【SS】せつ菜「偽りの恋心」しずく「歪な恋の魔法」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


1: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 22:58:20.10 ID:hIIkeTAp
しずせつ
 

2: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 22:59:51.72 ID:hIIkeTAp
せつ菜「……」

しずく「……」

ペラッ

しずく「……」チラ

しずく「うーん…」

ペラッ

しずく「……」

しずく「……」

しずく「……はぁ」

パタン


せつ菜「お疲れ様です」

しずく「あ、せつ菜さん…」

せつ菜「お茶です。良かったらどうぞ」

コト

しずく「…すみません、ありがとうございます」

しずく「……」コクコク
 
3: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:01:45.14 ID:hIIkeTAp
しずく「…ふぅ」

せつ菜「にしても器用な事しますね」

せつ菜「台本読みながら、そっちは演技の参考書ですか?」

しずく「そんな大したことはしてませんよ」

しずく「別に同時に読んでるわけではありません」

しずく「場面ごとの演技に必要なことを確認してるだけです」

しずく「恋愛のお話なんですけど、私はあいにく恋愛経験どころか恋をしたこともなくて」

せつ菜「なるほど、それで参考書を…」

せつ菜「それにしても、スクールアイドルも演劇も両立ってやはり大変そうですね」

しずく「どちらも捨てられないから、頑張るしかないんです」

せつ菜「…頑張り屋さんはいいんですけど、ほどほどにしてくださいね」

しずく「…それはせつ菜さんもですよ」

しずく「生徒会長とスクールアイドル両立してますよね。私よりもよっぽど…」

せつ菜「私は私の好きな事のために必要ですので」

しずく「なら私もそうですよ」

せつ菜「…あはは」

しずく「ふふっ」
 
4: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:03:18.51 ID:hIIkeTAp
せつ菜「お互い無理はしないということで手を打ちましょう」

しずく「そうですね」

しずく「…お手洗いに行ってきます」

せつ菜「はい」

スタスタ

パタン


せつ菜(…暇ですね)

スッ

せつ菜(少し読ませてもらいましょう)

せつ菜(……!)

せつ菜(書き込みが至る所に…)

せつ菜(……)

せつ菜(…声を抑えて、でも力強く…)

せつ菜(……)

せつ菜(泣く時は涙を意識するな……?)

せつ菜(……話の内容よりしずくさんの書き込みのほうに目が行ってしまいますね)

せつ菜(……)ペラッ
 
5: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:07:01.41 ID:hIIkeTAp
ガチャ

しずく「ただいm…あっ」

せつ菜「あ」

せつ菜「す、すみません。勝手に見てしまって…」スッ

パサッ

しずく「構いませんよ。どうぞお好きなだけ読んでください」

しずく「でも、書き込みは恥ずかしいのであまり見ないでもらえると…」

せつ菜「むしろそっちを見てました。しずくさんの真剣な姿勢が見えて、なんだかいいなって」

しずく「や、やめてください…照れちゃいます///」ポッ

せつ菜「恥ずかしがることはありません!誇っていいと思います!」

せつ菜「しずくさんの演劇への気持ちが詰まってます!」

しずく「もう…///、お話も面白いのでそっちを読んでくださいっ」

せつ菜「ふふ、分かりました」

ペラッ




 
7: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:12:37.97 ID:hIIkeTAp
せつ菜「ところで、これを見る限りしずくさんの役って主役級じゃないですか?」

しずく「はい、ありがたいことに」

せつ菜「この間の合同演劇の時といい、本当に凄いですね」

しずく「…凄くなんてありませんよ。私だけの力ではありませんから」

せつ菜「え?」

しずく「あの時は、一応歌と演技を両方かじっていた私に役を振っていただいただけで」

しずく「本当は私には合ってないと判断されて一度下ろされそうになったんです」

せつ菜「……聞く限りは問題なさそうですが、何がいけなかったんですか?」

しずく「この間の役の要は自分の内をさらけ出すことだと言われました」

しずく「でも私は、昔からお芝居の好きな自分を隠してきました」

しずく「そんな子供周りには居ませんでしたから」

しずく「誰かに嫌われるのが怖くて、変な人だと思われるのが怖くて」

しずく「ずっとずっと本心を隠して普通の人のフリをしてきました」

しずく「せっかく頂いた主役、絶対逃したくなくないのに」

しずく「そのためには自分をさらけ出さないといけない」

しずく「もうどうしたらいいか分からなくて」

しずく「…そんな時、かすみさんが喝を入れてくれたんです」

しずく「甘ったれるな!嫌われたってなんだ!誰かが嫌ったって私はしず子のこと好きだよって」

しずく「私が今自信をもってパフォーマンスができるのはそのおかげです」
 
8: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:15:26.62 ID:hIIkeTAp
しずく「スクールアイドルも演劇も心の底から好きだって言えます」

せつ菜「かすみさんがそんなことを…」

しずく「誰かに嫌われるのはやっぱり今でも怖いと思っちゃいます」

しずく「でもその度にかすみさんの言葉に勇気を貰ってます」

しずく「せつ菜さんも普通じゃない私の事を嫌わないでくれますか?」

せつ菜「当然です。普通じゃ無いだなんて言わないでください!」

せつ菜「私だって好きなものは好きだと言って欲しいです!」

せつ菜「好きを我慢するなんて私が許しません!」ペカー

しずく「…ありがとうございます」ニコ

せつ菜「かすみさんって普段は悪戯っ子ですけど実はかなりしっかり者ですよね」

しずく「そうかもしれませんね」

せつ菜「私もかすみさんに助けられたので感謝してもしきれません」

しずく「……同好会の事ですか?」

せつ菜「はい。かすみさんが居なかったら多分私はずっと間違え続けてました」

せつ菜「そしてスクールアイドル同好会は本当に無くなっていたかもしれません」

しずく「……」

せつ菜「…すみません。こんな暗い話するつもりではなかったんですけど」

しずく「そんな、違います。私が最初にそういうお話をしてしまったので」
 
9: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:17:17.48 ID:hIIkeTAp
せつ菜「ま、まぁこの話はやめましょう!」

