穂乃果(24)「ありがとうございました、またのお越しを~!」【長編SS】

AqoursーSS


623: 2020/07/09(木) 17:54:50.57 ID:au0sXs95
第7章「舞い戻る伝説」

『ありがとう』

『大丈夫、次こそ出来る!』

“あいどる”「ん、んんぅ…」

『3人でやらない?』

『一番になろう!』

“あいどる”「はっ…はぁ…はぁ…」

『じゃあ一緒にやろうよ!』

『いいよ、やってあげる』

“あいどる”「うん…うん…」

『勇気で未来を見せて』

“あいどる”「ははは…あははは…」

・・・

“あいどる”「……あ……?」

624: 2020/07/09(木) 17:56:06.35 ID:au0sXs95
『・・・あなたが、こんな風に死ぬなんて・・・』

『ごめんね』

“あいどる”「!?」

“あいどる”「はっ!」ガバッ

“あいどる”「はぁ…はぁ…はぁ…」

“あいどる”「夢…?」

“あいどる”「今の…記憶は…?」

“あいどる”「……うっ……うぅ……」

“あいどる”「ううぅ……」

625: 2020/07/09(木) 17:58:17.96 ID:au0sXs95




-あいどる歴3年-

「向こうだー!向こうにいるぞー!!」

「追えー!」

ダダダダダダッ…


絵里「はっ…はぁ…」

曜「絵里さん……もう、限界ですよ」

絵里「……やっとの思いで東京に戻ってきたのに、この仕打ち」

絵里「歓迎パーティーもなさそうね」

曜「…こんな時によく冗談言えますね」

絵里「…しかし、いつまでも親衛隊と追いかけっこしてるわけには行かないわね」

絵里「せっかく、東京に戻ってきたんだから…」

626: 2020/07/09(木) 18:14:03.57 ID:au0sXs95
「不法侵入者を捕らえよ!」「不法侵入者を捕らえよ!」

「不法侵入者発見!」

絵里「ッ!行くわよ曜!」

曜「はいっ!…ッ!」

曜「った…」ドサッ

絵里「…!曜…!?」

曜「だ、大丈夫ですから…先に行ってください!」

絵里「足ね…?見せなさい…!」サッ

曜「……ッ」

絵里「こんなに腫れて…いつ…」

「捕まえ !」

絵里「まずい…。おぶるわ…!」

曜「……行ってください」

絵里「いいから早く!」

曜「絵里さんに迷惑はかけられないんです!」

絵里「…っ。あぁっ!もうっ!じれったいわね!」サッ

曜「ちょ…絵里さん!」

627: 2020/07/09(木) 21:54:27.18 ID:au0sXs95
タッタッタッ…

絵里「はっ…はっ…」

「追え!追え!」

曜「え、絵里さん!もういいですよ…!下ろしてください~!」グググッ

絵里「……冗談」

絵里「絶っ対に下ろさないから!」

曜「絵里さん…」

曜「でも、このままじゃ本当に…」

「絵里さん!」

絵里「……!?」

こころ「こっちです!」

絵里「こ、こころちゃん?」

こころ「早く!」

絵里「……ッ!」タタッ…

628: 2020/07/09(木) 21:57:42.62 ID:au0sXs95
「どこに行った?」

「くそっ!探せ!」

タッタッタッタッタッタッ…

こころ「……ほっ。行ったみたいですね」

絵里「こころちゃん、なんでここに?」

こころ「それはこっちのセリフですっ!」

こころ「それに絵里さん…親衛隊に追われてるみたいですけど…いったい何をやったんですか?」

絵里「壁を…超えてきたの」

こころ「えっ!?あんな高い壁を自力で…!?」

絵里「えぇ、なんとかなったわ」

629: 2020/07/09(木) 21:59:56.49 ID:au0sXs95
曜「ッッ…い…」

絵里「曜…大丈夫?」

こころ「あら?お連れの方、怪我をされてるんですか?」

絵里「えぇ…ちょっと足をね…」

こころ「なら、我が家にご案内しますよ!」

こころ「近くなので!」

絵里「い、いいの?」

こころ「もちろんです!外にいたら奴等に捕まるのも時間の問題ですからね…」

絵里「……なら……お邪魔させてもらおうかしら」

曜「すみません…」

630: 2020/07/09(木) 22:02:53.44 ID:au0sXs95
キュッ

ここあ「はいっ!これでひとまずは大丈夫なはず!」

曜「あっ、ありがとうございます!」

絵里「こころちゃん、東京でいったい何をしているの?」

こころ「……お姉様を探しに来たんです」

絵里「……そう。ここあちゃんと2人で?虎太郎くんは?」

ここあ「虎太郎は…“あいどる”が胡散臭いって外で言って、親衛隊に連れて行かれた…」

絵里「……虎太郎くんが」

631: 2020/07/09(木) 22:09:36.83 ID:au0sXs95
こころ「お姉様は花陽さん達と共に行動してるとお聞きしたんですが…」

こころ「絵里さんは今、お姉様がどこにいるかをご存知ですか?」

絵里「……ごめんなさい、私もさっき言ったみたいに……数年ぶりに東京に帰って来たの」

絵里「にこ達の行方はわからない…」

こころ「……そうですか」シュン

絵里「それに、もしかしたら花陽は……」

ここあ「ねぇねぇ!なら、氷の女王って知ってる?」

絵里「氷の女王?」

632: 2020/07/09(木) 22:16:06.98 ID:au0sXs95
ここあ「都民に武装蜂起を呼びかけてるんだ」

絵里「武装蜂起…」

こころ「なんでも、リーダーの女性がすごくカリスマ性があるらしいんです」

ここあ「でもでも!すごく冷徹らしくて、そこから付けられたあだ名が…」

ここあ「氷の女王!」

絵里「へぇ…」

こころ「…って、私。お客様にお茶も出さずに!いや…もうこの際ご飯も食べていってください!」

絵里「いや…!遠慮しなくていいのよ、こころちゃん」

こころ「いえ!お気になさらずに!ここあ、あなたも手伝って」

ここあ「はーい」

633: 2020/07/09(木) 22:18:53.55 ID:au0sXs95
曜「……しかし、テレビもないし……なんだか、寂しいですね」

ここあ「いやいや~、テレビなんて高くて無理だよ」

こころ「そうなんです。もう、税金を納めるのに精一杯で」

曜「テレビも買えないほどの税金って……“あいどる”に対して反発とか出ないんですか?」

こころ「デモなどは一応ありますよ。ありますけど…」

こころ「…みんな連れて行かれた」

絵里「……」

634: 2020/07/09(木) 22:21:50.68 ID:au0sXs95
ここあ「あっ!でもラジオはあるよ!ほら!」

曜「おぉ~!このご時世に珍しい…!」

ここあ「まぁ、なーんにもやってないんだけどね」

こころ「それ、壊れてるんじゃない?」

ここあ「ほんとに?」

曜「どれどれ~…」ピーグルグル…

「……では、最後に今日の“あいどる”の声をお届けします」

曜「あっ」

ここあ「おっ」

絵里「………」

635: 2020/07/09(木) 22:24:53.39 ID:au0sXs95
ここあ「こんなのやってるんだ」

こころ「初めて聞きますね」

「……東京のみなさん、8月3日……未知のウィルスによって、人類は滅亡します」

絵里「………」

「私を信じ、私を愛する者だけが助かります」

ジー…

ここあ「なんだこれ?」

絵里「8月3日……ね」

こころ「ほら、ここあ…もういいでしょ?ご飯の用意するから手伝って」

ここあ「ん~」スッ

636: 2020/07/09(木) 22:29:02.95 ID:au0sXs95
~~~~~~~~~~~

こころ「お待たせしました~!どうぞ!」

ジィィィ…

曜「うわ~!美味しそう!」

曜「いただきま~す!」

絵里「……パクッ」

ジィィィ…

こころ「お口に合いますか…?」

曜「ん~!!美味しいですっ!!」

こころ「ほっ…。良かったです!絵里さんはどうでしょうか?」

絵里「…モグモグ」

こころ「絵里さん…?」

絵里「…えっ…あっ、いや…すごく、美味しいわ!」

こころ「な、なら良かったです」

曜「……?」

637: 2020/07/09(木) 22:32:11.07 ID:au0sXs95
曜「どうしたんですか?絵里さん」

絵里「いえ…なにか…聞こえない?」

ここあ「確かに…そういえばさっきから、なんだか変な音がするような…」

ジィィィ…

ここあ「あっ…これだ」

曜「ラジオですね。そういえば消すの忘れちゃってました…」

ここあ「なーんだ!消しとくね~」

絵里「いや、待って!ここあちゃん!」

ここあ「え…?」

ジィィィ…

絵里「これは……ノイズとかじゃなくて……なにか……人の声みたいな……」

曜「人の声……?」

