

絵里「…希」

さっきまで笑顔を向けていたエリチの顔がふと真剣な表情に変わりぐっと顔の距離が縮まった

あ…、キスされる…

そう思って目を閉じたのになかなか唇に何も触れず両頬に添えられていた手がゆっくりと離れていった

希「…?」

絵里「もう遅いしそろそろ帰りましょうか?」

さっきまでの真剣な顔が困ったような笑顔に変わりエリチはうちの手をぎゅっと握った

478: 2014/11/26(水) 03:59:43.52 ID:k2g5Q9bR.net
うちのマンション前までつくとつながれていた手がすっと離された

絵里「じゃあ、また月曜日に」

そう言って優しい笑顔を向けるエリチ

希「なんや名残惜しいな…」

絵里「え?」

思っていたことがついに口に出てしまい思わず自分の口元を押さえた

希「ち、ちがうんよ!つい思ってたことが口に出ちゃっただけで…!」

なんて言い訳をしてももう聞かれてしまったのは事実で恥ずかしさで顔がみるみる熱くなっていく

希「ほな、月曜学校でな」

そう言ってエリチに背を向け歩き出そうするとエリチに腕を掴まれそのまま抱きしめられた

希「エリチ…?」

絵里「希」

目の前にはさっきと同じ真剣な顔のエリチ…

今度こそ本当に…

ゆっくり目を閉じようとした瞬間うちの肩のほうへエリチの顔がそれていった

479: 2014/11/26(水) 04:18:24.40 ID:k2g5Q9bR.net
希「エリチ?」

うちの肩に頭を乗せたエリチはそのままうちのほうへと体重を預けてきて

その重みで倒れそうになるのを必死で耐えた

希「エリチ?どうしたん?」

絵里「…はぁ…はぁ…」

荒い呼吸が耳元が聞こえ慌ててエリチの額に手を添える

希「すごい熱…!」

絵里「…はぁ…はぁ…」

熱で意識が朦朧としてるのか目を閉じたままただ荒い呼吸を繰り返すエリチを支えながら自分の部屋へと向かう


なんとか家の中までエリチを支えながら入るとそのままうちのベッドへゆっくりとエリチを寝かした

額には汗が滲み顔は苦しそうに歪んでいた

朝から体調悪かったのにうち舞い上がりすぎて…

目を閉じていたエリチの目がゆっくりと開きうちのほうへ視線を向けた

絵里「希…?なんて顔してるのよ…」

優しい笑みを浮かべうちの頬にそっと手を添えたエリチ

481: 2014/11/26(水) 04:30:07.66 ID:k2g5Q9bR.net
希「ごめんエリチ…。ずっと体調悪かったのにうち…」

あんな嘘ついて…頼ってなんて言った割りにうちが負担増やしてるだけやん…

絵里「ただの風邪なのに心配しすぎよ…それに希のせいじゃないわ」

希「でも…」

絵里「希」

希「…?」

絵里「喉渇いたわ…。それとお腹も空いた…あと着替えたい…」

希「エリチ?」

絵里「頼ってって言ったのは希でしょ…?だから…こういうときくらい甘えさせて貰おうと思って」

悪戯っぽい笑顔を浮かべ我が儘を言うエリチにうちも自然と笑みがこぼれた

希「すぐに持ってくる」

そういって台所に向かう足を止めふとエリチのほうへ振り返る

希「エリチ」

絵里「…ん?」

希「…大好き」

488: 2014/11/27(木) 15:11:14.14 ID:Ks5wlgLE.net
絵里Side

大好き

そう言った希の顔を上手く見れずただ同じように笑顔で

絵里「私もよ」

そう返した

希がキッチンに行き少し静かになった室内

寝返りを打とうと動くたびに希の匂いが広がる

絵里「…はぁ」

顔が熱くなってるのは熱のせいなのか、照れくさいのか自分でもよくわからない

自分の中でどんどん広がっていく『希にもっと触れたい』と思う感情…

目元を腕で隠しながら小さく呟く

絵里「希は今までの子たちとは違うのよ…」

もっとちゃんとしたい…大事にしたいの…

そう思うと同時に自分がどんだけ希のことが好きだったのかわかって恥ずかしくなってきた…

493: 2014/11/28(金) 04:43:39.09 ID:kIAdnSd1.net
しばらく綺麗な天井を見つめているとふと自分の家のことを思い出す

そういえば家に連絡してなかったわ…

重たい体を起こしベッド脇にあった自分の鞄から携帯を取り出し家に電話をかける

「もしもし?」

出たのは亜里沙だった

絵里「もしもし?私だけど」

亜里沙「お姉ちゃん!?どうしたの?みんな心配してるよ!」

絵里「ごめんなさい。電話をかけるの忘れていて…。今日は生徒会の仕事で希の家に泊まるからって伝えておいて」

電話をかけなかったことで心配をかけたのにさらに心配はかけまいと風邪のことは伏せた

亜里沙「うん、わかった」

絵里「じゃあ、よろしくね」

亜里沙「うん!」

携帯を切り小さなため息を一つつくと同時に部屋のドアがコンコンとノックされた

