【SS】かのん「こちとらやさぐれ系主人公なんだよ！」チッ　愛「ああぁ！！？」

かのん「……」ﾃｸﾃｸ

かのん（はぁ、音楽科にも落ちて、普通科の制服着せられて、こんなの誰でもやさぐれちゃうよね……）ﾔｻｸﾞﾚｪ

猫「にゃ〜」ｽﾀｽﾀ

かのん（あ、最近よくうちに遊びに来る子だ！　追いかけよ！）ｽﾀｽﾀ

猫「にゃ〜」ﾀﾀｯ

かのん（待って、逃げないでー！）ｽﾀｽﾀ

スタスタスタ……

ズドン！！

かのん「いててて」

璃奈「うぅ……」

かのん（何なの急にぶつかってきて……）ｲﾃﾃ

璃奈「ごめんなさい……私、猫を追いかけてて……」

璃奈「怪我はない？」

かのん「……」

かのん（よそ見しててぶつかってきたんだ）

かのん（その割にはこの子、申し訳なさが表情に出てないし、タメ口だし、舐めてるのかな？）

かのん（ったく、こっちはやさぐれ系主人公なんだよ？）チッ

かのん「痛かったじゃない。気をつけてよ」

璃奈「ごめん……」

かのん「大体あんたどこの高校？　なんで制服の上にパーカー着てるの？」

璃奈「虹ヶ咲……学園……」

かのん「ボソボソ喋っても聞こえないんだけどぉー！？」ｷﾞﾛｯ

璃奈「ひっ……」ﾋﾞｸｯ

愛「どうした、りなりー？」

璃奈「愛さん……」

愛「何かあったの？」

璃奈「はんぺんを追いかけてたら、この人とぶつかっちゃって……」

愛「そうだったんだ。怪我はない？」

璃奈「私は大丈夫だけど……」

かのん「……」

かのん（なんか怖そうなギャル来ちゃったよ……）

かのん（大人しそうな子なのに、こんな友達がいたとは……）

かのん（でもラブライブ初のやさぐれ系主人公として、ここで引き下がるわけにはいかないよ！）

愛「君も怪我はない？　大丈夫だった？」

かのん「大丈夫じゃないよ！　すごく痛かったんだから！」ﾊﾞｯ

璃奈「ごめん……」

かのん「ほんとどこ見てんの」

愛「りなりーも謝ってるんだし、許してくれない？」

かのん「謝ってるって言っても、全然誠意が感じられないよ！」

かのん「なんでそんな無表情で謝るわけ？　感情出せないの？　少しは申し訳なさそうにしたら？」

璃奈「！！」ｽﾞｷｯ

愛「……」ﾌﾟﾂﾝ

愛「さっきから聞いてたら、随分一方的にりなりーにつっかかってくるけどさ」

愛「ここの角でぶつかったんなら、アンタもよそ見してたんじゃないの？」

かのん「……！！」ｷﾞｸｯ

愛「怪我もしてないみたいだし、それならおあいこじゃん」

愛「それに、りなりーのこと悪く言うのだけは許さないよ」

かのん「いや、だってその子が……」

愛「ああぁ！！？」怒

かのん「……！！」ﾋﾞｸｯ

かのん（あれ、私押されてる……！　やさぐれ系主人公なのに……！）



可可「かのん、何やってるんデスカ？」

かのん（来た、援軍……！！）ﾊﾟｧ

かのん「可可ちゃん、かくかくしかじかで……」

可可「そういうことデスカ……」

可可「かのん、ここは私に任せてくだサイ！」

かのん「可可ちゃん……！」

愛「なに、友達？」

可可「そうデス！　かのんをいじめるのは私が許しまセン！」

愛「いじめてるわけじゃないんだけど……」

可可「あなたは厳罰に処しマス！」

可可「お昼休みに屋上に来やがれ！　デス！」

愛「ああぁ！！？」怒

可可「ひいいいい！！」ﾋﾞｸﾋﾞｸ

可可「かのん、助けてくだサーイ！」ｶﾞﾀｶﾞﾀ

かのん「え、ちょっと、可可ちゃん！？」

可可「その人、怖いデス……」

かのん（可可ちゃん、戦力にならず……！！）

可可「……」ｶﾞﾀｶﾞﾀ

かのん「あ、無理しないで帰っていいよ」

可可「ハイ……」ｽﾀｯ

愛「今のは何だったの」

かのん「私もわかんない！」

愛「とにかく、さっきりなりーのこと悪く言ったの謝ってよ！」

かのん「……」

愛「早く謝って！！」

かのん（く……これは絶体絶命の状況……どうすれば……）



千砂都「うぃっすうぃっすうぃっすー！」

かのん「ちぃちゃん！！」ﾊﾟｧ

