【SS】歩夢「泥棒猫の秘密を暴け！」【ラブライブ！虹ヶ咲】

歩夢（最近、侑ちゃんと一緒にいられる時間が減っちゃってる）

歩夢（理由は２つある。１つ目は、侑ちゃんが音楽科に転科したことだ）

歩夢（今までだって違うクラスになっちゃったことはあったけど、学科まで違ったことはなかった）

歩夢（まあ、小学校とか中学校には学科なんてないから、当たり前だけど……）

歩夢（それはともかく、別の学科だとカリキュラムが異なるから、下校の時刻も合わないことが多い）

歩夢（でも、侑ちゃんの夢のためだから、これは仕方ない。さみしいけど、仕方ない）

歩夢（さみしいけど……）ｼｭﾝ

歩夢（そして、２つ目は……）

せつ菜「侑さん！　ここなんですけど、こんな感じにしたら――」

侑「いいね！　でも、それだけじゃなくて――」

せつ菜「なるほど！　さすが侑さんです！」ﾒﾓﾒﾓ

歩夢（私の侑ちゃんを狙ってる、あの泥棒猫の存在だ）ｷﾞﾘｯ

歩夢（前から仲はよかったけど、近頃は一緒に何かをしてるらしくってよく２人でいる）

歩夢（侑ちゃんがせつ菜ちゃんに何か教えてあげてるみたいだけど、何を教えてるんだろ？）

歩夢（侑ちゃんも成績が悪いわけじゃないけど、優等生のせつ菜ちゃんに勉強を教えてるってのはないはず）

歩夢（スクールアイドルについても、せつ菜ちゃんの方が詳しそうだし……）

歩夢（せつ菜ちゃんより侑ちゃんの方が詳しいことって何があるだろ？　音楽のこととか？）ｳｰﾝ?

