【スポ根SS】侑「公式ドッジボール?⑥」~無敵級*アタッカー編~

ゆう (4) SS


1: 2021/02/24(水) 19:58:55.69 ID:NQ0tOY1G
注意
・虹メンバーだけアニメ時空
・μ'sやAqours、その他グループも登場
・若干オリジナル設定あり

2: 2021/02/24(水) 20:00:20.06 ID:NQ0tOY1G
前スレ
【スポ根SS】侑「公式ドッジボール?」 ~虹ヶ咲学園避球同好会 結成編~
【スポ根SS】侑「公式ドッジボール?」 ~虹ヶ咲学園避球同好会 結成編~【ラブライブ!スクスタ】
■約23000文字■ ~虹ヶ咲学園避球同好会結成編~ ※※※ 歩夢「ありがとう侑ちゃん、買い物付き合ってくれて」 侑「うん! 今日も楽しかったね!」 歩夢「ふふっ」 ワーワー 侑「? 何かあそこの体育館、すごく盛り上がってるね!」 歩夢「そうだね」 侑「ねね、ちょっと見に行って見ようよ!」 歩夢「いいよ」

【スポ根SS】侑「公式ドッジボール?②」~VS東雲フェニックス編~
【スポ根SS】侑「公式ドッジボール?②」~VS東雲フェニックス編~【ラブライブ!虹ヶ咲】
■約23000文字■ 「「「前回までのドッジボール!」」」 侑「私、虹ヶ咲学園、2年の高咲侑! 幼馴染と体育館に公式ドッジボールの大会を観に行ったら、帰りに綺麗な投げ方の女の子を目撃して……」 侑「気が付いたら、ときめいちゃってた!」 侑「歩夢も同じ気持ちだったみたいで、私たちは公式ドッジボールを始めることに。咄嗟に『虹ヶ咲学園公式ドッジボール同好会』を名乗った」 侑「マネージャーでも気持ちは熱い! 私たちの心は、いつも一つ!」ビシッ 歩夢「何してるの、侑ちゃん?」 侑「あっ……以下ポジションとルールのおさらいです!」 歩夢「?」

【スポ根SS】侑「公式ドッジボール?③」~しずくバックスタバー編~
【スポ根SS】侑「公式ドッジボール?③」~しずくバックスタバー編~【ラブライブ!虹ヶ咲】
■約17000文字■「「「前回までのドッジボール!」」」 侑「女子高生、友情、それにスポ根……」 侑「全部合わせたらムッチャ素敵な作品が出来る!」 侑「……はずだった」 侑「だけど湯豆腐博士は間違って余計なものを入れちゃった。それは――」 侑「ドッジボール!」 バァンッ? 侑「そして生まれた超強力9人娘、個性豊かなプレーと戦術でライバルたちをやっつける、強くて可愛いドッジボールチーム、虹ヶ咲学園避球同好会!」 侑「キャプテンのせつ菜!」 せつ菜「うおおおぉぉぉぉおおお!!!」ピョンピョン 侑「キュートな歩夢!」 歩夢「もう、キュートだなんて///」テレッ 侑「そしてデカいぜ、オーサカ!」 しずく「どこの話をしてるんですかっ!」 侑「今回は、しずくちゃんが裏切るよ!(唐突なネタバレ)」 侑「ポジションとルールの確認だよ!」

【スポ根SS】侑「公式ドッジボール?④」~開幕!都大会(夏)編~
【スポ根SS】侑「公式ドッジボール?④」~開幕!都大会(夏)編~【ラブライブ!スクスタ】
■約21000文字■ ~開幕!都大会(夏)~ ※※※ 【第30回全国女子高校生ドッジボール選手権大会 東京都予選】 璃奈「フェイント、目線でばればれ」サッ しずく「右サイドから来てるよ!!(声変)」 かすみ「にっしっし、左ですよぉ~!」ブンッ エマ「よいっしょ!」ブゥンッ ドゴッ 果林「ふふっ、そんなところに逃げても無駄よ?」クイッ ギュンッ

【スポ根SS】侑「公式ドッジボール?⑤」~私に勇気をくれた人、私に翼をくれた人編~
【スポ根SS】侑「公式ドッジボール?⑤」~私に勇気をくれた人、私に翼をくれた人編~【ラブライブ!虹ヶ咲】
■約20000文字■~私に勇気をくれた人、私に翼をくれた人編~ ※※※ 侑「春の都大会まであと半年!」 侑「今後の方針を練っていくよ!」ホワイトボードコンコンッ 愛「よっ!」 かすみ「次は絶対優勝しますよぉ!」 璃奈「えいえいおー」 せつ菜「燃えてきましたっ!」カタッ カンッ?

3: 2021/02/24(水) 20:01:12.26 ID:NQ0tOY1G
「「「前回までのドッジボール!」」」


侑「――体は■■■■で出来ている」

歩夢「? よく聞こえなかったよ侑ちゃん」

侑「血潮はゆうせつで、心はゆうかす」

歩夢「は?」

侑「幾たびの鬱SSを越えて不敗」

歩夢(……)

4: 2021/02/24(水) 20:01:35.29 ID:NQ0tOY1G
――――
――


@メ*? ? ?リ?『私たちのシニヨンまで...』

歩夢『もう戻れない』

歩夢『私だけの女性器(ゆうちゃん)でいて?』

侑『歩夢以外いらない』


――
――――


歩夢「な、なにこれ……?」

5: 2021/02/24(水) 20:02:28.73 ID:NQ0tOY1G
侑「ただ一度のゆうしずもなく」

侑「ただ一度のゆうりなもなし」

歩夢「か、過疎カップリングだもんね! 誰かが書いてくれると良いねっ。いや、いらないけど!」

侑「書き手はここに独り」

侑「ラの板でゆうエマの需要を探る」

歩夢「ないよっ!」

194: 2021/03/14(日) 21:20:11.51 ID:BIjygY2K
侑「……一見するとパス回しが速いチームって、すごく強いチームに見えるよね」

侑「でも、今かすみちゃんがやってるドッジボールは真逆。自分にボールが来るたびにキープフォーファイブ※にならないギリギリまでボールを持って、ゆっくり内野にパスを返してる」


>>5秒以上ボールを保持してはいけない


歩夢「パスカウントが増えたら、相手内野の両端を抜いてリセット」

歩夢「これを繰り返していけば、こっちが攻撃される時間を減らせるんだねっ」

侑「やりすぎると遅延行為で警告を受けるかもしれないけどね。でも、ここまでわざとらしくやる意味ってなんだろう……?」

歩夢「もしかして……。私に見せたかったのかも?」

侑「どういうこと?」

歩夢「元外野に志願して、1年生と3年生を全員出場させる……。そうすれば、必然的に私が控えになるって、かすみちゃんはわかってたんじゃないかな?」

6: 2021/02/24(水) 20:02:47.46 ID:NQ0tOY1G
侑「ならば、我が生涯に横道はあらず」

歩夢「……?」

侑「この体は、無限のゆうぽむで出来ていた――」

歩夢「ゆ、侑ちゃん……!」


侑「ポジションとルールの確認だよ!」

歩夢「」

7: 2021/02/24(水) 20:05:42.66 ID:NQ0tOY1G
※※※

ポジション(簡易版。詳細は第1話を参照)

内野アタッカー
内野からアタックを撃つ。基本は右・左・センターの3人。

元外野
試合開始時の外野。最もボールに触れる機会が多いため、チームの司令塔的存在。

カット
公式ドッジボールでは守備時、基本的に一列に並び、常にボールと一定の距離を保つ。カットはこの時、ラインから離れて自由に動き回り、相手のパス回しを妨害する。
必然的に狙われる確率も上がるため、最も運動神経と動体視力が求められる。

ジャンパー
試合開始時のボールの支配権は、ジャンプボールによって決定される。ジャンパーはその名の通り、ジャンプボールを行うポジション。

レシーバー
守備時、外野とカット以外は全員がレシーバーとなる。パスカウントをコールしてアタッカーに伝えたり、パスの取りこぼしを防ぐなど、攻撃にも参加する。

大砲
ボール支配権移行後の一発アタック専門のポジション。球は速いが、コントロールに難がある選手が起用される。

8: 2021/02/24(水) 20:05:58.45 ID:NQ0tOY1G
※※※

ルール(簡易版)
オーバーライン
線踏んじゃだめよ。

ホールディング
相手コートに転がってるボール取っちゃだめよ。(空中はセーフ)

アウトプレー
内外野の移動はコートの外を通ろうね。移動中はボールに触っちゃだめよ。

ダブルタッチ
当たった後、外野に出るまでボールに触っちゃだめよ。

ダブルパス
内野同士、外野同士でパスしちゃだめよ。

フライングスロー
試合が一回止まった後はボールを頭の上に上げて、審判が笛吹くの待とうね。

ファイブパス
パスは4回までね。

キープフォーファイブ
5秒以上ボール持っちゃだめよ。

ヘッドアタック
頭部はセーフ。当てられた方のボールになるよ。

イリーガルスロー
バレーみたいに弾いたり、サッカーみたいに蹴ってパスやアタックしちゃだめよ。

イリーガルキャッチ
アタックを意図的に一度弾いて捕っちゃだめよ。

ワンタッチ・ノータッチ
外野はパスを逸した時、手の平で触れようね。触れられなかった時や手の平以外に当たって出たら相手ボールよ。

ジャンパーアタック・ジャンパーキャッチ
ジャンパーは1球目プレーに参加できないよ。

ボールデッド
コート外にボールが出たら、最後に触れたチームじゃないほうに支配権が移るよ。

タッチザボディ
相手選手に触っちゃだめよ。

9: 2021/02/24(水) 20:07:13.04 ID:NQ0tOY1G
~無敵級*アタッカー編~


※※※


かすみ「秋です!」

かすみ「食欲の秋、読書の秋、芸術の秋……」

かすみ「みなさんは、どんな秋が好きですか?」

かすみ「もちろんかすみんは……」

10: 2021/02/24(水) 20:08:20.89 ID:NQ0tOY1G
※※※


果林「最近、毎週のように練習試合や大会に出てるわね」

せつ菜「ドッジボールの試合が最も盛んになるのは、9月から11月ですからね」

エマ「たくさん試合が出来て嬉しいね~!」

彼方「上位に入ることも多くなってきたよねー」

愛「でもでもー……」

エマ「どうしたの愛ちゃん?」

11: 2021/02/24(水) 20:09:07.78 ID:NQ0tOY1G
愛「最近、音ノ木坂や東雲、藤黄辺りと試合してないよね」

かすみ「確かに……」

愛「そもそも、同じ大会に出てないよね」

しずく「同日に開催されている試合が多いからというのもありますが、まるで避けられているような……」

歩夢「避けられてる?」

12: 2021/02/24(水) 20:09:23.43 ID:NQ0tOY1G
侑「ああ、それはね。私たちの方が避けてるんだよ」

しずく「え?」

侑「2月の都大会まであと3ヶ月。こっちの戦力を明かしたくないってのもあるし、この時期の対戦は勝っても負けても良いことないから」

せつ菜「確かに、負ければ苦手意識がついてしまいますし、勝てば慢心のもとになりますね」

13: 2021/02/24(水) 20:09:49.58 ID:NQ0tOY1G
侑「そうそう。だから、9月にやった音ノ木坂全国制覇記念練習試合で上位3校とそれなりに良い勝負して以来、意図的に同じ大会へはエントリーしないようにしてるんだ」

果林「なるほどね。それで、今日はどんな練習をするのかしら?」

侑「うん、今日は……」

14: 2021/02/24(水) 20:10:32.86 ID:NQ0tOY1G
※※※


愛「個人技の強化かー」

しずく「結局集団スポーツは、能力の高い個を何人用意できるかですからね」

愛「ま、そうだよね」

侑「それじゃ、各自のメニューを教えるね。気になることや変えたいところがあれば、すぐ私か璃奈ちゃんに聞いてね」

果林「璃奈ちゃんに?」

15: 2021/02/24(水) 20:10:58.59 ID:NQ0tOY1G
侑「うん。璃奈ちゃん、いつの間にか私なんかよりもずっと戦術や技術に詳しくなってて……驚いちゃった」

