歩夢「君の超高校級の心は輝いてるかい?」【長編SS】【スクスタ】

AqoursーSS


1: 2017/09/24(日) 02:04:00 ID:xvxU8d0w
※ダンロンパロです
※そのため死亡描写あり〼
※AqoursとPDPが同時系列です



幼稚園、年中だった頃のお遊戯会。

緊張して泣き出しちゃった私に、彼女は言ってくれた。

「いっしょだから大丈夫だよ。ふたりで思いっきり楽しんじゃおうよ」

私は今でも、その言葉を覚えている。

引用元: https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1506186240/

引用元: https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1566556614/

2: 2017/09/24(日) 02:04:50 ID:xvxU8d0w
────東京・お台場、私立虹ヶ咲学園。

『卒業した者は将来の成功が約束されている』とまで言われる、超が幾つあっても足りないエリート学校。

そこに集まるのは、各界に名を連ねるほどの、才能溢れる生徒ばかり。

いわゆる『超高校級の才能』を持った人たちだけが入学を許される場所。

3: 2017/09/24(日) 02:05:40 ID:xvxU8d0w
私の名前は、上原歩夢。

ひょんなことで、今日からその虹ヶ咲学園に通うことになった高校生です。

パリっとした虹ヶ咲の制服に身を通した今でも、ビックリしています。

だって、そんな凄い人たちの通う学校に足を踏み入れるんですから。

期待は胸いっぱいけれど、それと同じくらい、大丈夫かな、場違いじゃないかな、って、不安もあります。


えっと……そこに入学するってことは、あなたにも相応の才能があるんでしょう、って?

勿論。私は、超高▽級の×◎と呼ば√ていて……。

4: 2017/09/24(日) 02:06:10 ID:xvxU8d0w
聞こえ■かった? もう♪度言〒ますよ。

私は……私は私は私はワタシワタシワタシワタシワタシワワワワワワワワワワ………。

…………。

…………。

…………。

5: 2017/09/24(日) 02:07:13 ID:xvxU8d0w


   PROLOGUE

PERFECT Despair Project.

6: 2017/09/24(日) 02:08:23 ID:xvxU8d0w
「おーい……」

歩夢「……」

「もしもーし?」

歩夢「──ん、あれ、私……」

歩夢(いつの間にか、寝ちゃってたみたい……?)

頭部に生暖かい重みを感じながら、私は目を覚ました。

硬い机に突っ伏して眠っていたみたいだけど……。

7: 2017/09/24(日) 02:09:37 ID:xvxU8d0w
歩夢(机や椅子、教壇に黒板……ここは教室?)

「やっと起きた。おはヨーソロー!」

さっきまでの記憶が思い出せず混乱する私に、目の前にいた少女が話しかけて来た。

歩夢「あなたは……?」

曜「私は渡辺曜、超高校級の船乗りであります!」ビシッ

制服姿で敬礼する彼女はなるほど、サマになっている。

そういえば、彼女も私と同じ制服……ということは、虹ヶ咲の生徒なのだろうか?


《超高校級の船乗り 渡辺曜》

8: 2017/09/24(日) 02:10:21 ID:xvxU8d0w
歩夢「私は上原歩夢。よろしくね、曜さん」

曜「んー……さん付けって、なんか息苦しいなー」

歩夢「じゃあ、曜ちゃんで」

曜「うむ!」

ところで、と話題を変えてみる。

歩夢「ここって、教室だよね?」

曜「うん、部屋の前には1-Aって書いてあったよ」

歩夢「じゃあ……あれは何?」

指さす先は、窓……というより、全ての窓に打ち付けられた鉄板。

教室が薄暗いのは、これが原因だろう。

9: 2017/09/24(日) 02:10:54 ID:xvxU8d0w
曜「んー……よく分からないんだよね。なんか、正面玄関も塞がれちゃってるし」

歩夢「嘘、玄関が!?」

曜「いまみんなで手分けして情報を集めてるんだ。ついでに挨拶して来るといいよ」

歩夢「曜ちゃんはどうするの?」

曜「あー……あと一人、そこで寝てる人を起こさないといけないから」

歩夢「そこ、って……ひゃぁ!?」

10: 2017/09/24(日) 02:11:30 ID:xvxU8d0w
「……むにゃむにゃ。ハルカぁ……もう食べられないってばぁ」

今の今まで、全く気が付かなかった。

まさか、テンプレートのような寝言を放つ少女がすぐ後ろの席にいたとは。

曜「さっきも起こしたんだけどね。またすぐ寝ちゃった」

歩夢「そ、そうなんだ……」

曜ちゃんのような人がいて良かったけれど、虹ヶ咲には案外ヘンな人もいるのかも……?

