【スポ根SS】侑「公式ドッジボール？④」～開幕！都大会（夏）編～【ラブライブ！スクスタ】

昼間はお騒がせしました。

注意
・虹メンバーだけアニメ時空
・μ'sやAqours、その他グループも登場
・若干オリジナル設定あり

過去スレ
【スポ根SS】侑「公式ドッジボール？」　～虹ヶ咲学園避球同好会　結成編～
https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1612837424/
【スポ根SS】侑「公式ドッジボール？②」～VS東雲フェニックス編～
https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1613024163/
【スポ根SS】侑「公式ドッジボール？③」～しずくバックスタバー編～
https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1613297778/

「「「前回までのドッジボール！」」」


侑「顔、声、キャラ、ヒロインとして必要な全てを手に入れた女"上原歩夢"」

歩夢「ゆ、侑ちゃん？///」

侑「彼女の死に際に放った一言は、人々をコートへと駆り立てた」

歩夢「死に際……？」

侑「『私の夢？　一緒に見たけりゃ見せてやる……。探せ！　私の全てをそこに置いてきた！』」

歩夢「は？」

侑「少女たちはカラーコートを目指し、夢を追い続ける……！」

歩夢「ふふっ、また何かに影響されたんだね。ねぇ、覚え」

侑「世はまさに大避球時代！！」

歩夢「」



侑「ポジションとルールの確認だよ！」

歩夢「」

※※※

ポジション（簡易版。詳細は第1話を参照）

内野アタッカー
内野からアタックを撃つ。基本は右・左・センターの3人。

元外野
試合開始時の外野。最もボールに触れる機会が多いため、チームの司令塔的存在。

カット
公式ドッジボールでは守備時、基本的に一列に並び、常にボールと一定の距離を保つ。カットはこの時、ラインから離れて自由に動き回り、相手のパス回しを妨害する。
必然的に狙われる確率も上がるため、最も運動神経と動体視力が求められる。