璃奈「私はあんまり運動が得意じゃない。試合最後まで生き残ることには自信があるけど、アタックやキャッチは上手く出来ない」

璃奈「でも、どんな形であれチームに貢献したいって、ずっと思ってた」

璃奈「ヒントをくれたのは音ノ木坂の花陽ちゃん。作戦係なら、私にも出来る」

璃奈「もちろん、レギュラーを諦めてるわけじゃないけど」

彼方「璃奈ちゃん……」

16: 2021/02/24(水) 20:11:23.97 ID:NQ0tOY1G
エマ「璃奈ちゃん、ちょっとおいで?」

璃奈「うん」トテトテ

エマ「ぎゅ~」ダキッ

璃奈「うわあ」

彼方「よしよし」ナデナデ

璃奈「どうしたの、二人とも」

エマ「みんなのために頑張ってくれてありがとうね~!」

17: 2021/02/24(水) 20:11:46.32 ID:NQ0tOY1G
彼方「璃奈ちゃんは良い子だねー」

かすみ「しゅごい……」ジーッ

エマ「! かすみちゃんもおいで?」

彼方「彼方ちゃんのここ、空いてるぜー?」チョイチョイ

かすみ「しょ、しょうがないですねっ」ススッ

彼方「ふふふー」ギュッ

18: 2021/02/24(水) 20:12:15.99 ID:NQ0tOY1G
果林「平和ね」

せつ菜「良い話です!」

しずく「かすみさん、良いなぁ」

歩夢「練習しようよ……」

侑「あ、そうだった!」

侑「ちゃんと順番に説明していくから、一旦同じトレーニングをするグループに分かれようか」

19: 2021/02/24(水) 20:12:33.29 ID:NQ0tOY1G
A基礎力アップ
かすみ
エマ
璃奈
しずく

B攻撃力アップ
歩夢

せつ菜

C新技習得
彼方
果林

20: 2021/02/24(水) 20:12:56.30 ID:NQ0tOY1G



Aグループ(基礎力アップ)


璃奈「私たちは、ひたすら体幹や筋力のアップ。プラスアルファで、エマさんは走り込みでスタミナアップ、しずくちゃんはシャドーイングとボールハンドリングでフォームを改善したり、ボールの扱いに慣れてもらう」

エマ「シャドースローとボールハンドリング?」

璃奈「シャドースローは、鏡の前でタオルを振って、自分のフォームを客観的に見ながら修正していく練習」

璃奈「ハンドリングはその名の通り、ボールを使った色々な動き(ドリブルなど)をして、手にボールを馴染ませる練習。バスケでよくやるね」

しずく「確かにその2つは私の課題だね……」

21: 2021/02/24(水) 20:13:14.56 ID:NQ0tOY1G
璃奈「エマさんは、大会後半になるにつれて一発アタックの球速が落ちてるから、ひたすら体力づくり」

エマ「わかった~!」

かすみ「り、りな子……かすみんは?」

璃奈「かすみちゃんは技術はあるから、ひたすら筋力を伸ばすしかない。動きが良くてもパワー不足だから」

かすみ「そ、そうだよね……」

かすみ「器用貧乏ってやつだよね」

かすみ「……何でも出来るけど、何にも出来ない……」

璃奈「かすみちゃん……?」

22: 2021/02/24(水) 20:14:26.94 ID:NQ0tOY1G
かすみ「自分でも分かってるんだ。私には今のところ、チームの中で明確な役割がないって」

璃奈「そういうつもりじゃ」

かすみ「大丈夫! しっかり鍛えて、万能選手になってみせるからっ」グッ

璃奈「……うん」



しずく「かすみさん……」

23: 2021/02/24(水) 20:15:01.04 ID:NQ0tOY1G
※※※


Bグループ(攻撃力アップ)


愛「アタッカーローテーション?」

せつ菜「同じポジションにアタッカーを二人置いて、交互に投げることですね」

歩夢「そうなんだ」

侑「うんっ。うちのチームもアタッカーが務まる子が増えてきたし、せつ菜ちゃんの負担軽減にも良いかなって」

24: 2021/02/24(水) 20:15:27.79 ID:NQ0tOY1G
愛「ということは、愛さんもセンターアタッカーをやるってこと?」

侑「そうそう。試合中は縦に二人で並んで、片方が投げたら前後を入れ替わるの」

侑「さっき言った負担分散の他にも、連続してセンターアタッカーにパスが来た時にちゃんと準備して投げられるから、パス回しの速度向上も期待できるんだ」

愛「なるほどねー」

25: 2021/02/24(水) 20:15:53.78 ID:NQ0tOY1G
歩夢「私は何をすれば良いの?」

侑「歩夢にはひたすらパスを出してもらうけど、せつ菜ちゃんのジャンピングアタックと愛ちゃんのランニングアタックで投げ分けることを意識してほしいな」

歩夢「わかった」

侑「あとね」

歩夢「?」

侑「……」コショコショ

歩夢「ひゃっ!?///」

26: 2021/02/24(水) 20:16:09.74 ID:NQ0tOY1G
歩夢「ご、ごめんっ。びっくりしちゃって聞き取れなかったから、もう一回お願い」

侑「しょうがないな歩夢は」ニコニコ

侑「……」コショコショ

歩夢「うんうん」

歩夢(耳元で話されるのすごい……///)

歩夢「出来るかは分からないけど、やってみるよ」チラッ

せつ菜「?」

せつ菜「どうしたんですか?」

歩夢「何でもないよっ! さ、二人ともがんばろ!」

せつ菜「はい……?」

27: 2021/02/24(水) 20:16:52.80 ID:NQ0tOY1G
※※※


Cグループ(新技習得)


果林「私はまた新技なのね」

彼方「燃えてきたぜ~」

侑「新技とは言っても、二人ならすぐにでも出来るようになる技なんだけどね」

侑「出来る限り早く習得して、練度を高めていってほしいんだ」

果林「任せなさい」

彼方「それで、どんな技なの?」

28: 2021/02/24(水) 20:18:21.60 ID:NQ0tOY1G
侑「まず、果林さんのY字アタック。これは前に練習したX(クロス)アタックとは逆に、体を開いて利き腕の外側に向かって撃つアタックだよ」

侑「現状コート右端からなら何処でもXアタックで狙えるのが果林さんの強みだけど、Y字アタックも使えれば、投げる位置に関係なくどこにでもアタックを撃てるようになるね」

果林「良いじゃない。でも、どうしてもっと早く教えてくれなかったのかしら」

侑「Y字アタックはXアタックと違って、球速が落ちる技だからね。基本の球速が上がってから覚えたほうが良いんだ。フォームが固まってない内に覚えると変な癖がついちゃうし」

果林「なるほどね」

29: 2021/02/24(水) 20:18:54.49 ID:NQ0tOY1G
侑「次に、彼方さんに覚えてほしいのが、カウンターアタック。名前の通り内野側からのアタックをキャッチした後、相手のアタッカーを追いかけて当てる技だよ」

彼方「おおー、ついに彼方ちゃんも攻撃的なプレーを……!」

侑「うんっ。彼方さんのキャッチ力を活かすならこれかなって! アタックも結構速いしね」

侑「カウンターアタックが決まれば、相手の攻撃力を削れるし、チームの士気も大きく上がるよ」

彼方「いいねいいね~」

侑「それじゃあ早速始めよう!」

30: 2021/02/24(水) 21:03:17.95 ID:NQ0tOY1G
※※※


遥「……お久し振りです」

姫乃「本当に。最近あなた方とは対戦出来ていませんから」ニコッ

遥「偶然ですよ」

姫乃「ふふっ、そんなわけないでしょう?」

姫乃「東雲の思惑は分かっています。強豪との対戦を避けて、データを与えるのを防いでいるんですよね」

遥「……」

31: 2021/02/24(水) 21:04:00.90 ID:NQ0tOY1G
姫乃「今年の東京は群雄割拠。夏の王者音ノ木坂ミューズはもちろん、もう一つの全国大会優勝の虹ヶ咲Passions……」

姫乃「そして、あのチームでも動きがあると聞いています」

遥「あのチーム……?」

遥「! まさか!?」ガタッ

姫乃「ええ。次の大会、必ず彼女たちが出てくるでしょう」

遥「そんな……!」

32: 2021/02/24(水) 21:04:18.27 ID:NQ0tOY1G
姫乃「上半期都内No.1だった東雲フェニックス、昨年度春全国制覇の私たち藤黄ヴィクトリーズ……古くからの名門である私たちが、このまま新参者の影に隠れてしまうようでは、OGの皆様に申し訳が立ちません」

遥「……」

姫乃「そこで、遥さんにお願いがあるのですが……」

遥「は、はい」

姫乃「攻撃の東雲、守備の藤黄。2校が力を合わせるというのはどうでしょう?」ニコッ

遥「え……?」

33: 2021/02/24(水) 21:05:05.43 ID:NQ0tOY1G
※※※


穂乃果「今日も張り切っていくよ!!」

ことり凛「「おー!」」

海未「怪我しないように、準備運動だけはしっかりやってくださいね」

絵里「まずは柔軟からね」



にこ「希、花陽。分かってるわよね?」

希「もちろん」

花陽「抜かりはないよ」

34: 2021/02/24(水) 21:05:27.86 ID:NQ0tOY1G
にこ「そう。私たちは夏の王者。次は全てのチームが妥当μ’sを掲げてくるわ」

にこ「勝つために、全力を尽くすわよ」

希「わかってるって。にこっちは徹底しとるね~」

花陽「でも、勉強になるよ! にこちゃんに教えてもらってから、色んなチームの分析が効率良く出来るようになったんだ!」

にこ「当たり前でしょ、何年ドッジボールオタクやってきたと思ってるのよ」


真姫「にこちゃん、一緒に柔軟しましょー」


にこ「ちょっと待っててー!」ブンブン


にこ「……えほん」

35: 2021/02/24(水) 21:05:51.20 ID:NQ0tOY1G
>>34
妥当→打倒に訂正です

36: 2021/02/24(水) 21:06:09.94 ID:NQ0tOY1G
花陽「でも、みんなにも手伝ってもらった方が、もっとよく分析出来るんじゃないかな?」

にこ「良いのよ。あの子たちには、正々堂々真っ向勝負をしてほしいんだから」

希「健気やねえ」

にこ「そんなんじゃないわよ」

37: 2021/02/24(水) 21:06:32.60 ID:NQ0tOY1G
にこ(藤黄はともかく、東雲や虹ヶ咲は露骨にうちとの対戦を避けてきてる……。データを取られないよう、当然の策ね)

にこ(私は身体能力では自チームでレギュラーに入れないレベル……でも、勝利への執着だけは誰にも負けない!)

にこ(……こんな形でしか貢献できないのは不本意だけどね)

38: 2021/02/24(水) 21:06:46.87 ID:NQ0tOY1G
――――
――

にこ「良い? コートは神聖な場所なの! あんたみたいな卑怯なプレーは認めないわ!」

しずく「……あれは、私なりに」

にこ「そんな手を使わなくても良いくらい強くなりなさい!」

――
――――


にこ(……あれは、私自身に向けた言葉)

にこ(強く……なりたい)

39: 2021/02/24(水) 21:07:07.39 ID:NQ0tOY1G
※※※


数日後


侑「今日の練習試合の相手は、UTXシャイニングだよ!」

果林「あら、久しぶりね」

エマ「今日は2チームだけなんだ?」

侑「うん。この時期は中々都合がつくチームが無くてね……短時間だけど、練習の成果を試してみてほしいな」

せつ菜「歩夢さん、愛さん!」

愛「よーし!」

歩夢「頑張ろうねっ」

40: 2021/02/24(水) 21:08:12.71 ID:NQ0tOY1G
しずく「あー、あー……あめんぼあかいなあいうえお、うきもにこえびもおよいでる」

エマ「いつもの発声練習だね~!」

璃奈「初心者フェイントは無理でも、フェイクカウントや偽の指示出しはどのチームにも有効」

かすみ「……」


かすみ(りな子もしず子も、以前より格段に上手くなってきてる。特にしず子の球速は、エマ先輩やせつ菜先輩、愛先輩に次ぐ4番。ある程度なら狙った方向にアタックも撃てるようになったし、このままじゃ……)


侑「よし、とりあえず初戦のオーダーを発表するね」

41: 2021/02/24(水) 21:08:37.56 ID:NQ0tOY1G
VS UTXシャイニング(練習試合1試合目)
【オーダー】
虹ヶ咲Passions
1 優木せつ菜   センターアタッカー①
2 上原歩夢    元外野
4 エマ・ヴェルデ 大砲
5 朝香果林    左アタッカー
6 近江彼方    右アタッカー
7 天王寺璃奈   レシーバー
8 宮下愛     センターアタッカー②・カット・ジャンパー
9 桜坂しずく   レシーバー
ベンチ 中須かすみ

42: 2021/02/24(水) 21:08:59.05 ID:NQ0tOY1G
かすみ「……!」

しずく「かすみさんがベンチですか?」

侑「あ、今日は順番にベンチ回すだけだよ! みんなに自分たちの試合を客観視してほしいなと思って!」

かすみ「そ、そうだったんですかぁ! かすみんびっくりしちゃいましたよぉ」


かすみ(……違う。これは、そのうち本当に実行されるオーダーなんだ……!)