11: 2017/09/24(日) 02:12:03 ID:xvxU8d0w
結局。その子のことは曜ちゃんに任せて、私は建物の中を散策することに。

歩夢「うーん……」

以前、学園案内のパンフレットを読んでいるから何となく分かる。

ここが虹ヶ咲学園である、ということは間違いないだろう。

いろいろ行ける場所があるけれど、まずは塞がれているらしい玄関へ足を進めた。

12: 2017/09/24(日) 02:12:53 ID:xvxU8d0w
────玄関ホール


「お姉ちゃん、これって……」

「なるほど、本当に閉じ込められていますわね」

誰かの話し声が聞こえる。

歩夢「えっと……」

「ピギィ!?」

「……」

おどおどとした赤いツインテールと、しゃっきりとした黒いロングの2人。この人たちも、同じ制服だ。

13: 2017/09/24(日) 02:14:14 ID:xvxU8d0w
「あなたは……確か、さっき教室で寝ていたという」

歩夢「あ、はい。上原歩夢、です」

ダイヤ「私は黒澤ダイヤ、超高校級の生徒会長ですわ。ほら、ルビィも」

ルビィ「えっと……黒澤ルビィ、です。ここには超高校級の妹、ってことで呼ばれました」


《超高校級の生徒会長 黒澤ダイヤ》

《超高校級の妹 黒澤ルビィ》

14: 2017/09/24(日) 02:15:06 ID:xvxU8d0w
歩夢「ということは、2人は姉妹なんですか?」

ダイヤ「ええ。私が姉で、ルビィが妹。黒澤家……と言えば分かるでしょうか」

歩夢(うーん……?)

聞いたことがあるような、ないような。

だが、そこまで言うのならきっと由緒正しい名家なのだろう。

それにしても、生徒会長に妹。早速、才能の選別基準が分からなくなって来た。

15: 2017/09/24(日) 02:15:43 ID:xvxU8d0w
ダイヤ「見ての通り、玄関は金属製の何かで塞がれています」

ルビィ「多分、機械だよね、これ……」

歩夢「……」

私は言葉を失った。

少なくとも教室で目を覚ます前の時点では、あんなものはなかった筈だ。

それはどうやら、2人も同意見らしい。

16: 2017/09/24(日) 02:16:25 ID:xvxU8d0w
ダイヤ「それに、上を見てください」

歩夢「監視カメラとモニターと……えっ?」

まるで戦記モノに出てくるような機関銃。本物……じゃないよね。

ダイヤ「あなたが寝ていた1-A、そして私たちが寝ていた1-B。どちらにも監視カメラとモニターがありました」

ルビィ「廊下にもあったから、多分、色んなところにあるんだと思います……」


一体この学園で、何が起こっているのだろう。

とにかく、もっと情報を集めないと。

17: 2017/09/24(日) 02:16:58 ID:xvxU8d0w
────廊下

歩夢(ここにも、監視カメラとモニター……ん?)


「むー、璃奈ちゃんボードかえしてください>_<。」

「別にいいじゃないですか~」

ルビィちゃんと同じくらいの背丈の子と、一回り小さい子が遊んでいる……。

歩夢(というか、小さい子が遊ばれてる?)

18: 2017/09/24(日) 02:17:43 ID:xvxU8d0w
歩夢「何してるの?」

「この人が、私のボード取っちゃって`∧´」

「だったら、顔を隠さず見せてくれればいいんですよ」

「それは……ちょっと無理>_<。」

小さい子は顔を見られたくないらしく、袖で顔を隠したまま。

けれども、このままでは前が見えなくて転ぶ危険がある。

返してあげなよ、そう言いかけた矢先。

19: 2017/09/24(日) 02:18:25 ID:xvxU8d0w
「ほいっと」

別方向からの声と共にボードが取り上げられ、持ち主の元へと帰って行く。

「ふー、助かった。ありがとうございます>v<」

「いいのいいの」

「……」チッ

20: 2017/09/24(日) 02:19:19 ID:xvxU8d0w
歩夢「えっと、ありがとうございます。あ、私、上原歩夢と言います!」

果南「本当にいいってば。私は松浦果南。超高校級のダイバーだよ」


《超高校級のダイバー 松浦果南》


歩夢「ダイバー……ってことは、よく海に?」

果南「うん、子供の頃から海が第二の実家。ここ最近発見された海の生き物は、みんな私が見つけたんだよ」

歩夢「おおー……」

流石は超高校級。こうやって実績を聞くと、改めて凄い所に来たんだなと実感する。

21: 2017/09/24(日) 02:20:05 ID:xvxU8d0w
璃奈「自己紹介、遅れた。私は天王寺璃奈。超高校級のディスガイザーって言われてる・v・」