絵里「はい」

希「おかゆ出来たけど…って誰かに電話してたん?」

494: 2014/11/28(金) 04:50:36.78 ID:kIAdnSd1.net
絵里「うん。ちょっと家にね」

希「ああ…そういえばうちにいること言ってなかったね。おうちの人心配してたやろ?」

絵里「少しね」

希が責任を感じてしまいそうでそう言葉を濁し希が持っていたおかゆに目を向けた

絵里「美味しそうだわ」

希「お口にあえばええんやけど…」

ちょっと照れくさそうに私におかゆと飲み物が乗ったおぼんを渡した希

それが可愛くてつい笑みがこぼれた

絵里「いただきます」

熱々のおかゆを口に運ぶ

不安そうな顔でこっちを見つめる希に私はもちろん笑顔で

絵里「美味しいわ」

と返した

その言葉に安堵したのかその場に座り込み「えへへ」と笑う希

ああ、幸せだな…なんてがらにもないこと思ったりして私はすっかり先輩とのことなんて忘れてしまっていた…

502: 2014/12/03(水) 03:33:21.59 ID:Vd38O+Q+.net
絵里「…ん」

いつの間にか寝てしまっていたのかカーテンの隙間から日差しがさしていた

そしていつもとは違う天井に違和感を覚え起き上がると部屋を見回した

絵里「そうだ私希の家に…」

昨日のことをぽつぽつと思い出しふとベッド脇を見ると希が小さな寝息を立てベッドにもたれかかるように寝ていた

その頬に優しく触れるとぴくっと希の体がはねた

希「…ん…?エリチ…?」

絵里「ごめんなさい。起こしちゃったわね」

希「ううん。それより熱はもう大丈夫なん?」

私の額に手を添え首をかしげる希

希「だいぶ下がってるみたいやね」

絵里「うん。昨日よりは辛くない」

希「良かったー」

絵里「希の看病のおかげね。ありがとう」

希「…そんな改めて言われたら照れるやん…」

515: 2014/12/09(火) 01:14:36.89 ID:IVxXu83G.net
絵里「ふふっ」

希「…何笑ってるん…」

絵里「照れてる希も可愛いなって思って」

そういうとさらに顔を真っ赤にし私に背を向けた希

そのまますくっと立ち上がると「もうエリチはすぐそうやって…」なんて呟きながらリビングのほうへ向かった

私はベッド脇にあった自分の鞄から携帯を取り出し画面へ目を向ける

着信とメールが数件入っていてその中にあるあの人の名前を見つける

『今度ゆっくり話しましょう』

という短い文面に少し懐かしさも覚えながらもそのまま返信せず携帯を枕元におきまた布団にもぐりこんだ

絵里「…なんで希なの…?」

そんな疑問と何だか変な胸騒ぎが心をモヤモヤとさせる

絵里「あー!もう!」

携帯をまた手に取りそのメールに返事を返した

『わかりました。でも二人きりがいいです』

517: 2014/12/09(火) 01:23:47.72 ID:IVxXu83G.net
希Side

絵里「照れてる希も可愛いなって思って」

そんなことを恥ずかしげもなくさらっと言ってしまうエリチ

台所で朝ごはんを作りながらまだ高鳴っている鼓動

希「…エリチがモテるんもなんかわかった気するわ…」

まだ熱い頬を触りながら昨日のことが現実なんだとわかってつい笑みがこぼれた


簡単な朝食を作り終えエリチを呼びに行くとベッドに腰かけワイシャツのボタンをしめていたエリチと目があった

希「もう帰るん?」

絵里「ええ、いつまでも希のベッド占領してるわけにもいかないしね」

希「別にええのに」

絵里「それとちょっと用事もあるから一度家に帰らないと」

希「…そっか」

もう少し一緒にいたかったな…

なんて言葉を言う勇気もないうちの気持ちを知ってか知らずか

エリチはうちのほうへそっと歩み寄ると優しく頭をなでた

519: 2014/12/09(火) 01:40:00.77 ID:IVxXu83G.net
絵里「本当はダメだけど明日放課後どっか寄り道して帰りましょうか」

にっこりと微笑むエリチの顔にうちはまた顔が火照っていくの感じ小さく頷くことしかできなかった

そして昨日よりももっとエリチに触れたい…触れてほしい…という気持ちが大きくなっていた

絵里「…希?」

無意識にエリチのワイシャツの裾をきゅっと掴んだ

絵里「希?どうしたの?」

希「…て」

絵里「え?」

希「…キスして…エリチ…」

恥ずかしさでエリチの顔が見れずそのままエリチの胸元に顔を埋めた

昨日の今日で何言ってるん!うちのアホ!

そう心の中で叫びながらエリチの反応を待っているとそっとうちの頬にエリチの手が添えられた

そしてそのまま顔を上げると真剣な眼差しのエリチと目が合う…

まさか…するの?本当に…?でもうちどうすれば…目はいつ瞑ればいいの…?呼吸はしていいの…?

