彼方「遥ちゃんに男ができた……」【SS】

～12月24日～

彼方「はぁ……」

果林「……」ﾎﾟﾁﾎﾟﾁ

彼方「あぁ～……」

果林「……」ｽｯｽｯ

彼方「……ねえ果林ちゃん、聞いてる？」

果林「聞いてるわよ」ﾎﾟﾁﾎﾟﾁ

彼方「だったらなんで反応してくれないの～？」

果林「その話は朝から百回は聞いたわ。もう飽き飽きよ」

彼方「はぁ………」ｽﾞｰﾝ

彼方「あぁ～……」

果林「……」

彼方「うぅ～………」ｼｸｼｸ

果林「……」

彼方「……はぁ」

ｽｸｯ!

果林「どこ行くの？」

彼方「ちょっと海に飛び込んでくる」

果林「んなっ！？」

ｶﾞｼｯ!

果林「ちょっと彼方！？どういうつもり！！？」

彼方「放してっ！！遥ちゃんのいないセカイなんて、もう生きてる意味なんてないんだよ～っ！！」

果林「わかった！！わかったわよ！！ちゃんと話聞いてあげるからっ！落ち着きなさい！！！」

彼方「はぁ……」

果林「で、何があったの？」

彼方「遥ちゃんに男ができた……」

果林「その話はもう聞いたわ。それで、何があったの？」

彼方「はぁ……」

果林「……」

彼方「あぁ……」

果林「それってそんなに落ち込むことなの？むしろ喜ばしいじゃない、妹に彼氏ができるなんて」

彼方「んなっ！？」

ｶﾞﾀｯ!

彼方「喜ばしくないっ！！全然喜ばしくないよ～っ！！遥ちゃんがどんな悪い男にたぶらかされてるかなんて考えたら、彼方ちゃん心配で心配で……」

彼方「ううっ、こんなことになるんだったら彼方ちゃんがちゃんと身辺調査して悪い虫を追い払っとくんだったぁ……」

ｶﾞﾁｬｯ!

