【SS】海未「少しの勇気と、ビターチョコ」

うみ SS


2: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 22:54:16.38 ID:WokWOk24.net
誕生日というのは、その人の生まれたとても大切な日です
生まれてくれたこと、出会ってくれたこと、数え切れない感謝の気持ちを伝える……そんな日です

来週はいよいよ私の大切な人の誕生日、なのに私は……


海未「何も決まってないんです……!」

ことり「あ、あはは……」


どんなお祝いをすればいいのか、頭を抱えているのでした……


……………
 
3: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 22:54:49.06 ID:WokWOk24.net
私と絵里は、付き合い始めてからもう一月を過ぎていました
一月も過ぎれば恋人らしく、手をつないだり、口づけを交わしたり……そんな破廉恥極まりないことも、絵里とならしても良いって、そう思えます

絵里は『誕生日なんて、そんな大げさにしなくてもいい』と言っていますが……流石にそうも行きません

なのに……なぜ私は……


海未「何も思いつかないんですかあああああ!」

ことり「ちょ、ちょっと海未ちゃん、あんま机叩いちゃだめだよ!?」


「……ことりの言う通りです」と私は少し頭を冷やします


ことり「そ、それで、絵里ちゃんに何をあげればいいのかって話だよね?」

海未「それだけではありません……どんなお祝いなら絵里が喜んでくれるのかな、と……」


なるほどー、とことりは少し考え込んでいるようです
 
4: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 22:55:18.25 ID:WokWOk24.net
ことり「でも、多分海未ちゃんの気持ちがこもってれば絵里ちゃん、喜んでくれるんじゃないかなあ……」

海未「そ、そうかもしれませんが……」


ことりはなんだか嬉しそうにニコニコしています
……なんだか、からかわれてるみたいで少し傷つきます


ことり「あ、そうだ!絵里ちゃんおしゃれだし、ファッション関係はどうかなぁ?」

海未「服……とかですか?」

ことり「それもあるけど、小物とか、アクセサリーも良いんじゃない?」

海未「例えば?」
 
6: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 22:56:05.64 ID:WokWOk24.net
ことりはいかにも「むふふ」と笑いそうな顔をしながら


ことり「お揃いの指輪、とか?」

海未「なっ!?」


その一言で、私の顔は真っ赤に染まります
ことりのにやけ顔はさらに加速し、


ことり「どうしたの?ことり、ただ仲良しの証として指輪なんてどうかなって考えただけだよ?」

海未「か、からかわないでください!」


ことりは、たまにこういう意地悪なところがあります……全く、と少し肩を落とします
 
7: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 22:56:36.18 ID:WokWOk24.net
と、勢い良く教室の扉が開きました
誰、なんて聞く必要ありません


穂乃果「なになに?なんの話?」

ことり「海未ちゃん、絵里ちゃんの誕生日プレゼントに悩んでるんだって」

穂乃果「へえ~……海未ちゃんが」


穂乃果まで、人をからかうような顔をしてこちらを眺めています


海未「な、なんなんですか二人とも!私は真剣に……そういえば穂乃果はにこに何をあげたんですか?」

穂乃果「指輪だよ?ペアリングの」


その一言で、思わず私は固まってしまいました
……付き合ってもいないのに、ペアリングをプレゼントに?
 
8: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 22:57:39.15 ID:WokWOk24.net
海未「ちなみに、穂乃果の誕生日には何を……」


突如、穂乃果の頬が朱に染まります


穂乃果「……それは内緒」


わけがわからず、私は「はあ……」と生返事をすることしかできませんでした


放課後
毎日の日課……のようなものが、私にはあります、それは……

絵里「ごめんごめん、待った?」

海未「いえ、それほど待ってないですよ」


なら良かった、と絵里は笑います
それに応えるように、私も微笑みます
つまるところ彼女である(私も彼女であるといえば彼女ですが)絵里と、15分ちょっとの帰り道を歩くこと

私の右手には、絵里の左手が握られています
 
11: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 22:58:16.77 ID:WokWOk24.net
海未「受験勉強、大変ですか?」


