曜「日付が変わったその後に」

まりー夜 SS


1: (らっかせい) 2020/07/30(木) 18:59:14.24 ID:zBn9Y5jE
大学生になったようまり。

2: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:00:06.97 ID:zBn9Y5jE
『久しぶり。こんな時間に突然ごめん。急だけど、もしよかったら今からご飯食べに行かない?』

ある夏の土曜日の夜。
今日が終わりを迎えるその間際になって、私は鞠莉ちゃんに宛てたメッセージをようやく送信することができた。

メッセージ横にある送信時刻は11:59を示していて、直後にスマホの時計は0:00を表示する。

曜「よかった、間に合った…」

私は大きく息を吐き、ようやく胸をなでおろした。小一時間ほど悩んでいたこともあり、安堵感が半端じゃない。

あと数十秒決心が遅れて、日を跨いでしまったら、きっと連絡するタイミングと勇気を完全に無くして諦めていたことだろう。

まさにギリギリ、間一髪。何はともあれ、送れたことに一安心だ。

3: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:01:24.07 ID:zBn9Y5jE
曜「でもなんか、うーん…素っ気なくなっちゃったかな」

文面をあらためて見返して思う。
「シンプルで簡潔」と言えば聞こえはいいけれど、長考の割には無味乾燥としていて、なにより飾り気がなさすぎる。

もう少し配慮や感情が伝わる書き方があったはずだし、それが久々に会う相手への食事の誘いで、送る時間が深夜であるのなら尚更だ。

曜「不器用だなぁ…」

もう少し気の利いたことでも言えればいいのにね、と自分で苦笑する。

だけど、不意に訪れたこのチャンスを見過ごすことなんてできなかった。
ただの偶然だとはわかってるけど、こんな偶然はもう二度とやってこないかもしれないから。

4: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:02:33.75 ID:zBn9Y5jE
高校を出て東京の大学に進学し、一人暮らし始めてから1年と数ヶ月が経った。

Aqoursのメンバーを中心に、浦の星や静真のみんなとは今でも交流があるし、たまに集まって遊びに行ったりもするけれど、海外在住の鞠莉ちゃんや果南ちゃんとはしばらく会えていない。

SNSで互いの様子はわかっているから、関係が希薄になったわけじゃないとは言え、デバイス越しでのやりとりと直接会って話をするのでは、やっぱり違うものがある。

なにより、会いたいなと思ったときに会えないのは、やっぱり寂しい。

そんな折、大学やらバイトやらが忙しくて日中チェックできなかったSNSを眺めていた時、私は鞠莉ちゃんが帰国して東京都内に滞在していることを知った。
それも、私の家からそう遠くないところに。

5: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:03:38.34 ID:zBn9Y5jE
ホテルグループ経営者の家系であることと、何より本人の意向から、鞠莉ちゃんは学生でありながら半分はビジネスの世界に生きている。

SNSにアップされる鞠莉ちゃんの生活は、テレビで見るような「世界で活躍する人」そのもので。

青春時代を共に駆け抜けた仲間として、そういう活躍を目にするのは誇らしいけれど。

あの一途で頑張り屋さんな鞠莉ちゃんが、なんだか遠い存在になってしまったように思えるのだ。

いや、実際もともとそうなんだけどね。鞠莉ちゃんのママさんや先生方が留学を勧めたように、同じ地元で過ごせたことの方がむしろ異例のはずだ。

だからこそ、もう一度会いたい。
地元を離れ、お互い身近ではなくなった今だからこそ、鞠莉ちゃんと会って話がしたいなって、ずっと思っていたんだ。

そういう背景もあって、鞠莉ちゃんの帰りを知った私は居ても立っても居られなくなって、夜更けだというのにメッセージを送ってみることにしたんだ。

もっとも、もうご承知のとおり、結果的にはスマホとのにらめっこに長い時間を費やしてしまうことになるわけだけど…

6: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:05:26.76 ID:zBn9Y5jE
日付が変わってから10分が過ぎた。返信はなく、何度確認してもメッセージには既読がついていない。

