にこ「すれ違っても分からないくらい」【長編SS】

フェス限にこ SS


404: 2020/05/14(木) 08:42:38.24 ID:jvcUdbuM
~幕間 亡くした欠片~



穂乃果『久しぶりにこうやって集まれて嬉しいよ』


真姫『……前置きはいいから、早く本題に入りなさい』


穂乃果『あはは……ごめん。今日皆に集まって貰ったのは、多分皆も気付いてると思うけどにこちゃんの事なんだ』


海未『……にこが私達の前から姿を消して一年……ですね』


絵里『それも丁寧に連絡先まで変えて、ね』


真姫『……。』ガンッ


希『…真姫ちゃん、そんなに強く机叩いたら怪我するよ』


ことり『かよちゃん、凛ちゃん……大丈夫?』


花陽『私のせいで……』


凛『違うよかよちん、凛が何回もにこちゃんの家を訪ねたりしたから……!にこちゃんにプレッシャーを掛けちゃってたんだ……』


真姫『うるさいわね!今更もう一々気にしてたって仕方ないでしょ!?』


穂乃果『真姫ちゃん!……私達が言い争っても仕方ないよ』

405: 2020/05/14(木) 08:42:58.80 ID:jvcUdbuM
希『まぁまぁ皆とりあえず落ち着こ、ね?』


絵里『そうよ。……ここで言い合いをしていても、にこが帰ってくる事は無い、そうでしょう?』


ことり『にこちゃん…どうして……』


真姫『もう居なくなった人の事なんていいでしょ……もう私は帰るわ』


凛『真姫ちゃんは悲しく無いの?大事な仲間が居なくなっちゃったんだよ!?』


真姫『……何よ、悲しくないわけ無いでしょ!?……でも、何があろうと私達を置いて消えた事には変わらないのよ……』ポロッ


絵里『真姫…』


希『そんな!にこっちはちょっと気にし過ぎちゃっただけやん、きっと……きっと帰ってきてくれるよ』


穂乃果『穂乃果も希ちゃんと同じ意見だよ。いつにこちゃんが帰ってきても暖かく迎え入れてあげよう?』


真姫『私は……反対ね。一度私達から背を向けておいて、どの面下げて戻ってこられるのよ』


絵里『……そうね。理由はどうであれ、簡単に許す事は出来ないわ』



希『にこっちの気持ちは皆も分かってるやろ?!』


絵里『初めは私も許すべきだと思ってた。……でも、もう遅いわ。……皆がこの一年、どれだけ涙を流したか分かる?』


希『それは……』


真姫『じゃあこの話はもうおしまいね、私はもう行くから。』


絵里『私も行くわ、それじゃあね』


ことり『真姫ちゃん、絵里ちゃん……』

406: 2020/05/14(木) 08:44:33.91 ID:jvcUdbuM
穂乃果『皆はどう思ってるの?……にこちゃんの事』


ことり『ことりは、悲しいなって……今はそれだけしか思い付かないよ』


花陽『うぅ……ごめんねにこちゃん、花陽が……』


凛『……かよちん…………!』


海未『……二人とも、泣かないで下さい。大丈夫、大丈夫ですから……。…ことり。すみませんが、二人に付き添っていて貰えませんか?』


ことり『うん、分かったよ……』


海未『ありがとうございます。…少し三人で話してきます』

407: 2020/05/14(木) 08:45:09.90 ID:jvcUdbuM
穂乃果『改めてだけど、二人はどう思ってるの?』


希『ウチは、信じるよ。きっと戻ってきてくれるって。……でも…』


穂乃果『うん、今の所はもうどうする事も出来ないよね…』


海未『……。』


穂乃果『海未ちゃん?』


海未『これからは、にこの話はもうしない事にしましょう。……徒に皆を傷付ける事になります』


希『……そう、やね…………』


穂乃果『じゃあ、海未ちゃんは……』


海未『いいえ、ですが私達はずっと仲間なんです。絵里や真姫も、その事は理解しているでしょう。……きっと、だからこそ……皆の事を傷付けたにこの事を許せないんだと思います』


海未『確かに、にこがした事はどんな事情があるとはいえ私達を裏切るような行為です。ですが何があったってにこの居場所はここです。…ここであるべきなんです……』


穂乃果『うん、そうだよね。…とにかく、私達三人だけでもにこちゃんが帰ってきた時に元の形に戻れるように働きかけよう』



…………

……




~幕間 終わり~

409: 2020/05/15(金) 01:37:52.20 ID:KwxeTsPK
バイトの休憩中に割と書けたので中途半端な所までではありますが投下しちゃいますね

410: 2020/05/15(金) 01:38:16.00 ID:KwxeTsPK
穂乃果「それじゃあ、久々の全員集合を祝しまして!かんぱぁい!」


『かんぱ~い!!』


10月も半ばに迫ったある日の土曜日。無事に海未の事も解決したという事で、今日は穂乃果の誘いでもう何年ぶりにもなるμ'sが全員こうやって集まる場が設けられたのだった。