それなりにね、と絵里は答えます


絵里「でもまあ、元から勉強は好きだしそこまで苦になってないわ」

海未「そう、ですか……」


そこから少しだけ、沈黙が訪れます
けれどそれが嫌ではなく、むしろ心地いいのです

好きな人といるって、つまりそういうことだと思います
わかりませんか?……そのうちわかるでしょう

ふと気になって、こんなことを聞いてみます
 
12: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 22:59:11.72 ID:WokWOk24.net
海未「そういえば、絵里の誕生日って普段はどのようにしているのですか?」

絵里「誕生日?やっぱり家族と過ごしてたわね、毎年」

海未「家族に祝福される誕生日、素敵ですね」


ああでもそういえば、と絵里はなにやら思い立った様子です


絵里「今年はμ'sのみんなと、海未がいるからね、ちょっと違うかも」

海未「ふふっ、精一杯お祝いしてあげますよ」


楽しみにしてるわ、と絵里が微笑みます
 
14: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:00:30.47 ID:WokWOk24.net
翌日
私は相も変わらず、絵里に何を贈ってあげようと、頭を抱えていました

穂乃果やことりに送っていたように、何故すぐに良いものが浮かばないのか、不思議でなりません

すぐに「それが好きだってこと」と思うことにしましたが……どんなものなら良いのでしょう




穂乃果「何でも良いんじゃないかなぁ」


と、最近料理を覚えた穂乃果が自作の卵焼きにかじりつきながらそう呟きます


海未「何でも良い、とは?」


言葉通りだよー、と穂乃果は笑いながら


穂乃果「だって初めての誕生日でしょ?何送っても喜ばれると思うけどなぁ」

海未「し、しかし……だからこそ思い出に残るプレゼントを贈りたいじゃないですか」


それもそうかあ、と穂乃果はごはんを頬張ります
今までその会話を眺めていただけのことりが
 
15: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:01:07.22 ID:WokWOk24.net
ことり「手作りするってのはどう?」

海未「手作り……ですか?」

ことり「うん!手作りなら少し不恰好でも気持ちがこもってるし、喜んでくれるんじゃない?」


海未「……いいかも知れません!」


確かに手作りなら気持ちを直に込めることが出来ますし、素敵だと思います


ことり「ならまずは何を作るかだね」

穂乃果「絵里ちゃん、何が好きなの?」


私は少し考え込みます


海未「確か……チョコは好きですよ」

ことり「じゃあ……手作りチョコ?」

穂乃果「なんかそれじゃバレンタインみたいだね」

海未「そうですね……」
 
16: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:03:11.53 ID:WokWOk24.net
……手作りは手作りで決まりませんね
そんなことを考えていたら穂乃果が


穂乃果「いや、バースデーケーキとかなら良いんじゃないかな?」

ことり「あー、それは良いかもね」

海未「ケーキ……ですか?」


穂乃果は頷きながら


穂乃果「バースデーケーキなら違和感ないじゃん?チョコケーキでも良いんじゃない?」


チョコケーキ……絵里が美味しそうに頬張る姿が想像できます……いいかも知れません


海未「そうですね、いいかも知れません。ありがとうございます」

穂乃果「いいよいいよー」

ことり「海未ちゃん頑張ってね、ことりたちもお手伝いするからね」

海未「はい、ありがとうございます」


みんなでケーキをあげるのもいいかも知れませんね
なんて考えながら、先生が慌ただしく教室に駆け込むまであーでもないこーでもないと話し合っていました
 
17: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:03:53.34 ID:WokWOk24.net
そんな今日の帰り道、いつものように私は校門前で絵里を待っています


海未(そういえば絵里はチョコが好きでしたが、どんなチョコが一番好きなのでしょう?)