絵里「よく聞いてなさい」

……ジー ジー ジー ブソウホウキ……セヨ

曜「!!」

638: 2020/07/09(木) 22:46:58.59 ID:au0sXs95
曜「き、聞こえた…」

絵里「……ね?」

「……ブソウホウキ……武装蜂起せよ、8月3日……武装蜂起せよ、私は氷の女王……未知のウィルスは“あいどる”の真っ赤な嘘……みんなで……」プツンッ

曜「切れた…」

ここあ「すごいすごい!初めて聞いた!氷の女王の声!」

絵里「今の声……そうっ……氷の女王……あの子が……」

ここあ「でも、なんで途中で切れたんだろう?」

こころ「電波ジャックだったんでしょ。たぶん見つかって、電波が遮断されたのよ」

639: 2020/07/09(木) 22:50:57.29 ID:au0sXs95
こころ「ここあ、もうラジオは直しなさい」

ここあ「なんで?」

こころ「夜のテレビやラジオは法律で禁止されてるじゃない。親衛隊の人にバレたら連れて行かれるのよ?」

ここあ「そ、そういやそうだった!うぅ…それはやだなぁ…」

ジー…ボクハイマ

ここあ「ん?」

「家路を急ぐ…」

曜「歌…?」

こころ「歌…ですね」

「そんな毎日が君の周りで…」

640: 2020/07/09(木) 22:53:59.45 ID:au0sXs95
「ずっとずっと続きますように…」

絵里「ふっ…」

曜「これ、いい歌ですね」

こころ「もう!ここあ!消しなさいってば!」

ここあ「待ってよお姉ちゃん!これだけ聴かせて!」

こころ「んもぅ…」

ここあ「これがご近所さんが言ってた…謎の歌かぁ」

曜「どこの放送局だろう…それともこれも電波ジャック?」

こころ「……今、東京でちょっとしたブームになってるんです、この歌」

641: 2020/07/09(木) 22:58:59.86 ID:au0sXs95
絵里「ふふっ…懐かしいわね」

曜「え?絵里さん…知ってるんですか?」

絵里「えぇ…昔、無理矢理…聴かされたわ」

絵里「ブーム……か」

絵里「今、流行ってもね……」

絵里「昔に流行ってれば、あの子も助かったのかしら…」

「……グータラ~スーダララ~」

絵里「……え?」

こころ「え?」

曜「どうかしたんですか?絵里さん…?」

「グータラ~スーダララ~」

絵里「……私が知ってる歌詞じゃない」

絵里「……まさか?」

647: 2020/07/11(土) 12:28:45.61 ID:cE6ldDgU




~北海道~

聖良「じゃ、理亞…行ってくるから、留守番お願いね」

理亞「行ってらっしゃい、気をつけてね」

理亞「……あんまり、姉様に迷惑かけないでよ」

善子「迷惑って…私のことなんだと思ってんのよ!かけないわよ!」

聖良「あはは…じゃ、行ってくるね」

ブルルンッ、キー

理亞「まったく…」スタスタ

理亞「……ん?」

理亞「これって……」スッ

理亞「こんなカセットテープ……あったっけ」

648: 2020/07/11(土) 12:30:54.49 ID:cE6ldDgU
聖良「それにしても、2人で行くのは久しぶりですね」

善子「私、最近はずっっっと留守番でしたからね!」

聖良「出来ることなら、3人で行きたいんですが…何せ、2人乗りの車ですからね」

聖良「でも、久しぶりの食料探し…燃えるんじゃないんですか?」

善子「……もう、この北海道に食料なんて残ってないんじゃ」

聖良「………」

649: 2020/07/11(土) 12:32:43.28 ID:cE6ldDgU
聖良「……いずれ、私たちもここから出ないといけなくなるでしょうね」

聖良「実際、たくさんの人が出て行きました…」

聖良「でも、ギリギリまで私たち…いや…少なくとも私はここに残ります」

聖良「ふるさとですから!」ニコッ

善子「……ま、まぁ……付き合いますけど」

聖良「ふふ…ありがとうございます」

650: 2020/07/11(土) 12:38:27.02 ID:cE6ldDgU
キーーー!

ガチャ

聖良「私は向こうの工場に行ってみます」

聖良「善子さんはあっちの工場の探索、お願いしますね」

善子「はーい…ってヨ…!」

聖良「では、また後で!」タッタッタッ

善子「……~~~」

善子「はぁ…」

善子「もう食べれる食料なんて缶詰ぐらいしかないわよね……」スタスタ

651: 2020/07/11(土) 12:41:41.70 ID:cE6ldDgU
キィ…

善子「失礼しま~す…」

・・・シーン

善子「……なんかもう雰囲気からして、食料なんて無さそうな感じなんだけど……」

善子「はぁ…わざわざ遠出してこれって…もうね…」

善子「東京では…みんな何してるのかな」

善子「ずら丸やルビィは元気にしてるかしら…」スタスタ

652: 2020/07/11(土) 12:44:37.64 ID:cE6ldDgU
ピタッ

善子「……って」

善子「食料発見ッ!」

善子「缶詰ね……賞味期限は……まだ大丈夫じゃない!」

善子「久しぶりに探し当てたわ…!」

善子「ククク…やはり私の探知能力は人より優れてい…」

カンッッッッ…!!

善子「!?」

653: 2020/07/11(土) 12:47:24.45 ID:cE6ldDgU
善子「……何?なんの音?」

善子「……だ、誰かいるの?」

善子「聖良……さん?」

善子「それとも、まさかまだ北海道に…私たち以外の人が…?」

善子「」ドキッドキッ

ノソノソ…

カンッッッッ!!

善子「わわっ!?」

善子「……な、なんなのよ!!」

善子「……あっちの方から聞こえたわね」スタスタ

654: 2020/07/11(土) 12:50:10.74 ID:cE6ldDgU
スタスタ

善子「この扉の向こうから聞こえたわよね」

ガチャガチャ

善子「閉まってる…」

善子「…あ、あの」

・・・

善子「……あの!」

・・・

善子「……あれ?」

善子「おかしいわね……空耳だったの?」

「………なに?」

善子「いっ!」

善子「う、うわぁ…!」ドサッ

655: 2020/07/11(土) 13:02:49.51 ID:cE6ldDgU
善子「い、いった~…!」

善子「(…っ、いい歳して尻餅ついちゃったじゃない…)」

善子「…あ、あなた…誰?」

「お前こそ誰だよ」

善子「わ、私…?…私は…堕天使ヨハネ!」

「ヨハネ……お前……“あいどる”の手先か?」

善子「…はぁ?」

善子「何よ手先って!逆に“あいどる”が私の手先なぐらいなんだから!」

「あぁ…なんだ…ただの痛い人間か」

善子「…い、痛い言うなッ!」

656: 2020/07/11(土) 13:09:52.35 ID:cE6ldDgU
善子「って言うか、こんな扉越しで喋るの…疲れるんだけど?」

「………」

善子「出て来なさいよ」

善子「(私がこんなこと言う立場になるなんて…)」

「…外はどうなってる?」

善子「外?」

「ウィルスだよ、ここが一番被害を受けた」

善子「……ほとんどの人が死んだ」

善子「……僅かに生き延びた人たちもみんな……比較的安全な場所へ移った」

「……敵は?」

善子「敵?」

657: 2020/07/11(土) 13:19:47.43 ID:cE6ldDgU
善子「あんた、誰と戦ってんのよ…」

「裏切られたんだ……仲間に……」

善子「人にイタいとか言っといて……あんたの方がイタいじゃないのよ」

「お前と一緒にするな、俺は……“あいどる”に……騙されたんだ」

善子「…!」

「信用してたのに……くそっ、くそっ……」

善子「……あんな見るからに胡散臭いの、信用する方が悪いんでしょ」

658: 2020/07/11(土) 13:24:07.84 ID:cE6ldDgU
善子「……見返したいとか思わないの?」

「……俺は何もできない、1人では何も」

善子「私も…今、出来ることなんて何もないと思ってたけど…一緒にいる子たちの発案で…ラジオで音楽を流してるの」

善子「昔、私も放送とかよくしてたから…」

「そうか……お前らか」

善子「……?何がよ」

「……あの音楽、グータラグータラ言ってる歌をラジオで流してるの」

善子「っ、グータラスーダラだから!」

善子「いや、別に私が訂正する義理なんてないんだけど…」

善子「……去年だっけ?もうずいぶん前よ」

善子「私が、1人で留守番させられてた時に…その人は現れた」

善子「……ボロボロだったのに」

善子「すごく、オーラが……あったっけ」

659: 2020/07/11(土) 13:28:52.52 ID:cE6ldDgU
~~~~~~~~~~~