《超高校級のディスガイザー 天王寺璃奈》


璃奈「変装する人、って意味。普段は恥ずかしくて顔を隠してるけど……ちょっと待ってて」

聞きなれない単語に困惑する私を他所に、彼女は廊下の隅へ掛けて行く。

そして、戻って来た時には。

22: 2017/09/24(日) 02:20:52 ID:xvxU8d0w
璃奈(果南)「こうやって色んな人に化けることが出来るんだ。これが私の才能だよ」

果南「声までそっくり!?」

璃奈「流石に身長までは変えられない。あと、本人の才能も真似出来ないし、声や性格も知らないとコピーは無理」

気付いた時には、元の璃奈ちゃんに戻っていた。

やっぱり、ホワイトボードで顔を隠している。

23: 2017/09/24(日) 02:21:50 ID:xvxU8d0w
果南「じゃあ、あとはあなただけだね」

かすみ「……中須かすみ、超高校級のパン屋です」


《超高校級のパン屋 中須かすみ》


かすみ「これでも有名なんですよ? ベーカリー中須って知らないですか?」

その名前には聞き覚えがある。

毎日行列の絶えないパン屋として、度々グルメ番組なんかで話題になる都内の店だ。

24: 2017/09/24(日) 02:23:25 ID:xvxU8d0w
果南「そういえば、コッペパンとかよく食べてたっけ」

璃奈「美味しかった・v・」

かすみ「そりゃどうも。いずれベーカリーかすみんとして全国展開も視野に入れてますから、その時は是非」

日常生活に溶け込む超高校級の才能、こういうのもあるのか。

当の本人は先の出来事が少々不満だったようで、終始口をとがらせていた。

もっとも、先に手を出したのは彼女のようだし、自業自得なのでは……?

25: 2017/09/24(日) 02:24:02 ID:xvxU8d0w
歩夢「あ、そうだ。3人も、目が覚めたらここにいた感じですか?」

果南「そうなるね。そして、玄関もああなってる」

璃奈「閉じ込められちゃったみたい?▭!」

かすみ「大方、学校が仕掛けたドッキリか何かですよ~」

果南「何のために?」

かすみ「それは……」

どうやら、3人も事情はさっぱりらしい。

26: 2017/09/24(日) 02:25:03 ID:xvxU8d0w
────1-B


「──つまり、この堕天使ヨハネを含む十数名は皆、混沌渦巻く檻の中に堕とされた咎人なのです」

「んー、分かりづらいっ!」

「Johannesって、男の人の名前でしたよね……?」

「ダメ出しばっかりじゃないの!」

ここにも、個性的な人たちが集まっていた。

監視カメラとモニターも「いつもの」と言わんばかりに設置されている。

27: 2017/09/24(日) 02:25:38 ID:xvxU8d0w
善子「私は堕天使ヨハネ……地上界では津島善子と仮の名前を名乗っているわ。超高校級の配信者、とでも言えば分かるかしら」


《超高校級の配信者 津島善子》


歩夢「配信者……もしかして、えがお動画で生放送していたヨハネさん?」

善子「ええ。あなたはリスナーのようだけれど、コテハンは何?」

歩夢「@アユムで登録してます!」

善子「常連さんじゃない! いつも視聴、ありがとうね」

ガシッ、と握手を交わす。まさか、あの人気生主ヨハネさんと会えるとは。

これが、超高校級ばかりが集まる学校……!

28: 2017/09/24(日) 02:26:18 ID:xvxU8d0w
愛「ちーっす。アタシは宮下愛、超高校級のギャルやってまーす♪」


《超高校級のギャル 宮下愛》


歩夢「あ、上原歩夢です」

愛「ん~……いいねえ、イケてるねえ。ザ・ダイヤモンドの原石って感じ!」

歩夢「愛ちゃん、それはどういう……」

愛「着こなし次第で絶対可愛くなるよ~。私の見立ては3割当たる、ってね! いや、そりゃギャルの台詞じゃないか」

3割という言葉が引っ掛かるけれど……褒められてるんだよね?