甘いものが好きならやはりミルクチョコでしょうか……いや、大人な絵里はビターなチョコも好きかもしれません……

なんて、考えていたら


絵里「お待たせー」

海未「うひゃあああ!?」


と、絵里に後ろから肩を叩かれ、思わず飛び上がってしまいました


海未「お、驚かさないでください!」

絵里「そんなつもりじゃなかったんだけど……ごめんね?」


と、絵里が少し意地悪っぽく笑います
そんな絵里を見て、少し「好き」が強くなる私がいたのです
 
18: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:04:35.11 ID:i9aHrYcR.net
二人で並ぶ帰り道
それは今では当たり前のようなことなのに、今でも胸が張り裂けそうになります

私は、楽しそうに話す絵里の横顔を眺めながら、やはり楽しそうに頷いているのでした


絵里「いやもー本当、にこったらなんであんなとこで……」

海未「ふふ、なんだかにこらしいですね」

絵里「それもそうよねえ……思い出すと今でもおかしくなっちゃう」


つないだ私の右手は、少しだけ汗ばんでいます

でも好きなのですから、仕方ないんです
誰だって、好きな人の前では少しだけ緊張してしまうでしょう?おかしくありません

それでもなんとか顔に出さないように、いつものように笑います
 
19: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:05:31.52 ID:i9aHrYcR.net
ふと、あることを思い出します

海未「……そ、そういえば絵里はどんなチョコが好きなんですか?」

絵里「あら、もしかして何かくれるの?」


いたずらっぽく笑う絵里に対し、私は


海未「い、いえ!なんとなく聞いてみただけです」


……いけません!
これではどう考えても何か企んでいる人の言動ではないですか!

しかし「んー……甘いのもいいけど……」なんて悩む絵里を見て、胸をなでおろすと同時に、たまらなく愛おしくなる私でした

絵里「そうね、結構ビターも好きかもしれないわ」

海未「なんか、他人事みたいですよ、それ」
 
20: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:05:59.46 ID:i9aHrYcR.net
あいぽんになりましたが>>1です
 
21: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:06:30.03 ID:i9aHrYcR.net
私は少し苦笑いをします
つられたのか絵里も肩をすくめ


絵里「だって、結構チョコならなんでも食べるんですもの」


あ、そうそう、と絵里は付け足します


絵里「チョコといえば私、フォンダンショコラみたいなのも好きよ?」

海未「フォンダンショコラ……ですか?」

絵里「この前美味しいとこ見つけてね、今度一緒に行かない?」

海未「……良いですね、行きましょう」


決まりね、と絵里はウインクを投げてきます

絵里「だとしたら週末かしら……予定ある?」


と、絵里が私の顔を覗き込みながら問いかけます
私は少しだけ胸が弾みながら


海未「いえ、大丈夫ですよ」


と返します
 
22: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:07:08.32 ID:i9aHrYcR.net
絵里「美味しいんだけど、少し遠いのよねえ」

海未「どれくらいかかるんですか?」

絵里「えーと……電車で30分くらいかな?」

海未「なるほど、それは結構遠いですね」

絵里「まあ、海未と一緒ならすぐかしら?」

海未「そうですね、そんな気がします」


それから、何故かお互い無言になります
無言でも、隣の絵里が幸せそうな顔をしているとなんだかこっちも幸せになります


そんな気分になっていると、いつの間にか終着点にたどり着いていたようです

私たちは、名残惜しくその手を離します


絵里「じゃあまた明日ね」

海未「はい、また明日です」


目を静かに伏せる私に、絵里はこれまた静かにキスをしてきます

夕焼けのせいか、絵里の顔は少し赤くなっています


絵里「それじゃ、今度こそまた明日ね」

海未「……はい」


明日はどんな絵里を好きになるのでしょう
そんなことを考えながら、私は自宅へ進路を向けるのでした
 
23: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:07:55.99 ID:i9aHrYcR.net
夕飯も過ぎ、私は自室で机に向かい……


海未(なにもできませんでした……!)


と、頭を抱えていたのでした
結局、次のデートを取り次いだだけで、誕生日に向けてなにも進歩しませんでした……

……まあ、次のデートは楽しみですが、そういうことではないのです


海未(それにしてもデートという形で絵里と出かけるのも中々久しぶりですね……今のうちにどんな服を着るのか考えないと……)


……違います!!

考えるのはそういうことではないです!

