【長編SS】海未(……え…どう、して…?視界が…ぼや、け、て…)

うみ SS


1: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/08(日) 23:40:52.69 ID:EWuuuy0o.net
ーー気づいたときには、もう遅かったのです。

屋上での練習中、最後の決めポーズのために足を踏み出した瞬間、私の身体がぐらりと揺れました。

地面を踏みしめたはずの片足は自分でも驚くほど脆く、身体を支えることができなかったみたいです。

前に立ってリズムをとっていた絵里の姿もぐにゃりと歪み、意識が薄れていくのがわかりました。

ー…海未ちゃん!?ー
ー海未っ!!ー

遠くで声が聞こえるようです。みんな、すみません……。

仲間たちの声を最後に、目の前が真っ暗になり、私は完全に意識を手放しました。

誰かの腕に包まれたような温もりを感じながら………







*これは安価次第でほのうみ、ことうみ、えりうみ、うみまき、うみりん、うみぱな、うみにこ、のぞうみ のいずれかに発展するかもしれないssです
*文才皆無により更新は遅め
 
8: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/08(日) 23:53:57.21 ID:EWuuuy0o.net
…………………………………………。

…………………………………。

………………………。

…………。

……ここは、どこでしょうか。

私は何をしていたんでしたっけ…。

…えーと…まず弓道場に寄ってから…いつものように屋上で練習をして…

…ああ、私、倒れたんですね。

この暗い空間と謎の浮遊感……私は死んでしまったのでしょうか。

そういえばさっきから妙に身体が熱くて…

きっとそのせいですね…………って。



海未「身体っ!?」ハッ
穂乃果「うわぁああああああああっ!!」ビクッ
海未「きゃああっ!!ほ、穂乃果!?」

ほのうみ以外7人「「海未(ちゃん)!!」」
 
11: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/08(日) 23:56:51.60 ID:EWuuuy0o.net
絵里「ーーよかった、元気そうね」

海未「あ、あの…ここは…」

絵里「病院よ。海未ったら、練習中に突然倒れるんだもの、びっくりしたわ」

海未「すみません……」

希「謝ることはないやん」

ことり「そうだよー。 海未ちゃん、調子はどう?」

海未「そうですね…、少し頭痛がありますが、全然大丈夫ですよ」

穂乃果「え~?本当に~?」

海未「ほ、本当ですよ!」

真姫「まあ、大声出せるくらいには元気なんだし、心配いらないわね」

花陽「確かに、びっくりしたかも…」

海未「あれは、忘れてください…っ///」

凛「でも起きた瞬間目の前に穂乃果ちゃんの顔があったら誰でも驚くよ~」

穂乃果「だって心配だったんだもん…!」
 
13: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 00:00:59.86 ID:dGG9DWGH.net
にこ「そういや海未、『身体っ!』とか言ってたけど、あれは何だったのよ」

海未「あっ、それは…」
海未「死んでしまったのかと思ったんですけど、身体があることに気づいたんですよ」

あれ…?どうして気づいたんでしたっけ?

希「ふーん」

希「それって、幽体離脱だったりしてな」ニヤリ

海未「え…」

絵里「ちょっ、希!怖いこと言わないでよ!」

希「嘘、嘘。冗談や♪」

真姫「希の場合、冗談に聞こえないわよ」マッタク

凛「ホントだにゃ~!」

花陽「でも、海未ちゃんが無事でよかったよね」

にこ「もう…早く復帰しなさいよ?ま、μ'sはにこにーがいれば百人力だけどぉ?」

海未「みんな…ありがとうございます」

まあ…理由は思い出せませんがいいでしょう。

穂乃果「はぁ~っ、海未ちゃんが元気そうで安心したよ~」ギュゥウウ

海未「ほ、穂乃果?苦しいですよ…っ」

穂乃果「ふふっ、海未ちゃんあったか~い」

ことり「みんな本当に心配したんだよ~?特に>>16ちゃん(or自分)なんか、真っ先に海未ちゃんに駆け寄って…!」
 
16: (なっとう)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 00:02:29.59 ID:eeL7lXTe.net
にこ
 
22: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 00:14:45.45 ID:dGG9DWGH.net
ことり「みんな本当に心配したんだよ~?特ににこちゃんなんか、真っ先に海未ちゃんに駆け寄って…!」

にこ「な…っ!ことり!!///」

真姫「にこちゃん、すっごく必死だったわよね」

凛「『海未っ!?ちょっと海未!!しっかりしなさいよ!!』…って痛いにゃ~!!」

にこ「あんたが悪いんでしょ!?」

にこ「あ、あれは部長として当然のことをしたまでで……っ」

海未「…にこ」

にこ「な、何よっ!」

海未「抱きとめてくれたのは…にこだったんですね。……ありがとうございます」ニコッ

にこ「~~っ!////」

にこ「もう、海未なんか知らないんだからぁああ!」ダッ

希「ちょっ、にこっち!」

花陽「行っちゃった…ね」
 
34: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 01:25:28.60 ID:dGG9DWGH.net
海未「にこの顔が赤かったように見えたのですが…大丈夫でしょうか?」

希「あれも一種の愛の形やから、気にせんどき」

海未「は、はぁ…」

絵里「まあ、今はとにかく安静にしておくことね。学校生活にもダンスの練習にも、支障が出たら困るし」

海未「そうですね。練習にも…」

海未「…練習…………?」

穂乃果「…海未ちゃん?」

海未「」ハッ!

海未「こ、ことり!今の時刻は!?」

ことり「え!?えーと、7時10分だよ?」

海未「…………………………………………」

私は言葉を失いました。

大切なことを忘れていたのです。
 
48: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 01:51:37.39 ID:dGG9DWGH.net
真姫「い、いったいどうしたっていうのよ?」

花陽「海未ちゃん、何か用事でもあるの?」

海未「………………稽古が」

凛「けいこ?」

海未「…日舞の稽古の時間が……過ぎてしまっています……」

真姫「はぁ!?あなた、今から稽古やるつもりだったの!?」

海未「今からなどさせていただくことはできません。稽古は7時からなのですから…」

穂乃果「ちーがーうーよぉー!今は安静にしてなきゃダメってことだよ!」

ことり「さっき『そうですね』って言ったばっかりなのにね」クスッ

海未「そ、それでは母に連絡を…!」

絵里「大丈夫、それももうしてあるわ」

希「もうそろそろ、来るんやないかな」

海未「え…」
 
50: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 01:52:09.88 ID:dGG9DWGH.net
海未「来るっていうのはいったい…」

花陽「それは…」

???「ーー海未さんっ!」

海未「………っ!」

海未「お母、様……」

海未母「絢瀬さんという方から、海未さんが突然倒れたって聞いて…」

海未「申し訳ありません。私の不注意で、日舞の稽古まで休むことになってしまい…」

海未母「そのようなことはいいのです。体調はどうなのですか?」

海未「はい、友人たちのおかげで、特に問題はありません」

海未母「そうですか。それを聞いて安心しました」


海未母「ーー皆さん、今日はありがとうございました。ご両親が心配なさいますから、もうお帰りになってかまいませんよ」
 
51: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 01:53:12.26 ID:dGG9DWGH.net
ことり「ーーそれじゃあ穂乃果ちゃん、私たちも帰ろうか」

穂乃果「うん…そうだね。…また一緒に学校行こうね、海未ちゃん!」

海未「はい、もちろんです!」

ことり「またね、海未ちゃん」

穂乃果「おばさんも、さようなら!」

海未母「はい、さようなら」

海未「穂乃果もことりも、気をつけて帰ってくださいね」

穂乃果「うん!ばいばーい!」
 
53: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 01:54:51.94 ID:dGG9DWGH.net
ーーみんないなくなった後ーー

海未母「…いいご友人を持ちましたね、海未さん」

海未「はい、本当に…。みんなには、助けられてばっかりです」

海未「私はいつも厳しく当たってしまうばかりで何もできないのに…」

時々、不安になるのです。自分はこれでいいのか…と。μ'sにはひとりひとり役割がある、それはわかるのですが。私はμ'sに何か貢献できているのでしょうか?もちろん、歌詞とか指導とか、そういうものではなく。ただ、穂乃果たちの後を追っているだけではないのか…

とそのとき、病室のドアに人影が見えました。

海未「…………あっ」

海未母「どうしました?…あら」

海未「あなた……」

控えめに入ってきたのは、さっきまでここにいてくれたメンバーでした。

>>56「…まだ、ここにいてもいい?」
 
56: (湖北省)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 01:56:38.00 ID:DUNDG/z3.net
穂乃果
 
76: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 09:56:08.83 ID:dGG9DWGH.net
あのサイドテールは、まさか…

穂乃果「…まだ、ここにいてもいいかな?」

まだ帰っていなかったなんて。

海未「穂乃果、あなたはさっきことりと帰ったはずでは…?」

穂乃果「その、つもりだったんだけどね…」

海未「…?」

穂乃果「やっぱり、心配、だったから…」

そう口にする穂乃果は少し遠慮がちで、でも駄々をこねる子供のような目をしていました。

こうなると穂乃果も聞きませんし、私もお願いを断ることはできないのです。しかし、今回は…

海未「…穂乃果は本当に、他人のことになると心配性なんですから」

海未「ご両親に連絡はしたのですか?」

穂乃果「うん」

海未「夕食は?」

穂乃果「何か適当に買って食べるよ」

海未「…宿題は?」

穂乃果「か、帰ったら…やろう、かな…」アハハ

海未「…」
 
77: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 09:57:17.25 ID:dGG9DWGH.net
なぜ…なぜこの幼馴染はそうまでして付き添ってくれようとしているのでしょうか。

今は夜ですし、しかも明日は平日。穂乃果はほとんど居眠りしていますけど、学校だってあります。私の症状もそこまでひどいわけではないし…

やはりここは断りましょう。穂乃果の健康のためでもありますし。

海未「穂乃果」

ーーしかし、母が私の言葉を遮ったのでした。

海未母「穂乃果さんが付いていてくださるなら安心です。海未さんを、よろしくお願いしますね」

穂乃果「えっ、は、はい!もちろんです♪」

海未「お母様…!?」

海未母「…何かあったら、連絡なさい」
海未母「それでは」

…何なのでしょうか、あの目は。

あたかも狙いがあるかのような……
 
85: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 10:24:11.62 ID:dGG9DWGH.net
病室には二人きりになりました。

すると、穂乃果がこんなことを問いかけてきます。

穂乃果「海未ちゃん、今、体調どう?」

みんなといた時とは打って変わって、真剣な表情。あまりにも態度が違いすぎて、さすがに戸惑ってしまいます。

海未「どう…とは…?」

穂乃果「正直に言って。海未ちゃんは今、つらい?つらくない?」

穂乃果の意図がわかりません。さっきから大したことはないと言っているはずなのですが…

そう思って、

海未「特に。さっきまでと変わりま………ぇ」

変わりませんよ。そう、言おうとしたのに。

突然、視界が揺れたのです。

さっきまでと変わらない。……それは何が?
 
86: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 10:24:59.60 ID:dGG9DWGH.net
穂乃果「海未ちゃん」

そう言って、穂乃果が額にあててくれた掌は、ひんやりと心地よくて。

穂乃果「…なんで平気そうにしてるの」

海未「穂乃果…」

身体中が、熱い。穂乃果に言われて、初めて気づくなんて。

穂乃果「おかしいな、って、思ってたんだ。わかるんだよ?幼馴染だもん。きっと…ことりちゃんだって」

穂乃果「ことりちゃんね、私が『やっぱり海未ちゃんのとこ戻る』って言ったら、なんて言ったと思う?ーー『海未ちゃんをよろしくね』って。こう言ったんだよ」

海未「あ……」

頭の中で、母の姿が蘇る。

ー海未さんを、よろしくお願いしますねー

みんな、気づいていたんですね…

私でさえ気づいていないことを…


穂乃果「つらいときは、つらいって言ってほしいな。もっと、頼って、ほしいな…」
 
90: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 10:41:56.53 ID:dGG9DWGH.net
高熱のせいでクラクラして、何も考えられなくなるけれど、穂乃果の切実な声だけは脳内に直接響いてくるようでした。

穂乃果「…ごめん、体調もよくないみたいだし、もう寝よっか」

そう言って穂乃果は私をゆっくりベッドに横にならせてから、布団をかけてくれました。

海未「いつから…」
海未「いつから気づいていたんですか…?」

私が聞くと、幼馴染はにっこりと微笑む。

穂乃果「最初から…かな♪」

穂乃果「あと、抱きついたとき、いつもよりあったかかったから、それで確信したよ」

…やっぱり、かないませんね。

穂乃果「ねえ海未ちゃん、1つだけわがまま言ってもいい?」

海未「はい…何でしょう…?」

穂乃果「もう、1人で問題を抱え込まないでほしい。海未ちゃんの問題は、穂乃果の問題でもあることにしてほしいの…ダメ…かな?」

海未「…っ」
海未「あなたという人は…」フフッ 

海未「わかりました。…でも、穂乃果の問題も、私の問題、ですよ?」

穂乃果「ふふっ、そうだね」
 
91: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 10:44:39.45 ID:dGG9DWGH.net
海未「穂乃果…」

穂乃果「ん?なぁに?」

海未「その…私も、1つ…わがままを言ってもいいでしょうか…?」

穂乃果「うん、いいよ」

海未「………私が眠るまで、手を…繋いでいてください…///」

穂乃果「うん、わかった」ギュッ

海未「ありがとう…ござい…ます…ほの…」ス-ス-

穂乃果「…おやすみ」




穂乃果「…寝顔は……卑怯だよ、海未ちゃん」

海未「ん…ほの…かぁ…」

穂乃果「…っ、帰ろ………///」
 
92: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 11:14:10.71 ID:dGG9DWGH.net
ーーちょうどその頃ーー

はぁ…っ、はぁ…っ、はぁ……っ


……ふぅ。


……………最悪だ、私。

ちょっと恥ずかしくなっただけで、救急車で運ばれた仲間に挨拶すらせずに病院から飛び出して来ちゃうなんて…。

はは。

何が「部長だから当然のことをしたまで」よ。

なんでこういう肝心なときに部長らしくできないんだろう…


にこ「……ただいま」

こんなに家のドアが重く感じたことはなかった気がする。

こころ「あっ!お姉さま、おかえりなさい!」

ここあ「お姉ちゃんおかえり~!」

にこ母「おかえり、遅かったのね。今日はご飯作っといたけど、食べるわよね?」

虎太郎「おむらいす……」

こんな日常の風景で苦しくなるのだって、初めてな気がする。

にこ「…ごめんね、今は…ひとりにさせてくれる?」

にこ「お風呂、先入るわね」
 
93: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 11:14:46.32 ID:dGG9DWGH.net
でもさぁ、海未だって悪いのよ。

あんな笑顔見せられたら…

ドクン
 
なんで…なんでこんなに苦しいのよ…



海未が倒れたとき、気づいたら夢中で駆け出していた。

なんとか頭をぶつける前に抱きとめることができたとき…最初に感じたのは、脆さだった。

いつも練習ではまとめ役に回り、自分にも他人にも厳しい彼女。

そんな姿を見てきたから、私は、勘違いしていたのかもしれない。

海未は強いのだと。

…でも、きっとそれは違う。

むしろ、メンバーでいちばん弱くて脆い子なのかもしれない。

守ってあげなきゃ…

そう感じるほどに。
 
95: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 11:34:58.97 ID:dGG9DWGH.net
風呂から上がった私は、ケータイのディスプレーを眺めていた。


ーー宛先: 園田海未ーー


ここまで打ち込んで、指が止まる。

だいたい、私にメールなんか送る資格があるのかしら。

見てくれるかもわからないし…

何より、なんて書いたらいいのか…

今日のお詫び?体調の確認?それとも…

「はぁ」

思わず溜息が漏れる。

とにかく、送るなら1、2文が妥当ね。

でも、嫌われてるかもしれないし…送らないべきなのかしら。

「私は…」

>>97
1.送る(内容も添えて)
2.送らない
 
97: (茸)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 11:47:20.57 ID:3PJYpwSH.net
1
 
106: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 12:59:39.80 ID:dGG9DWGH.net
にこ「やっぱり、送ったほうがいいわよね。海未は何でも抱え込んじゃいそうだし…」ポチポチ



にこ「これでいいわ。…送信、と」

もう二度とこんな目に遭わせないんだから…っ


ふと、さっきの真姫ちゃんの言葉が蘇る。


ーにこちゃん、すっごく必死だったわよねー


必死…か…

こんなに誰かのこと考えるのなんて、初めてかも。

…なんて、こんなの、にこらしくないかな。



にこ「…もう寝ましょうか」


宿題?やるわけないでしょ?
 
107: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 13:00:22.15 ID:dGG9DWGH.net
小鳥のさえずりと、朝の日差し。

目を開けると、そこは一面の白。私は病院にいました。

隣には、小さな丸イス。

穂乃果がいないのが少し寂しいと思ってしまう私は、貪欲でしょうか。

自分の手を額に当ててみると、まだ微熱があるのがわかります。

今日も練習や稽古はさせてもらえないのでしょうね。

海未「それはそうと、今の時刻は…」

時刻を確認するためにケータイを取り出すと、まだ5時半。

いつもならこの時間はランニングか弓道の稽古をしているはずでした。

何もできないとき、早起きというのはつらいものです。

何か暇が潰せるものは…

と考えを巡らせた時、新着のメールが1件あることに気がつきました。

海未「誰からでしょうか?穂乃果?それともことり…」

すぐに幼馴染からだと思い込んでしまうのは悪い癖ですが…新着のメールの送り主は、私にとっては予想外の相手でした。

海未「……にこ」
 
108: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 13:00:50.39 ID:dGG9DWGH.net
***************
差出人: 矢澤にこ
件名: あんたはもう少し

本文:

私を頼りなさい


***************
 
115: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 14:05:50.54 ID:dGG9DWGH.net
海未「…に…、こ……っ」

なぜでしょうか、わかりません。

こんなにそっけない文章なのに…

涙が…止まらな……っ、

海未「なぜ…っ!なぜ…こんなに…っ」

海未「私は…っ!普段から…頼りっぱなしです…っ!」

わかりません、なぜあなたがこんなメールを送ってきたのか…どんな気持ちで送ってきたのか…

…でも。

ひとつだけ、わかります。


……とても、嬉しいんです。
 
116: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 14:06:25.76 ID:dGG9DWGH.net
***************
宛先: 矢澤にこ
件名: Re:あんたはもう少し

本文:

ありがとう


***************
 
125: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 17:56:26.80 ID:dGG9DWGH.net
ーー次の日ーー

小鳥のさえずりと、朝の日差し。

目を開けると、そこは自分の部屋でした。

ん~っ、やっぱり自室での朝は最高です。


私はというと、昨日のうちに退院することができ、自宅で1日安静にしていたら、すっかり体調も良くなりました。

午前5時半、ですか…

昨日にこからメールが届いたのもこの時間でしたね。


『あんたも少しは、ーー私を頼りなさい』


頼る…ですか。

にこは確かに頼られるほうが好きそうですね。1年生と一緒にいることも多いですし。

私もどちらかと言えば頼られるほうが気楽ですし、好きなのですが……

結局は無意識のうちに頼ってしまうのですから、気楽も何もないのかもしれません。

そんな周りに頼りきりの私に今更「私を頼りなさい」だなんて、にこはどういう心境で……

………って、ちょっと待ってください?

これ、「私たちを」ではなく「私を」になってますよ!?
 
128: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 18:36:08.36 ID:dGG9DWGH.net
も、もしですよ?私がみんなに頼られるだけの存在だったとして。

たまには頼ってほしい、そう言いたいのであれば、普通は「私たちを頼って」と言うものなのではないですか?

これではにこ限定になってしまうではありませんか!?

いや、私の感覚がおかしいだけなのかも…しれませんし…

あっ、もしかして私が3年生の中でいちばん頼っているのが絵里だから、負けたくなくて…?

そう…深い意味は…ないはずです…


もうアレについて考えるのはやめましょう。

さて、久しぶりにランニングにでも行きましょうか!
 
129: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 18:37:49.96 ID:dGG9DWGH.net
ランニングウェアに着替え、タオルと水のペットボトルを持って。

玄関の戸を開けると、朝の冷たい空気が頬を撫でる。肌寒さが心地よい。

やはりやることさえあれば、早起きはよいものです。

穂乃果にもこの素晴らしい瞬間を毎日味わってほしいものですね…

さて、早速走りますか!

と、一歩踏み出した瞬間でした。




>>132「おはよう、海未(ちゃん)」

視線の先に、>>132が立っていたのです。
 
132: (たこやき)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 18:42:06.34 ID:s6SHSFom.net
にこ
 
142: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 22:40:42.48 ID:dGG9DWGH.net
にこ「おはよう、海未」

海未「!?ににににににこ!?どどどうして、ここに…!?」

にこ「な、海未、驚きすぎよ!」

だって…どうしたらよいのでしょう…

さっきまでメールのことを考えていた手前、にことどう接したらいいかわかりません…っ

海未「す、すみません…!こんなところに知り合いがいるなんて、思わなかったものですから…」アワアワ

にこ「…まあ、私もこんな朝早くにこんなとこ、普通は来ないしね」

海未「そう、ですよね…。き、奇遇ですね、こんなところで会うなんて!」

海未「ところで、にこはお散歩ですか?実はここ、私の家なんですよ」

にこ「…知ってるわ」

海未「え…」

(にこに家の場所を教えたことなんてありましたっけ…?)
 
143: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 22:42:50.70 ID:dGG9DWGH.net
どうしてそれを…?