しずく「は、はい」

せつ菜「……」

しずく「……」

せつ菜(どうしましょう…何の話してましたっけ…)

せつ菜(…あ、演劇…この演劇のお話でも振って…)

せつ菜(って、そのせいでこんな空気になったんでしたね…)

しずく「……あ、あの!」

せつ菜「あ、はい!」

しずく「ちょっとお芝居の練習相手になってもらえませんか?」

せつ菜「はい!……へ?」

しずく「き、気分転換になればと…」

せつ菜「あ、あぁ…いいですね、やらせてください!」

しずく「ありがとうございます」ホッ

しずく「どうしても相手付きで練習をしたい場面があるんです」

しずく「とりあえず、ここから…」

せつ菜「えっと……み、見ながらやってもいいですか?」

しずく「もちろんです」




 
10: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:18:55.91 ID:hIIkeTAp
しずく「―――」

せつ菜「―――!」

せつ菜(…しずくさん)

せつ菜(あなたは自分の事凄くないって言いますけど、私はそうは思いません)

しずく「……」

せつ菜「…~~~」


―――演技、歌声、踊り、容姿

―――人を魅了するものをたくさん持っていて

―――それが周りの人の協力のおかげだとしても

―――そうさせたいだけの魅力があるということだから

―――先ほどの悩みを聞いて改めて思った

―――自分を隠すという点でどことなくしずくさんは私に似ていて応援したくなる

―――この子ならきっと女優にだってなんだってなれる

―――こんなに頑張ってる子が報われないわけない

―――ただ、ストイックさもまた魅力の1つだけれど

―――本当に頑張り過ぎないで欲しいと思う


せつ菜(って私、しずくさんの何なんだって感じですね)

しずく「……?」




 
11: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:20:18.32 ID:hIIkeTAp
しずく「ふぅ……ありがとうございました。イメージが掴めそうです」

せつ菜「いえいえ。間近で演劇部のエースの演技が見られて役得でした」

しずく「またそういうことを…///、でもありがとうございます」

しずく「せつ菜さんも練習したわけでもないのに演技お上手です」

せつ菜「そうですか?ふふ、しずくさんに褒めてもらえるなら自信持てちゃいますね」

しずく「……本当にありがとうございます」

せつ菜「……?」

しずく「私の演劇のお話に楽しそうに付き合ってくれて、とても嬉しいんです」ニコ

せつ菜「…お礼なんてやめてください。私がやりたくてやってるんです」

しずく「…ありgむぐっ」ピトッ

せつ菜「……」ジトー

しずく「分かりました。もう言いません」

せつ菜「はい、それでいいんです」

しずく「…あ…ついでにもう1つ。最後にこのシーンやってもらってもいいですか?」

しずく「動きながらやってほしいので少し覚えてほしいんですけど」

せつ菜「構いませんが…えーと…腕を掴んで引き寄せて…」

せつ菜「……」

しずく「できそうですか?」

せつ菜「…ん、はい。いけます」
 
12: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:21:38.07 ID:hIIkeTAp
しずく「せつ菜さんからお願いします」

せつ菜「はい。では―――」

グイッ

しずく「きゃ」グラッ

せつ菜「あっ」


―――しずくさんを両手で引いて、そのまま抱き寄せるシーン

―――掴んで引いた手が思いの他軽くて

―――いや、私が力を入れすぎたのか

―――しずくさんはバランスを崩して私のほうへ想定以上に寄りかかる

―――眼前には既にしずくさんの顔

―――避けたらしずくさんが転んでしまう

―――そもそもこの距離では間に合わない

―――この後どうなるか分かっているのにもう手遅れ

―――つまり


せつ菜「―――!?」

しずく「――――っ」


ちゅ
 
14: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:23:19.80 ID:hIIkeTAp
バッ

せつ菜「っ!」

しずく「……っ///」

せつ菜「あ、え…?///」

しずく「……///」ドキドキ

せつ菜「あ、あぁ!す、すみません、私力を入れすぎたみたいで!」

しずく「い、いえ、私も、少し力を抜き過ぎて、寄り過ぎちゃいましたからっ」

せつ菜「違います!私が悪いんです!しかも、その……」

しずく「言わないでください!///」

せつ菜「…っ///」

しずく「……うぅ…///」


―――やってしまった

―――きっとしずくさんにとってのファーストキスを

―――まさかこんな形で…


せつ菜(照れている場合じゃない…冷静に考えたら、私かなり酷いことを…)

せつ菜「し、しずくさ」

ギュッ

しずく「……せつ菜さん…なんだか私…///」チラッ

せつ菜「!?」
 
15: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:24:41.27 ID:hIIkeTAp
しずく「……///」カァ

せつ菜(何ですか…?その目…)ドキ、ドキ


―――私の袖を掴んで

―――耳まで赤くした顔で

―――少し潤んだ上目遣いで

―――その目は、何を期待してる目…?

―――落ち着け、私まで流されるな

―――きっとしずくさんは予想外の出来事に冷静さを欠いている

―――私がこの感情に惑わされるわけにはいかない


せつ菜「……」グッ

しずく「ぁ……」

せつ菜「一旦落ち着いてください」

しずく「……」


ガチャン

愛「やっほー!」

璃奈「こんにちは」

せつ菜・しずく「!!」ビクッ
 
16: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:26:52.70 ID:hIIkeTAp
愛「…?二人ともそんなところでなにしてんの?」

しずく「な、なんでもありませんっ」

璃奈「……?」

愛「そ?まぁ良く分かんないけどそんなところで立ってないで座ったら?」

せつ菜「そ、そうですね」

せつ菜(危ない…本当に危ない…ギリギリで堪えられた)ドキドキ

しずく(……)

璃奈「…どうしたの?」

しずく「え!?」

璃奈「二人とも様子が変」

せつ菜「しずくさんの演劇の練習にお付き合いさせてもらってただけです」

しずく「う、うん。ちょっと役に入り込みすぎちゃって」

愛「へぇ?今度はいつ劇やるの?」

しずく「来月末です」

璃奈「そっか。がんばってね」

しずく「うん、ありがとう♪」

せつ菜「……」


――――
―――
――
 
17: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:29:14.94 ID:hIIkeTAp
夜・せつ菜自室