あれから家の事で忙しくなった海未とはあの日以来会って無かったけど、髪の毛が少し伸びているのが印象的だった。

それにしても、μ'sの皆でお酒が飲めるなんて私も歳を取ったものよね、としみじみと思う。




穂乃果と希がビール、真姫ちゃんがワイン、凛がサワー、絵里とことりがカクテル、花陽が日本酒を頼んでいるのを見てなんかイメージ通りだなぁ、なんて思ったりもして。


……ちなみに、花陽が日本酒を飲むのを見て海未があっ、私も……と頼もうとしたけど、それは全力で阻止。


そういう訳で、海未には烏龍茶を頼み一人だけ仲間外れなんて可哀想だし、私もオレンジジュースを頼んだ。

411: 2020/05/15(金) 01:38:38.51 ID:KwxeTsPK
乾杯から少し、食事を楽しんでいるとふと凛が話を始める。


凛「いやぁ~、それにしても、こうやってまた全員で集まれるなんて思っても見なかったよ」


絵里「ホントにね。…最初に真姫から連絡貰った時なんて驚いて紅茶噴き出しちゃったわよ」


真姫「私だって、穂乃果から聞いた時は耳を疑ったわよ」


痛い所を突かれた。……特にこの二人には沢山迷惑掛けちゃったしね。


にこ「うぐっ……その節は、大変ご迷惑をお掛けして……」


花陽「まぁまぁ…私達はもう気にしてないから、ね?」


希「うんうん、こうやって戻ってきてくれて嬉しいって皆思ってるんよ?」


ことり「そうだよね。…海未ちゃんも、お家の事が無事に解決して良かったぁ」


海未「そうですね、私はまだ皆に面と向かってお礼を言えて居なかったのでこの場で言わせて下さい。本当にありがとうございました」

412: 2020/05/15(金) 01:39:22.62 ID:KwxeTsPK
凛「それにしてもなんか意外だよね、海未ちゃんとにこちゃんが同棲なんて。ちょっと気になるよね!」


穂乃果「あ、確かに!2人と一緒に電話した時とかもそういう事はぜんぜん聞いてなかったから気になる!」


にこ「同棲って……変な言い方するんじゃないわよ!」


にやにやと笑いながらそう言い出すおバカ組二人。


希や絵里が二人の意見に賛成して、話題は私達の共同生活の話へ。


ことり「きっと楽しいよね、私も憧れちゃうなぁ…」


真姫「ルームシェアなんて今どき珍しくも無いでしょ。ま、でも興味はあるわね」

413: 2020/05/15(金) 01:39:48.60 ID:KwxeTsPK
希「実際のとこどうやったん?教えてにこっち!」


にこ「…って言っても普通よ、普通。ねぇ、海未?」




詮索されてもアレだし軽く流そうとする私が海未にパスを投げると


海未「……ぇ、あ、そ、そうっ……ですね!」


しどろもどろになりながらみるみるうちに顔を赤くする海未。
…ちょっと、折角流そうとしたのにそれじゃそういう訳にいかなくなるじゃない……


穂乃果「わ~、怪しい!ねぇ海未ちゃんどんな感じだったか教えてよ!」


海未「…あぁもう、分かりましたよ!穂乃果、お酒を頼んで下さい!!素面じゃやってられません!」


希「お、いいねぇ~!店員さ~ん!」


キラキラと目を輝かせて詰め寄る穂乃果の圧力に押されヤケになったかのようにお酒を頼む海未。



流石にこればかりは海未の言う通り少しお酒入れないとやってられないわね……と、私も海未と同じウーロンハイを頼むように希にお願いした。

414: 2020/05/15(金) 02:23:19.18 ID:KwxeTsPK
そこからは皆から私達の生活について根掘り葉掘り聞かれ、色々と話した。


一緒にご飯を作ったり、合宿の時のように一緒に眠ったり。そんな話を聞いて皆はいいなぁ、楽しそうだなぁ、なんて言って羨ましがって。


言っても差し支えない事を答えていく私達。

って言っても、別に元々やましい事も無いから話してないことなんて少しだけなんだけどね。
記憶にあるちょっとやましい事も、話したら海未に迷惑掛かるだろうし内緒にしておいた。

それに、少し位は二人だけの秘密があってもいいじゃない?

なんて…そう思うのは、まだ私に未練があるからなのかも知れないわね。

415: 2020/05/15(金) 02:26:22.36 ID:KwxeTsPK
二つの意味で『よい』も深まって来た頃。そろそろお開きかというタイミング。

海未は結局ウーロンハイ1杯で酔っ払っていて。それを見て希は何故かなんだか怪訝そうな顔をしていた。


海未「穂乃果ぁ、お酒が残っていますよ!たるんでます!」


穂乃果「うぇえ!?これ溶けたお水……まぁいっか、飲むよ……」


ことり「海未ちゃん本当にお酒弱いんだねぇ……」


凛「一番たるんでるのは海未ちゃんだよ……」


花陽「あはは…前から皆で集まった時に飲んでる姿を見た事無かったけど、しっかり者の海未ちゃんにしては意外だね」


絵里「あら、それも可愛くていいんじゃない?ねぇにこ?」


にこ「なんで私に振るのよ……」

416: 2020/05/15(金) 02:28:19.61 ID:KwxeTsPK
希「ま、海未ちゃんの事はにこっちに任せるとして…真姫ちゃんはウチが送っていくよ。タクシー呼ぶけど後二人誰か乗っていく?」