かすみ(今の戦力を考えたら、私が侑先輩でも同じ采配をする……)

43: 2021/02/24(水) 21:09:23.05 ID:NQ0tOY1G
しずく「かすみさん?」ポンッ

かすみ「な、なに!?」ビクッ

しずく「? どうしたの?」

かすみ「ななななんでもないし! 1試合目、アウトにならないよう頑張ってね!」

しずく「うん……?」


かすみ(……)

44: 2021/02/24(水) 21:10:14.16 ID:NQ0tOY1G
※※※


歩夢「果林さん!」ブンッ


果林「ええ!」パシッ


果林(侑が私を左アタッカーにした理由……当然、新技を試せってことなのよね)

果林(良いわ。見せてあげましょう。コートの端から端まで、全て私の射程範囲内よ!)クイッ


ギュインッ


バンッ


主審「5番アウト!」ピッ

45: 2021/02/24(水) 21:10:31.20 ID:NQ0tOY1G



彼方(……来た!)バシッ


彼方「うおおおおおお~!」ダッ

彼方「それー!」ブンッ


バチンッ


主審「3番アウト!」

46: 2021/02/24(水) 21:10:46.44 ID:NQ0tOY1G



愛「歩夢!」ブンッ


歩夢「せつ菜ちゃん!」ブンッ


せつ菜「待ってましたああああ!!!!」ダッ


ピョン


ダンッ


せつ菜「うおおおぉぉぉぉおおお!!!」ブゥンッ





ピッピー


【虹ヶ咲Passions 7:0 UTXシャイニング】

47: 2021/02/24(水) 21:11:21.90 ID:NQ0tOY1G
※※※


侑「よし、ちゃんとみんな自分の課題に取り組めてたみたいだね!」

侑「ええっと次は……」


「ごめんなさい、遅くなったわ」


侑「?」クルッ

侑「ええっと……あなたたちは?」

48: 2021/02/24(水) 21:12:34.95 ID:NQ0tOY1G
「新設チームとは聞いてたけど、まさか私たちを知らないなんて」


かすみ「ま、まさか……!?」

せつ菜「そんな……!」


英玲奈「まさか復帰戦が練習試合とはね」

あんじゅ「都大会で衝撃のデビュー! の方が良かったよね~」

ツバサ「A-RISERSと言えば分かる?」


エマ「A-RISERS……!」

果林「確かこの間話してたチームよね?」

璃奈「でも、学生の大会には出ないって」

49: 2021/02/24(水) 21:13:19.20 ID:NQ0tOY1G
ツバサ「この間の全国大会で、後輩たちの成績が芳しくなかったみたいでね」

あんじゅ「理事長から春は出なさいって~」


侑「そうなんだ……」

侑「それじゃ、早速試合入っていきます?」


ツバサ「もちろん。楽しませてね?」



ツバサ「――A-RISERSは、ここに復活した!」

50: 2021/02/24(水) 21:14:01.78 ID:NQ0tOY1G
今日はここまでです

65: 2021/03/02(火) 22:04:54.06 ID:MltXxE77
※※※


侑(そこからは私たちは、8試合連続で敗北した)

侑(ツバサさんたち3人以外を当てて点数上は僅差でも、試合と言うにはあまりに一方的な内容だった)

侑(3人に対して使った急造の新技は全て防がれ、圧倒的に上回るクオリティで同じ技を返される始末……)

侑(それに、見たこともない未知の技も使ってきて……)

66: 2021/03/02(火) 22:48:04.83 ID:MltXxE77
あんじゅ「え~いっ」ブンッ

ギュルンッ

せつ菜「えっ!?」バチッ


主審「1番アウト! ボールデッド! UTX内野ボール!」ピッ


侑「落ちた……!?」

侑「何なの今のアタック……?」

璃奈「……ドロップボール」

67: 2021/03/02(火) 23:23:09.17 ID:MltXxE77
侑「ドロップボール?」

璃奈「うん。基本的にドッジボールには、変化球は存在しない」

璃奈「一応回転をかければカーブやナックル、シュートは投げられるけど、ただ球速が落ちて捕られやすくなるだけだから、実戦ではまず使わない」

侑「確かに……」

璃奈「でも、唯一有効な変化球がある」

侑「それが今のドロップボールか……」

68: 2021/03/02(火) 23:43:12.00 ID:MltXxE77
璃奈「直球とそこまで変わらない速度が出るから、相手の不意を付けばかなり有効」

璃奈「投げ方は今見た通りで、サイドスロー気味に腕を大きく振りつつ、最後に手首でボールに上向きの縦回転をかけるだけ」

璃奈「シンプルだけど、元々サイドスローのあんじゅさんが同じフォームで投げてくるから、予測しにくい」

侑「そして球速自体も多分80㌔近く出てる……」

侑「素早いパス回しで崩された後に投げられたら、確かにかなり捕りづらいね」

璃奈「うん」

69: 2021/03/03(水) 00:11:57.22 ID:zeoeE6v0
侑「プロチームに所属してるだけあって、他の二人も次元が違うね。英玲奈さんは果林さんのY字アタックやせつ菜さんのジャンピングアタックを軽々捕っちゃうし、ツバサさんはパスが来た方に応じて両腕でアタックを撃ってくる……」

璃奈「両投げはどんなパスが来てもすぐに投球に移れる。かなり厄介」

侑「これが伝説のチーム、A-RISERS……」


ピッピー


主審「ゲームセット!」


虹ヶ咲Passions 2:5 UTXシャイニング(A-RISERS)

70: 2021/03/03(水) 01:10:30.11 ID:zeoeE6v0
侑「1試合目以外は全敗……」

侑「こっちも常にポジションを変えたり作戦を試したりしてたけど、壁は高いなあ……」

璃奈「あの3人が復帰したことで、都大会までに他のメンバーも仕上げてくると思う。まだまだ上がある」

侑「そうだね……」


スタスタ


侑「!」


ツバサ「良いチームじゃない」


侑「……あ、ありがとうございますっ」

72: 2021/03/03(水) 19:56:55.21 ID:zeoeE6v0
ツバサ「それぞれ個性があって、それが上手く噛み合ってる。強いて弱点を挙げるなら……」チラッ



かすみ「はぁ……はぁ……」



ツバサ「彼女だけ、まだ自分のプレイスタイルが確立出来てないわ」

侑「?」

ツバサ「あの子次第で、虹ヶ咲は全国でも戦えるでしょうね」

侑「そ、そうなんですか?」
 
ツバサ「都大会まであと2ヶ月半……進化したあなたたちと戦えるのを楽しみにしてる」ニコッ


侑「……!」

侑「はい!」

73: 2021/03/03(水) 20:11:13.63 ID:zeoeE6v0
※※※


練習試合終了後


果林「……」

エマ「……」

彼方「……」


果林「私たち、少し調子に乗ってたのかもしれないわね?」

エマ「夏の都大会で同じ思いをしたばっかりなのにね」

彼方「悔しい……」ギュッ

74: 2021/03/03(水) 20:25:11.57 ID:zeoeE6v0
果林「全国大会、何となく行けちゃうんじゃないかって思ってたわ」

エマ「優勝時のメンバーとほとんど入れ替わってるとはいえ、昨年夏優勝のA-RISERS、春の藤黄、そして、夏の王者音ノ木坂に勝たないと行けないのにね……」

彼方「遥ちゃんの東雲にだって、まだちゃんと勝てたことないのに」


果林「……でも」

果林「私は、諦めてないわよ」

エマ「私だって!」

彼方「彼方ちゃんもだよ」

果林「……良かった」ニコッ

75: 2021/03/03(水) 20:42:36.79 ID:zeoeE6v0
果林「私たちは3年生。こういう時こそ、後輩たちの手本にならないとね?」

彼方「みんなに色々残さなきゃねー」

エマ「ふふっ。彼方ちゃんったら、もう引退後のこと考えてるの?」

彼方「うっ……これは、お姉ちゃんとしての本能というか……」

果林「気持ちはわかるわ。でも、私は来年以降がどうこうよりも」


果林「――今いるこの10人で、カラーコートを踏みたいの」


エマ「果林ちゃん……!」

彼方「そ……そうだね!」グッ

77: 2021/03/03(水) 22:35:20.90 ID:zeoeE6v0
果林「今日の試合で、まだまだ鍛える必要がある要素がわかったわ。私は球速と球威、エマはキャッチ力、彼方は柔軟性ね」

彼方「それって……」

エマ「それぞれの得意なこと、だよね?」

果林「そうね。こんな身近に優秀なコーチがいるんですもの。お互いに教え合ってみない?」

彼方「つまり、私が果林ちゃんにキャッチを、エマちゃんは果林ちゃんにアタックを、果林ちゃんは私に柔軟を教えるってこと?」


果林「ええ。そこで……」


果林「3年生強化合宿をやるわ」

80: 2021/03/04(木) 08:15:45.33 ID:gAA4OFDG
>>77
私が果林ちゃんに→私がエマちゃんに
訂正です

81: 2021/03/04(木) 18:27:16.15 ID:gAA4OFDG
※※※


――――
――


せつ菜「うおおおぉぉぉおおお!!!」ブンッ


ギュンッ


英玲奈「よっと」パシッ

英玲奈「随分綺麗なジャンピングアタック撃つんだね。でも」

英玲奈「――致命的に、軽い」


――
――――


せつ菜「……」

82: 2021/03/04(木) 18:27:48.01 ID:gAA4OFDG
せつ菜(私のジャンピングアタックが……全く通用しなかった)

せつ菜(私のジャンピングアタックは、球速や球威を上げるためというよりは、自分の体を大きく見せたり、相手の視線を揺らしたりしてアタック成功率を上げるために習得した技……)

せつ菜(キャッチが上手い選手相手では、ただのそこそこ速い球。いつか完璧に抑えられる日が来ることは分かっていた)

せつ菜(低身長故のパワー不足……これだけは、絶対に覆せない……!)

83: 2021/03/04(木) 18:28:32.71 ID:gAA4OFDG
歩夢「……」


歩夢(アタッカーローテーションは上手く機能してた。愛ちゃんとせつ菜ちゃんのフォームは全然違うから、攻撃リズムの変化は確かに生み出せてたし、後半の疲労度も軽減されてる……でも)

歩夢(相手は内野からのアタックを警戒してラインを下げてきてた。これじゃ、決定率は上がらない)

歩夢(2人だけじゃない。3年生のアタックが決まらなかったのだって)

歩夢(全部、外野からプレッシャーを与えられてないから。つまり、私の力不足なんだ……)ギリッ

84: 2021/03/04(木) 18:29:50.52 ID:gAA4OFDG
愛(歩夢とせっつー、全然話さないなー……)

愛(確かに今日は惨敗だったけど、むしろプロ相手によく踏ん張ったなって、愛さんは思ってたよ)

愛(……何で、他人事なんだろ……?)ニガワライ

愛(やっぱりエースはせっつーで、その相方は歩夢。他にアタックを決めるのは、カリンとエマっちって認識があるのかも)

愛(……アタシ、甘えてるじゃん)