愛「褒めてるよ~」

歩夢(よ、読まれてる!?)

29: 2017/09/24(日) 02:27:09 ID:xvxU8d0w
エマ「さっきまで超高校級のコーディネーターさんがいましたから、その人に訊けばすぐに分かると思います。きっとその3割に入ってますよ」

エマ「あ、私はエマ・ヴェルデ。特にこれといった才能はありませんが、超高校級の幸運として入学することになりました」


《超高校級の幸運 エマ・ヴェルデ》


超高校級の幸運。

毎年、虹ヶ咲側が抽選をして、一般の学生から募集を掛けている才能。

確かに、全国の学生から1人だけが選ばれるのだから、相当な幸運の持ち主だ。

そして彼らは皆一様に、幸運の名に恥じぬ何かを持っている。

30: 2017/09/24(日) 02:28:18 ID:xvxU8d0w
歩夢(私のような、超高校級の×◎と違って──)

歩夢「……あれ?」

エマ「私の顔に何か?」

歩夢「いや、そういうワケじゃないんだけど……」

歩夢(……何で?)

31: 2017/09/24(日) 02:29:36 ID:xvxU8d0w
……キーンコーンカーンコーン。

「!!」

私の思考を遮るように、学生の耳には聞きなれた音が鳴り響く。

愛「ん、なんかモニターに映ったよ?」

愛ちゃんの言葉をキッカケに、私たちの目は一斉にモニターの方へと向けられた。



???「あー、あー、本日は晴天なり本日は晴天なり。マイクチェック、ワンツー」

32: 2017/09/24(日) 02:30:14 ID:xvxU8d0w
???「うん、問題ないネ。さて、ぼちぼち皆さん目が覚めた頃でしょう」

???「新入生の皆さんへ、入学式を行います。体育館にお集まりください。繰り返します、皆さん、体育館にお集まりください」

ブツッ。

正体不明のシルエットは、それだけを残して映像を切ってしまった。

33: 2017/09/24(日) 02:31:04 ID:xvxU8d0w
エマ「……何でしょう、いまの」

善子「とにかく、体育館(やくそくのち)へ行けということね」

愛「ここでとやかく言ってもしょーがないし、行こっか」

歩夢「う、うん」

今の放送は、何だったのだろう。

好意的に見ればただの入学式だ。けれども私は、ただならぬ“何か”を感じていた。

悪意……そう、悪意だ。今の声には、隠しきれない悪意がにじみ出ている。

歩夢「……」

何か、イヤなことが起こりそうな……そんな予感がしていた。

34: 2017/09/24(日) 02:31:44 ID:xvxU8d0w
────体育館


「もーっ、何なんですか! せっかく人が気持ちよく踊っていたのに!」

「まあまあ、落ち着くずら……」

「……」


体育館には、私を含めて16人の顔ぶれ。ここで初めて顔を合わせるのが、そのうち7人。

……と思ったけれど、厳密には違う。

だって。

35: 2017/09/24(日) 02:32:39 ID:xvxU8d0w
「まったく……」ブツブツ

歩夢「あの……もしかしてだけど」

「なんですか?」

歩夢「もしかして、せつ菜ちゃん? ほら、ひまわり組の上原歩夢!」

せつ菜「上原歩夢上原歩夢……歩夢ですか!? 久しぶりです!」

歩夢「幼稚園以来だね~。せつ菜ちゃんもここに来たんだ」

せつ菜「ええ。超高校級のスクールアイドルとして、晴れて虹ヶ咲の一員になりました!」

歩夢「昔から、アイドルになるのが夢だって言ってたもんね」


《超高校級のスクールアイドル 優木せつ菜》

36: 2017/09/24(日) 02:33:22 ID:xvxU8d0w
「良かったですね、せつ菜さん」

「感動の再会ずら」

歩夢「えーっと、あなたたちは?」

しずく「申し遅れました。私は桜坂しずく、超高校級の演劇部です」


《超高校級の演劇部 桜坂しずく》


せつ菜「しずくちゃんは凄いんですよ? この前も舞台の公演で、世界中を飛び回っていましたから」

しずく「知ってたんですか?」

せつ菜「勿論。あらゆる役がハマリ役、桜坂しずくの代名詞じゃないですか」

しずく「は、恥ずかしいですよ~」

……アイドルと役者、関わることも多いのだろう。

37: 2017/09/24(日) 02:33:56 ID:xvxU8d0w
花丸「オラは国木田花丸、超高校級の作家をやってるずr……やっています」


《超高校級の作家》


国木田花丸。その名前は、多少読書を嗜んでいれば知らない筈がない。

デビュー作「サカサマの夕立」が大ヒットし、それ以降も数々の作品を書き続けている。

とりわけ、彼女の書く推理小説は「あのミステリーが凄い!」に毎回入選している程だ。

歩夢(私は……あんまり作者とか気にしたことなかったから、どれが彼女の本かは分からないけど)