そんな言葉が口から溢れそうになったときでした。


にこ「…ところで、海未」



にこの目が鋭く光ったのです。

このせいで、一切の言葉が喉の奥に飲み込まれました。

海未「は、い…?」

うまく言えていたでしょうか。いえ、きっと掠れていたでしょう。

にしても、にこは今機嫌が悪いようです。

私が何か気に障ることを口走ってしまったのでしょうか…

そんなことを考えながら、身構えているとーー



にこ「あんた今から、何しようとしてるの!?」
 
144: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 22:44:22.67 ID:dGG9DWGH.net
海未「…は?」

にこ「は?じゃないわよ!どうせ走りに行くつもりだったんでしょ!?」

海未「そうですけど…」

海未「ああ、にこも一緒に走りたかったのですね!」パアァッ

にこ「ち、違うわよ!走るなんてごめんよっ!」

海未「あっ…すみません……」シュン  



にこ「…もう……」


にこ「……じゃあ…歩きましょ?」
 
145: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 22:45:07.54 ID:dGG9DWGH.net
海未「歩く…ですか?」

にこ「そうよ。ウォーキング」

にこ「と、とにかく、走るのは明日からにしなさいよっ!?」

そう言って、にこは先をスタスタと行ってしまいました。

海未「あっ、にこ、待ってくださいっ!」


………ふふっ、あなたという人は。

ちょっと不器用すぎませんか?

私に無理をさせないために、止めるために、家の前で待っていてくれたんですね。

家の場所と、私のランニングの習慣をにこに教えたのは…さてはことりですか。

まあ、この際誰でもいいですが。

海未「にこ」

私は先行く彼女の細い手首を捕まえる。

にこ「えっ、海未…!?」

海未「ようやくわかりました」
 
147: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 22:47:50.97 ID:dGG9DWGH.net
にこ「…?」

海未「あなたは…」

海未「あなたは馬鹿です」

にこ「ちょ、ちょっと!いきなり馬鹿とか言われるなんて心外なんですけどぉー!?にこだってねーっ…!」

海未「…はい、わかってますよ」クスッ

にこ「え…?」

海未「心配…してくれたんですよね?」

海未「これは私の思い上がりかもしれませんが…」

海未「きっと…にこが、誰よりも心配してくれている…そんな気がするんです」

にこ「海未…」

海未「だから、今回は直接お礼を言わせてください」

海未「…ありがとう」ニコッ 

にこ「~~~っ///」ドキッ



にこ「海未の、バカ……っ」

海未「ええっ!?馬鹿はにこだけで充分ですよ~!」

にこ「うるさいわねっ!じゃあ海未は大バカよ!」

海未「どうしてそうなるんですか!?」
 
149: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 23:26:10.34 ID:dGG9DWGH.net
午前7時。

ウォーキングというのも、楽しいものですね。たまにはこっちでもいいかもしれません。



支度を終えて、次は学校に向かいます。μ'sの朝練があるのです。

海未「ではお母様、いってきます」

海未母「くれぐれも無理はしないでくださいね」

海未「はい、わかっています」

海未母「気をつけて。いってらっしゃい」

そんなやり取りをしてから、私は戸を開けようとしますがーー

海未母「…ああ、そうでした」

母に呼び止められます。

海未母「外で、>>150さん(複数可)が待っていましたよ」

海未「え…?」
 
150: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/09(月) 23:26:55.38 ID:0LWrAPZR.net
にこ
 
154: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 00:25:52.52 ID:FC3ZHmMS.net
海未母「外で、矢澤…さん?が待っていましたよ」

海未「え…?」

その名前を聞いて、いてもたってもいられなくなり、急いで戸を開けるとーー

母の言った通り、さっきの場所にはにこが立っていました。

にこ「ま、また会ったわね、海未」

海未「あなたは本当に…馬鹿ですね」
 
155: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 00:44:28.94 ID:FC3ZHmMS.net
にこ「な、なんのことニコー?」

海未「とぼけないでください!にこの家から学校まで行くのに私の家は通らないはずです!」

にこ「ち、違うの…っ!いつもなら通らないはずなんだけど、えぇ…と…、迷子!にこぉ、迷子になっちゃってぇ、この辺わかんなぁい」

海未「………………………」

にこ「………………………」アハハ... 

…まったく、3年間通った通学路を忘れて迷子になるなんて、絶対にありえないじゃないですか。

でもまあ、茶番に付き合うのも、楽しいかもしれませんね。
 
156: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 00:45:13.55 ID:FC3ZHmMS.net
海未「…」ガシッ

にこ「え…っ」

海未「ではにこ、学校に行きますよ」グイグイ 

にこ「ちょ、ちょっと待ってよ!」

海未「はい、何ですか?」

にこ「こ、これ、ててて手、つない、で……っ!」

海未「だって…にこは迷子なのでしょう?はぐれたら大変ですから」ニッコリ  

にこ(や、やられた…っ)

海未「ほら、早く行かないと遅れますよ」グイッ

にこ「待って!引っ張らないで!」




にこ「……………隣、行くから…」
 
163: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 09:52:18.83 ID:KdiX5Nki.net
ここからは矢澤視点でお送りします(・8・)
 
164: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 09:52:56.08 ID:KdiX5Nki.net
にこ「……………」

海未「……………」

な、なんか気まずい…?

というか、この状況で何話せばいいのよ…!

手を繋いでるせいで距離も近いし、海未のシャンプーの香りまで………って、何考えてるのよ矢澤にこ!!

とりあえず、何か共通の話題でも…と模索していた矢先だった。


海未「…おとなしくしていれば、可愛いものですね」
 
165: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 09:53:28.90 ID:KdiX5Nki.net
声が降ってきた方に目線を上げると、綺麗な琥珀色の瞳に目が奪われる。

嘘偽りのない、純粋な目。

海未って睫毛長いんだなぁ…。

とか、そんなことを思いながらも口をついて出たのは

「何よ、馬鹿にしてるの?」

という憎まれ口。

それなのに。

海未「いいえ。…にこは魅力的です」

なんて。

にこ「そ、そりゃあ、にこは宇宙No.1アイドルなんだから!当然でしょ?」

また。私はひねくれた言い方しかできないのかしら。

海未「ふふっ、そうですね。私もにこのことは、アイドルとしても普段から本当に尊敬しているんですよ」

これ無意識で言ってるのよね…。

やめてよ。ホントに調子狂うわ。
 
166: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 09:54:36.16 ID:KdiX5Nki.net
ーーなんか、ちょっと前とにこの立場違うんじゃない!?

さっきから海未に振り回されてるばっかりな気がするんだけど!!

やられっぱなしってのは性に合わないのよね…

決めた!

>>169をして海未に仕返しをしてやるわ!
 
169: (茸)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 10:05:58.69 ID:TjTe/F0y.net
腕を組んで密着
 
175: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 18:35:46.04 ID:FC3ZHmMS.net
こうなったら…

にこ「…っ」バッ 

私は無理やり海未の手を振りほどき、その代わりーー

海未「…に、にこ?何、して……」

にこ「は、はぐれないようにって言ったのあんたでしょ!?こっちのほうが離れにくいからこうしてるだけよ!」

誰かと腕を組んで歩くなんて初めてやったけど…

なにこれ!?めちゃくちゃ近いじゃない!!

…でもここで終わったら負けよ。これは仕返しなんだから!

もうこうなったらヤケクソだわ。

私は半分理性を捨てて、今よりさらに海未に身を寄せた。
 
177: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 18:56:24.98 ID:FC3ZHmMS.net
海未「に、にこ…!こ、これは近づきすぎです、離れてください…っ///」

海未の顔を見ると、トマトみたいに真っ赤。

ふふっ、いい反応ね。

にこ「えぇー?ダメなのぉ~?……もしかして、にこのこと嫌い?」

海未「そ、そういうわけでは…!」

にこ「ならいいじゃない♪」

海未「で、でも…!」


海未「………………………恥ずかしいから…無理です…///」

にこ「…っ///」
 
178: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 18:56:55.06 ID:FC3ZHmMS.net
ちょ、なにこの子!

涙目の破壊力凄まじいんですけどっ!!

てかさっきから自分から手を繋ぎはじめたり人のことさらっと魅力的うんぬん言っておきながら今さら恥ずかしいとか…

ははーん。海未って、無意識のうちに人の気持ちを揺さぶっておきながら、押しにはとことん弱いのね。

まあ、これで仕返しも済んだことだし、離れてあげましょうか…
(べ、別に名残惜しくなんかないんだから…)



と思った、そのときだった。



???「ーーあっ、海未ちゃんおはよう♪……ってあれれ?…にこちゃん?」

にこ「」ギクッ
 
182: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 21:30:15.85 ID:FC3ZHmMS.net
え、待って、タイミング悪すぎぃいいっ!

海未「こ、ことり…おはようございます…」

にこ「お、おはよう、ことり」

ことり「うん♪ それにしても…にこちゃんが海未ちゃんと一緒にいるなんて、珍しいね!」

にこ「ま…まあね…」

もう最悪…っ!というか、海未がいつもことりや穂乃果と一緒に登校してたこと、すっかり忘れてたわ…

お願いことり…もうこれ以上の詮索はやめて…!


しかし現実は残酷である。


ことり「でも…あれ?にこちゃんって家あっちの方だったっけ?」

にこ「」
 
183: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 21:30:57.97 ID:FC3ZHmMS.net
この後の展開 >>186

1. ことりがからかう
2. 海未が助け船
 
186: (あら)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 21:37:51.37 ID:IypvtTN9.net
1
 
189: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/10(火) 22:06:56.89 ID:FC3ZHmMS.net
にこ「な、何だっていいでしょ!?ちょっと、今日はこっちの道から登校したい気分だったのよ!」

ことり「…ふぅ~ん、そっかぁ」










ことり「にこちゃんは、海未ちゃんのことが大好きなんだね♪」









にこうみ「「……………はぁっ!?」」
 
196: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/11(水) 12:25:43.06 ID:kkx9wPzK.net
ことり「だって…にこちゃん、海未ちゃんに会いに行きたかったからことりに家の場所聞いたんだよね?」

にこ「そ、それは…!」

海未「…やはりことりでしたか」

にこ「気づいてたの!?」

ことり「それに…」


ことり「腕まで組んでるし♡」 

にこ「!?×☆%\@&#△$※!!!!!」バッ

慌てて海未から離れるけれど、時既に遅し。

…しまった。ことりに会ってからすっかり離すタイミング逃してたわ…

ことり「えぇ~、離しちゃうの~?そのままでもよかったのに~」

海未「ことり!からかうのはやめてくださいっ」

にこ「そうよ!私だって海未をちょっとからかうつもりで腕組んでみただけなんだから!」

海未「な…っ!それでは、にこは私の反応を見て楽しんでいたということですか!?」

にこ「海未が悪いのよ!散々私の気持ちを弄ぶから…!」

海未「弄ぶとは人聞きの悪い…!そっちがそう言うなら私だって、にこの冗談にわざわざ付き合ってあげただけなんですから!」

にこ「な、何ですって…!?だいたい海未はーー」





ことり「ふ、二人とも…痴話喧嘩なら他所で…」

海未「痴話喧嘩じゃありません!」
にこ「痴話喧嘩じゃないわよ!」


にこうみ「「あ………」」

ことり (微笑ましいなぁ)
 
197: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/11(水) 12:26:13.16 ID:kkx9wPzK.net
そんなこんなで、穂乃果の家に到着。

…でも。

ことり「あれれ~?穂乃果ちゃんまだ出てきてないみたい」

海未「…また寝坊ですか」

にこ「ちょっと、どうすんのよ!朝練遅れるわよ!?」

ことり「じゃあ私、穂乃果ちゃんの様子を見てくるね」

海未「それなら私も…!」

ことり「海未ちゃんはいいのっ。ことり一人で大丈夫だから、にこちゃんと先に行っててくれる?」

海未「えぇ!?ですが…」

にこ「そ、そうよ!みんなで起こしにいけばいいじゃない!」

いったいことりは何を考えてるのよ…?

まさかまたからかって…

と思いかけた矢先。

ことり「4人も遅れるより、2人だけでも参加したほうがいいんじゃないかな?
…………ね♪」

不意にことりと目が合って、ウインクされる。



ーーなるほど。そういうことね。



にこ「わかったわ。…そういうことだから、海未、行くわよ!」ギュッ

海未「えっ、にこ…!?」

にこ「…っ」


…今度は、私から。


もう!これでいいんでしょ!?

ちょっぴり憎しみを込めてことりを睨むと、案の定、満足そうに微笑んでいた。
 
198: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/11(水) 12:26:43.53 ID:kkx9wPzK.net
<ことりside>


海未ちゃんとにこちゃん、本当に仲がいいなぁ~。

二人を先に行かせたのは、お邪魔をしてしまったお詫びですっ♪


さて、穂乃果ちゃんを起こしに行かなきゃ…


……ってあれ?


建物の陰に見えるのって…穂乃果ちゃん?


ことり「穂乃果ちゃん!」

私は駆け寄るけれど…

穂乃果「………………………」

気づいてないの…?

ことり「ほーのーかーちゃーん?」

穂乃果「………………………」

ことり「海未ちゃんたち行っちゃったよ?ことりたちも早く………」ハッ



そう言ったところで、私のしたことはとんでもないことだったのかもしれない、と気付きました。



穂乃果「………海未ちゃん…」

穂乃果「…う、み、ちゃん……なん、で…」

穂乃果「なん、で…っ…にこ、ちゃん……」
 
211: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/11(水) 18:35:44.70 ID:kkx9wPzK.net
<にこside>


海未「…」

にこ「…」


海未「あ、あの…!」
にこ「あのさ…!」

にこうみ「「……」」


にこ「…海未から、どうぞ」

海未「いいえ、にこから…」

にこうみ「「…………………」」


ことりに見送られながらかれこれ10分ほど歩いているわけだけど…

さっきからずっとこんな調子で会話らしい会話はひとつもなかった。

これじゃあ埒が明かないわ。

こういうときは、やっぱり上級生が先に言うべきよね。

私はひとつ息を吸った。




にこ「…海未」
 
212: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/11(水) 18:36:18.67 ID:kkx9wPzK.net
私が足を止めると、斜め後ろからついてきていた海未も止まる。

海未「…はい」

海未の返事が聞こえると、私は振り向かずに言った。

にこ「…さっきは、ごめんなさい」

にこ「私、あんたみたいに素直じゃないし、それに不器用だから…」

にこ「突然腕組まれて。離してって言っても聞き入れられなくて。挙げ句の果てにことりにもからかわれて。とんだとばっちりよね」

にこ「あのときは頼りなさいなんて言ったけど…あれ、取り消してほしい」

にこ「今は…対等な立場に…、もっと、海未と仲良くなりたいって思ってる!」

にこ「だから…だから…っ!」


一気にまくし立てたはいいけれど、言ってることがメチャクチャな上に、途中から色んな感情が押し寄せてきて、言葉が続かなくなる。

そんなとき。

握っていた手に、ギュッと力が込められたのがわかった。
 
213: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/11(水) 18:36:41.97 ID:kkx9wPzK.net
海未「…にこが不器用なことくらい、とっくに気づいています」

海未「ですが…私はこれでも、にこにはとても感謝しているんですよ?」

海未「私が倒れたとき、真っ先に駆け寄ってくれたこと。もっと頼りなさいと言ってくれたこと。私を心配して、家まで来てくれたこと」

海未「ウォーキングの後も、走ってまで再び来てくれて、平然を装っていたのでしょう?汗でわかります」

海未「もし差し支えなければ、私もにこの支えになりたい…、もっと仲良くなりたいです!」

海未「だから…」



気がつくと、目の前には海未の顔があった。



海未「これからも、よろしくお願いします、にこ」

にこ「海未…」

柔らかく微笑む彼女はまるで光のようで…



にこ「…こちらこそ」ニコッ


やっぱり、かなわないなぁ。


………今日の私は、どうかしている。
 
216: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/11(水) 21:56:05.55 ID:kkx9wPzK.net
<海未side>



海未「はぁ……」

教室に入ってから、何度目かわからない溜息をつく。

原因はもちろん…


ヒデコ「ーーあれ?今日は穂乃果たち来てないの?」

フミコ「ほんとだ、2人が休むなんて珍しいねぇ」


あの後、ことりがせっかく先に行かせてくれたおかげで、私たちは朝練にギリギリ間に合うことができました。

この時点でことりたちの遅刻は決定的でした。とはいえ、いつもの経験からして、穂乃果は寝坊しても朝練の途中からは参加できていたはずなのですが…

朝練は疎か、もうすぐ朝のホームルームが始まろうとしているのに、2人はまだ学校に着いていないのです。
 
217: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/11(水) 21:56:35.67 ID:kkx9wPzK.net
ミカ「ねえねえ園田さん、今日は穂乃果たちと一緒じゃないの?」

海未「はい、たまたま今日は…」

フミコ「2人のこと、何か聞いてる?」

海未「いえ、何も…。心配です…」

ヒデコ「海未ちゃんも知らないのか…」

ミカ「そんなぁ…。どうしちゃったんだろう」

海未「穂乃果はともかくことりは来てもいいはずなんですが…」

ああ、こんなに心配することになるなら、あのときことりと一緒に様子を見に行くべきでした。


そうしているうちに、ホームルームまで、あと1分…。

心の中で、どうしようもない後悔が渦巻く。

ーーそのときでした。



ガラッ!




穂乃果「んはぁ~~~っ!遅刻セーフっ!」

海未「…!」
 
218: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/11(水) 23:16:27.04 ID:kkx9wPzK.net
海未「穂乃果っ!」タッタッタ…

穂乃果を見た瞬間、いてもたってもいられなくなって、側に駆け寄る。

海未「穂乃果!?今日はどうしたんですか、こんなに遅くなるなんて…」

穂乃果「…っ、」

穂乃果「ご、ごめんね~、完全に寝坊しちゃって…」

海未「もう…本当に心配したんですよ!?」

穂乃果「えっ、海未ちゃん、穂乃果の心配してくれたの!?」

海未「え、ええ、まあ…」

穂乃果「……そっかぁ~。嬉しいなぁ…」エヘヘ

海未「……」


穂乃果「あっ、ヒデコ、フミコ、ミカ、おっはよ~!」




なぜでしょう…穂乃果の様子がおかしい…?

どうしてさっき一瞬目を逸らしたんですか…?

そういえばことりの様子も変です…

さっきから終始無言でうつむいて…



ことり「………」



私がいない間にいったい何が…?
 
231: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 13:18:50.61 ID:Q588ob7j.net
<ことりside>



どうしよう。私のせいだ……

私が、もっと早く気づいてあげればこんなことにはならなかったんだ。


朝、海未ちゃんたちと会った瞬間にわかったの。

にこちゃんは、まだ自覚してないみたいだけど、わずかだけど、海未ちゃんに特別な感情を抱いているのだと。

たぶん、腕なんか組んでなくてもわかったと思う。

だから、私はにこちゃんを応援してあげたいと思った。

そのためにわざと煽るようなことも言ったし、ふたりの時間を作ってあげたりもした。

私のしたことは間違ってない。

…つもりだった。


誤算でした。穂乃果ちゃんも海未ちゃんが好きだったなんて、今日まで気づかなかったのだから…
 
232: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 13:19:24.48 ID:Q588ob7j.net
私は、親友を裏切った。

小さい頃からいつも一緒にいた、初めてできた友達を裏切ってしまった。

今ならわかるよ。

穂乃果ちゃんは、にこちゃんよりもずっと前から、海未ちゃんが好きだったんだよね。

自覚できるくらい、強い想いを抱いていたんだよね。

でもそんな自分自身に困惑して、誰にも迷惑をかけないようにって、胸の中に秘めたままだった。

なんで私は穂乃果ちゃんの想いには気づけなかったの?

ずっと一緒にいたのに?

つらかったよね。

長年の想いびとがもしかしたら自分以外の誰かにとられちゃうかもしれないんだもん。

そして…そのきっかけを作ってしまったのは私。

私のせい…

私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせ

先生「……なみ」

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

先生「…おい、南」

ことり「……はっ」
 
233: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 13:19:49.91 ID:Q588ob7j.net
いけない…。今は、現代文の時間だった。

先生「どうした?具合でも悪いのか」

ことり「だ、大丈夫です、すみません…」

先生「集中しろよ。…252ページの5行目から、読んで」

ことり「はい…。『明くる日、彼は……


正直、教科書の内容なんて全然頭に入ってこなかった。

ただ……

ことり「…っ」

過ちを犯した主人公に対し、その友人が叱責する台詞。

この言葉だけは、私の心臓を抉り、脳裏に焼きついて離れなかった。



ーー『自分で蒔いた種だ』
 
237: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 13:52:06.83 ID:Q588ob7j.net
そうだ…

これは、自分で蒔いた種なんだ。

私には、最後まで、責任を持って見守る義務がある。

いや、見守りたい…!

こうなっちゃった以上、全員が幸せになるのは無理なのかもしれない。

誰も傷つかずに終わることはきっとできないと思う。

でも、穂乃果ちゃんにも、にこちゃんにも、海未ちゃんにも、納得して終わってほしいから…


だから私はーー

>>240
1.まずは穂乃果ちゃんを応援
2.このままにこちゃんを応援
3.その他(内容を添えて)
 
240: (茸)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 14:00:16.93 ID:9YI38eAk.net
2
 
241: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 14:47:48.52 ID:Q588ob7j.net
だから私は、このままにこちゃんを応援する!

にこちゃんはまだ海未ちゃんへの気持ちに気づいていないみたいだし…

もし穂乃果ちゃんと海未ちゃんがうまくいっちゃった後に自覚することになったら、きっとつらいもんね。

でもね、

ことりはにこちゃんは応援するけど、海未ちゃんには介入しません!

にこうみが成立するかどうかは…

にこちゃんの行動次第、ですよ♪
 
246: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 18:28:00.43 ID:Q588ob7j.net
ーー昼休みーー

<にこside>



はぁ~っ、やっと午前の授業終わったわ…

残りの授業は数Ⅱと古典と世界史…

それから屋上で練習して…

そういえば穂乃果とことりは朝練中には来れなかったみたいだけど、ホームルームには間に合ったのかしら。

にしても、海未にあんなに心配させるくらいなら、やっぱり4人で遅れてったほうがマシだったわ。

あの子のつらそうな顔なんて、もう見たくないもの…


……って、にこったらまた海未のこと考えて…!

対等になりたいなんて言ったくせに、やっぱり過保護なのかしら…

どうも妹たちのせいで性格上そうなっちゃったみたいね。


さーて、部室でお弁当でも食べましょうか…

そう思って席を立ったとき。

名前を呼ばれた気がして廊下のほうを向くとーー


にこ「…ことり?」
 
247: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 18:28:58.74 ID:Q588ob7j.net
スタスタスタ…

えぇっと…2年生の教室って、確かこっちよね…?