ジャンパー
試合開始時のボールの支配権は、ジャンプボールによって決定される。ジャンパーはその名の通り、ジャンプボールを行うポジション。

レシーバー
守備時、外野とカット以外は全員がレシーバーとなる。パスカウントをコールしてアタッカーに伝えたり、パスの取りこぼしを防ぐなど、攻撃にも参加する。

大砲
ボール支配権移行後の一発アタック専門のポジション。球は速いが、コントロールに難がある選手が起用される。

※※※

ルール（簡易版）
オーバーライン
線踏んじゃだめよ。

ホールディング
相手コートに転がってるボール取っちゃだめよ。（空中はセーフ）

アウトプレー
内外野の移動はコートの外を通ろうね。移動中はボールに触っちゃだめよ。

ダブルタッチ
当たった後、外野に出るまでボールに触っちゃだめよ。

ダブルパス
内野同士、外野同士でパスしちゃだめよ。

フライングスロー
試合が一回止まった後はボールを頭の上に上げて、審判が笛吹くの待とうね。

ファイブパス
パスは4回までね。

キープフォーファイブ
5秒以上ボール持っちゃだめよ。

ヘッドアタック
頭部はセーフ。当てられた方のボールになるよ。

イリーガルスロー
バレーみたいに弾いたり、サッカーみたいに蹴ってパスやアタックしちゃだめよ。

イリーガルキャッチ
アタックを意図的に一度弾いて捕っちゃだめよ。

ワンタッチ・ノータッチ
外野はパスを逸した時、手の平で触れようね。触れられなかった時や手の平以外に当たって出たら相手ボールよ。

ジャンパーアタック・ジャンパーキャッチ
ジャンパーは1球目プレーに参加できないよ。

ボールデッド
コート外にボールが出たら、最後に触れたチームじゃないほうに支配権が移るよ。

タッチザボディ
相手選手に触っちゃだめよ。

～開幕！都大会（夏）～

※※※

【第30回全国女子高校生ドッジボール選手権大会　東京都予選】



璃奈「フェイント、目線でばればれ」ｻｯ


しずく「右サイドから来てるよ！！（声変）」

かすみ「にっしっし、左ですよぉ～！」ﾌﾞﾝｯ


エマ「よいっしょ！」ﾌﾞｩﾝｯ

ﾄﾞｺﾞｯ


果林「ふふっ、そんなところに逃げても無駄よ？」ｸｲｯ

ｷﾞｭﾝｯ

　
彼方「どこからでもかかってきなさ～い」ﾊﾞｼｯ


愛「そこだー！」ﾊﾟｼｯ


歩夢「せつ菜ちゃんっ！」ﾌﾞﾝｯ

せつ菜「はい！」ﾀﾞｯ

ﾋﾟｮﾝ

ﾄﾝｯ

せつ菜「うおおおぉぉぉぉおお！！！」ﾌﾞﾝｯ

～

姫乃「内野側のカット、一人外野側に回ってください！　サイドは深追いしなくて大丈夫です！」

～

クリスティーナ「前のも良かったですが、この形もまたアリ、ですね」

遥「対戦相手によって使い分けましょう。もちろん、虹ヶ咲戦は……！」

～

にこ「ま、こんなもんよっ」ﾌｯ

真姫「にこちゃんベンチだったでしょ……」

穂乃果「予選全勝だよ！」

ことり「やったね！」

海未「油断は禁物です」

花陽「今の試合はジャンプボール後の陣形に問題があったよねあれじゃ初手でアタックが来たときに」

絵里「花陽、怖いから急に早口になるのはやめなさい」

凛「凛はこっちのかよちんも好きにゃー！」

希「賑やかやね～」ﾆｺﾆｺ

※※※


侑（いよいよ迎えた夏の都大会。私たち虹ヶ咲Passionsは、予選リーグを全勝で通過し、決勝トーナメント進出を決めた）

侑（トーナメントも順調に勝ち上がり、準々決勝ではY.Gタイタンズにリベンジを果たした）

侑（そして迎えた準決勝――！）


果林「いよいよね……」

せつ菜「当然、ここまで勝ち上がれば相手は……！」

クリスティーナ「お待ちしておりました」ﾆｺｯ

遥「大江戸杯は残念でしたね……。虹ヶ咲と戦えるのを楽しみにしてたんですが……」

侑「ううん。遅くなったけど、大江戸杯優勝おめでとう！」

遥「ありがとうございます！」

果林「結局、大江戸杯でも大勢はほとんど変わらなかったわね」

しずく「はい。ODAIBAカップと同じく、準優勝は藤黄ヴィクトリーズ、3位は音ノ木坂ミューズでしたね」

かすみ「一応、準決勝の組み合わせは変わってましたけどね」

遥「音ノ木坂ミューズ……本当に紙一重の戦いでした。でも、あの試合の反省を活かして、東雲はまた一段強くなれましたよ！」

歩夢「そうみたいだね」

璃奈「試合、楽しみにしてる」

クリスティーナ「こちらこそ」ﾆｺｯ

『これより、第30回全国女子高校生ドッジボール選手権大会東京都予選、準決勝を開始します』

『選手の皆さんは、アリーナに入場してください』


せつ菜「――行きましょう！」

愛「よーし！」

彼方「お姉ちゃんの意地を見せるぜー」

エマ「絶対勝つよ～」

侑「行こう！　カラーコート！」

「「「おー！」」」

※※※


試合開始

準決勝
【オーダー】
虹ヶ咲Passions
1　優木せつ菜　　　　センターアタッカー
2　上原歩夢　　　　　元外野
3　中須かすみ　　　　レシーバー
4　エマ・ヴェルデ　　大砲
5　朝香果林　　　　　右アタッカー
6　近江彼方　　　　　レシーバー
7　天王寺璃奈　　　　レシーバー
8　宮下愛　　　　　　左アタッカー・カット・ジャンパー
ベンチ　桜坂しずく

東雲フェニックス
1　クリスティーナ　センターアタッカー
2　支倉かさね　　　右アタッカー・カット
3　吉川瑞希　　　　左アタッカー・ジャンパー
4　神谷理華　　　　レシーバー
5　結城沙菜　　　　レシーバー
6　御堂優里　　　　レシーバー
7　宮下ココ　　　　レシーバー
8　近江遥　　　　　元外野