エマ「こんにちは～。あれ？彼方ちゃんもしかして寝不足？目の下にクマさんが出来てるよ」ﾁｮｲﾁｮｲ

彼方「うん、実は昨日色々あって……お昼寝にも身が入らなくて……」

エマ「う～ん、それは大変だね～。お昼寝不足は健康に良くないよ？」

彼方「あはは……」

エマ「彼方ちゃん、なにかあったの？」

果林「遥ちゃんに彼氏ができたんだって」

エマ「え～、すごーい！良かったね、彼方ちゃん！」

彼方「ううっ、エマちゃんまで……全然良くなんかないよぉ、はぁ……」

彼方「ううっ、こんな思いをするのなら、いっそのこと花や草に生まれたかったなぁ……」

エマ「あっ！それなら私は彼方ちゃんをそよそよ～って揺らすそよ風に生まれ変わりたいなぁ～」

果林「エマ。あなたはもう少し空気を読みなさい」

果林「で、相手はどういう人なの？」

彼方「わからない……」

果林「え、遥ちゃんに彼氏を紹介されたんじゃなかったの？」

彼方「わからない……」

果林「それくらいはわかるでしょう？昨日のことなんだから」

彼方「ううん、そういうことじゃなくて……」

彼方「わからない、わからないの、自分のことが……もし彼氏なんか紹介された日には、勢いのまま包丁で刺しちゃわないか心配で、すごく怖い……」

果林「さらっと真顔で冗談言うの止めなさい。はっきり言って物凄く怖いわ」

エマ「う～ん、でも遥ちゃんのことなんだし、きっとすごく素敵な人に巡り合えてるんだろうなぁ～」

果林「そうね、私もそう思うわ」

彼方「でも～っ！！でももしもだよ！！？遥ちゃんがダメ男にでも引っかかってたりしたら……」


？？『え？遥ちゃん？うーん、ぶっちゃけヤリ目的かな～ん』

？？『ぐふふふふっ、東京でハーレムなんて天国でありますなぁ～』


彼方「なんてことを想像しただけで……ぐふっ、胸が張り裂けそうなほど苦しいよぉ……」

果林「絵にかいたようなクズ男ね。今時見たことも聞いたこともないわ」

彼方「はぁ～……もうお終いだぁ……」

果林「……待って。彼氏を紹介されたんじゃないとしたら、どうして彼方は遥ちゃんに彼氏が出来たって気づいたの？」

彼方「遥ちゃんに、言われた……」

果林「彼氏ができたって？」

彼方「ううん、違う。けど……」

果林「けど？」

彼方「えっとね、あれは昨日の夜ご飯の時の話なんだけど……」

………

…

———

はるかな「いただきま～す！！」

ｶﾀｯ

彼方「ふっふっふ～……あのねあのね遥ちゃん、実は実は～、彼方ちゃんは遥ちゃんにサプライズがあるんだよ～」

遥「えー！なになにお姉ちゃん？教えてっ！」

彼方「それはね～……でで～ん！なんと、クリスマスはバイトのお休みをもらっちゃったんだ～！」

遥「へ？クリスマス？」

彼方「うんっ！せめてクリスマスだけは遥ちゃんと一緒に過ごしたくてね、店長に無理言ってお休み入れてもらっちゃったんだよ～」

遥「あー……」

彼方「だからね～、クリスマスは思い切って彼方ちゃんがとびっきり豪華な

遥「ごめんお姉ちゃん」

遥「クリスマス……私の方が用事あるんだ」

彼方「……へ？」

遥「ごめんお姉ちゃん！わざわざお休み入れてもらったのに……」

彼方「えっと……用事ってなあに、遥ちゃん？」

遥「ごめん！それも、言えない……」

彼方「……」

遥「あと、明日も少し、帰りが遅くなるかも、です……」

彼方「……」

遥「ほんとにごめんね、お姉ちゃん……」

彼方「……」

遥「……」

彼方「……遥ちゃんの用事は、クリスマスに関係すること？」

遥「ふぇっ！？う、うん、まあ、するかな……」

彼方「大事な予定なの？」

遥「う、うん。大事と言えば、大事……」

彼方「……」

遥「……ごちそうさまでした。食器は私が洗っておくね」

遥「それと明日も朝練で早く出なきゃだから今日はお風呂入ってもう寝ちゃうね？お姉ちゃん、お休みなさい」

彼方「あ、うん。お休み……」

ｽﾀｽﾀ

彼方「……」

彼方（クリスマス、大事な予定……これって、もしかして……？）

彼方「……」

彼方「すぅ～……はぁ～……」

彼方「ふぅ……」

彼方（……うわああああああっ！！！！！）

彼方（ついにっ！！！ついに遥ちゃんに悪い虫がぁっ！！！！？）

彼方（うわぁぁぁ！！！もう何もかもお終いだよぉ……）

————

彼方「というわけなの……」

果林「そっ、そうね。確かにそれは色々と察するところがあるわね……」

彼方「……こうしちゃいられない」

ｽｸｯ!

果林「どこ行くつもり？」

彼方「江東区から男を駆逐してこないと」

果林「んなっ！？」

ｶﾞｼｯ!!

彼方「放して～っ！！遥ちゃんに実害が及ぶ前に、彼方ちゃんが成敗しとかないと～っ！！大事な大事な遥ちゃんが～っ！！」

果林「やめなさい！！まだ彼氏が江東区にいると決まったわけでもないのにっ！！」

彼方「だってぇ……」

果林「とにかく今はゆっくり休みなさい。妄想で議論していても仕方がないわ」

彼方「でもっ！」

果林「でもじゃないわ。ほら、エマのこと枕代わりに使っていいから」

エマ「うん！た～んとお休みっ、だよ～」

彼方「ううっ、果林ちゃん、エマちゃん……」

ｷﾞｭｯ!