曜「やっぱり、送らなきゃよかったかな」

ふと不安が頭をもたげる。
よくよく考えてみると、鞠莉ちゃんはつい数時間前に日本に着いたばかり。それだけでも充分ハードなのに、早速仕事までこなしている。

メッセージが未読のままなのも、もしかしたら今も仕事をしているのかもしれないし、すでに寝てしまったのかもしれない。心に急かされるあまり、肝心なことを見落としちゃっていた。

曜「自己満足なのは、わかってたことだけどさ」

だからこそ、早とちりしたバツの悪さも、きちんと自分で受け止めなきゃいけない。

曜「でも、やっぱり会いたかったな」

そう思っちゃいけないのは、わかっていても。

7: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:08:03.33 ID:zBn9Y5jE
気持ちを切り替えようと、冷蔵庫に飲み物を取りに行こうとしたその時。机に置いたスマホが震えて音を立て、夜の静けさを打ち破った。

曜「!」

スマホに飛びついて確認する。
果たして、鞠莉ちゃんからの着信だった。

曜「も、もしもしっ」

通話をオンにして、緊張気味に話しかける。

鞠莉『はぁい!久しぶりね、曜!』

明るく通った懐かしい声が聞こえた。

8: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:10:53.74 ID:zBn9Y5jE
……………………………………

12時40分、私は最寄駅へと到着した。
徒歩数分のところにある最寄駅だけど、慌てて準備を済ませて早足に歩いてきたから、少し息が上がっている。

呼吸を整えつつ、辺りを見回してみる。鞠莉ちゃんの姿は見当たらない。車で来ると言っていたから、そう長く待つことはないだろう。

私はお互いを見つけやすいように、駅の入り口付近に立って待つことにした。
構内は人もまばらで、周辺の店舗も店じまいを始めているけれど、行き交う車のライトや建物の灯りは途切れることを知らない。

もう慣れたこととはいえ、ここが眠らない街であることを改めて実感させられる。

9: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:13:11.02 ID:zBn9Y5jE
待つ間に、身なりや髪型を確認する。
思い切って誘ってみたのはいいけれど、時間の関係でお化粧もそこそこな上、こんなときに限ってお気に入りのおしゃれ着は雨のせいで洗濯待ちで、結局は普段と大差ない感じになってしまった。

取り立てておかしいところはないはずだけど、理想を言えばもう少し身支度に時間をかけたかったな。今日の私――正確には昨日からの私は、出たとこ勝負ばっかりだ。

曜「でも、鞠莉ちゃんは来てくれるって言ってくれた」

そのことが、私をなにより勇気付けてくれた。

10: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:15:24.48 ID:zBn9Y5jE
鞠莉『食事ね、もちろん行くわ。曜のお誘いなら断る理由がないもの』

突然の誘いで夜遅くにもかかわらず、鞠莉ちゃんは二つ返事で応じてくれた。
決断が早いと言うより迷いがない。短いメッセージであれこれ悩んでいた私とは対称的だ。

鞠莉『住んでるところはどの辺りなの?ああ、なら車ですぐの距離ね、迎えに行くわ。運転?まさか、送迎を頼むつもりよ。あー、なによ、そのホッとした感じは』

明るい声と弾むような話し方。私のよく知る鞠莉ちゃんそのままだ。

鞠莉『曜の方が先に着くと思うけど、知らない人にナンパされないようにね?曜は可愛いんだから』

あの言い回しもすごく鞠莉ちゃんっぽくて。なんだか嬉しいな。

「ねぇ、そこのあなた」

感慨に耽っていたら、不意に後ろから声をかけられた。

11: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:16:43.54 ID:zBn9Y5jE
「もしかして誰か待ってるの?」