真姫「すー……すー………」


凛「も~、真姫ちゃんもあんまり強くない癖してワインとか好きなんだから……」


花陽「凛ちゃんと私は家もここから近いし一緒に帰るね」


穂乃果「私もそこまで遠くないから大丈夫!」


ことり「穂乃果ちゃんが一人になるのが心配だから、私も一緒に帰るよ」


絵里「じゃあ、私が相乗りさせて貰おうかしら」


にこ「ってホントにこんな状態の海未を私が連れて帰るの!?」


海未「なんですかぁ~、私と一緒じゃ嫌だって言うんですか!」


にこ「や、そういう訳じゃないけど……」


希「じゃ、決まりやね?」


言質を取ったとばかりに得意顔をする希。
……ま、こんな状態で一人で帰す訳にもいかないししょうがないか。

417: 2020/05/15(金) 02:28:51.71 ID:KwxeTsPK
会計を済ませ店先まで出ていく。

タクシーが来た所で解散になり、フラフラと歩く海未に肩を貸して家まで送り届けようと歩き出すと、真姫ちゃんをタクシーに乗せた所の希に呼び止められた。


希「にこっち。ちょっといい?」


にこ「なによ?…ちょっと待っててね海未」


海未を近くの手すりに捕まらせ、希の元へと近寄る。


希「…一応先に聞いておくけど、海未ちゃんってこんなにお酒弱いん?」


にこ「は?何よ藪から棒に。でもそうね、前に一緒に飲んだ時はもう少し耐えてた気がするけど……」


希「やっぱり」


にこ「…?何かあるんならはっきり言いなさいよ」


希「いやね?さっき海未ちゃんがお酒頼んだ時に……」

418: 2020/05/15(金) 02:30:39.03 ID:KwxeTsPK
皆と別れ人もまばらになった道を海未と二人で歩く。
先程までと同様に肩を貸して密着していると、ふわりと彼女の匂いが香ってくる。

一緒に住んでいた時の嗅ぎなれた匂いではなく、再会したばかりの時のようにどこか懐かしい落ち着く香りだった。


海未「えへへ、にこはちっちゃいのに頼りになりますね」


にこ「ちっちゃいは余計よ!…ったく……」


海未「…いい匂い。……やっぱりにこは落ち着く香りがします」


ドキッ、と胸が高鳴る。……なんで同じこと考えてんのよ、こいつは……


にこ「……そ」


なんだか恥ずかしくなりそっぽを向いて素っ気なく答える。

そして、ある程度店から離れた所で様子を見るのをやめて核心に踏み込む。


にこ「ねぇ、海未。……貴女本当は酔っ払ってなんて無いでしょ」






ピタッ、と歩みを止める海未。

419: 2020/05/15(金) 02:38:46.16 ID:KwxeTsPK
海未「……気付いていたんですか」


にこ「いや、希からさっきね______」


……





希『さっき海未ちゃんがお酒を頼んだ時に…ウチは確かに店員さんに烏龍茶に替えといて下さい、って伝えたはずなんよ』


にこ『はぁ?…じゃあなんで海未はあんな感じになってるのよ?』


希『何でだろうねぇ……ま、後はにこっちにお任せ、って所かな?』


にこ『…簡単に言ってくれるわね……。なにか理由があるんなら私が聞いてもいいのか分からないじゃない』


希『逆、にこっちじゃなきゃ聞いちゃあかんよ。……海未ちゃんはにこっちに随分懐いてるみたいやから』


にこ『懐いてるって……子どもか』


希『憧れのようなものなんかな。……頑張ってね』


にこ『何を頑張るってのよ』


希『さぁ?まぁでも…逃げちゃいかんよ、海未ちゃんの気持ちから。…にこっちは前科があるからね』


にこ『うぐっ……ホント、いい性格してるわね希…』


希『そうやろ?んふふ、ウチも自分のこういう所気に入ってるんよ♪』




希『しつよいようやけど…逃げたりしない様にね、にこっち。……絶対に、後悔する事になるから』




……

420: 2020/05/15(金) 02:39:31.38 ID:KwxeTsPK
海未「そうでしたか、あれはお茶だったんですね……」


あの時に希の言った言葉の意味は今でも分からない。でも、何か理由があるのなら私が聞いておかなくちゃな、と思った。



にこ「で?一体なんで酔っ払ったフリなんてしてたのよ」


海未「……笑いませんか?」


にこ「何よそれ…とりあえず言ってみなさい」


海未「…たからです」


にこ「?」


海未「にこと、二人きりになりたかったからです」


また心臓が跳ねる。
今度はさっきよりももう一つ大きく鳴ったような気がした。


海未「きっと、私がああしていればにこが私を送ってくれるんじゃないかと思って…」


にこ「…二人になりたかったのはどうして?」


またピタリと足を止め、数秒間無言になる。
えーっと、といい淀んだ後乾いた笑いを浮かべ口開く海未。


海未「……忘れちゃいました」


にこ「嘘つき」


海未「え……?」


それが海未の本心じゃない事は分かった。

…だって、そうじゃなきゃ説明がつかないでしょ?
家の事も無事に解決して、もう海未には懸念する事なんてないはずなのに。…それなのに。どうしていつか公園で話した日のように……