侑「予選から見てたけど、これまでの東雲とはかなりスタイルを変えてきたね」

しずく「はい。以前はいなかったカットを設置していますし、元外野の人数が一人になっています」

侑「内野アタッカーも3人。うちと同じ、最もスタンダードなフォーメーションだね」

侑「そして何より……」ﾁﾗｯ


遥「……」ﾂﾏｻｷﾄﾝﾄﾝ


しずく「元外野は遥さんですか」

侑「うん。元々かなり外野の適性は高かったんだけど、ここに来て実際にやるなんて」

しずく「王者東雲にここまで影響を与えるとは……。音ノ木坂って一体……」

侑「東京都はチーム数が多いから、音ノ木坂や藤黄がいるBパートは別会場だもんね」

しずく「3位決定戦と決勝戦でこちらの会場に合流するようですから、すぐに見れますよ」

侑「うん。ただ――」


侑「行くのは決勝戦だけどね！」



主審「ジャンプボール！」



東雲「「「飛べ飛べ東雲！　飛べ飛べ東雲！」」」


虹ヶ咲「「「溢れ出す　この気持ち　胸の奥　もう止まらない　虹色Passions！　勇気に染まるColors！～♪」」」

　
ﾋﾟｮﾝ


愛「よしっ！」


果林「行くわよ！」ﾊﾟｼｯ

「「「おー！！」」」


果林「歩夢！」ﾌﾞﾝｯ


歩夢「はいっ」ﾊﾟｼｯ


歩夢（東雲は初回攻撃で、うちがせつ菜ちゃんのジャンピングアタックを使ってくると思ってるはず！）

歩夢（その証拠に、ラインがあらかじめ外野側に寄ってるもんっ）

歩夢（私だって……！）

歩夢「えいっ」ﾌﾞﾝｯ


沙菜「なっ！？」


ﾊﾞﾁﾝｯ


主審「5番アウト！」ﾋﾟｯ


侑「ナイスアタック歩夢ー！」ﾋﾟｮﾝﾋﾟｮﾝ

しずく「歩夢さんが、あんな積極的にアタックを！？」

侑「しずくちゃん、歩夢って本当はすっごく積極的な子なんだよ」

しずく「？」

侑「毎日うちで夜中まで東雲や藤黄はもちろん、Y.Gやその他動画がある限り、都内全部のチームを研究して、アウト数が多い選手を頭に叩き込んでたんだ」

しずく「すごいです！」

侑「試合の勝敗は、半分くらいは元外野の上手さで決まる。これまでの敗戦で、歩夢も相当責任を感じてたんだろうね」

侑「コツコツやることに関して、私の幼馴染に敵う子はいないよ！」

しずく「歩夢さん……！」

　
愛「外野減らしちゃったんだ？　ま、愛さんはカットがしやすくて助かるからいいけど」

遥「話してないで、前を見た方が良いですよ？」


ﾋﾞｭﾝｯ


遥「」ﾊﾟｼｯ


愛「！」ﾊﾞｯ

愛「あっぶな」


遥「……」ﾀﾞｯ


愛「うお！？」ﾀﾞｯ


遥「かさねさん！」ﾌﾞﾝｯ


しずく「愛さんを追いかけましたね」

侑「うん、でも深追いはしてこないみたい。牽制程度に数歩追いかけたら、すぐに内野にボールを戻した」


侑（にしても、どうやったら走りながらあんな正確なパスを……！）


遥「――【ショットガンC】」ｻｯ

かさね「……了解！」ﾎﾞｿｯ


遥「」ﾀﾞｯ


歩夢「愛ちゃん！　左サイド！」


愛「……！」ｸﾙｯ


かさね「それ！」ﾌﾞﾝｯ


遥「遅いですよ！」ﾊﾟｼｯ


愛「嘘！？　いつの間に」


ﾊﾞﾝｯ


主審「8番アウト！　ボールデッド！　東雲内野ボール！」

しずく「えっと……」

しずく「何が起きたんですか？」

侑「愛ちゃんを牽制して左サイド側に逃した後、走りながら右アタッカーにパス。そのまま左サイドへ回って、再びパスを受け取ったみたいだね」

しずく「つ、つまり……？」

侑「一人でサイド攻撃を完結させた。とんでもない身体能力と判断力だよ……」

しずく「そんな……」ｺﾞｸﾘｯ

侑「アタッカーを3人にしたのも、最短距離でサイドにパスするためだったんだ！」

遥（虹ヶ咲の守備の要は、二人いる。レシーバーのお姉ちゃんと、カットの愛さん）

遥（特に愛さんは、いるだけでこちらの攻撃を崩す強力な抑止力。試合開始直後に外野に出せたのは大きい……！）

遥（さて、次は……）


遥「――【ショットガンA】」ｽｯ


侑「遥ちゃんは左サイドに残ったまま、5番が逆サイドに上がったね」

しずく「この動きは！」


瑞希「はじめっから飛ばすね！」ﾌﾞﾝｯ

遥「」ﾊﾟｼｯ　ﾌﾞﾝｯ

クリスティーナ「沙菜さん！」ﾊﾟｼｯ　ﾌﾞﾝｯ

沙菜「えい！」ﾊﾟｼｯ　ﾌﾞﾝｯ


果林「っ！」ﾊﾞﾁﾝｯ


主審「5番アウト！」


虹ヶ咲外野
歩夢・愛・果林

東雲外野
遥

侑「あちゃー」

しずく「相手の5番は内野に戻りましたね。これで5:7です」

侑「当然外野が2人以上になると、練習試合で使ってたショットガンA・B、マシンガンも使ってくるよね」

しずく「アタックを決めると相手が強化されるなんて、デタラメですよ」

侑「そうだね……」

侑「今回、サインは完全に遥ちゃんが出してるみたい。でも、外野から出されたサインをこちらが知る方法は無い……」


歩夢（果林さんも当たっちゃった……。ここはせつ菜ちゃんのジャンピングアタックで流れを戻さないと）

歩夢（……）

歩夢「せつ菜ちゃん！」ﾌﾞﾝｯ


せつ菜「はいっ！」ﾀﾞｯ


ﾋﾟｮﾝ


せつ菜「！？」


ﾄﾝｯ