-1年前-

善子「なんで私が留守番なのよッ!」

理亞「あなた、いつも何も見つけてこないじゃない!探すの下手なのよ!」

善子「ぐっ…ぐ~…」

聖良「すみません、善子さん…すぐに帰って来ますから!」

ブルルンッ!ブウゥゥーン

善子「あぁ~…もう~!!」

善子「1人で留守番は暇なのよぉ~!」

660: 2020/07/11(土) 13:32:53.48 ID:cE6ldDgU
善子「なによ…私、もうずいぶんと食料調達に行ってないじゃない…」スタスタ

ザッ…

善子「!」

「…………」

善子「だ、誰…?」

「…………」

善子「い、生きてる…わよね?」

「………水」

善子「は…?」

「お水…ちょうだい…」バタッ

善子「えっ!?ちょ、ちょっと…」

善子「大丈夫…!?」ユサユサッ

「うぅ~…」

661: 2020/07/11(土) 13:37:25.56 ID:cE6ldDgU
「ゴクッ…ゴクッ…!」

善子「………」

「っぷはぁ~!生き返る!」

「ありがとう!ホントに助かったよ」

善子「それはどういたしまして…」

善子「しかし、この北海道に私たち以外に人がいたとはね…」

「あ、ここ、北海道なんだ」

善子「え、知らなかったの…?」

「うん」

善子「……今までどこにいたの?」

「さぁ…どこにいたんだろう」

662: 2020/07/11(土) 13:41:21.36 ID:cE6ldDgU
善子「…?」

善子「あなた…名前は?」

「名乗るほどの者じゃないよ、ただのシンガーだよ」

善子「……あっそう」

女性シンガー「そっちこそお名前は?恩人の名前を覚えときたいな!」

善子「ふっ、ヨハネよ」

女性シンガー「ヨハネちゃん…ヨハネちゃんか!よし!覚えとこう!」

善子「!!」パァァ…

善子「~~!ツッコまなくて良いなんて…いい人…!ヨハネ、感激…!」

663: 2020/07/11(土) 13:51:15.71 ID:cE6ldDgU
女性シンガー「ご飯まで出してくれるなんて…!なんて優しい子…モグモグッ」

善子「あなた、今まで何してたの?」

女性シンガー「」ピクッ

女性シンガー「…記憶を無くしてて」

善子「え…き、記憶喪失?」

女性シンガー「何より…泣いてた…ずっと…毎日毎日」

女性シンガー「得体の知れない何かにずっと怯えてて…でも、誰かを守らなきゃって…思ってたの」

善子「…そうなんだ」

善子「…今は何してるの?」

女性シンガー「今?今は帰ろうとしてるよ」パクパクッ

善子「どこによ…」

女性シンガー「家だよ?……帰るって約束したし」モグモグッ

善子「家か…私もぶっちゃけ帰りたいわね…」

善子「……ちなみに、約束って誰としたの?」

女性シンガー「………」

善子「……?」

664: 2020/07/11(土) 13:54:55.33 ID:cE6ldDgU
善子「そういえば…それは?」

女性シンガー「それって…このギターのこと?」

善子「そっ…それ、何か弾けるの?」

女性シンガー「いや~、なんにも…」

善子「なによそれ……」

女性シンガー「あ、いや…1曲だけ弾けるや」

善子「…聴かせてよ」

女性シンガー「いいよ…!」

女性シンガー「…日が暮れてどこからか…」

善子「へぇ…弾き語りなのね」

665: 2020/07/11(土) 14:01:11.77 ID:cE6ldDgU
女性シンガー「グータラ~スーダララ~」

ジャーン…

女性シンガー「…どうかな?」

善子「いいんじゃない?私は好きよ」

女性シンガー「そっかそっか!なら良かった…」

女性シンガー「…さてと、じゃあ…そろそろ行こうかな」

女性シンガー「ご飯、ありがとうね!」

善子「あっ…最後に…本当の名前…」

女性シンガー「…また」

善子「…え」

女性シンガー「また会えるよ」

~~~~~~~~~~~

666: 2020/07/11(土) 14:02:48.92 ID:cE6ldDgU
善子「その時にコッソリ録音させてもらってたのよね…」

善子「あなたもいい曲と思うでしょ?」

「……あぁ」

善子「……ねぇ、そろそろ出てきたら?」

「帰れ」

善子「なっ…!なによぉ…急に!心配してあげてるのに!」

「頼んでない、帰れ」

善子「~~~!!!」

善子「帰るッ!」

「そうしてくれ」

「……俺はずっとここにいる」

善子「……ふんっ!」

667: 2020/07/11(土) 14:07:06.91 ID:cE6ldDgU
善子「ああもうっ!なんなのよ!なんなのよ!」

善子「まったく!ムカつくわね!」

善子「缶詰は重いし…!まったく、いくつ入ってるのよ!?」

善子「…って、これは」

善子「ヘリコプター…篭ってるあいつの…かしら…」

善子「……あ~もう……知らないんだから、知らない知らない……」

善子「…聖良さん…早く来ないかな」

668: 2020/07/11(土) 14:09:51.93 ID:cE6ldDgU
ブゥーン

聖良「今日は善子さんのおかげでお腹いっぱい食べれそうですね!」

善子「ふふふん!ま、私の能力にかかればこんなものです!」

聖良「ふふ…そうですね」

キッ

聖良「ただいま理亞。ごめんなさい、結構かかっちゃって…」

善子「ふふ、待たせたわね…」

善子「喜びなさい…!我がリトルデーモン!今日は存分にマナを回復でき…」

ダダダダダッ!!

善子「へ?」

理亞「善子おぉ…!あなたねっ!!」 ズイッ

善子「いっ!ち、近い…な、なによぉ…!」

理亞「このカセットテープ、いつ手に入れたの!?」

善子「え、えぇ…?それは…きょ、去年よ…」

669: 2020/07/11(土) 14:16:00.09 ID:cE6ldDgU
理亞「なんでこんな大事なこと黙ってたのよっ!!」

善子「ど、どういうことよぉ…!勝手に放送したのがまずかったの…!?」

理亞「……あなた、このカセットテープの曲、誰が歌ってるのか本当にわからないの?」

善子「え?いや、本人はシンガーとしか言ってなかったけど…」

理亞「言ってた…言ってたってあなた…これを生で聴かしてもらったの!?」

善子「そ、そうよ?去年1人で留守番してた時に彼女が来て…」

理亞「うそ…来たって…ここに…?」

聖良「さっきからどういうことなの理亞?そのカセットテープはいったい…」

理亞「姉様も聴けばわかる!わからないのは善子だけ!」

善子「むっ…もう、いったいなんなのよ…!」

理亞「……いい?これを歌ってるのは間違いなく……」

670: 2020/07/11(土) 14:18:55.01 ID:cE6ldDgU




~園田家 道場~

海未「…………」

ギシッ…

海未「………!」パッ

花陽「海未ちゃん」

海未「……花陽」

海未「久しぶりですね…」

花陽「うん…」

671: 2020/07/11(土) 14:22:58.46 ID:cE6ldDgU
海未「……どうぞ、座ってください」

花陽「うん…ありがとう」スッ

花陽「……海未ちゃんは……家元を継がないとダメだもんね」