ことりは海未が呼んでるなんて言ってたけど…

な~んか怪しいのよね~

海未の性格なら、話があるなら自分から来そうなものだし。


それでも教室に向かおうとしている自分がいるのは事実なのだけれど。



にこ「ーー着いたわ。えぇっと海未は…」

教室内をキョロキョロと見渡してみるとーー

……いた。

周りの女子たちがきゃーきゃーと騒ぎながらお弁当を食べている中、ただひとり黙々とノートをとっている黒髪の少女が。

…仮にも先輩を呼び出して待ってる人の態度にはとても見えないんですけど。

穂乃果もいないし、完全にことりの策略じゃない!

さて、話があるというのは嘘だってわかったわけだけど…


この後の展開 >>250
 
250: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 18:41:48.35 ID:PuB7/hwP.net
一緒にお弁当を食べる
 
251: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 19:06:51.79 ID:Q588ob7j.net
話があるというのは嘘だってわかったというのに…

にこ「海未!」

こっちから呼んでしまう自分はどうかしていると思う。

でも。

海未「…にこ!」

なんて、嬉しそうな顔をして駆け寄って来られたら、やっぱり声を掛けてよかったって思える。

海未「どうかしたんですか?珍しいですね、にこが来るなんて」

にこ「あ、えぇっと…海未って、お弁当もう食べた?」

海未「いえ…まだですけど…」

にこ「そっか」

にこ「じゃあ、一緒に食べない?」ニコッ
 
253: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 22:43:36.35 ID:Q588ob7j.net
ーー部室ーー

海未「ふふっ」

にこ「ど、どうしたのよ急に」

海未「すみません、にこからお弁当に誘われるなんて思いませんでしたから」

にこ「た、たまたまよっ!海未がひとりでいたから、スーパーアイドルにこにーが誘ってあげようかなーって…!」

海未「たまたまでも、嬉しいですよ」

海未「今日は穂乃果もことりもいませんでしたので…」

にこ「ふ~ん、寂しかったんだ」ニヤニヤ

海未「えっ!?いや、その、えぇっと…!」アワアワ

海未「………………そう、です…///」

にこ「もう…最初からそう言いなさいよ」
 
海未「に、にこにだけは言われたくありません!」

にこ「…あんた、見てて飽きないとか言われない?」クスッ
 
254: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 22:44:03.84 ID:Q588ob7j.net
にこ「そういや、穂乃果とことりはどこ行ったのよ」

海未「『衣装作りを手伝ってほしい』とかで、ことりが穂乃果を連れ出していってしまって…」

海未「私も手伝いを申し出たのですが、『海未ちゃんは忙しそうだからいいよ』と言われました。…こんなときににこが来てくれるなんて、私は運がいいのですね」

にこ「なるほどね」

にこ(ことりも随分手の込んだからかい方を…)
 
にこ「それはそうと、忙しいっていうのはさっき書いてたノートのこと?」

海未「たぶん、そうだと…。私が入院していた日の分の授業ノートを、ことりに借りたので写していたんです」

にこ「真面目ねぇ~。にこなら授業中に内職するわよ」

海未「そんなことしたら、その授業が聞けないじゃないですか」

にこ「何言ってるの!お弁当食べられずに昼休みが終わるほうが問題でしょ!?」
 
255: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 22:44:31.49 ID:Q588ob7j.net
海未「にこのお弁当は彩りも綺麗で可愛いですね」

にこ「どうしても妹のお弁当と中身がかぶっちゃうのよ。…海未のは思ってた通り、健康的な和風弁当ね」

海未「はい。このゴボウの甘辛揚げ、とっても美味しいんですよ。よければ一口どうぞ」

にこ「ほんと!?いただくわ。…私の卵焼きもいいわよ」

海未「いいんですか!?いただきます!…甘みと塩気が絶妙ですね!美味しいです」

にこ「ゴボウも美味しいわ!香ばしくてサクサク…。今度作り方教えてちょうだい」

海未「ええ。私でよければいつでも」

にこ「にしても、随分と時間が過ぎるのが早いのね」

海未「本当ですね。もう教室に戻らなければ」

にこ「ひ、久しぶりに楽しかったわ。…ありがとう」

海未「こちらこそ。部室で食べるのも新鮮でした。また誘ってくださいね」

にこ「ええ。…さ、戻りましょう」

海未「はい」

にこ「ーーあ、そうそう」

海未「?」

にこ「…ノート写し、無理するんじゃないわよ?」
 
256: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 23:01:57.15 ID:Q588ob7j.net
ドロドロに疲れたので箸休めほのぼの

本題ですが、にこうみ正規ルートでいこうと思うので
今後の穂乃果ちゃんについて多数決をしたいと思います
需要が多いほう書きたいので見てる方もしいたら協力よろしく

1.当たって砕けさせる
2.とことん病ませる

>>361まで
 
257: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 23:02:36.84 ID:Q588ob7j.net
間違えた>>262
 
258: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 23:02:52.40 ID:S2Fvy3ts.net
砕けたらより一層病む気が...

1で
 
259: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 23:03:36.51 ID:oPluIYPx.net
2
病み穂乃果
 
260: (なっとう)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 23:05:34.18 ID:d/5ZJZba.net
1
 
261: (かぶらずし)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 23:08:52.54 ID:CM1Ra+k6.net
すまんな病んでる子好きなんや
2
 
262: (湖北省)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 23:09:25.60 ID:yWE6/112.net
2
 
263: (たこやき)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 23:09:26.42 ID:pf5YMlE2.net
2
 
264: (新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 23:11:58.47 ID:bgObpUJz.net
ホノカチャン…
 
265: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/12(木) 23:12:00.21 ID:Q588ob7j.net
結果2-3で穂乃果ちゃんは病みます

最後は明るく終われるようにがんばる
 
280: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/13(金) 12:43:34.56 ID:ccsR6Yf1.net
<穂乃果side>



いつからかなんて、わからない。

気づいたら、目で追ってて。

おかしいよね?女の子どうしなのに。

伝えるのだって怖かった。

だから隠したんだ。

この想いは、誰にも気付かれないように。

でも、今日、隠すことの怖さにやっと気づいた。

この想いを誰に知られることもないまま、ずっと大好きだった人が奪われてしまう怖さを。

このままでいたら、海未ちゃんはにこちゃんと……?

そんなの、嫌だよ……

海未ちゃんは、これからも穂乃果と一緒だもん…

海未ちゃんの隣はいつも穂乃果。



穂乃果以外なんて………認めない。
 
281: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/13(金) 12:44:08.23 ID:ccsR6Yf1.net
<海未side>



穂乃果「」ムス-ッ

…どうしてこうなってしまったのでしょう。

海未「穂乃果?本当にどうしたんですか?機嫌を直してください」

穂乃果「」ムス-ッ

にこと別れ、教室に帰ってきたと思えば、さっきからずっとこの調子です。

海未「あの…私が悪いことをしたなら謝りますから…。はっきり言ってください!」

痺れを切らしてそう言うと、穂乃果はようやく口を開く。

穂乃果「だって」

そしておもむろに私のお弁当箱を指差し。

穂乃果「海未ちゃん忙しいって言ってたくせに穂乃果たちが帰ってきたら教室にいないし、やっと帰ってきたと思ったらお弁当持ってるし。どうせ別の場所で食べるんなら穂乃果のとこ来ればよかったのに海未ちゃ

海未「ちょ、ちょっと待ってください!私は忙しいなんて一言も…」

あれはことりが勝手に、と付け加えことりの方を見ると、なんだかバツの悪そうな顔をしている。

ことり「ごめんね。邪魔しちゃ悪いかなって…」

海未「あ、いえ…。むしろ、お気遣いありがとうございます、ですね」


海未「…それに、私も楽しかったですし」

後から考えると、これが地雷だったのでしょうか。


穂乃果「」ビクッ 

ことり「あ」



穂乃果「……海未ちゃん、今まで誰といたの」
 
284: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/13(金) 15:38:00.01 ID:ccsR6Yf1.net
海未「え?」

穂乃果「お弁当。誰と食べてたの」

海未「に、にこと、食べてましたけど……」

穂乃果「ふーん」

穂乃果「海未ちゃんは穂乃果よりにこちゃんのほうが好きなんだ」

海未「はぁ!?何を言ってるんですか、穂乃果…!?」

穂乃果「もう穂乃果なんて飽きちゃったんだね」

海未「そんなこと…!穂乃果たちがいなかったからにこが誘ってくれただけです!」

穂乃果「忙しくないなら、来てくれればよかったのに」ボソッ  

海未「穂乃果…?」

海未「…もしかして、拗ねているのですか?」

穂乃果「…」

海未「…明日は一緒に食べましょうか、穂乃果」

穂乃果「」パァァァ 
穂乃果「いいの!?約束だよっ!?」

海未「い、いつも一緒に食べていたじゃないですか」

穂乃果「そうだよね~、穂乃果と海未ちゃんはいつも一緒だよね~」

穂乃果「海未ちゃんだぁいすき!!」ダキッ

海未「ほ、穂乃果!?いきなり抱きつくのは…!」

ことり (なんか蚊帳の外にされてる気が…)



ことり(それはそうとしてにこちゃん…?早くしないと、穂乃果ちゃんにとられちゃいますよ~)
 
285: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/13(金) 15:38:39.36 ID:ccsR6Yf1.net
ーー放課後ーー

海未「ほ、穂乃果…いいかげん離れてください…」

穂乃果「えー、なんでさー」

やっぱり今日の穂乃果は何かおかしい…

帰りのホームルームが終わって席を立った瞬間、私の腕にまとわりついて離れないのです。

海未「今日も弓道場に寄ってから屋上に向かいます」

穂乃果「えー!?またぁ!?」

海未「大会が近いので。それに、弓道は1日弓を引かないだけで、その分を取り戻すのに3日もかかるんですよ?ただでさえ不覚にも入院という事態になってしまったというのにーー

穂乃果「も、もういいよわかったよぉ~!」

ことり「それじゃあ穂乃果ちゃん、ことりたちは部室行こう?海未ちゃん、がんばるのもほどほどにね♪」

海未「はい、ありがとうございます」

穂乃果「むぅ…早く戻ってきてね、海未ちゃん♪」

海未「善処します…」




海未「…はぁ」

本当に今日の穂乃果はどうしたんでしょうか…

何か悩みでもあるのでしょうか?

それで孤独を感じているとか…

でもそれならことりでもいい気がするのですが…

しかしこのままだとーー


海未「あのことが言いにくいです…」
 
288: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/13(金) 21:59:10.44 ID:ccsR6Yf1.net
ーー次の朝ーー

海未「ーーでは、いってきます」



海未「…懲りないのですね、あなたも」

にこ「べ、別にいいでしょ、好きでやってるだけなんだから」

海未「にこは随分と物好きなのですね」

にこ「うるさいわねー。にこはあんたが最近弓道の練習で忙しいみたいだから、またあんときみたいに入院沙汰になってμ'sの活動に支障が出ないかが心配なだけよ!」

海未「…その節は、本当に申し訳ありませんでした」

にこ「ああもう!いちいち真に受けなくていいの!今更どうこう言ってもしょうがないわ」

にこ「でも…またあんなことになったら、今度は許さないわよ?」

海未「にこ…」

にこ「まっ、にこがそんなこと、絶対させないけど!」
 
289: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/13(金) 22:00:54.86 ID:ccsR6Yf1.net
海未「にこ」

にこ「?」

海未「見て欲しいものがあるんです」サッ

にこ「…これは?」

海未「病院のベッドで書いた歌詞です」

海未「…3日前に私が倒れたとき、μ'sのみんなは遅くまで病院に残ってくれました。穂乃果は最後まで付き添って手を握っていてくれました」

海未「にこはメールを送ってくれたり、わざわざ家まで訪ねてきてくれたりしました。ことりはわかりやすくまとめたノートを貸してくれました」

海未「そこで、改めて気づいたんです。…私は、多くの人に支えられているのだな、と」

海未「だから、この幸せな気持ちを伝えられないかと思い、詩を綴ったのです」

海未「さっきにこの言ったように、私はμ'sのみんなには迷惑をかけました。ですが…」

海未「こういうのも悪くないなと…そう思ってしまったんです」

海未「こんな私は罪深いでしょうか」

にこ「……」

にこ「昨日海未に言われたこと、そのまま返すわ」

にこ「あんたは本当に…馬鹿ね」
 
290: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/13(金) 22:01:31.42 ID:ccsR6Yf1.net
海未「え?」

にこ「迷惑だったなんて、誰も思っちゃいないわよ」

にこ「人が誰かに支えられているなんて、当たり前じゃない」

にこ「それに、誰かがつらいときは支えてあげる、これも当たり前のことよ」

にこ「生真面目で鈍感なあんたのことだから、どうせ自分は人に頼ってばかりなのにとか思ってるんでしょうけど」

にこ「海未は充分頼られてるわよ。…私も含めて、少なくともμ's全員には」

にこ「だから、そんなふうに気負う必要なんかないの!わかった?」

海未「は、はい…」

にこ「…まったく。病院のベッドは休むところよ」

海未「すみません。どうしても書きたくてつい…」

にこ「こういうところが心配なのよね~。…まあでも、」

にこ「……とてもいい詩ね」
 
291: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/13(金) 22:02:02.86 ID:ccsR6Yf1.net
にこ「ーーあれ?ことりはまだ出てきてないの?」

海未「おかしいですね。この時間にはいつも外で待っているはずなのですが……あっ」

にこ「どうしたの!?」

携帯電話を開くと。

『新着メール 1件』

海未「ことりからです!」

『今日は先に穂乃果ちゃんの家に行ってるね!』

にこ「…どういうこと?」

海未「やはり昨日何かあったのでしょうか…。穂乃果の様子がおかしくなったのも、あれからですし」

にこ「穂乃果の様子が?詳しく教えて」

海未「はい…。それはーー」


と、そのときでした。


プルルルルルル…  プルルルルルル…


手にしていた携帯電話が鳴ったのです。
 
293: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/13(金) 23:37:52.73 ID:ccsR6Yf1.net
海未「ことりから…?」

にこ「…嫌な予感しかしないわね」


海未「ーーもしもし、ことりですか?」

ことり『海未ちゃん!大変なの!!』

海未「な、何があったのですか!?」

ことり『あのね、穂乃果ちゃんが…!とにかく早く来て!海未ちゃんじゃないとダメなの!』

海未「穂乃果が!?わかりました、すぐ行きます」


海未「にこ、聞いてましたか?」

にこ「ええ。なんか思ったよりヤバそうね」

海未「そうですね…走りますよ!」



にこ「ねえ海未」

海未「何ですか?」

にこ「海未は頼られてるでしょ、こうやって」

海未「…………こんな形で知りたくはありませんでしたけどね」
 
295: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/14(土) 00:49:56.02 ID:Sw+y3160.net
しばらく走ると、穂むらの前でことりが手を振っているのが見えました。


ことり「うみちゃ~ん!にこちゃ~ん!」

海未「ことり!」

にこ「はぁ…、はぁ…、やっと追いついた…」

海未「ことり、穂乃果がどうしたのですか!?」

ことり「それがね…>>297なの!」



(ごめんなさい我に"病み"を教えてください)
 
297: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/14(土) 00:56:55.20 ID:6XEfsM5L.net
リストカットして血だらけ
 
309: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/14(土) 10:27:12.49 ID:Sw+y3160.net
ことり「穂乃果ちゃんが…っ」

ことり「ほのか、ちゃんが…か、カッター、持って……」

海未「…っ!」


気づけば私は駆け出していました。

あの時のにこもこんな気持ちだったのでしょうか。

海未「穂乃果…!穂乃果…っ!」

とにかく無我夢中でした。

自分の家並みに慣れた階段を無作法に駆け上がり、乱暴に開け放たれた奥のドアの向こうに、飛び込むようにして足を踏み入れる。

海未「穂乃果!!」

ーーが、しかし、私の足はそこで止まってしまいました。

穂乃果「うみ…ちゃん…」

海未「…嘘……」


そこには私の知っている、朝日のような太陽なんてなかった。


ただ眼に映るのは



ーーー赤。
 
314: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/14(土) 19:57:05.17 ID:Sw+y3160.net
海未「…なに…してるんですか…ほのか…」

穂乃果「ごめん、ね、うみ、ちゃん…」

穂乃果「ほのか、もう…つかれちゃった」


そう溢す幼馴染の目は虚ろで。

今まで何度も私を導いてくれた左手、

その手首は今、皮肉なほどに鮮やかな赤色に染められていて。

震える右手には、細いカッターナイフが握られていた。

これがいわゆるリストカットというものであることに気づくのにしばらくかかりました。

…いいえ、認めたくなかっただけなのかもしれません。

だってーー原因はきっと、私でしょうから。
 
315: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/14(土) 19:57:39.38 ID:Sw+y3160.net
<穂乃果side>



ちょっと、魔が差したっていうかさ。

自分の中では平常心を保っていたつもりだったんだけど

気づかないうちに心は限界点を迎えていたのかもしれない。

抑えてたつもりだった。隠してたつもりだったよ。

この歪んだ感情を。

だって、嫌われたくなかったから。

嫌われるくらいなら"幼馴染"でいいや、って。

だけど、独占欲は強まっていくばかりで。

そんなときに見ちゃったんだ。

海未ちゃんとにこちゃんが仲良さそうに一緒に登校してるの。

そこからは自分が自分じゃなくなったみたいな気分だった。

むしろやっと本性が出た感じなのかな。

わかんないや。


ねえ、どうしたら穂乃果だけを見てくれるの?




「ほのか、もう…つかれちゃった」
 
333: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/15(日) 08:27:54.76 ID:xOaaiZ8w.net
穂乃果「…うみちゃん」

海未「何ですか」

穂乃果「…なに、するの」

海未「何って…止血しませんと」

穂乃果「そうじゃ、ないよ…だって…それは…」

…海未ちゃんのお気に入りのハンカチじゃん。

いつか穂乃果が「ワンポイントの青いお花が可愛いね」って言ったら「そうですか?私も気に入っているんです」って嬉しそうに笑ってたの、覚えてるんだよ。

海未「大丈夫です。これは昨日洗ったばかりの未使用のものなので、衛生的に問題はないかと」

穂乃果「ちがうよ…そういうことじゃ…」

だけど海未ちゃんはなんのためらいもなく自分のハンカチを穂乃果の左手首に充てた。

白地の布が、みるみるうちに赤く染まる。

海未ちゃんのハンカチが、穂乃果の血の色に染まっていく。

海未ちゃんの私物が…穂乃果の色に……


…あはは。

嬉しいなあ
 
334: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/15(日) 08:28:19.98 ID:xOaaiZ8w.net
このまま海未ちゃんの心も、穂乃果でいっぱいになっちゃったらいいのに。

ねえ、何年片思いしてきたと思ってるの。

いいかげん気づいてよ。

いや、そんな鈍感なとこも大好きなんだけどね。

でもなんで?

穂乃果はこんなに海未ちゃんが大好きなのに

なんで海未ちゃんは穂乃果以外の人と仲良くしてるの?

ねえなんで。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

どす黒い感情が、渦を巻く。


でも、それと同時に。

「なんで」


「…つらいよ」


「…くるしいよ」


吹っ切れたように、いろんな感情が、両目から何か熱いものが、こみ上げて、流れる。


「穂乃果」



やさしく名前を呼ぶ声が聞こえたと思った時には、


私は、大好きな、あたたかい腕の中にいた。
 
335: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/15(日) 08:28:43.75 ID:xOaaiZ8w.net
海未「…私のせい、ですよね」

私を包み込む腕の主は言う。

海未「ごめんなさい…」

海未「穂乃果の様子がおかしいことはわかってたんです。でも、…私は何もしてあげられなかった」

海未「穂乃果を見捨てたのと同じです」

穂乃果「ちがう、よ…!うみちゃんは…わるくないよ…」

海未「いいえ、私が悪いんです。だってーー」


海未「あの夜、約束したじゃないですか。『穂乃果の問題も、私の問題』だと」

穂乃果「あ…」

海未「何か悩みがあったのでしょう?強引にでも聞き出していれば、こんな事態にはならなかったはずです…!」

海未「本当に、ごめんなさい、穂乃果…っ」



ーーちがう。私は海未ちゃんを悲しませるために、あんな約束をしたんじゃない。

ごめんなさいは、こっちのセリフだよ。



穂乃果「…あの、ね、うみ、ちゃん」

私は無意識のうちに口を動かしていた。

その声は涙で掠れていたのだけれど。




いつのまにか、右手からカッターナイフは抜け落ちていた。
 
336: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/15(日) 08:29:15.05 ID:xOaaiZ8w.net
穂乃果「…ほのかは、ね、うみちゃんに言えなかったから…くるしかったの」

海未「どういう…ことですか」


穂乃果「…わらわないで、きいて、くれる…?」

海未「…はい」

穂乃果「…けいべつ、しない?」

海未「聞かせてください、穂乃果」



その言葉に、私はゆっくりと顔を上げる。

真剣で、でもどこか憂いと悲しみを秘めていて、そして、何より安心できる瞳が、たまらなく愛おしい。

溢れてくる、感情。

ずっと言えなかった言葉。

言いたかった言葉。



あのね、


穂乃果「海未ちゃん、私ーー」





穂乃果「海未ちゃんのことが、ずっと、大好きでした」
 
337: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/15(日) 10:06:13.91 ID:xOaaiZ8w.net
<海未side>




海未「…え…どういう、こと…ですか」


穂乃果の口から紡ぎ出された言葉は、妙に熱がこもっていて。


穂乃果「ごめんね、いきなり言われても…困るよね」

穂乃果「…でもね、そのまんまの意味だよ」

海未「そ、それって…」

それって、つまり…そういうこと、なんですか…?