にこ「…なんでまたそうやって悲しそうに笑うのよ」

423: 2020/05/15(金) 04:02:02.23 ID:KwxeTsPK
海未「……。」


にこ「ね、私の思い上がりじゃ無ければだけど、私は海未と仲良くなれたと思ってる。…隠し事なんて、寂しいじゃない……」












海未「親しくなれたからこそ、話せない事もあるんです!!」


聞いた事も無いような大声だった。


思えば、こういう風に海未が感情を顕にする所を見るのは初めてだった。

424: 2020/05/15(金) 04:02:54.17 ID:KwxeTsPK
にこ「何よそれ。…どういう事?」


海未「言ってしまったらこれまでの関係が終わってしまうかもしれない、そう思うだけで喉が締め付けられてるかのように声が出なくなるんです。」





海未「この気持ちが貴女に分かりますか……!?」


にこ「……。」





言葉が、出てこなかった。海未も私と同じだったんだ。


友達とそれ以上の関係の間で揺蕩う私の気持ち。


あの頃の気持ちは、依存関係にあった私達だから芽生えたように勘違いをしていただけで本当は幻だったんじゃないか。


例え海未も私の事を勘違いじゃなく好きで居てくれたとしても、一般的には許されない恋で。


お互いの周りが一斉に見る目を変えるかもしれない。


…だから、伝えることはやめようって。


そう思っていた私と、同じだったんだ。

425: 2020/05/15(金) 04:03:39.75 ID:KwxeTsPK
海未「……本当は今日も、化粧をして行こうと思っていたんです」


にこ「……どうしたの急に?」


海未「姉は向こうの家に帰ってしまっていたので、一人で試行錯誤をしながら」


海未「…それでも、上手くいかなくて。結局集合時間に遅れてしまいそうだったので洗い流してしまいましたが」


海未の意図が分からない。化粧をしようと思ったって、どうして……







海未「……分かりませんか?にこに会うから、と思って出来るだけ可愛くいようって、そう思っていたんです」

426: 2020/05/15(金) 04:04:37.31 ID:KwxeTsPK
海未「我ながら女々しいものですよね。化粧をしてお洒落な格好をして、相手に少しでもよく見られようとして。……それなのに、たった一つの理由で髪の毛は整える為ですら切らずに」


にこ「それって…」


海未「これがにこに切ってもらった髪だったから、そう言ったら貴女は軽蔑しますか?」



気が付かなかった。最後に切ってあげたのは確か真姫ちゃんに連れられる前だったから7月だったはず。


……それから、海未はずっと髪の毛を伸ばしていたんだ。


海未「……気持ち悪い、と思いましたか?」


にこ「そんな事……!!」


海未「それなら、私の事を好きだと。そう言ってくれますか……?」


……咄嗟に、声が出てこなかった。海未の事は勿論好き、大好き。

それなのに、世間体や失う物の事を考えるとどうしても躊躇ってしまった。

427: 2020/05/15(金) 04:05:07.59 ID:KwxeTsPK
海未「……もう、送って頂くのはここまでで十分です。…それでは」


にこ「違っ……!待って……!!」





海未「本当に。本当にもう十分過ぎる程なんです。……ありがとうございました、これからも仲良くして下さい。…友人として……」


先程とは違う意味が含まれた挨拶と共に海未の背中が遠ざかっていく。

ひとり、ぽつんと残された私。


海未は気持ちをぶつけてくれたのに、それを色々と理由をつけて素直には受け取る事が出来なくて。



あれだけ希に念を押すように言われていたのに、結局逃げてしまった。


にこ「好き……好き、なのに……」


ポツリ、と雨が降り始める。


雨に打たれながら私は実家への道程を歩き始めた。

429: 2020/05/15(金) 05:01:25.39 ID:KwxeTsPK
長時間雨に打たれたせいで身体はすっかり冷えきってしまい、次の日高熱を出した。


家族には心配をかけまいと、震える体にムチを打ち電車に乗って住まいの方へと帰る。


やっとの思いで家に着くと、そのままベッドへ倒れ込み意識を失った。

希から連絡が来ていたけど、とてもじゃないけど返せる余裕が無かった。



そしてまた明くる日。昨日よりは多少マシになったけど、とてもまともには動けない。


とりあえず薬を飲み、ズキズキと痛む頭痛を抑え込むと会社に連絡し、休ませて貰えないかと頼み込む。


私はその日、今までで初めて会社を風邪で休んだ。

431: 2020/05/15(金) 05:03:19.28 ID:KwxeTsPK
時刻は昼を回り、薬のおかげかようやくある程度動けるようになった頃、呼び鈴の鳴る音で目を覚ます。


思考が覚束無いまま来客を確認すると


希「やっ、こんな事じゃないかなって思ってたんよ」


ビシっと二本の指を立て、困ったように笑う希の姿がそこにあった。

432: 2020/05/15(金) 05:04:55.57 ID:KwxeTsPK
にこ「で、どうして希がここに…?」


希「いやぁ、昨日電話したんやけど連絡つかなかったから…少し心配になってね」


にこ「いや…そうは言っても仕事とか…大丈夫なの?」


希「あれ?そう言えば言うてなかったっけ、ウチ今写真家やっててある程度時間には都合付けられるんよ」


体調が芳しくないのでリアクションは取れなかったけど、普通に驚いた。

そっか、前に言ってた色んな場所を飛び回る仕事ってこれの事だったのね。


希「もう、にこっちのお母さんも心配してたよ。…あんまり無理せんといてね」


にこ「そう……ん?……ってあんた実家にまで連絡したの?!」


希「仕方ないやん、にこっちが電話に出ないんやもん。…それにお母さんも気付いてたみたいやよ?」


にこ「そっか……心配掛けちゃったわね」


希「えりちにも連絡したら、夕方来てくれるって」


にこ「……あんた達ホントに仲良いわね」


希「ん~、確かにそうやけど、ちょっと違うかなぁ」


にこ「?」

433: 2020/05/15(金) 05:08:21.73 ID:KwxeTsPK
希「にこっちの事だからえりちに相談したんよ。ウチもえりちも、にこっちの事大好きやからね。」