海未「……はい」

花陽「………」

海未「私はもう…やれる事はやりました…」

海未「家元を継いで…ずっと迷惑をかけてしまった母上に恩返しを…」

花陽「……やれる事はやったっていうのは……秋穂ちゃんのこと?」

海未「………」

海未「今まで、あの子の面倒を見ることで私も手一杯でした……」

海未「でも、今はもう…その必要もないので…」

花陽「…そっか」

672: 2020/07/11(土) 14:26:00.59 ID:cE6ldDgU
花陽「海未ちゃん……私、秋穂ちゃんに会いたいんだ」

海未「…秋穂に?」

花陽「うん…」

海未「…なぜですか?」

海未「“あいどる”が蘇ったあと秋穂は…花陽、あなたのところに行ったと聞いていましたが」

花陽「……一時は協力を仰がれて、一緒に行動してた」

花陽「でも、秋穂ちゃんはだんだんやる事言う事が過激になっていって…ついに私たちと意見が対立しちゃって…」

海未「………」

花陽「今、噂になってる組織があるの…」

花陽「“あいどる”と敵対する過激派組織…リーダーはその冷徹さから、氷の女王と呼ばれてるって」

花陽「……この氷の女王って秋穂ちゃんじゃないのかな……?」

海未「………」

673: 2020/07/11(土) 14:32:13.01 ID:cE6ldDgU
海未「……はい、そうかもしれませんね」

海未「……秋穂の件ですが……今、あの子と連絡を取るのは私でも難しいんです」

花陽「お願い海未ちゃん……私、秋穂ちゃんを説得したいの」

花陽「私たちの一派と秋穂ちゃんたちの一派で意見が対立して…それ以来もう絶縁状態なんだ…」

海未「…武装蜂起をやめさせるつもりですか?」

花陽「うん…止めた方がいいよ、絶対に」

海未「花陽も知っていると思いますが、秋穂は説得されてやめるような子じゃありません…」

花陽「………」

海未「しかし、花陽の言う通り……止めないといけません」

海未「秋穂は……穂乃果に似て、1人で抱え込む癖があります」

花陽「………」

海未「放っておいたら…本当に自らの命さえ、投げ出すかもしれません…」

674: 2020/07/11(土) 14:38:16.63 ID:cE6ldDgU
海未「物心がつく前から母親である雪穂はいなかった…」

海未「幼少期に最愛の伯母を失った…」

海未「唯一の肉親である祖母とは会えなくなり……1人であの子はずっと戦い続けている」

海未「片親は誰かもわからない悪の権化……あの子の心情を思うと……私は……」

花陽「私もそう思うよ……だから秋穂ちゃんに何とかして……」

海未「……いえ、秋穂を止めるのは無理です」

花陽「え?」

海未「ですが…秋穂の手を汚さない事は出来ます」

花陽「それって…」

海未「……もう一度、私たちμ'sが立ち上がるんです」

675: 2020/07/11(土) 14:42:25.13 ID:cE6ldDgU
花陽「う、海未ちゃん……本気?」

花陽「無理だよ……もう……私たちじゃ」

海未「…っ!何を弱気になっているんですか花陽!」

海未「あなたはボノカ一派のリーダーなんですよ…?もっと自信を持ってください!」

海未「……“あいどる”は世界を征服しました……あとはもう、人類を滅ぼす以外にやる事がありませんッ…!」

海未「“あいどる”の標的は私たちです……なぜ、ここまでμ'sを目の敵にするのかはわかりませんが……」

花陽「………」

海未「最近、思うんです……彼女ほどの力があれば……いつでもμ'sを……私たち8人を〇せたはずではと……」

海未「それをしなかったのは…何か理由があるからではないかと…」

海未「……もし、彼女の暴走の原因が私たちにあるとすれば……それを解決するのは娘である秋穂ではなく、私たちμ'sだと思うんです…!」

花陽「………」

676: 2020/07/11(土) 14:44:55.85 ID:cE6ldDgU
花陽「」スッ

海未「……?」

花陽「」スタスタ

海未「花陽…?」

海未「どこに行くんですか…?」

海未「…花陽!」

花陽「」ピタッ

花陽「……海未ちゃん……もう無理だよ」

花陽「なるようにしかならないと思うの……」

海未「花陽…」

花陽「…やっぱり、私はリーダーに向いてない」

海未「そんな事……ボノカ一派をここまで率いてきたのは……他でもないあなたなんですから」

花陽「………」

677: 2020/07/11(土) 14:48:11.56 ID:cE6ldDgU
海未「花陽、今ここで挫けてどうするんですか…?」

海未「私たちが踏ん張らないと…本当に世界は…」

花陽「……私には何もないから」

海未「え?」

花陽「海未ちゃんみたいな包容力とか統率力とか……穂乃果ちゃんみたいなカリスマ性もない……」

海未「……そんな事ないですよ」

海未「スクールアイドル部の部長だって、やり遂げたじゃないですか…。どうしたんですか、いきなり…」

海未「花陽にしかない長所はたくさん…」

花陽「……きっと、きっとね」

海未「……?」

花陽「きっと、“あいどる”は本当のアイドルになれなかったんだと思う…」

花陽「どこかで踏ん切りをつけて諦めていたけど…急に疎ましくなったんだと思う」

678: 2020/07/11(土) 14:50:53.38 ID:cE6ldDgU
花陽「μ'sは…しっかりみんなで終わりって決めて…ちゃんとライブもやって…最後を迎えられた」

花陽「あの時の今が楽しくて…最高で…私たちはそれで満足だった…充実感もあったし…やり遂げたっていう達成感もあった…」

海未「………」

花陽「でも…本当にみんながみんな、そうだったのかな…?」

海未「……どういう事ですか?」

花陽「例えば…“あいどる”となった彼女はその後…虚無感に襲われたんじゃないのかな…」

海未「……虚無感?」

花陽「うん……まだまだやりたいって……一緒に歩みたいって……思ったんじゃないのかな……」

花陽「私、思うの…もしかしたら“あいどる”はどこかで……誰かに……中途半端に希望を持たせられたんじゃないのかな……って」

海未「………」

花陽「……μ'sのリーダーは間違いなく穂乃果ちゃんだよ」

花陽「その事に疑問を持ったことがある?」

海未「そんな事…私は一度だってありません…」

679: 2020/07/11(土) 14:55:23.36 ID:cE6ldDgU
花陽「そっか……そうだよね」

花陽「うん、私もないよ……やっぱりμ'sのリーダーは穂乃果ちゃんだもんね」

花陽「でも、その事に納得がいかない人もいるって事だよ…たぶん…」

花陽「リーダーをやって気づいたことがあるんだ…」

海未「気づいたこと?……何ですか?」

花陽「………」

海未「……花陽?」

花陽「……“あいどる”の気持ちなんて誰にもわからないよ」

海未「……そうかもしれませんね」

花陽「海未ちゃん、そうかもじゃなくて……そうなんだよ……?」

花陽「わからないんだよ、誰にも……それは穂乃果ちゃんだって、海未ちゃんだって、絵里ちゃんにだってわからないよ……」