そんなことが頭の中でぐるぐると回っていた

520: 2014/12/09(火) 01:51:54.16 ID:IVxXu83G.net
絵里「…何言ってるのよ希」

希「…え?」

絵里「もっと自分のこと大切にしなきゃダメよ」

思っていたことは違うことを言われ呆気にとられるうちのそばからエリチは離れると着替えを再開した

希「…なんで…」

絵里「ん?」

なんで他の子にはするのにうちにはしないの…

なんで…

怒りにも似たこの感情をエリチにぶつけるように咄嗟に動いた体が

エリチをそのままベッドに押し倒していた

絵里「ちょっ…!希!」

制止しようとするエリチの腕を振り払いエリチの唇に自分の唇を押し付けた

絵里「っん!…のぞっ…んぅ!」

唇を押し付けては離し、押し付けては離し、それを繰り返すたびに段々大きくなる二人の吐息が部屋に響いた


どれくらいしていたのかわからないキスはうちのギブアップと共に中断しうちはそのままエリチの上に倒れこんだ

523: 2014/12/09(火) 03:19:39.22 ID:IVxXu83G.net
希「…はぁ…はぁ…」

キスの仕方なんてわからずただ無我夢中で重ねた唇

乱れた呼吸を整えながらエリチのほうへ顔を向けるとエリチは呼吸一つ乱れずにこっちを心配そうに見つめていた

絵里「希?大丈夫?」

希「…なんや悔しいわ…」

絵里「え?」

希「余裕綽々なエリチに比べてキス一つ上手くできない自分が悔しい…」

絵里「…希」

そしてなによりこんな気持ちいいエリチの唇をうち以外にも知ってる人がいるのかと思うとすごく悔しかった…

希「…ごめん。エリチ用事あるんやったね」

少し呼吸が落ち着き起き上がろうとするとエリチに腕を引かれそのままエリチの胸へと押し当てられた

希「エリチ?」

絵里「…これが余裕な人の心臓の音なわけないでしょ…」

うちと同じくらいうるさく鳴り響く心臓の音

そのまま今度はうちがベッドに押し倒された

524: 2014/12/09(火) 03:28:52.00 ID:IVxXu83G.net
そっとエリチの手がうちの前髪をなぞり頬、唇、首筋へと落ちていく

絵里「…大事にしたかったのに…」

希「ちゃんと大事にしてくれてるよエリチは…」

絵里「煽らないで…」

希「別にそんなつもりは…っん!」

さっきと同じように重なる唇と唇

でもさっきまでと違うのは長い長いキスだということ

希「…っはぁ!…くるし…っんぅ!」

息が出来ず口を少し開けたところに今度はぬるっとした何かが入ってきて

歯を撫でるように口の中でうごめいている…

それがエリチの舌であるということを理解するのに時間はさほどかからなくて

うちはゆっくりとその舌に自分の舌を絡めた

絵里「…ん…はぁ」

希「…はぁ…はぁ…」

しばらくすると自然と唇同士が離れ透明な糸がうちとエリチを繋いでいた

525: 2014/12/09(火) 03:53:45.65 ID:IVxXu83G.net
絵里「希…嫌なら嫌って言って」

希「…エリチ」

そっと頬を優しくなでてくれているエリチの顔を悲しそうな表情を浮かべていた

絵里「私は…私は希みたいに綺麗ではないから…」

希「何言うて…」

そこまでいいかけたところでエリチその言葉の意味をやっと理解した

慣れたキス…うちの知らない世界を知っているエリチ…

それでもうちは…

希「なんや全然手出してこないと思ったらそんなこと気にしてたんエリチは」

絵里「だって…」

希「気にならないって言ったら嘘になるけど…でももううちで最後やろ?」

絵里「それは…」

希「違うん?」

絵里「そ、そうよ!希以外となんてもう考えられないもの!」

希「じゃあええよ別に。それに…」

526: 2014/12/09(火) 04:03:49.15 ID:IVxXu83G.net
エリチの頬にそっと触れ綺麗な金色の髪に指を通す

希「エリチは綺麗だよ…すっごく」

絵里「希…」

どちらからともなく唇を重ね、そのままエリチに体を委ねた…


希「…ん?」

重たいまぶたをあけると窓から明るい日差しが降り注いでいた

隣を見るとエリチはベッドに腰をかけながら制服に袖を通していた

希「…エリチ」

体を少し起こしながらエリチに声をかける

絵里「希、起きたの?」

希「うん。うち…」

さっきまでの出来事が鮮明に蘇ると同時に今上に何も羽織ってないことに気づき慌ててベッドにもぐりなおした

絵里「私そろそろ帰るわね」

希「う、うん」

527: 2014/12/09(火) 04:15:30.18 ID:IVxXu83G.net
玄関まで送ろうと毛布を羽織りながらおきようとした体が優しくベッドに戻される

絵里「体辛いだろうからいいわよ。私もやりすぎて反省してるわ…」

そういって苦笑いをうかべたエリチはうちの額にキスをし優しく髪を撫でた

絵里「じゃあ月曜学校でね」

希「うん」

エリチが部屋を出て玄関の扉が閉まる音が聞こえると静かになった室内に時計の音が響いている

エリチが寝ていたところにそっと触れるとまだ少しエリチの温もりが残っていて…

希「エリチ…」

毛布に残るエリチの匂いとさっきの余韻で体がまた熱くなっていく

希「あかん…」

さっきわかれたのにもう会いたいよエリチ…

537: 2014/12/10(水) 03:44:31.11 ID:aPHrzqhF.net
絵里Side

絵里「…っ」

目を閉じると浮かんでくるのはさっきまでの希の艶やかな姿と可愛い声

絵里「希…」

体中に残る希の匂いを抱きしめるようにぎゅっと自分の両腕を掴んだ

離したくない…離れたくない…


ピンポーン

見たことがないほど大きな門の家の前で私はあの人が出てくるのを待った

しばらくすると門の扉が勝手に開き家の入り口であろうドアから彼女が顔を覗かせた

元会長「いらっしゃい絢瀬さん」

いつものようにニコっと笑い門を抜け歩いてきた私の手をそっと取った

元会長「どうぞ入って」

家に通されお手伝いさんなのか白いエプロンした女性に私は軽い会釈をし先輩の後ろをついていく

絵里「すいません急で…」

538: 2014/12/10(水) 03:54:57.21 ID:aPHrzqhF.net
先輩「いいわよ。早いほうがいいものねこういう話は。それに…聞きたいことがあるんでしょ?」