にこ「……恥ずかしい事言うんじゃないわよ」


希「ん~~?長い間一緒に居られなかったんやもん、それくらいはいいやん?」


にこ「…ホント、いい性格してるわ……っ痛ぅ……」


頭に痛みを感じ片手で軽く押さえる。


希「無理させちゃったみたいやね…薬と、ゼリーとか食べやすいもの買ってくるからゆっくり休んでおいて」


にこ「…ごめん、ありがとう」


希「ううん、いいんよ。じゃ、おやすみにこっち」


そう言うと背を向けて歩いていく希。
外へ向かう希の足音を聞きながら、また私は意識を手放した。

438: 2020/05/15(金) 21:35:32.27 ID:FExunY4i
美味しそうな香りに誘われて目を覚ますと辺りは薄暗くなってきていて、私はあのまま夕方まで寝てしまっていたんだ、と気づいた。

寝ぼけ眼のまま匂いの発生源である台所を見ると希がお粥を作ってくれていて。

あぁ、なんかこういう光景を見るのも久しぶりだなぁ、なんて思った。


希の料理を作る姿が、ついこの間までここで料理を作っていた海未の姿と重なって。

エプロンを揺らすその姿をもう一度見たいなんて、そう思ってしまうのはあまりに贅沢過ぎるか。


希「あ、起きてたんやね」


にこ「うん、今起きたわ……色々とやってくれてありがとう」


希「お粥作ったけど食べられそう?」


にこ「ありがと……うどん以外も作れたのね希」


希「当たり前やん、何年一人暮らしやってると思ってるん?」


にこ「絵里は?」


希「1回来たんやけど、にこっちが寝てたから着替えてくるって」


にこ「そう……悪い事したわね」


希「病人はそんな事気遣わなくていいんよ、ほら、あーん」


そう言って病気の子どもにするようにふーふーとスプーンの上のお粥を冷ましこちらへ向ける。

…子供扱いするんじゃないわよ、なんて言ってやろうかと思ったけど、ここまでして貰っておいてそんな事言うのも違うかと考えて素直に従う。

439: 2020/05/15(金) 21:35:56.79 ID:FExunY4i
にこ「ぁむ…………ん、美味しい」


希「うぉ、なんかいけない事してる気分や……」


にこ「…バカにしてんの?」


希「してないしてない!素直なにこっちの破壊力…恐るべしや……もうひと口いる?」


にこ「もう、私もいい大人なんだから一人で食べられるわよ」


また1口食べさせようとする希にそう言うと、器とスプーンを受け取り食べ始める。


薄く出汁で味付けされたお粥はとても優しい味がした。

すっかり平らげてしまうとすぐさま希から水と薬を渡される。聞くと体調悪くなったらこの薬が一番効くんよ、なんて言っていた。


希の渡してくる薬に若干の不安を覚えながらも飲み切ると気のせいかスっと体調が楽になって来るような気がして。


にこ「……スピリチュアルね」



なんて呟いてみた。

443: 2020/05/17(日) 23:06:01.24 ID:x1kyL8vs
絵里「……妬けるわね」


そんな言葉を第一声に絵里が家にやって来る。
何をバカな事を言ってるのよ、なんて毒づいてみるとなんだかあの頃のやり取りのような気がして懐かしくなった。


にこ「絵里も悪いわね、忙しい中心配掛けちゃって」


絵里「いいえ、謝る事なんてないわよ。私も希も好きで来てるんだから」


希「そうやね。さっきも言ったけど、ウチもえりちもにこっちの事大好きなんやから」


にこ「…………ありがと」



聞こえるか聞こえないか位の声で言ってふい、と顔を背ける。二人がにやにやとこっちを見ている所を見るとしっかり聞こえてたみたいね…

444: 2020/05/17(日) 23:07:02.87 ID:x1kyL8vs
絵里「どう?体調は良くなってきた?」


にこ「ええ、もう明日には快復する事が出来そうよ」


希「それならよかった!……で、なんやけど」


一転神妙な顔付きに変わり希が続ける。




希「あの後、一体何があったん?」


表情が固まる。


この事は海未にとっても私にとっても、パーソナルな部分をさらけだす事になる。

それに、そんな事を言ったら希や絵里ですら私の事を穿った目で見ることになるかもしれない。

そう思って言っていいものか迷っていた。

445: 2020/05/17(日) 23:08:04.69 ID:x1kyL8vs
絵里「ねぇ、にこ。私達は何があったとしても貴女の仲間よ」


希「うん、にこっちが今誰にも話せない事で悩んでるんなら、ウチ達を頼って欲しいな」


にこ「……。」


絵里「お願い、もう貴女の力になれないのは嫌なの」


そう言って私の両手を上から包み込む絵里の手。

頑なに言わないでいたけれど、二人の心から私を心配する目に負けを認めゆっくりと自分の気持ちを話していく。


一緒に生活していく中でどうしようもなく海未に惹かれ、好きになってしまったこと。


お互いに依存してしまったから産まれた感情なんじゃないかと考え、全てが解決して立ち直る事ができた海未にとっては一時の気の迷いでしかないと自分の気持ちに蓋をしていたこと。


