【SS】【すみれん】初デートは予定なく【ラブライブ!スーパースター!!】

SS
2:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 01:00:18.49 ID:CmqOnrie
「すみれさん」

ㅤ正午。原宿駅前でスマホを触っていた私を呼ぶ声に、顔を上げる。そこには勿論、私が待っていた大切な人……葉月恋がいた。

「おはようございます……には遅すぎますね」

「いいわよそれくらい。それじゃあ行きましょうか」

 私と恋の初めてのデート。プランもへったくれもないそれは、この場所……原宿で行われることとなった。

「本当にプラン決めなくてよかったの? この辺のことは分かっているけど……」

「初めてのデートはそれがいいんです。すみれさんと一緒にプランも決めず、色んなところに行きたい。それだけで理由にはなりますよね」

「ああもう……分かったわよ」

 私の彼女……恋はそういう人だった。現実的に物事を見るリアリストなのに、記念日や初めてといったものを意識して、白馬の王子様なんてものを信じたりするロマンチスト。リアリストなのにロマンチストなんて、矛盾してるようにも見えるけど……恋はそういう人。私はそういう恋を好きになった。
 
3:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 01:06:03.57 ID:CmqOnrie
「で、最初はどこに行くのよ。何も決めてはないけど」

「そうですね……あそこはどうでしょうか?」

 恋の指差す先は、お洒落なアクセサリー店。一番最初に行くにはぴったりのお店だ。

「いいわね。行きましょ」

ㅤ恋の顔がキラキラしている。嬉しそうなのが見ているだけで分かって、私まで嬉しくなってしまうのは秘密。

「すみれさん。こんなアクセサリーがありますよ」

「へぇー、こんなのもあるのね……」

ㅤそうは言ったけれど、それ以上に私の意識と視線は恋だけにいっている。いつもの何倍もパタパタ動いている恋は大きいけれど小さい子どもみたいで。見ているだけで微笑ましくなってくる。

「すみれさんすみれさん」

「はいはい。今行くわ」

ㅤ本当に小さい子どもみたいに愛らしい。普段の真面目な姿と、今のような子どもみたいな姿。これがギャップ差と言うものなのだろうか。
 
4:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 01:13:59.73 ID:CmqOnrie
「これ、すみれさんに似合いませんか?」

「そうかしら。一度着けてみるわね」

ㅤ緑色の宝石のついたネックレス。大人向けなそれをまだ十五歳の私が付けるのは大丈夫なのかとは一瞬思ったが、私なら大丈夫という絶対的な自信が全てを吹き飛ばしていった。

「どうかしら?ㅤ似合ってる?」

「すごく似合っていますよ」

ㅤにこりと笑ったその顔がそれが事実であることを一番に語っていた。真面目なときの恋はともかく、今の恋に隠し事はできないことくらいは分かっているから。

「そうね……じゃあ私の分はこれにして、恋の分を選ぼうかしら」

「私ですか?ㅤ私の分は別に……」

「そんなこと言わないで黙って選ばれなさい。せっかくのデートなんだから」

ㅤ私のは選んでくれたのに、自分のは選ばなくていいなんて言わせてたまるか。私だって恋にぴったりのアクセサリーを選んであげたい。恋人としてそれが正しいのかは分からないけれど。

「うーん、これでもないわね……」

ㅤ案外、自分じゃない誰かのために選ぶというのは難しくて。私に似合うものならすぐに分かるけれど、恋に似合うものをとなるとどれか分からなくなってしまう。
 
6:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 01:29:32.78 ID:CmqOnrie
「すみれさん、そんなに悩まなくても……」

「いーや、恋のものなんだから満足するまで悩ませてもらうわよ。だって、恋にも満足してほしいもの」

ㅤ私は恋の選んだものに満足した。だから今度は恋を満足させたい。私だけなんて不平等だから。

ㅤそして見つかった、恋へぴったりのアクセサリー。小さな鳥の形をしたネックレス。恋が選んだのもそうだからだけど、私達はネックレスが似合うらしい。

「どうかしら。私は恋に似合うと思うけど」

「一度着けてみますね」

ㅤ思ったとおり、恋には似合っていた。というよりは恋とネックレスの雰囲気が似ているのか、同化しているようにも見えた。

「どうですか?ㅤ似合っていますか?」

「ええ、似合ってるわよ」

ㅤそう言ったら恋は嬉しそうに笑って。それを見て、不意をつかれた私はらしくもなくときめいてしまった。来ると分かっていてもだめなのに、分かっていなかったらどうなるかと言われたら言い返せないけど。
 
7:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 01:35:33.76 ID:CmqOnrie
「すみれさん。アクセサリーを選びましたし、次は服屋に行きませんか?」

「服屋ね……恋ってそういうこと、好きなのかしら?」

「はい。それに、前に可可さんが言っていました。かのんさんと千砂都さんと服屋に行ったときは楽しかったと。ですから私もすみれさんと行ってみたいのです」

「分かったわ。行くわよ」

ㅤそんなキラキラとした瞳でこちらを見られたら断れるはずがないし、多分それはかのんが着せ替え人形にさせられてたってところもあるんだろうなんても言えない。私は恋に弱すぎるのだ。もっとも、恋はそんなことを知らないでいるのだろうけど。

「すみれさんってどんな服でも着こなしてしまいそうですよね」

「当たり前よ。私に着こなせない服なんてないわ!」

ㅤあまりに奇抜な服は例外だけど。なんて言葉は心にしまっておく。相当ひどいものでない限りは大丈夫だと思うが。

「ですから、今日は私がすみれさんの服を選びます」

「……はい?」

ㅤ藪から棒に言われても。それに、何がですからなのだろうか。よく分からない。

「何でも似合うすみれさんに一番似合う服を私が選びます!」

ㅤ真面目な顔でそう言う恋。デートってこういうものなのかしら。いや、多分こういうものなのだろう。私にはあまり分からないけれど。
 
8:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 01:50:24.94 ID:CmqOnrie
「じゃあお願いするわ。その代わり、最高の服にしなさいよね」

「はい!」

ㅤ『恋が選んでくれるだけで最高の服なんだけど』なんて言う度胸は私には無くて。眩しい笑顔の恋が太陽みたい、なんて思ってしまって。加えて、私も恋の前であんな笑顔を見せられているのかな。なんて考えたら不安になってしまった。

「すみれさん。まずはこれをお願いします」

「ええ。分かったわ」

ㅤ恋に言われるがまま、持ってきた服を着てみる。大きなハートの描かれた紫のそれは、ハートの主張は少し強すぎるものの、悪くは無いと思えるものだった。
 
9:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 01:58:14.20 ID:CmqOnrie
「うーん……これは可愛すぎます。なしです」

「基準が曖昧ね……」

「可愛すぎてすみれさんには似合わないと思ったのです。やはり可愛い系であっても少しインパクトが弱めのものの方が……」

ㅤ恋なりに考えてはいてくれているらしい。なんて思って見たら恋はトタトタと歩き、次の服を探していた。

「本当、恋って真面目よね」

ㅤだけど、そんなところが恋のいいところ。真面目すぎてたまに空回りしてしまうところまで含めて、葉月恋なのだ。
 
10:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 02:04:02.16 ID:CmqOnrie
「すみれさん、こちらの服を着てみてください」

「ええ、分かったわ」

ㅤさっきとは打って変わって、今回の服は無地の青。これくらいシンプルだと似合わない人の方が少ないと思うくらいのものだった。

「これは……すみれさん、どう思いますか?」

「私に聞くのは違う気がするけど……強いて言うなら、私は恋の選んだ服ならどれでも歓迎するわ。大丈夫ったら大丈夫ってね」

ㅤ恋の選んだ服はどれも最高の服。それくらいは見なくたって、着なくたっても分かる。好きな人に服を選んでもらえるのだから。
 
11:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 02:10:35.57 ID:CmqOnrie
「すみれさん……」

「恋がいいなら、私もいいと思うわ。恋が私のことを思って選んでくれたものだもの。それに……」

「それに?」

「私、平安名すみれに着こなせない服なんてないもの!ㅤどんな服を持ってきたとしても、着こなしてみせるわ!」

ㅤ少し誇張したけれど、恋の持ってくる服ならばなんでも着こなせる自信はあった。それくらいには自分と、そして恋を信じていた。
 
12:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 02:13:12.74 ID:CmqOnrie
「すみれさん……私の完敗ですね」

「完敗も何も、勝ち負けなんてないわよ。さ、会計して次行きましょ」

「そうですね。行きましょうか」

ㅤ会計を済ませて、あてもなくどこかへ向かう。予定を決めていない以上こうなるのは分かっていた。
 
13:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 02:17:39.63 ID:CmqOnrie
「楽しいわね、こうして予定もなく歩くのって」

「はい。私も、こんなに楽しいなんて思っても見ませんでした」

ㅤだけど、それが楽しいなんて思ったのは想定外、嬉しい誤算だった。その誤算はきっと、隣で周りを興味津々に見渡している恋人のせい。恋と一緒だから、楽しくなる。
 
14:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 02:22:44.24 ID:CmqOnrie
「ねえ、クレープでも食べましょ」