しかし、それ以上のことを質すことは叶いませんでした。



穂乃果「………やっと、言えた」パタッ 


海未「穂乃果…?」






穂乃果「…」ス-ス-  


苦しみを吐き出して安心したのでしょうか。

私の肩に頭を預けて眠っていました。

目の下にクマができていましたから、ろくに睡眠もとっていないのでしょう。



海未「…おやすみなさい、穂乃果」


…今度は、私から。

あなたが起きるまで、手を繋いでいますね。
 
338: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/15(日) 10:39:34.37 ID:xOaaiZ8w.net
…………
……



ことり「ーーよかった、落ち着いたみたいだね」

にこ「…なんとかね」

ことり「それじゃあ…邪魔者は退散しよっか」

にこ「>>339

1.「…」
2.「…そう、ね……」
3.「そうね」
 
339: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/15(日) 10:43:11.35 ID:4mM5DEww.net
3
 
340: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/15(日) 11:02:13.72 ID:xOaaiZ8w.net
にこ「そうね。邪魔しちゃ悪いわ」

ことり「…」

にこ「ことり?」

ことり「…何も、感じないの?」

にこ「どういうこと?」

ことり「…ううん、なんでもない」

にこ「応援しましょうよ、あの2人を」

ことり「うん、そう…だね」

ことり「にこちゃんが、そう言うなら」

にこ「なんでにこなのよ」

ことり「…なんとなく、かな♪」

にこ「よくわかんないわねぇ…」


にこ「ま、とにかく早く行きましょ!連絡もしてなかったし、エリーも怒ってるんじゃない?」

ことり「えぇ!?にこちゃん早いよ~!」
 
341: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/15(日) 11:03:16.69 ID:xOaaiZ8w.net
▼ルート3: ほのうみ
 
355: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/16(月) 15:08:42.35 ID:Yv1GA2oG.net
ーーどれくらいこうしていたでしょうか。

昼の明るい日差しが差し込む、少し荒れた部屋の中。


穂乃果「…、ん…」

穂乃果「…あれ……うみちゃん、なんで…」

海未「目が覚めましたか、穂乃果」

穂乃果は寝起きの目をパチパチさせながら、辺りを見回しました。

穂乃果「がっこう…は…?」

海未「朝に電話して、お休みしました」

穂乃果「そっか…。ごめんね、巻き込んじゃって」

海未「いえいえ。それより、具合はどうですか?」

穂乃果「うん、全然平気だよ。ちょっと…痛むけど…」

穂乃果「包帯、巻いてくれたんだね。ありがとう」

海未「…穂乃果」

左手首を見て自責の表情でうつむいてしまう穂乃果。

こちらまでつらくなってきますが、しかし、

これだけは聞いておかなければならない。

今、聞いておかなければならない。

私は意を決して、口を開きました。



海未「…………なんで、あんな馬鹿なことしたんですか」
 
356: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/16(月) 15:09:09.26 ID:Yv1GA2oG.net
穂乃果「そう、だよね。話さなきゃ、ね…」


穂乃果「……自分でも、わからないんだけど」

ベッドから起き上がった穂乃果は、淡々と話し出しました。

穂乃果「どうして海未ちゃんはにこちゃんと仲良くしてるんだろうって、考えちゃって」

穂乃果「考えてたら、眠れなくなって」

穂乃果「…そしたらね、急に海未ちゃんの声が聞きたくなっちゃって」

穂乃果「電話、かけようかなって、思ったんだけど」

穂乃果「海未ちゃん、途中で起こされるの、苦手でしょ?だから、掛けちゃダメだって、自分に言い聞かせてたんだ」

穂乃果「でも…やっぱり寂しくって…」

穂乃果「それで…自分が、嫌になって…」

穂乃果「それで…それで、気づいたら、」

…あのカッターナイフを手にしていた、というところでしょうか。

海未「…もういいです、穂乃果。ごめんなさい、私は今まで、あなたにつらい思いをさせてきてしまったのですね」

穂乃果「っ、海未ちゃんのせいじゃないよ…」


私は、床に転がったカッターナイフを見つめる。

そして、穂乃果の手を離し、

おもむろに近づいた。
 
357: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/16(月) 15:09:39.49 ID:Yv1GA2oG.net
海未「…」

穂乃果「海未ちゃん…?」


考えるより先に、手が動いた。




シャ..........ッ





海未「………っ、ぁ」





穂乃果「うみ、ちゃん…なに、やってるの…」
 
358: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/16(月) 21:42:22.82 ID:Yv1GA2oG.net
左の手のひらから、どくどくと真っ赤なものが溢れてくる。

海未「私としたことが…手を滑らせてしまいました」


穂乃果「なん、で……」

海未「床に落ちていると危ないので、片付けようと思ったのですが…」

海未「刃が出たままだったとは、思いませんでした」

穂乃果「ほのかの、せい……」

海未「…そうですね、穂乃果の、せいです」

穂乃果「…っ」
 
359: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/16(月) 21:42:49.45 ID:Yv1GA2oG.net
穂乃果「…」

海未「……明後日からの3連休、弓道部の合宿があります」

穂乃果「…!」

海未「ですが…」

海未「弓手がこれでは、弓を握ることすら叶いません」

穂乃果「それ、って…」

海未「ええ。残念ですが、合宿は不参加ということになってしまうでしょうね。大会が近いというのに…」

穂乃果「…」


海未「ですから」


海未「私はずっと穂乃果と一緒にいなければならなくなりました」

海未「…穂乃果のせい、ですからね」ニコッ



穂乃果「海未ちゃん…」



穂乃果「ありがとう」
 
360: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/16(月) 21:43:47.94 ID:Yv1GA2oG.net
ーー次の朝ーー

海未「ーーでは、いってきます」

海未「…あっ」

家を出て、目の前で待っていたのは、にこではありませんでした。

穂乃果「うみちゃああああああっ、おっはよーっ!」

海未「ほ、穂乃果!いきなり抱きつかないでくださいっ!」

穂乃果「えへへ…だって、早く会いたくって」

無邪気に照れ笑いをする彼女は、私の知っている太陽でした。

海未「今日は早く起きれたのですね」

穂乃果「うん!穂乃果もやればできるんだよ!」

海未「できるなら毎日早起きしてほしかったですけどね…」


と、そこでふと思う。

海未「あの…実は最近にこが家まで来てくれていたのですが、今日は来ていませんね」

穂乃果「ああ、にこちゃんなら…」
 
361: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/16(月) 21:44:14.01 ID:Yv1GA2oG.net
穂乃果「もう、来ないんじゃないかな」

海未「え?」

穂乃果「海未ちゃんは…穂乃果と一緒じゃ嫌?」

海未「そ、そんなことあるわけないじゃないですか!」

私はまだ、穂乃果に恋愛感情としての"好き"という気持ちは持てないけれど…


海未「ずっと一緒、ですよ」

海未「…これからもっと、穂乃果のこと、好きになりたいです」

穂乃果「海未ちゃん…」

穂乃果「…うん!これからも、よろしくね♪」



穂乃果 (それから…)
 
362: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/16(月) 21:44:42.79 ID:Yv1GA2oG.net
*********************

差出人: 矢澤にこ
件名: 明日からのこと

本文:

遅くにごめんさない。
具合はどう?
朝にあんな騒動起こされたんだから、
今度ジュースくらい奢りなさいよね?

で、ここから本題ね。
にこが最近、朝に海未の家まで行ってるのは
知ってる?
海未って、真面目でしっかり者だけど
なーんか心配になるのよね。
脆いっていうか。
だから、支えてあげなきゃな、って思ったの。
実際、海未といるのは楽しかったし、
一緒にいるうちに、もっと仲良くなりたい
っていう思いに変わってはいたんだけどね。

でもやっぱり、海未をいちばんに支える役割を
持ってるのは、にこじゃないわ。
それから、海未がいちばんに支える相手も、
にこじゃない。

明日からは、
あんたが海未の家まで行きなさい。

応援、してやらないこともないわ。


*********************





穂乃果 (にこちゃん、ありがとう) ?
 
363: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/16(月) 21:45:14.73 ID:Yv1GA2oG.net
ーー私たちは、やっぱりいつもとそんなに違わないけれど。

だけどやっぱりいつもより楽しい気持ちで。

二人して左手に巻いている包帯の言い訳をどうしようかなんて、

そんなこともどうでもよくなっていた。





ルート3 good end
 
375: (笑)@\(^o^)/ 2015/03/16(月) 22:53:24.54 ID:68C1fDiU.net
ほのうみもほのにこも大好きなんだ、頼む!
 
380: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 10:40:24.77 ID:Ja43B0II.net
では僭越ながら書かせていただきます
(>>375 ほのにこは予定していませんが)

>>338からの派生です。
まだ構想が定まっていないのでまた迷走するかもですが
よろしくお願いします
 
381: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 10:41:01.66 ID:Ja43B0II.net
▼ルート2 にこうみ
 
382: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 10:41:14.57 ID:Ja43B0II.net
にこ「…そう、ね……」

…何よ、これ。

胸がチクリと痛む。

2人を見ているのが、つらい。

なんでなの…?

そんなことを思っていると。

ことり「にこちゃん」

にこ「な、何?」

ことり「…どうしようもなくつらくなったら、いつでもことりに相談してね♪」

にこ「なっ…!」

まるで心を読んだみたいに。

じゃあ、ことりはコレの原因がわかるの…?

ことり「ふふっ」

ことり「これ以上は、教えられませーん♪」

にこ「ことり…?」




ことり「それじゃあ、もう行こっか。連絡もしてないから、絵里ちゃんも怒ってるかもしれないけど」

にこ「げっ!?ちょ、早く行くわよ!!」

ことり「えぇ!?にこちゃん早いよ~!」
 
383: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 10:41:36.17 ID:Ja43B0II.net
<にこside>



どくん… どくん…


ホントに何なのよ、もう…

さっきから妙に胸騒ぎがする。

心臓の鼓動がうるさくってしょうがない。


いや、でも知り合いがリスカして血だらけになってるのなんて見たら誰だってびっくりするわよね。

でもあの様子だと命に別状はなさそうだし…

なにより海未がついていれば安心だわ。


先生「…矢澤」


だけど…海未こそ心配ね。

全部自分の責任だって背負いこんじゃうんじゃないかしら。


先生「おい、矢澤」


あの子、自分にも他人にも必死になる癖があるから…

ショックで寝込んだりしなきゃいいけど…

そうよ、前だってそうやって倒れ


先生「YA・ZA・WA!!」バシッ 

にこ「いったぁあああ~!何すんのよ!」

先生「何度呼んでも起きないからだろ、授業中に居眠りするな」

にこ「し、してないわよ!」

先生「そうか、じゃあ今の説明聞いてたな?」

にこ「え」

先生「前に書いてある問題、解いてみろ」

にこ「え…え…」


にこ「………ニコ♪」
 
384: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 10:41:58.13 ID:Ja43B0II.net
<キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン 


にこ「はぁ…散々だったわ…」

希「ほんとやなぁ、にこっち」

にこ「あ、希…」

希「にこっち、今日は元気ないなぁ。朝練のときもなんか上の空やったし」

にこ「にこだって考え事くらいするわよ…」

希「へぇ~、にこっちも考え事するんやなぁ」

にこ「…」

希「そういえば、穂乃果ちゃんと海未ちゃん、二人して休みって何かあったんかなぁ」

にこ「」ビクッ

希「…にこっち?」

にこ「…なんでもないわ。…一人にさせてくれる?」ガタッ



希「行っちゃった…」

絵里「ねえ希。にこ、どうしたのよ?追いかけなくていいのかしら」

希「ウチにもわからんけど…一人にさせてあげよ?」

希「次の授業、にこっちは保健室って言っとこう」

絵里「で、でも…」

希「μ'sに入ってからのにこっちがあれだけ悩むって…珍しいやん?」

希「それと、これはあくまでウチの予測でしかないんやけど」

絵里「?」


希「…これは、ウチらが解決できる問題じゃない」
 
388: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 17:36:12.40 ID:Ja43B0II.net
はぁ…、はぁ…、はぁ……

…。


こんなに夢中で走ったのも、あのときーー病院から飛び出してきた夜以来ね。



考えもなしに逃げるように動いた足が向かった先は、屋上だった。



「穂乃果」と「海未」

この2つの名前をとにかく聞きたくなかった。


どくん…、どくん…


この鼓動は、きっと、走ったからというだけじゃない。




『海未ちゃん、私ーー』

『海未ちゃんのことが、ずっと大好きでした』

『そのまんまの意味だよ』




さっきの光景が、脳裏に焼きついて離れない。

そして、それを思い出す度に胸が締め付けられるような感覚を覚えるのだ。

にこ「何なの、これ…」



キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン


授業開始の鐘が鳴る。

今から戻っても怒られるだけだし…


もう少し、ここにいようかな…
 
389: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 17:36:42.52 ID:Ja43B0II.net
<穂乃果side>



ーーどれくらいこうしていたんだろう。

意識の向こうに、明るい日差しを感じて、目を開ける。


穂乃果「…、ん…」

穂乃果「…あれ……うみちゃん、なんで…」

海未「目が覚めましたか、穂乃果」

目を開けて最初に飛び込んできたのは、大好きな顔だった。

穂乃果「がっこう…は…?」

海未「朝に電話して、お休みしました」

穂乃果「そっか…。ごめんね、巻き込んじゃって」

海未「いえいえ。それより、具合はどうですか?」

穂乃果「うん、全然平気だよ。ちょっと…痛むけど…」

穂乃果「包帯、巻いてくれたんだね。ありがとう」

私は左手首を見つめる。

なんて馬鹿なことをしたんだろう。
 
390: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 17:37:06.95 ID:Ja43B0II.net
今まで私がしてたのは、にこちゃんへの中身のない嫉妬だった。

私は、好きっていう気持ちは持っていたのに、何もしなかったじゃないか。

迷惑になるから、というのを口実にして、

ただ、隠していただけ。

臆病になっていただけ。

それなのに、にこちゃんと海未ちゃんが仲良くしだしたら勝手に狂って…

離れていくのが寂しい、怖い、なんて。

こっちのほうが迷惑極まりないよね。


前に海未ちゃんが倒れたときだって

私は動けなかった。

にこちゃんがいち早く駆け寄るのを、

ただ、見ていることしかできなかったんだ。

あの時点で、勝負はついていたんだと思う。


…いや、勝負だって思ってる時点で負け、かな。
 
391: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 17:37:44.70 ID:Ja43B0II.net
穂乃果「海未ちゃん」

穂乃果「穂乃果は海未ちゃんと一緒になる資格なんてなかったんだね…」

海未「穂乃果…?」


あのときから、にこちゃんはごく自然に海未ちゃんを支えようとしていたんだ。

私は幼馴染。

今までずっと一緒にいた。

だから、これからもずっと…なんて。

「海未ちゃんを奪われたくない」なんて。

ほんと、自己中もいいところだよ。

それなのに…

穂乃果「…なんで海未ちゃんは穂乃果に優しくするの」

穂乃果「穂乃果はこんなに最低な人間なのに…」

海未「…!」



ああ、やっぱり馬鹿だ。

なんでこんなこと言っちゃったんだろう。



右頬に、刺激が走った。
 
392: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 17:38:15.80 ID:Ja43B0II.net
海未「はぁ…、はぁ…」

穂乃果「…」

海未「…確かに最低ですね、あなたは」

海未「なぜって…」

海未「あなたのことが大切だからに決まっているでしょう!?」

海未「そうでなければ、今ここにはいません!」

そう叫ぶ海未ちゃんの目には、涙が光っていた。

でもやがて、フッと泣き笑いの表情になって…

海未「そんなに自分を卑下しないでください」

海未「私にとって、あなたは太陽。…大切な幼馴染なんですから」

穂乃果「海未ちゃん…っ」



ーーそっか。やっぱり、『幼馴染』なんだね。

それ以上でも、それ以下でもない。


ふふっ、綺麗にフラれたなぁ…


でも、不思議と心は晴れやかだった。
 
395: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 14:13:35.40 ID:sCpagP+c.net
<ことりside>



ふぁ~、やっと昼休みだ~

穂乃果ちゃんも海未ちゃんもいないから1日が長いな~

お弁当もことり一人か…

μ'sの誰かのところに混ぜてもらおうかな…



…あ、そうだ!

こんなときこそ、ですよね♪
 
396: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 14:14:19.52 ID:sCpagP+c.net
ことり「え~と、この時間なら、いるはずだよね」

ガラガラガラ.....

ことり「に~こ~ちゃ~ん、お邪魔しま~す♪」



にこ「…」



あ、あれ…?



ことり「にこちゃ~ん?」




にこ「……」カチカチ




…にこちゃん、すっごく真剣にケータイと睨めっこしてる……?

ことりに気づいてないのかなぁ~


今度は机の向かい側まで行って…


ことり「に~こ~ちゃんっ!」ドンッ


にこ「うわぁああぁああああっっ‼︎‼︎‼︎‼︎」
 
397: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 14:14:49.69 ID:sCpagP+c.net
にこ「いいいいつからそこにいたのよ!『入ります』くらい言いなさいよね!」

ことり「お邪魔しま~すって、言ったよぉ?にこちゃん、全然気づいてくれないから…」

にこ「あ、そう…。…ごめんなさいね」

にこ「…で?何の用?」

ことり「お弁当、一緒に食べたいな~と思って♪ 今日は2人ともいないから」

にこ「ああ…もうそんな時間なのね」

ことり「えぇ!?にこちゃん、お弁当食べに来たんじゃないの?」

にこ「特に用があって来たわけじゃないわ。今日は授業を受ける気分じゃなくて…屋上とか中庭とか回った末に、ここに来たのよ」

ことり「そうだったんだ…。ごめんね。じゃあことりは一年生の教室に…」

にこ「別にいいわよ。せっかくだし…食べましょ」

ことり「え、いいの…?」

にこ「誰も出て行けなんて言ってないでしょ?ほら、座りなさい」
 
398: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 14:15:19.71 ID:sCpagP+c.net
ことり「わぁ~☆にこちゃんのお弁当、彩りも綺麗で可愛いっ!」

にこ「どうしても妹のお弁当と中身がかぶっちゃうのよ……って、あんたも海未とおんなじこと言うのね」

ことり「海未ちゃんも言ってたのかぁ~。昨日は2人で食べたんだよね?楽しかった?」

にこ「そうね…とても…」

にこ「…」



う~ん、これはかなり重症かも…



ことり「ところでにこちゃん」

ことり「さっき、ケータイで何やってたの?」

にこ「え!?」

にこ「そ、それは……何でも、いいでしょ」

そう素っ気なく言って、にこちゃんは顔を背けてしまう。

こうなったら、直接聞くしかないかな。


ことり「…海未ちゃんにメール、送ろうとしてたの?」
 
399: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 14:15:51.84 ID:sCpagP+c.net
にこ「」ビクッ

にこ「な…なんで…」

ことり「今のにこちゃんがそんなに悩むなんて、海未ちゃんのこと以外にありえないから、だよ」

にこ「どういうことよ…」

ことり「ことりが言ったことは、ヒントだよ。答えはにこちゃんが見つけなきゃ♪」

にこ「何よ、この前も教えてくれなかったじゃない」

ことり「ふふっ、答えは一緒だからね♪」

にこ「…?」


ことり「それより…にこちゃんは今、何を悩んでいたの?」

にこ「…あんた、ホント遠慮ないのね」

ことり「えへへ…」
 
400: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 14:16:25.65 ID:sCpagP+c.net
にこ「…気になってしょうがないのよ、海未たちのこと」

はぁ、と溜息をついてから、にこちゃんは観念したようにぽつぽつと話し始めた。

にこ「穂乃果は最近確かに様子がおかしかったし、海未もそれに気づいていた」

にこ「でも、何もできなかった…。そうやって海未は自分自身を責めるんじゃないか…」

にこ「今まで以上に自分より他人を優先するようになるんじゃないか…。それが心配」

にこ「それに…」

にこ「穂乃果が海未のこと好きだったなんて、知らなかったわ」

にこ「あの後2人はどうしてるのか…考えるだけで胸騒ぎがするっていうか…気掛かりなのよね」

にこ「で、このままじゃ身がもたないからメールでもしてみようかと思ったんだけど…」

にこ「いざ打とうとしたらなんて書けばいいかわからなくなっちゃって」

にこ「それでますます混乱してるってわけ」

ことり「えぇ~と…」

にこちゃん、ここまで自覚してるのになんでわからないんだろう…

にこ「何よ、その顔は」

ことり「ううん、なんでもないよ。ただ…」


ことり「やっぱりにこちゃんは、海未ちゃんが大好きなんだなぁ~って♪」
 
401: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 14:16:54.30 ID:sCpagP+c.net
にこ「ことり…またからかうつもり…?」

ことり「そんなことないよ?」

ことり「たぶんね、にこちゃんは自分に嘘をついてると思うの」

ことり「にこちゃんが気になってるのは…海未ちゃん"たち"じゃないよね?」

にこ「な…っ」


ことり「ねえ、にこちゃん」

ことり「最後のヒントをあげるね」



ことり「自分に素直になること…だよ」
 
404: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 22:58:41.21 ID:sCpagP+c.net
<海未side>



穂乃果「ふはぁ~っ、ごちそうさまっ!」

穂乃果「やっぱり海未ちゃんのチャーハンは美味しいね!」

海未「ふふっ、ありがとうございます」

海未「しかし…本当におばさまに断りなく冷蔵庫の食材を使ってしまってよかったのでしょうか…?」

ーーそう、今日は幸いにも、穂乃果のご両親は結婚式に呼ばれたとかで、朝から外出中。穂むらも休業しているのです。

穂乃果「大丈夫だよ!お母さんたぶん気づかないし」

海未「気づかれなければ良いという問題でもない気がするのですが…」

海未「でもまあ、これで穂乃果との約束が果たせましたね」

穂乃果「え、約束…?」

海未「覚えていないのですか!?」

穂乃果「う~んと…何だっけ?」

はぁ…まったく。

海未「あなたから言ったのですよ?今日は一緒にお昼を食べよう、と」

穂乃果「あ、ああ~、そうだったね!海未ちゃん、覚えててくれたんだ…」

海未「約束なのですから、当然です」


海未「でも…どうしてあんな約束を?」
 
405: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 22:59:14.68 ID:sCpagP+c.net
穂乃果「ごめん…あのときは、気が動転してて」

穂乃果「にこちゃんに…嫉妬、してたのかも」

海未「嫉妬…ですか」

というのはつまり…そういうことで。

穂乃果は私のことが、好きと。そう言ってくれたんでしたね。

それならば、私のやるべきことはーー


海未「穂乃果」

海未「朝の返事を…させてください」



穂乃果「…え?」
 
406: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 22:59:45.04 ID:sCpagP+c.net
海未「その…私も色々考えたのですが…」

海未「やっぱり私、穂乃果を恋愛対象として見ることができないんです」

海未「今も、きっと、これからも…」

海未「だから…ごめんなさい!」

海未「私にとって、穂乃果は幼馴染で、一番の親友で……」

私は言葉に詰まりながらもできるだけ相手を傷つけないように答えようとしたのですがーー

しかし、穂乃果の苦笑いがそれを遮りました。


穂乃果「海未ちゃん…そりゃあないよ…」

そう零す穂乃果は、がっかりしているというより、むしろ呆れているようで。


でもすぐに笑顔になり、こう言うのです。

穂乃果「…わかってたよ」
 
407: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 23:00:10.94 ID:sCpagP+c.net
穂乃果「…ていうか、もうフられたつもりでいたんだけどね……」アハハ

海未「え?」

穂乃果「い、いや、そうじゃなくて!…いや、それもあるけどとにかくそうじゃなくてっ!」


穂乃果「…穂乃果はね、海未ちゃんのことはぜーんぶわかるんだよ?」ニコッ 

海未「穂乃果…」


穂乃果「でも…ひとつだけ、教えてもらってもいいかな?」

海未「は、はい、何でしょう…?」



穂乃果「海未ちゃんさっき、穂乃果のことは"今も、これからも"恋愛対象にならないって言ってたよね?」

穂乃果「"これからも"ならないって思ったのは…どうして?」

海未「…!」
 
408: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 23:00:44.11 ID:sCpagP+c.net
私は言葉を失いました。

なぜ"これからも"恋愛対象になりえないと思ったのか…

そう口にした自分自身、わかっていなかったのです。

もし想い人が他にいないなら、付き合ってみて好きになっていく、そんなパターンもあったはず。

ならばなぜ、私は穂乃果の告白を断った?