ﾌﾞﾝｯ



ココ「うっ！」ﾊﾞｼｨﾝｯ

かさね「ナイスキャッチ！」

侑「なっ！？」

しずく「ジャンピングアタックがキャッチされた！？」

侑「確かにせつ菜ちゃんのジャンピングアタックも百発百中って訳じゃない。予選でも何回か捕られることはあった……」

しずく「それってほとんど、コースが甘いか弾いて仲間がカバーした場合ですよね？」

侑「うん。でも今のは、足元にいったアタックを綺麗にキャッチされた」

しずく「……」

遥（守備力の欠如は、東雲最大の課題だった）

遥（これまでは、当たってもそれ以上に当て返せば良いだけだと思ってた。でも）

遥（大江戸杯準決勝、音ノ木坂との試合。こちらの攻撃が通用しにくい時、一点差で勝敗が決まる時。守備力がいかに重要か理解した）

遥（今日まで私たちは、ひたすらキャッチ力の向上を目指して基礎連に打ち込んできたんだ……！）


せつ菜（何だろう、今の……）

せつ菜（歩夢さんのパスの回転数が、いつもよりかなり多い……？）

せつ菜（それに、弾道も僅かに高かったような……）

せつ菜（……いや！　人のせいにしてはいけないっ！　キャッチされたのは、私のミス！）ﾎｯﾍﾟﾊﾟﾝﾊﾟﾝｯ

～


ﾋﾟｯﾋﾟｰ


【虹ヶ咲Passions　3:6　東雲フェニックス】


侑「まだ1セット取られただけ！　ここから2連勝だよ！」

歩夢「う、うんっ」

かすみ「……はい」

果林「そうね……」

侑「？　みんな元気がないよ！　まだ負けたわけじゃ」

エマ「そうだよ！　がんばろう？」

璃奈「あきらめるの、よくない」

愛「元気出してかなきゃ！」

せつ菜「さあ、2セット目が始まりますよ！」


侑「みんな……」

～


準決勝2セット目
オーダー変更なし


ﾊﾞｼｯ

理華「やったよ！」


ﾄﾞﾝｯ

優里「捕れる捕れる！」


せつ菜「……くっ！」ﾊｧﾊｧ


しずく「これで4連続……」

侑「せつ菜ちゃんのジャンピングアタック、準決勝に入ってから一回も決まってないね……」

しずく「一応エマさんの一発アタックと果林さんのXアタックが決まって、現在4:5と数字上は健闘しているように見えますが……」

侑「エースは完封、カットの愛ちゃんは2セット目も遥ちゃんに当てられちゃった。かなり劣勢だよ」

しずく「はい……」


虹ヶ咲外野
歩夢・愛・璃奈・かすみ

東雲外野
遥・沙菜・瑞希


歩夢「……」ﾎﾞｰｯ

かすみ「歩夢先輩！」

歩夢「！」ﾋﾞｸｯ

歩夢「ど、どうしたのかすみちゃん？」

かすみ「どうしたの？　じゃないですっ！　これだけ外野がいるんです、元外野の歩夢先輩が指示を出さないとっ！」

歩夢「うん……」

かすみ「？」

璃奈（客観的に見てもわかる。今日、明らかに歩夢さんのパスの調子が悪い）

璃奈（でもそれは、きっと歩夢さん自身が強くなっているから。日々の練習で握力や筋力が向上して、自然とパスの回転数・球速が上がってる）

璃奈（……でも、今は一人でも外野から返したい場面。ジャンピングアタックに拘ってる場合じゃない）


璃奈「歩夢さん、外野からの攻撃プランを」

歩夢「そう、だね……」


歩夢（アタックを撃てるのは私、愛ちゃん、かすみちゃん。外野は4人いるから、相手のパスカットは気にしなくて良い）

歩夢（ここは愛ちゃんを内野に戻して、少しでも相手の攻撃力を削ぐべきだよね……）

歩夢「私かかすみちゃんがファーストパスをサイドでもらって、相手の陣形を崩してから中央の愛ちゃんが決めるよ」

歩夢「璃奈ちゃんはパスがもらえなくても良いから、外野を走り回ってカットを陽動して」

璃奈「わかった」

かすみ「了解ですっ」

愛「おっけー！」

ﾀﾞｯ


彼方「」ﾊﾞｼｯ

せつ菜「ナイスキャッチです！」

果林「両サイドに歩夢とかすみちゃん。中央に愛がいるわね」

エマ「一度サイドに振ってから愛ちゃんに決めさせる作戦かな～？」

彼方「よーし」ﾌﾞﾝｯ

かすみ「果林先輩！」ﾊﾟｼｯ

ﾌﾞﾝｯ

果林「愛！」ﾊﾟｼｯ

ﾌﾞﾝｯ

愛「いくよ！」ﾊﾟｼｯ

愛「そこだっ！」ﾌﾞﾝｯ


ﾊﾞﾁﾝｯ


主審「1番アウト！　ボールデッド！　虹ヶ咲内野ボール！」


「「「やったあああ！！！」」」


虹ヶ咲外野
歩夢・璃奈・かすみ

東雲外野
遥・沙菜・瑞希・クリスティーナ

侑「逆転！　逆転だよしずくちゃん！」ﾀﾞｷｯ

しずく「やりましたね！　これでフルセットに！」


歩夢（残り20秒。よし、最後は……！）

歩夢（エースのせつ菜ちゃんでトドメっ！）

歩夢（決まれば良いイメージのまま3セット目に入れるはず！）


歩夢「せつ菜ちゃん！」ﾌﾞﾝｯ


せつ菜「うおおおぉぉぉぉおお！！！」ﾀﾞｯ



ﾋﾟｮﾝ



せつ菜「――！」


歩夢「あっ……！」




―――ｸﾞｷｯ




侑「せつ菜ちゃあああん！！！」


～


ﾋﾟｯﾋﾟｰ


【虹ヶ咲Passions　4:5　東雲フェニックス】

※※※

救護室前



ｶﾞﾁｬｯ


侑「！　せつ菜ちゃん！」ﾀﾞｯ

せつ菜「侑さん……」

せつ菜「すみません。私のせいで……」