歩夢（聞いても誤魔化されるだけなのは分かってるけど、それでも私は聞いてしまう）

歩夢「侑ちゃん、何してるの？　楽しそうに話してるみたいだけど」ﾆｺｯ

侑「あ、歩夢！？　いや、別にたいしたことじゃないよ」

せつ菜「そ、そうです！　えっと、その、私のお気に入りのアニメの話をしてたんですよ！」ｱｾｱｾ

侑「そう、そうなんだよ！　ときめいちゃう～！」

歩夢「……そうなんだ」

歩夢（やっぱり傷つくなあ。聞かなきゃよかった）

歩夢（侑ちゃんが嘘をついてるかなんて、手に取るように分かる）

歩夢（幼馴染だもんね。嘘をつくときの癖も、細かいものも入れれば両手で数え切れないくらい知ってる）

歩夢（せつ菜ちゃんが嘘をついてることも、手に取るように分かる）

歩夢（幼馴染じゃないけどね。……というか、これは誰でも分かるよ。嘘つくの下手すぎでしょ）

歩夢（まあ、問い質す勇気がないんなら、いっそのこと分からない方がいいのかもしれないけど）

せつ菜「歩夢さんも来ましたし、そろそろ練習しましょうか！」

侑「そうだね。始まるまでちょっと時間あるけど、もうみんなも来るだろうし」

歩夢「今日は最初にランニングするんだっけ？」

侑「そうだよ。みんなには私が言っとくから、２人は着替えたら走り始めといて」

歩夢「うん」

せつ菜「はい！」ﾍﾟｶｰ

歩夢（『せつ菜ちゃんの方が大事なの！？』って、また聞いた方がいいのかなあ）ﾓﾔﾓﾔ

練習後

歩夢（遅くなっちゃった。なんであんなにシャワー混んでたんだろ？）

歩夢（もう、誰もいないよね？）ｶﾞﾁｬ

歩夢（……そうだよね。いないよね）

歩夢「……侑ちゃんも帰っちゃったかあ」ﾊｧｰ

歩夢（って、ダメダメ！　いちいち落ち込んじゃ！）

歩夢（侑ちゃんは明日は音楽科の人と早朝練習だって言ってたし、私を待ってなんかいられないよね）

歩夢（私も帰ろう。カバンを持って、鍵を職員室に――）

歩夢「あれ？　これは……」

歩夢（机の上のこれ、せつ菜ちゃんのノートだよね？）

歩夢（間違いないと思う。このピンク色のノートには見覚えがある）

歩夢（最近のせつ菜ちゃんが、侑ちゃんと話してるときに何か書いてるノートだ）

歩夢（何を書いてるのか気になってたんだよね。いや、中を見ちゃいけないのは分かってるけど……）ﾋｮｲ

歩夢（表紙にはせつ菜ちゃんの名前と、これは『LoN』でいいのかな？　何かの頭文字？）

歩夢（それから、大きく赤でマル秘の文字……）

歩夢（ふふっ、こういうべたなの好きそうだよね。せつ菜ちゃんらしいなあ）

歩夢（……この中には、せつ菜ちゃんの秘密が書いてあるんだよね）

歩夢（きっと侑ちゃんのことが……。私の知らない、せつ菜ちゃんは知ってる侑ちゃんのことが……）

歩夢（『LoN』？　『Love You Nyan』で、『侑ちゃん、大好きだにゃん！』とか？）

歩夢（……いや、さすがに違うか。Youじゃなくて、Yuだし）

歩夢（けど、侑ちゃんに関する何かが……。せつ菜ちゃんだけが知ってる侑ちゃんが……）

歩夢（知りたい。でも、勝手に見るわけには……。だけど、侑ちゃんの重要事項が……）

歩夢（侑ちゃんの大事なことって何だろう？）

歩夢（…………………………………………）

歩夢（はっ！　もしかして侑ちゃんが夢のために何かしようとしてて、せつ菜ちゃんに相談してるとか？）

歩夢（そうだよ！　ピアノを始めたときも、なぜかせつ菜ちゃんが先に知ってたし！）

歩夢（侑ちゃんは音楽科に転科したわけだけど、それで次は……）

歩夢（そうだ！　次は留学とかだよ！）

歩夢（きっと留学について、生徒会長のせつ菜ちゃんに相談してるんだ！　これはあるでしょ！）

歩夢（それに、私の大切な幼馴染が２ヶ月くらい留学するのって、なんか聞いたことある気がするよ！）

歩夢（もっと言うと、幼馴染に留学のことを教えないのはありがちだからね！）

歩夢（それで、『何度も言おうとしたよ？』とか言われちゃうんだよ！）

歩夢（別に私は、ライブやるのにもラブライブにも夢中じゃないけど！）

歩夢（なんでせつ菜ちゃんにだけは言ってるのか、すっごく疑問だけど！）