海未「………」

花陽「………」

花陽「……秋穂ちゃんに会わないと」

687: 2020/07/12(日) 13:44:47.62 ID:yQtVwzGX
-数日後-

海未「……花陽の様子」

海未「あれは…なにか…」

海未「………」

ガラッ

海未「……?」

こころ「海未さんッ!」

海未「こ、こころちゃん…?」

海未「どうしたんですかいったい、こんなところまで…」

こころ「こっちです!」テマネキ

海未「え?」

こころ「ついてきてください!」グイッ!

海未「え!?ちょ、ちょっと…!こころちゃん…!」

688: 2020/07/12(日) 13:48:15.01 ID:yQtVwzGX
タッタッタッ…

海未「こ、こころちゃん…!どこに連れて行くつもりですか…!?」

こころ「海未さんに会いたがってる人がいるんです!」

海未「あ、会いたがっている人…?」

海未「…ッ!それにしたって…!いったいどこまで…!」

こころ「あとちょっとですから!」グイッ!

海未「わっ…!」ヨロッ

こころ「あ…」

「…ッ!危ない…!」パシッ

海未「……ほっ」

海未「あ、ありがとうございます……って」

海未「絵里…?」

絵里「海未…大丈夫…?」

689: 2020/07/12(日) 13:51:31.78 ID:yQtVwzGX
こころ「ご、ごめんなさい海未さん!」

こころ「私が引っ張りすぎたから…」

海未「いえ、気にしないでください。今のは私が足を引っ掛けただけですから」

海未「……それにしても、絵里……帰っていたんですね」

絵里「えぇ…つい先日ね」

曜「東京に帰ってくるまで2年ぐらいかかりましたもんね~…」

海未「……あの、そちらの方は?」

曜「……あっ、そうだ!海未さんとは初対面ですもんね!」

曜「初めまして!私は渡辺曜って言います!」

曜「そうですね……絵里さんの……絵里さんの弟子です!」

絵里「……連れ人」

海未「そ、そうですか…」

海未「園田海未です。よろしくお願いしますね」

曜「はいっ!存じてます!」

690: 2020/07/12(日) 13:57:09.60 ID:yQtVwzGX
海未「しかし……ここまで来るのは大変だったんじゃないですか?」

こころ「そうですね…移動は全部徒歩なので…正直疲れました~…」

絵里「私の都合で新幹線や電車…公共の乗り物は使えなかったから」

曜「でもまぁ、4人で固まって歩いてたから、どのみち目立っちゃいましたけどね!」

絵里「なるべく人のいない道を通って来たから大丈夫とは思うんだけど……」

海未「あの……一ついいですか?」

絵里「どうしたの海未?」

海未「4人ではなく……3人では?」

曜「…え?」

海未「絵里に曜にこころちゃん…。3人ですよね?」

こころ「あれ?」

絵里「そう言えば…」

曜「1人足りないような…」

こころ「………ッ!」

こころ「ここあ……!ここあがいないです……!」

絵里「あ……!」

691: 2020/07/12(日) 14:01:18.34 ID:yQtVwzGX




ここあ「あれ~…」

ここあ「もしかして…迷ったかぁ?」

ここあ「この辺り、あんまり来ないから道わかんないよ~…」

グ~

ここあ「~~~ッ」

ここあ「お腹減ったな~…」スタスタ

ここあ「……ん!」ピタッ

ここあ「ラーメン屋さんだ……食べた~い!」

ここあ「でもお金な~い……」

ここあ「はぁ……お姉ちゃんたち、どこだ~」

ここあ「おーい!」

692: 2020/07/12(日) 14:05:13.10 ID:yQtVwzGX
ここあ「人通りまったくないから訊ねることも出来ないしぃ…」

ここあ「それに、海未さんの実家…どこって言ってたか覚えてないし…」

ここあ「う~ん…」

ここあ「……あっ、そうだ!」

ここあ「せっかくここまで来たんだし…にこお姉ちゃんを探しちゃおう!」

老婆「!」

グ~

ここあ「もしかすると、この辺りなら何か手がかりがあるかもしれないし……しかし、お腹減った~……」

老婆「無料」

ここあ「…え?」

老婆「今ならラーメン無料」

ここあ「えぇ…!?」

老婆「中にいる娘に、店の前にいた老婆に無料と言われたと言いなさい」

ここあ「……ほ、本当に?無料?」

老婆「無料」

693: 2020/07/12(日) 14:09:50.32 ID:yQtVwzGX
ここあ「やったー!ラッキー♪」

ここあ「ん?」

ここあ「(…でも、なんか怪しいなぁ…このおばあちゃん)」

グ~

ここあ「(うっ…だけど…)」

ここあ「(もう限界だし…いいや!入っちゃえ!)」

ガラッ

ガラーン…

ここあ「………ありゃ?」

ここあ「あの~!」

・・・シーン

ここあ「全然、お客さんいないじゃん……それに店員さんもいない」

ここあ「というか、肝心のおばあちゃんが言ってた娘さんがいない…」

ダッダッダッダ

ここあ「!」

主人「へい!すみません遅くなって!」

ここあ「あれ?」

主人「へい?」

694: 2020/07/12(日) 14:12:54.46 ID:yQtVwzGX
ここあ「私、娘さんが中にいるって聞いたんだけど?」

主人「娘さん…?…あ~!はいはい!」

主人「その子なら、そこにいますぜ!」

ここあ「そこ?」キョロキョロ

ここあ「……どこ?」

主人「そこっすよ!ってほらほら漫画読んでないで反応してあげてよ…!」

主人「秋穂ちゃん!」

ここあ「秋穂?」

秋穂「」パタンッ

秋穂「……」

ここあ「うわっ…!?」

秋穂「……なに?」

695: 2020/07/12(日) 14:14:30.41 ID:yQtVwzGX
ここあ「い、いつからそこに…!?」

主人「たぶん入店した時からいたっすよ」

ここあ「……う、うそー」アングリ

秋穂「それで、私に何か用?」

ここあ「あっ!えーと、ラーメン無料って店前にいたおばあちゃんに言われたんだけど」

秋穂「……作ってあげて」

主人「へいっ!」

秋穂「………」スッ

秋穂「………」ペラッ

ここあ「(ありゃりゃ…また漫画読み始めちゃった)」

696: 2020/07/12(日) 14:17:56.41 ID:yQtVwzGX
ギィ…

ここあ「よいしょっと」

秋穂「」ペラッ

ここあ「……なんか、この辺り人いないね!」

秋穂「………」

秋穂「」ジッ

ここあ「え…な、なに?」

秋穂「………」ペラッ

ここあ「……!?(む、無視……!?)」

ここあ「(すっごい冷ややか…!)」

697: 2020/07/12(日) 14:21:01.54 ID:yQtVwzGX
主人「へいっお待ち!」

ドンッ!

ここあ「お~!美味しそう~!」

ここあ「お姉ちゃんを探す景気付けに…!」

ここあ「いっただっきま~す!」

ここあ「ズルズル!」

秋穂「………」ジッ

ここあ「……ん、ん?」

ここあ「にゃに…?」

秋穂「いや…美味しそうに食べるなと思って」

ここあ「うん!美味しいよ!」