85: 2021/03/04(木) 18:52:33.06 ID:gAA4OFDG
侑「みんな、今日はお疲れさまっ」

歩夢「侑ちゃん……」

侑「効いたみたいだね?」

せつ菜「まあ、それは……」

愛「手も足も出なかったってわけじゃないけど……これが全国レベルトップレベルなんだなぁって」

歩夢「組み合わせ次第では、都大会の予選やトーナメントの序盤でA-RISERSと対戦することもありえるんだもんね」

せつ菜「正直、自信はないです」

侑「そっか……」

侑「それじゃ、私から一つ提案なんだけど……」


「「「???」」」

86: 2021/03/04(木) 19:00:25.82 ID:gAA4OFDG
※※※


かすみ「聞いた? 侑先輩の話」

しずく「うん。ちょっと不安だけど……」

璃奈「私は、とっても燃えてる」

しずく「!」

しずく「わ、私だって……!」


――――
――


侑「確かにうちのメンバーは個性的でそれぞれ役割があるけど、別にそれは絶対的に決まってるわけじゃない」

侑「他チームとの競争ばかり考えてたけど、前に璃奈ちゃんや果林さんが言ってたよね」

侑「まずはチーム内の競争に勝たなきゃ希望のポジションにはつけないし、試合にも出られないんだ……だから」


侑「……一度、背番号とポジションをリセットする」


侑「これまでの実績は全部無視して、来月の練習試合で都大会にエントリーする背番号を決める。もちろん、ポジションもその時考え直すよ」

侑「練習も週5から週4に減らす。減った1日は、自主練習に使ってみて」


――
――――


かすみ「自主練……」

87: 2021/03/04(木) 19:10:34.36 ID:gAA4OFDG
璃奈「私はひたすら基礎トレーニングをする。たとえ作戦を立てられたとしても、実行できる力が無いと意味がないってわかったから」

しずく「私もしばらくはシャドースローとボールハンドリングを続けてみる。かすみさんは?」

かすみ「かすみんは……」


――――
――


かすみ「私が鍵……ですか?」

侑「うん。ツバサさんがそう言ってた」

かすみ「確かにかすみんはまだ何の技も無いですし、得意と言えることも無いですけど……」

侑「私にもちょっと分からなくって……力になれなくてごめんね?」

かすみ「だ、大丈夫ですよぉ! 見ててください! かすみんが、必ず先輩たちを全国大会に連れていきますからっ」

侑「うん、頼りにしてるよっ」ニコッ


――
――――

88: 2021/03/04(木) 19:18:03.81 ID:gAA4OFDG
かすみ「基礎トレーニングをやりつつ……そうだなぁ……」


かすみ(みんなと違ったプレイスタイルを確立するためには、みんなの特技をしっかり把握しなくちゃ。何か見えてくるかもしれないし……)


かすみ「他のみんなの自主練を見て回る……かな?」

しずく「?」

89: 2021/03/04(木) 19:24:03.26 ID:gAA4OFDG
※※※


かすみ「やっぱり、最初はエースですよねっ」グッ


かすみ「おじゃましまーす!」ヒョコッ


歩夢せつ菜「「あ」」

カチャンッ?


かすみ「!」

かすみ「な、何をしてたんですか……?」

90: 2021/03/04(木) 19:33:23.44 ID:gAA4OFDG
歩夢「何にもしてないよ?」ニコッ

かすみ「歩夢先輩がせつ菜先輩にプリンをあ~んしてるように見えたんですが……」

せつ菜「べ、別に、もっと心を通わせるべく、恋人ごっこを試していたとかそういうわけでは」アワアワ

歩夢「せつ菜ちゃんっ!///」ポムッ

せつ菜「はっ!?」

かすみ「……」


かすみ(歩夢先輩って、侑先輩が好きだったはずでは……?)

91: 2021/03/04(木) 19:48:14.29 ID:gAA4OFDG
かすみ「それが先輩たちの自主練習なんですか?」ハァ

歩夢「うぅっ……」

せつ菜「もちろん、この後ジャンピングアタックの練習もする予定でしたよ?」

歩夢「そうそうっ!」

かすみ「へぇ……?」


かすみ「それ、私も混ぜてもらって良いですか?」


歩夢せつ菜「「え??」」

92: 2021/03/04(木) 19:56:28.13 ID:gAA4OFDG



せつ菜「走り込むタイミングは歩夢さんの手からボールが離れた時で、右側から少し斜め気味に走ります」

かすみ「はい」

せつ菜「パスを受け取るというよりは、捕まえるイメージですね。かすみさん、虫採りの経験は?」

かすみ「セミを少し……」

せつ菜「なるほど。この場合、トンボの方が近いです」

かすみ「またよく分からない例えを……」

せつ菜「まあ、ものは試しです。私が一度お手本を見せますから、実際にやってみましょう!」

かすみ「はい!」


歩夢「いくよー!」

ブンッ

94: 2021/03/04(木) 21:27:46.47 ID:gAA4OFDG
>>92ミスです




せつ菜「右投げの場合普通は左足を前に出して、右足を交差させて体重を移動、敢えて不自然な体勢を作って、その反動を活かして左足を突き出して投げるわけですが……」

せつ菜「ジャンピングアタックは、一歩目の左足を踏み切りに使って、空中で右足を交差させつつパスを捕球、通常のアタックの二歩目で着地します」

かすみ「なるほど……」カキカキ?

かすみ「ステップが一歩減るから、捕球からアタックへの移行が速くなるんですね」

せつ菜「そうです!」

せつ菜「まあ、頭で分かっていても、中々実際にやるのは難しいですが……」

せつ菜「はじめは普通にランニングアタックをやりつつ、少しずつ跳躍の高さと距離を伸ばしていきましょう!」

かすみ「わかりました!」


かすみ「歩夢先輩! お願いしますっ!」

93: 2021/03/04(木) 21:26:00.29 ID:gAA4OFDG



せつ菜「走り込むタイミングは歩夢さんの手からボールが離れた時で、右側から少し斜め気味に走ります」

かすみ「はい」

せつ菜「パスを受け取るというよりは、捕まえるイメージですね。かすみさん、虫採りの経験は?」

かすみ「セミを少し……」

せつ菜「なるほど。この場合、トンボの方が近いです」

かすみ「またよく分からない例えを……」

せつ菜「まあ、ものは試しです。私が一度お手本を見せますから、実際にやってみましょう!」

かすみ「はい!」


歩夢「いくよー!」

ブンッ

95: 2021/03/04(木) 21:28:47.35 ID:gAA4OFDG
>>93がミスです

96: 2021/03/04(木) 21:29:25.35 ID:gAA4OFDG
歩夢「それっ」ブンッ


せつ菜「今です!」

かすみ「はい!」ダッ


ピョンッ

パシッ


せつ菜「!」

かすみ「それっ!」ブンッ


ギュンッ

ダンッ……


歩夢「え……?」


せつ菜「1回目で……?」


かすみ「ど、どうでしたか?」

せつ菜「すごいです! ちゃんと出来てましたよ!」

かすみ「本当ですかぁ!」


歩夢「かすみちゃーん!」タッタッタッ

97: 2021/03/04(木) 21:29:52.97 ID:gAA4OFDG
歩夢「ちゃんとジャンピングアタックになってたよ!」

かすみ「えへへっ。歩夢先輩のパスが良かったからですよぉ」

せつ菜「球速が上がれば、十分試合でも使えると思います!」

かすみ「!」

かすみ「あ、ありがとうございます……!」

かすみ「……あの、もう少しやってみても良いですか?」

せつ菜「もちろん!」

98: 2021/03/04(木) 21:30:20.07 ID:gAA4OFDG



かすみ「ありがとうございました!」


タッタッタッ


歩夢「まだまだ高さも距離も足りないけど、かすみちゃんすごかったねっ」

せつ菜「……」

歩夢「……せつ菜ちゃん?」

せつ菜「! あ、はい?」

歩夢「ふふっ」

歩夢「悔しかったんだね?」

せつ菜「……はい」

99: 2021/03/04(木) 21:31:43.16 ID:gAA4OFDG
せつ菜「意外と私、独占欲が強いのかもしれないです」ヘラッ

歩夢「ジャンピングアタックと言えば、せつ菜ちゃんだもんねっ」

せつ菜「それもあるんですが……」

歩夢「ん?」

せつ菜「……歩夢さんのパスは、私だけが受けていたい……です」モジモジ

歩夢「!」

せつ菜「も、もちろん、他のアタッカーにもパスを回さないといけないのは分かってますよ!?」

せつ菜「でもその、ジャンピングアタックの時のパスは、私だけの特別なパスであってほしいというか……」

せつ菜「……えっと……///」チラッ

歩夢「……」

歩夢「えへへっ」ニコッ

100: 2021/03/04(木) 21:32:17.81 ID:gAA4OFDG
せつ菜「な、なんですか……?」

歩夢「せつ菜ちゃん、まだ跳べそう?」

せつ菜「え?」

歩夢「もうちょっと練習しようよ。それでね、今度はもっと早く……私がボールを離す前に走り出してほしいの」

せつ菜「は、はい……?」

歩夢「今のせつ菜ちゃんならきっと出来ると思うんだ」

歩夢「さ、そこで構えてて?」

せつ菜「よくわかりませんが……やってみます!」

歩夢「うんっ」


タッタッタッ


歩夢「いいよ!」フリフリ

101: 2021/03/04(木) 21:33:19.60 ID:gAA4OFDG
――――
――


歩夢「ご、ごめんっ。びっくりしちゃって聞き取れなかったから、もう一回お願い」

侑「しょうがないな歩夢は」ニコニコ


侑「今日からせつ菜ちゃんにパスを出す時は、少しずつ球速と高さを上げていってほしいんだ」

侑「歩夢のパスの回転数や角度はほぼ完成してる。今度は、せつ菜ちゃんの能力を向上させないと」


歩夢「うんうん」

歩夢「出来るかは分からないけど、やってみるよ」


――
――――


歩夢(またタイミングがズレて怪我をさせちゃいけないと思って、A-RISERSとの練習試合では使わなかったけど……)

歩夢(既にせつ菜ちゃんの跳躍力は、前より数段高くなってるはず。あとはタイミングさえ合えば……!)

102: 2021/03/04(木) 21:33:48.47 ID:gAA4OFDG
せつ菜「いきます!」ダッ


歩夢「えいっ」ブンッ


ギュンッ


ピョンッ

せつ菜「!」パシッ

せつ菜(高い……! でも、捕れた!)

トンッ


せつ菜「ふんっ!」ブンッ

ギュインッ

ダンッ

103: 2021/03/04(木) 21:34:51.00 ID:gAA4OFDG



せつ菜「はぁ……はぁ……」


歩夢「どう?」タッタッタッ


せつ菜「驚きました。私って、あんなに高く跳べたんですね……」

歩夢「ふふっ、実はね――」



せつ菜「――侑さんが、そんなことを?」

歩夢「うん。たとえ小柄でも、アタックを速く見せる方法も、球威を上げる方法もあるんだよ」

歩夢「それでね……」

せつ菜「?」

歩夢「今のパスは……その……」


歩夢「せつ菜ちゃんにしか投げない、特別なパスだから……ね?」

104: 2021/03/04(木) 21:35:47.30 ID:gAA4OFDG
せつ菜「……!」パァ

せつ菜「歩夢さぁん!!」ダキッ

歩夢「ちょ、ちょと! せつ菜ちゃん!?」

せつ菜「私の思いが通じたんですね!!!」ギュゥ

歩夢「な、なんのことかな!?」

せつ菜「……あ」

歩夢「え?」

せつ菜「な、なんでもありませんっ!」バッ

歩夢「……?」

歩夢「まあいいや。もうちょっと練習していく?」

せつ菜「はい!」

105: 2021/03/04(木) 21:41:55.24 ID:gAA4OFDG
歩夢(これまでのジャンピングアタックは、結局私が投げたパスにせつ菜ちゃんが合わせる形で成立してた)

歩夢(でも今回は、私がせつ菜ちゃんの手の最高到達点を予測して、そこに思いっきり投げるパス……)

歩夢(これでせつ菜ちゃんが捕ってから投げるまでの時間は、ほぼノータイムになる)

歩夢(せつ菜ちゃんの、いや……私たち二人のジャンピングアタックは、これで完成したはず……!)

歩夢(……それにしても……)

歩夢(急に恋人ごっこしようなんて提案してきたり、抱きついてきたり……)

歩夢(最近のせつ菜ちゃん、ちょっとおかしいよね)

歩夢(侑ちゃんに誤解されたらどうするのっ)ポムッ

歩夢(……)

歩夢(まあ……今のはちょっとドキッとしたけど)

歩夢(……私もせつ菜ちゃんのこと、大切な相棒だって思えてきたってことかな?)フフッ

107: 2021/03/04(木) 21:43:21.66 ID:gAA4OFDG
>>105
思いっきり投げるパス→思いっきりパスを投げる

に訂正です

106: 2021/03/04(木) 21:42:07.36 ID:gAA4OFDG
今日はここまでです

115: 2021/03/07(日) 00:45:45.70 ID:VW3vUXH4
愛「そんなことないって! 今度、愛さん特製のもんじゃ焼きもご馳走するから!」

凛「んー、しょうがないにゃ」


凛(あれ? 凛また買収された?)