でも海未の気持ちを聞いてそれが勘違いじゃないんだって知ったこと。


嬉しかった。だけど、これは世間的に許されない恋なんだと。海未の将来を、幸せを奪ってしまう事になるんじゃないか、皆もそれを知ったら離れていってしまうんじゃないかと思って何も言えなかったこと。

446: 2020/05/17(日) 23:09:30.34 ID:x1kyL8vs
全てを伝え、二人の顔を窺うようにすっ、と顔を上げる。


絵里「……バカね、そんな事で私達がにこから離れていくはずないじゃない」


希「うん、それにね。ウチらは皆薄々気が付いてたんよ、二人がお互いに惹かれあってるんやないかなって」


絵里「そうね、特に私達は。それこそ貴女に再会する事が出来た時にはもうすでにね」


希「海未ちゃんの気持ちから逃げちゃダメだって、そう言ったあの日。もしかしたらって思っていたんよ」


にこ「…希……。」


希「でも、やっぱり上手くいかなかったんやね…」


にこ「私…どうしたら……」


希「そんな事聞かなくても分かるやろ?」


絵里「…このまま何も伝えなかったら海未はきっと貴女が気にしないように、何も無かったかのように振る舞うでしょうね」


にこ「それは……」


希「にこっちは、それでいいん?」

447: 2020/05/17(日) 23:22:11.39 ID:x1kyL8vs
にこ「…嫌。私はもう……後悔したくないの」


絵里「じゃあ、海未に伝えてあげなきゃね?」


にこ「でも、海未は私に会ってくれるか……」


希「ウチに任せとき!絶対に海未ちゃんを呼び出してあげるから!」


にこ「……ありがとう」


希「ウチもえりちも、にこっちの背中を少し押してあげただけやよ」


絵里「そうね、あの時も…それから今日も」


海未と離れ離れになったあの時も、そして今日も。
おおよそ10年間逃げ続けた私にこの二人はいつも惜しみなく協力してくれる。
…最高の仲間。私はこの二人と同級生として、仲間として今ここに居られる事が有難かった。


そしてそのきっかけになってくれた海未。
…私の好きな人。この前は自分の気持ちから逃げてしまったけど、今度こそ絶対に伝えようって、そう思った。


絵里「じゃ、善は急げという事で早速予定を立てましょう?」


希「そうやね!まず場所は……」

448: 2020/05/17(日) 23:36:03.04 ID:x1kyL8vs
結局二人のお陰もあって、あの次の日から体調を取り戻した私はとりあえずは毎日を精一杯過ごそうと、1日分の遅れを帳消しにするかのように働いた。

昼休み、自分のデスクでいつものようにお弁当を食べる私にいつかのように後輩が近づいてくる。

やはり私の向かいの席に腰を下ろすと何やら怪訝そうな顔を浮かべていた。


「なーんか先輩、初めて風邪で休んだかと思ったら活き活きとして帰ってくるんですもん…やっぱりいい人でも出来たんじゃないですか?」


にこ「はぁ?……ったくあんたはすぐそうやって繋げようとして……」


ホントにこの子はそういう話が好きっていうか…女の子って感じね。


「わ~!分かりましたから残業だけは……」


いつもそういう話をしてきた時に仕事回すって冗談で言ってたせいか両手を上げて降参の意思を示してくる後輩。
ったく…そんな早く降参してくるくらいなら毎回毎回いい人出来たかとか聞いてこなければいいってのよ。

449: 2020/05/17(日) 23:40:56.08 ID:x1kyL8vs
にこ「…でもそうね」


「…えっ?」


にこ「……いい人、出来たかもねっ」


軽くウィンクをして悪戯っぽくそう告げると、それまでわーわーとおどけていた彼女が急に固まる。

……なんか滑ったみたいで恥ずかしいんだけど。


「………………。」


にこ「な、なによ…てっきり騒ぎ立てるかと思ったのに……なんか言いなさいよ」


「い、いや……なんか先輩の笑顔がめちゃくちゃ素敵で……」


にこ「…な、なによ、悪い?」


「そんな事ないですけど……やっぱり元アイドルってすごいなぁ……」


にこ「なんか言った?」


なんでもないですよ!と若干キレられる。なんで怒られたか分からない私に後輩は、絶対私にも紹介してくださいね!と勢いそのままにそう言った。

もしかしたら今回の事で海未に愛想を尽かされてしまったかもしれないし、私の話なんて聞いてくれないかもしれない。

それでもきっとどれだけかかっても海未に気持ちを伝えて。
そしていつかこの子にも紹介する。

「…?どうしたんですか先輩、急に黙っちゃって」


にこ「なんでもないわ。さ、仕事に戻るわよ!」


たとえ同性の恋愛に偏見を持っていたとしても、この子なら私達を認めてくれる筈だから。

450: 2020/05/18(月) 00:12:49.29 ID:ZQLYmgg/
そして週末。希の指定した場所に行くと、奇しくもそこは海未といつか寄って帰った公園。