私はちらりと声の方に視線を向け、浮かび上がる笑みをこらえながら「まあ、そうだね」と答えた。

「こんな可愛い子を夜に一人で待たせるなんて。悪い人がいたものね」

曜「心配ないよ、すぐ来てくれるって言ってたから。私もいま来たばかりだし」

「そうなの?実は張り切って早く来過ぎちゃって、長い間待ちぼうけしてたとか」

曜「してないしてない。本当に来たばかりだもん」

後ろに向き直って声の主と目を合わせる。お互い自然と笑みがこぼれた。

鞠莉「ならよかったわ。お待たせ、曜」

曜「待ってないよ。久しぶり、鞠莉ちゃん」

その懐かしい笑顔は、眠らない夜の中でひときわ輝いて見えた。

12: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:17:24.99 ID:zBn9Y5jE
――――――――

鞠莉ちゃんが頼んでくれた車は、私が待っていたのとは反対側のロータリーに停まっていた。

運転手さんが車の外で待ってくれていて、私が「こんな夜分にすみません」と挨拶すると、彼女は軽く微笑んで車のドアを開いてくれた。

私が運転席側の後部座席に座ると、鞠莉ちゃんが反対側から乗ってきた。車のものとは違う、柔らかないい匂いがくすぐったい。

運転手「行き先はどちらでしょうか」

曜「えっと、ここのお店なんですけど」

スマホでお店の情報を示すと、運転手さんは「ああ、近くですね。わかりました」と答え、車を発進させた。

13: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:17:52.59 ID:zBn9Y5jE
鞠莉「言っておいたのに、すんなり話しかけられちゃって」

何から話そうかと考えていたら、鞠莉ちゃんに先手を取られた。

曜「えっと、なんのこと?」

鞠莉「さっきの駅でのことよ。電話で伝えたでしょ、ナンパには注意しなさいって」

曜「ああ、そのこと?」

上品な着こなしに身を包んではいるけれど、話の切り出し方や距離の詰め方は相変わらずだ。

曜「ダメって言ったのは知らない人からのナンパだよ。知ってる人からなら問題ないってことだよね」

鞠莉「ふーむ、一理あるわね」

曜「でしょ?えへへっ。…来てくれてありがとう。久しぶり、鞠莉ちゃん」

鞠莉「久しぶり。と言っても、前に会ったのは善子たちが卒業のときだから、そんなに経ってはいないはずなんだけどね」

私はよく知っている。
この笑顔も話し方も。大人っぽさも、あどけなさも。

14: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:19:47.45 ID:zBn9Y5jE
鞠莉「それにしても、うふふっ」

レモン色の瞳がまじまじと覗き込んでくる。

曜「ん、なに?」

鞠莉「やっぱり私の考えは正しかったなって」

曜「えっと、つまり?」

鞠莉「相変わらず、曜はとっても可愛いってことよ」

曜「ま、またそんなこと言う」

鞠莉「本当のことだもの。他の人に声をかけられなくてよかったわ。いえ、声をかけられない方がおかしいのかしら」

曜「それ、鞠莉ちゃんが言っちゃう?」

鞠莉ちゃんが話題をリードして、私が突っ込んだり合わせたりするお馴染みのやり取り。
このテンポ、本当に変わらないな。

15: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:20:24.06 ID:zBn9Y5jE
鞠莉「それで、どこに連れてってくれるの?」

曜「たまに行くワインバーがあってさ。遅い時間までやってるし、フードが結構美味しいんだ。って、なんで笑ってるの」

鞠莉「だって、曜の口からワインバーなんて言葉が聴けるなんて思わなくて」

手を口に当てて、愉快そうにころころと笑っている。

曜「私だって、もう子どもじゃないですよーだ」

鞠莉「はいはい、失礼いたしました。うふふっ」

16: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:21:06.60 ID:zBn9Y5jE
曜「もうっ、笑いすぎ。まあ、かと言って大人ってわけでもないけどね」