凛(愛さんは年下の扱いが上手いなー……)

凛(ま、かよちんは最近璃奈ちゃんばっかりで退屈してたし丁度いっか)



かすみ「あ! 愛先輩!」


愛「あれ? かすかすじゃん!」

117: 2021/03/07(日) 01:24:10.64 ID:YtF4HRsZ
かすみ「かすみんですぅ!」

凛「かすみちゃん?」

かすみ「やっぱり練習相手は凛ちゃんでしたか」

愛「どうしてここが?」

かすみ「りな子に聞いたんですっ。愛先輩は体育館を借りて、カットの練習をしてるって聞いて……」

愛「そうだったんだ。で、どうしたの?」

かすみ「かすみんもカットに挑戦してみたいなと思って」

愛「え!?」

118: 2021/03/07(日) 01:59:28.82 ID:VW3vUXH4
凛「試合でやったことはあるの?」

かすみ「一応愛先輩がアウトになった後に時々やってはいるけど……」

愛「いつも逃げ遅れて当たってるよね」アハハ

かすみ「うっ……だ、だから練習してみたいんですぅ!」

凛「うんうん、良い心がけにゃ」

凛「カットの練習は人数が多い方がやりやすいし、大歓迎だよ!」

119: 2021/03/07(日) 02:27:28.83 ID:VW3vUXH4


凛「カットの基本的な動きはこんなもんかな。次は実際に動いてやってみるにゃ」

愛「意外と考えること多いんだー」

凛「むぅ、馬鹿にしてるのかにゃ? 凛はかよちんに言われた通り、ちゃんと多彩なテクニックを駆使して……」

かすみ「言われた通り」

凛「!」

凛「……ごほん」

愛「あはは」

120: 2021/03/07(日) 13:21:48.49 ID:VW3vUXH4
愛「馬鹿にしてるとかじゃなくって、てっきり凛はアタシと同じように、感覚だけでやってるタイプだと思ってたから」アハハ

凛「んー、まあそれは間違いじゃないけど……」

凛「ちゃんと技術みたいなのもあるよ? カットに入るタイミングとか、マークの仕方とか……」

愛「どんな感じ?」

凛「外野にべったり付くのもアリだけど、敢えて横に控えておいて、アタッカーがパスを投げる直前に入って捕るとか……」

凛「内野側なら、センターアタッカーだけにつくにゃ」

凛「もちろんパスカウントによって動きは変わるから、そこは慣れだね」

かすみ「なるほど」

121: 2021/03/07(日) 13:22:29.04 ID:VW3vUXH4
すみません、昨日寝落ちしてました

123: 2021/03/07(日) 13:41:43.81 ID:VW3vUXH4
愛「考えてやったことなかったなあ」

凛「うちで徹底してるのは、捕らないカットかにゃー?」

愛「捕らないカット?」

凛「うん。そもそもカットって、『切る』って意味でしょ? 相手の攻撃の流れさえ切れれば、それで仕事したことになるんだってかよちんが」

愛「ふーん?」

かすみ「つまり、パス回しがスムーズに出来ないよう妨害すれば十分ってこと?」

凛「そうそう!」

かすみ「それなら、かすみんにも出来るかもっ」

凛「それじゃあ早速やってみるにゃ!」

124: 2021/03/07(日) 13:42:20.59 ID:VW3vUXH4



愛「やるじゃんかすみん!」

かすみ「それほどでもありますけどぉ」フッフーン

愛「愛さんも負けないように頑張らなきゃ!」

愛「……そういえば、他の人の練習も見に行くんだっけ?」

かすみ「はい! 次は3年生の先輩方を見に行こうかと!」

愛「なるほどね。でも、この間カリンが3年生は3人で合宿するって言ってたような……」

125: 2021/03/07(日) 14:28:55.99 ID:VW3vUXH4
※※※


別日部室 夜


エマ「夜の学校って、なんだかワクワクしちゃうよね~!」

果林「毎週言ってるわね」フフッ

彼方「彼方ちゃんは、遥ちゃんが心配で心配で……」

果林「子どもじゃないんだし、大丈夫よ」


果林(私たちは毎週、自主練習日の前日夜から部室に泊まって、合宿を行うようになった)

果林(お互いにコーチをする方式は成功だったみたいで、私たちは自分がレベルアップしていくのを感じていた。でも……)

126: 2021/03/07(日) 14:50:36.85 ID:VW3vUXH4
果林「何かが足りないのよね……」

エマ「? 足りない?」

果林「苦手だったことが上達しているのはわかってるのだけど……」

果林「元々得意だったことが伸び悩んでいるような気がするわ」

彼方「確かに……」

果林「いくら得意でも、この間と同じレベルのままじゃ、A-RISERSには通用しないんじゃないかしら?」

エマ「そうだよね……苦手なことの穴埋めも大切だけど、得意なことも伸ばしていかなきゃ」

彼方「うーん……」

果林「明日は、その辺も考えて練習してみましょう」

エマ「わかったよ~!」

127: 2021/03/07(日) 15:17:07.29 ID:VW3vUXH4
※※※


翌日朝


ピロンッ♪?


果林「? あら? かすみちゃんからだわ」


かすみ『今日、先輩方の自主練に参加しても良いですか❤』


果林「ちょっとエマ、彼方ー?」

エマ「どうしたの?」

彼方「まだ眠いー」

果林「今日の練習にかすみちゃんも参加したいって言ってるのだけど」

エマ「やった~!」

彼方「いいんじゃない?」

果林「ふふっ、愛されてるのね」


果林『いいわよ』

かすみ『ありがとうございますっ! 体育館でお待ちしてます⭐』

128: 2021/03/07(日) 15:32:00.27 ID:VW3vUXH4



果林「私たちの必〇技を教えてほしい?」

かすみ「はい! 果林先輩はX・Y字アタック、エマ先輩は一発アタック、彼方先輩にはキャッチとカウンターアタックを教えてほしいんですっ」

エマ「それは良いけど~……」

彼方「結構難しいかもよー?」

かすみ「大丈夫ですっ!」

果林「まあ、かすみちゃんはそんなに身体が硬いわけでもないし、クロスアタック自体は時々試合でも撃ってるものね」

果林「……わかった。丁度特技を伸ばそうって話をしていたし、人に教えることでわかることがあるかもしれないわ」

エマ「そうだね~!」

129: 2021/03/07(日) 15:50:32.99 ID:VW3vUXH4



果林「そこでこう腰をひねって……」

かすみ「はい」

かすみ「……あの」

果林「? どうしたの?」

かすみ「ここって、足首の向きも変えた方が良いんじゃないですか?」

果林「足首?」

かすみ「はいっ。投げる時の足首って、投げる方向に対してちょっと内側に傾けるじゃないですか」

果林「そうしないと踏ん張りが効かないものね」

かすみ「そうですね。でも、内側に傾けすぎてもバランスが崩れて投げれないですよね」ヨロヨロ

果林「そりゃあそうよ」グラグラ

かすみ「……果林先輩、XアタックやY字アタックを撃つ時と通常のアタックの時とで、足首の向き同じですよね?」

果林「!」

果林「……確かに」

かすみ「投げる方向が変わるんだから、足首の角度も変えたらどうなのかなって……」

果林「それだわ!」オテテニギッ

かすみ「わわわっ!?」

132: 2021/03/07(日) 16:22:25.95 ID:VW3vUXH4



エマ「一発アタックに教えることなんてないよ~」

かすみ「例えばタイミングとか、狙う場所とか……」

エマ「う~ん……」

エマ「一応気にしてるのは、点差と時間くらいかなぁ?」

かすみ「点数が離れて負けてる時は、外野から当てた方が効率が良いとかですかね?」

エマ「ううん。その場合は、逆に一発アタック撃っちゃうな~」

エマ「内野からもアタックが来るって相手に思ってもらって、少しでもラインを外野に近付けなきゃ」

かすみ「点数が離れてて勝ってる時は……?」

エマ「撃つね~。捕られた時のリスクが小さいし、チームに流れが来てるだろうから」

かすみ「……じゃあ、どういう時は撃たないほうが良いんですかね?」

エマ「気分!」ニコッ

かすみ「ええ……」

133: 2021/03/07(日) 16:39:27.91 ID:VW3vUXH4
エマ「その辺はせつ菜ちゃんたちが判断してくれるから、プレー再開時にボールもらったら撃ってるだけかな~」

かすみ「なるほどぉ」

エマ「この間の練習試合ではあんまり決まらなかったけどね~」

かすみ「あの3人以外には通用してましたよ?」

エマ「う~ん。それはそうなんだけど、今のままじゃ全国大会では使えないよね」

かすみ「そんなことはないと思いますけどぉ……」

エマ「一発アタックの決定率は、球速と球威だけでほぼ決まっちゃうから……。一応都大会まで、筋力アップを続けようとは思ってるけどね~」

かすみ「……」


かすみ(本当にそうなのかな? ……一発アタックの成功率を高める要素、他にもありそうだけど……)

134: 2021/03/07(日) 16:49:27.38 ID:VW3vUXH4



彼方「――それで、身体を丸めてー……」

かすみ「」パシッ

彼方「じょうずじょうず~!」パチパチ

かすみ「えへへぇ」

彼方「胸を張ると弾いちゃうから、捕った後前かがみになって、ボールを正面から覗き込むイメージだねー」

彼方「足元に来たアタックは両膝をついて捕るんだけど、カウンターアタックを狙う時は、片膝だけつくと良いよ~」


※ここまで描写していませんでしたが、ドッジボールプレーヤーは練習や試合時、基本的にバレー用の膝当てをつけています。

135: 2021/03/07(日) 16:49:42.51 ID:VW3vUXH4
彼方「まあ、かなり余裕をもってキャッチ出来ないとカウンターアタックは出来ないんだけど……」

かすみ「勉強になりますっ」

彼方「教えといてなんだけど、彼方ちゃんもカウンターアタックはまだまだ改善の余地アリって感じなんだー」

かすみ「そうなんですか?」

彼方「うん。この間も結構避けられたり捕られちゃったりしたからねー」

かすみ「至近距離だと逆に捕りやすいとかありますよね」

彼方「サッカーのPKみたいなものかなー。距離が近いとその分角度が狭くなるから、読まれやすいのかも」





かすみ「先輩方、今日はありがとうございましたっ!」

果林「こちらこそ、参考になったわ」

エマ「来週もおいで~」

彼方「練習試合まであと2週間、お互い頑張ろうねー」

かすみ「はい!」

137: 2021/03/07(日) 17:07:18.94 ID:YtF4HRsZ
※※※


かすみ帰路


かすみ「……」トコトコ


かすみ「せつ菜先輩のジャンピングアタック、凛ちゃんのカット、3年生の先輩方の技……」

かすみ「案外、すぐに真似できちゃった……!」

かすみ「ふふんっ、やっぱりかすみんは天才だったのでは!?」

かすみ「私ならなれますよぉ~! 無敵のアタッカーに!」ニッシッシ

かすみ「明後日の練習では、たしか紅白戦がありましたね。かすみんのすごいところ、先輩方に見せつけちゃいますっ」

138: 2021/03/07(日) 17:08:08.30 ID:VW3vUXH4
※※※


練習 紅白戦


侑「よし! 5分間休憩の後、紅白戦ね!」


「「「はーい!」」」


タッタッタッ


侑「えーっと、今日のチーム分けは……」?


A
せつ菜 センターアタッカー
歩夢  元外野
愛   右アタッカー・ジャンパー・カット
果林  左足アタッカー
しずく レシーバー


B
彼方  左アタッカー
エマ  右アタッカー
かすみ 元外野
璃奈  レシーバー
侑   レシーバー


侑「最近みんなの球速が上がってきてるから、試合に入るのちょっと怖いなぁ」エヘヘ

139: 2021/03/07(日) 17:16:11.09 ID:VW3vUXH4



ピョンッ


果林「先攻ね」パシッ

せつ菜「流石愛さんですっ!!!」

愛「最近またコツ掴んだかも」

愛「! コツコツ努力したからね! コツだけに!」

果林「歩夢ー!」ブンッ

愛「」


璃奈「初手はきっと、せつ菜さんのジャンピングアタック」

エマ「そうだね~」

璃奈「歩夢さんがパスを出したら、ラインを外野側に寄せよう」

侑「わかった!」

140: 2021/03/07(日) 17:16:55.14 ID:VW3vUXH4
せつ菜「歩夢さん!」ダッ


彼方「え?」


歩夢「うんっ!」ブンッ


ギュインッ


「「「!?」」」


璃奈(! せつ菜さんが先に走り出した? しかも、歩夢さんのパスもものすごく速い……!)