歩夢「ところでさっき、ずら、とか言ってたけれど」

花丸「ご、ごめんなさい。お婆ちゃんの口癖が移っちゃって、直そうとしても直らなくて……」

そのままでいい、と思う。

38: 2017/09/24(日) 02:34:37 ID:xvxU8d0w
「hmm……つまり、1-Aと1-B。どちらにも9人ずついた、ということになるわね?」

「そう。だからまだ来ていないのは、曜ちゃんと彼女が起こしに行ってる子だけね」

「とりあえず、彼女たちを待った方が良さそうですね」

「ええ」

「そのようね」

何やら、真剣そうな顔つきで話をする3人。

そのうち金髪と青い髪の2人は赤い髪の子より身長が高く。

何故だろう、どちらもワイングラスを持つ姿が絵になりそうだ。未成年なのに。

39: 2017/09/24(日) 02:35:26 ID:xvxU8d0w
歩夢「何の話をしていたんですか?」

鞠莉「んー、いま私たちが置かれている状況を整理しておきたくてね。私は小原鞠莉、超高校級の令嬢よ」

梨子「桜内梨子、超高校級の芸術家と呼ばれているわ」

果林「そして私が朝香果林、超高校級のコーディネーターをやらせて貰っているわ。よろしくね」


《超高校級の令嬢 小原鞠莉》

《超高校級の芸術家 桜内梨子》

《超高校級のコーディネーター 朝香果林》

40: 2017/09/24(日) 02:35:57 ID:xvxU8d0w
小原鞠莉……世界的に有名な財閥『小原グループ』のお嬢様だ。その話題は、以前ニュースで見たことがある。