大人と子どもの中間。社会と関わる準備期間。背伸びの時期――それが大学生活に対する私の認識だ。

鞠莉「そういうものよ。曜はお酒飲むの?」

曜「んー、嗜む程度に」

鞠莉「本当かしら。実はとんでもない酒豪だったりとか」

曜「そんなことないって。飲み会に出たときくらいしか飲まないんだ。あまり強い方でもないしね」

17: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:22:33.83 ID:zBn9Y5jE
鞠莉「人気者だから、きっと引っ張りだこでしょうに。そっかぁ、曜がお酒をねぇ」

しみじみと話す鞠莉ちゃんの横顔に、あの日の面影が重なった。私の憧れが生まれた、夏の夕暮れの面影が。

鞠莉「時の流れを感じるというか、曜とお酒を飲みに行く日が来るなんてね。感慨深いわ」

曜「私も、嬉しいよ」

今なら心からそう言える。
鞠莉ちゃんと再会するまでは、環境の変化が私たちの関係を過去のものへと変えてしまったんじゃないか、気持ちが取り残されてしまうんじゃないかって、不安だった。

でも、そうじゃなかった。私たちは確かに繋がっていた、ちゃんと繋がっていたんだ。

鞠莉「今しかない、少し大人で、まだまだ子どもな時間を楽しみましょう」

曜「うん!」

車は目的地にほど近い交差点へと差し掛かる。

深夜でもなお賑やかな都会の夜。
ここには透きとおる青い海も、高く浮かんだ夏の雲もないけれど、場所の違いや時間の流れ、距離の隔たりなど全くなかったかのように、私たちは心を通わせ合っていた。

18: (らっかせい) 2020/07/30(木) 19:23:25.26 ID:zBn9Y5jE
……………………………………

曜「わらひ、わたひね、まりちゃんのこと、が…」

深夜のワインバー、並んで座ったカウンター席。舌足らずに話す曜の言葉が途中で止まる。

鞠莉「曜?」

曜の上体がゆらりと振れたかと思ったら、そのままゆっくり後ろに傾いて、椅子の背もたれに寄りかかった。

椅子に体を沈めた曜は、穏やかな表情のまま目を閉じていた。少し開かれた口からはすう、すう、と規則正しい呼吸の音が聞こえる。

時刻は午前3時を回っていた。だいぶお酒も進んでいたし、さすがの曜も睡魔と酔いのダブルアタックには勝てなかったみたい。

19: (光) 2020/07/30(木) 19:26:05.80 ID:qvvutzdE
鞠莉「寝ちゃったか。ふふっ、張り切りすぎるから」

幸せそうな寝顔に思わず頬が緩む。
会って話すのは久しぶりだけど、お互いブランクなんて全く感じなかった。

今日は二人でいっぱい話して、たくさん笑った。お酒も料理も本当に美味しかった。

お酒でほんのり顔を赤くした曜は「会えて嬉しい」「来てくれてありがとう」と何度も言ってくれた。

笑顔は心から輝いていて、何もかもが私にとって最高の時間だった。

20: (光) 2020/07/30(木) 19:28:21.92 ID:qvvutzdE
鞠莉「こちらこそありがとう。夜遅くにごめんって恐縮してたけど、誘ってくれて本当に嬉しかったよ?」

感謝の気持ちを込めて曜の頭をそっと撫でた。ふわふわとした髪の感触が心地よい。

曜「…ちゃ…す…」

曜がむにゃむにゃと何か呟いている。

鞠莉「ん、なぁに?」

聞き取ろうと耳を近づけると、曜がゆっくりと顔を上げた。とろんとした青い瞳を私に向け、目が合うとにこっと微笑みを浮かべた。

21: (光) 2020/07/30(木) 19:31:45.55 ID:qvvutzdE
曜「まりちゃん…すき…」

鞠莉「!」

その笑顔と言葉に、私は胸を撃ち抜かれた思いがした。

曜「だいすき。えへへっ…」

言葉を言い終えた曜は再びゆらゆらと揺れながら、今度は私の肩に体重を預けた。

鞠莉「きゃっ。よ、曜」

抱きとめた曜の体はすっかり力がぬけきっていて、安らかな吐息が耳元をくすぐった。

鞠莉「…もう。そういうのは、起きてるときに言いなさい」

22: (光) 2020/07/30(木) 19:32:26.35 ID:qvvutzdE
眠り落ちた曜をそっと椅子に戻す。ちょっぴり大人になった曜だけど、寝顔には幼さが浮かんでいて、見ているだけで自然と頬が緩んでしまう。