侑「ううん。誰も悪くないよ。私たちは私たちの全力を出して、東雲がそれより強かっただけ」



侑「都4位、胸張って帰ろう？」ﾆｺｯ


せつ菜「4位……ということは……」

侑「うん。3位決定の藤黄戦は負けちゃった……」

せつ菜「そう、ですか……」

せつ菜「う、ううっ……！」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

侑「せつ菜ちゃん……！」ｷﾞｭｳ

侑「大丈夫、大丈夫だから……」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ


せつ菜「ごめんなさい……ごめんなさい……」


愛「せっつー……」

かすみ「せつ菜先輩……」

歩夢（……）

歩夢（私の……）

歩夢（私の、せいだ……）

歩夢（ラスト20秒で一点リード。別にすぐアタックを要求する必要はなかった）

歩夢（焦って投げたパスは、少しだけ左に逸れて――）

歩夢（それに合わせようとしてせつ菜ちゃんは、足を挫いた）

歩夢（ボールはそのまま相手コートに転がっていって、外野からラストアタックを決められて逆転負け）

歩夢（私の判断ミスでせつ菜ちゃんは怪我をして、チームは負けたんだ……！）ｷﾞﾘｯ

歩夢（みんなようやく東雲の攻撃に対応出来てきてたのに！　こっちの攻撃だって、効かないわけじゃなかったのに！）

歩夢（カラーコートは、すぐそこまで来てたのに！）

璃奈「歩夢さん」

歩夢「……璃奈ちゃん？」

璃奈「歩夢さんは、悪くない」

歩夢「でも！」

璃奈「最後のパスが悪かったとしても、そもそも私やかすみちゃんが当たってなかったら、逆転はされてない」

璃奈「内野側で早々に攻撃の方針を変えて、エマさんや果林さん主体で攻めれば、もっとアタックを決められたかもしれない」

璃奈「実は東雲にしずくちゃんの技が有効で、私じゃなくてしずくちゃんを出してれば、楽に勝てたかもしれない」

璃奈「……もっと練習を一生懸命やっていれば、勝てたかもしれない」ｸﾞｯ

璃奈「辿っていけば、みんなに責任があるんだよ。それが団体スポーツ。だから、自分だけを責めないで」

歩夢「璃奈ちゃん……」

璃奈「次は、絶対に勝とう」

歩夢「うん……」

愛「歩夢！」

愛「歩夢が指示を出してくれなかったら、愛さんは内野に戻って来れなかったと思うよ！」

かすみ「悔しいですけどぉ、やっぱり元外野は歩夢先輩しかいませんっ」

歩夢「愛ちゃん……かすみちゃん……」

果林「さ、せつ菜も戻ってきたことだし、決勝戦を観に行きましょ？」

エマ「春の都大会で倒さなきゃいけない相手を見ておかなきゃね～！」

彼方「遥ちゃんを応援しなくっちゃ」

果林「それに……」



果林「――この悔しさを、絶対に忘れないために」ｸﾞｯ



「「「はい！」」」

※※※


侑「間に合ったね」

しずく「セットカウント1:1のフルセット。東雲はODAIBAカップ予選からの大会連勝記録が、27で止まったみたいですね」

かすみ「うげ、27連勝って……」

果林「すごいチームを相手にしてたのね」

エマ「今日、改めてわかったよね～」

璃奈「東雲に藤黄。一度ずつ勝って何か誤解していたけど」

愛「王者の本気を見た！　って感じだったねー」

侑「うん。それで、東雲の連勝を止めたのが……」

～


穂乃果「よーしっ！　あと一回勝てば全国大会だよ！」

凛「ついにここまできたにゃー！」

ことり「嬉しいね！」

海未「こら、まだ勝負はこれからなんですよ」

絵里「すぅー、はぁー、すぅー、はぁー……」

真姫「なにしてんのよ」

希「ふふっ、エリチは緊張してるんよ。そっとしといてあげてな？」

にこ「何よ、緊張してるんだったら私とベンチ替わる？」

花陽「それは戦力的にあり得ないよ」

にこ「ちょっと花陽！？」

穂乃果「さ、円陣組もっ！」


穂乃果「μ's！」

音ノ木坂「「「ドッジボール……スタート！！！」」」

～


クリスティーナ「藤黄が敗れたのは予想外でしたが……」

クリスティーナ「私たちのやることは何一つ変わりません」

クリスティーナ「連勝記録など意識したことは無かったですが、これからも一つ一つ、東雲のドッジボールで勝つだけです」

遥「行きましょう！　カラーコート！」


東雲「「「ゴー！　東雲ゴー！」」」

※※※


試合開始


決勝戦
【オーダー】
東雲フェニックス
1　クリスティーナ　センターアタッカー
2　支倉かさね　　　右アタッカー・カット
3　吉川瑞希　　　　左アタッカー・ジャンパー
4　神谷理華　　　　レシーバー
5　結城沙菜　　　　レシーバー
6　御堂優里　　　　レシーバー
7　宮下ココ　　　　レシーバー
8　近江遥　　　　　元外野

音ノ木坂ミューズ
1　高坂穂乃果　　　センターアタッカー・カット①
2　南ことり　　　　左アタッカー
3　園田海未　　　　元外野
4　西木野真姫　　　レシーバー　
5　星空凛　　　　　カット②
6　小泉花陽　　　　レシーバー
8　東條希　　　　　大砲
9　絢瀬絵里　　　　ジャンパー・右アタッカー
ベンチ　矢澤にこ