菜々(……昼間の出来事が忘れられない)

菜々(あれからしずくさんのことが頭から離れない)

菜々(私も冷静になりきれてはいない)

菜々(だって…私だってファーストキスだったんだから…)


・・・・・・

ギュッ

しずく「……せつ菜さん…なんだか私…///」チラッ

・・・・・・


菜々「……」ブンブン

菜々(それだけはダメ。私もしずくさんもキスをしたことで気分が高揚してるだけ)

菜々(だからこの気持ちに従ってはいけない。偽りの恋心)

菜々(いや、恋というのすらおこがましい。ただの下心)

菜々(この想いを抱えるのが私だけなら良い)

菜々(でもしずくさんを巻き込んではいけない)
 
18: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:31:03.40 ID:hIIkeTAp
菜々(人を好きなるきっかけはいろいろあるとしても)

菜々(私はしずくさんの素敵な所をたくさん知っているのに)

菜々(よりによってキスがきっかけなんて絶対間違ってる)

菜々(こんなの不純にも程がある)

菜々(私が認めたくない。不誠実な気持ちを向けたくない)

菜々(それと、できればしずくさんにも同じ思いをしてほしくない)

菜々(……)

菜々(…あはは)

菜々(本当に、私はしずくさんの何なんでしょうね…)

菜々(偉そうに…)


―――悪いのは自分なんだから責任もってケアをするべき

―――そう考えてるはずの思考は気が付けば正義ぶる自分になっている

―――そうして自己嫌悪に陥る悪循環
 
19: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:32:07.64 ID:hIIkeTAp
・・・・・・

しずく「恋愛のお話なんですけど、私はあいにく恋愛経験どころか恋をしたこともなくて」

・・・・・・


菜々(ごめんなさい、私はあなたの純粋な初恋を穢してしまったかもしれません)

菜々(しばらくしずくさんとは距離を置かないと…)

菜々(なるべく私の事を意識させてはいけない)

菜々(せめてその想いがすぐに勘違いだと気付けるように)

菜々(もし私が手遅れだとしても…)


―――たった数時間でもうこんなにしずくさんのことを考えてしまう

―――それで距離を置くなんて耐えられるのか

―――できなくても、やるしかないけれど…


菜々(それが私の罪と罰)

菜々(しずくさんの大事なものを奪ってしまったのだから)

菜々(……もう寝よう)

菜々(今日だけは全部忘れたい…)

――――
―――
――
 
20: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:34:25.77 ID:hIIkeTAp
翌日



菜々「ふぁ…」

菜々(案の定寝不足)

菜々(すぐに寝られないと思ったから早く横になったのに…)

菜々(思ったより重症ですね…)フラフラ


「あ、あぶないですよ」ガシッ


菜々「!?」ビクッ

しずく「おはようございます、菜々さん」

菜々「ぁ、し、しずくさん…」

しずく「どうしたんですか?フラフラですよ?」

菜々「…昨夜寝付けなくてちょっと寝不足でなんです」

しずく「…それって、昨日の…///」カァ

菜々「!」

菜々(しまった…私は馬鹿ですか…)

菜々(出会ってしまうのは仕方ない…でも、わざわざ意識させるようなことを…)

しずく「……///」

菜々(とりあえずこの場を去りましょう)
 
21: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:36:25.40 ID:hIIkeTAp
菜々「では、私はもう行くので」クルッ

しずく「あ、菜々さん待って」タタッ

菜々「…何か御用ですか?」

しずく「これからもまた、演技の練習付き合ってもらえませんか?」ニコ

菜々「っ!!」


―――どうしてそんなことを言うんですか…

―――ダメなのに

―――私はしずくさんと一緒に居てはいけないのに

―――これを受けるわけにはいかない

―――申し訳ないけれど断るしか…


・・・・・・

しずく「私の演劇のお話に楽しそうに付き合ってくれて、とても嬉しいんです」ニコ

せつ菜「…お礼なんてやめてください。私がやりたくてやってるんです」

・・・・・・


菜々(いや……断れない)

菜々(昨日あんなことを言った手前、受けるしかない)

菜々(断れば確実にしずくさんの笑顔を曇らせる)

菜々(それは許されない)

しずく「……?」
 
22: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:38:18.41 ID:hIIkeTAp
菜々「構いませんよ」

しずく「本当ですか?」パァ

菜々「もちろんです。私も昨日は楽しかったので、誘ってもらえて嬉しいです」

しずく「私も嬉しいです」ギュッ

菜々「!?///」ドキッ

しずく「ぁ…すみません、つい嬉しくて///」パッ

菜々「……」


―――大前提としてしずくさんを悲しませることは絶対に許されない

―――そのうえで私はしずくさんと接しすぎないようしなければならない

―――でも、しずくさんは私と演技の練習をしたいという

―――昨日の今日で

―――あんなことがあったのに

―――もう正解が分からない

―――難しいことは全部放棄してしまいたい

―――何も考えず、しずくさんの好意を受け入れられたらどれだけ楽か

―――どれだけ幸せか


菜々(っ……はぁ、しっかりしなさい中川菜々)

菜々(馬鹿なことを考えてはいけません…)
 
23: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:40:45.70 ID:hIIkeTAp
しずく「そろそろ行きますね。また放課後に」ペコ

菜々「はい、また…」

しずく「~♪」

菜々(……)

菜々(まだしずくさんの気持ちがはっきり分かったわけではない)

菜々(演技の練習に付き合ってと言われただけ)

菜々(昨日のは事故。もうあんなことはない)

菜々(そもそも意識しなくても私たちは同好会でしか会うことはない)

菜々(でも…もう認めます。下心だろうとなんだろうと)

菜々(私はしずくさんのことが好きになってしまいました)

菜々(避けなければと言いつつ、こうして話して、触れられて、ドキドキしている)

菜々(……)

菜々(はぁ……)

菜々(大丈夫。私さえ節度を守れば…)