部屋の前までついたのか先輩の歩みが止まりドアが開かれた

あの門にふさわしいくらいの大きな部屋に通され思わず困惑していると先輩は私をソファーの場所へと誘導した

元会長「どうぞ座って」

絵里「失礼します…」

高級そうな皮のソファーに腰をかけると先輩はその前のソファーに腰をかけた

そのタイミングを見計らったかのようにさっきのエプロンの女性が飲み物を持ち部屋に入ってくると飲み物とお茶菓子を置いて行った

元会長「こうして絢瀬さんと二人で話すの久しぶりかしら」

絵里「そうですね…」

先輩は紅茶を少し飲むと真っ直ぐに私を見つめる

元会長「っで、東條さんから何か聞いたの?」

その問いに首を横に振る

元会長「そうなの?でも東條さんの家に昨日泊まったんでしょ?」

絵里「なんでそのこと…!」

元会長「だって今日日曜日なのに制服のままじゃない」

544: 2014/12/12(金) 01:03:10.50 ID:bi/eQ8QT.net
絵里「あ…う…」

的確な言葉に反論できず口ごもる

元会長「その顔はやっと結ばれたってところかしら?」

柔らかい笑顔で笑う先輩に少し違和感を覚え首をかしげた

それに気づいたのか先輩はカップを置き初めて会ったときのような優しい笑顔ですべてを話はじめた

元会長「私が留学するところフランスなの。元々は語学留学がメインで一人で行くつもりだった」

先輩はそのままゆっくりと立ち上がると夕日の差し込む窓のほうへ歩いていく

それを目で追いながら先輩の一字一句に耳を傾ける

元会長「フランスってね、2013年から同性婚が認められたの」

絵里「え…?」

元会長「フランス以外にももっと前から認めている国もたくさんあるけど現実を見るにはフランスが一番いいのよ…」

窓際に寄りかかりこちらへ顔を向けた先輩は少し切なそうな、寂しそうなように見えて…

私は思わず先輩のほうへ歩み寄っていた

元会長「同性同士の恋愛に差別や偏見がまだ残ってるあの地で東條さんはどう思うんだろうって思った」

窓際近くに飾られた写真に私が知らない昔の先輩とその横で微笑むどこかで見たことある音ノ木坂の制服を着た女性の姿

556: 2014/12/18(木) 03:55:34.13 ID:yXF2h8H1.net
絵里「これは…」

元会長「あぁ、その人は私が1年生のときに生徒会長だった方よ」

写真立てを手にした先輩の表情の見て私は何となくその人が先輩にとってどういう存在だったのか理解できた

絵里「…好き…だったんですか?」

その私の問いに先輩は少しの沈黙のあと小さく頷いた

元会長「卒業式の日に思い切って告白したけど玉砕よ。そういうの気持ち悪いって言われちゃった」

写真を眺め少し笑みを浮かべる先輩の姿に私は無意識に先輩のほうへゆっくりと歩み寄り

そっと彼女を抱きしめていた

元会長「絢瀬さん…?どうしたの?」

自分でもわからないその行動に理由を問われても答えられない…

ただ、先輩が今にも泣きそうだったから…

自分の卒業式ですら笑っていた先輩の涙を見てしまったらきっと心が揺らいでしまう…

だから…

絵里「先輩が気持ち悪いなら私も気持ち悪いですね…」

慰めになるかわからないそんな言葉を投げかけることしか今の私には先輩の涙を止める方法は思い浮かばなかった

568: 2014/12/25(木) 04:06:31.13 ID:OgiLM+sR.net
元会長「優しいわね絢瀬さんは」

私の腕の中でそうクスクスと笑う先輩

絵里「か、からかわないでください」

元会長「ごめんごめん。でもこういうことしていいの?」

絵里「え?」

顔をあげた先輩と目が合い自分が起こした行動にやっと我に返り慌てて離れた

絵里「あ、え、えっと…その…」

しどろもどろになる私の顔を見た先輩はまたクスクスと笑うと私にそのまま背を向けた

元会長「これからどうするの?」

絵里「え?」

元会長「東條さんと付き合うってことはいろんな人から好奇の目で見られたり偏見、差別を受けるようになると思う」

元会長「それでも本気で彼女と付き合っていくつもりなの?」

私の覚悟を問う先輩の背中は昔の生徒会を思い出させ思わず姿勢を正した

そして

絵里「はい」

571: 2014/12/25(木) 04:26:19.74 ID:OgiLM+sR.net
元会長「そう」

振り返った先輩の顔は柔らかい笑顔につつまれそしてそのまま小さく伸びをした

元会長「んー!…あーあ、絢瀬さんにも振られちゃった」