698: 2020/07/12(日) 14:25:32.99 ID:yQtVwzGX
秋穂「あなた…」

ここあ「ふぇ?ズルズル」

秋穂「どこかで会ったことある?」

ここあ「……わたひ?にゃいとモグモグおおうズルズルけど……」

秋穂「…ごめんなさい、食べてる最中に話しかけて」

秋穂「食べてからでいいや…」

ここあ「うん、ズルズル」

ここあ「(…なんだ、案外普通に喋るんだ)」

699: 2020/07/12(日) 14:27:36.96 ID:yQtVwzGX
ゴクッ…ゴクッ…

ここあ「ぷはぁ~!美味しかった!」

ここあ「ご馳走様ッ!」

秋穂「……あのさ」

ここあ「ん?あぁ、なんだっけ?」フキフキ

秋穂「さっきお姉ちゃんって言ってたけど、そのお姉ちゃんの名前って…」

ここあ「にこ!矢澤にこだよ」

ここあ「……え?もしかしてっ!お姉ちゃんを知ってるの?」

秋穂「………」

700: 2020/07/12(日) 14:30:38.34 ID:yQtVwzGX
ここあ「あれ?待てよ?」

ここあ「そういえば私もどこかであなたの声を聞いたことある気がぁ…」

ここあ「ん~…と…」

秋穂「………」

ここあ「どこでだっけ……」

ここあ「……ぶそ……武装……あっ!」

秋穂「………」

ここあ「思い出した!あなた、もしかして…」

ここあ「……いや、そんなわけないか~!」

秋穂「……そうだよ」

ここあ「え!?」

秋穂「私だよ……。私が……氷の女王」

701: 2020/07/12(日) 14:33:48.11 ID:yQtVwzGX
ここあ「氷の女王……ほ、ほんとなんだ」

秋穂「……どうする?ラーメン、まだ食べる?」

ここあ「い、いや!もういい、お腹いっぱい!」

秋穂「そうっ…」

秋穂「……おばあちゃんから無料で食べる事を許されたって事はあなたは白って事だ」

秋穂「……でも、そっか……にこおばちゃんの……」

ここあ「……えっ?にこおばちゃん?」

秋穂「いや、なんでもないの……忘れて」

ここあ「……??」

702: 2020/07/12(日) 14:39:39.08 ID:yQtVwzGX
秋穂「……もう帰れば?」

ここあ「(ラーメン食べるって聞いたり、帰れって言ったり忙しい子だな)」

ここあ「ま!お腹も膨れたし、そうしようかなぁ」

主人「えっ!?」

ここあ「えっ、なに!?」

主人「い、いいのかい秋穂ちゃん!?せっかく仲間になれそうな子なのにッ!」

秋穂「………」

主人「チャンポン達が使えない今、戦力補強は急務だろうに…」

ここあ「(チャンポン…?長崎の?)」

秋穂「……いらないよ」

秋穂「……ねぇ」

ここあ「んっ!?なに?」

秋穂「……にこおばちゃんなら凛おばちゃんたちと一緒にいるはずだよ」

ここあ「えっ!?や、やっぱりあなた…お姉ちゃんを知って…!」

ここあ「……お姉ちゃんは今、どこに?」

秋穂「……どこにいるかまでは知らない」

秋穂「そう…生温い…ボノカ一派のことなんて…知らないもん…」

ここあ「……生温い?」

主人「……そうかい」

主人「さっ、食ったなら帰った!帰った!」ドンッ

ここあ「……え、えぇ!ちょ、ちょ~~!」

ガラッ、バタンッ

秋穂「……はぁ」

703: 2020/07/12(日) 14:43:38.84 ID:yQtVwzGX
ガララッ

秋穂「帰った?」

主人「ふぅ…。あぁ、追い出してからもしばらく秋穂ちゃんと話がしたいって喚いてたが、ようやく帰ったよ」

秋穂「……そう」ペラッ

主人「……しかし、氷の女王ねぇ」

主人「誰が言い出したか知らねぇがそんな子じゃないんだがなぁ」

秋穂「……」ペラッ

主人「伯母さんの友達の妹を死地に連れ込むのは抵抗があったんだろう?」

秋穂「……別に……そんなんじゃ……ない」ペラッ

主人「……フッ」

秋穂「」パタンッ

主人「!」

秋穂「アジトに戻る。しばらくここには来れないから、お店も閉めといて」

主人「あいよ」

秋穂「よろしくね」

ガラッ、バタンッ…

主人「……非情になりきれてねぇんだよなぁ。女王さんよ」

704: 2020/07/12(日) 14:47:27.18 ID:yQtVwzGX
バタンッ

老婆「いらなかったかい?」

秋穂「……ごめんなさい、せっかく勧誘してくれたのに」

老婆「にこの妹なら白なのは間違いないし、いい戦力になると思ったんだがねぇ」

秋穂「……白なのは間違いないけど」

老婆「……気が引けたか?」

秋穂「……アジトに戻るね」

老婆「秋穂」

秋穂「なに?」

老婆「……穂乃果は生きてる」

秋穂「…………」

秋穂「……もう、聞き飽きたよ」

秋穂「……生きてるならなんで帰ってこないの?」

老婆「………」

秋穂「いらないよ、同情なんて…」スタスタ

705: 2020/07/12(日) 14:51:45.51 ID:yQtVwzGX
トボトボ

ここあ「はぁ……女王様、もっとお姉ちゃんのこと知ってそうだったのに」

「ここあーー!!」

ここあ「!」

こころ「ここあ!」

ここあ「お姉ちゃん!なんでここに?」

こころ「なんでここにって…あなたを探してたのよっ!」

ここあ「あっ、そっか!ごめんね」

こころ「ほんとにもう…」

こころ「さっ、皆さん心配してくれてるんだから、早く来なさい」

ここあ「はーい」

706: 2020/07/12(日) 15:01:04.24 ID:yQtVwzGX




海未「こころちゃん一人で探しに行かせてよかったんですか?」

曜「やっぱり、私も行きましょうか?」

絵里「大丈夫。こころちゃんももう立派な大人よ」

絵里「……本題に入りましょう」

海未「……はい」

絵里「海未、単刀直入に聞くわ」

絵里「氷の女王は……秋穂ね?」

海未「……おそらく……いえ」

海未「きっと、秋穂です…」

絵里「……そうよね」

707: 2020/07/12(日) 15:19:23.72 ID:yQtVwzGX
絵里「武装蜂起の話は知ってる?」

海未「聞きました、存じています」

絵里「……私には、秋穂が大勢の都民を扇動して、自分や人の命を粗末にするとは……どうしても思えない」

海未「……あの子が変わったのは……全部、私のせいです」

絵里「……海未のせいじゃないわ」

絵里「そう…言うなれば、あの子を取り巻く環境の全てが……変えてしまったのね」

海未「……もし、こんな事がなければ……もっと……もっと普通の愛らしい女の子に育ったはずなんです、秋穂は……」

絵里「そうね……。あの子が見てきた現実は……あまりにも残酷すぎたわ」

絵里「物心がつく前から、彼女は戦い続けてる」

海未「……その緊張の糸はいつ切れてもおかしくありませんでした。ですから……そうならない様に、私がもっと愛を注いでいれば」

絵里「いいえ、海未は充分なほどの愛情を持って育ててきたはずよ。秋穂もそれは理解してるはずだわ」

絵里「……ただ、あの子にとって……穂乃果の穴はなんぴとも埋めることが出来ないのよ……」

海未「………」