ああでも、上手い案が思いつきません……

なんて悩んでいるうちに、夜は更けていくのでした……
 
24: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:08:40.97 ID:i9aHrYcR.net
海未「はあー……」


と、私はため息をつきながら机に突っ伏しました
そんな様子を眺めながらことりが


ことり「うーん、大丈夫?」


と歩み寄ってきました
私は少し元気の無い声で「ありがとうございます……」とだけ返します


ことり「まあまあ、そんな思い詰めることも無いと思うよ?」


なんて、ことりは笑いかけてきます
……思い詰めてはいないのですが、誰かから見たらそういう風に見えているのでしょうか
 
25: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:09:17.33 ID:i9aHrYcR.net
ことり「それで、昨日はどうだったの?」

海未「好きなチョコを聞いたはいいのですが、結局デートの約束をされてしまいました……」

ことり「悪いことじゃ無いじゃん」と、ことりは安心したように肩を落としています

海未「悪いことでは……ないですが……」

ことり「いいじゃん、楽しんじゃえば」

海未「うう……」


……なんでことりはこんな楽しそうなのでしょうか


「なになに、どうしたの?」と、穂乃果が横から割り込んできました
ことりはニヤニヤとしながら


ことり「海未ちゃん、今度デートなんだって」

穂乃果「えーいいなー、穂乃果最近あんまデートしてないからなあ」

海未「そうなのですか?」


穂乃果はうん、と軽く返事をしたあと


穂乃果「最近一緒にいてもなんかよそよそしいというか……」

ことり「倦怠期ってやつ?」

穂乃果「そうそれ!穂乃果はもっといちゃいちゃしたいんだけど……」

海未「倦怠期……ですか」


あまり、絵里とそういう風になるのが想像できませんね……なりたくもないですが
 
30: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:25:39.66 ID:i9aHrYcR.net
穂乃果「だから、デート羨ましいなあって」

海未「……そうですかね」


「そうだ」と穂乃果は続けます


穂乃果「その時にプレゼント買うっていうのは?」

海未「手作りをすると決めたのに何故そうなるんですか、それに誕生日はまだ先で……」

穂乃果「だって、結局それでもプレゼントじゃん?絵里ちゃんなら嬉しいって思ってくれるよ
 
31: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:25:53.00 ID:i9aHrYcR.net
「これは穂乃果ちゃんが正しいような気がするなぁ」と、ことりも頷きます


海未「……そういうものでしょうか」

穂乃果「そんなものだって」

ことり「そういうものだと思うよ?ひとまずデートを楽しまないと」


はい
さっきよりは元気な声で、明るく返事をするのでした
 
32: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:26:21.22 ID:i9aHrYcR.net
……空が、少しづつ遠く感じます
絵里をいつも通り待ちながら、空を見上げて思います

まずはデートを楽しむ

その通りです、変に悩んでたら楽しいものも楽しくありません
着ていく服は何にしよう、どこに連れてってもらおう、などと考えていたら


絵里「お待たせー……もうさすがに寒くなってきたわね」

海未「お疲れ様です、ロシアはもっと寒いんじゃないですか?」

絵里「さすがに日本の気候に慣れたら寒いもんでしょ?」

海未「そういうものですか?」

絵里「そんなもんよ」


絵里の左手を、無意識で私の右手は捉えます
少し強めに握ると、彼女もそれに応え少しだけ力を強くしくれます

秋の空。
その寒さが私たちには、少し心地良かったのです
 
33: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:26:50.54 ID:i9aHrYcR.net
海未「……あの、絵里」

絵里「なにかしら?」

海未「つ、次の週末なのですが」


絵里がうん、どうしたの?と顔を覗き込むものですから思わず赤くなってしまいます


海未「え、えーと……その日にぷ、プレゼントを買おうと思うのですが……」


……声が裏返ってしまいました
しかし、絵里の顔がとても明るくなります


絵里「本当?すっごく嬉しい!」

海未「でも、実はまだ何をプレゼントするか考えていないんです」


私は肩をすくめます
絵里はそれでも滲み出る喜びを隠そうともせず


絵里「いいの、嬉しいんだもん」


と、とても幸せそうな顔になりました
そんな絵里を見ていると、私もなんだか幸せになるのでした
 
35: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:27:28.33 ID:i9aHrYcR.net
そんなこんなでデートがやってきました
待ち合わせは駅で、いつもながら予定時間より大幅に早く来てしまいました