――――
―――
――
 
24: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:42:22.70 ID:hIIkeTAp
放課後


せつ菜(そう思っていたのに)

しずく「……」ジッ

せつ菜「し、しずくさん…?」

ジリジリ

しずく「なんですか?」

せつ菜「あの、演技の練習するんですよね?」

しずく「……」

ジリジリ

せつ菜「とりあえず離れてください!」アセアセ

しずく「……」


―――早速少し練習したいと言われて二人で居残り

―――皆が帰った後、急に距離を詰められてしずくさんに捕まえられて

―――瞳を見つめられながらすり寄られる私

―――私は甘かった

―――しずくさんから迫ってこられたら私は為す術がない
 
25: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:44:24.17 ID:hIIkeTAp
しずく「私、昨日からずっとせつ菜さんの事が忘れられなくて」

しずく「せつ菜さんとしたキスが…」

せつ菜「あ、あれは、事故で…」

しずく「事故ですけど…初めてだったんです」

せつ菜「っ……すみませ…」

しずく「違います。謝ってほしいわけではなくて…」スッ


―――更に顔が近づく

―――もう、吐息がかかる距離


しずく「凄くドキドキしました…あんな気持ちになるのは初めてで」

しずく「多分私、せつ菜さんとのキスは嫌ではありません」

せつ菜「な…」

せつ菜(やめてください…それは違うんです)

しずく「いえ、それどころかしたいんです…せつ菜さんと」

しずく「今日もせつ菜さんの事を一日中考えちゃってました」

せつ菜(……私は、どうしたら…)
 
26: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:45:42.26 ID:hIIkeTAp
しずく「……」ジッ


―――お願いだからそんな目で見ないで

―――あなたのその瞳は私の意志を揺るがす

―――その唇にもう一度触れたくなる

―――違う

―――私は、私のしずくさんへの想いはもっと純粋だったはず


せつ菜「落ち着いてください!しずくさんはきっと勘違いしてます!」

せつ菜「たまたま相手が私だっただけです!だから…」

しずく「だから…せつ菜さんも私の事を好きになっちゃったんですか?」

せつ菜「!?」

しずく「せつ菜さん今朝言ってましたよね?昨晩寝付けなかったって」

せつ菜「は、はい」

しずく「それって私とのキスのせいですよね?」

せつ菜「……そ、それは…」

しずく「好きを我慢しないでと言ったのはせつ菜さんですよ」


―――昨日の私の行動全てが今日の私を縛り付ける

―――もう…
 
27: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:47:22.51 ID:hIIkeTAp
せつ菜(もう…いいんじゃないでしょうか)

せつ菜(だって他ならぬしずくさんが望んでるんです)

せつ菜(私も本心ではそれを望んでいて)

せつ菜(何を我慢する必要があったんでしょうか)

せつ菜(好きな人に迫られて断る必要はあるんでしょうか)

せつ菜(私もしずくさんも悪くない。何も悪いことはしていないんです)


―――崩れる

―――意志も理性も

―――昨日散々悩んだ想いを捨て去って

―――感じた罪悪感を無視して


しずく「……んっ」

せつ菜「―――」


―――二度目の口づけ

―――妙に落ち着かないのはきっと好きな人とキスをしているから

―――それ以外、ありえない

―――絶対ありえない
 
28: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:49:03.26 ID:hIIkeTAp
しずく「事故ではなく、しちゃいましたね…///」

せつ菜「そう、ですね…」

しずく「…せつ菜さん…私、せつ菜さんのこと…」ギュッ

せつ菜「っ……」ギュッ

しずく「ぁ…」

せつ菜「……ん」

しずく「……んむ…」


―――再び唇を重ねる

―――取り返しのつかないのならこうするしかないんです

―――しずくさんが求めるのなら応えるしかないんです


しずく「好きです…私とお付き合いしてください///」

せつ菜「はい…私も、好きです」


―――どうしてでしょうか

―――好きな人と両想いになったはずなのに

―――こんなに胸が苦しいのは…


――――
―――
――
 
29: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:50:49.06 ID:hIIkeTAp
しずく「というわけで…」

せつ菜「私たち、お付き合いすることになりまして…」

かすみ「うそぉ!?」

璃奈「わぁ…」

愛「へぇー。おめでとう!」

果林「まぁ…」

しずく「えへへ…ありがとうございます///」

せつ菜「…ありがとうございます!」

かすみ「ずいぶんとまぁ急ですねぇ…今までそんな素振りなかったような」

璃奈(……あ、もしかして一昨日のあれは…)

愛(なるほどね)

しずく「ま、まぁ、恋は突然だから…」チラ

せつ菜「そうですね」

かすみ「ふぅん?ま、おめでとう」

かすみ「あ、そうだ」ゴソゴソ

かすみ「新作のコッペパン、お二人でどうぞ」スッ

せつ菜「わ、ありがとうございます!」ペカー

しずく「ありがとう♪」
 
30: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:52:35.19 ID:hIIkeTAp
―――お付き合いを始めてから数日たった

―――未だに拭えない後ろめたさもあるけれど

―――たとえきっかけが偽りだったとしても

―――しずくさんが幸せならそれで構わない

―――何も問題はない

―――…ないはず。

―――それに、もしもの時は私が…

―――それと少し意外な点が一つ
 
31: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:53:57.58 ID:hIIkeTAp
数日後


しずく「また浮気してます…」

せつ菜「してません!」

しずく「さっきもだらしない顔で歩夢さんとイチャイチャしてました」

せつ菜「そんな顔してません!イチャイチャってなんですか!?」

しずく「こう、手をグーして、コンって」

せつ菜「スポーツ選手とかたまにやるじゃないですか!真似てるだけですよ!」

しずく「むぅ…」

せつ菜「納得いってない感じですね…」

しずく「それ、私にはしてくれません…」

しずく「なんなら歩夢さんにしかやってるところみたことありません」

せつ菜「いやまぁ、あれは歩夢さんだからするというか…」

しずく「やっぱり浮気です」

せつ菜「違います!!」

しずく「……」ジトー

せつ菜「そんな目で見られましても…」


―――しずくさんは案外嫉妬深い
 
32: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:55:42.25 ID:hIIkeTAp
しずく「歩夢さんにもお話聞きたいですね」