ピョンッ


せつ菜「うおおおぉぉぉおおお!!!」ブゥンッ


ギュオンッ


エマ「!?」ドカッ


侑「エマさんアウト! ボールデッド、A内野ボール」

141: 2021/03/07(日) 17:17:20.76 ID:VW3vUXH4
せつ菜「歩夢さーん!」ピョンピョン


歩夢「ナイスアタックだよせつ菜ちゃーん!」フリフリ


璃奈「……あの速度のパスを、そんなに速く投げ返せるの」

侑「完成したんだね!」ニコッ



かすみ「……」

かすみ(……あれ?)

142: 2021/03/07(日) 17:30:15.71 ID:VW3vUXH4



歩夢「果林さん!」ブンッ


果林「あら? 私には随分と優しいパスをくれるのね?」

果林「……まあいいわ」


果林(XアタックやY字アタックは、所詮フェイントアタックの類……そうだったわね?)

果林(だけど、そんなの私が壊してあげる)パシッ


果林「そこ!」グイッ


ギュインッ


璃奈「うわっ」ドンッ

侑「璃奈ちゃんアウト!」

璃奈「来ると思ってたのに」


果林(分かってても捕れないよう、球速と球威を上げれば良い。でも、筋力は短期間じゃ伸ばせない……)

果林(足首の角度。こんな小さな工夫でここまで変わるなんてね? ありがとう、かすみちゃん)


かすみ「……」

143: 2021/03/07(日) 17:39:06.12 ID:VW3vUXH4
 
彼方「ここから逆転しようねー」ブンッ

侑「彼方さん! そっちは!」

彼方「あ」


愛「もらったー!」ダッ


彼方「あちゃー……」

彼方「でも、あれだけ離れてたら……!」


愛「――なんちゃって」サッ


かすみ「ええっ!?」バチッ


コロコロ


侑「捕る振りをして避けた……!」

彼方「かすみちゃんがボールを弾いて、相手コートに入っちゃったねー……」


せつ菜「ナイスカットですっ!」パシッ

愛「よしっ!」


侑「いつもの愛ちゃんなら無理してでも捕りに行って、成功するか当たるか五分五分だけど……」

侑「敢えて走り抜けて、外野の視界を奪ったんだね!」



かすみ(今のは……凛ちゃんのカット……!)

かすみ(愛先輩、両方のタイプのカットを使い分けれるようになってる!)

145: 2021/03/07(日) 18:23:18.21 ID:VW3vUXH4
侑「そこまで!」


愛「ふー」

果林「紅白戦のレベルもかなり上がってきたわね」

エマ「みんなが仲間で良かったよ~!」

歩夢「私たち、ちゃんと強くなってるよねっ」

侑「うんうんっ!」


かすみ「……」


かすみ(私、何浮かれてたんだろ? ちょっとみんなと同じことが出来たからって……)

かすみ(結局私は、下位互換でしかない……このままじゃ……)グッ


しずく「かすみさん?」

かすみ「へ!?」

しずく「どうしたの?」

かすみ「な、なんでもないよっ?」

しずく「ふーん……」

しずく「……ね、かすみさん」

かすみ「?」

しずく「練習が終わった後、ちょっと付き合ってもらえるかな?」

かすみ「? ……良いけど」

146: 2021/03/07(日) 18:24:00.71 ID:VW3vUXH4
※※※


練習終了後


かすみ「……いやっ、無理だってぇ……」

しずく「大丈夫だよ。かすみさん、ここ好きなんでしょ?」

かすみ「んっ」

しずく「ほら、素直になって?」

かすみ「……好き、だけどぉ……」

しずく「うふふっ。それじゃあ」スッ

かすみ「やだやだっ、そんなの入らない!」


しずく「はい、あ~ん?」

147: 2021/03/07(日) 18:24:17.46 ID:VW3vUXH4
今日はここまでです

151: 2021/03/08(月) 19:25:03.54 ID:IUX9JiY5



かすみ「げぷぅ~……何とか食べ切った……」

しずく「案外いけたねー!」ニコニコ

しずく「前は璃奈さんもいたからね」

かすみ「もう2度とやらない……」


かすみ「……それで、パンケーキ食べるのに付き合ってほしかっただけなの?」

しずく「……」

しずく「それもあるんだけど……」

152: 2021/03/08(月) 19:27:55.69 ID:xVBsVCPA
しずく「最近、かすみさんの様子がおかしいなって。今日の紅白戦も身が入ってなかったし」

かすみ「うっ……」

しずく「何かあったなら話して? 前に私が困ってた時、かすみさんが助けてくれたじゃない」

かすみ「……」

かすみ「……私ね、この間言った通り、みんなの自主練を見に行ったんだ……それでね――」

153: 2021/03/08(月) 20:10:47.97 ID:xVBsVCPA



かすみ「そんな感じで案外全員分の技が真似できて……ひょっとして、私ってすごいんじゃないかって思ったんだ」

しずく「かすみさんは一応全部のポジションが出来るもんね、流石だよ」

かすみ「ううん。それは勘違いだったんだ」

しずく「?」

かすみ「今日の紅白戦で、改めて周りとの差に気付いた。私は所詮、器用貧乏以上にはなれないんだって」

154: 2021/03/08(月) 20:19:30.97 ID:xVBsVCPA
しずく「……」

しずく「たしかに、先輩たちはそれぞれレベルアップしてたよね……でも」

かすみ「?」

しずく「それって多分、かすみさんのおかげなんじゃないかな?」

かすみ「え?」

しずく「きっと、かすみさんがみんなと同じことを簡単にやっちゃうから、先輩方も危機感を覚えたんだと思う」

しずく「それが全体のレベルアップに繋がったんだから、やっぱりかすみさんはすごいよ」ニコッ

155: 2021/03/08(月) 21:19:34.28 ID:xVBsVCPA
かすみ「……」

しずく「……まだ、自信持てない?」

かすみ「……うん」

しずく「私の勝手な意見だけどさ」

しずく「かすみさんは、一人でやることにこだわりすぎてるんだと思う」

かすみ「……どういうこと?」

しずく「私のフェイントだってそうだけど、一人じゃ出来ない技……協力するから威力を発揮する技だってあるんだよ」

157: 2021/03/08(月) 21:53:52.05 ID:xVBsVCPA
しずく「かすみさんの良いところって、ちゃんとみんなのことを見てるところだと思うんだ」

しずく「私が落ち込んでた時もかすみさんだけが気付いてくれたし、これまでの何とか勝てた試合だって、最後のプレーには必ずかすみさんが絡んでたよね?」

しずく「みんなを活かすプレーをしてこそ、かすみさんは輝けるんじゃないかな?」

しずく「……もし行き詰まったら、私にも手伝わせてほしい」オテテニギッ

かすみ「しず子……」

かすみ「……よしっ。次の自主練習の日、先輩たちみたいに、1年生も集まって練習しよ!」

しずく「うん」ニコッ

158: 2021/03/08(月) 22:04:41.66 ID:xVBsVCPA
※※※


ピロンッ♪?


かすみ『今度の自主練習、1年生3人でおじゃましますっ』


果林「あら? 璃奈ちゃんとしずくちゃんも来るとなると……」

果林「ふふっ」ニコニコ

159: 2021/03/08(月) 22:33:52.01 ID:xVBsVCPA
※※※


自主練習日


かすみ「おっはようございま……」

かすみ「!」

かすみ「あれぇ!?」


せつ菜「おはようございます!!!」

愛「おっはよー!」

歩夢「かすみちゃんたちも来たんだねっ」

侑「自主練習って言ったのに」

果林「結局全員揃っちゃったわね」ニコニコ

166: 2021/03/12(金) 00:58:49.86 ID:Dep47f1D



侑「キャッチボール終わりー! 東西南北※の後、個人練習ね!」


「「「はーい!」」」タッタッタッ


かすみ「あの、侑先輩!」

侑「ん?」

かすみ「個人練習なんですが、私は見学してても良いでしょうか?」

侑「どうしたの? どこか怪我しちゃった……?」

かすみ「いえ、もっとみんなのことを知りたいんですっ!」

侑「! ……ふふっ」

かすみ「なんですかぁ」

167: 2021/03/12(金) 00:59:50.95 ID:Dep47f1D
侑「ううん。かすみちゃん、今すごく良い目してるねっ」

かすみ「そ、そうですか?」

侑「うん! そういう前向きな理由なら良かった。頑張ってね!」

かすみ「はいっ!」



※東西南北
内野一人、外野4人で行うハードな中当て。
ある年の小学生夏の全国制覇チームがテレビで特集された際に披露し、全国的に導入された練習方法。関東発祥とされる。

168: 2021/03/12(金) 02:03:18.52 ID:Dep47f1D
※※※


かすみ「……」ジーッ

果林「そんなに見つめてどうしたのかしら?」フフッ

かすみ「……改めて見ると、みなさんすごいなぁと……」

果林「そう?」

かすみ「はい。うちのチームは、スペシャリスト軍団ですよね」

果林「うーん。まあ、そうかもしれないわね」

果林「……でも」

かすみ「?」

果林「かすみちゃんは少し、みんなを過大評価してるのかもしれないわ」

170: 2021/03/12(金) 22:08:17.06 ID:Dep47f1D
果林「全国大会にいけば、上には上がいる。同じ高校生が同じ路線で上にいる以上、私たちはまだまだ伸びしろがあると思うのだけど?」

かすみ「それは……そうですけど」

果林「……そうだわ、あまり褒められた視点では無いけど、今日の練習では、かすみちゃんはみんなの弱点探しをしてみたら?」

かすみ「弱点探し、ですか?」

果林「ええ。私の足首の向きを指摘したみたいに、みんなの欠点を見つけて、それを埋めてみるのはどうかしら?」

かすみ「なるほど……」

171: 2021/03/12(金) 22:52:47.14 ID:Dep47f1D



かすみ(2年生は正直隙が見当たらないけど……)

かすみ(彼方先輩はカウンターアタックの決定率、エマ先輩は短期的に一発アタックの威力を上げること)

かすみ(私たち1年生は、当たっても内野に帰還できるように……)カキカキ?

かすみ(たしかに、穴はあるかも……)


かすみ(最近侑先輩からもらった試合のビデオを見てて、気付いたことがある)

かすみ(それは、まだまだ意外と知らないルールがあるということ――というより、どこからがファール適用になるのかっていう基準が、案外曖昧なんだよね……)

かすみ(家に帰ったら、ルールブック読み直そ……)

173: 2021/03/12(金) 23:21:42.99 ID:Dep47f1D
※※※


かすみ「プレーしてると気にならないけど、意外とルールブックを読み直すと、勘違いしてることって多いんだなあ」

かすみ(例えば、アウトプレー……)

かすみ(アウトになった後、相手のコートを通って外野に行っちゃだめくらいの認識だったけど)

かすみ(基本的には、『完全に自コートの外に出てはいけない』というルール……)

かすみ(審判は6人で、センターラインに主審と副審、外野コートの四隅に1人ずつ)

かすみ(それぞれ見る場所が違うんだ)

かすみ(……! これ、使えるかも!)