絵里「え!えっと…っえ!?」

元会長「クスクス…冗談よ冗談。でも半分本気かしら」

絵里「えっ」

先輩はゆっくりと歩き出しまたソファーに腰かけるとティーカップを手に取り口に含んだ

元会長「最初は先輩を忘れるために利用してたのにいつしか東條さんとの仲壊してやろうと思う自分がいて…最低でしょ?」

そういって悲しそうに微笑んだ先輩の前のソファーに私も腰をかける

絵里「私も希のこと考えないように色んな子傷つけてしまったから…私のほうがきっと最低ですよ」

元会長「…絢瀬さん」

絵里「それに…先輩のおかげで希と気持ち通じ合えたようなものですから」

目を見開いてた先輩の顔がくしゃっとした笑顔に変わり

元会長「その言葉聞けただけでもよかったわ」

そう言って目じりに涙を溜めながら答えた

572: 2014/12/25(木) 04:38:04.78 ID:OgiLM+sR.net
元会長「門の前までじゃなくて本当にいいの?」

絵里「大丈夫です」

少し流れる沈黙

元会長「じゃあ東條さんにもよろしくね」

絵里「はい」

また少し流れる沈黙

お互い何となく察していた

もう会うことはないのかもしれない…

だからこそ言いたいことは今言っておかなきゃ そう思うのに私は上手く言葉に出来なくて

絵里「…じゃあ行きますね」

先輩に背を向けた…

元会長「絢瀬さん!」

呼び止められ振り返ると寂しそうに笑う先輩と目が合った

元会長「最後に一つだけお願いしてもいい…?」

580: 2014/12/26(金) 03:58:10.93 ID:2tLP7xFp.net
希Side

あのままエリチの匂いが残るベッドで横になり目を覚ますと

窓から射していた日差しがオレンジ色に染まりすでに日が傾いていた

希「結構寝ちゃったみたいやな…」

かけて毛布に鼻を当てるとエリチの匂いはほとんど消えていて寂しい気持ちになった

希「このまま朝になってれば良かったのにな…」

なんて呟きながら落ちていたワイシャツに袖を通しリビングまで行くと冷蔵庫をあける

希「うーん、晩御飯どうしよう」

するとピンポーンとインターホンが鳴り思わず体が跳ねた

誰やろ?と思いながらモニターを見るとそこには会いたくて会いたくてたまらなかったその人が立っていた

慌てて玄関のドアの開けるとびっくりした顔のエリチと目が合って

「夕飯一緒に食べない?」とお野菜などが入ってる袋を見せるエリチに思わずうちは抱きついた

絵里「の、希?とりあえず中入らせてもらえない?」

その言葉に慌ててエリチの体が離れるとすぐ傍にあったスリッパをエリチの前に置いた

581: 2014/12/26(金) 04:08:11.31 ID:2tLP7xFp.net
絵里「ごめんね。迷惑じゃなかった?」

希「ううん。ちょうどお夕飯どうしようかなって思ってたところやから」

リビングの机に上にスーパーの袋を置いたエリチはうちのほうを見て目を丸くしていた

希「ん?」

絵里「希…、いくらなんでもワイシャツ1枚はどうかと思うわよ」

希「あっ!ちょ、ちょっと待ってて!すぐ着替えてくるから!」

絵里「別にいいわよ、ゆっくりで」

クスクスと笑いながらそう言ったエリチの言葉に顔がカーッと熱くなっていくのが感じた


希「…お待たせ」

絵里「じゃあ作りましょうか」

希「そういえば何の材料買ってきたん?」

絵里「色々よ色々」

希「なんや適当に買ってきたんエリチ」

絵里「ち、違うわよ!本当に色々なの!」

その言葉どうり和、洋、中いろんな種類の料理が食卓に並んだ

582: 2014/12/26(金) 04:21:06.92 ID:2tLP7xFp.net
希「ふぅー…少し食べ過ぎたわ」

絵里「ほんとにね」

片付けを終えベッドを背もたれ代わりに二人並んで座りながらお腹をさすった

希「そういえばどうしてうちに来たん?お夕飯だけが理由やないでしょ?」

絵里「…うん」

エリチは持っていったマグカップをテーブルの上に置くと静かに話し始めた

絵里「実は先輩のところ言ってたの」

希「え…」

先輩という言葉に思わず体が強張りマグカップを持つ手が震えた

それに気づいたのかエリチの手が優しくうちの手を包み込んだ

希「エリチ…」

絵里「先輩私達の将来のこと心配してた」

希「将来のこと?」

エリチは少し切なそうに微笑みながらうちの手をぎゅっと握る

そして先輩の家であったこと全てをゆっくりと丁寧にうちに話してくれた…

