【SS】絵里「海未、『ほっ』て何なの？」

海未「……あぁ～」

海未「ほらアレですよ、お味噌汁に入れるやつ」

絵里「それは『ふ』でしょ」
　

海未「なんだ、知っていたのですか」

海未「私はてっきりごぼうや納豆を人間の食べるものではないと思い込んでいる外国人あるあるかと思いましたよ」

絵里「れっきとした日本人よ」
　

海未「で、『ほっ』てなんですか？」

絵里「私が聞きたいわよ」

海未「たべものですか？」

絵里「あなた基本的に食べ物の話するの好きよね」
　

絵里「『ほっ』て言うのは……鳴き声よ。たぶん」

海未「何の鳴き声ですか？ほっ……妖怪にいそうですね」

絵里「園田海未妖怪説」

海未「は？」
　

絵里「『ほっ』は海未の鳴き声のことじゃないかと私は思っているのだけれど」

海未「意味がわかりません。私の鳴き声聞いたことあるのですか？」

絵里「ないけど。ネットに書いてたわ」

海未「頭の悪そうな答え方はやめてください」
　

海未「見せてくださいよ。ネット」

絵里「ほらぁ」

『海未『ほっ❤ほっ❤』ｶｸｯｶｸｯ』

海未「むぅ……」
　

絵里「海未の鳴き声でしょ？」

海未「…………」

海未「確かに私の鳴き声のようですね」

絵里「ほらぁ」
　

海未「しかしながら、私自身は一度も『ほっ』を言ったことがありません」

絵里「鳴いてみる？」

海未「鳴かせてみせてください」
　

絵里「おりゃっ｣ﾄﾞｺﾞｫ

海未「うっ……ぐ」

絵里「えいっ｣ｹﾞｼｯ

海未「あぎっ！？」

絵里「やぁっ｣ｸﾞﾘｯ

海未「か……はっ……」
　

絵里「……」

海未「はぁはぁ……まだ鳴き声のレパートリーはありますよ」

絵里「これ以上は変なのに目覚めそうだからやめておくわ」
　

絵里「それに多分、こう言う時に出る鳴き声ではないわね」

海未「むむ……先程から気になっていましたがこの『カクッカクッ』とはなんでしょう」

海未「私はそこにヒントがあると思います」
　

海未「カクッカクッ……これは擬音ですね。行動をあらわす擬音です」

絵里「はいっ」

海未「なんでしょう絢瀬さん」

絵里「ウィーン、ウィーン?」
　

海未「ロボットダンス？……近い気はしないでもないですが……」

海未「ですが絵里が口で言うように、それならウィーン、ガションとかのがよくないですか？」

絵里「たしかに」
　

海未「近いですよ！近づいてきました！」

絵里「えーもうこれでよくない？」

海未「膝はですね、鈍いのですよ。絵里、もう一度ヒザを表現してみてください」

絵里「ヒザがもう……ガクガクよ。……！！！」
　

海未「近いですよ！近づいてきました！」

絵里「えーもうこれでよくない？」

海未「膝はですね、鈍いのですよ。絵里、もう一度ヒザを表現してみてください」

絵里「ヒザがもう……ガクガクよ。……！！！」
　

海未「気づいたようですね。ヒザは『ガクガク』音が濁るのです」

絵里「じゃあ、膝ではないのね」

海未「ですが近い。より音をクリアにするには高い場所にあるものを探せば良いはずです。つまり……」

絵里「腰ね！！」
　

海未「正解です。しかも『カクカク』ではなく、『カクッカクッ』ですから抑揚をつけるのでしょうね」

絵里「腰を動かす、ということ？つまり……」

絵里「こう？」(((?)))

海未「いいお尻ですね」
　

絵里「あれ？でもこれ、カクッカクッて感じじゃないわ」

海未「はい。それはたぶん、お尻という肉つきの良いものが強調されているせいでしょう。つまり、横にうごかすわけではなく……」

絵里「前後に……しかも強調するのは……」

海未「お尻ではなく、前です！」
　

絵里「ま、前って……///」

海未「さあ、ここまでわかればあとは実践するのみですね」

絵里「ホントにするの？///」

海未「当然です。ほっの正体は目前です！」

絵里「……!｣ﾄﾞｷﾄﾞｷ
　

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

絵里「あ、私出るわ」

絵里「はい、いつもお疲れ様です。ありがとうございます」

絵里「おもっ……」

海未「九州の親戚からですね。食べ物でしょうか」

絵里「ホントに？開けてみましょ」
　

???

絵里「こんなにいっぱい……！」

海未「色の良いさつまいもですね！こんなものを送ってくださるだなんて……」

海未「絵里、さっそく洗ってホイルで焼きましょう！」

絵里「晩御飯前よ？」

海未「一個を半分でわければセーフです！」
　

絵里「そろそろ焼けたかしら。半分に割ってみるわね」

海未「むむっ！美しい黄金色ですよ！」

絵里「みてるだけで食欲をそそられるわね……」
　

海未「はぁはぁ……❤もう我慢できません、いただきます！｣ｶﾌﾞｯ

絵里「ちょっと海未、焼いたばかりだからまだ熱……」

海未「ほっ❤ほっ❤」

絵里「あっこれかぁ！」
　

海未「はっ！？私はもしかして、今のが……！」

海未「『ほっ』の正体！！私の鳴き声だったのですね！」

絵里「おいしいものを食べた時に出る鳴き声だったなんて……驚いたわ」
　

その後も海未は……

絵里「今日はボルシチ作ってみたの。日本風アレンジだから口にあうと良いのだけれど……」

海未「ほっ❤ほっ❤」

絵里「ふふっ、うれしいわ❤」

家族団欒の時の表現の一つとして『ほっ』を使い続けた
また、海未は上顎をやけどした

おしまい