……。



海未「なぜ…でしょうか…」

穂乃果「…わからない?」

そう言って、穂乃果は私の顔を優しげに覗き込む。

海未「わかり…ません…」

穂乃果「そっか~。海未ちゃんは変なところで鈍感だもんね~」

教えてほしい、と言うわりには、穂乃果は何か知っているように楽しげでした。

そして、すべてを見透かしたように微笑むのです。




穂乃果「…自分に素直になってみても、いいんじゃないかな」
 
409: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 00:13:58.52 ID:M4QOAPE2.net
ーーその日の夜ーー


海未「自分に素直になる…ですか…」

昼間、穂乃果に言われたこと。

その言葉に隠された意味がわからなくて、なかなか眠れない。

海未「そんなに素直じゃないのでしょうか、私…」

そんなふうに埒のあかないまま考えにふけっていると。


ピロリン...


海未「…メール?」

海未「誰でしょうか、こんな時間に…」


海未「…にこ」

差出人の名前を見て、なぜか一瞬緊張してしまう。

それは、初めてにこからメールを受け取ったときから、ずっと変わらなかった。


海未「『明日はちゃんと学校来るのよ?』ですか。ふふっ、世話焼きのにこらしいです」


海未「…ん?メールはまだ続いているみたいですね…」


ーー次の文が見えるまで下にスクロールしていくと。


海未「…!」




海未「……………ふふっ」



…明日は少し早く出てみましょうか。
 
412: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 13:16:59.79 ID:M4QOAPE2.net
ーー次の朝ーー

<にこside>


…え

……え?


にこ「………えぇ!?」


いつものごとく「いってきまーす」とドアを開けた瞬間。

私、矢澤にこは盛大に驚くことになる。

なぜなら、そこには普段ならいるはずのない人物が立っていたから。



海未「おはようございます、にこ」
 
413: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 13:17:26.35 ID:M4QOAPE2.net
にこ「な、なんであんたがここにいるのよ!」

海未「そんなに驚くことでしょうか?心外です」

にこ「驚くに決まってるでしょ!?だって、いつもはにこが…!」

海未「はい、いつもにこの方から家に来てもらっていますので、たまには私から、というのもいいかと思いまして」

にこ「あ、あれは、にこが好きでやってることなんだから、海未がうちに来る必要なんて…」

海未「私も好きで来ているだけですよ」

だから気にしないでください、と。

まったく…。

どういう風の吹き回しよ。

そんなことを考えていた、そのときだった。


海未「それにーー」

そう言って、海未は悪戯っぽく笑った。
 
414: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 15:02:21.93 ID:M4QOAPE2.net
海未「それにーー」

海未「昨夜、普段は不器用な誰かさんから、その方らしからぬメールが届きましたから」クスッ

にこ「…!」


その言葉を聞いて、サーっと血の気が引いていくのがわかる。

思い出すのは、昨晩のことーー

ことりの言っていた「自分に素直になること」というのがどうしてもわからず、結局メールを送ることができたのが夜の11時だったのだ。

時間をかけてようやく導き出した自分にとっての素直な文章…

やっぱり気恥ずかしくて、あわよくばスルーしてほしいと、最初の文から何行もの空白を開けて打ったのを覚えている。


『海未がいないとちょっと寂しかったから』


そこまで思い出して、今度は恥ずかしさで顔がカーッと紅くなる。


にこ「に、にこらしくなくて悪かったわね!///」スタスタ

…ことりのやつ、素直になったところで何もわからないじゃない!
  

海未「ーーあっ!にこ、待ってくださーい!」
 
415: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 15:02:45.96 ID:M4QOAPE2.net
にこ「…」スタスタ

海未「にこ、ごめんなさい!ちょっとからかっただけですから許してください…!」

にこ「…」スタスタ 

海未「まだ…怒ってますか?」

実際のところ、にこは怒っているわけではないんだけど。

海未の反応が面白いもんだから、ついつい逆にからかいたくなっちゃうのよね。

海未「あの…本当に、そんなつもりはなくて…」

でも、さすがにちょっと可哀想になってきたかな。

にこ「しょーがないわねー。にこにーの寛大さに免じて許してあげるわ」

海未「ほんとですか!?」パァァァ

海未「よかったです…。このままずっと許してもらえないかと思いました…」ホッ

にこ「大袈裟ねぇ~」

…ふふっ、可愛いんだから。








………………………え。

にこ、今、海未のこと可愛いって…



いやいやいや、深い意味なんかないわよ!…ね?
 
416: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 15:03:16.68 ID:M4QOAPE2.net
海未「さっきは言わなかったんですけど…私がにこの家まで行かせていただいた理由は、もう1つあるんです」

しばらく歩いたとき、海未がふとこんなことを言った。

にこ「…何よ」

海未「…"自分に素直になる"とはどういうことか、考えた結果なんです」

にこ「…!」

海未「穂乃果に言われたんです。私はもっと自分に素直になってもいいんじゃないか、と」

海未「最初はいくら考えてもわかりませんでした」

海未「でも…」

海未「にこからのメールを見て、少しわかった気がしたんです」


海未「…にこに、早く会いたい。そう、思ったんです」
 
420: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 18:44:53.48 ID:M4QOAPE2.net
どくん。

左の胸が跳ねる。

最近、本当にどうしちゃったのよ…?


でも、それにしてもーー

にこ「まさか、海未までそんなこと言われていたなんてね」

海未「え?」

にこ「にこもことりから言われたのよ。自分に素直になれ、ってね」

海未「どういう、ことなのでしょうか…?」

にこ「ホントよ。にこは…まぁわかるけど、海未なんて素直すぎるくらいだと思うんだけど」

海未「そ、そうでしょうか…」

海未「でも、素直というのもいいものですね。私も、にこからのメールは嬉しかったですし」ニコッ

にこ「あ、あんたねぇ…。そういうところが素直すぎるって言ってんのよ!///」

海未「え、えぇ…!?」



そんなやりとりを、穂乃果とことりが遠くからニヤニヤしながら眺めていたのを知るのは、もう少し後の話。
 
421: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 18:45:57.24 ID:M4QOAPE2.net
海未の卒倒騒動から5日経った。

まだ5日しか経っていないけれど、

にこと海未は、急激に距離を縮めていった。

今まで以上に、仲の良い友達としてーー。



しかし、この関係にも、早くも転機が訪れようとしていた。
 
423: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 11:12:11.62 ID:lkGnYZl7.net
<海未side>


8人「「弓道部の合宿!?」」

海未「はい、もう少し早く報告できたらよかったのですが…」

絵里「明日からの3連休なんて…急な話ね」

穂乃果「穂乃果も聞いてないよぉ~」

花陽「ことりちゃんも?」

ことり「うん、私も聞いてないよ海未ちゃん」

海未「す、すみません、色々事情がありまして…」

真姫「ていうか、練習はどうするのよ?3日もいなくなるなんて…」

海未「イメージトレーニングくらいならできると思いますが…」

海未「そういえば、新曲はできたのですか?」

凛「え、新曲!?」

真姫「できてるわ。今回の歌詞、なかなかよかったわよ」

絵里「それじゃあ、早いとこ振付も考えなきゃね」

希「まあ、次のライブまでまだまだ日があるし、海未ちゃんはこっちのことは気にしなくていいんよ?」

海未「ありがとうございます。今日中にある程度覚えていきますね!」

穂乃果「よ~し!そういうことなら、すぐにでも練習開始だね!」

凛「ああ~っ!穂乃果ちゃん抜け駆けはずるいにゃ~!」

花陽「凛ちゃんちょっと待ってぇええ」


穂乃果を先頭に、メンバーは次々と屋上へ駆け出していく。

そんな中、そういえば、と思う。



にこ「…」



…にこ?
 
424: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 11:12:53.30 ID:lkGnYZl7.net
絵里「ーーさて、ここまでの流れはこんな感じでいいかしら」

凛「覚えることいっぱいで疲れたにゃ~!」

ことり「海未ちゃん、大丈夫そう?」

海未「ええ。段取りがスムーズに進んでよかったです」

希「新曲もいい感じやね」

真姫「歌詞に合わせて、弾けすぎない感じにしてみたの」

花陽「なんか…すごくあったかい曲だよね」

海未「支えてくれるすべての人たちに、感謝を伝えられる歌詞にしようと思いまして」

穂乃果「うんうん!お客さんも喜んでくれそうだね!」

絵里「そうね。それじゃあ、もう1回ここまで通してやってみましょうか!」


………………………。

……………。

……。
 
425: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 11:13:51.55 ID:lkGnYZl7.net
ーー練習終了後ーー

穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん、早く帰ろうよ~!」

ことり「ちょっと待ってよ~、穂乃果ちゃ~ん」

海未「ごめんなさい、私は弓などの支度があるので先に帰っていてください」

穂乃果「そっかぁ。じゃあ、先に帰ってるね!」

ことり「またね、海未ちゃん!」

海未「ええ。4日後に」

穂乃果「合宿がんばってねーっ!」




海未「…」




穂乃果とことりを見送り、

私が弓道場に向かおうとしたときにはーー


足早に帰ってしまったのか、

部室ににこの姿はありませんでした。
 
426: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 11:24:14.31 ID:lkGnYZl7.net
道場に着くと、部長さんが待っていてくれました。

海未「ーーお待たせして申し訳ありません!」

部長「いいって、いいって。…はい、これ弓と弦巻ね」

海未「そんな、弓の準備まで…ありがとうございます」

部長「どういたしまして。それより、期待してるわよ」

海未「え?」

部長「あんたには多分また落で引いてもらうから…」

部長「プレッシャーは大きくなるだろうけど、そうすることで二番から落前の子も安心して引けると思うんだ」

部長「だからよろしく頼むよ、エース♪」

海未「は、はあ…」

部長「まあ、それは今はいいとして。明日からの合宿、気合い入れていくよ!」

海未「はい、もちろんです」

部長「バスは6時半だから、遅れないようにね。…それじゃ!」

海未「わかりました。ごきげんよう」





海未「ーーはぁ…」





???「なに、溜息なんかついてんのよ」



海未「…!」
 
427: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 13:27:53.80 ID:DfYpGR+S.net
少しだけ重たい足取りで歩き出したとき、

ふと聞こえた声は。



海未「…にこ!」


帰ってしまったと思っていたにこが、近くの木に寄りかかって立っていた。


海未「心配したんですよ?部室でも練習でもほとんど喋らないから…」


私はそう言って駆け寄ったのですがーー



にこ「…あのさ」


海未「…っ」


喉の奥から絞り出したようなにこの声に、思わずその場に足を止めました。





にこ「……私は、あんたのほうが心配よ」
 
428: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 21:09:00.25 ID:lkGnYZl7.net
心配って…

子供じゃないんですから。


そんな言葉は、続くにこの言葉に飲み込まれました。


にこ「…海未は、すごいわ」

にこ「学校の勉強の他に、日舞に弓道、それにμ'sの活動…にこが知ってるだけでもこれだけのものを背負ってる」

にこ「学校では優等生として、家では日舞を継ぐ者として、弓道部ではエースとして、μ'sではまとめ役として、日々の努力を怠らない」

にこ「責任感も強いから信頼もある」

斜め上を見上げながら、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ横顔からは、にこの考えが読めない。


ーーしかし、その表情も少しだけ険しくなる。


にこ「でも、だからこそ」

にこ「あんたは周りからの期待や責任を無条件に受け入れて」

にこ「そういうものに押しつぶされそうになっても自分ひとりで全部抱え込もうとする…!」

そこまで言って、にこの瞳がようやく私を捕らえました。
 
429: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 21:11:43.64 ID:lkGnYZl7.net
にこ「今だってそうでしょ!?」

にこ「合宿のことみんなに言えなかったのだって、穂乃果のことがあったから!」

にこ「穂乃果から離れるべきじゃないのかとかなんとか考えてたんでしょ!?」

にこ「それに、弓道の大会のことだって!」

にこ「部員たちからの期待に応えなきゃいけないとかいう責任でも感じてたんでしょ!?」


海未「…っ!」

海未「気づいて…いたんですか…」

にこ「…当然よ」

にこ「あんたはすぐ顔に出るんだから」



やっぱり…にこはすごいです。

私の奥に潜む私を確実に見抜いてくるんですから。
 
430: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 21:12:41.78 ID:lkGnYZl7.net
ふぅ、と息をひとつ吐いてから、にこは続けた。

にこ「だから」

にこ「合宿、がんばってね」








にこ「……なんて、にこには言えないわ」



にこ「強いて言うならーー」




にこ「肩の力を抜いていきなさい」
 
432: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 21:44:10.27 ID:lkGnYZl7.net
にこは、いつも以上にぶっきらぼうだったけれどーー

そこには私への心配と優しさがにじみ出ているようでした。

そして何より、その言葉は今の自分にこのうえなくしっくりくるものだったのです。

文字通り、肩の荷がすとんと下りたような気がしました。

海未「本当に、にこには感謝が尽きません」


そして…今、初めて気がついたことがある。


海未「ですからーー」


海未「伝えさせてください、」




海未「私が今まで気づかなかった、本当のことを」
 
450: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 14:15:34.25 ID:Hr3iPgPL.net
ーー次の日ーー

<にこside>



絵里「ーーさて、とりあえずここで10分休憩にしましょう!」

穂乃果「ふぁ~っ、つかれたぁ~!」

花陽「もう…ダメぇ…」

凛「休みの日だと練習長いにゃ~…」

にこ「あんたたち、弛みすぎじゃない!?そんなんじゃライブもたないわよ!」


希「にこっち、今日はええ感じやん」

にこ「『今日は』って何よ!いつもにこにーは最高じゃない!」

希「…昨日はなんか元気なかったやん?」

にこ「ちょ、ちょっと考え事してただけよ」

希「にこっちは最近考え事が多いなぁ」

にこ「べ、別にいいでしょ!?」

希「それにしても…今日はやけに張り切ってるやん♪ …なんかいいことでもあったん?」

にこ「え…!?な、なんにも無いわよ!」

希「ふ~ん、あるんやね?」ニヤニヤ

にこ「だ、だから無いって…」


希「…海未ちゃんになんか言われたんやろ?」ボソッ

にこ「」ビクッッ!!
 
451: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 14:18:11.74 ID:Hr3iPgPL.net
にこ「え、な、な、なんでそれを……」


希「へぇ~、当たりなん?」ニヤニヤ


にこ「…は?」


希「…カマかけてみただけ、なんやけど」ニヤリ


にこ「あ、あんたねぇ…!///」


くぅ…希はこういうとき鋭いんだから…っ



希「…海未ちゃんになんて言われたん?」ヒソヒソ


にこ「な…っ」
 
452: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 14:19:11.06 ID:Hr3iPgPL.net
思い出すのは、昨日の夕暮れ時ーー




『伝えさせてください、』


『私が今まで気づかなかった、本当のことを』





そう言った海未は、制服のポケットから静かに歌詞カードを取り出した。

…そう、穂乃果のリスカが発覚した朝に、見せてくれたものだ。



『私は、多くの人に支えられていることに感謝を伝えたくて、この詩を書きました』


『その思いは、今も変わりません』



『ですがーー』
 
453: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 14:20:19.84 ID:Hr3iPgPL.net
そして海未は離れていた距離を縮めるように歩みを進め、

やがてにこの目の前で足を止めるとーー





『…にこだけは、特別、なんですよ』





そう言って、ふわりと微笑むのだった。
 
454: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 14:21:34.73 ID:Hr3iPgPL.net
この曲の作詞をしようとするとき、フレーズを考えるとき、

真っ先に浮かぶのは、にこの顔だったんです。


家で加筆修正する際にも、

にこにランニングを止められて、一緒にウォーキングをしたときのことや、

初めて部室で2人でお弁当を食べたときのことばかりが思い出されて…


だからこの詩は、


μ'sのための詩であり、応援してくれるすべての人のための詩であると共に、


ーーにこのための詩でも、あるんです。








気がついたら、にこの右手には歌詞カードが握られていた。


あなたに持っていてほしいんです、と。
 
455: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 14:23:07.72 ID:Hr3iPgPL.net
練習着のスカートのポケットに手を入れると。


カサリ


と、紙切れの感覚。





ほんのり夕日の色に染まった無邪気な囁きが、脳裏にこだまする。





『…このことは、秘密、ですよ?』
 
456: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 14:25:34.66 ID:Hr3iPgPL.net
ーーだから。


にこ「…そんなの、言えるわけないでしょ?」

希「…」


にこ「でも…」


にこ「この曲だけは、絶対に成功させたいのよ」

にこ「……にこはこの詩が、大好きだから」


希「そっかぁ。…ふふっ♪」

にこ「な、何よ」

希「ううん、なんでもない。……ウチは応援してるよ」

にこ「はあっ!?ライブはμ's全員で成功させるのよ!?」

希「ウチはそういう意味で言ったんやないけど…」ボソッ

にこ「ん?何か言った?」

希「なんでもないよ。ライブ、成功させんとね」

にこ「当然よ!ーーさ、練習再開しましょ!」


絵里「にこ、今日はすごいやる気ね…」ハラショ-

穂乃果「ええ~っ、まだ休憩1分あるよ~?」

にこ「たいして変わんないわよ!ほら、立ちなさい!…」





ことり「…ふふっ♡」
 
459: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 22:31:50.32 ID:Hr3iPgPL.net
<ことりside>



昨日、合宿の話に入ったときからのにこちゃんは思い詰めた表情をしてたから心配だったけど…


あの様子を見てると大丈夫そう♪


海未ちゃんがいない間、代わりにまとめ役を買って出てる感じもするし、


2人の信頼関係も、ことりの知らないところで深まってたりするのかなぁ~





何はともあれ、にこちゃんのおかげもあって練習は順調☆


この調子ならきっと残りの2日も無事に乗り切れる!





ーーそう、思っていたんだけど。
 
460: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 22:32:42.40 ID:Hr3iPgPL.net
連休の2日目から、にこちゃんの様子がまたおかしくなっちゃったんです。


曲への思い入れがとっても強いみたいで、練習では気丈に振る舞ってるんだけど…


それ以外のときは本当に元気がないっていうか、時々苦しそうに顔を歪めていたの。


ことりも話を聞いてあげようとしたんだけど、


練習以外のときに話しかけても「ひとりにさせて」って言って避けられちゃうし…




そんな中、海未ちゃんのほうも異変が起きていてーー
 
461: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 17:47:56.20 ID:uBf7UiSD.net
*これから部長目線が入りますが、アニメとスクフェスしかかじってない身ですので完全なイメージです

*性格、口調、呼称など、(部長がキャラとして登場してるかもわかりませんが) 実際と異なる場合は各自脳内変換をお願いします

*穂乃果+絵里+にこ みたいなキャラを目指してたんですが、これはむしろヒフミかもしれない
 
462: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 17:49:57.78 ID:uBf7UiSD.net
ーー合宿2日目の夜ーー

<弓道部の部長side>



最悪…っ

全然眠れない…


ケータイで時間を確認すると、もう12時を過ぎていた。


なにそれ…消灯から2時間も経ってるなんて…

明日は6時起床、7時から走り込みだって言うのに。

これで部長の私が寝坊なんてシャレになんないわよ…?


こういうとき、海未が羨ましい。

あの子、いつも一番先に寝息立ててるんだから。


……ってあれ?


思わず隣の布団を見る。



するとそこにはーー

いつものように仰向けで規則正しく寝息を立てる海未の姿はなかった。
 
463: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 17:50:50.15 ID:uBf7UiSD.net
隣で寝ているはずの彼女は、頭まですっぽりと布団をかぶっていた。


珍しい。

しばらく合宿に行かなかった間に寝相悪くなったのかな…

なんて、思っていると。



…ん?



私は一瞬耳を疑った。



部員のみんなが寝静まる中、鼻をすする音が聞こえてきたのだ。



そしてそれは、間違いなく隣の布団の中から聞こえてくるものでーー
 
464: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 17:51:45.08 ID:uBf7UiSD.net
海未…?

心配になって暗がりに目を凝らしてみると、彼女は布団の端をぎゅっと握りしめているみたいだった。


『…っ、うっ…、…っく…っう、ぅ…っ』


おそらく声を押し〇して泣いているのだろう。


何かあったのかな…?ホームシック?