彼方「……すぅ」

果林「相変わらず眠るの早いわね」

エマ「ふふっ、よっぽど疲れてたんだね」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

彼方「すぅ……」

エマ「～♪」

果林「エマは今の話、どう思う？」

エマ「彼方ちゃんの気持ちもわかるよ～、私も故郷の弟や妹のこといっつも心配だもん」

果林「そうね。でも遥ちゃんは彼方と同じくらい、ううん、それ以上にしっかりしてるところもあるから、ちょっと過保護

彼方「遥ちゃん！！？」

ｶﾞﾊﾞｯ!!

果林「っ！！？」

彼方「……」

果林「こっ、今度は何……？」

彼方「……」

果林「……？」

彼方「……バイトいかなくちゃ」

エマ「彼方ちゃん、今日もお仕事？」

彼方「うん。クリスマスにお休みもらうから、その分頑張って働かなくちゃだよ～」

彼方「それにこの季節はどこも大商戦だし、人手不足で求人も多いから時給もちょびっとだけ良かったりするんだぁ～」

果林「ふーん、そうなのね」

彼方「ふふふっ、遥ちゃんの分まで、彼方ちゃんがしっかり頑張らない、とっ！！とうっ！」ｽﾀｯ!

エマ「お仕事頑張ってね！彼方ちゃん！」

彼方「へへっ、彼方ちゃんバリバリ働いてくるんだぜ～。二人とも、じゃあね～」

ｽﾀｽﾀ

果林「……相変わらず忙しそうね、彼方ってば」

エマ「果林ちゃんは行かなくていいの？」

果林「さすがにバイトに向かう彼方を引き止めたりしないわ」

エマ「そうじゃなくて、モデルのお仕事今日あるんじゃなかったの？」

果林「モデル？」

果林「……」

果林「……あら、そういえばそうね」

果林「……」

ｽｸｯ!

果林「ああっ！！」

———

スタッフ「朝香果林さん、お疲れ様でしたー」

果林「はい、こちらこそありがとうございました。失礼します」

ｳｨｰﾝ

果林「ううっ、さっむ……」

果林「さすがにこの時間となると冷えるわね、はぁ～っ、はぁ～っ……」

果林（でも……いつもよりお給料多めに貰っちゃったわ♪）

果林「ふふふっ、これも彼方の言ってた年末効果なのかしらね～」

果林「～♪」ﾙﾝﾙﾝ♪

果林「～♪」

『今ならクリスマス大特価！サービス価格でーす！！』

果林（クリスマス……そうね、世間はもうそんな期間なのね）

果林「街中がこうも浮かれた雰囲気だと、なぜかこっちまで嬉しくなっちゃうのよね……♪」

果林「ふふふっ、ふふふっ♪」ﾙﾝﾙﾝ

『おいしいケーキ！クリスマスのお供におひとついかがですかー？』

果林「ケーキ……そうね、エマに一つ買っていってあげようかしら？今日のお礼に」

果林（それに今日の私はお給料で懐が温かいのよね～、うふふっ♪）

『ケーキ！おいしいケーキはいかがですか～？』

果林「……あら？」

遥「ケーキ、ケーキを一つ景気よく、なんちゃって……」

果林「ねえ、もしかして遥ちゃん？」

遥「ふぇっ！？えっと………あっ！！もしかしてお姉ちゃんの」

果林「そうよ、朝香果林。彼方と同じ同好会のメンバーよ」

遥「は、はい……いつもお姉ちゃんがお世話になっています」ﾍﾟｺﾘ

果林「もしかしてその服、ここでお仕事をしているのかしら？」

遥「あ、や、えっと、これは………あのっ！お姉ちゃんには内緒にしていてくれませんか？」

果林「どうして？」

遥「お姉ちゃんにはバイト禁止って言われてて……でもっ！クリスマスは人手不足みたいで求人も多いし、ちょっとだけ時給も弾むみたいだから……」

遥「私がちょっとだけ頑張れば、きっとお姉ちゃんも少しは楽ができるんだろうし、少しでもお金の足しになればいいなって……」

果林「……」

遥「ですから、どうかお姉ちゃんにだけは……」

果林「ねえ、どうでもいいけどその格好寒くないの？」

遥「えっ？」

果林「そのサンタみたいな格好よ。隙間風とか入りそうだけど」

遥「はっ、はい、それなりには……」

果林「だったらこれを使うといいわ、ほら」

ﾋｮｲ!