歩夢（……なんか色々と無理がありすぎるような気がするけど、とにかくこれで中を見る理由ができたね）

歩夢（これは仕方ないよね？　止めなきゃだもんね。留学を止めるのは、幼馴染の特権だからね）

歩夢「ごめんなさい、せつ菜ちゃん」ﾍﾟﾗｯ








歩夢「ふえっ！？」ﾊﾟﾀﾝ

歩夢（あれ？　今、何かとんでもないものが見えたような……）

歩夢（そ、そんなわけないよね？　何かの見間違いだよね？）

歩夢（だって今から始まるのは、幼馴染の絆を再確認するための話のはずで……）ﾍﾟﾗｯ








歩夢「はにゃ！？」

歩夢（なんで、こんな特級呪物が部室に……）

歩夢（どのページを見ても、せつ菜ちゃんが主人公で私がヒロインの話の設定が書いてある）ﾍﾟﾗﾍﾟﾗ

歩夢（え？　これを、侑ちゃんと話しながら書いてたの？　どうして？）

歩夢（家でこっそり書くんなら、まだ分かるけど……）ﾍﾟﾗﾍﾟﾗ

歩夢（あ、これ。この主人公とヒロインの過去のエピソードって……）

歩夢（これ、私と侑ちゃんのだ。小学３年生の夏休みのときの、大切な思い出……）

歩夢（…………なるほど。幼馴染がいないせつ菜ちゃんのために、侑ちゃんが教えてあげたんだ）ﾌｰﾝ

歩夢（せつ菜ちゃんより侑ちゃんの方が詳しいことって、幼馴染がどういうものかってことだったんだね）

歩夢（ふーん、そっかあ。そうなんだあ。なるほどねえ、そういうことかあ）ﾍｰ

歩夢（……………………）ﾍﾟﾗﾍﾟﾗ

歩夢（……ちょっと待って。これ、面白いかもしれない）

歩夢（配役とか私の思い出が流用されてることとか、色々と言いたいことはあるけど……）

歩夢（でも、純粋に話の内容を見てみると、よくできてると思う）

歩夢（せつ菜ちゃんが好きそうなファンタジーで、細かいところまで設定がしっかりしてる）

歩夢（私も寝る前とかに、勇者の侑ちゃんに助けられる空想をしたことはあるよ？）

歩夢（昔からファンタジーが好きで、自分で色々とストーリーを考えたこともあるよ？）

歩夢（けど、私のはもっとふわっとした感じで、こんなに細部まで作り込まれてはいない）

歩夢（それに、上手く言えないけど、これにはせつ菜ちゃんの強い想いが込められてる気がする）ﾍﾟﾗﾍﾟﾗ

歩夢（この黒いドラゴンが私をさらった敵なんだ。かっこいいかも。絵も上手いなあ）ﾍﾟﾗｯ

歩夢（へえ、ドラゴンは緑色した尻尾の先から木や草を生み出すんだ。この設定も生かされるのかな）

歩夢（ほら！　このページなんて、同好会のみんなの設定まできちんと決まってる）ﾍﾟﾗｯ




歩夢（かすみちゃんが忍者みたいな闇稼業なのに、目立ちたがり屋だってのはいいね。可愛い）

歩夢（愛ちゃんがダジャレ風の呪文を使う魔法使いなのは凝ってるなあ）

歩夢（果林さんは錬金術師なんだ。なんでだろ？　あんまりそんなイメージはないけど……）

歩夢（ああ、そういえばせつ菜ちゃんが生徒会長だって気づいたのは果林さんだって言ってたな）

歩夢（せつ菜ちゃんの中では、果林さんは賢い人なのかな？）ﾌﾌｯ

歩夢（でも、本当によくできてる。ちゃんと栞子ちゃんまで――）

歩夢（あれ？　待ってよ。おかしくないかな？　……どうして、侑ちゃんがいないの？）

歩夢（最近に同好会に入った栞子ちゃんはいるのに、侑ちゃんがどこにもいないのは変じゃない？）

歩夢（せつ菜ちゃんが誰かを仲間外れにするとは思えないし、なんで侑ちゃんが……）ｳｰﾝ?

歩夢（もし侑ちゃんがいたとしたら、勇者みたいなかっこいいジョブがいいなあ）

歩夢（騎士だと主人公のせつ菜ちゃんと被っちゃうからダメだけど、一緒に私を――）

歩夢（あっ！　もしかして侑ちゃんがいないのって、ヒロインの私の幼馴染だから！？）

歩夢（主人公の自分の幼馴染を私にしたいから、邪魔な侑ちゃんを消しちゃったってこと！？）

歩夢（そんな！？　せつ菜ちゃんが侑ちゃんを狙ってるっていう言葉の意味が変わっちゃうよ！？）

歩夢（というか、せつ菜ちゃんがそういう意味で狙ってるのは私だったの？）

歩夢（こんなものまで書いちゃうなんて、よく考えると実はけっこうヤバい状況なん――）

ドア「バァン！」

歩夢「ひっ！」ﾋﾞｸｯ!