でも今までそんなこと一度もなかったし…



悪いとは思えど、放っておくこともできない性分。


意を決して、隣の布団に手を伸ばした。
 
465: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 17:52:31.92 ID:uBf7UiSD.net
ーー果たして、そこには肩を震わせてすすり泣く海未の姿があった。

布団をめくられたことにも気づいていないかのように、海未はただひたすら嗚咽を漏らし続ける。


考える間もなかった。

私はすぐさま海未の布団に潜り込み、その細い身体を抱きしめる。


部長「海未…!」

海未「…っ、ぁ」


よほど辛いことがあったのだろうか、

最初こそビクリと身体を震わせたけれど、すぐに私の寝間着の裾を掴み、再び咽び出した。


海未「…ぅ、う…っ、ひ…っぐ、ぅ…っ」

海未「っ、な、…ぜ…っ、ぅ、こ、ん…な…!」


いつも凛として弱みを見せないこの子がこんなに泣きじゃくるなんて…。


私は海未が少しでも安心できるように、背中をさすり続けた。


部長「…大丈夫、大丈夫よ、海未……」

海未「…っ、ぅ…うっ…、…」
 
466: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 17:53:24.49 ID:uBf7UiSD.net
しばらくそうしていたら、落ち着いてくれたのか、海未は私の腕の中で眠っていた。


海未「…」ス-ス-


その寝顔はまるで子どもみたいで。


とりあえずは一件落着…かな?

ふぁ~…。

安心したら眠くなってきた…。

おやすみ…海未…。
 
473: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 10:17:53.98 ID:3V73ljDi.net
ーー合宿3日目の朝ーー

<海未side>


時計を確認すると、5時。

まだ部員のみんなは寝静まっているようでしたが、

習慣というのは恐ろしいもので、癖でこの時間に目が覚めてしまうのです。

起床時間まであと1時間ありますね…。

二度寝する理由もありませんし、このまま起きていましょうか。


そう思って、着替えようとしたとき。


部長の布団が空になっていることに気づきました。




そこでようやく、昨晩の出来事を思い出す。


海未「///」カァァァ


あぁ…!私はなんてことを…っ!


部長にまで迷惑をかけてしまいました…


最悪です…


早く謝りに行かなければ…!
 
474: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 10:19:11.85 ID:3V73ljDi.net
周りを起こさないように練習着に着替え、顔を洗って外に出てみるとーー

大きな樹の近くに、伸びをする部長の姿があった。


海未「ーー部長、おはようございます」

少し離れたところから呼びかけてみる。


すると。


部長「あ、海未…!」

こちらに気づいた部長が、血相を変えて駆け寄ってきた。


部長「あんた、何かあったの!?辛いことがあるなら、相談乗るよ!?」

海未「ぶ、部長…!?」

いきなり両肩をガシッと掴まれて真剣そのものの表情を向けられる。


私はこんなに心配をかけさせてしまったんでしょうか…


そう思ったら申し訳なさがいっそう込み上げてきて、

海未「あの…昨晩は、ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありませんでした…!」

海未「あのような痴態を晒してしまい、面目ない限りです…」

部長の心遣いにいてもたってもいられず、私は一心に頭を下げました。



しかし、

待っていたのは数秒の沈黙ーー



海未「あ、あの…?」



さすがに不安になって顔を上げてみると、

心底呆れたような顔の部長が私を見下ろしていました。
 
475: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 10:20:11.45 ID:3V73ljDi.net
部長「はぁ…」

部長は長い溜息を吐いたあと、諭すように話し始めた。


部長「…あんたも馬鹿ね」

部長「迷惑だなんて、思うわけないでしょ?」

部長「仲間なんだから、困ったときはお互い様」

部長「それに、私が好きでやったことなんだから、気にすることないの!」


そこまで言って、頭を優しくポンポンと撫でられる。





ーーそこでふと気づく。



どくん…どくん…



海未「ぁ…」



心臓が、さっきから激しく波打っていることに。
 
476: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 10:21:15.08 ID:3V73ljDi.net
海未「っ、う…っ、はぁ…、はぁ…」


苦しくて、苦しくて。


思わず胸を押さえると。


部長「ちょ、ちょっと!海未!しっかりしなさい!!」


少しクラっとしたところを部長に支えられる。



部長「だ、誰か、救急車ーー!」


海未「そ、れは…大丈、夫、です…」


ーーこの感覚には、覚えがあった。


部長「で、でも…!」


海未「すぐ…収まり…ます、から…」



ーーさっきの、部長の言葉は。
 
477: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 10:23:38.96 ID:3V73ljDi.net
『誰も迷惑だったなんて思っちゃいないわよ』



『人が誰かに支えられているなんて、当たり前じゃない』



『それに、誰かがつらいときは支えてあげる、これも当たり前のことよ』



『あ、あれはにこが好きでやってることなんだから…』



『あんたは本当に…馬鹿ね』









脳裏に浮かんだ声は、

素直じゃなくて、

ぶっきらぼうで、

でも、とても優しいーー。



ああ…私は、もう、こんなにも…
 
479: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 17:22:31.29 ID:CKpBZGDe.net
部長「ーー大丈夫?落ち着いた?」

海未「はい…すみません…」

私たちは近くにあったベンチに腰掛けていた。

部長「そっか。ならよかった」


部長「…それで?」

海未「え?」

部長「こっちは急に謝罪されて、質問を無視されたんだけど」

海未「あ…」


そういえばさっきーー


『あんた、何かあったの!?辛いことがあるなら、相談乗るよ!?』


そう、言われたんでしたね。


海未「すみません…」

部長「あんた、さっきから謝ってばっかね」ハァ
 
480: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 17:23:27.59 ID:CKpBZGDe.net
部長「まあ、無理にとは言わないけどさ」

部長「苦しそうな海未を見てるのもつらいし…」

海未「…」

部長「…やっぱり、話したくないかな?」


話したくない…?

いいえ、そんなはずはありません。

本当は、すべて吐き出したい。

この苦しみを、胸の痛みを、すべて。


でもーー



海未「…わからないんです、この感情が」


海未「このモヤモヤした気持ちを、どう言葉にしていいか…わからないんです」
 
481:モブなのに部長が目立ちすぎた(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 17:24:22.78 ID:CKpBZGDe.net
すると部長は少し考えるような素振りをみせてから言った。

部長「…完璧な言葉で言おうとしなくても、いいんじゃない?」

海未「え…?」

部長「苦しいときって、そういうものよ。私もなかなか的中が出なかったりすると、自分がわからなくなっちゃうとき、あるし」

部長「だから、支離滅裂でもいい。今、海未が持ってる感情、素直な言葉で吐き出してみたら?」

部長「もちろん、海未さえよければ、だけど」ニコッ

海未「部長…」



この人になら、話せそうな気がするーー私はそう思いました。


それにーー


『…自分に素直になってみても、いいんじゃないかな』


穂乃果の言葉が脳内に蘇る。



海未「…部長」

海未「聞いていただけますか?…私の、素直な感情を」


部長「…もちろん♪」
 
489: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/25(水) 19:50:13.02 ID:M4zlDWh3.net
ーー連休3日目の夕方ーー

<ことりside>



にこ「ーーだいぶ仕上がってきたわ。みんな、いい感じよ!」

絵里「そうね。キリもいいし、そろそろ休憩にしない?」

にこ「そうしましょう。10分休憩したら、残り1時間も厳しくいくわよ!」


この3日間、にこちゃんはみんなの前に立つことが格段に多くなった。

今も、にこちゃんはこれまで見たことないくらいのやる気に満ちていて、頼もしく見える。

昨日から時折見せる苦しげな表情とは打って変わって…。

でも、だからこそ心配になるんです。

頼りなく見える、ときがあるんです。

にこちゃん、もしかしたら、無理してるんじゃーー


にこ「…ちょっとことり。なに、じろじろ見てんのよ」

ことり「えぇっ!?ご、ごめんね!ことり、そんなつもりじゃ…」

にこ「にこが可愛いのはわかるけど、そんなに見られると色々やりにくいから、ほどほどにしてよね?」

ことり「えっ、あ、うん…」

こういうところは、普段と変わらない感じはするけど…

真姫「ことり、こういうのは無視していいのよ?」

ことり「真姫ちゃん…」

にこ「ちょっと真姫ちゃん!?余計なこと言わないでくれる?」

真姫「だって、ことりも困ってたじゃない。にこちゃんこそいつも一言余計なのよ」

にこ「ぐぬぬ…。あんたねぇ~!」

ことり「あ、あはははは……」


ーーやっぱり、いつも通りのにこちゃん。

私の考えすぎなのかな…
 
490: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/25(水) 19:51:22.39 ID:M4zlDWh3.net


にこ「…あら?」

真姫「どうしたの、にこちゃん」

にこ「最悪ぅ~!水筒のお茶無くなっちゃったわ!」

ことり「あ、ことりも全部飲んじゃった…」

真姫「仕方ないわね~、私のあげるわよ」

にこ「そんなの悪いわ。…いいわよ、自販機で買ってくるから」

ことり「それじゃあ、ことりも行こうかな」

にこ「ことりの分も一緒に買ってくるわ。何がいい?」

ことり「い、いいよ、ことりもーー」


にこちゃんは優しいな、って、

単純に思ってしまった数秒前の自分が恨めしい。


ことり「!」ハッ



ことりも一緒に、って言おうとして。

私は一瞬背筋が凍るような緊張を覚えました。


だってーー


にこちゃんは昨日の…


『ひとりにさせて』


そう言ったときの眼をしていたから。
 
491: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/25(水) 19:52:25.68 ID:M4zlDWh3.net
にこ「ついでなんだし、別に気にしなくていいのよ」

ことり「あ、ありがとう、にこちゃん…。じゃあ私は、水でいいかな…」


無力な私には、最初からにこちゃんの力になってあげることなんてできなかったのかな。

今だって、こう答えることしかできなかったんだから。


にこ「水でいいのね。じゃ、買ってくるわね」

にこちゃんはそう言って立ち上がった。


するとすかさず。


穂乃果「えーっ、にこちゃん自販機行くのー?」

凛「凛はサイダーがいいにゃー!」

穂乃果「私はいちご牛乳!」

花陽「ちょ、ちょっと2人とも…」


いつもならここで『にこはパシリじゃないのよ!?』くらいは言いそうなものだけど…


にこ「しょーがないわねー。…花陽は何かいる?」

花陽「え、えぇーっ。じゃ、じゃあお茶で…」

にこ「絵里と希は?」

絵里「私はまだあるからいいわよ」

希「ウチもええかな」

にこ「わかったわ。5人分、買ってくるから」



キィィ- パタン



真姫「…珍しいこともあるものね」


ことり「…」
 
492: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/25(水) 19:53:43.25 ID:M4zlDWh3.net
………………。

………。


にこちゃんが飲み物を買いに行ってから、しばらく経ちました。

でも、いっこうに帰ってくる気配はありません。

私だけが見た表情ーー

あのときの一瞬の翳りがどうしても頭から離れない。

本当にひとりにしてほしかったんだとは思う。

でも、にこちゃんは自分一人の個人的な感情だけでμ'sに迷惑をかけるようなことをする人じゃない。

だから、普通なら練習開始までには必ず帰ってくるはず。

それなのにーー


絵里「もう15分も経ってるわよ?にこ、何してるのかしら…」

真姫「どうすんのよ。練習開始時間から10分もオーバーしてるじゃない」
 
493: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/25(水) 19:54:44.24 ID:M4zlDWh3.net
普通なら、必ず帰ってくるはず…



じゃあ、『普通』じゃなかったとしたら?



一抹の不安が胸を掠める。




身体が勝手に動いていた。



ことり「5人分もあるから、もしかしたら持てなくて困ってるのかも!」



ことり「私、手伝ってきます!」



みんなの返事を聞く前に、私はドアに手をかけていた。
 
494: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/25(水) 19:56:00.07 ID:M4zlDWh3.net
穂乃果「ことりちゃん!?」

希「…確かに、そういう可能性もあるかもしれんなぁ」

穂乃果「なら、私も行くよ!」

凛「じゃあ凛も!飲み物頼んじゃったし!」

花陽「わ、私も…!」


絵里「ちょっと!待ちなさい!」

絵里「もしそうなら、そんなに大勢で行く必要はないわ」

真姫「確かに、エリーの言う通りね。練習時間も必要以上に削られるし」

希「そうやね。凛ちゃんと花陽ちゃんはウチらと練習しよ?」

絵里「それじゃ穂乃果、よろしくね」


穂乃果「わかった!いってきまーすっ!」
 
495: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/25(水) 19:59:28.86 ID:M4zlDWh3.net
私はとにかく走った。



何が私を突き動かしているのかはわからない。



ただ、不安が渦巻いて止まらない。




うるさく鳴り続ける心臓の音が、閑散とした夕方の校舎に響いている気がした。
 
496: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/25(水) 20:21:58.39 ID:M4zlDWh3.net
はぁ…、はぁ……


自動販売機の前。

ここは屋上から来るならいちばん近い自動販売機。


でも、そこににこちゃんの姿はなかった。


ことり「どこに、いるの…?」


思わず呟いた、そのとき。



穂乃果「おーい、ことりちゃーん!」



穂乃果ちゃんがこっちに向かってくるのがわかりました。


ことり「穂乃果ちゃん!」


穂乃果「にこちゃん、いた?」


ことり「ううん、いないの…。穂乃果ちゃん、他の自動販売機も探してきてくれないかな?私は校舎を見てくるから!」


穂乃果「うん、わかった!もし見つかったら、昇降口に集合しよう!」


ことり「うん…!よろしくね、穂乃果ちゃん!」
 
498: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/25(水) 21:33:07.71 ID:M4zlDWh3.net
部室、音楽室、各学年の教室…。

私はところを覗いてみたけれど……


ことり「やっぱり…いない…」


ことり「でも、もしかしたら、穂乃果ちゃんが見つけてくれてるかも…」


私はそんな淡い期待を抱いて、集合場所の昇降口に向かいました。




しかし、昇降口に穂乃果ちゃんたちの姿はなくてーー



みんなにも手伝ってもらったほうがいいかも…!



そう思って事情を話しに屋上に戻ろうと、身を翻した、そのときでした。




ガタッ




ことり「…!?」




何かを思いっきり叩いたような音が、


扉の閉まった空き教室から、聞こえてきたんです。
 
502: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:14:17.72 ID:YxGXp2J7.net
<にこside>



にこ「わかったわ。5人分、買ってくるから」


そう言い残し、ドアを開ける。


そして、逃げるように階段を駆け降りる。


少しの間でいいから、ひとりになりたかった。


にこ「残り5分…。急がなきゃ」


それはわかっている。


わかってはいるけど、ゆっくり歩きたい気もする。


時がゆっくり進んでくれればいいのに、と思う。


でもーー


早く進んでほしい、とも思う。
 
503: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:15:41.24 ID:zSy08TFp.net
落ち着かない…?焦ってる…?


この感情は、言葉では説明できないけど。


胸がざわつくっていうか。


虚無感に襲われることがある。



練習中は、にこは"にこ"でいられる気がするんだけど。


でも、


登下校中、休憩時間、家にいるとき…



そんなときは、心にぽっかりと穴が開いているような。


そして、自分を保つことが、つらくなる。





それはどうして?


にこの心に穴を開けたものってーー?
 
504: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:16:29.83 ID:zSy08TFp.net
そんなことを考えながら、いつの間にか昇降口に辿り着いていた。



このまま考えに耽って、周りが見えなくなっていたならどんなに楽だったか。


いや、最初はきっとそうだったんだろうけど。




この時間に校舎にいるなら、吹奏楽部だろうか、

2年生の靴箱の近くに群がる何人かの1年生たち。




彼女たちの会話の中に、


『園田先輩』


という単語を聞き取ってしまったら、もう駄目だった。
 
505: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:17:32.78 ID:zSy08TFp.net
違う『園田』かもしれないなんて、考える余裕はなかった。



私の無慈悲な耳は、その一瞬で彼女たちの会話だけに意識を集中してしまったのだから。




『園田先輩の靴箱って、ここだよね?』

『そうそう、合ってる合ってる』

『明日から登校されるんだよね!見てくださるかな~』

『大丈夫だよ!先輩は絶対お返事くださるから』

『私はこの前見事に玉砕してきたけどね』

『でも断られるとしても、お話しできるだけで幸せかな~』

『モブ子はいけるよ!可愛いもん!』

『えぇっ、そうかな…?でもーー






彼女たちの声は、恐ろしいほど鮮明に、しかし遠く聞こえた。


明るく騒ぐ言葉のひとつひとつが、胸に突き刺さるようでーー


よくわからない。けど、


耐えられなくなって、


駆け出して、


近くの空き教室に飛び込んだ。
 
506: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:18:31.23 ID:zSy08TFp.net
扉を勢いでピシャリと閉めてから、私は壁に背をつけて呼吸を整える。



数秒前、瞬きを忘れた双眼がハッキリとらえたのは、あの中の一人が手にしていた一通の封筒。


あれは、間違いなくラブレターというものだろう。


思い出すと、再び心臓がばくばくと暴れ出す。


それも、今にも口から心臓が飛び出てきてしまいそうなほどに。


時々こんなふうになったことはあったけど


ここまで苦しいのは、初めてだった。
 
507: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:19:35.67 ID:zSy08TFp.net
…本当はもう、気づいてるんじゃないの?







こうやって苦しくなるのはいつだってーー






やり場のない感情に、


私は頭を抱えた。


そのまま髪を掻きむしった。


自慢のツインテールはぐしゃぐしゃになったけれど、


それでも足りなくて、


黒板にチョークで乱暴に殴り書きをした。


でもやっぱり足りなくて、


教卓を思いっきり手で叩いた。
 
508: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:20:33.05 ID:zSy08TFp.net
物に当たってもしょうがないことはわかってるけれど、


それでも、持て余した感情は消えてくれない。






ーーいい加減、素直になりなさいよ。






心の声が、追い打ちをかける。
 
509: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:21:22.24 ID:zSy08TFp.net
ーー自分の中では、とっくにわかってたんでしょ?





私の心を埋めていたのも、


私の心に穴を開けたのも、


私を心配させるのも、


私の心を乱すのも、


私をどきどきさせるのも、


私を笑顔にするのも、




全部、







ーーーー海未だってこと。
 
510: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:32:38.95 ID:zSy08TFp.net
にこ「…なん、で…………っ」




私はついに床にへたり込んだ。




両眼から、熱いものが込み上げて止まらない。





気がつけば、



いつ入ってきたのか、



私は誰かに強く抱きしめられていた。
 
518: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/27(金) 22:31:09.09 ID:zs3HqRBK.net
「にこちゃんのバカっ!!」


私を抱きしめる、その人は叫んだ。


霞んだ視界に映るのは、少しウェーブがかった銀色の髪。


これはーー


にこ「…ことり……?」


ーーああ、そうだった。

にこは、みんなの飲み物買いに行ったんだ。

もう、とっくに練習始まってるわよね…


にこ「ごめん…今、戻るから…」

そう言って立ち上がろうとするけど。


ことり「ちがうよっ!」


抱きしめる力を強められ、それは叶わなかった。


ことり「にこちゃんは、ひどいよ…!」
 
519: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/27(金) 22:32:04.70 ID:zs3HqRBK.net
にこ「こと、り…?」


ことり「だって…だって…っ!」



ことり「私、言ったよね!?つらくなったらいつでも相談してって!」




『…どうしようもなくつらくなったら、いつでもことりに相談してね♪』




にこ「ぁ…………」





ことり「ねえ、にこちゃん…」


ことり「私はそんなに、頼りなかったの…?」
 
520: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/27(金) 22:32:46.55 ID:zs3HqRBK.net
そこまで言うと、ことりは少し身体を引き離し、

真っ直ぐに私を見つめた。


ことり「悩んでるなら話してよ…」

ことり「私は、にこちゃんの苦しそうな顔を見るのが嫌なの…っ」


にこ「…っ」


きっと今のにこは、

髪の毛もぐしゃぐしゃ、

涙で顔もぐしゃぐしゃ、

おまけに心もぐしゃぐしゃなのだろう。


苦しげな顔のことりの双眼に映る、苦しげな顔の自分。


それを見て、決意した。



この絡まった糸が少しでも解けるならーー


にこ「ごめん、ことり…」


このやり場のない感情を受け止めてくれるならーー


にこ「それじゃあ…その…」


今の自分を受け入れる勇気が少しでも持てるならーー


にこ「相談に…乗ってもらえる…?」




ことり「…ありがとう、にこちゃん♪」
 
522: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/28(土) 20:21:22.37 ID:jvx8NVUe.net
<海未side>


「ーー今から一週間ほど前、私が屋上でのダンスの練習中、不注意から倒れてしまったことがありましたよね」


「あのときは本当に迷惑をかけました。すみません…」


「ーーそんな、気にしなくていいと言われましても…」


「あ、でも…そうです。反省と謝罪の気持ち以上に、感謝の気持ちのほうが強いかもしれませんね」


「私は、多くの人に支えられましたから」


「いろんな方たちから、気遣いをいただきました」


「しかし、その中でも…幼馴染2人のほかに、特に私を気にかけてくれる人がいたんです」
 
523: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/28(土) 20:22:12.61 ID:jvx8NVUe.net
<にこside>


「ーー海未を見てると、すごく心配になるの」


「…あんたならわかるでしょ?」


「あの子はしっかりしてるけど、無理しすぎるところがあるし、寂しがり屋だし、すぐ崩れちゃうような脆さがある」


「あのとき倒れたのだって、"疲労"らしいじゃない」


「だから、言ったのよ。もっと頼りなさい、って…」


「でもやっぱり、頼れとか無理するなとか言われても慣れてないのよね。結局、自分から無理やり家に押しかけたりしちゃったりしたんだけど…」


「それでも…楽しかった」
 
524: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/28(土) 20:23:15.25 ID:jvx8NVUe.net
<海未side>


「<その人>は、あのときから様々な面で私を気遣ってくれました」


「入院中、メールで『私を頼りなさい』と言ってくれたんです」


「あれを見たときは…嬉しくて涙が止まりませんでした。看護師さんに心配されましたね」フフッ


「でも…退院した翌朝、ランニングをしようと外に出たら、<その人>が待っていたのには驚きました」


「走るのを止めるためにわざわざ遠くから、しかも友達に家の場所を聞いてまで、ですよ?」


「しかも、一緒にウォーキングをしたあと、一緒に登校するためにまた同じように家の前で待ってるんですから…」


「本当に不器用なんです。でも…きっと、いちばん、感謝してます」


「…新曲の歌詞は、ほとんど<その人>のことをーー」


「あっ…すみません!今のは聞かなかったことに…」


「2人だけの…秘密、なんです」
 
525: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/28(土) 20:24:08.78 ID:jvx8NVUe.net
<にこside>


