【SS】かのん「ちぃちゃんが踊れなくなった」【ラブライブ！スーパースター!!】

可可「次のお題はダンスソロデスか」

恋「ダンスと言えば千砂都さんですよね、この辺りでダンスソロを入れて──」

可可「千砂都のダンスはかっこいいデスから目が離せないこと間違いありマセン！」

かのん「うーん、でもこれじゃあちょっとちぃちゃんの負担が大きすぎるんじゃ……」

すみれ「何言ってんのよ、あなたの方がいつも心配になるくらい歌ってるじゃない」

かのん「ちぃちゃん、大丈夫？」

千砂都「うん、これくらいだったら行けると思うよ」

すみれ「ほら、本人が言ってるんだから大丈夫ったら、大丈夫よ」

かのん「うん……」
　

──
夜

千砂都（今日、かのんちゃんに心配させちゃったなあ）

千砂都（あのくらいだったら体力面では問題なく出来ると思うけど……）

千砂都（でも、お題を担当するって、Liella!の未来が私にかかってるってこと──）ｿﾞｸｯ

千砂都（……でも、かのんちゃんもすみれちゃんも乗り越えたんだよね）

千砂都（大丈夫。あの澁谷かのんが信じる嵐千砂都なら大丈夫）

千砂都（ダンスの大会なんて何回も経験してるんだし、スクールアイドルとしてステージにも何回も立ってる）

千砂都（大丈夫、大丈夫）
　

千砂都（こういう時はダンス動画を見て勉強しよう）

千砂都（スクールアイドルでダンスがかっこいい人達といえば──）

千砂都（そういえば前に可可ちゃんにSaint Snowさんって人達教えて貰ってたなあ）

千砂都（当時優勝候補だったとか……）

千砂都（ちょっと見てみたけどかっこよかったし、見てみようっと）

千砂都（できれば今はラブライブ！の予選の動画がいいかな）

千砂都（『 Saint Snow/DROPOUT!? ラブライブ！北海道地区予選』……。これにしよう──）
　

──
翌日

千砂都「はっ、はっ、はっ……！」

かのん「……」

かのん「ねえ、ちぃちゃん」

千砂都「なに、かのんちゃん？」

かのん「今日体調悪かったりする？」

千砂都「え？ なんで？」

かのん「ううん、なんともないならいいの」

千砂都「うーん、実は昨日あんまり眠れなかったからそれかなあ……」

かのん「あ、寝不足なんだ」
　

かのん「なら早めに練習切り上げる？」

千砂都「ううん、大丈夫」

千砂都「もっと練習したい気分だし」

千砂都「なにより、今は身体動かしてないと怖くて」

かのん「……怖いって何が？」

千砂都「ううん、こっちの話」

かのん「なにかあるなら相談してね？」

千砂都「うん、ありがとう」

かのん「……」

千砂都（大丈夫、大丈夫）
　

──
数日後

千砂都「ここでターンして……」

すみれ「千砂都、ちょっといい？」

千砂都「ん、どうしたの？ すみれちゃん」

すみれ「最近体調悪かったりする？」

千砂都「えー？ なんか何日か前にもかのんちゃんに同じこと聞かれたよ」

千砂都「……まあ、ちょっと寝つきが悪くて」

すみれ「でしょうね」

千砂都「？」

すみれ「クマ、ひどいわよ」

千砂都「え？」
　

すみれ「それに──」

かのん「待って、すみれちゃん。私から言わせて」ｽｯ

千砂都「かのんちゃん……？」

かのん「あのね、今のダンス、全然ちぃちゃんっぽくない」

千砂都「っ！」

かのん「すごく窮屈そうで、何かを怖がってるみたい」

かのん「それに、全然楽しそうじゃないし」

かのん「もしかして、前言ってた身体を動かしてないと怖いっていうのと関係があるの？」

千砂都「……」
　

千砂都「そっか、やっぱりかのんちゃんにはわかっちゃうよね」

千砂都「それにすみれちゃんにも──可可ちゃんと恋ちゃんにも心配かけちゃったみたいだし」

くぅれん「！？」

恋「べ、別に盗み聞きをするつもりではなくて……！」ｱｾｱｾ

可可「千砂都の様子が少しおかしかったので様子を見に……」ｱｾｱｾ

千砂都「心配かけちゃってごめんね」
　

千砂都「……でも、そんなに踊り方変だった？」

かのん「これ、念の為録画しておいたの」

千砂都「えっ」

千砂都「…………」ｼﾞｯ

千砂都「これは、ひどいね」

かのん「私からしたら全然うまいんだけど、ただいつものちぃちゃんらしくないなって──」

千砂都「……」ﾌﾙﾌﾙ

かのん「……」

千砂都「……実はね」

千砂都「今、踊るのが怖いんだ」

クレカス「！」
　

千砂都「最初はちょっとしたプレッシャーでね」

千砂都「ダンスソロだから私が間違えたらそれが結果に繋がっちゃうかもって」

千砂都「でも、かのんちゃんもすみれちゃんも壁を乗り越えてやってきたんだからできるはずって思ってたの」

千砂都「すみれちゃんのラップも、かのんちゃんの独唱もすっごくかっこよかったから、勇気をもらえた」

千砂都「私もちょっと怖いけどできる、やるぞ、って思ってた」

千砂都「でも、あの動画を見たら頭から離れなくなっちゃって」

かのん「あの動画？」
　

千砂都「当時優勝候補だったSaint Snowさんっていう函館のスクールアイドルがいたの」

可可「！」

千砂都「優勝候補ってだけあってすごいかっこいいパフォーマンスで、だけど結果は地区予選敗退」

恋「……優勝候補だったのですよね？」

千砂都「うん。負けたのにはもちろん理由があるんだよ」

千砂都「本番でのミス、転倒しちゃったの」

可可「……」

千砂都「それがずっと頭から離れなくて、ミスしたらどうしようっていう気持ちがどんどん大きくなって……」