せつ菜「…はぁ…別に深い意味はありませんって」

しずく「……」

せつ菜「分かりました、話しますから」

しずく「?」







せつ菜「…というわけで、なんとなく流れでこうしたら」スッ

しずく「歩夢さんが返してくれたと」

せつ菜「それだけのことです」

しずく「…なるほど」コツン

せつ菜「何さりげなくやってるんですか」

しずく「……い、いいじゃないですか別に///」

せつ菜「ふふ、やりたいならそういえばいいのに」

しずく「……///」

せつ菜「ほら、どうぞ?」グー

しずく「もうやりません!」プイッ

せつ菜「あはは」
 
33: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:57:58.71 ID:hIIkeTAp
しずく「せつ菜さんがして欲しそうな顔してたからしただけですからね」

せつ菜「はいはい、そうですね」

しずく「本当ですからね」

せつ菜「ありがとうございます。嬉しいです」

しずく「雑に対応しないでください」

せつ菜(めんどくさ可愛いです)

しずく「めんどくさいとか思ってます?」

せつ菜(!?こ、怖いですね…)

しずく「…怖いですか?」ニコ

せつ菜「!?」

しずく「顔、引きつってます」

せつ菜「え!?」バッ

しずく「嘘です」

せつ菜「……」
 
34: (えびふりゃー) 2022/02/05(土) 23:59:58.55 ID:hIIkeTAp
しずく「なるほど」

せつ菜「…なにがですか」

しずく「分かりますよ。面倒くさくて怖い私より歩夢さんのほうがいいですもんね」ムス

せつ菜「まだ言いますか」

しずく「ふん」

せつ菜(…らしくないですね)

せつ菜(まぁ、これはこれでちょっと可愛いかもしれません)

しずく「変な事考えてませんか?」

せつ菜「…あはは、まさか」

しずく「……怪しいです」

せつ菜「しずくさんは可愛いなって思ってただけです」

しずく「ぁ……ふんっ///」
 
35: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:01:55.16 ID:9Y9zEICY
しずく「そんなことより疑いはまだ晴れてませんからね」

せつ菜「えぇ…私信用なさすぎません…?」

しずく「っ……いや…その…」

せつ菜「……?」

しずく「……」

せつ菜「しずくさん?」

しずく「しょ、証拠があるんですから!」

せつ菜「は!?」

しずく「その驚きっぷり、やっぱり…」

せつ菜「違いますよ!そういうことではなく!」

せつ菜「してもいない浮気の証拠とか言われて驚いただけです!」

しずく「本当でしょうか」

せつ菜「…そこまで言うなら分かりました!出せる物なら出してください!」

しずく「…いいんですね?後悔しますよ?」

せつ菜「どうぞ!私は潔白ですから!」

しずく「先日せつ菜さんの家にお邪魔した時こんなものを見つけたんですけど」スッ

『レジェンドオブニジガク』

せつ菜「」
 
36: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:03:10.11 ID:9Y9zEICY
しずく「これ面白いですね」

せつ菜「」

しずく「歩夢さんと幼馴染…」

しずく「間違えました。アユムさんを自分の幼馴染にするところとか」

せつ菜「」

しずく「普段とは違う、自分にだけ見せる一面があるとか」

せつ菜「」

しずく「まぁ百歩譲って自分がイケイケの主人公なのは良いとしましょう」

せつ菜「」

しずく「随分と歩夢さんを…間違えました。アユムさんを神格化してるんですね?」

せつ菜「その言い直すのなんなんですか!?」

しずく「こういうのは作者の表現が大事なので」

せつ菜「変な所に無駄に気をまわさなくていいんです!」

しずく「で、これはどういうことなんですか?」

せつ菜「……」
 
37: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:04:06.87 ID:9Y9zEICY
せつ菜「どうもなにも…自作小説ですけど…」

しずく「自分の書いた小説に、投影どころか自分自身を出して」

しずく「大事なお姫様が幼馴染で」

しずく「そのお姫様を救い出す王道ストーリー」

しずく「素敵なことを考えてるんですね」ニコ

せつ菜(口に出されると死ねますね…)

せつ菜「浮気がどうとかより、これを引っ張り出されたこと自体がキツいんですけど!」

せつ菜「そもそも勝手に人の部屋漁らないでくださいよ!」

しずく「だって浮気…」

せつ菜「してませんって!」

しずく「どうしてこのお話の相手は私じゃないんですか…」ムスッ

せつ菜「……これを書き始めたのはしずくさんとお付き合いする前です」

しずく「……そうなんですか」

せつ菜「相手に歩夢さんを選んだのはなんとなく…ではありませんけど」

せつ菜「お話的に歩夢さんが適任だったからです」

せつ菜「歩夢さんの幼馴染になりたいのではなく」

せつ菜「幼馴染としてのお話にしたくて歩夢さんにしたんです」

せつ菜「まぁ、あの二人のような特別な関係に憧れなくはないですが」
 
38: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:05:05.45 ID:9Y9zEICY
せつ菜「私が好きなのはしずくさんです。誓います」

しずく「……それならいいんですけど///」

せつ菜「ならこの件は許してもらえるんですか?」ナデナデ

しずく「!?、な、なに撫でてるんですかっ///」バッ

しずく「私怒ってるんですからね?」ドキドキ

せつ菜「分かってますよ」

せつ菜「だからご機嫌取ってるつもりなんですけど」

せつ菜「嫌ですか?」

しずく「…好きにしてください」プイ

せつ菜「…ふふ」

しずく「…今度はなんですか」

せつ菜「そういうところもかわいいです」

しずく「……///」

せつ菜「……」ニコニコ

しずく「…もう少し撫でてください。それで許してあげます」

せつ菜「ありがとうございます」ナデナデ


―――なんだかんだ最後にはこうなるけれど
 
39: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:06:48.57 ID:9Y9zEICY
さらに数日後