侑「音ノ木坂ミューズ……初めて見るけど、フォーメーションは正統派だね」

しずく「うちと同じく今年出来たチームのようですが、初大会のODAIBAカップでいきなり3位入賞、先日の大江戸杯も同じく3位入賞ですね」

侑「今回は藤黄にリベンジして決勝進出。一体どうやってあの守備を崩したんだろう」

果林「楽しみね」

　
主審「ジャンプボール！」



東雲「「「飛べ飛べ東雲！　飛べ飛べ東雲！」」」

音ノ木坂「「「怖がる癖は　捨てちゃえ　とびきりの笑顔で　跳んで跳んで　高く　僕らは今の中で～♪」」」


璃奈「コール、すごく綺麗」

彼方「まるでアイドルのライブだねー」

かすみ「かすみんがやりたかった、可愛いドッジボールですね」

果林「ここまではうちと良い勝負ね」ﾌｯ

エマ「何で競ってるの～」ﾆｶﾞﾜﾗｲ



瑞希「よろしく」ｽｯ

絵里「楽しみましょう」ﾆｷﾞｯ


主審「」ﾋﾟｯ


侑「先攻は……東雲！」

遥（音ノ木坂のカットは二人。主に外野側につく穂乃果さんと、コート内全てを縦横無尽に走り回る凛さん）

遥（二人とも積極的に捕りにくるわけじゃないけど、パスが来る直前に避けて、絶妙にこちらの攻撃リズムを崩しに来る）

遥（大江戸杯の時、このカットに苦しめられて開発したショットガンCだけど、前のセットで使ったら、凛さんに全て避けられてしまった）

遥（きっと、凛さんも愛さんと同じ後出し型のカット――！　それなら）


遥「……」ｽｯ


遥（山投げパスで確実に躱す！）


かさね「ほいっ」ﾋｭﾝ


凛「にゃ！　上に投げるなんてズルいにゃー！」ﾋﾟｮﾝﾋﾟｮﾝ

絵里「凛！　深追いしちゃだめよ！」

凛「ちぇー」ｽｯ


遥（凛さんを直前まで引きつけておけば、内野側にカットはいない！　今回は内野を中心に）


遥「かさねさん！」ﾌﾞﾝｯ


希「ほいっ！」ﾊﾟｼｯ


遥「！？」

侑「レシーバーの希さんが、突然立ち上がってハンドキャッチ！？」

果林「なんて反射神経……！」

璃奈「あれは、飛んでくるのが分かってたんだと思う」

果林「どういうこと？」

璃奈「音ノ木坂6番のカットが逃げた方向は、遥ちゃんの利き手側。人間は身体の構造上、利き腕の外側に投げると球威が落ちる」

璃奈「カットをそのまま狙う選択肢が消えれば、投げやすい右かセンターアタッカーにパスをする可能性が高い」

璃奈「それに、東雲は高速パスを意識して、弾道が低くなりがち。アタッカーの位置さえ把握していれば、レシーバーが突発的にカットをすることも可能」

歩夢「なるほど……」

しずく「流石璃奈さんはよく見てますよね」

侑「うんうん、相手の攻撃を読んで避けるのが上手だよね！　生存率もかなり高いし！」

璃奈「私は昔から、他人の視線を意識して生きてきたから」

璃奈「まさかスポーツにそれが活かされるとは思わなかった」

愛「相手の視線の動きで予測してたんだね！」

璃奈「うん。でも、希さんがやってるのは、私のとは違うよ」

愛「？」

エマ「どういうこと？」

ことり「希ちゃん！　ナイスカットだよ！」

花陽「よく反応出来たね」

希「カードに出てたんよ！」

真姫「またそれ？」


璃奈「今は観客席で冷静に見てるから、こうして解説が出来るけど、試合の中じゃ、いくら視線が読めた所であんな動きは無理」

璃奈「希さんがやってるのは、予測じゃない」

璃奈「もはや、予知」

かすみ「予知……！」ｿﾞｯ

にこ（希は勝つために、事前の準備を絶対に怠らない）

にこ（対戦相手のフォーメーション、アタッカー陣の利き腕、シチュエーションごとの癖……。あらゆる要素を全て頭に入れて、シミュレーションを繰り返してるわ）

にこ（あの子は海未や東雲の遥って子みたいな天才じゃない。才能があるとすれば……）


希「ほな、いくよ～」ﾆｺﾆｺ


にこ（チームに安心感を与える、あの堂々とした態度ね！）


希「それっ」ﾌﾞｩﾝｯ


ｷﾞｭｵﾝ


ﾄﾞｶﾞｯ


主審「2番アウト！　ボールデッド！　音ノ木坂内野ボール！」


にこ（うーん、やっぱり才能の塊だったわ、天才だわ）

東雲外野
遥・かさね



侑「希さん、大砲だったんだね……」

果林「今の、エマより速いんじゃない……？」

エマ「負けないように、沢山食べて頑張らなきゃ！」ﾌﾝｽｯ


遥（やっぱり、数週間守備練習に力を入れただけじゃ、あの人のアタックは止められないか……）

遥（それに、音ノ木坂のメイン火力はこれじゃない……）


ことり「いっくよー！」ﾌﾞﾝｯ

海未「穂乃果！」ﾊﾟｼｯ　ﾌﾞﾝｯ


穂乃果「よーし！」ﾀﾞｯ


――――ﾋﾟｮﾝ


せつ菜「あれは……！」

　
　
ﾀﾞﾝｯ


穂乃果「いっけえええ！！！」ﾌﾞﾝｯ


ｷﾞｭｲﾝｯ


クリスティーナ「きゃっ！」ﾊﾞﾁﾝｯ


主審「1番アウト！」ﾋﾟｯ



東雲外野
遥・かさね・クリスティーナ

侑「ジャンピングアタック！？」

果林「高いわね」

侑「上位まで勝ち上がれば、そのうち出てくるかとは思ってたけど……」

しずく「せつ菜さん以外のジャンピングアタッカー。こんなところにいたなんて……！」

せつ菜「……」ｷﾞﾘｯ

歩夢（外野の子……なんて正確で綺麗なパス……）

歩夢（そしてなによりも……）


穂乃果「ナイスパスだよ海未ちゃーん！　大好きー！」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

海未「私も～……はっ！　早く守備に戻りなさいっ！」

穂乃果「はーい……」ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

ことり「ﾎﾉｶﾁｬﾝ……」

　
歩夢（センターアタッカーとの信頼関係……）

歩夢（私とせつ菜ちゃんには無いものだ……）ｸﾞｯ


侑「……強いね」

果林「クリスティーナ、かさね、遥ちゃん。主力3人があっという間に全員外野に出されちゃったわね」

侑「うん。でも、東雲の真骨頂は複数人が外野に出た時だよ！」


遥「――【ショットガンA】」ｽｯ


瑞希「」ﾌﾞﾝｯ

遥「」ﾊﾟｼｯ　ﾌﾞﾝｯ

クリスティーナ「」ﾊﾟｼｯ　ﾌﾞﾝｯ

ｷﾞｭﾝｯ


かすみ「出ましたよ！　東雲の高速両サイド攻撃！」


ﾊﾞﾝｯ


絵里「あいたたたた……」


主審「4番アウト！」ﾋﾟｯ



東雲外野
遥・クリスティーナ

音ノ木坂外野
海未・絵里

しずく「相変わらず速いですね……」

璃奈「あれを止めなきゃ、東雲攻略は難しい」

エマ「でも、音ノ木坂も1セット取ったんだよね？　どうやったんだろう？」


花陽「クリスティーナさんは外野から帰還後レシーバーの中央に入る。足元にアタックがくると右膝を片方だけついてキャッチしようとする癖があるから」ｵﾀｸﾄｸﾕｳﾉﾊﾔｸﾁ