せつ菜「あれ？　歩夢さんじゃないですか！　まだ残ってたんですか？」ﾍﾟｶｰ

歩夢「う、うん。今から帰るとこだったんだ。……えっと、せつ菜ちゃんは？」

せつ菜「はい！　忘れ物をしちゃいまして、取りに来たんです！」

せつ菜「この机の上に置き忘れたはずなんですけど、ありませんね」ｷｮﾛｷｮﾛ

せつ菜「歩夢さんは見ませんでしたか？　ピンクのノートなんですけど……」ｶﾞｻｺﾞｿ

歩夢「えっと、それは……」

せつ菜「あっ！　歩夢さんが持ってるじゃないですか！　それですよ！」

歩夢「……え？　そうなんだ。気づかなかったなあ」

歩夢「えっとね？　たった今、手に取ったとこなんだ。ピンク色で可愛いなあって思って、それで……」

せつ菜「もしかして、中を見ました？」

歩夢「うえっ！？　そ、そんな、まさか！　そんなわけないよ。うん、えっと、その――」ｷｮﾄﾞｷｮﾄﾞ

せつ菜「見たんですね？」

歩夢「……ぁぅ」

せつ菜「…………」

歩夢「ご、ごめんなさい。つい、好奇心に負けちゃって……」ｵﾄﾞｵﾄﾞ

歩夢「勝手に見るなんて最低だよね。本当にごめんなさい！」ﾍﾟｺｯ

せつ菜「歩夢さん、頭を上げてください。別に怒ってなんていませんから」

歩夢「え？」

せつ菜「まだ完成していない状態のものを見られたことは、少しだけ恥ずかしいですが……」

せつ菜「完璧に仕上げたら、まず歩夢さんに見てもらう予定でしたから！」ﾍﾟｶｰ

歩夢「えっ、自分からこれを私に見せるつもりだったの？」

せつ菜「はい！　みなさんに公開する前に、歩夢さんには一番に見てもらいたかったんです！」ﾍﾟｶｰ

歩夢「私に一番に？　それって、どういう……」

歩夢「って、ちょっと待って！　みんなにも見せるつもりなの！？」

せつ菜「はい！　私のスクールアイドルチャンネルで、世界中のみなさんに届けたいんです！」ﾍﾟｶｰ

歩夢「みんなって同好会のみんなじゃなくて、全世界の人たちのこと！？」

せつ菜「もちろんです！　私のチャンネルは、世界のすべての人に大好きを届けるためにあるんですから！」

せつ菜「だから私の大好きを詰め込んだこの話も、みなさんにお届けしたいんですよ！」ﾍﾟｶｰ

歩夢「そうなんだ。……せつ菜ちゃんは、すごいなあ」

せつ菜「別にすごくなんてないですよ。したいと思ったことを、ただしてるだけです」

歩夢「ううん、それがすごいんだよ。私には絶対できないから」

歩夢「小学生の頃に私も、こういうファンタジーな話を考えたことがあるの」

歩夢「だけど、誰かに見せるなんて恥ずかしくって、結局は侑ちゃんにも言えなかった」

歩夢「まあ、私の中途半端でダメダメなやつと比べたりしちゃ、せつ菜ちゃんに失礼だけどね」ﾍﾍｯ

せつ菜「歩夢さん、そんなこと言っちゃダメですよ」

歩夢「え？」

せつ菜「確かに創作は恥ずかしいものです。それは仕方ありません。当たり前のことです」

せつ菜「だけど、少なくともそんなふうに自分で卑下していいものじゃないんですよ？」

歩夢「せつ菜ちゃん……」

せつ菜「よかったら、いつか歩夢さんの作品を私に見せてください！」

歩夢「……うん」

歩夢「あ、そうだ！　せつ菜ちゃん、ちょっといいかな？」

歩夢「これについて、聞きたいことがあるんだけど……」

せつ菜「もちろんいいですよ！　質問や感想でしたら、私の方からお願いしたいくらいです」

せつ菜「何か分かりにくいところでもありましたか？」

歩夢「ううん、そういうわけじゃないの。細かい設定も分かりやすかったし、とっても面白いと思う」