果林「カイロ。撮影で使わなかったやつだからあげるわ」

遥「ええっ！？でも……」

果林「見てるこっちが寒いわよ。遠慮なく使ってちょうだい」

遥「あっ、ありがとうございます……」

ﾍﾟﾘｯ!

遥「わっ！！あったかぁ～………♡」

果林「ふふっ、良かったわ。それとケーキの売り子をしているのよね？だったら私に一つ売ってくれないかしら？」

～翌日～

彼方「うわぁ～………」

果林「おはよ、彼方……うわっ、髪ボサボサじゃない！」

彼方「はぁ～……」

果林「どうしたのよ、クリスマスなのに辛気臭い顔しちゃって」

彼方「だって、遥ちゃん、昨日も帰り遅くて……どうしたのって聞いても、目も合わせてくれようとしないし……」

彼方「彼方ちゃんがこうして働いている間も遥ちゃんの身に危険が及んでるって考えちゃうと、バイトにも身が入らなくて……」

彼方「はぁ～……せっかくお休みとったのに、最凶最悪のクリスマスになりそうだよぉ……」ｸﾞﾃﾞｰ

果林「へぇ、そう言えば彼方今日はバイトお休みなのよね。だったら放課後、私に付き合ってくれない？」

彼方「ねえ、どこ行くのー？」

果林「……」ｽﾀｽﾀ

彼方「彼方ちゃんをどこへ連れてくつもりー？」

果林「……」ﾃｸﾃｸ

彼方「ねーえー？彼方ちゃん今日は遥ちゃんのためにとびっきりのごちそう作らなきゃだから、忙しいんだけどー」

果林「少し買い物するだけよ。終わったら彼方の買い出しにも付き合ってあげるから」

彼方「むぅ……ならいいけど……」

果林「……」

『おいしいケーキ！クリスマスのお供におひとついかがですかー？』

彼方「ケーキ……むむむ、遥ちゃんのために、一つだけ奮発していこっかなぁ……」

『ケーキ！おいしいケーキはいかがですか～？』

彼方「あれ？今の声って……」

果林「そうよ。彼方の求めていた答えがあそこにあるわ」ｸｲｯ

彼方「え？答え？それって……遥ちゃん！！？」

遥「おいしいケーキ！クリスマスのお供におひとついかがですかー？」

彼方「うそぉっ！！？ほんとに遥ちゃん！！？なんでぇ！？」

果林「これで彼方の悩みの種は摘み取れたんじゃないかしら？」

彼方「むむむ、遥ちゃん、サンタの衣装、街角で………もしかしてそういうプレイなの～っ！！？」

果林「そんなわけないでしょ。いい加減彼氏の設定から離れなさい」

果林「遥ちゃんだって頑張ってるみたいじゃない。何もこの時期に給料が良くなるのは彼方に限った話じゃないのよ？」

彼方「……」

果林「もちろん言いつけを破っているのはよくないとは思うわ。だけど今宵は聖なる夜。許してあげてもいいんじゃない？」

彼方「……」

果林「……彼方？」

彼方「ううっ、えぐっ、ずびっ………」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

果林「うそっ！？マジ泣き！！？」

彼方「だってぇ、遥ちゃんがちゃんとお仕事してる姿が嬉しくてぇ……みんなの役に立とうと一生懸命頑張ってる姿が嬉しくてぇ……」

彼方「ずびっ、ぐずっ……」

果林「……」ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ

彼方「……あのお店のケーキ買い占めてくる」

果林「んなっ！？ちょっと！？待ちなさいっ！！」

ｶﾞｼｯ!!