しずく「昨晩は誰と浮気してたんですか?」

せつ菜「してません!!」

しずく「せつ菜さんとお話したかったのに、ずっと通話中でした」

せつ菜「それは…璃奈さんとアニメの話で盛り上がってしまいまして…」

しずく「何時間もですか?」

せつ菜「その、神回だったので誰かと語り合いたくてですね…」アセアセ

しずく「…私だって見てるんですけど…」ボソッ

せつ菜「え!?本当ですか!?」ガシッ

しずく「あ、せ、せつ菜さんにおすすめされたので一応ですけど…///」

せつ菜「もー、そういうことなら言ってくださいよ!」ギュ

しずく「……///」



璃奈「またプロレスしてる」

かすみ「プロレスって…まぁわかるけど」

愛「……んー…なんだかなぁ」

果林「どうしたの?」
 
40: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:08:28.06 ID:9Y9zEICY
愛「愛さんなんとなく思うんだけどさぁ」

かすみ「なんですか?」

愛「せっつーって意外とドライじゃない?」

璃奈「えっ」

かすみ「えぇ!?さっきのやり取り見てました!?」

愛「あーいや、ドライはちょっと違うか…なんていうんだろ」

愛「アタシのイメージでは、せっつーは恋人に対してはもっとグイグイ行くというか」

愛「しずくさん好き好き~みたいな感じだと思ってたんだよね」

愛「でも今のせっつーってアタシらと接し方変わんなくない?」

果林「そうね、確かに…」

愛「しずくはしずくでまたイメージとは違ったけど、せっつーがあれじゃあね」

かすみ「うーん、そうでしょうかねぇ」

璃奈「……?」

かすみ「かすみん的にはどっちかというとしず子のほうがおかしい気がしますけど」

果林「せつ菜のスキンシップ癖のせいでやきもきしてるだけじゃないかしら」

かすみ「……そうですかね」




 
41: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:09:31.70 ID:9Y9zEICY
翌日

せつ菜「かすみさん!それ!」

かすみ「へ?」

せつ菜「そのストラップどうしたんですか!?」

かすみ「あぁ、これですか。この間お買い物に行ったときに見つけたんです」

かすみ「えへへ、かわいくないですかぁ?」

せつ菜「いいですね!とってもかわいいです!」

かすみ「駅前のショッピングモールにこういうのいろいろ売ってましたよ」

かすみ「良かったら今度一緒に行きます?」

せつ菜「いいんですか?」

かすみ「はい、それくらい全然」

せつ菜「ありがとうございます!」ダキッ

かすみ「!?」

かすみ「な、何してるんですかっ」

せつ菜「っと、すみません」スッ

かすみ「……」

かすみ「代わりというわけじゃないんですけど、今日ちょっとかすみんに付き合ってください」

せつ菜「へ?構いませんが…」

かすみ「それじゃ練習後に少し残ってください」

せつ菜「はぁ。分かりました」
 
42: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:11:51.97 ID:9Y9zEICY
練習後


かすみ「すみません、我儘聞いてもらって」

せつ菜「全然構いませんよ」

かすみ「でも、練習後のちょっとした時間も大事じゃないですか?」

かすみ「恋人と過ごせる貴重な時間ですよ」

せつ菜「まぁ…それより、何か用があるのでは…」

かすみ「そうですねぇ…じゃあ本題にはいります」

かすみ「…どうしても聞きたいことがあるんです」

せつ菜「なんですか?」


―――今日のかすみさんはいつもと雰囲気が違う

―――表情は柔らかいものの、目は笑っていない

―――一体何を…













かすみ「せつ菜先輩って本当にしず子の事好きなんですか?」

せつ菜「……!!」
 
43: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:14:16.49 ID:9Y9zEICY
―――かすみさんの唐突な急所への一撃

―――その質問の意図は…おそらく私への非難

―――湧き上がる様々な思いを抑えて、冷静に問い返す


せつ菜「……それどういう意味ですか?」

かすみ「難しいことを聞いたつもりはないんですけど」

せつ菜「……」

かすみ「どうなんですか?」

せつ菜「…もちろん好きですよ」

かすみ「それならもっと」

せつ菜「分かってますよ!!」

かすみ「……」ビクッ


―――知られらくなかった自分を見透かされて声を荒げてしまう

―――間違っている私を咎めてくれているかすみさんに当たる最低の私


せつ菜「………すみません」

かすみ「いえ…かすみんも、ごめんなさい」

せつ菜「…かすみさんはよく見てるんですね」

かすみ「分かってるならどうして…」

せつ菜「…私は失敗しました」
 
44: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:16:16.47 ID:9Y9zEICY
かすみ「え…?」

せつ菜「私としずくさんがお付き合いするきっかけ、気になってましたよね」

かすみ「え、まぁ、はい」

せつ菜「ではそこからお話しますけど…」

せつ菜「皆さんに報告する数日前、しずくさんの演技練習のお手伝いしてたんですが」

せつ菜「私の不注意のせいでキスをしてしまったんです」

かすみ「…付き合う前にですか?」

せつ菜「はい。その時は本当に事故で、私たちもその気はなかったんです」

せつ菜「ですが、私もしずくさんもお互いそれがファーストキスで」

かすみ「ってことは、それがきっかけで…」

せつ菜「忘れることはできませんでした。一晩経っても冷めることはありませんでした」

かすみ「……」

せつ菜「言いたいことは分かります。私も良くないって思って…」

かすみ「あ、いや…」

せつ菜「……?」

かすみ「…とりあえず続けてください」
 
45: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:18:36.58 ID:9Y9zEICY
せつ菜「恋に恋する、とは違いますけど。きっとキスが衝撃的だっただけなんです」