希が絶対に来てくれるから安心してね、なんて自信満々だったのが気になった。


少し辺りを見渡すと、この前のベンチで一人海未が待っていた。

海未は額に汗を浮かべ、傍から見ていてもどこか慌てていてきょろきょろと辺りをしきりに気にしていた。


近づいていくとすぐさま私に気が付き、バッ、と大きく目を見開くと、はぁ、とため息を一つ。

私を見ると先程までの様子とは打って変わって落ち着いてるように見えた。

451: 2020/05/18(月) 00:13:39.36 ID:ZQLYmgg/
海未「……私は確かに希に呼ばれたはずだったんですけどね」


にこ「ごめんね、希に協力して貰っちゃったわ。」


海未「はぁ…何故ここなんだろうとは思っていたんですよ」


にこ「私も希から場所聞いた時には、ん?って思ったけどね。…そういえば、希からなんて言ってここに呼ばれたの?絶対来るから!ってなんか妙に自信ありげだったけど」


海未「…言わなきゃいけませんか?」


突き放すかのような海未の言葉に、一瞬狼狽える。


にこ「言いたくなければいいんだけど……海未も忙しい筈なのにこんなに直ぐに都合付けられるなんて希何やったのよって思って…」


拗ねたようにそっぽを向いたまま口を噤む海未。
やっぱり怒らせちゃってるな、なんて思っていると彼女はこちらをチラッ、と数回顔色を窺うように確認した後口を開いた。


海未「…こに…………って…」



にこ「へっ…?」

452: 2020/05/18(月) 00:14:35.20 ID:ZQLYmgg/
海未「にこに大変な事が起きたって、希が大層慌てた様子で電話を掛けてきたんです」





にこ「…はぁ!?いつ!?」


海未「ついさっきですよ!だから私は慌てて……!!」




…ようやく理解した。海未が汗をかいていたのも、動揺していたのも、私を見て驚いたのも、それから落ち着いた様に見えたのも。


私の身に何か起こったと思ったからだったのね…。
…やってくれるじゃない希………。

453: 2020/05/18(月) 00:15:06.00 ID:ZQLYmgg/
にこ「…ごめん、迷惑掛けちゃって」


海未「いえ…冷静に考える事が出来なかった私も悪いんです。……にこの身に何か起こったとして、こんな場所に呼び出すのはおかしい筈なのに」


にこ「…………ごめん」


海未「大丈夫ですって…」


にこ「いや、そうじゃなくてね。……私今、海未が私の事を心配して慌てて来てくれた事、嬉しいって思っちゃってる」


海未「なっ……!」


にこ「愛想尽かされちゃったと思っていたけど、それでも海未が冷静さを失うくらい私の事を心配してくれていたのが…とんでもなく嬉しいの」


海未「……だから言いたくなかったんですよ、もう…」

そっぽを向いたまま口を尖らせてそう言う海未。


その表情はどこか悔しそうで、恥ずかしそうで。
……やっぱり、私海未の事が好きなんだなと改めて思った。

454: 2020/05/18(月) 00:15:40.24 ID:ZQLYmgg/
にこ「ねぇ、海未?」


海未「……なんですか?」

にこ「話があるの。…希に呼んでもらったのも、その為」


海未「……。」


にこ「あのね、この前の事なんだけど」


海未「聞きたくありません」


にこ「ちょっ…」


海未「聞きたく無いです!」


明確な拒絶だった。目をギュッ、と瞑り拳を握りしめて声を張り上げる海未。

暫くの間沈黙が流れる。


彼女は強ばった身体からスっ、と力を抜くと静かに話を始めた。

455: 2020/05/18(月) 00:16:41.22 ID:ZQLYmgg/
海未「にこ。私は、どうやら自分が思っていたよりも弱い女だったみたいです」


海未「今も貴女から逃げ出したいって思ってしまっています。あの時に感情のままに気持ちを話してしまったこと、後悔しているんです」


海未「貴女にも私の知らない交友関係があり、私の存在がそれを壊してしまう事になるかもしれない。……それに貴女の家族だって…」


海未「家族の事を大切に思う貴女ですから、だからこそにこが私の事を受け入れられる筈がないんです」


海未「…それなのに、私は自分の気持ちしか考えず貴女に気持ちを伝えてしまった。本当にごめんなさい、虫のいいことを言うことは分かっていますが、何も言わずに先週にも言った通り私とは友人として仲良くして欲しいんです」


海未「お願いします。…気にするなと言う方が無理だとは思います。ですが弱い私ですから、貴女から拒絶の意思を告げられてしまったらきっと壊れる程泣いてしまいます」



私の言葉も聞かずに随分勝手な事を言ってくれるじゃない……


にこ「……ふざけないで」


海未「……えっ…?」

456: 2020/05/18(月) 00:17:33.53 ID:ZQLYmgg/
言うだけ言ってこの場から逃げようとする海未の腕を引き、自分の胸に引き寄せる。