ㅤ近くに来たので恋に声をかけ、私が時々来ているクレープ屋さんへ。今でも来るけれど、実際あまりいい思い出はない。少し前……スクールアイドルを始める前のことを思い出すから。

「はいこれ、恋のことだしイチゴのやつにするでしょ?」

「すみれさん……ありがとうございます」

ㅤだけど、今はもうかのんに……そして、恋にスカウトされた。スクールアイドルに誘ってくれた人に、私を本気で好きと言ってくれた人。二人のおかげで、もう過去なんて怖くもない。
 
16:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 02:30:32.94 ID:CmqOnrie
「ほっぺにクリーム付いてるわよ」

「な、ちょっ、すみれさん!!」

「何よ、クリーム取っただけじゃない」

「だからってそれを取って食べる必要はないじゃないですか!」

ㅤ恋の顔が真っ赤になっている。出来心でやっちゃったけれど、恋にとっては相当恥ずかしかったらしい。
 
18:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 02:33:51.81 ID:CmqOnrie
「まったく、すみれさんはデリカシーがありません……!」

「それは悪かったわよ……」

ㅤそして、それからもキラキラと目を輝かせる恋を連れて色んなところを巡った。雑貨店に可愛いお菓子の店に、ゲームセンター。巡り終えて空を見上げると、もう茜色に染まっていた。
 
19:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 02:42:56.31 ID:CmqOnrie
「すごく充実しましたね」

「予定なしでもこんなに楽しいものなのね」

「私も、こんなに楽しいなんて思ってもみませんでした」

ㅤこう言ったら悪いけれど、つまらないものになるかもしれない。なんて思っていたけれど、それは全部杞憂に終わった。それどころか、有り得ないくらいに楽しい一日になった。

ㅤこれもきっと恋のおかげ。そう思ったけれど、言葉には出さなかった。なんだか恥ずかしかったから。
 
21:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 02:47:56.90 ID:CmqOnrie
「恋は満足したかしら。私は大満足だったけど……」

「何を言っているのですか。満足しているに決まっているじゃありませんか」

「そうよね。余計な質問だったわ」

ㅤ恋の行動を見ていたらそれくらいのことはすぐに分かっていたはずなのに。言葉として聞きたかった。一々面倒くさい女なのだ、私という女は。

「ですが、今日が終わってしまうことだけは残念で……なんだか勿体無い気分です……」

ㅤなんだか子どもみたいな言葉だけど、同時に恋らしい言葉だった。嘘偽りのない真っ直ぐな言葉。
 
22:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 02:53:00.47 ID:CmqOnrie
「今日はずっとすみれさんと一緒のことばかり考えていた気がします」

「思考回路が似ているのよ……って言いたいけど、私も恋も楽しめたからだと思うわ。最高にギャラクシーなデートだったもの」

ㅤそうじゃなきゃ、こんなことはほとんどない。逆に、こんなデートができるならそう考えられるということでもあるけれど。

「だから……ありがとうね、恋」

ㅤほっぺに少し唇を当て、離して。ちょっと大胆にやってみた。デートの終わりなのだ、それくらいやっていいだろう。
 
23:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 02:56:11.92 ID:CmqOnrie
「うー……すみれさんは卑怯です……」

「卑怯で結構よ。真っ赤になった恋、すごく可愛いわよ」

ㅤそして、そんな恋を少しだけからかってみる。言ったことは本気で思ったことではあるけれど。

「なら、お返しです!」

ㅤ唇と唇とが重なる。さっきのほっぺよりも柔らかくて、甘くて。恋をゼロ距離で感じるキス。デートの最後を飾る、私達のファーストキス。
 
24:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 03:00:24.64 ID:CmqOnrie
「で、では!」

ㅤそしてそのままピューっと逃げていく恋。顔は見えなかったからどんな表情をしていたかは分からないけれど、きっとさっき以上に真っ赤になってるんだと思う。今の私と同じで。

「ああもう……」

ㅤ恋の大胆さにため息をつくことしかできなかった。そして、そんな恋にドキドキしている私に対しても。

「好きよ、恋」

ㅤその言葉は心から出た言葉。今日のデートを経て深まった、本心だった。

おしまい
 
25:(鮒寿司) 2022/01/19(水) 03:03:47.11 ID:CmqOnrie
すみれんちゃんの初デートで色んなことをいっぱいするだろうなと思いつつ。

私自身こちらに上げさせていただくのは初めてなので、至らぬところもあったと思いますが、ありがとうございました。
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1642521464/





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