海未(それにしても、服はこんなもので問題ないですかね……)


窓を鏡代わりにしながら前髪をいじっていたら後ろから


絵里「あら海未、早いのね」


と、絵里がやってきました。これもいつも通り
私たちはなんだかんだ待ち合わせの時間より早く集まってしまうようです


海未「絵里の方こそ、まだ1時間も前ですよ?」


絵里は少しはにかんで笑います


絵里「だって早く海未に会いたかったんだもの、とうぜんでしょ?」

海未「奇遇ですね、私もです」


そう言いながら微笑み返します
本心だから、何も間違っていないのです
 
37: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:28:35.27 ID:i9aHrYcR.net
心なしか、絵里の顔が少し赤いように見えます


海未「……もしかして、照れてます?」


なんていたずらっぽく微笑むと、絵里はそっぽを向きながら


絵里「……うるさい」


なんて、つぶやくのでした
 
38: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:29:02.73 ID:i9aHrYcR.net
海未「流石、絵里のオススメのお店なだけあって、とても美味しかったですね」

絵里「でしょ?雰囲気もいいし、お気に入り」


お店を出た後の私たちは、少し見慣れない景色を散策していました
少し落ち着いていて、とても心が安らぎます


絵里「ねえねえ、せっかくだしもう少し見ていかない?」

海未「私もそう思っていました」

絵里「この辺ってあまり来たことないのよね」

海未「私もです、少し遠くて……」

絵里「やっぱりそうよね、でも来てよかったわね」

海未「はい、とても楽しいです」


絵里と一緒にいるのが何よりも楽しいですよ
なんて、簡単に口にできません
多分、繋いだ手の暖かさでそれは伝わっているような気がします
 
39: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:29:32.19 ID:i9aHrYcR.net
絵里「あ、あのお店おしゃれね」


と、絵里が信号向かいに見えるアンティークショップを指差します


海未「少し独特な雰囲気ですが悪くないですね」

絵里「ねえねえ、行ってみない?」


返事を待たずに、絵里はどんどん進んで行きます
そんな子供みたいな絵里に少しほっこりします
 
40: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:30:08.60 ID:i9aHrYcR.net
絵里「へえ……結構色んなもの置いてるのね」

海未「輸入雑貨かなにかでしょうか?」


お店の中にはアクセサリーや小物、食器はもちろん、ここ以外に売ってなさそうな変なぬいぐるみや、食材まで置いてありました


海未「なんだかこういうところって少しワクワクしません?」

絵里「あっ、それ私も思うわ……ついつい見ちゃうのよね」


なんて言いながら絵里はすでにあちこち見渡しています

何かプレゼントに良さそうなものは無いかと辺りを見回すと、私の目にあるものが飛び込んできます
 
41: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:30:41.61 ID:i9aHrYcR.net
海未(雪の形をした……ネックレスですか)


真ん中に宝石に見立てたガラス玉の装飾が施された、小指の爪より小さく可愛いネックレス

それは、なんだか絵里を見ているようで……私は虜になってしまいました


絵里「何見てるの?……あら」


あちこち歩き回っていた絵里の足が止まり、こちらへ寄ってきます


絵里「へえ……いいわね」

海未「……これなら、絵里に似合うような気がします」
 
42: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:31:11.63 ID:i9aHrYcR.net
そう言いながら、私は絵里の首にネックレスをあてがいます
それは絵里の白い肌にとても映えていました


海未「……やっぱり、似合っています」


そう呟きながら微笑むと、少し彼女の顔が朱に染まります


絵里「あ、ありがと……」


……もう、可愛いじゃありませんか
なんて考えてしまうあたり、もう私はダメかも知れません


海未「決めました、これを絵里にプレゼントします」

絵里「え、いいの?」


もともとそういう目的ですからね
と笑いかけると絵里は「そういえばそうだったわね」なんてはにかんでいました
 
43: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:33:21.80 ID:i9aHrYcR.net
お店を出ると、辺りは少し西日が差してきていました
絵里の首には、さっき買ったばかりのネックレスが、日の光にに照らされて綺麗です