708: 2020/07/12(日) 15:24:17.70 ID:yQtVwzGX
絵里「……秋穂に会わせてちょうだい」

海未「……」

絵里「きっと、どこかにアジトがあるはず。海未、あなたなら知ってるんじゃないの?」

海未「……花陽にも聞かれましたが。すみません、私も知らないんです、本当に……」

絵里「…………花陽?」

絵里「花陽がここに来たの…!?」

ガシッ!

海未「…っ!」

海未「え、絵里…?は、はい…先日1人で…」

絵里「ダメ…花陽に秋穂を会わせてはダメ!」

海未「え、え…?」

海未「なぜですか…?」

絵里「………」

709: 2020/07/12(日) 15:33:23.87 ID:yQtVwzGX
絵里「あのパレード…“あいどる”が暗〇されたあの日…私は1人で裏路地に入りこむ花陽を見たの…」

海未「えっ…?あの日、花陽もパレードに来ていたという事ですか?」

絵里「……」コクッ

絵里「“あいどる”は…〇される直前、私に花を見せた」

海未「……花?」

絵里「……思いたくはないけど」

絵里「花陽が……“あいどる”かもしれない」

海未「…花陽が…“あいどる”…?」

710: 2020/07/12(日) 15:41:52.64 ID:yQtVwzGX
絵里「いや、花陽だけじゃない…」

絵里「海未……もしかしたら、穂乃果は生きているかもしれない」

海未「ッ!?」

海未「穂乃果が…生きている?」

絵里「えぇ…ラジオから穂乃果の歌が流れたてきたの。でも、それには今までに聞いた事のないフレーズが入ってた。あれは血の大晦日の前に録音したものじゃない」

海未「そうですか…!なら…穂乃果が生きているなら希望が!」

絵里「いや…おかしいのよ…」

海未「…え?」

絵里「だってありえないじゃない…!」

絵里「あの大爆発の中心にいたのよ穂乃果は!?」

絵里「それなのに、生きてるなんて…あそこから助かる可能性なんて0に近い…いや、0なのよ…?」

海未「……」

絵里「本当に穂乃果が生きているとすれば……穂乃果は……最初から私たち側ではなかったのかもしれないわ」

海未「いえ、そんなはず……」

711: 2020/07/12(日) 15:46:10.94 ID:yQtVwzGX
海未「……ですが、本当にそうだとしたら、“あいどる”は最低でも2人以上は存在するという事に」

絵里「その線は十二分にありえるわ」

絵里「海未、穂乃果から……“あいどる”は複数人いるかもと仄めかされたことはない?」

海未「そんなこと…!」

海未「…ッ!」




海未『つまり穂乃果は“あいどる”は一人ではなく…複数人存在していると言いたいんですか?』

穂乃果『……どうかな、あくまでもなんとなく感じただけだから……私も断言は出来ない』

穂乃果『でも…あの違和感…その線もあるのかな』




海未「………」

絵里「……あるのね」

712: 2020/07/12(日) 15:49:59.27 ID:yQtVwzGX
海未「確かにありました…ありましたが…」

絵里「ことりも行方をくらましてるんじゃないの?」

海未「え?」

絵里「……“あいどる”があの日示した、花の意味」

絵里「私は昔、花陽にあの花を見せてもらったことがある」

絵里「……自ずと答えが導かれるわ」

絵里「……Printempsが……“あいどる”」

曜「……あの、Printempsって確かμ'sのユニットですよね?」

曜「Printempsと花って何か関係があるんですか?」

絵里「……Printempsといえば花のイメージなのよ」

曜「……なんか……言いがかりのようなぁ……海未さんはどう思うんですか?」

海未「絵里、それは…」

713: 2020/07/12(日) 15:53:07.73 ID:yQtVwzGX
海未「…それはありえません」

絵里「……!」

絵里「……なぜ、そう思うの?」

海未「……勘です」

絵里「勘……?」

絵里「勘だなんて…海未らしくないわね」

海未「らしくないのは絵里ですよ」

海未「疑心暗鬼になる気持ちはわかります…。ですが、ありえません」

海未「はっきり言います。μ'sに“あいどる”はいません!」

714: 2020/07/12(日) 15:56:56.20 ID:yQtVwzGX
絵里「……どうして、そう言い切れるの?」

海未「……恥ずかしながら私も昔、ことりは“あいどる”なのでは……?と、疑った事があります」

絵里「………」

海未「ですが……私はあの時、確信したんです」

絵里「……あの時?」

海未「はい、2019年……“あいどる”を止めるために、μ'sが再集結したあの時」

海未「誰1人として私たちを陥れようと……嵌めようと考えているメンバーはいませんでした」

海未「…目を見ればわかるんです」

海未「それに…私たちには切っても切れない縁がある…」

海未「絵里も本当は分かっているでしょう?」

絵里「……ごめんなさい」

絵里「早計だった。私が間違ってたわ…」

715: 2020/07/12(日) 16:03:41.12 ID:yQtVwzGX
海未「……さっき、ことりの行方がわからないと絵里は言いましたが」

絵里「えぇ…」

海未「ことりは…理事長と共に海外へと発ちました」

海未「……絵里は血の大晦日のあと、すぐに“あいどる”から追われる身となったので……伝えそびれていましたが……」

絵里「なぜ、ことりは海外に…?」

海未「PTSD…ストレス障害の疑いがあると聞きましたが…」

絵里「……そうだったのね」

絵里「……仕方ないわ。そうなるのが……普通なのよ」

海未「……理事長がついているので、無事だとは思いますが……」

716: 2020/07/12(日) 16:07:51.24 ID:yQtVwzGX
ガラッ

絵里「!」

こころ「皆さん…お騒がせさせてしまい申し訳ありません!無事、見つかりました!」

ここあ「えへへ、すみません!迷っちゃってて…!」

海未「ここあちゃん…。ほっ…無事で何よりです」

絵里「変な人に声掛けられなかった?大丈夫だった?」

ここあ「大丈夫!あ…でも、ラーメン食べた!」

海未「ラーメン?」

ここあ「あっ!そうだっ!そんなことより、あのね!」

絵里「?…どうしたの?」

ここあ「私、氷の女王に会った!」

絵里「!?」

曜「う、うそ!?

海未「……えっ?」

717: 2020/07/12(日) 16:21:24.03 ID:yQtVwzGX
絵里「ここあちゃん…それは本当?」

ここあ「うん、自分で言ってたもん。氷の女王だって」

海未「……外見はどんな風だったか、覚えていますか?」

ここあ「え~、なんて言えばいいんだろ」

海未「前髪がパッツンだったとか…」

ここあ「それはわかんないなぁ…キャップ被ってたし」

ここあ「でも、だいぶイメージとは違ったよ?」

ここあ「思ってたより幼くて、割と可愛らしい顔つきで、身長は155ぐらいかな?」

絵里「……たぶん、間違いないわね」

海未「はい、秋穂です……」

絵里「ここあちゃん、どこで氷の女王に会ったの?」