桜内梨子……ピアノと絵画に秀でた芸術家で、コンサートや絵画展には引っ張りだこらしい。

朝香果林……エマちゃんが言っていた『コーディネーター』は彼女のことか。

3人とも、話をまとめるのが得意そうな雰囲気を醸し出している。

今の状況において、これほど頼もしい人たちはいないだろう。

41: 2017/09/24(日) 02:36:43 ID:xvxU8d0w
「ねえ」

歩夢「!?」

不意に背後から掛けられた声に、思わず身体をビクつかせる。

「あなたの才能は、何?」

その言葉で、震えた身体が再び寒気を起こす。

42: 2017/09/24(日) 02:37:22 ID:xvxU8d0w
千歌「驚かせてごめんね。私は高海千歌って言うんだ」

歩夢「ええと、私は上原歩夢です」

千歌「それで、さっきの質問なんだけど……」

歩夢「……思い出せないんです」

千歌「?」

歩夢「どんな才能だったのか、どうしても思い出せなくって……」

43: 2017/09/24(日) 02:38:02 ID:xvxU8d0w
千歌「そう、なんだ」

自分が何者なのか。何故虹ヶ咲に入学することが出来たのか。

幾ら考えても、その答えが姿を現してくれない。

千歌「大丈夫だよ。私だって何も才能が思いつかなくて……」

千歌「だってほら。超高校級の幸運なら、既にエマちゃんで枠が埋まっているし」

千歌「超高校級の普通だとか、凡人だとか、一応旅館の娘だから、超高校級の看板娘だとか、色々考えたんだけど……」



曜「お待たせー! 彼方ちゃん、連れて来たよー!」

44: 2017/09/24(日) 02:38:41 ID:xvxU8d0w
彼方「うーん……超高校級の眠り姫、近江彼方ちゃんだよ~……」zzz


《超高校級の眠り姫 近江彼方》


ダイヤ「遅い、たるんでいますわ!」

彼方「うにー……あと十時間寝かせてー……」

せつ菜「どれだけ寝るつもりなんですか……」ハァ

45: 2017/09/24(日) 02:39:49 ID:xvxU8d0w
歩夢「えっ、と……千歌、ちゃん?」

話が逸れそうになったけれど、千歌ちゃんのことも聞かなければ。

千歌「つまりね、私も歩夢ちゃんと一緒。何も思い出せないんだ」

千歌「私たち、どんな凄い才能を持っていたんだろうね?」


《超高校級の??? 高海千歌》

《超高校級の??? 上原歩夢》

46: 2017/09/24(日) 02:40:49 ID:xvxU8d0w
果南「とにかく、これで全員揃ったみたいだね」

かすみ「一体何が始まるっていうんですか~?」

ルビィ「入学式って言うからには、整列しないといけないんじゃ……」



???「いやいや、整列してもらう必要はないネ」

???「何はともあれ、こっちにちゅうもーく!」

47: 2017/09/24(日) 02:41:32 ID:xvxU8d0w
歩夢「!!」

また、あの声だ。

今度はハッキリと、悪意を煮凝りにしたような声であることが分かる。

やがて、ソレは舞台の壇上に現れた。

48: 2017/09/24(日) 02:43:10 ID:xvxU8d0w
???「やあやあ皆さん、おはようございます」


「うちっちー?」  私の横で、千歌ちゃんが言った。

静岡県、沼津の方に、あんな感じのゆるキャラがいるのは知っている。

どこかの水族館で、着ぐるみがお出迎えしてくれたのを覚えている。

けれどもソレは、どう見ても身長が70㎝程度しかなくて。

49: 2017/09/24(日) 02:43:50 ID:xvxU8d0w
???「ボクがこの虹ヶ咲学園の学園長」

モノっちー「モノっちーと言います」


何より、身体の左半分が真っ黒だった。

50: 2017/09/24(日) 02:44:50 ID:xvxU8d0w
今回はここまで。
モノッチーのイメージイラストです


53: 2017/10/06(金) 23:23:47 ID:9EsDLHMs
ルビィ「喋る……ぬいぐるみ?」

モノっちー「ぬいぐるみじゃないよ。綿なんて詰まってないからネ!」

果南「じゃあ、ロボットか何か?」

しずく「だと思います。もしかしたら、先輩やOBに超高校級のメカニックがいたんじゃないでしょうか」

鞠莉「あのくらいならウチの技術で作れるわよ? 悪趣味だからデザインは変えるでしょうけど」

モノっちー「悪趣味とは何だい!」

善子「あの外見……悪魔の化身?」

かすみ「大体、こんなのが学園長だなんて……」プクク

曜「あんな色合いのうちっちー、見た事ないよ……」プククク

モノっちー「笑ったな? そこのオマエら、学園長を馬鹿にしたな?」

54: 2017/10/06(金) 23:26:28 ID:9EsDLHMs
ダイヤ「お黙りなさい!」

「「……」」

目の前の何かに向けて口々に喋るみんなを、ダイヤさんはその一言で黙らせてしまった。

生徒会長……凄いです、威圧感が。


モノっちー「えー、現在午前10時6分。オマエらが静かになるまでに5分以上掛かりました。いいの? 避難訓練ならともかく、ホンモノの火事なら死んじゃうよ?」

果林「あなたも。学園長にせよ学園長代理にせよ、手早く式を始めた方がいいのでは?」

モノっちー「はいはい、生えてないクセに早漏だねえ」

果林「セクハラはお断りします」キッパリ

55: 2017/10/06(金) 23:28:39 ID:9EsDLHMs
モノっちー「改めまして。皆さん、入学おめでとうございます」

果林さんの発言をシカトして、モノっちーは式辞を述べ始めた。

モノっちー「今。新入生である皆さんの顔は、希望に満ち溢れていますが……って、やめだいやめだい!」

……式辞が書かれていたであろう紙は、ものの数秒で投げ捨てられた。

果南「……多分、1、2行しか読んでないと思う」アハハ

モノっちー「まどろっこしいことは抜きにしてね。まずはオマエらにこれを渡します」

そして壇上から降りたかと思うと、モノっちーは目にも止まらぬ動きで皆の手に何かを渡していった。

梨子「これは……?」

善子「ノートPC……にしてはやけにちっさいわね」

56: 2017/10/06(金) 23:30:30 ID:9EsDLHMs
モノっちー「それは、今後ここで共同生活するにあたって必要になる電子生徒手帳です。ただの生徒手帳じゃないよ、電子だよ電子!」

花丸「み、未来ずら!?」

モノっちー「この学園の地図、校則なんかが載ってるから、よーく読んでおくように! 何なら読む時間設けるようか? ボクもそのくらいは待つよ」

ダイヤ「結構。あとで確認しておきますから」

歩夢(……ん?)