ふっと軽く息をついて、私が迎えの電話をするために席を立つと、店員さんがこの場で電話しても構わないと言ってくれた。

店員「他にお客様もいませんので、どうぞ」

私はお言葉に甘えることにした。運転手はすぐに電話に出てくれた。

鞠莉「待たせてごめんなさい。迎えをお願いしたいのだけど」

運転手『はい、すぐにお伺いします。お連れ様はどちらにお送りしますか』

鞠莉「あっ」

言われて気が付いた。曜がどこに住んでいるのかを聞いていなかった。

23: (光) 2020/07/30(木) 19:34:23.09 ID:qvvutzdE
このとおり本人はぐっすり熟睡中。話なんてできそうにないし、住所を聞けたとしても、しばらくは介抱が必要な状態だろう。

運転手『よろしければ、宿泊の手配をいたしますが』

状況を察したのか、彼女から提案を申し出てくれた。私も彼女と同じ考えだった――いや、そのはずだった。

鞠莉「行き先は――えっと、私の部屋でいいわ」

私の口をついて出たことは、私にとっても思いがけないものだった。

曜を送り届けるか、泊まるところを手配するかして、長い一日の終わりを迎えるはずだったのに。

曜の寝顔を見ていたら、楽しかった時間の余韻が――曜ともっと一緒にいたい気持ちが湧き上がり、思考よりも早く言葉になってしまったのだ。

電話からは反応が返ってこない。いつのまにか口の中が乾いている。
なんて説明すればいいんだろう、どうやって取り繕えばいいんだろう。頬と耳が熱を帯びてきた。

24: (光) 2020/07/30(木) 19:35:17.07 ID:qvvutzdE
運転手『なるほど、お泊まり会ですね』

鞠莉「えっ?」

彼女の言った言葉を頭の中で反復する。
お泊まり会――どうして思いつかなかったのだろう。今の私にとって、この上ないほどぴったりな模範解答だった。

鞠莉「あ、ああ。そうね、そうだわ」

運転手『かしこまりました、手配いたします。店の前に着きましたらご連絡いたしますので、それまでもうしばらくお待ちください。それでは、失礼します」

クールな口調で流れるように話す彼女の声が、電話の終わり際はどことなく優しげな声色に聞こえた。

25: (光) 2020/07/30(木) 19:36:28.95 ID:qvvutzdE
電話を終えた後も、わけのわからない顔の熱さは止むことを知らない。
落ち着きのない胸の鼓動を抑えようとグラスを口に持っていくけど、もう氷しか残っていなかった。

どうしてこんなにドキドキしてるんだろう。どうして、こんなに――

曜『すき…だいすき。えへへっ…』

ああ、だめだ。思い返したら胸の奥がさらにじんと熱くなってきた。あの不意打ちはアルコールよりもずっと強力で、なによりも甘美だった。

鞠莉「もう…それもこれも、全部曜のせいなんだからね」

八つ当たりにほっぺたを軽くつついてみたけど、当人はすやすやと気持ち良さそう。まったく、人の気も知らないで。

26: (光) 2020/07/30(木) 19:38:49.22 ID:qvvutzdE
この調子だと、自分が何を言ったかなんて覚えていないだろうし、その意図も定かではないけれど――

鞠莉「…ま、それもそれ、か」

曜「ふふっ、まり、ちゃ…」

私の名前を呟いて笑うあなたは、一体どんな夢を見ているのかしら。
願わくば、それが素敵な夢でありますように。

鞠莉「そうでしょ、ねぼすけさん?」

まだあどけない寝顔が、幸せそうにはにかんだ気がした。



終わり

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1596103154/

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