絵里「ありがとう、今日は楽しかった」

海未「いえ、私もとても楽しかったです」


駅までの間、そんな他愛のない会話で盛り上がっていました


絵里「今日こんな楽しかったけど、誕生日はもっと楽しませてくれるのよね?」


いたずらっぽく絵里が微笑みます
……この顔、嫌いじゃないということは内緒にしておきます
平然を装いつつ私は


海未「もちろんです、楽しみにしててください」


と、同じくいたずらっぽく笑って返します
 
44: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:34:38.50 ID:i9aHrYcR.net
絵里「……うん、なんだかとっても楽しみになってきた」

海未「楽しんでもらえないと、それはそれで困ります」


それもそっか
そうですよ


肌寒い秋風を感じながら、そばにあるぬくもりをいつまでも感じていたい私たちでした
 
45: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:37:32.33 ID:i9aHrYcR.net
……………


絵里の誕生日パーティーは、結果から言うと大成功でした

それぞれプレゼントを用意し、ケーキをみんなで作って、部室を色々な小物で飾って……部室に入ってきた絵里の今すぐはしゃぎたい!って表情は忘れられません

特にケーキに至っては一人でほとんど食べてしまう始末

「海未の気持ちがすっごくこもってる」なんて、歯が浮くようなセリフを真顔で言われると照れてしまいます



一つ一つのプレゼントを子供みたいに確認しながら、絵里と私は歩いています
 
46: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:41:11.30 ID:WokWOk24.net
絵里「これは……希ね、ふふっ、なんか変な置物ね」

海未「以前タイで買ったお土産だそうですよ」

絵里「……本当、あの子不思議だわ……これはにこね、案外普通?」

海未「化粧水ですか?」

絵里「なんかオススメだってカードに書いてある」


確かににこのプレゼントと一緒に入っていたメッセージカードにはそのように書いてあります

あ、そういえば
と、絵里は何かを思い出します
 
47: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:44:03.69 ID:WokWOk24.net
海未「どうしたのですか?」

絵里「私……まだ海未からプレゼント貰ってない」

海未「あげましたし、今でも首にかけてるじゃないですか」


そういうことじゃないのよ
絵里は唇を尖らせます


絵里「それはそれ、これはこれでしょ?」

海未「そ、そう言われましても……」


これは予想外でした……
今私は何も用意していません


海未「ず、ずるいですよそんな」

絵里「ずるくないわよまったくう」


絵里はますます不機嫌になってしまいました
ええと……こんな時は……こんな時は……
 
48: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:45:40.37 ID:WokWOk24.net
絵里「良いわよ、今度に期待してる」

海未「ま、待ってください!」


しかめっ面の絵里がキョトンとした表情になります


絵里「何かしら?」

海未「えっと……その……」


えいっ
と、言わんばかりに私は彼女に駆け寄って

……ちゅ

一瞬よりも早く、永遠よりも長い時間だったと記憶しています

唇を離して、そろりと距離を置くと、なんだかとても言い表せない……例えるならばリンゴのように真っ赤な顔をした彼女がそこにいました
 
49: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:47:01.77 ID:WokWOk24.net
つられて私の顔も真っ赤になります


海未「こ、これでは……いけませんか?」


絵里は俯いてさらに固まります
たしか、30秒くらいお互いそんな状態でした

ようやく口を開いた絵里は


絵里「も、もっかいしてくれたら……いいけど……」


と、そっぽを向いてしまいました
 
50: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:50:06.20 ID:WokWOk24.net
ああもう、貴方って人は……

堪えきれない愛しさを前に、止まるわけにもいきませんでした

絵里に歩み寄りその首をこちらに向けさせます


自然と絵里の目が瞑られるのを合図に、もう一度、今度はさっきよりも長く……


唇を離した先には、さっきとまったく同じ顔をした絵里が、小声で「もう一回、だめ?」とつぶやいているのでした
 
51: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/06(水) 23:50:47.27 ID:WokWOk24.net
おしまい

今回はもともと短めの予定でした
 

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1452088428/

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