歩夢「学園長、ちょっと待ってください!」

さっきの話……何か引っ掛かる発言があった。

57: 2017/10/06(金) 23:33:03 ID:9EsDLHMs
モノっちー「上原さんだっけ? どしたのさ」

歩夢「さっき“共同生活”って言いましたけど……」

普通、こういう時に使われるのは“学生生活”ではないだろうか?

モノっちー「うん、そのままの意味だよ」

しかし彼(?)は、悪びれる素振りを一切見せず、言い放った。

モノっちー「オマエらには今後、この学園内で暮らしてもらうこととなりました!」

58: 2017/10/06(金) 23:34:35 ID:9EsDLHMs
歩夢「……!?」

モノっちー「学園の外とは完全シャットアウト、期間は無限! つまり、この学園で一生を終えることとなるのです!」

モノっちー「ああ、食糧なんかについては心配しなくていいよ。ランドリーも、大浴場も、個室にシャワールームその他諸々完備してあります!」

ボクって至れり尽くせりだよねえ、と言いながら頭を掻くモノっちー。

確かに、生活に困らなさそうではあるが……。

梨子「そういう問題じゃなくて!」

璃奈「ここから出られないって、どういうことなの`∧´」

突拍子の無さすぎる宣告に、皆が揃って難色を示す。

この学校に学生寮があることは聞いていたが、この様子を見る限り全員が自宅通いのつもりだったらしい。

モノっちー「まあ……あることにはあるよ? 出る方法」

エマ「あ、あるんですね……」ホッ

愛「なーんだ、さっさと教えてくれれば良かったのに。で、その方法って何なのさ」



モノっちー「〇人だよ」

59: 2017/10/06(金) 23:36:33 ID:9EsDLHMs
「……」

空気が凍り付いた。

千歌「それは……本気で言ってるの?」

モノっちー「本気も本気。ポピュラーな刺〇撲〇絞〇射〇毒〇、マニアックな呪〇……ああ、妖怪とか、バケモノの仕業に見せかけて〇すってのもアリだネ」

モノっちー「とにかく、この中の誰かを〇した人だけが外に出られる……そういう単純なルールなんだよ」

モノっちー「最低な手段で最高の結末を得られるよう、精々努力してく──」

60: 2017/10/06(金) 23:37:56 ID:9EsDLHMs
せつ菜「じゃあ、ふざけたことを喋るあなたを壊せば終わりですね」

モノッチーのすぐ近くにいたせつ菜ちゃんが、彼の首根っこを掴んだ。

モノっちー「ふざけてるのはキミだよお。学園長への暴力は校則違反って、ちゃんと書いたのに」

せつ菜「本物の学園長を出しなさい。その上で、これを操っている張本人を退学にさせて貰います」

モノっちー「……」ピッ ピッ ピッ

せつ菜「何とか言ったらどうなんですか!」

モノっちー「……」ピッ ピッ ピッ

明らかに不味い電子音……まさか!

曜「せつ菜ちゃん、早くそれを投げて!」

せつ菜「……え?」

歩夢「いいから早く!」

私の声で、せつ菜ちゃんはモノっちーを遠くへ放り投げる。すると──

61: 2017/10/06(金) 23:39:14 ID:9EsDLHMs


ドォォォォォン!!!



爆音、閃光、火薬のニオイ……

ルビィ「嘘……」

エマ「爆発、した……!?」

モノっちー「外したけれど、ボクはメガシンカしたことにより2回行動が可能なのだぁ!」ピッ ピッ ピッ

せつ菜「!?」

皆が呆気に取られている間に『どこからか現れたもう1体のモノっちー』が彼女の背後に飛び掛かろうとしている。

このままじゃ──!