174: 2021/03/13(土) 00:02:13.57 ID:eAfFRTSS
※※※


練習試合当日


侑「みんな、準備は出来てる?」

エマ「もちろん!」

せつ菜「うおおおおおおお!!!」

しずく「ばっちりです!」


侑「ふふっ、良かった」

侑「都大会まで約1ヶ月、今日の練習試合は、勝つことを意識するよ!」

侑「参加チームはうちと、千歳橋ウェイターズ、浦和ボンズ、レッドスワローズ葛西、そして……」

侑「A-RISERS!」

175: 2021/03/13(土) 00:36:16.67 ID:eAfFRTSS
果林「早くもリベンジのチャンスってわけね」

せつ菜「燃えてきましたあああ!!!」

しずく「チーム名、正式にA-RISERSに戻したんですね」

侑「うん。本気で全国王者奪還を目指してるみたいだね」

璃奈「熱い展開、好き」

愛「お? りなりーも燃えてきたか!」

璃奈「うん。絶対負けない」グッ

彼方「今日はすやぴ無しだよ~」

176: 2021/03/13(土) 00:55:19.77 ID:eAfFRTSS



侑(5チーム総当り。はじめの3戦を全勝した私たちは、同じく全勝のA-RISERSとの対戦を迎えた)


侑「最終戦のオーダーを発表するよ!」

かすみ「待ってください!」

侑「? どうしたのかすみちゃん?」

かすみ「かすみんに、元外野をやらせてください!」


「「「ええ!?」」」

179: 2021/03/13(土) 20:59:45.39 ID:eAfFRTSS
せつ菜「かすみさん?」

愛「ふざけてる場合じゃ」

かすみ「ふざけてなんかいませんっ!」

侑「……何か、考えがあるんだね?」

かすみ「はい! ぶっつけ本番ではありますけど、上手くいくはずです!」

180: 2021/03/13(土) 21:41:07.85 ID:eAfFRTSS
しずく「侑さん、私からもお願いします!」

璃奈「実はさっき、かすみちゃんの作戦は聞いた。条件が整えば、A-RISERSにも通用すると思う」

果林「……」

果林「私も、かすみちゃんに賭けてみるのもアリだと思うわ」

侑「みんながそう言うなら……」

かすみ「あと、もう一つだけお願いが」

侑「?」

181: 2021/03/13(土) 21:52:28.21 ID:9uhFJZ8Z
※※※


第4試合
VS A-RISERS(練習試合4試合目)
【オーダー】
虹ヶ咲Passions
1 優木せつ菜   センターアタッカー①
3 中須かすみ   元外野
4 エマ・ヴェルデ 大砲
5 朝香果林    左アタッカー
6 近江彼方    右アタッカー
7 天王寺璃奈   レシーバー
8 宮下愛     センターアタッカー②・カット・ジャンパー
9 桜坂しずく   レシーバー
ベンチ 上原歩夢

183: 2021/03/13(土) 23:38:31.97 ID:eAfFRTSS
ツバサ「都大会でとは言ったけど、かなり早く再戦できたわね」

あんじゅ「あんまり色んなチームと戦いすぎちゃダメって理事長と生徒会長が言うからね~」

英玲奈「データ取られたところで、負けはしないのにさ」

果林「随分と安く見られたものね?」

ツバサ「誤解だよ。私たちだって虹ヶ咲のことは手強い相手だと思ってる」

あんじゅ「そうだよ~」

果林「手強い、ね……」

184: 2021/03/13(土) 23:52:23.37 ID:eAfFRTSS
果林(それ、自分たちが勝つのは前提って言い方じゃない)

果林(随分と自信があるのね……)ギリッ


エマ「果林ちゃん?」

果林「! ……何でも無いわ。良い試合にしましょう?」フッ

英玲奈「ええ」ニコッ



歩夢「モメてるの……?」

侑「どうしたんだろ? 最後は二人とも笑ってたから、大丈夫だとは思うけど……」

歩夢「そうだよねっ」

歩夢「それより……」チラッ


せつ菜「……」


歩夢「……せつ菜ちゃん」ギュッ

186: 2021/03/14(日) 00:02:53.24 ID:BIjygY2K
――――
――


侑「1年生と3年生を全員試合に出してほしい!?」

かすみ「はいっ」

侑「そうすると、2年生から1人ベンチに入ることになるね」ウーン

侑「ジャンプボールやカットを考えると、愛ちゃんは絶対に外せない。キャッチ力で考えると……」

侑「歩夢、ベンチに入ってもらえる?」

歩夢「え? ああうん。私は良いよっ」

侑「ありがとう。良いよね、せつ菜ちゃん?」チラッ


せつ菜「……」ガタガタガタガタ

187: 2021/03/14(日) 00:29:09.83 ID:BIjygY2K
愛「せっつー……?」

彼方「重症だねー」

せつ菜「だだだ、大丈夫です!!」ビシッ

かすみ「もうっ。かすみんだって、パスくらい出来ますけどっ!」プンッ

かすみ「……でもまあ」

かすみ「今回の試合は、せつ菜先輩じゃなくて、3年生の先輩方を中心に攻めていきたいと思いますっ」

エマ「え~!?」

彼方「彼方ちゃんたちが?」

189: 2021/03/14(日) 00:45:00.90 ID:BIjygY2K
かすみ「はい! もちろんこの試合に勝つためというのもありますが……」

かすみ「せつ菜先輩のジャンピングアタック一本じゃ、全国大会に行っても勝てないです。せつ菜先輩だってアウトになることはあるんですしっ」

侑「他のみんなの力で勝ちたいってこと?」

かすみ「そうです! A-RISERSに通じれば、きっと自信が持てますよっ!」


――
――――

190: 2021/03/14(日) 01:40:57.53 ID:BIjygY2K
主審「ジャンプボール!」


A-RISERS「「「What’cha do what’cha do? I do “Private Wars” ほら正義と狡さ手にして~♪」」」


虹ヶ咲「「「「「「溢れ出す この気持ち 胸の奥 もう止まらない 虹色Passions! 勇気に染まるColors!~♪」」」」」」


ピョンッ


愛「先攻!」

英玲奈「やるじゃん」

192: 2021/03/14(日) 18:57:36.07 ID:BIjygY2K
彼方「いくよー」ブンッ


かすみ「果林先輩!」ブンッ

かすみ「」ダッ


果林「!」パシッ


果林(パスを出してすぐに相手内野端の後ろに移動した……)

果林(……そこに投げろってことね)ブンッ


ダンッ


かすみ「パスカウント0ですっ! しっかり攻めていきましょう!」

193: 2021/03/14(日) 19:58:35.49 ID:BIjygY2K
侑「……上手いね」

歩夢「うん」

侑「パスを出した後のアタックコース誘導に、撃たせるためのパスとそうでないパスの投げ分け……これが完璧にこなせる外野は実はそういない」

歩夢「私もパスなら出せるけど、その他の動きはちょっと苦手かも」



かすみ(――ドッジボールには、必勝法がある)

かすみ(それは、一度だけアタックを決めて、残りの時間ボールを持ち続けること)

かすみ(でも、途中のミスや相手のカットに捕られることを考えると、そんなのは現実的に不可能)

かすみ(……それでも)

かすみ(単純に1秒こちらの攻撃を伸ばせば、相手の攻撃が1秒少なくなる! 現状うちの守備でA-RISERSのアタックをしのぎ切ることはできないっ)

かすみ(だから私は、仲間を守るためにボールを長く持つ!)

かすみ(……まあ、他にも目的はあるけど……)

195: 2021/03/14(日) 21:55:25.38 ID:BIjygY2K
侑「……」

歩夢「試合に入れば、いくらレシーバーでも目で追うのはボールだけ。外野の動きなんてチェック出来ない」

歩夢「私には足りない元外野としての動きを教えるために、かすみちゃんは元外野に行ったのかなって」

侑「なるほど……」



かすみ(これだけわかりやすく何度も同じパターンのパス回しを見せたんです。きっと歩夢先輩にも伝わりましたよね)チラッ

かすみ(さて、次は……)

197: 2021/03/14(日) 22:11:37.45 ID:BIjygY2K
かすみ「せつ菜先輩!」ブンッ


せつ菜「待ってました!!!」ダッ


ピョンッ


トンッ


ギュンッ


「」バチンッ


主審「4番アウト!」ピッ


エマ「ナイスアタックだよ~!」

果林「さあ、守備よ!」


【内野数】
虹ヶ咲 7:6 A-RISERS

198: 2021/03/14(日) 22:29:00.41 ID:BIjygY2K
侑「決まった! やっぱり歩夢とのコンビネーションには劣るけど、狙う相手を間違えなければ、十分通用してる!」

歩夢「うんっ。あの3人以外を狙うのは、前と同じなのかな?」

侑「そうみたい。でも、かすみちゃんさっき『3年生中心に攻める』って言ってたような……?」

歩夢「確かに……」



かすみ(あっれー……!?)

かすみ(今のはキャッチされる予定だったのに……)

かすみ(いやいや、もちろん当たるならそれはそれで良いけどっ)

かすみ(というか……。せつ菜先輩、地の球速が明らかに速くなってるよね……?)

199: 2021/03/14(日) 22:46:56.93 ID:BIjygY2K



あんじゅ「それ~」ブンッ


ギュルンッ


彼方「!」バッ


パシンッ



歩夢「ドロップボールを捕った!」

侑「落ちるより早く前に出て捕ったんだ」

歩夢「……!」

200: 2021/03/14(日) 22:48:20.05 ID:BIjygY2K
彼方「チャンスじゃなーい?」ダッ


あんじゅ「なっ!」バッ



侑「前に出た勢いで、そのままカウンターアタック!」

歩夢「初めから、少しだけ球速が遅いドロップボールを狙ってたんだねっ」



かすみ(アタッカーはアタックを撃った後、自分の守備位置に戻る。あんじゅ先輩はカットも兼ねてるから、必然的にサイドの近くを通ってラインの後ろに逃げようとするはず……!)ダッ

202: 2021/03/14(日) 22:49:09.46 ID:bx+uGQ8V
かすみ「彼方先輩!」


彼方「!」ブンッ


ダンッ


あんじゅ「!?」クルッ


かすみ「えい!」ブンッ


あんじゅ「きゃ!」バチッ


主審「2番アウト! ボールデッド! 虹ヶ咲内野ボール!」ピッ


【内野数】
虹ヶ咲 7:5 A-RISERS

203: 2021/03/14(日) 22:49:58.28 ID:bx+uGQ8V
歩夢「ナイスアタックだよっ、かすみちゃん!」

侑「彼方さんのカウンターに合わせて、あんじゅさんが逃げた方のサイドに回り込んでたんだね!」

侑「後ろにかすみちゃんが控えてたから、彼方さんは避けられてボールデッドになる心配をせずにアタックが撃てたんだ!」



彼方「お~!」

果林「やるじゃない」

せつ菜「良い流れです!!!」

璃奈「しずくちゃん」ソデクイッ

しずく「うん。流れはうちに来てる。エマさん!」

しずく「一発アタックをお願いします!」

エマ「わかった~!」

210: 2021/03/16(火) 21:35:40.47 ID:UQgsw25T
璃奈「最初から大人数でやると、カウンターをもらうリスクがある」

しずく「だから最初は私たち2人でするんだったよね!」

果林「? 何を?」

しずく「かすみさんの作戦その2です」

彼方「ん~?」

エマ「それじゃあいくよ~」スッ

しずく「せーのっ」ダッ

璃奈「うん」ダッ

エマ「そ~れっ」ブンッ

しずく・璃奈「「」」ブンッ


ギュインッ


ドガッ


「7番アウト! ボールデッド! 虹ヶ咲内野ボール!」ピッ


【内野数】
虹ヶ咲 7:5 A-RISERS


侑「エマさんを挟むように、しずくちゃんと璃奈ちゃんが一緒に走り込んで投げる素振り……」

歩夢「あれは何の意味があるの?」

211: 2021/03/16(火) 23:06:02.17 ID:UQgsw25T
かすみ(アタック決定率を上げる方法は、球速や球威を上げる以外にもある)

かすみ(自分の攻撃力が打ち止めなら……相手の守備力を下げれば良い!)



侑「多分、目的はせつ菜ちゃんのジャンピングアタックと同じ……相手の視線を揺らすこと」

侑「あんなことされたら、たとえどこからアタックがくるか分かってても脳がエマさんへの集中を許さない……!」

歩夢「すごい……!」



かすみ(私には決定率の高いアタック力も、安定したキャッチ力も無い)

かすみ(でも、勝ちたいって気持ちだけは、誰にも負けないっ)

かすみ(チームが輝いてる時、それはきっと、かすみんも輝いてるから!)

かすみ(――だから私が、みんなを"無敵のアタッカー"にしてみせるっ!)