586: 2014/12/31(水) 05:00:33.40 ID:9KRiyPSN.net
希「そっか…」

留学の理由…先輩の過去…

色んなことがありすぎて頭が混乱し黙りこむうちをエリチはそっと抱きしめた

希「エリチ?」

絵里「私はこれからもずっと希と一緒にいたいと思ってる…」

耳元で聞こえる今にも泣きそうなエリチの声

絵里「この先お互い傷つくことが増えていくのはわかっているのに…」

ぎゅっとエリチの腕に力が入りさらに強く抱き寄せられる

絵里「でもあなただけは誰にも渡したくない…。渡せない…」

その言葉に自然とうちの目から涙溢れてきた…

ずっと一人だったうちを、何かを一緒にする喜びも知らないうちを

知らない世界へ導いてくれた彼女がうちのことを必要としてくれている…

そんな嬉しいことはない…

絵里「の、希?」

泣いているうちに気づいたエリチが慌てて体を離すと

テイッシュティッシュ!と駆け出そうとするのを裾を掴んで引き止めた

希「うちも…」

そのままエリチを引き寄せそっと唇を重ねた

絵里「希…」

希「うちもエリチとずっと一緒がええ…」

592: 2015/01/03(土) 02:44:37.52 ID:FeHAJUIS.net
お互いの気持ちを確かめ合い迎えた2度目の朝

まだ瞼を閉じ寝息を立てるエリチの綺麗な金色の髪に優しく触れると

小さく「…ん」とエリチが声を漏らした

まだ学校へ行くには早い時間

エリチを起こさないようにベッドの脇に落ちていた適当な服を身につけ洗面所に向かう

希「あっ」

首筋の目立つところにキスマークを見つけ顔が一気に熱くなっていく

希「エリチー…!」

今日からまた1週間学校だというのにそう思い怒りに震えると同時にエリチの物だという証に思えてなんだか少し嬉しくなった



朝食を作り終えいい時間帯になったところでエリチがリビングのドアを開けた

絵里「おはよう…希」

希「おはよ。もう朝食できてるで」

絵里「ありがとう。ごめんなさい、手伝えなくて…」

希「ええよ。それより冷めないうちに早く食べよ」

598: 2015/01/07(水) 05:28:13.28 ID:fAwDb5Ln.net
絵里「希ー?まだー?」

準備を済ませた先に玄関へ向かったエリチが部屋でまだ準備を進めていたうちに声をかける

希「今行くー」

そう返し急いで玄関へ向かうとすでに靴を履いていたエリチが立っていた

絵里「忘れものはない?」

希「うん。…あっ!」

絵里「え?何か忘れたの?」

希「うん。大事なもの」

エリチの腕をくいっと引っ張りそっと唇を重ねる

絵里「….っ!」

希「いってきますのちゅー忘れてた」

顔を真っ赤に染めたエリチにそう言うと先に玄関の扉を開けた

だけど歩きだそうとしたところ引き止められまた家の中戻される

希「エリ…っん」

さっきとは違う激しいキスに力が抜け崩れおちそうになりながらも必死にエリチの制服につかまった

希「…っはぁ…ダメ、学校遅刻してまう…」

絵里「希が悪い…」

そのままエリチまた唇を重ねると昨日の余韻が残るうちの体に優しく触れた

602: 2015/01/08(木) 03:21:50.15 ID:dKt9uegN.net
絵里「希!ごめんってば」

そう言って後ろからついてくるエリチにうちは少し頬を膨らませる

希「あーあ、今朝はエリチのせいでほんま遅刻ギリギリだったわー」

絵里「本当に反省してるわよ…」

…あのあと結局エリチに流されて体を委ね、あろうことか生徒会長と副会長が

遅刻ギリギリで登校するというなんとも恥ずかしい事態に陥った…

希「まあ…うちも反省してるけど…」

絵里「え?」

希「なんでもない」

生徒会室へ向かう途中の廊下から外をふと眺めると下級生と思われる女の子がダンスを踊ってるのが見えた

そういえば噂で廃校阻止のためにアイドルやるって言ってる子がおるって言っとったっけ

希「エリチ、あの…」

エリチのほうへ顔を向けるとさっきまでの顔とは一転し真剣な眼差しで女の子を見るエリチにうちは言いかけた言葉を飲み込んだ

絵里「希、行くわよ」

しばらく眺めたあとまた生徒会室のほうへ歩き出したエリチのあとを追うようにうちもその場をあとにした

606: 2015/01/09(金) 03:33:19.04 ID:FxQ0FxYR.net
生徒会室に戻ってもエリチは厳しい顔をしながら一点をずっと見つめていた