62: 2017/10/06(金) 23:40:17 ID:9EsDLHMs
歩夢「せつ菜ちゃん!」

こういうのを、脊髄反射というのだろうか。

気が付いた時には、私の身体はせつ菜ちゃんの方へと駆け出していて。

誰かが何かを叫んでいるのが、どこか遠くに感じられて。

二度目の爆音と、衝撃が私たちを襲い。

……私の意識は、闇の中へと葬り去られました。

63: 2017/10/06(金) 23:41:09 ID:9EsDLHMs
────校舎1F、保健室。

歩夢「……ぅ」

せつ菜「歩夢!」

彼方「やっと目を覚ましたね~……」ウトウト

せつ菜「良かった、本当に良かったです……」

歩夢「ここ、は……?」

梨子「保健室よ。もともと何故か閉まってたんだけど……モノっちーに頼んで、開けてもらったの」

歩夢「……」

そうか。あの時せつ菜ちゃんを庇って、私は……。

梨子「あれから色々あったわ」

64: 2017/10/06(金) 23:42:21 ID:9EsDLHMs
───
──


ダイヤ『歩夢さん! せつ菜さん!』

モノっちー『うぷぷぷぷ……』

しずく『3体目……どれだけ居るんですか!?』

モノっちー『ヒマな時は階段で亀の甲羅を蹴りまくってるからネ』

善子『……つまり、無限(インフィニティ)』

エマ『そんなっ……!』

モノっちー『見せしめも兼ねて、校則違反者はここで〇しておいても良かったんだけど……まあいいや』

モノっちー『これで分かってくれたよね? オマエらは、ボクに逆らうことは出来ないんだよ』

65: 2017/10/06(金) 23:44:06 ID:9EsDLHMs
モノっちー『じゃあ、ボクはこれで失礼するよ』

彼方『ちょっと待って~……』

モノっちー『ん、何?』

彼方『この2人~、ケガしてたり、脳震盪になってたら大変だから~……保健室を使わせてくれないかな~って』

梨子『そういえば、鍵が掛かってたわね』

モノっちー『んもう、しょうがないなあ。特別だよ?』


梨子「それで、2人を背負ってここまで来たの。彼方ちゃん、結構看病の手際が良くてビックリしたわ」

彼方「いつも保健室で寝てたから、自然と身に付いちゃったみたい~」

歩夢「そうだったんですね……」

66: 2017/10/06(金) 23:45:17 ID:9EsDLHMs
せつ菜「ありがとうございます、彼方さん」

彼方「2人ともかすり傷で済んでたし、良かったよ~。氷袋も置いてるから、痛かったら使って~。じゃあ、彼方ちゃんお部屋に戻って寝るから……」

歩夢「だったら、ここのベッドを使えばいいんじゃ」

梨子「それは無理だと思う」

せつ菜「私もさっき校則を確認したのですが……確かに」

ほら、とせつ菜ちゃんが電子生徒手帳の画面を見せて来る。

映し出されたのは、ずらりと書き連ねられた6つの校則。

67: 2017/10/06(金) 23:46:49 ID:9EsDLHMs
1.生徒たちはこの学園内だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はありません。

2.夜10時から朝7時までを”夜時間”とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。

3.就寝は学生寮に設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りと見なし罰します。

4.虹ヶ咲学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。

5.学園長ことモノっちーへの暴力を禁じます。また、監視カメラの破壊を禁じます。

6.仲間の誰かを〇したクロは”卒業”となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。


歩夢「なお、校則は順次増えて行く場合があります……」

彼方「それの3つ目~。一応モノっちーに訊いてみたら『才能が才能だしオマエは多少判定を緩くしておいてやるけど、なるべく就寝は自分の部屋でしなさい』って……」

眠り姫……実際どういう才能なのかはまだ分からないが、確かにこの校則がある限り不自由しそうだ。

大あくびの混ざった「じゃあね~」を最後に、彼方ちゃんは保健室からずるずると出て行った。

68: 2017/10/06(金) 23:48:10 ID:9EsDLHMs
梨子「ところで、2人はこれからどうする? 私はこの後、みんなで学園内の探索に行くけど……」

せつ菜「えっと……」

梨子「あ、無理しなくていいわよ。15時に一度食堂に集まる予定だから、その時までゆっくり休んでて」

歩夢「あの──」

私たちが何か言うより早く、梨子ちゃんも保健室を出て行ってしまった。

69: 2017/10/06(金) 23:49:40 ID:9EsDLHMs
せつ菜「……あの、歩夢」

歩夢「?」

せつ菜「さっきは、ごめんなさい。私のせいで……」

歩夢「いいのいいの。せつ菜ちゃんが無事で良かったよ」

せつ菜「……私たち、外に出られるのでしょうか」

歩夢「誰かを〇さないと出られない……そんな筈ないよ。きっと、どこかに出口がある筈!」

せつ菜「そうです、よね……」


不安そうな幼馴染の声に、私が掛けられたのは不安定な肯定だけ。

きっと大丈夫。今は、そう信じることしか出来なかった。

70: 2017/10/06(金) 23:51:07 ID:9EsDLHMs
PROLOGUE END

To be continued…….


プレゼント“虹ヶ咲学園校章”を獲得しました。


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