せつ菜「私はしずくさんに恋をしていると勘違いしてしまいました」

かすみ「……」

せつ菜「…私だけなら良かったんです」

せつ菜「きっと一時的なもの、距離を置いて私さえ我慢すれば済む話でした」

せつ菜「しずくさんまで、私と同じにならなければ」

かすみ「…まぁそうなりますよね」

せつ菜「しずくさんまでその勘違いをしてしまったんです」

せつ菜「私は多分、しずくさんの気持ちを捻じ曲げてしまいました」

せつ菜「どうにかしてしずくさんの目を覚ましてあげたかったのですが」

せつ菜「私がいくらしずくさんとの接触を避けようとしても」

せつ菜「しずくさんから私に近づかれたら、私には突っぱねることはできません」

せつ菜「私のせいでしずくさんを傷つけることだけはしたくありません」

かすみ「……しず子から告白されたんですね」

せつ菜「はい。…つい受け入れてしまったんです」

せつ菜「私に惑わされてしまったしずくさんと、情けない私自身を」
 
46: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:21:21.91 ID:9Y9zEICY
せつ菜「曲りなりにも私はしずくさんが好きで、しずくさんも私の事が好き」

せつ菜「しずくさんが望む間はそれでいいと思ったんです」

せつ菜「そしてもしもしずくさんが夢から覚めたら…」

かすみ「…まさか別れるつもりだったんですか?」

かすみ「ちょっと難しく考えすぎだと思います」

せつ菜「……仕方ありません」

かすみ「どうして…そんなの……」

せつ菜「……ただ、誤算は…」ツー

かすみ「な……」


―――やっぱり無理だった

―――だって、考えただけでこんなにも辛い


せつ菜「私、別れたくなくなっちゃいました…」ポタポタ

かすみ「せつ菜先輩…」

せつ菜「い、いけませんね…我慢するつもりだったんですけど」ゴシゴシ

かすみ「……もしかしてせつ菜先輩があまりしず子にベタベタしないのって」

せつ菜「これ以上好きになったら、もしもの時別れられなくなってしまうと思って」

せつ菜「結局意味はありませんでしたね…」

かすみ「……そんなギリギリの状態で何我慢してるんですか」

せつ菜「えっ……」
 
47: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:23:05.19 ID:9Y9zEICY
かすみ「そんなぐちゃぐちゃな心で、他人に配慮してる場合ですか」

せつ菜「……」

かすみ「もう1回謝ります。さっきは意地悪な質問をしてすみませんでした」

せつ菜「…どうしたんですか、急に…」

かすみ「もっと自分に自信を持ってください」

かすみ「自信もってしず子のこと好きになっていいんです」

せつ菜「いや、私は…」

かすみ「そこまで相手の事を思いやれるんです」

かすみ「どんな事情があったとしてもその気持ちは本物です」

かすみ「普通好きになった過程をそこまで悩む人いませんよ」

かすみ「元からしず子のことを大事に思ってて、多分キスが最後のひと押しだったんです」

かすみ「…それでいいじゃないですか」

せつ菜(確かにしずくさんのことを少し自分と重ねて、特別な目で見ていた節はある)

せつ菜(思うところがなかったわけではありませんが…)

かすみ「せつ菜先輩のしず子への想い、聞けて良かったです」

せつ菜「……すみません、私が不甲斐ないばかりに」

かすみ「ま、元気出してくださいって」
 
48: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:24:17.47 ID:9Y9zEICY
かすみ「それにしてもよかったね」

せつ菜「……?」

かすみ「せつ菜先輩なりに、しず子のこと真剣に考えてくれてるじゃん」

せつ菜「かすみさん…?」

かすみ「これですっきりしました」


―――私の目の前で私以外に話しているような違和感

―――タメ語交じりで、雰囲気もいつも通りに戻った気はするけれど…


かすみ「今度はせつ菜先輩に話してあげなきゃね」

せつ菜「かすみさん?あの、意味が…」

かすみ「だってせつ菜先輩は何も悪くないんですから」

かすみ「ね?」チラ

せつ菜「……?」クルッ


―――かすみさんが視線を私の後方へ向け、誰かに問いかける

―――そこには…
 
49: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:25:47.85 ID:9Y9zEICY
せつ菜「え……しずくさん…」

しずく「……」

せつ菜「…どうして…いつから…?」

かすみ「最初からですね」

せつ菜「聞いてた…いや、聞かせてたんですか?私たちの会話」

かすみ「騙しちゃってごめんなさい」

せつ菜「どういうことですか…」

かすみ「今日せつ菜先輩に残ってもらったのはしず子の頼みだったんです」

しずく「……」

せつ菜「私の態度にしずくさんが不安に思って、相談してたってことでしょうか」

かすみ「…半分正解ですねぇ」

せつ菜「……よく分かりません…」

かすみ「ですよねぇ」

せつ菜「…もったいぶらないでください」

かすみ「ごめんなさい。けどここから先はかすみんが言うことじゃないんで」

かすみ「しず子、話せるよね?」

しずく「……」コクン
 
50: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:27:39.06 ID:9Y9zEICY
かすみ「というわけで後はしず子から聞いてください。かすみんの役目はここまでです」スッ

かすみ「一度ちゃんと話し合った方がいいですよ?」

せつ菜「かすみさん…」

せつ菜「まだよく分かってませんが、私たちの事心配してくれたんですね」

せつ菜「ありがとうございます」

かすみ「……そう思うなら、仲良くしてくださいね」

かすみ「それじゃ」スタスタ

せつ菜(……本当にありがとうございます)ペコ

せつ菜(さて……)

しずく「……」


―――かすみさんが立ち去って今度はしずくさんと二人きり

―――先ほどから一言もしゃべらないで、目線は床に向いたまま

―――ここ最近の遠慮のないしずくさんと違って、今はとてもバツが悪そう


せつ菜「えっと…説明、してもらえると嬉しいんですが」

しずく「……」
 
51: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:29:06.96 ID:9Y9zEICY
しずく「ごめんなさい…」ポロ…

せつ菜「!?」

せつ菜「どうしたんですか!何を泣いて…」

しずく「ごめんなさい、ごめんなさい…」ポロポロ

せつ菜「何がですか!?、と、とりあえず落ち着いてください!」

しずく「ごめ…ぐすっ…」

せつ菜「それは分かりましたから!」ギュッ


―――何を言っても聞いてもらえず、ただ謝罪の言葉を繰り返すだけ

―――訳も分からず泣いてしまったしずくさんを何とかなだめようと抱きしめる


しずく「…ひっ…く」

せつ菜「……どうしちゃったんですか?」ナデ、ナデ

せつ菜「いつもなら、かすみさんと浮気してる!とか言うじゃないですか」

しずく「……っ」

せつ菜「…お願いします。しずくさんの心の内を聞かせてください」

しずく「……」

せつ菜「大丈夫です、嫌いにはなりません」

せつ菜「しずくさんだけ私の本心聞いて、ずるいです」

しずく「……かすみさんの言う通りです」
 
52: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:30:54.08 ID:9Y9zEICY
しずく「せつ菜さんは悪くなくて、全部私のせいなんです」

せつ菜「何のことですか?」

しずく「あの日の事故のキス、あれは事故ではなかったんです」

せつ菜「………え」

しずく「私がせつ菜さんとキスをしたくて、事故を装ったんです」

せつ菜(しずくさんが自分の意志で…?)