彼方「放して～っ！！今日お給料日で彼方ちゃんのお財布は余裕があるから大丈夫～っ！！」

果林「そのお金は直接遥ちゃんのために使ってあげなさいっ！！そっちの方がきっと喜ぶわよっ！！」

彼方「でも～っ！！せめて遥ちゃんがお世話になってるお店の店長さんに気持ちだけでも～っ！！」

果林「わかった！！わかったわよっ！！じゃあ私が代わりに買ってあげるからっ！！」

～その夜～

ｶﾞﾁｬｯ!

遥「ただいま……」

彼方「あ、遥ちゃん！おかえり～」

遥「あっ、うん……それと、今日はごめんなさい……」

彼方「ん～？なにが～？」

遥「そっ、それは、せっかくのお姉ちゃんのお休みなのに……」

果林「謝る内容が違うんじゃないかしら？」

遥「わっ、果林さん！！？」

エマ「私もいるよ～」ﾋｮｺｯ!

遥「あっ、えっと、じゃあ、もう……」

果林「……」

彼方「さあさあ遥ちゃん、そんなとこに突っ立ってないでこっちにおいでよ～。なんと今日は、とびっきりに美味しいケーキもあるんだよ～」

遥「ケーキ……？」

ﾁﾗｯ

遥「うそ、その箱……」

彼方「～♪」

遥「……あ、あのっ！！お姉ちゃん！！言いつけを破って本当にごめんなさいっ！！」ﾍﾟｯｺﾘ!!

彼方「ん～、彼方ちゃんはな～んにも見てないからね～」

遥「……えっ？」

彼方「ふふふっ、聖なる夜には誰のことも許したくなっちゃうんだぜっ☆それに～……」

ﾋｭｯ!

遥「ひゃっ//」

彼方「遥ちゃんもケーキ、買ってきてくれたんでしょ？」

遥「あっ、それはね、お姉ちゃんがあそこのお店で昔から一番大好きなやつ、店長さんが持って行っていいよって……」

彼方「うんうん♪覚えててありがとね～、ほら」

ﾊﾟｶｯ!

彼方「ふふふっ、姉妹揃って考えることは同じなんだね～」

遥「お姉ちゃん……」

エマ「でもこれでケーキ6個になっちゃったね～」

果林「だから言ったのよ。彼方は買わなくていいって」

彼方「でも～、遥ちゃんの頑張ってる姿見たら買いたくなっちゃったんだも～ん」

果林「だからそのお金は直接使ってあげなさいって言ってるじゃない……」

彼方「遥ちゃん、今日はケーキ二個食べていいよ～」

遥「えっ、いいの！？」

彼方「うん。た～んとお食べっ」

遥「じゃあ……わーい！！ありがとお姉ちゃんっ！！」

果林「それなら私の分は彼方食べていいわよ？エマの分一口貰えば十分だもの」

彼方「だめっ！今日は果林ちゃんも食べなきゃダメなの～っ！！」

果林「でも」

彼方「でもじゃないんだよ～！遥ちゃんが頑張って売ったケーキちゃんと食べてくれないと、彼方ちゃんおこだよ～！！」

果林「……わかった、わかったわよ、今日だけはしっかり食べるわ……クリスマスだし」

果林（まあクリスマスくらい私だって欲望に素直になったとしても……きっと許してもらえるわよね？）

彼方「ふふっ、みんなでクリスマスを祝えるなんて、彼方ちゃんは世界一の幸せ者だなぁ～♪」

終わりです。お粗末様でした
クリスマスまで待ちきれませんでした……

微笑ましい

乙
遥ちゃんの彼氏って言葉で銀魂パロがよぎったのは内緒

平和な雰囲気で良かった
クリスマス気分を味わえたよ
乙

乙
幸せ空間でいい

こういうのでいいんだよ

乙 ありがとう
ありがとう

おつおつ
これが見たかった