ことり「こうすれば良いんだねっ」ﾌﾞﾝｯ


ﾄﾞﾝｯ


主審「1番アウト！　ボールデッド！　音ノ木坂内野ボール！」ﾋﾟｯ



東雲外野
遥・かさね・クリスティーナ

侑「クリスティーナさんをすぐに当て返した！」

しずく「音ノ木坂は大砲以外でも、積極的に一発アタックを撃ってくるみたいですね」


ことり「えへへ、ありがとう花陽ちゃん！」

花陽「わ、わたしは作戦を立ててるだけで……！　それを実行出来るだけの実力がみんなにあるから！」ｱﾀﾌﾀ

ことり「そんなことないよ！」ﾆｺｯ

花陽「あわわわわ」

～


ﾋﾟｮﾝ

ﾄﾝｯ

穂乃果「いっけー！」ﾌﾞﾝｯ

ｷﾞｭｲﾝｯ

瑞希「あっ！」ﾊﾞﾁｯ


主審「3番アウト！」



東雲外野
遥・かさね・クリスティーナ・瑞希



愛「またジャンピングアタック！」

璃奈「これで6:4。音ノ木坂が少し離したね」

侑「でも、外野は全員アタッカークラス。すぐに追いつくんじゃないかな？」

彼方「遥ちゃ～ん」

花陽「3セット目……。使うならここっ」

真姫「ああ、対東雲用に練習したやつね」

音ノ木坂「「「」」」ｻﾞｯ


遥（！　ニ列フォーメーション！？）

遥（四人のレシーバーのうち、二人が身体一個分後ろに下がった。カットも二人いるし、これじゃあショットガンもマシンガンも通用しない！）


ココ「遥！」ﾌﾞﾝｯ


遥「」ﾊﾟｼｯ


遥（残り1分……。どうしよう、このままじゃ……！）


クリスティーナ「遥さん！」

遥「は、はいっ！」ｸﾙｯ


クリスティーナ「――あなたがエースです！」


遥「……！」


遥「はいっ！」

遥（そうだ！　チームがピンチの時、私が決めなくて誰が決めるの！）


花陽「あっ……！」ﾖﾀｯ


遥「そこっ！」ﾌﾞﾝｯ


花陽「――やっぱり、遥ちゃんなら見逃さないよね」ﾊﾞﾝｯ


遥（弾いた！）


真姫「花陽の言った通りね」

希「うちもわかってたんよ？」

真姫・希「「」」ｻｯ


ﾊﾟｼﾝｯ


遥（……！　カバー、された！）ｶﾞｸｯ

果林「このための二列フォーメーションだったのね」

しずく「狙いを定めた遥さんのアタックを捕るのは至難の業です。……一人なら」

侑「後列のレシーバーがアタックを誘導して、両隣の二人がカバーに入る……。ラインの横幅を狭くすることで、サイド攻撃も封じた……」

侑「これが、音ノ木坂の東雲攻略法……！」

璃奈「すごい」


にこ（流石は我がμ'sの参謀役！）

にこ（花陽は生粋のドッジボールオタク。都内どころか、全国の名選手を調べ尽くしているわ）

にこ（ファンを自称しつつ、その情報を勝つために利用する……敵に回ったオタクほど厄介なものはないわね！）ﾌｯ

凛「凛はこっちのかよちんも好きにゃー！」


にこ「うるさいわね！　何で私の心の解説に反応できるのよ！」ｶﾞﾀｯ

にこ「ベンチに話しかけてないで、試合に集中しなさいっ！」


凛「はーい……」

侑「残り40秒……東雲はカットも当たって出ちゃったし、パスカウントをリセットし続ければ、音ノ木坂の勝ちだね」

しずく「まさか、東雲がこんなに苦戦するだなんて……」

果林「複雑だわ」

彼方「遥ちゃあん」ｼｮﾝﾎﾞﾘ

真姫「穂乃果、ここは落ち着いて」

穂乃果「うんっ！　落ち着いて、最後までガンガン攻めるよ！」

真姫「はぁ？　イミワカンナイ」

穂乃果「決勝戦だよ！　最後まで全力で戦わなきゃ！　それに」

真姫「？」

穂乃果「もし私が捕られちゃっても、真姫ちゃんや花陽ちゃん、みんながまたキャッチしてくれるもんねっ！」ﾆｺｯ

真姫「……！」

真姫「はぁーっ」ｶﾐﾉｹｲｼﾞｲｼﾞ

真姫「好きにしなさい」ﾌﾝｯ

穂乃果「うんっ！」

花陽「穂乃果ちゃん……！」

ことり「そういう穂乃果ちゃんだから、みんなついてきたんだよねっ」

希「うちらの大将は立派やねー」

凛「いっくにゃー！」



～



ﾋﾟｯﾋﾟｰ


【東雲フェニックス　3:5　音ノ木坂ミューズ】

※※※


表彰式


「優勝、音ノ木坂ミューズ」


ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ


穂乃果「ありがとうございますっ！」

ｸﾙｯ

穂乃果「今日一日、良い試合ありがとうございました！　みんなのためにも、全国大会頑張ってきますっ！」

穂乃果「気を付け！　例！」

音ノ木坂「「「ありがとうございました！！！」」」


ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

「えー、高坂さんの言うとおり、優勝した音ノ木坂ミューズには、8月末に行われる全国大会への出場権が与えられます」

「東京都54チームの代表として、全国制覇を目指して頑張ってください」


ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ


歩夢「……」

ﾎﾟﾝｯ

歩夢「！」ｸﾙｯ


果林「半年後、あそこに立つのは私たちよ」

歩夢「……はい！」

※※※


大会終了後


侑「希さーん！」ﾀｯﾀｯﾀｯ


希「あら？　確か虹ヶ咲の」

侑「マネージャーの、高咲侑です！」

希「ああ、侑ちゃん！　久しぶりやん？」

侑「優勝おめでとうございます！」

希「ありがとな～。虹ヶ咲も惜しかったね～」

侑「いえ……。正直、まだまだ上位3チームとの壁は厚いなって思いました……」

希「うーん、うちはちょっとの差やと思うけどなあ」

希「あ、そうそう！　虹ヶ咲のみんなにお願いがあるんよ」

侑「？」

※※※


果林「……」ｽﾏﾎﾀﾌﾟﾀﾌﾟ


「虹ヶ咲Passionsの、朝香果林さんですね？」


果林「……そうだけど？」ﾁﾗｯ

果林「……！」


果林「勝者が敗者に何の用かしら？」


果林「藤黄ヴィクトリーズ、綾小路姫乃さん？」


姫乃「姫乃とお呼びください」ﾍﾟｺﾘ

果林「……まあ、いいわ。姫乃、何の用？」

姫乃「ひょ！///　……コホン」

果林「？」


姫乃「失礼しました。特に何か用があるというわけではないんです」

姫乃「ただ、万全のあなたがたにリベンジを出来なかったのが不服だったので」

姫乃「3位決定戦、前のような覇気がありませんでしたね」

果林「へぇ？」

姫乃「……優木さんの足の調子は？」

果林「救護室の先生の話では、そんなに長引かないとは聞いているわ」

姫乃「そうですか」ﾎｯ


姫乃「私たち藤黄は、今日の結果で虹ヶ咲に勝ったとは思っていません。必ず、春に雌雄を決しましょう」

果林「……ふふっ」

果林「楽しみにしているわ」

姫乃「伝えたかったのはそれだけです。では」ｸﾙｯ

果林「また会いましょう、姫乃」

姫乃「……ええ」ｽﾀｽﾀ



果林（良いライバルに出会えたわ）

果林（ところで……）

果林（『しゆーをけっする』って、どういう意味なのかしら？）ｷｮﾄﾝ

　
　
姫乃「……」ｽﾀｽﾀ

姫乃（ああああああ！　果林さんカッコよすぎますよおおおおおお！！！///）

姫乃（『また会いましょう』って何ですか！？　ひょっとして、ドッジボール以外でも会いに行って良かったりするんですか……！？）

姫乃（大江戸杯でドッジボールをやっていると知った時は驚きました。ずっと追いかけてきて良かったです！）

姫乃（これは……間違いなく、運命……！）

姫乃（あああああああああああ！！！！）


美咲「あら？　姫乃、どこに行ってたの？」

美咲「？　顔真っ赤じゃない」ﾁﾗｯ



果林「？」



美咲「……！」ﾆｺｯ

美咲「頑張ったのねー」ﾆﾔﾆﾔ

姫乃「……きゅう///」



果林（ふふっ、仲が良いのね）ﾆｺﾆｺ

※※※


遥「……」

彼方「遥ちゃん」

遥「お姉ちゃん……。私たち、負けちゃった……」

彼方「うん」

遥「最後に私がアタックを決めていれば……！」

彼方「うんうん」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

遥「お姉ちゃんは！　悔しくないの！？」

彼方「悔しいよ。すっごく悔しい」

遥「！　……ごめん」

彼方「良いんだよ」ﾆｺﾆｺ

彼方「次は、決勝戦で戦いたいね」

遥「うんっ……うん！」ﾒｿﾒｿ

彼方「……帰ろっか」

遥「……うん」

※※※


穂乃果「私たちに聞きたいことがある？」

海未「中学生の頃、一時代を築いたエースアタッカーのあなたがですか？」

せつ菜「昔の話ですよ……。今の私では、お二人に遠く及ばない」

穂乃果「そうかな？」

せつ菜「はい。私の中で、ジャンピングアタックは特別な技でした。非力で小さな私が、やっとの思いで習得した唯一無二の技。それくらい愛着があったんです」

穂乃果「……」

せつ菜「でも、穂乃果さんのジャンピングアタックは、私より高く、速い。恥を忍んで、その秘訣を伺いたいんです」

穂乃果「秘訣……かぁ」

海未「穂乃果だって、何度も転んで、何度も立ち上がって練習してきました。せつ菜もそれは同じだと思いますが？」

せつ菜「それは、そうなんですが……」

せつ菜「まだ何か一つ、足りない気がするんです」

穂乃果「うーん、強いて言うなら……心、かな？」

せつ菜「心……ですか？」

穂乃果「うんっ！　私は……私たち二人は、練習の時以外もずっと一緒にいて、心を繋げてきたんだ」

海未「なっ！？　いきなり恥ずかしくなるようなことを言わないでください！」

海未「……しかし、ジャンピングアタックに理想的なパスが必要なのは間違いありません。せつ菜のレベルアップも大切ですが、それ以上にパスを出す方と心を通わせることは必須ですね」