せつ菜「……確かに腕を引いた時、妙に身体が軽いと思いました」

せつ菜「でもどうして…」


―――分かりきったことを聞く

―――そんなものもう決まってる


しずく「せつ菜さんが好きだったから。私の事、意識させたかったからです」

しずく「結果は…予想以上に私の事考えてくれてました」

しずく「翌日の様子を見て、成功したんだと思いました」

しずく「でも間違いでした。その裏ですごくせつ菜さんを悩ませちゃって…」

しずく「せつ菜さんが好きの気持ちを大事にしていることなんて分かってたのに」

しずく「気持ちを捻じ曲げてしまったのはせつ菜さんではなく、私のほうなんです」

しずく「歪な恋の魔法にかけてしまったんです」
 
53: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:33:15.25 ID:9Y9zEICY
しずく「その罪悪感は日に日に増して、それを忘れるようにせつ菜さんに甘えて」

しずく「いつかせつ菜さんにかけた魔法が解けて私の事を好きじゃなくなったら」

しずく「…耐えられる気がしませんでした」

しずく「あまり付き合う前と変わらないせつ菜さんも相まって」

しずく「毎日、私の事まだ好きなのかな?って確かめずにはいられませんでした」

せつ菜「それで、ことあるごとに浮気って…」

しずく「…冗談半分、本気半分でした。そう言って、せつ菜さんがそれを否定して」

しずく「そんなものに縋らないと安心できませんでした」


・・・・・・

せつ菜「えぇ…私信用なさすぎません…?」

しずく「っ……いや…その…」

せつ菜「……?」

・・・・・・


せつ菜(あの時の違和感)

せつ菜(信用なんてできるわけない。毎日怯えていたんですね…)

しずく「……だから、ごめんなさい」

しずく「私のこと、もう嫌いになっちゃいましたよね…」
 
54: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:35:22.52 ID:9Y9zEICY
せつ菜「……はぁ…」

しずく「お、怒ってますよね…」シュン

せつ菜「良かったです。私、しずくさんに何も酷いことはしてなかったんですね」

しずく「えっ……」

せつ菜「怒ってませんよ。むしろ全部杞憂だったんですから安心しました」

しずく「そ…そんなのおかしいですよ…だって私が…」

せつ菜「怒ってほしいですか?嫌ってほしいですか?」

しずく「……それは…」

せつ菜「私が良いって言ってるんだから気にしないでください」

しずく「でも…」

せつ菜「…かすみさんが言ってましたよね。自信を持てって」

せつ菜「私やっぱりしずくさんのこと好きです。今更嫌いになんてなれません」

せつ菜「しずくさんが私の事を心から好きでいてくれるなら私は何も言うことはありません」

せつ菜「それでいいと思いませんか?」

しずく「でも私、せつ菜さんの気持ちを…」

せつ菜「分かりました」クイッ

しずく「え」

ちゅ
 
55: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:37:28.19 ID:9Y9zEICY
しずく「あ、あの…どうして今…///」カァ

せつ菜「するのはお付き合いを始めた日以来ですね」


―――しずくさんの顔が一気に赤くなる

―――私も照れてしまいそうになるけれど、それでは格好がつかない


しずく「……そうですけど///」

せつ菜「きっとお互い後ろめたくて遠慮してたんですね」

しずく「そう、ですね…そうかもしれません」

せつ菜「でも我慢しなくていいのなら遠慮しません」

せつ菜「私はもうしずくさん以外考えられないんです」

せつ菜「もしもまだ罪悪感を感じるというなら、責任もって私の事受け止めてください」

せつ菜「もし私のことが信用できないなら、毎日でも想いを伝えます」

せつ菜「まぁ、今の私から言わせたら…」


―――手を握り、目を合わせて、早速気持ちを伝える


せつ菜「ただしずくさんが意識させて私が惚れた、それだけのことだったんです」ニコ

しずく「どうして……」ウルッ

しずく「どうしてそんなに、優しくするんですか…」グスッ

せつ菜「自分で言うのもなんですけど、私はしずくさんのこと大切に思ってますから」

せつ菜「ちょっと間違えたくらいでなんですか」
 
56: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:42:39.89 ID:9Y9zEICY
せつ菜「って、それは私もですね…二人とも些細なすれ違いをしただけです」

せつ菜「今しずくさんも私のために泣いてくれています」

せつ菜「それくらい私の事を想ってくれているなら大丈夫です」

せつ菜「私たち、きっとやり直せます」

しずく「……っ」ダキッ

せつ菜「っと……」


―――しゃくり上げながら私に身体を預けるしずくさん

―――受け止めて、軽く背中をなでる


せつ菜「改めて、私とお付き合いしてください」

せつ菜「今度は間違えません。悩みません」

せつ菜「遠慮もしません。だから、しずくさんも遠慮しないでください」

せつ菜「それで手を打ちませんか?」

しずく「っ……はい」ギュ


―――間違いから始まった私たちの関係

―――すれ違って、少し転んで、怪我もしたけれど

―――これからはもう、そんな心配もいらないでしょうね

―――私たちを縛り付ける嘘も魔法も、ありませんから


おわり
 
57: (えびふりゃー) 2022/02/06(日) 00:43:47.15 ID:9Y9zEICY
読んでくれた皆様ありがとうございました
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1644069500/

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