歩夢「ただね、えっと、ちょっとした疑問なんだけど……」

歩夢「なんで侑ちゃんがいないの？」

せつ菜「…………」

せつ菜「なるほど。歩夢さんがまず気になるのは、やはりそこなんですね」

歩夢「いや、別にダメだって言いたいわけじゃないんだよ？」ｱｾｱｾ

歩夢「でも、他のみんなはいるのになんでかなーって……」

せつ菜「それでしたら、答えは簡単です。それは……」

歩夢「う、うん。それは？」

せつ菜「侑さん本人に、自分は出さないようにと頼まれたからです」

歩夢「えっ、侑ちゃんが出たくないって言ったの？」

せつ菜「はい、侑さんからの要望です。私としては出したかったのですが……」

せつ菜「スクールアイドルではない自分は出演すべきではないというこだわりがあるらしくって」

歩夢「なるほど、そっか。なんだあ、そういうことかあ」ﾎｯ

せつ菜「ですが、実は侑さんをモデルにしたキャラがいるんです！」

歩夢「あれ？　そんなのいたっけ？」

歩夢「侑ちゃんに似てるキャラクターなんて、どのページにもいなかったと思うけど……」ﾍﾟﾗﾍﾟﾗ

せつ菜「……思ったよりがっつり読み込んでるみたいですね」

歩夢「あっ、ごめんね。面白かったから、そこそこ時間をかけて読んじゃって……」

せつ菜「いえ、歩夢さんに楽しんでもらえたようで嬉しいです！」ﾍﾟｶｰ

せつ菜「それで、侑さんのキャラですが……」ﾍﾟﾗﾍﾟﾗ

せつ菜「これです！　このドラゴンは侑さんなんです！」

歩夢「この私をさらうドラゴンが侑ちゃんなの？」

歩夢「でも、ドラゴンのモデルが侑ちゃんってどういう……。あっ、尻尾の色？」

せつ菜「はい、侑さんのあの独特の髪色をモチーフにしています！」

歩夢「言われてみればこの黒から緑へのグラデーションは、確かに侑ちゃんの色だ……」

歩夢「よく描けてると思うよ。なんで気づけなかったんだろって思うくらいには」

せつ菜「そこの塗りは気合を入れて描きましたから！」ﾍﾟｶｰ

せつ菜「このことは侑さんには言っていないので、秘密にしておいてくださいね？」

歩夢「これくらいなら許してくれそうな気もするけど、公開した後で教えてサプライズにしてもいいかもね」

せつ菜「本当はドラゴンの人間形態を登場させて、それを侑さんの姿にしようかと思っていたのですが……」

せつ菜「それだとさすがにバレてしまうでしょうからね。まあ、裏設定みたいな感じです」

歩夢「そういう表に出てこない設定まであるんだ。凝ってるなあ」

せつ菜「この『レジェンド オブ ニジガク』は、私の力を尽くした企画ですからね！」

せつ菜「細部に至るまで、私の大好きで満ち溢れていますよ！」ﾍﾟｶｰ

歩夢「やっぱり、せつ菜ちゃんはすごいね！　完成するのが楽しみだよ」

歩夢「あ！　もしかして『Legend of NijiGaku』だから、ノートに『LoN』って書いてあるの？」

せつ菜「そうですよ！　英語だと『The Legend of NijiGaku』が正式名称なんです」

歩夢「英語のタイトルまで決まってるの？　ホントにすごいね」ﾌﾌｯ

せつ菜「世界中のすべての人に伝えたいですもん！　いつかは翻訳したものも発表したいです！」

せつ菜「プロットや設定も煮詰まってきましたし、近いうちに公開できると思うんです！」

せつ菜「侑さんにも色々と協力してもらいましたし、最高のものをお見せしたいですね！」ﾍﾟｶｰ

歩夢「ふふっ、そうだね。私も楽しみだよ」

歩夢「でも、侑ちゃんがせつ菜ちゃんに何か教えてるみたいで気になってたんだけど……」