せつ菜「心を通わせる……」


せつ菜（思えば、私はほとんど歩夢さんと二人きりの時間を過ごしたことがない……）

せつ菜（歩夢さんと、心を通わせる……）

せつ菜（……）


せつ菜「なるほど。早速試してみます！」ﾍﾟｶｰ

海未「その前に、足をきちんと治してくださいね？　春はあなたたちと戦ってみたいんですから」

穂乃果「うんうんっ！　楽しみにしてるよ！」

せつ菜「はい！」

※※※


璃奈「花陽ちゃん、凛ちゃん」

凛「？　凛たちのこと、知ってるの？」

花陽「あ！　虹ヶ咲Passionsの天王寺璃奈ちゃんだよね！？」

璃奈「……驚いた。逆に私のこと、知ってるんだ」

凛「……？　本当に驚いてるのかにゃ？」

璃奈「ごめんなさい。私、気持ちを上手く出せなくて」

花陽「それも素敵な個性だよっ」

璃奈「……」

璃奈「ありがとう」

花陽「それはそうと、どうしたの？」

璃奈「ドッジボールについて、もっと詳しくなりたい」

璃奈「色々と、教えてほしい」

花陽「！」ﾊﾟｧ

花陽「是非是非！　この後時間あるかな！？」

凛「かよちん、この後は打ち上げで凛とラーメンを食べに行く約束にゃー」

花陽「一緒に行こうよ！」

凛「え」

璃奈「うん」

　
「ラーメン？　アタシも行っていいー？」

「あ！　私も行きたいですぅ！」


璃奈「愛さん、かすみちゃん」

花陽「あわわわわ！　宮下愛さんに、中須かすみちゃんだぁ！」

愛「あれ？　よく知ってるねー？」

かすみ「ついにかすみんたちも有名選手に……！」

花陽「うん！　3位決定戦見てたよ！　みんなすごかった！」

かすみ「それほどでも～……ありますけどぉ」ﾆﾔﾆﾔ

璃奈「今、ドッジボールを教えてもらうついでに、一緒にラーメンを食べに行くって話をしてた」

愛「なるほどね！」

花陽「お二人も是非！」

凛「うーん……」

凛「凛は、そういうかよちんも好きだよっ」

※※※


にこ「……待ちなさい」

しずく「？」

にこ「あんた、虹ヶ咲の9番でしょ？」

しずく「え……」


しずく「は、はい。桜坂しずくと申します」ﾍﾟｺﾘ

にこ「ふーん……」ｼﾞﾛｼﾞﾛ

しずく「あの、なにか」

にこ「気に入らないのよね、あんたのプレイスタイル」

しずく「！」


にこ「良い？　コートは神聖な場所なの！　あんたみたいな卑怯なプレーは認めないわ！」

しずく「……あれは、私なりに」

にこ「そんな手を使わなくても良いくらい強くなりなさい！　私たちは多分全国制覇するけど、あんたたちはこのままだと春の都大会でも勝てないわ！」

しずく「……」

にこ「まだ一年生なんだから、基礎からしっかり練習することね！　それだけ！」ｸﾙｯ


しずく「何なんですか……」


しずく（……あれ？　あの人、どうして私が一年生だって知って……）

しずく（まあいいか。私は私のドッジボールで、必ず見返してやるんだからっ）


にこ（ふふっ、決まったわね。さっきの私、完全に強キャラの風格だわ！）


しずく（でも……）


にこ（それはそうと……）


しずくにこ（（まずは、試合に出なきゃ……））

※※※


歩夢「もうっ、侑ちゃんどこに行っちゃったんだろう？」ﾄｺﾄｺ


絵里「そうそうそれで……」

ことり「あるあるー！」

真姫「イミワカンナイ」

エマ「うふふ～」


歩夢「……エマさん？」

　
エマ「あ！　歩夢ちゃん！」

絵里「あら」

真姫「すごいタイミングね……」

ことり「噂をすればなんとやらだね！」

歩夢「噂？」

エマ「うんっ！　今、歩夢ちゃんの話を……あれ？」

ことり「いつの間にか、学校の話になっちゃってたね！」

絵里「元々は何の話だったかしら？」

真姫「ええっと確か……」

エマ「！」


エマ「そうだ！　歩夢ちゃんは侑ちゃんが大好きって話だよ～！」

歩夢「ええ！？///」

絵里「部内恋愛とは感心しないわね」

真姫「私は個人の自由だと思うわ」ﾌｯ

ことり「そう言いながら、絵里ちゃんも興味津々だったよね！」

絵里「そ！　それは……まあ……」


歩夢（エマさん、初対面の人たちとそこまで仲良く……というか、どうして私の話題なのっ！？）


エマ「歩夢ちゃん、侑ちゃんとはどこまで進んでるの？」

歩夢「え！？　い、いや……私と侑ちゃんはただの幼馴染で……そういうのじゃないっていうか……」

エマ「ふ～ん……？」

エマ「じゃあ、私が侑ちゃんをもらっちゃっても良いかな？」

歩夢「は？」

ことり「ひっ！」

絵里「……」ｶﾞｸｶﾞｸ


エマ「冗談だよ～！　そんな顔するってことは、やっぱり好きなんだよね？」

歩夢「うぅっ……」ｶｧ


絵里「……可愛いわね」

ことり「うん……」ｺﾞｸｯ

真姫「アイドルにでもなった方が良いんじゃない？」

エマ「でしょ～？」

絵里「本当に好きなんだったら、早くアプローチすべきね」

ことり「うんうん！（経験談）」

ことり「幼馴染だからって、ずっと自分だけを見てくれるわけじゃないんだよ！（経験談）」

絵里「重いわね……」

ことり「あの時ことりが元外野に立候補していれば……」ｷﾞﾘｷﾞﾘ

真姫「ことりは自分を出さなすぎね」

エマ「草だよ～」

絵里「エマ、それはあまりこういう状況では使わない方が良い表現ね」

エマ「そうなの？」


歩夢「だ、だから……そういうのじゃないんですって……！」ﾀﾞｯ

ことり「あっ」

絵里「行っちゃったわね」

エマ「からかい過ぎたかな？」

真姫「はぁ……」



歩夢（ずっと、私だけを見てくれるわけじゃない……）ﾀｯﾀｯﾀｯ

歩夢（そんなの、分かってるけど……！）ﾀｯﾀｯﾀｯ


ﾋﾟﾛﾝｯ♪?


『せつ菜ちゃん　から1件の新着メッセージ』


歩夢「……？」


※※※


侑「――ドッジボールフェスティバルチャンピオンシップ？」

希「うん！」




～開幕！都大会（夏）編～　完

※※※


次回予告


侑「やっぱり、遠征はお金がかかるね」


エマ「うちの寮、アルバイトOKだったかな～？」


遥「お姉ちゃん！　それは今月の食費だよ！」


穂乃果「全国制覇！！！」


千歌「全国制覇！！！」


せつ菜「歩夢さん、大好きですっ！」ﾍﾟｶｰ


かすみ「可愛いかすみん、九州初上陸ですっ！」


しずく「へぇ～、結構栄えてるんだ？」ﾄﾞﾔｯ


璃奈「愛さんが二度と浮気できないスイッチ」


宮下「りなりー愛してる」


善子「戦乙女たちが集いし極彩色戦場（カラーコート）――。今、堕天の準備は整った……！」ｸﾜｯ



次回、～私に勇気をくれた人、私に翼をくれた人編～

おまけ
音ノ木坂ミューズ
1　高坂穂乃果　　　センターアタッカー・カット①　78㌔
2　南ことり　　　　左アタッカー　74㌔
3　園田海未　　　　元外野　76㌔
4　西木野真姫　　　レシーバー　72㌔
5　星空凛　　　　　カット②　75㌔
6　小泉花陽　　　　レシーバー　68㌔
7　矢澤にこ　　　　レシーバー　67㌔
8　東條希　　　　　大砲　83㌔
9　絢瀬絵里　　　　ジャンパー・右アタッカー　77㌔
1年前の夏の全国大会にて圧倒的な強さで優勝したA-RISERSの映像を見て、穂乃果が2年生の4月に設立した新参チーム。A-RISERSの主力3人は高校生にしてプロ入りし、その後学生の大会には出場していない。そのため現在のUTX学園は中堅チームに留まっている。
2年生3人を中心に、大砲の希・参謀の花陽の活躍が光る。ベンチでふんぞり返っている謎の少女ももはや名物と化した。
第30回夏の全国大会への出場権を獲得。

【解説】

○ショットガンC
縦パスをしつつ、突如サイドに走りアタックを撃つ……という一連の攻撃を外野一人で完結させる技。
現実でもカットを潰す目的や、経験が浅くラインが片方に寄りがちな相手に多用される。ショットガンCという名前はオリジナルなので注意。

○二列フォーメーション
小学生ドッジボール全盛期、宮崎県代表が全国大会決勝戦まで一貫して使用したフォーメーション。かなり高い練度が求められるため、現在使用するチームはほぼ存在しない。
仲間が当たった時にカバーしやすい、サイド攻撃への対応が早いといったメリットがある。

○ラインカット
レシーバーが突如立ち上がり、その場でパスをカットする技。高い動体視力が求められる。

おつでした。エマさんの草ネタ久しぶりに見たわ