「海未といるのは、すごく楽しかったの」


「だから、もっと一緒にいたいと思った」


「気がついたら…海未が隣にいることが普通に思えてきて」


「あの子がいないときは本当に調子が狂ったわ。…いても狂ってたけどね」


「もちろん、3日間合宿に行くなんて聞いたときも、例外じゃなかった」


「あんたたちが帰った後、にこは『肩の力を抜いて行きなさい』って、海未に言ったの」


「でもそれは…たぶん、にこは激励なんてできなかったから」


「本当は行ってほしくない、なんて、言えるわけないでしょ…?」


「あの子に言ったことは全部嘘じゃないつもり。また前みたいになるんじゃないかって、心配もしてたから」


「だけど…自分に嘘、ついてたのかもね」
 
526: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/28(土) 20:25:18.48 ID:jvx8NVUe.net
<海未side>


「ーーええ、そうですね。秘密を共有できる関係にまでなれたことは、嬉しいことです」


「ああ、そういえば、<その人>はすごいんですよ」


「そこまで近しい関係になれたからでしょうか、私の内心を、確実に見抜いてくれるんです」


「先日も、大会を意識して緊張してしまっていたときは、合宿は『肩の力を抜いて行きなさい』と…」


「その言葉だけで、気持ちがすっかり楽になったのを覚えています」


「そのときだけではありません。私はいろいろは場面で、<その人>の言葉に救われてきました」


「でもだからこそ…かもしれませんね」


「この胸が、とてつもなく苦しくなるのは…」
 
527: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/28(土) 20:26:13.90 ID:jvx8NVUe.net
<にこside>


「ことりには自分に素直になれなんて言われたけど…」


「やっぱりにこには難しいわ」


「相手に面と向かって話すときは、どうしてもひねくれちゃうみたい」


「ーーそう。ケータイのメールは、にこが素直な言葉で話すことができる唯一の媒体だったの」


「…ことりには気付かれてたのよね。にこが2日目から本調子じゃなかったこと」


「なんとか自分を保とうとはしてたのよ?でもやっぱり…海未のいないμ'sはなんか味気なくて」


「ーー早く会いたい。ただ、ただ、そう思ってた」
 
528: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/03/28(土) 20:27:01.06 ID:jvx8NVUe.net
<海未side>


「ーー消灯前に、みんな携帯電話を確認するでしょう?私もそのひとりでした」


「1日目。母から健康を訪ねるメール、2人の幼馴染から応援のメールのほか、<その人>からの近況報告のメールも届いていました」


「ただの近況報告…しかし、私は<その人>からメールが届いたというだけで喜びを感じてしまうのです」


「そして2日目。昨日は<その人>からの1通しか届いていませんでした」


「1日目と同じく、そのメールを開くまでは心が浮かれていたと思います。ですがーー」


「読んでしまってから、私は言いようのない苦しさに襲われました」


「それからは、<その人>のことばかりが頭に浮かびました」


「私の隣に<その人>がいないことが…寂しいと思いました」


「…メールには、ただ一言、こう、書かれていたんです」



「ーー『会いたい』、と…」
 
530: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/28(土) 23:06:14.42 ID:jVsq7P6W.net
<にこside>


ことり「…『会いたい』、か…」


にこ「最初はそんな正直なの送るつもりなんてなかったわよ」

にこ「書き直そうと思ったら、間違えて送信ボタン押してて…」

ことり「ことりはストレートでよかったと思うよ。海未ちゃん、相当鈍いもん」


ことり「それで…返事は、来たの?」


にこ「うん…『もうすぐ、あえますよ』、ってね…」

にこ「なぜか全部ひらがなだったんだけど…」

ことり「!」

にこ「そのときのにこはそれで納得してたわ」

にこ「…いや、無理やり納得しようとしてたのかも…」

にこ「だって…今はもう…思い出すだけで、息が苦しく…」


ことり (海未ちゃんがひらがなでメール打つときは動揺しているとき…)

ことり (もしかしたら…)




ことり「ねえ、にこちゃん」

ことり「もう単刀直入に聞くよ」


ことり「海未ちゃんのこと…どう思ってるの?」
 
531: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/28(土) 23:39:26.38 ID:jVsq7P6W.net
<海未side>


海未「ーーそこからは、部長が見た通りです…」


部長「…ふーん、なるほどね」


海未「私はあのメールを見て、初めて気づきました」


海未「…私には、<その人>が必要なんだ、ということに」


海未「もう私の心はこんなにも、あの人に依存してしまっているのです」


海未「あの人のことを考えるだけで苦しくなるんです…!」


海未「私だって…会いたい…」



海未「ーーこの感情が、わかりません…っ」



部長「…」


部長「そこまで出てて、なんでわからないのよ…」


海未「え…」


部長「…自分で考えてみて。<その人>は海未にとってどんな存在なのか」



部長「海未はその人のこと、どう思ってる?」
 
533: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 00:15:36.67 ID:Bxnocm8X.net
<にこside>


にこ「どう……って…?」


ことり「そのまんまの意味だよ、にこちゃん」


ことり「ことりはね、にこちゃんに、この気持ちに気づいてもらいたくて言ったんだよ?」


ことり「自分に素直になって、って」


ことり「でもたぶんもう…わかってるよね?」


にこ「…っ」



私は自分の心に問いかける。


深呼吸をすると、今まで絡まっていた糸が、少しずつ解けてくるような気がした。


こんなに簡単なことだったのだろうか。


埋もれていた感情が、溢れてくる。




「ーー海未…大好き」




言葉が零れた。
 
536: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 13:23:12.92 ID:Bxnocm8X.net
<穂乃果side>


う~ん、自販機全部回ったけどにこちゃんいないや…

ことりちゃん、校舎で見つけてくれたかな…

とりあえず昇降口に行ってみよう。


…。


穂乃果「ーーあれ、いない……?」


まだ見つかってないってこと!?


とりあえずことりちゃんと合流しなきゃ!



と、靴を脱いで再び走り出そうとしたときだった。



『海未ちゃんのこと…どう思ってるの?』



この声…ことりちゃん?
 
537: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 13:47:02.26 ID:Bxnocm8X.net
この声…。

昇降口の近くの空き教室から聞こえるみたい。


足音を立てないように近づく。


扉が開いていたので、そっと覗いてみると。


ーーことりちゃんの後ろ姿と、髪をボサボサにしてポロポロと涙を零すにこちゃんの姿があった。


…ついに、来たのかな。このときが。



『ーー海未…大好き』



消え入りそうな声。

でも私にははっきりと聞こえた。

だってーー

私も、おんなじ気持ちを持っていたんだから。



穂乃果「ダメだ…ちょっとだけ…妬いちゃうな…」アハハ



でも、決めたから。

2人を応援するって。

…練習も、もう終わる頃だね。




穂乃果「ーーさて、最後の仕上げ、かな」
 
539: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 17:58:57.26 ID:Bxnocm8X.net
<にこside>



何分間、こうしていたのか…


想いを自覚してから涙が止まらなかった私を、ことりは何も言わずにずっと抱きしめてくれた。


それはもう、枯れるまで泣いた。


ようやく涙が枯れたときには、もうすっかり日が落ちる頃だった。
 
540: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 17:59:43.39 ID:Bxnocm8X.net
にこ「…こ、とり……っ、もう、だい、じょうぶ…だから…」


ことり「…落ち着いた?」


にこ「…」コクリ


ことり「…やっと気づいてくれたね、本当の気持ちに」


にこ「…ありがとう、ことり」


ことり「ふふっ、どういたしまして♡」


にこ「それから…迷惑、かけたわね…」


にこ「みんなにも…」


ことり「みんなには、ことりから先に帰っていいって伝えてくるよ。髪とか、整えたいでしょ?」


にこ「…何から何まで、悪いわね」


ことり「いいのよ♪」


そして、

それじゃあ行ってくるね、

と、ことりは立ち上がったのだけれど。





穂乃果「ーーその必要はないよ」


ことにこ「「…!」」
 
541: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 19:42:45.63 ID:Bxnocm8X.net
ことり「穂乃果、ちゃん…?」


穂乃果「みんなには、にこちゃんは体調不良で帰って、ことりちゃんは付き添いって伝えてあるから、大丈夫だよ」


穂乃果「あ、それと…これ、制服とか、部室に置いてあった荷物ね」


にこ「穂乃果…」


穂乃果「…もう完全下校時間になるけど」


穂乃果「………あと1時間で、海未ちゃんたちのバスが学校に帰ってくるよ」


にこ「…!」


穂乃果「にこちゃんなら…わかるよね?」


にこ「…」


にこ「…恩に着るわ、穂乃果」



私は穂乃果から荷物を受け取り、教室を出た。
 
542: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 20:41:53.84 ID:Bxnocm8X.net
<ことりside>


ことり「穂乃果ちゃん、ごめんね…」


ことり「にこちゃんを見つけてから、何も考えられなくなっちゃって…」


穂乃果「いいんだよ。それより、にこちゃんが無事に見つかってよかった」


ことり「はぁ~、それにしても、穂乃果ちゃんに美味しいとこ全部もってかれちゃったなぁ~」


穂乃果「えへへ…。ごめんね」


穂乃果「…でもね、ことりちゃん」


穂乃果「さっき穂乃果がにこちゃんに言ったこと…」




穂乃果「ーーあれ、嘘なんだよね」




ことり「え…?」
 
544: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 22:21:44.39 ID:Bxnocm8X.net
<海未side>



『…自分で考えてみて。<その人>は海未にとってどんな存在なのか』


『海未はその人のこと、どう思ってるの?』



帰りのバスの中。

私は、朝、部長に問われたことをずっと考えていた。


にこはとても頼りになる存在で…

アイドルとしても先輩としても仲間としても尊敬できる…

私は、にこといると楽しい…

にこがいなければ寂しいと思う…

もう、私はにこ無しの生活なんて考えられないほど依存していて…

今だって…


海未「早く、会いたいです…にこ…」
 
545: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 22:22:41.02 ID:Bxnocm8X.net
また、胸が苦しくなる。


海未「……ぐ…っ」


思わず胸を押さえると、隣の席に座っていた部長が背中をさすってくれました。


海未「はぁ…、はぁ…っ」


海未「ーー何度も、すみません…」


部長「…」


部長「あのね、海未」


部長「こういうのは、無理に考えて出てくるものじゃないの」


海未「え…」


部長「その人を見たとき、考えたとき、自然と溢れ出してくるものなのよ」


海未「そう…なんですか…」


海未「あの、すみません…私のせいで、寝れなかったですよね」


海未「お疲れだと思うので…お休みになってーー」


部長「今さら遅い」


海未「え」


部長「…もう、学校着くよ?」
 
546: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 22:23:20.36 ID:Bxnocm8X.net
海未「…あ」


窓の外に目を遣ると、馴染んだ、3日ぶりの風景が広がっていた。


海未「私…こんなに長い時間、考え込んでいたんですね…」


部長「気づくの遅すぎ」クスッ



やはり部長の言っていたように、無理に考えてわかるものではなさそうです。

しかし、こうなってくるとどうしても本人に会いたいと思ってしまいます…


早く…明日になればいいのに…



想いが高まる中、バスは学校に到着したようでした。

なんとなく窓の外を見つめて…


海未「!」ハッ


私は思わず息を呑みました。



見間違えるはずもない。

夕焼けの赤の中、佇んでいるのはーー



海未「ーーにこ…!」
 
549: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 22:50:40.74 ID:Bxnocm8X.net
この時間ならμ'sの練習は終わっているはずなのに、なぜにこが学校にいるのか。


そんな疑問は、一瞬で考えの外に追いやられた。


もう何も考えられない。


にこから、もう目が離せない。


心の底から、何かが溢れてくる。



海未「私は…、私は…!」




ーー "好き" が、溢れてくる。




海未「…ぁ…………」




ーー "大好き" が、溢れて、止まらない。





私は、バスが止まり、扉が開いた瞬間に、外へ飛び出していた。
 
551: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 23:16:43.79 ID:Bxnocm8X.net
<部長side>


部長「ーーあっ!海未!」


バスの扉が開いた途端に、飛び出していった海未。


部員A「えっ!?園田さん!?」

部員B「ど、どうしちゃったんだろう…」


そんな突然の出来事に、バスの中は騒然。


部長「みんな静かに!海未のことは気にしないでいいから」




海未のやつ…

弓も、矢筒も、カバンも、全部置いていって。


部長「何が『お疲れだと思うので』よ」



部長「…まったく、世話が焼けるんだから」
 
560: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/02(木) 18:08:19.28 ID:vTYDBA1F.net
<海未side>


無我。

その言葉がこれほどまでにしっくりとくる場面は、今まで一度たりともなかったでしょう。

この気持ちを伝えたい。

その一心だけで、私は愛しい人に駆け寄りました。


にこ「海未!」

彼女が私の名前を呼ぶだけで、鼓動がいっそう早くなる。


海未「にこ!」

私はそのまま、にこに抱きつきました。

にこが驚いた声を上げようが、かまいません。

誰かに見られていたって、かまいません。



だって、私はきっとーー

ずっと、こうしたかったのだと思うから。
 
561: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/02(木) 18:09:07.71 ID:vTYDBA1F.net
にこ「ちょ、ちょっと、離れなさいよ…っ!誰が見てるか…」

海未「嫌です!にこから離れたくありません!」ギュッ

にこ「わ、わかったから!くるしい…っ」


………。


ドク.. ドク.. ドク..


海未「ーー聞こえますか?私の、心臓の音…」

にこ「し、知らないわよ…!///」

海未「さっきから、胸が苦しくて仕方がないんです…」

海未「…にこのせい、ですよ?」

にこ「え…?」

海未「『会いたい』なんて送られてきて、私がどんな気持ちだったかわかりますか?」

海未「本当は、私だって早く会いたかった…!」

海未「もう、私には、あなたがいないと駄目なんです…」


にこ「…」



海未「ーーやっと気付きました。…自分の本当の気持ちに」
 
562: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/02(木) 18:09:53.82 ID:vTYDBA1F.net
<にこside>


この3日間、ずっと会いたかった海未。


その海未が、名前を呼びながら駆け寄ってきて。


いきなり自分に抱きついてきたら。


驚くし。恥ずかしいし。


…でもそれ以上に、ドキドキして。


逆にこっちの心臓の音のほうがうるさいんじゃないかって、思うくらい。


やっぱり海未のこと好きなんだって、嫌でも自覚してしまう。


でも、どうせこれだって無自覚でやってるんでしょ?


こっちはさっき、ようやくあんたが好きってわかって、これから告白しようって思ってたところだってのに。


「本当は、私だって早く会いたかった…!」

「もう、私には、あなたがいないと駄目なんです…」


やめてよ…。

こんなこと言われたら、勘違いするじゃない。


期待してしまう。けれど、その反面。


こうしている間に、いつのまにか主導権を握られている自分に苛立ちを覚える。


こうなったら。



ーーまずはそのうるさい口を塞いでやりましょうか。



熱に浮かされたまま、私はそんなことを考えていたような気がする。
 
564: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/02(木) 19:47:26.56 ID:vTYDBA1F.net
<海未side>



海未「ーーやっと気付きました。…自分の本当の気持ちに」


人生初の恋。

人生初の告白。


海未「私は…にこのことが…!」


私は勇気を出して臨みました。



ーーけれど。



海未「……っ!?」


声を絞り出すのと、視界が動転するのは、ほぼ同時でした。



気がついたときには、


両頬は小さな手のぬくもりに包まれ、


唇には何か柔らかいものが押し付けられており、



見開いたままの瞳が映すのはーー目を閉じた想いびとの顔。
 
565: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/02(木) 19:48:47.36 ID:vTYDBA1F.net
一瞬、頭の中が真っ白になる。


いったい何が起こっているのか全くわからなくて、


唇から忍び入る熱い吐息の気配を、私はどこか遠くに感じていた。


まるで1時間くらいそうしていたかのような錯覚を覚える。


が、止めたままの息が苦しくなり、耐えきれなくなる直前、


始まりと同じくらい唐突に、にこの手が、顔が、バッと離れた。



にこ「…ご、ごめん…っ!///」


自分でも信じられない、とでも言いたげな表情のにこは、片手で口を押さえ、バツが悪そうに目を伏せている。


その頬は心なしか赤く染まっていて。


唇に残る、熱の余韻。


働かない頭が、今のはいわゆる口付けというものであるのだと、ようやく認識した。


海未「~~っ///」カァアアア


途端、身体が熱くなる。


海未「ど、う、して…」


掠れた声でそう呟くのが、精一杯でした。
 
567: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/02(木) 20:41:32.72 ID:vTYDBA1F.net
<にこside>


気づいたときには、もう遅かった。


沸き起こるのは、「やってしまった」という罪悪感。


どうして、なんて言われたって、自分でもわからない。


そもそもここで待っていたわけは?


その目的も果たさずに、あんなことをしてしまうなんて…




ーーごめん、海未。

嫌なら拒否してくれて構わない。

いっそ突き放してもいいから。

不器用なのは、許してほしい。
 
568: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/02(木) 20:42:38.04 ID:vTYDBA1F.net
<海未side>


長いこと、沈黙が続きました。

あるいは、そう感じていただけで、たったの一瞬だったのかもしれませんが。


相変わらず、にこは目を伏せたままでしたが、しばらくするとようやく口を開きました。



にこ「…海未は、ずるいわよ」


海未「え…」


そして、ぽつり、ぽつりと話し始めました。



にこ「メールでは素っ気ない返事しかくれなかったくせに、本当は早く会いたかった、なんて」

にこ「どれだけにこの感情を揺さぶったら気が済むのよ…」

にこ「それに…」

にこ「やっと会えたと思ったら1人であんなにまくし立てて」

にこ「にこだって、話したいことはあったんだから…」

海未「にこ…」

にこ「その…いきなり…キ、キスしたのは、ごめん…」

にこ「あんなことした後で言うことではないのはわかってる…」

にこ「けど…今日はこれだけは言いたくて待ってたの」

にこ「…聞いて、くれる?」


私はコクリと頷く。

すると、にこは大きく深呼吸をして。

真っ直ぐに私を見据えて、言いました。





にこ「……好きなの」


にこ「…どうしようもないくらい、海未が好き」
 
574: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 23:33:08.76 ID:1GfdRtbN.net
<にこside>


ーーついに、言ってしまった。

でも、後悔はしていない。

胸のつかえが取れたような、そんな感覚。



だけど一方の海未はなんとも複雑な表情。

頬を桃色に染めながら、目を逸らし、口を尖らせていた。


さ、さすがに何か言ってくれないと気まずいんだけど…


少し焦りを感じ始めた頃。

返ってきた返事は、イエスでもノーでもなかった。



海未「…にこのほうが、ずるいじゃないですか」


にこ「な…っ」


目の前の少女は拗ねたように言う。


海未「にこは横取りしました」



海未「…私だって…にこと同じこと…言いたかったのに…」ボソッ


にこ「え…?」



ぼそりと聞こえた呟きに、聞き返そうとするのと、小さな吐息が近づいてくるのは、ほぼ同時だった。
 
575: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 23:40:53.94 ID:1GfdRtbN.net
ふわり、とシャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。




ーーそれは、一瞬。






チュッ






……え…っ、これって…
 
576: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 23:41:38.25 ID:1GfdRtbN.net
ぼやけた視界にもはっきり映るのは、

林檎よりも真っ赤になった海未。




海未「い、今は…、これで、勘弁して、ください…///」



にこ「…っ///」




少し触れられただけなのに。


左の頬に集まる熱。




ねえ、…"今は" って……




にこ「…それって」







海未「…はい」





海未「ーー私も、好きです。…にこのこと」
 
577: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 23:42:26.24 ID:1GfdRtbN.net
にこ「嘘…」


思わず嘆息が漏れる。


海未「こ、こんな嘘、つくわけないじゃないですか…」


海未「…いつからか、なんてわかりません」


海未「でも…ずっと前から、好き、だった気がします…」


にこ「幻…じゃあ、ないのよね…」



奥底から、言葉では言い表せないようか感情が沸き起こり、心を満たしていく。



だって、これって、つまりーー




海未「…両想い、ですね」ニコッ   


にこ「~~っ///」



愛しい彼女の照れ笑いに、


いっぱいに満ちた感情は、ついに溢れ出した。
 
578: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 23:54:17.73 ID:1GfdRtbN.net
そのあとは、自分でもよくわからない。

もう何も考えられなくなって、

いてもたってもいられなくなって、

気づかないうちに海未の胸に飛び込んでいた。


海未「きゃっ!///」


海未「な、何してるんですかっ!離れてください…!」


にこ「さっき離れたくないって言ったのはどこのどいつだっけ?」ギュゥゥ


海未「あ、あれは…っ!///」



にこ「…離さないわよ」


海未「え…」
 
579: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 23:55:05.00 ID:1GfdRtbN.net
にこ「あんたは危なっかしいから、にこがいないと駄目なの」


にこ「おとなしくにこに支えられなさいよね?」  


にこ「…嫌だって言っても逃がさないんだから」ギュッ


海未「にこ…///」


抱きしめる腕に力を込めると、海未も背中に手を回し、躊躇いがちに抱きしめ返す。


海未「…やっぱり、にこはずるいですよ」


海未「私も、支えますから。…他人のために頑張りすぎる、にこのことを」


にこ「……ふんっ、か、勝手にしなさいよ///」





ーーふたつの鼓動が、重なる。


どこからか、拍手の音が聞こえてきたような気がした。


まるで、私たちを祝福するように。
 
584: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/04(土) 22:47:21.16 ID:Taafe1u/.net
ーーしかし、ふと気づく。


パチパチパチパチ.....