希「気になる?」

絵里「…何が?」

希「さっきの子。なんやスクールアイドルっていうのやってるみたいやで」

エリチの反応を窺うようにそう言うとエリチは顔色一つ変えずに一言

絵里「そう…」

と答え手元にあった資料に目を通し始める

うちは小さなため息をつくと同じように手元の資料に目を通しはじめた

エリチが強がって意地を張ってるのは見てわかる

でもそれ以上エリチに何か言ってもきっと余計に怒らせてしまうから

そう思って何も言えなかった



しばらく理事長との話し合い、OGへの協力依頼、生徒会の仕事

色んなことが重なりエリチの顔からは次第に笑顔も消え疲労が溜まっているのが目に見えた

希「少し休憩したほうがええよ」

607: 2015/01/09(金) 03:44:15.06 ID:FxQ0FxYR.net
そう言ってエリチのそばにお茶を置くとエリチは

絵里「ありがとう」

とだけ答えまた資料へと目を向けてしまった

希「まだ帰らないん?」

絵里「うん。これだけ今日中にやりたいから。希、先帰っててもいいわよ」

希「どうせ帰ってもやることないから別にええよ」

ペンを走らせながら一度もこちらを見ないエリチの横顔を見つめながらチラっと横目で時計を見ると

すでに19時を回っていた

するとふいに生徒会室のドアが開き先輩が顔を覗かせた

元会長「久しぶり」

絵里「先輩!どうしたんですか?」

元会長「ちょっと先生達に挨拶に来たら生徒会室の電気まだついてたから」

希「挨拶?」

元会長「うん。今週末に日本を発つからその挨拶にね」

611: 2015/01/15(木) 03:41:28.22 ID:R424lacn.net
絵里「…やっぱり行くんですね」

そう呟いたエリチのほうへ顔向けるとエリチと先輩の間には

うちにもよくわからない何か強い繋がりのようなものが見えて思わず俯いた

うちが知らない二人の間だけにある何かに嫉妬し唇をかみ締めた

元会長「ええ。元々私は本当に行く予定だったから…」

チラっと先輩のほうへ顔を向けるとちょうど同じようにこちらへ視線を向けた先輩と目が合った

元会長「東條さんにも謝ってなかったから」

希「…え?」

元会長「留学のことと、それから今までのこと本当にごめんなさい」

そう言って頭を下げた先輩越しにエリチと目が合った

エリチも申し訳なさそうに眉を下げ許してあげてとでも言いたげな目でこちらを見つめていた

それにも無性に腹が立ったことで自分の心の狭さを痛感し余計に悲しくなった…

希「別にもう気にしてませんから」

元会長「ありがとう…」

615: 2015/01/16(金) 04:18:11.27 ID:IbD1Pfyp.net
絵里「もう挨拶は済んだんですか?」

元会長「ええ、帰ろうと思ったら生徒会室の電気まだ点いてたから顔を出しに、ね」

絵里「じゃあ私達もそろそろ帰るので一緒に帰りませんか?」

希「え…」

うちが声かけたときはそんなこと言ってくれなかったやん…

みるみる自分の顔が下を向いていくのがわかった

あかん…ほんまに泣きそう…

絵里「これだけ職員室に出してくるので待っててください」

そう言って生徒会室を出て行くエリチの背中を先輩と二人で見送り沈黙が流れた

先輩「何か心配なことでもあるの?」

沈黙を破って問いかけてきた先輩の質問に一瞬口ごもったが隠してもこの人にはなんだか見透かされてそうで

エリチとの仲を未だに疑ってしまっていること、自分が心の狭い人間なのでは…と思ってることを話始めた

先輩は最後までうちの話を聞くと少しため息まじりの笑みを浮かべると机に寄りかかるように腰をかけた

元会長「そんなことで落ち込んでたの?」

希「そんなことって…」

616: 2015/01/16(金) 04:32:15.68 ID:IbD1Pfyp.net
元会長「ごめんごめん。…でも、そんなに心配しなくても絢瀬さんはあなたしか見てないわよ」