かのん（やっぱり頼れるのは幼馴染だよー！）

千砂都「かのんちゃん、どうしたの？」

かのん「実はかくかくしかじかで……」

千砂都「ふーん」ﾌﾑﾌﾑ

千砂都「仲直りできるといいね！　それじゃ！」ｽﾀｯ

かのん「ちょ、ちょ、ちょっと！　ちぃちゃん！！」ｸﾞｲｯ

千砂都「なに？」

かのん「助けてくれないの！？」

千砂都「助けるも何も、話聞いてたら、これかのんちゃんも悪いんでしょ？」

千砂都「だったら、かのんちゃんも謝らないと！　それで解決するしかないんじゃない？」

千砂都「それじゃ、私たこ焼き屋のバイトあるから！」ｽﾀｯ

かのん「ちょ、ちぃちゃん！　ちょっと待ってよ！！」ｸﾞｲｯ

かのん「私たち幼馴染だよね！？」

千砂都「そうだよ？」

かのん「ちぃちゃんは幼馴染のくせにドライ過ぎるんだよ！！」

千砂都「そんなことないと思うけど」

かのん「曜ちゃんだったら絶対助けてくれたよ！？」

かのん「侑ちゃんだったら体張って守ってくれたよ！？」

かのん「歩夢ちゃんだったら刺してるよ！！！！」

千砂都「誰の話……？」

かのん「ことりちゃんは……留学やめたもん……」ﾌﾙﾌﾙ

千砂都「よくわかんないけど、私ダンスの練習あるから行くね！」

千砂都「うぃっすうぃっすうぃっすー！」ｽﾀｽﾀ



かのん「……」

かのん「ちぃちゃん、さっぱりし過ぎだよ……」ﾌﾙﾌﾙ

かのん「少しは私のことで曇ってよ……」ﾌﾙﾌﾙ

愛「……」

愛「アンタもいろいろあるみたいだね」

璃奈「千砂都ちゃんの曇り回ってあるのかなぁ」

かのん（結局、状況は劣勢のまま……これはもう謝って敗北宣言するしか……）



すみれ「かのんったら、何やってるのよ」

かのん「……！！」

かのん「すみれちゃん！？」

かのん（来た！　最後に頼れるのは無駄にハイスペックなすみれちゃんだー！）

かのん「実はかくかくしかじか……」

すみれ「そういうことね」

すみれ「それならかのん、ここは私に任せなさい！」

かのん「すみれちゃん！！」ﾊﾟｧ

すみれ「ちょっとアンタ、うちのかのんに喧嘩売るなんていい度胸してるわね！」

愛「アンタが喧嘩買うっていうの？」

璃奈（金髪だ……）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

すみれ「ええ、覚悟しなさい！」ｼｭﾊﾞｯ

愛・璃奈・かのん「！！？」

愛（その構え……まさか手を出してくるつもり！？）

愛（しかもなかなか動けそうな子じゃん……）

かのん（すみれちゃん、さすがに暴力沙汰はまずいよ……！）

璃奈（金髪きれい……）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

すみれ「……！！」ｼｭﾊﾞｼｭﾊﾞｯ

愛（くる……！！）




すみれ「グソクムシ〜♪　グソクムシ〜♪」

愛・璃奈「！？」

すみれ「グソクムシ〜♪　グソクムシ〜♪」

愛「なに、これは……」

璃奈「あわわわわわ」

すみれ「グソクムシ〜♪　グソクムシ〜♪」

愛「うわあああああああ！！」

璃奈「愛さん、しっかり！」

すみれ「グソクムシ〜♪　グソクムシ〜♪」

愛「なんかやばいよこの子……」

愛「りなりー、行こ……」

璃奈「うん……」

璃奈（すみれちゃん、好き）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

スタスタスタ

　◆

すみれ「グソクムシ〜♪　グソクムシ〜♪」

かのん「もういいよ、すみれちゃん」

すみれ「グソクム……あ、もう終わったのね」

かのん「うん」

すみれ「あれ、どうしたのよかのん」

かのん「なんかすみれちゃん見てたら、意地張ってた自分が馬鹿らしくなってきちゃった……」



こうしてかのんは、やさぐれ系主人公をやめ、優しい女の子になったのでした。

めでたし、めでたし。


おしまい

やさぐれかのんちゃん、もっと見たいです！
ありがとうございました！