この拍手の音は。



実際は"気がした"わけなんかじゃなくて…




にこ「……ちょっと…なに、これ…」




辺りを見回すと、私たちは取り囲まれていた。



にこ「あ、あんたたち…!」



そして、その中心にいたのは。





穂乃果「ーーおめでとう、2人とも」
 
585: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/04(土) 22:49:45.37 ID:Taafe1u/.net
海未「ほ、のか…」

私たちを取り囲んでいたのは、μ'sのメンバーと…あとは長いやつを持ってるから弓道部員かしら。


ことり「やっとくっついたんだね♡」

部長「もう、見せつけてくれちゃって」

真姫「にこちゃんが海未のこと好きだったなんて意外だわ」

希「まあ、ウチから見たらバレバレやったけどね」

絵里「私もわからなかったけど…とってもお似合いよ」

花陽「にこちゃん、海未ちゃん、お幸せに」


海未「い、いつから…見ていたんですか…」

凛「最初っからバッチリにゃー☆」

海未「」


海未「…」フラッ


ぽすっ。


にこ「ちょっ、海未…!?///」


海未は耳まで真っ赤にして、私の肩に顔を埋めてしまった。


…ていうか……まだ抱きついたままだったわ…


周り (ニヤニヤ)


にこ「あんたたち!笑ってんじゃないわよっ!」
 
586: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/04(土) 22:59:10.63 ID:Taafe1u/.net
にこ「だいたい穂乃果っ!ダマしたわね!?」

にこ「あの感じだとみんな帰ったと思うじゃない!」

穂乃果「えへへ、ごめんね。でも、穂乃果は確かに『にこちゃんは体調を崩して帰った』って嘘はついたけど…」


穂乃果「『みんなが先に帰った』なんて、一言も言ってないよ」ニヤッ


にこ「ぬ…。確かにそうだけど…」


穂乃果「…」


海未も、だいぶ落ち着いたのかそろそろと顔を上げる。

穂乃果はひとつ、ふうっ、と息を吐いてから、私たちふたりを見て言った。



穂乃果「……見届けたかったんだよ、2人のこと」


海未「穂乃果…」

にこ「…」


穂乃果「海未ちゃんとにこちゃんには、幸せになってほしいから」
 
587: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/04(土) 23:00:13.85 ID:Taafe1u/.net
穂乃果「それと…にこちゃん」


今度は、穂乃果は真剣な瞳で私だけを見据える。


にこ「…」


でも、すぐに微笑みを浮かべて。


穂乃果「ーー絶対に、海未ちゃんを幸せにしてね」


穂乃果「もしできなかったら…穂乃果が取っちゃうから」ニコッ


ことり「ことりからも、お願いしますっ♪」


にこ「穂乃果…ことり…」


本当に、あんたたちは…



にこ「ふっ。そんなの、当たり前じゃない」


にこ「ーー望むところよ」
 
588: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/04(土) 23:09:28.94 ID:Taafe1u/.net
隣を向くと、海未とパチリと目が合う。


にこうみ「…っ///」


瞬間的にお互い目を逸らそうとするけれど…


でもなんか、いっそ見せつけてやろう、って気になっちゃって。


…ふふっ。


穂乃果がああいうこと企んだのも、隠れてコソコソ付き合わなくてもいいように、ってことなのかもね。



ーー私は背きかけた海未の顔を再び自分のほうに向けて…


もう一度、触れるだけのキスをした。
 
589: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/04(土) 23:14:50.87 ID:Taafe1u/.net
海未「な、ななななな…//////」


海未「な、に、するんですか…!みんな、見てます…///」

にこ「さっきだって見られてたんだから、一緒よ」

海未「あ、あれとは状況がちがーー」

にこ「海未」ギュッ

海未「…!」


にこ「…それじゃ、行くわよ」グイ


私は海未の手を引いて駆け出した。
 
590: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/04(土) 23:15:43.80 ID:Taafe1u/.net
海未「ど、どこに行くんですか!?」


にこ「…わからないわ」


海未「え?」


にこ「どこだって、いいじゃない」


にこ「……ふたりきりに、なれる場所なら」



どくん…どくん…

鼓動が高鳴る。


ーーでも、もう苦しくなんかない。


つないだ手のあたたかさが、その理由を雄弁に伝えている。


海未「…ふふっ。そうですね」

海未「ついていきますよ、どこまでも」



迫り来る闇が、私たちの影をやさしく包み込んでいった。
 
593: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 08:07:32.20 ID:Mc/l2q6I.net
<ことりside>


………………………………。

……………………。

………。



絵里「ーーそれじゃあ、私たちも帰るわね」

希「ばいばい、2人とも」

穂乃果「うん、今日はありがとう!」

ことり「また明日♪」




穂乃果「ーーこれで、全員帰ったね」

ことり「うん、そうだね」

穂乃果「結局にこちゃん、荷物持っていかなかったね…」アハハ

ことり「ふふっ、あとで届けに行こっか」

ことり「…それにしても、穂乃果ちゃんにはやられたなぁ」

ことり「まさかあんなに用意周到だったなんて」

穂乃果「…私は、場を用意しただけだよ。告白する勇気を出したのは、あの2人」

穂乃果「それに…にこちゃんにその勇気を与えたのは、ことりちゃんでしょ?」ニコッ

ことり「穂乃果ちゃん…」

穂乃果「2人には、幸せになってもらわないと、ね」

ことり「…」

穂乃果「…」

ことり「ーーねえ、穂乃果ちゃん」

穂乃果「…」


ことり「穂乃果ちゃんは…どうして泣いているの?」
 
594: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 23:43:18.75 ID:Mc/l2q6I.net
穂乃果「な、泣いてなんか…ないよ…」

ことり「じゃあどうしてこっちを向いてくれないの?」

ことり「穂乃果ちゃん、まさか本当は…!」

穂乃果「ちがうよっ!」

ことり「…っ!?」

穂乃果「あれは、本当だよ…。2人を応援するって決めたんだもん…!」

やっとこっちを向いてくれた穂乃果ちゃんがはらはらと涙を流しているのは、暗くなった中でも一目瞭然でした。

ことり「じゃあ、なんで…」

なんで、なんて、本当は聞かなくてもわかってるんだと思う。

でも、聞かずにはいられなかったんです。


穂乃果「…あのね」

穂乃果「あのね、ことりちゃん…」

ことり「うん」

穂乃果「穂乃果はね、本当はーー」


声を絞り出すように話し出した穂乃果ちゃんには、今にも壊れそうな弱さと、それを乗り越えようとする強さが入り混じっていました。
 
595: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 23:44:01.72 ID:Mc/l2q6I.net
穂乃果「本当は、未練があったんだと思う」


穂乃果「おかしいよね。自分から応援するって決めたくせにさ」


穂乃果ちゃんは、自嘲するように笑う。


穂乃果「今日までの穂乃果はたぶん、海未ちゃんのこと、恋愛的な意味で、まだ好きだったんだ」


ことり「好き…『だった』…?」


穂乃果「そう。…でも、今日の海未ちゃんたち見てたら、吹っ切れちゃった」


穂乃果「ことりちゃんも見てたでしょ?穂乃果、やっと気付いたんだ」


穂乃果「ーー海未ちゃんにあんな顔をさせるのは、にこちゃんしかいないんだ、って」


穂乃果「穂乃果じゃ…ダメ…だったんだ、って…」


ことり「ほのか、ちゃん…」
 
596: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 23:46:04.55 ID:Mc/l2q6I.net
穂乃果「で、でもね!」


穂乃果ちゃんは乱暴に涙を拭ったけれど…

私には、いつものように無理しているようにしか見えませんでした。


穂乃果「そのおかげで、未練を完全に断ち切ることができたみたい」



穂乃果「これで…私の初恋は、終わり」



もうすっかり暗くなり、姿もうっすらとしかみえなくなりました。

でもその声は、はっきりわかるほど震えていて。

私はただ、無言で穂乃果ちゃんを抱きしめることしかできなかった。


穂乃果「こ、とり、ちゃん……」

穂乃果「ぅ…、うっ…」


穂乃果「ぅああああぁあああぁああああっ…!!」


少女は腕の中で、堰を切ったように泣き叫ぶ。



ーーねえ穂乃果ちゃん。

もしかして、あんなふうに仕組んだのって。

自分自身に諦めさせるため、って意味もあったのかな。


悲しい? つらい? すっきりした?


きっと混乱してると思う。だから、今は。


ことり「気が済むまで、泣いていいんだよ」

ことり「…暗くて誰も、見てないから」



閑散とした闇は、少女のすべての感情を溶かしていった。
 
623: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 10:57:15.30 ID:VjUke/R3.net
<海未side>


ーーこうして、またいつもの日常が戻ってきました。

でも、少しだけ新しくて、特別。

私とにこは、朝、お互いの家に交互に迎えに行くことにしました。

並んで歩いているとき、にこが自然に指を絡ませてくるのは、きっと当分慣れないのでしょうけれど。

靴箱に入っていた一通の手紙に、いじけたように頬を膨らませるにこは、とても可愛らしくて。

これから、後輩からの告白を断るとき、私は「心に決めた方がいるので」とでも言うのでしょうか。

それとも、「お付き合いをしている方がいるので」、でしょうか。

にこと過ごすひとつひとつの場面を想う度、思わず笑みがこぼれてしまう。


ーーそんな、初めての幸せを噛みしめていた日の午後。

私たちは、久しぶりに部室でお弁当を食べていました。
 
624: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 11:01:27.09 ID:VjUke/R3.net
ーー部室ーー


ふたりで、お弁当の蓋を開ける。


海未「にこのお弁当は、相変わらず彩りがいいですね」

にこ「褒めたって何も出ないわよ」

海未「私はただ、本当のことを言っただけですよ」


彩りだけでなく、栄養バランスも考えられたおかず。

それらを感心して眺めていると。


海未「ーーあっ、これ、もしかして…」


見覚えのある、私の好物が目に入りました。


にこ「そうよ、にこにー特製ごぼうの甘辛揚げ☆」

にこ「海未のやつを食べてから、研究して、作ってみたの。一口あげるわ」

海未「ありがとうございます。ではーーって…え?」



箸を伸ばしかけて、私は固まってしまいました。


なぜなら…




にこ「ほら、何やってんのよ。…あーん」



おかずを掴んだにこの箸が、目の前に突き出されていて。
 
625: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 11:05:16.09 ID:VjUke/R3.net
海未「そ、そんな!じ、自分で食べられますからぁっ!///」

にこ「い、いいから食べなさいよ!こっちまで恥ずかしいじゃない!///」

海未「いや、でも…っ!」


しかし、私がいくら抵抗しようとしても、にこは頑として箸を戻そうとはしませんでした。

こうなったら、腹をくくるしかありませんね…。


海未「わ、わかりましたよ!口を、開ければいいんですよね…」ア-ン

にこ「まったく、最初から素直にそうしてなさいよ…。はい」

海未「……んっ///」パクッ


口に入った瞬間から広がる風味。

醤油の辛さの中に、ほんのりとまろやかな甘みがなんとも絶妙で…


にこ「…どう?」

海未「美味しいです、とても。この風味は…ハチミツ、ですか?」

にこ「さすがね、正解よ。海未のやつには入ってなかったかしら」

海未「ええ。…この味付け、にこらしくて好きです」ニコッ

にこ「そ、そう…///」

海未「それにーー」


ちょっぴり辛くて、でも、甘くて、やさしくて…

これって、まるでーー


にこ「ん?何よ」

海未「…ふふっ、内緒です」

にこ「はぁ!?気になるじゃない!教えなさいよ~!」プニッ

海未「ひゃぁっ! つ、つねらないでくらさい~っ!痛いれす~~っ」


……………

………


 
626: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 11:08:58.33 ID:VjUke/R3.net
にこ「ーーはぁ……。海未って意外と頑固よね」ハァ

海未「にこも人のこと言えるんですか?」クスッ

にこ「随分言うようになったじゃない」


にこ「…あっ、でも、そういえば」

にこ「こうやって部室で二人きりになるのも、久しぶりね」

海未「ええ。でも、まだ2回目なのに、なぜかこうしているのが当たり前のように感じる…。不思議です」


にこ「…別に、不思議なことはないわよ」

海未「どうして、ですか?」

にこ「だって、そりゃあ…」


にこ「これからはこれが当たり前になるんだから♪」


海未「にこ…」
 
627: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 11:12:36.15 ID:VjUke/R3.net
にこ「あ、でも」

にこ「たまには4人で、ってのもいいかもね」

海未「4人、ですか…?」

にこ「穂乃果とことりよ。海未が望むなら、別にあんたたち3人だけでもいいわ」

海未「あ…」


私は、ようやく気づきました。

にこは、私たち3人の関係にまで気を配って…

やはり、にこは私のことをよく理解してくれているのですね…。


海未「もう…」

海未「そういうところが…好きなんです」ボソッ

にこ「………馬鹿///」


少しの沈黙。

でも、こんな時間すら幸せに思えてしまって。


海未「…///」

にこ「…///」


しばらくの間、部屋にはふたりの息づかいだけが聞こえていました。



しかし、突然。


ガチャ 


部室のドアノブが、捻られたのです。
 
629: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 15:02:21.05 ID:VjUke/R3.net
ガチャ


にこうみ「「!?」」


そして、入ってきたのはーー



凛「もう終わったかにゃ?しつれいしまーす♪」

絵里「ちょっと凛!ノックくらいしないと…」

穂乃果「ノックならさっきしたよ~!」

希「まあ、ウチらの部室なんやし、遠慮するほうもおかしいやん?」


にこ「あ、あんたたち!?いきなり入ってくるんじゃないわよ!」

海未「そ、そうですよ!びっくりするじゃないですか…!」


花陽「ご、ごめんね…。さっきノックはしたんだけど…」

真姫「謝る必要もないでしょ。2人がずっとイチャイチャしてて気づいてくれなかっただけなんだから」


海未「い、イチャ…!?そ、そんなことしてませんっ!」

にこ「そ、そうよ!にこ達はお弁当食べてただけだしー」


ことり「それにしては、あんまり減ってないみたいだけど…」


にこうみ「」ギクッ  


真姫「…反応、あからさますぎ」

希「…なぁ、にこっち?さっき海未ちゃんに『あーん』ってーー」


にこうみ「「希っ!!」」//////
 
630: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 15:03:25.16 ID:VjUke/R3.net
海未「もう、やめてくださいっ!そもそも何しに来たんですか!?」

にこ「まさか、からかいに来ただけってわけじゃないでしょうねぇ!?」


しかし、するとみんなは互いに顔を見合わせて。


穂乃果「う~ん、それは違うかなぁ」

絵里「ええ、むしろ逆ね」


にこうみ「…?」




ことり「ふふっ、実はね」


ことり「今日はふたりにプレゼントがあるんですっ♪」
 
631: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 15:06:38.71 ID:VjUke/R3.net
にこうみ「ぷれぜんと…?」

ことり「へへへ…」


無邪気な子どものような笑みを浮かべて、ことりは持っていたおしゃれな箱を開け始める。

すると、中に入っていたのはーー


にこうみ「「…!」」


ことり「じゃーん☆ 昨日の夜、穂乃果ちゃんと作ったの~」


ことりが箱の中から取り出したものは、なんと1ホールケーキでした。


凛「凛たちは、2人をお祝いしに来たんだよ!」

穂乃果「この苺はね、穂乃果が並べたんだっ♪」


にこ「そんなこと、しなくていいのに。昨日、散々『お祝い』してもらったから」


真姫「なにそれ、嫌味?」

花陽「も、もしかして…嫌だった…かなぁ…?」シュン


海未「そんなことありませんよ、花陽」


花陽「え…?」


海未「にこは、これでもみんなには感謝しているんです」ニコッ 


にこ「え」


海未「昨日なんか、『こういうのも案外ーー

にこ「ちょっと海未っ…!!」アセアセ


海未「もう…にこは素直じゃないんですから」


穂乃果「あはっ、海未ちゃんがそれ言っちゃう?」クスッ


海未「穂乃果…」

海未「…ふふっ、それもそうかもしれませんね」
 
632: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 18:08:46.35 ID:VjUke/R3.net
ことり「はいはーいっ」パンパン


少し騒がしくなったところで、ことりが手を叩く。


ことり「時間もないし、そろそろメインいこっか♪」

6人「「おぉーっ!」」


にこうみ「メイン…?」


ことり「そうよ。さっ、穂乃果ちゃん♪」

穂乃果「うんっ!」


にこうみ「???」


ことりの促しに頷いた穂乃果は、ゆっくりとこちらへ近づき、左手に隠し持っていたものを私たちに差し出しました。


穂乃果「…はい、これ。2人で持って」


海未「これは…」


差し出されたものは、どこの家庭にもあるような1本の食事用ナイフでした。


にこ「2人で…持つの…?」


穂乃果「そうだよ」


ケーキ… ナイフ… 2人で…

頭の片隅に、ひとつのイメージが浮かび上がる。


いや、でも、まさか…。


ーーしかし、その想像は当たってしまったようで。



ことり「…こほん。それではさっそく」


ことり「ケーキ入刀をしていただきたいと思いますっ♡」
 
633: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 18:10:52.10 ID:VjUke/R3.net
にこ「ま、待ちなさいよっ!そういうのって結婚式で…!」

希「まあまあ、似たようなもんやん?」

凛「じゃあいっそ結婚するにゃ~!」 

ガヤガヤ


海未「…」


私は机に置いてあるケーキをちらりと見る。


真っ白な生クリームをたっぷりと塗ったスポンジケーキの上に、ハート型に苺を並べたシンプルなもの。

ウエディングケーキを模したものだから、というのはあるのでしょうが、ことりがいたならもっと凝ったものを作ることもできたはずです。

ですがーー私たちにはこれこそが最高だと思いました。

飾り気のない、ありふれた幸せ。

これ以上でも、これ以下でも、ありませんから。


それにーー


にこ「だから~、にこが言ってるのはそういうことじゃ…………って」


にこ「……海未…泣いて、るの?」
 
634: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 21:21:08.44 ID:VjUke/R3.net
私は気づいてしまったのです。

とは言っても、勝手な連想にしかすぎないのですが。


生クリームの白はことりのイメージカラー。

上に乗った苺は穂乃果の好物。


私たちの幸せは、穂乃果やことりがいて初めて成り立つものなのだと。

そんなことを、改めて実感してしまって。



海未「……いえ…なんでも、ありませんっ…」ゴシゴシ


海未「…穂乃果、ことり。それから、みんなも」

海未「今日は本当に、ありがとうございます」


ことほの「海未ちゃん…」

にこ「海未…」


海未「にこ」

海未「一緒に、やらせていただきましょう」


にこ「…もう、しょうがないわね」フッ
 
635: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 21:23:46.00 ID:VjUke/R3.net
私たちは、穂乃果からナイフを受け取る。


ナイフを差し出す左手首からは、常時つけていなければならなかったリストバンドも、あの悲惨な傷も、すっかり消えていました。

さすがは西木野総合病院、といったところでしょうか。


ーー思えば、穂乃果は私のことを「好き」と。そう、言ってくれたんでしたね。

「好き」は人を狂わせ、時に傷つける。

私もいつか、にこに狂ってしまうのでしょうか。

それとも…もう狂ってしまっているのか。


何はともあれ、穂乃果の傷が消えて本当によかった。



海未「…穂乃果」

海未「あなたは昨日、にこに言いましたよね。…絶対に、私を幸せにするように、と」

穂乃果「うん、言ったよ」

海未「…それはもう、叶っています」

穂乃果「…!」

海未「μ'sのみんながいて、穂乃果やことりがいて、そしてーー」


海未「隣ににこがいるだけで、私は十分に幸せですから」ニコッ


にこ「海未っ…」ウルッ


海未「…で、ですから、その……」


海未「ずっと、一緒にいてくださいね?///」
 
636: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 21:24:49.80 ID:VjUke/R3.net
重なる、ふたつの手。

少しだけ、ギュッと力が込められた気がしました。


にこ「あ、当たり前じゃない…。言ったでしょ?」


にこ「……離さない。嫌だって言っても逃さない、って」


にこ「ずっと…一緒よ」ニコッ


にこの瞳から、涙がはらりとこぼれ落ちる。

その涙も美しいと思ってしまう私は、やはり狂っている。溺れているのかもしれません。


海未「はい…ずっと、一緒です」フフッ


なぜでしょうか。頬に熱いものが伝うのがわかりました。

おかしいですね、さっき拭ったばかりなのに…。


でも、そんなこともどうでもよくなるくらい、私の胸はいっぱいでした。
 
637: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 21:25:41.23 ID:VjUke/R3.net
穂乃果「…そっか」クスッ

穂乃果「なんか、2人とも、変わったね」

海未「そ、そうでしょうか…?」

花陽「わ、わかりますっ!恋をすると変わるって言うし!」

凛「海未ちゃんは前より可愛くなったにゃー!」

真姫「にこちゃんは前よりキモチワルくなったかも」

希「そうやね。にこっち、教室でたまに授業中ニヤニヤしとったもんなぁ?」

にこ「あ、あんたたち…」

真姫「じょ、冗談よ。にこちゃんは…いろいろ積極的になった…かな?」

絵里「そうね。でも、にこがリードしつつも対等な関係ってとこかしら。ハラショーよ☆」

希「2人には陰がない。今もこれからも幸せやって、カードも言うてるよ」


海未「陰が…」

にこ「ない…?」


ことり「…つまり、2人とも素直になれたってことじゃないかな♪」


にこうみ「…!」



ことり「ふふっ、それじゃあ、海未ちゃん、にこちゃん」



にこうみ「…ええ」
 
638: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 21:26:57.47 ID:VjUke/R3.net
私たちは、ナイフを握り直しました。

互いの体温が伝わってくる。

顔を見合わせると、にこは優しく微笑みました。


にこ「ーーいくわよ、海未」


私たちは今、愛という幸せに溺れている。


海未「…はい」


けれどこのナイフは、何かを傷つけるものなんかじゃなくて。


にこうみ「せーのっ」




私たちは、最高の仲間たちに見守られながら、

真っ白なページに、

「ふたり」の証を刻んだのでした。







ルート2 happy end
 
639: (きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ 2015/04/11(土) 21:28:12.99 ID:VjUke/R3.net
ようやく完結です。
特にひねった内容が書けなくて申し訳ない…。
できるだけ無駄なシーンを無くそうとは頑張りましたが、伏線回収しきれてない部分があったらごめんなさい。
何はともあれ終点まで付き合ってくださったセブン兄さん方、本当にありがとうございました!
もしよければ、にこうみ書いてください。
 

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1425825652/

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