すみれ「だからあんな窮屈そうなダンスになってたのね」

千砂都「だと思う」
　

すみれ「……イップスかもね」

千砂都「……うん」

かのん「ちぃちゃん……」

千砂都「大丈夫、かのんちゃんだって歌えるようになったんだもん」

千砂都「怖いのは練習が足りないから」

千砂都「もっともっと練習して自信を付ければきっと治るよ」

可可「千砂都……」

千砂都「そうだよ！ もっと練習しなきゃ！」

かのん「ちぃちゃん！」

千砂都「心配しないで、かのんちゃん！ 大丈夫だから！」

かのん「全然大丈夫じゃないよ！」

かのん「……大丈夫に見えないよ」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

千砂都「っ！」
　

千砂都「でも、怖いんだから練習しなきゃ！」

かのん「やめてよ……！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

かのん「ちぃちゃんの苦しむところ、見たくないよ……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

千砂都「かのんちゃん……」

恋「そうですよ、みなさんで解決方法を考えて──」

千砂都「かのんちゃんは私を信じてないの……？」ﾂｰｯ

かのん「え……？」

千砂都「私が踊れるって、信じてくれないの……？」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

かのん「そうじゃないよ……！」
　

かのん「ラブライブ！は大事だけど、だからってちぃちゃんが1人で背負い込むのは違うよ！」

千砂都「でもダンスソロだよ！？」

千砂都「代わりに恋ちゃんにやってもらおうとでも言うの！？」ｷｯ

恋「！」ﾋﾞｸｯ

千砂都「それともすみれちゃん！？」

すみれ「……」

千砂都「私なんて必要ないの！？」

かのん「そうじゃないってば！」
　

千砂都「踊れない私なんて必要ないんでしょ！？ ならそう言ってよ！」

千砂都「私にはかのんちゃんの隣にいる資格なんて──」

かのん「っ！」ﾊﾟｧﾝ

すみれ「ちょ、かのん！」

かのん「そんなこと言ってないでしょ！」

かのん「私の話をちゃんと聞いてよ！」

かのん「私はちぃちゃんのことを思って──！」

恋「だ、だからって手をあげるのは……」ｱｾｱｾ

すみれ「可可、かのん抑えるの手伝って！」

可可「は、ハイ！」ｱｾｱｾ
　

千砂都「……ごめんね」

千砂都「私が弱いから……」

千砂都「かのんちゃんみたいに強くないから……」

千砂都「今だって空気を悪くしちゃったし、踊れないんじゃかのんちゃんの隣にいる資格もない」

千砂都「私、スクールアイドルやめる」

恋「千砂都さん！」

かのん「……すみれちゃん、可可ちゃん、離して」

可可「で、でも……」

かのん「もう叩いたりしないから」

すみれ「……」ｽｯ
　

かのん「叩いてごめんね、ちぃちゃん」ｿｯ

千砂都「ううん、私が悪いから」

かのん「ちぃちゃんは悪くないよ」ｷﾞｭｯ

かのん「私が感情的になっちゃっただけ、痛かったよね？」

千砂都「でも、私もう踊れないかもしれないんだよ……？」

かのん「踊れなくたって、ちぃちゃんはちぃちゃんだよ」
　

かのん「私が歌えなくなった時も、ちぃちゃんはずっと支えてくれてたでしょ？」

かのん「だから、今度は私が支える番だから」

かのん「私はちぃちゃんに隣にいてほしい」

かのん「私の隣にいるのに、資格なんて必要ない」

かのん「ちぃちゃんが、嵐千砂都がいてくれるだけでいいの」

かのん「それが言いたかったの」

かのん「ごめんね、口下手で、それに叩いちゃって」

千砂都「ちがう、私が聞こうとしなかったの……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ
　

かのん「ね、久しぶりにあれやろうよ」

千砂都「あれって？」

かのん「昔やってたでしょ、私が即興で歌って、ちぃちゃん即興で踊るやつ」

千砂都「え、でも──」

かのん「あの頃は私は作詞も作曲もヘンテコで、ちぃちゃんも今ほど上手じゃなかったよね」

かのん「でも楽しかった」

かのん「気付いたら周りにギャラリーができてたりしたこともあって」ｸｽｸｽ

千砂都「……うん」

かのん「～♪」

千砂都「……」
　

かのん「ほら、踊って。～♪」

千砂都「う、うん……」

かのん「その調子。～♪♪」

千砂都「……ふふ、変な歌」ｸｽｸｽ

かのん「ちぃちゃんこそ変なダンスじゃん」ｸｽｸｽ

可可「……千砂都、踊ってマス」

恋「2人ともとても楽しそうですね」

すみれ「イップスって普通そうそう治らないものなんだけどね」

すみれ「かのんも、千砂都も2人して治しちゃうんだからすごいったら、すごいわね」

恋「あの2人だからこそ、なのかもしれないですね」

可可「真爱……这才是真爱！」
　

かのん「もしちぃちゃんがミスしたら私たちがフォローする」

かのん「だから変に肩に力入れないで」

かのん「私は楽しそうに踊ってるちぃちゃんが一番大好きなんだから」ﾆｺｯ

千砂都「私も！ 楽しそうに歌ってるかのんちゃんが大好き！」

かのん「一緒だね！」

千砂都「うんっ！」

かのん「ういっす」

千砂都「ういっす」

かのちぃ「ういーっす♪」ﾕﾋﾞｷｽ

おわり