歩夢「侑ちゃんが幼馴染について詳しいから、そのことを聞いてたんだね」

せつ菜「……違いますよ。私が聞いていたのは、幼馴染のことじゃありません」

歩夢「え？」

せつ菜「侑さんが詳しいのは、歩夢さんのことです。私は、歩夢さんのことを知りたかったんです」

歩夢「でも、それは同じことなんじゃ……」

せつ菜「いいえ、同じなんかじゃありません」

せつ菜「この話のヒロインは、歩夢さんでなきゃダメなんです」

せつ菜「ただの幼馴染などではなく、歩夢さんじゃなきゃイヤなんです」

せつ菜「だって、この話は、私の大好きを詰め込んだものなんだから」

歩夢「うえっ！？　せ、せつ菜ちゃん！？」

歩夢「あの、その、せつ菜ちゃん？　それって、どういう……」

せつ菜「…………」

歩夢「…………」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

せつ菜「歩夢さん」

歩夢「は、はいっ！」

せつ菜「先ほども言いましたが、この話は近いうちに完成すると思うんです」

歩夢「う、うん」

せつ菜「そうしたら、感想を頂けませんか？　誰よりも先に、歩夢さんにお見せしますから」

せつ菜「私の話を読んでどう思ったかを聞かせて欲しいんです」

歩夢「…………うん、分かった。しっかり読んで、ちゃんと答えるよ」

せつ菜「はい、ありがとうございます！」ﾍﾟｶｰ

せつ菜「おっと、もういい時間ですね！　そろそろ帰らないと！」

せつ菜「それでは、私は失礼します！　歩夢さんも気をつけて帰ってくださいね！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ

ドア「バァン！」

歩夢「うん、また明日ね」ﾊﾞｲﾊﾞｲ

歩夢（えっと、これは、そういうことだよね？　勘違いじゃないよね？）

歩夢（せつ菜ちゃんの大好きを詰め込んだ話のヒロインは、私でなきゃダメだって……）

歩夢（私じゃなきゃイヤだって、すっごく真剣な顔で……）

歩夢（ううぅ、なんであんなにかっこいい言い方するのぉ！？）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

歩夢（私から侑ちゃんの大好きを取っちゃう泥棒猫だと思ってたのに……）

歩夢（ホントは侑ちゃんから私を奪う泥棒猫だったってこと？）

歩夢（いや、もう泥棒猫とかそういう話じゃなくて、いったい私はどうしたらいいんだろう）

歩夢「でも、せつ菜ちゃんの話を読むのは、とっても楽しみだな」ﾄﾞｷﾄﾞｷ



せつ菜（ああぁ、言っちゃいました！　言っちゃいましたよ！）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

せつ菜（もうこれで、後には引けません。まあ、初めから引くつもりなんてありませんでしたけど）

せつ菜（未完成の状態で見られたのは想定外だったので、ちょっと焦りましたが……）

せつ菜（歩夢さんも少しは私を意識してくれたようですし、ちょうどよかったのかもしれませんね）

せつ菜（私の書いた話を読んで、歩夢さんはどう思うんでしょう？）

せつ菜（主人公の私がドラゴンを退けてヒロインと結ばれる話を読んで、なんて言うんでしょう？）

せつ菜（すごく怖い！　だけど、それ以上に今は……）

せつ菜「あなたの気持ちを聞けるときがとても楽しみですよ、歩夢さん」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

終わりです