先輩はそう言うとエリチが出て行ったドアのほうを眺めながらゆっくりと話始めた

元会長「あの日…、絢瀬さんが家まで来てくれた日にね。絢瀬さんにお願いしたのよ」

希「お願い?」

元会長「この学校を絶対に廃校にしないでって」

そういえばエリチの顔が変わったのはあの日からだったかもしれない…

必死にこの学校を守ろうとしていたのは先輩のためでもあるんやな…

ズキンと胸が痛むのを感じぎゅっと自分の胸元を掴んだ

元会長「そしたら絢瀬さん、『はい。あそこは尊敬してる祖母の母校でもありますから。それに』」

希「…?」

元会長「『希と出会えた大切な場所ですから』って」

うちとの大切な場所…

うちだけじゃなくエリチも同じ気持ちでいてくれたこと

必死にそれを守ろうとしてくれていたことを知って頬を涙が伝った

621: 2015/01/20(火) 04:47:09.09 ID:ewAsAN3B.net
絵里「おまたせしま…希?」

職員室から戻ってきたエリチはうちの顔を見るなりにすぐに駆け寄ってきってそっと自分のほうへと抱き寄せた

絵里「先輩、希に何かしたんですか?」

希「エリチ…ちが…」

絵里「え?」

机に寄りかかってた先輩はすっと立ち上がると「んー」と伸びをした

元会長「下に車待たせてるから先行くわね。これ以上二人の邪魔するのもね」

そう言ってにこっと笑い生徒会室を出ていく先輩をただ見つめてるエリチの背中をうちはそっと押した

絵里「え…、希?」

希「最後かもしれないんやで…行ってあげて」

その言葉にエリチはぐっと唇をかみ締め先輩の後を追い生徒会室を飛び出していった

エリチと先輩の間にはうちにもわからない何かがある

だからこそ最後くらい素直になりエリチ…

うちは二人分の鞄を手に取り部屋を出ると色んな思い出が詰まった生徒会室の電気をそっと消した

625: 2015/01/23(金) 04:59:03.41 ID:QzeHBsgi.net
絵里Side

最後かもしれないんやで…

そう言った希の言葉に先輩と初めて会ったときのことから今日までの出来事が走馬灯のように頭を巡った

最後…

ほとんどの生徒が帰り静まり返った校舎を駆け昇降口の前で先輩の後姿を見つけた

絵里「先輩!」

元会長「絢瀬さん?」

走ってきてきれた息を整えながら先輩のほうに歩みよると先輩は心配そうな顔を浮かべた

元会長「どうしたの?」

絵里「まだ…先輩に言ってことがありました…」

私が初めてあなたに会ったときあなたは学校存続のために当時の生徒会長と奮起して走り回っていてくれたこと

あなたが生徒会長になったときも何度も何度も理事長にとりあっていたこと私はずっと見ていて憧れただった

その礎があるからこそ今学院内で何かが変わろうとしている…

だからあんなことがあった今でもあなたは私の憧れで尊敬できる先輩なんです…

絵里「先輩」

626: 2015/01/23(金) 05:07:31.81 ID:QzeHBsgi.net
元会長「ん?」

微笑んだ先輩の笑顔に私も精一杯の笑顔を浮かべて深く頭を下げた

絵里「ありがとうございました!」

元会長「…うん。こちらこそありがとう絢瀬さん」

ゆっくり顔をあげると何となく流れる不思議な空気に少し照れくさくなりお互い顔を見合わせて笑った

そしてしばらく続く沈黙…

でも嫌な沈黙ではなくて気持ちの整理をつけるには十分な時間だった

元会長「じゃあ、行くわね」

絵里「…はい。お元気で」

元会長「絢瀬さんもね。東條さんにもお礼言わないとね」

昇降口を出て行く先輩は最後に「またね」と呟いた



希「エリチ」

先輩を見送ってから数分昇降口のドアに寄りかかっていた私に希が声をかけた

絵里「希」

631: 2015/01/24(土) 03:51:41.34 ID:hjTbE1GS.net
希は持っていた私の鞄を差し出すと優しく微笑んだ

希「もういいの?」

絵里「…うん」

希「ほな、帰ろっか」

先輩と何を話したのかを何も聞かず歩き出した希

絵里「希!」

希「ん?」

絵里「私…この学校を絶対守りたい…おばあさまのためにも、先輩のためにも」

希「うん」

絵里「希とも会えた大切な場所だから…」

希「うちも一緒や」

希はいつもの優しく包むこむような笑顔をこちらに向ける

希「ここはうちにとっても大事な大事な場所やからね」

絵里「うん!」

私は希のそばまで駆け寄ると一緒に並んで歩き始めた

637: 2015/01/29(木) 04:26:15.67 ID:H7PiSxsc.net
希Side

すっかり暗くなり部活動の生徒も声しなくなった廊下を抜け昇降口へ向かうとドアに寄りかかるエリチがいた

何か考えてるのか軽く腕組をしながら空を見上げていた

その綺麗な横顔に少しばかし見とれてしまい思わず笑みがこぼれた

希「エリチ」

2年前には考えられなかったこの呼び名も

絵里「希」

私だけに向けられるその安心したような笑みも

絵里「私…この学校を絶対守りたい…おばあさまのためにも、先輩のためにも」

絵里「希とも会えた大切な場所だから…」

いつも自分よりも誰かのために頑張っていることも

それで何かを我慢してることも…

それでも誰かに頼るのを知らないこと

全部うちだけが知ってる

だからこそあの時ダンス踊ってる下級生を見たエリチの顔を見たとき何となく確信したんや

638: 2015/01/29(木) 04:47:32.66 ID:H7PiSxsc.net
気になってるのに生徒会長としての責任が邪魔していること…

だからあの日エリチが本当の感情をぶつけてくれた日

全てが始まったあの日

やっとエリチと本当に心が通じ合ったような気がした嬉しかったんや




窓から射す日差しに眉をひそめがらゆっくりと瞼をあけた

いつもと変わらない朝のはずなのにいつもと違うのは今日が卒業式ってことやからかな

うーんと伸びをしながら起き上がるとまだ隣で寝息を立てている彼女の髪をそっと撫でた

希「エリチ、遅刻しちゃうで」

うちと同じように眉をひそめながらゆっくりと瞼をあけたエリチと目が合う

希「おはよエリチ」

絵里「おはよう希」

うーんと伸びをし体を起こしたエリチとどちらからとでもなくくちづけをするとお互い「ふふっ」と笑い合った

めまぐるしく過ぎた高校生活の中で初めてできた仲間との色々な思い出や絆はこの先もきっとうちの心の中に残り続けるだろう

そして隣にはこうして一緒に笑い合うエリチの姿がずっとあったらええな そう思いながらうちはもう一度エリチの唇に自分の唇を重ねた

639: 2015/01/29(木) 04:48:48.13 ID:H7PiSxsc.net
終わりです
長い間こんな駄作に付き合ってくださり本当ありがとうございました

640: 2015/01/29(木) 06:05:10.61 ID:Tzx6m3mM.net
最高だった

641: 2015/01/29(木) 06:26:56.41 ID:A+ZmyoP6.net
乙乙
素晴らしいのぞえりだった

642: 2015/01/29(木) 07:02:28.99 ID:+XJdy/nf.net
4ヶ月か
よく途中で投げなかったやん?

645: 2015/01/29(木) 09:18:33.34 ID:AIJFXhHL.net

最後までやってくれてありがとう

646: 2015/01/29(木) 09:45:56.14 ID:q6V9ti5C.net

素晴らしい作品だ

647: 2015/01/29(木) 10:00:21.54 ID:+XJdy/nf.net
マジで終わりか…
時間差で来るものがあるな
またゆっくりでいいから書いてってね

650: 2015/01/29(木) 13:29:12.50 ID:QSkeC/2A.net
乙乙
面白かったです!!

656: 2015/01/29(木) 18:55:26.73 ID:ZrlEwo36.net

いいのぞえりだった

657: 2015/01/31(土) 21:03:22.32 ID:ruI1uPQH.net
最高だった
本当に乙

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1412002767/

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