私よりも一回り背が高い海未の肩に顔を寄せ背中に手を回すと逃がさないように抱き締めた。


にこ「勘違いしないでよ、私が今日貴女に伝えようとしたのはね…私の本当の気持ちよ」


にこ「この前は色んな事を考えて何も言えなかったけど、もう私には関係ない。私は海未の事が好き」


にこ「確かに色んなしがらみはあるかもしれない。お互いに孫の顔を親に見せることは出来ないし、周りからは後ろ指を指されるかもしれない」


にこ「でも、私はもう貴女から離れない。私が貴女の事を守る。一度皆から逃げた私だからこそ、後悔はしたくない。もう二度と逃げないと誓うわ」


そういって海未の身体から手を離し顔をしっかりと見つめて、最後の…私達の関係を始める最初の一言を紡いだ。















にこ「海未、私と一生一緒にいて下さい______」

457: 2020/05/18(月) 00:18:14.52 ID:ZQLYmgg/
絵里「ねぇ…こんな二人を覗くような真似、ホントにしていいのかしら」


希「え~?だって気になるやん、ウチ達にも結果を真っ先に知るご褒美くらいあってもいいと思わない?」


絵里「確かに気になるけど…周りから見たら不審者よ?」


希「いいのいいの、そんなの気にした方が負けやん?……おっ、にこっちが海未ちゃん抱き締めた!」


絵里「えっどれどれ?…流石にこね」


希「えりちも興味津々やん。ふふっ…上手くいったみたい、やね。二人ともいい表情!…ここからはウチの仕事や」













カシャッ______

458: 2020/05/18(月) 00:18:57.16 ID:ZQLYmgg/
あれからまた季節は巡って、また新しく春が始まろうとする頃。

希から一つの連絡と謝罪の小包が届いた。


なんでも、あの時写真を撮ってて何気なく賞に応募したら大賞取っちゃった。だそうだ。


丁寧にてへっ、とまで文面に入れてあってどうにも腹立たしい。というか希あの時見てやがったのね……


…でもまぁ、あれだけ協力してくれた希だから今回だけは特別に許してあげようか。


海未「…それで、その包みには何が入って居るんですか?」


にこ「ん~、なんかこの雑誌に私達の写真が載ってるんだって」


海未「なっ……!どういう事ですか?」


にこ「私だってよく分かんないわよ……とりあえず確認して……」



希から送られてきた雑誌をペラペラとめくると、大きく取り上げられた賞の大賞には確かに私達の姿。


写真の中の私達は祝福するかの様に照りつける太陽の下で幸せの中楽しそうに笑っていた。

ふと視線を下に落とし写真についての紹介が書かれた文章を見ると、希の名前と共に写真の題名が目に留まる。


にこ「……ったく、あの子らしいっていうか…………」

459: 2020/05/18(月) 00:20:06.54 ID:ZQLYmgg/
【⠀○○社 ○○賞コンテスト 】

【《大賞》東京都 東條 希】











【題名『海色少女に魅せられて』】


おしまい

460: 2020/05/18(月) 01:49:08.75 ID:oLmY5pZY
素晴らしい!!

461: 2020/05/18(月) 02:04:53.85 ID:QOA0Ftz+
あなたは最高です!

462: 2020/05/18(月) 02:06:32.88 ID:ORay1J/R
最高…最高だ…

463: 2020/05/18(月) 03:13:58.62 ID:eC74XpMn
題名いいね!

464: 2020/05/18(月) 03:40:54.16 ID:VqU/+1NK
素晴らしい作品をありがとう
ホント最高
にこうみの愛はもちろん、μ'sメンバー同士のLoveともLikeとも家族愛とも違う「大好き」がすごく感じられた。

気が向いたらまた何か書いて欲しい。

465: 2020/05/18(月) 04:46:15.02 ID:9Q9Df4D9
はあ~最高ですわ
後輩ちゃんのことも上手く締めてくれたのはほんとに感動した
また機会があったら次の作品を書いてください
楽しみにしてます

466: 2020/05/18(月) 14:44:00.53 ID:2PZHgwXH
締め方最高かよ。
素敵な後日談ありがとう

467: 2020/05/18(月) 21:19:44.89 ID:dNE67OCb
これが…『エモい』ということか・・・

469: 2020/05/19(火) 10:37:59.54 ID:fmbWYb6X
ええね

470: 2020/05/20(水) 05:41:28.10 ID:5FS5TJoq
とても良かった
乙乙

471: 2020/05/20(水) 13:26:33.65 ID:alw3dTkd
そういえば今何をやってるのかはっきりしてるのって、
にこのぞりんぱなだけか

472: 2020/05/20(水) 15:34:30.26 ID:d1HUM77Q
穂乃果ちゃんは実家ついでるよね

473: 2020/05/20(水) 17:40:21.86 ID:7Ya9I6v/
>>471
あまり話に関係しないかなと思った所は詳しく分からないし活かせる文才も無いので明言せずに居たんですが、
穂乃果→実家継いでる
ことり→ブランドを持って日本に帰ってきた
海未→実家継いでる
絵里→キャリアウーマン
希→写真家
凛→先生
花陽→アイドル→???
真姫→実家で医者
雪穂→休日は実家の手伝いで平日は会社員
くらいのイメージで書いてました。仕事についてはイメージ湧かないので大分抽象的に書いちゃってますね。

475: 2020/05/21(木) 16:56:14.49 ID:jBcezewC
細かい設定もわくわくするね

476: 2020/05/21(木) 23:08:41.19 ID:DBhJL/5F
最高

482: 2020/05/24(日) 18:20:13.54 ID:HZdiuIIF
9人ちゃんと登場して毎日更新してなおかつ1スレで起承転結書ききってる所がすごく良い

483: 2020/05/25(月) 14:36:42.36 ID:be+vIW2e
乙乙

485: 2020/05/26(火) 20:17:13.95 ID:xSL9s3jE
海未のおかげで、昔の仲間と和解していく所が、とても良かったです

487: 2020/05/28(木) 07:23:32.07 ID:mFc9aDSW
一気に読んでしまった
素晴らしいうみにこをありがとう
厳しい意見にぶつかりながら最後は前向きに生きる姿に感動したよ

481: 2020/05/23(土) 21:08:17.66 ID:VjIrMwPf
良きうみにこだった

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1588724322/

タイトルとURLをコピーしました