218: 2021/03/18(木) 23:53:43.59 ID:XYarWeDs
ツバサ「……くっ」

英玲奈「見事にしてやられた。カウンターを食らったのはあんじゅの不注意とはいえ、シンクロアタックなんてプロじゃまずやらない」

ツバサ「学生特有の自由なプレーね」

英玲奈「手強い……。撤回する。虹ヶ咲は、A-RISERSのライバルだ!」

ツバサ「認めるしかないね。ここからは、本気でいかせてもらう!」

219: 2021/03/19(金) 00:44:17.19 ID:igBzjo23



せつ菜「うおおおぉぉぉおおお!!!」ブゥンッ


英玲奈「ふんっ」バシィンッ

ツバサ「いくわよ!」

英玲奈「あんじゅ!」ブンッ


あんじゅ「ほいっ」パシッ


ツバサ「さっさと帰ってきなさい!」


あんじゅ「おっけ~!」


果林「来るわ!」ザッ


あんじゅ「それ~!」ブンッ


ギュルンッ


璃奈「!」バチッ


主審「7番アウト! ボールデッド! A-RISERS内野ボール!」ピッ


【内野数】
虹ヶ咲 6:5 A-RISERS

220: 2021/03/19(金) 00:53:24.03 ID:igBzjo23
侑「惜しい!」

歩夢「ちゃんとタイミングは合ってたのにね……」

侑「レシーバーのキャッチは下からすくい上げるようにして捕る方法だから、ドロップボールをまともに捕ろうとすると、弾いちゃうんだよね」

侑「彼方さんくらいがっちりホールド出来れば良いけど、あの回転数は璃奈ちゃんじゃ厳しかったのかも……」

歩夢「そっか……」


ベチッ


主審「9番アウト!」


しずく「ごめんなさいいいい」


【内野数】
虹ヶ咲 5:5 A-RISERS

221: 2021/03/19(金) 00:59:35.07 ID:igBzjo23
愛「!」ブンッ


英玲奈「よっと!」パシッ



侑「あらま……」

歩夢「これまでの対戦相手に一人もいなかったから意識したことなかったけど、左投げのアタッカーってかなり捕りにくいんだね」

侑「単純に数が少ないからね。ツバサさんも球速を見るに、本来は右利きだろうし」

歩夢「左手でも愛ちゃんと同等以上の速さだなんて……」



かすみ(同点……)

かすみ(外野は3人とも1年生。あのまま逃げ切れるならそれが理想の展開だったけど、これだってもちろん想定内っ)

かすみ(……どちらにしても、私たち1年生が当たっても戻れるようにならないと、これ以上チームは強くなれない!)

222: 2021/03/19(金) 01:24:47.19 ID:igBzjo23
かすみ「しず子! りな子!」

しずく「うん!」

璃奈「動きは前に話した通り。これはかすみちゃんが鍵の技だから、かすみちゃんのタイミングで」

かすみ「うんっ! 残り時間は1分。次のうちの攻撃で仕掛けるよ!」

璃奈しずく「「了解!」」バッ



歩夢「しずくちゃんが右サイド、璃奈ちゃんが左サイド。かすみちゃんはセンターに散ったね」

侑「うん。外野が3人の時の基本形だね」チラッ

侑「……!」


しずく「……」


侑「しずくちゃん?」

223: 2021/03/19(金) 01:35:53.62 ID:igBzjo23
歩夢「どうしたの?」

侑「あれ。しずくちゃん、線踏んでない?」

歩夢「ほんとだっ」

歩夢「教えなきゃ!」

侑「待って!」

歩夢「?」

侑「ここからじゃ聞こえないと思う。それに、今はみんな守備に集中してもらわなきゃ」

歩夢「……そっか」


侑(ボールの支配権は相手にあるから、今審判が気付いたところで何も起きない。でもこのままじゃ……)


しずく「……」チラッ


侑「!」


しずく「ふふっ」ニコッ


侑「……?」

侑(もしかして、わざと……?)

224: 2021/03/19(金) 01:40:43.92 ID:igBzjo23
かすみ(私たちの内野コートは、主審から見て左側。つまり、しず子の足元は主審の死角)

しずく(そしてその死角を補完するのが、私のそばにいる副審と線審だったよね?)

璃奈(1年生みんなで考えた作戦。私たちの初めての必〇技)ワクワク



彼方「んっ」バシィンッ

エマ「ナイスキャッチ!」

せつ菜「やりましたね!!!」


侑「マイボール!」

歩夢「しずくちゃんは?」

侑「! まだ線を踏んだまま!?」

歩夢「……でも、審判は何も言わないよ? 気付いてないのかな?」

侑「いや、副審としずくちゃん側の線審は、彼方さんがキャッチしてすぐにしずくちゃんを見始めた。きっと相手の攻撃の時から気付いてたんだ……」

歩夢「なら、どうして」

225: 2021/03/19(金) 02:02:42.74 ID:igBzjo23
かすみ「いくよ!」

かすみ「……」ダッ


彼方「かすみちゃんが手を上げたってことは、かすみちゃんにパスすれば良いんだよね?」

果林「ええ、多分……。右端に移動したし、パスを受ける気はありそうよ」

彼方「かすみちゃーん」ブンッ


かすみ「」パシッ


かすみ(外野が右端に移動すれば、当然相手の内野はサイドに移動するのを警戒して左サイドに寄る。カットのあんじゅ先輩とツバサ先輩も左サイド側に逃げた)

かすみ(この角度、何度もシミュレーションした通り!)クイッ


ダンッ



ツバサあんじゅ「「!!」」サッ


果林(Xアタックでカット狙い!? でも、避けられて)

果林(……!)

226: 2021/03/19(金) 02:12:49.60 ID:igBzjo23
璃奈「待ってた」パシッ


ツバサ「な!? ダブルパ」クルッ


璃奈「ちがう」ブンッ


バチッ


主審「1番アウト!」ピッ

主審「……」

主審「……タ、ターイム!」ピーッ



歩夢「外野同士のパスって……」

侑「ダブルパスっていう反則になるね。でも今の場合、かすみちゃんから璃奈ちゃんに渡ったのが、パスなのかアタックなのかで変わってくるよ」

侑「かすみちゃんはカットで飛び出していた2人を狙ってアタックを撃っただけで、2人が避けた結果、たまたま後ろにいた璃奈ちゃんにボールが渡ったとしたら……」

歩夢「アタックの定義って、相手選手が直立して両手を広げた範囲……だったよね?」

侑「うん。その定義に当てはめるなら、今のは間違いなくアタックになる。璃奈ちゃんのアタックは有効なはずだよっ」

227: 2021/03/19(金) 02:21:23.20 ID:igBzjo23
主審「副審、線審は……」

副審「すみません、虹ヶ咲9番のアウトプレーを警戒していたので」

線審A「同じです」

主審「7番を1番近くで見ていたあなたは?」

線審B「私の位置からだと、アタックにしか見えませんでしたね」

主審「そうですか……」

主審「……ありがとうございます」

審判団「「「」」」タッタッタッ



歩夢「あ、協議終わったみたいだね」

侑「どうなるかな?」

228: 2021/03/19(金) 02:21:58.57 ID:igBzjo23
主審「協議の結果……A-RISERS1番アウト! A-RISERS内野ボールから試合を再開します!」



侑「よっし!」

歩夢「璃奈ちゃーん! ナイスアタックだよー!」



愛「りなりー!」オテテスッ

璃奈「ありがとう」ピョンッ

――パチンッ



【内野数】
虹ヶ咲 6:4 A-RISERS


しずく(……良かったね、かすみさん、璃奈さん)ニコッ

229: 2021/03/19(金) 02:28:25.19 ID:igBzjo23
何か妙に筆が進むので、今日中に最後まで書こうと思います。

230: 2021/03/19(金) 02:33:57.72 ID:igBzjo23
――――
――

数日前 自主練習日休憩時間中


しずく「ルールブック?」

かすみ「うんっ!」

しずく「入部した時何度も読んだよ? ルールがわからないとどうしようもないでしょ?」

璃奈「私も、作戦を考えるためにかなり読み込んだと思ってる」

かすみ「ふーん……」

かすみ「じゃあ、このページは?」

璃奈しずく「「審判??」」


――
――――


しずく(まさか審判を利用するなんて。全く思い付かなかった)

しずく(それに、あんなルールの穴があったとはね。璃奈さんは前から気付いてたみたいだけど、なかなか実戦で使えるものでも無かったし……)

231: 2021/03/19(金) 02:42:59.74 ID:igBzjo23
かすみ(オーバーラインは、ボールを持っている選手にしか適用されないファール。そして、アウトプレーはボール支配権側の選手が"完全に"コートの外に出ないと成立しない)

かすみ(じゃあ、ボール支配権がある時、ボールから離れた選手がオーバーラインをしていたら……?)

かすみ(当然、何も起きない)


しずく(でも、少し動けばアウトプレーが成立するかもしれない。当然副審と近くにいる線審は私を注視することになる)

しずく(ダブルパスはアタックの定義と関係なく、雰囲気で取られがちなファール。微妙な判定になれば、審判団が集まって協議を行う)


かすみ(相手外野側にいる線審はもちろん、しず子を見ていた審判は協議で意見できない。主審もかすみんのアタックは相手内野の背中に隠れて見えてない)

かすみ(そうすると、りな子を一番近くで見ていた線審の判断に頼るしかなくなる。これを利用すれば、外野同士でボールを渡して相手を至近距離で狙えるっ!)

232: 2021/03/19(金) 02:48:41.77 ID:igBzjo23
しずく(璃奈さんの作戦立案能力と私の演技力、そしてかすみさんの観察眼が合わさった、私たちだけの必〇技……)


かすみ(名前をつけるなんて中学生みたいで恥ずかしいけど、やっぱりちょっと憧れるよね)ニヤッ

かすみ(パスをくれる内野と私たち3人の立ち位置から考えたこの必〇技の名前は――)


かすみ「――【ダイアモンド】」ボソッ





ピッピー


主審「ゲームセット!」


【虹ヶ咲Passions 5:4 A-RISERS】

233: 2021/03/19(金) 02:54:44.33 ID:igBzjo23
※※※


ツバサ「完敗だわ」

侑「そんな……結構ギリギリでしたよ?」

英玲奈「うちは一度もリード出来なかった。また学校に戻って練習だな」

あんじゅ「練習試合で良かった~」

ツバサ「……もちろん、今回に限れば、ね? 都大会では、必ず私たちが勝つ」

英玲奈「絶対決勝戦まで来なよ」

侑「はい!」

ツバサ「あなた……中須さん、だったかな?」

かすみ「は、はいっ!」

ツバサ「良い選手ね。また戦いましょ?」ニコッ

かすみ「……!」

かすみ「ひゃい!!!」

かすみ「は……!///」

ツバサ「ふふっ、さよなら」フリフリ

234: 2021/03/19(金) 03:04:40.78 ID:igBzjo23
かすみ(何でも出来るけど、何にも出来なかった私に)

かすみ(誰にも負けない自慢が一つ。それは――)クルッ


かすみ「かすみん、みなさんとチームが組めて、本当に良かったですぅ!」

果林「あらあら」フフッ

せつ菜「私もです!!!」ペカー

しずく「私も、かすみさんについてきて良かったよ」


かすみ(――こんなにも輝ける、仲間たちがいること!)


かすみ(今年のかすみんの秋は、スポーツの秋に決定ですっ!)



~無敵級*アタッカー編~、完

235: 2021/03/19(金) 03:09:42.13 ID:igBzjo23
※※※


次回予告


姫乃「先輩方に顔向けできないです!」ウルウル


遥「私たち、間違ってたんだね」


ツバサ「新旧王者対決ってとこね」


にこ「強く、なったじゃ……ない」


真姫「にこちゃあああぁぁぁん!!!」


璃奈「本物の私は、どれ?」


愛「……わかるよ」


穂乃果「絶対勝つんだ!」


侑「作戦は……作戦無し!」


次回、~開幕! 都大会(春)編~

236: 2021/03/19(金) 03:12:45.79 ID:igBzjo23
無敵級*アタッカー編完結です。次回は春の都大会編です。今回かなりゆっくり更新でしたが、保守&感想レス大変励みになりました。ありがとうございます。

237: 2021/03/19(金) 06:52:45.84 ID:QFdfS56w
おつでした。バレたら審判からの心証が悪くなりそうな必〇技だね。こういうプレーは嫌う審判の人もいそう

238: 2021/03/19(金) 07:06:32.07 ID:igBzjo23
>>237
いつもレスありがとうございます。
ダイアモンドは一応今作初のオリジナル技です。現実の審判の多くはオーバーラインとアウトプレーの穴を知らないので、恐らく上位大会でない限りは誤ってアウトプレーを取ります。嫌われるというよりは、まず気付かれないです。
自分は審判もやっていますが、正直ここまで考えてプレーされたらむしろ感心しますね。

239: 2021/03/19(金) 07:20:06.84 ID:QFdfS56w
なるほど。プロスポーツというわけじゃないし、その辺は良くも悪くも緩めなのかな。と思ったけど競技によってはプロでもわりといい加減で、ネットで叩かれてたりするか

240: 2021/03/19(金) 09:07:14.47 ID:ntGLIpZx
乙です
続きも楽しみ

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1614164335/

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