ここあ「さっき言ったラーメン屋さんだよ?」

絵里「彼女はまだいるかしら?」

ここあ「えっ…どうだろう、私、先に出たからなぁ。というより追い出されたから…」

海未「……ここあちゃん、そこへ案内してもらえますか?」

719: 2020/07/12(日) 23:34:59.20 ID:yQtVwzGX
ガラッ

主人「ん?すみません!今日はもう閉店…」

主人「…!」

絵里「」コツ…コツ…

絵里「氷の女王はどこ?」

主人「……なんのことですかねぇ?」

バンッ!

絵里「とぼけないでっ!私たちは今すぐ…あの子に会わないといけないの!」

海未「お願いします!秋穂の居場所を教えてください!」

主人「……園田海未に絢瀬絵里。秋穂ちゃんに会って……何をする気で?」

絵里「決まってるでしょ。説得するのよ」

主人「説得?本当に彼女はそれを望んでいるのかい?」

海未「えっ…?」

720: 2020/07/12(日) 23:37:23.76 ID:yQtVwzGX
主人「いつまでも保護者面するのはやめた方がいいですぜ」

主人「彼女のためにならん」

海未「それは……そうかもしれませんが……」

絵里「……いいえ、全然そんな事ないわ」

海未「…!」

絵里「いい?私たちはあの子の行く末を見守る義務があるの」

絵里「あの子に傷一つでもつけさせてしまったら、穂乃果に顔を合わせられないわ」

海未「絵里…」

絵里「教えなさい、秋穂のアジトを」

主人「……知らねぇな」

絵里「…っ、早く言いなさい!」

721: 2020/07/12(日) 23:41:36.05 ID:yQtVwzGX
主人「勘違いしないでくれよ。言わないんじゃねぇ、知らねぇんだ」

絵里「……なんですって?」

主人「あくまで俺は協力者だ。それ以上でも以下でもねぇ」

主人「彼女は用心深い。俺もアジトの場所は教えられてねぇんだ。」

絵里「……なら、何か他に秋穂について知っていることはないの?」

主人「ねぇな…」

海未「……ッ」

主人「おっと、言っとくがここを張り込んでも無駄ですぜ、もう彼女は来ないだろうからね」

絵里「……本当でしょうね?」

主人「嘘をついてるように見えますかい?」

絵里「…………」

海未「…………」

絵里「……くそっ」クルッ

海未「絵里……」

主人「……またのお越しを」

722: 2020/07/12(日) 23:47:05.34 ID:yQtVwzGX
ガララッ、バタンッ

曜「!」

曜「絵里さん!どうでした?」

絵里「……」フリフリ

曜「そうですか…」

海未「……秋穂、いったいどこに」

絵里「………」

絵里「ここあちゃん、氷の女王は何か言ってなかった?」

ここあ「えっ…うーん…」

ここあ「特になにもないと思うけど…」

絵里「……そう」

こころ「本当に?何かないの?些細なことだけど、会話の中で気になったこととか」

ここあ「え~、気になったこと…?」

ここあ「うーん、気になったことぉ…」

ここあ「……あっ」

絵里「何か思い出したの?」

ここあ「長崎ちゃんぽん…!」

海未「長崎ちゃんぽん…?」

723: 2020/07/12(日) 23:53:08.91 ID:yQtVwzGX
ここあ「そうだそうだ!ちゃんぽん!」

絵里「ちゃんぽん…?」

ここあ「氷の女王じゃないけど、おじさんが言ってたんだよね……」

ここあ「なんて言ってたっけ……確か、チャンポン達が使えない今……戦力補強はうんぬんかんぬん……とか言ってたような……」

絵里「チャンポン……戦力補強……」

絵里「……!」

絵里「お手柄よ!ここあちゃんっ!」ガシッ

ここあ「へ?」

海未「絵里…?」

絵里「タイマフィアと秋穂に接点があるとすれば……いける!秋穂に会えるかもしれないわ!」

海未「ほ、本当ですか?」

絵里「えぇ。まったく……何が秋穂について知ってることはもうないよ……大嘘つきじゃない、あの店主」

絵里「けど、ハラショー……。なんとかなりそうね……!」

724: 2020/07/13(月) 00:00:44.02 ID:9N4Zt7qs




公野「ふふふふふ~ん♪」ジュー

ガララッ

公野「ん!」

公野「いらっしゃ~い!」

ハターキ「は~、お腹減った!」

公野「あら、先生!お一人?」

ハターキ「いいえ?あれ?何をしてるの2人とも、早く入りなさいよ」

ことり「は、はい…」

公野「…!こ、ことり…!」

ことり「えっ…あ、神様…?」

ハターキ「あら?2人とも、お知り合い?」

ことり「はい!昔に色々とお世話になって…」

ハターキ「そう…。って、なにしてるの!梨子ちゃんも入りなさいよ」

梨子「あっ、はい…ありがとうございます」

公野「……おやおや~。先生、可愛いお供だね」

ハターキ「そうでしょ?使える子たちなの」

725: 2020/07/13(月) 00:10:40.76 ID:9N4Zt7qs
ジュー

ハターキ「」モグモグッ

ことり「……神様は……こんなところで何を?」

公野「ん~…?見ての通りだよ。お店構えてんの」

公野「こういうの、ちょっと興味あってさ」

ハターキ「ももとカワ2本ずーつ!」

公野「は~い」

梨子「先生、食べ過ぎじゃないですか…?」

ハターキ「大丈夫大丈夫!あなた達も何か食べなさい」

梨子「は、はい…」

ハターキ「そうだ。GODとことりちゃんは顔見知りみたいだけど梨子ちゃんは初対面なんでしょ?」

ハターキ「ご挨拶しときなさい」

梨子「あっ…はい…私、桜内…」

公野「桜内梨子ちゃんでしょ?知ってるよ」

梨子「え?な、なんで…」

ことり「びっくりしちゃうよね、ほんとに…。神様は初対面でもわかるんだ…人の名前とか性格が…」

ことり「私たちも昔、すごく驚いたもん…」

梨子「……す、すごいですね」

公野「なはは!まーね!」

726: 2020/07/13(月) 00:15:06.71 ID:9N4Zt7qs
ことり「……神様、すごく機嫌いいですね」

公野「え?……あー、まぁ……機嫌いいっていうより、テンションおかしいのかもね」

ジュー

公野「世界のトップがあんなんじゃ…もう先は長くないしね…」

ことり「………」

公野「名前や性格当てるなんて特技、今じゃなんの意味もないよ」

公野「……それよか」

公野「ことりは今まで何してたの?」

ことり「えっ…わ、私ですかぁ?」

ことり「私は……」

727: 2020/07/13(月) 00:22:09.69 ID:9N4Zt7qs
ことり「……ずっと、逃げてたんです」

ことり「私は…穂乃果ちゃんと海未ちゃんに支えられて生きてきたから…」

ことり「穂乃果ちゃんを失ったあの時に……現実から目を背けて、海外へ逃げたんです……」

ことり「全部、みんなに任せて……秋穂ちゃんや海未ちゃんの気持ちなんて考えずに……自分だけ逃げたんですっ……!」

ハターキ「……モグモグ」

公野「……ま、別に普通だよ」

公野「他の子たちのメンタルがおかしいんだよ」

ことり「……でも」

公野「なんにしたって、もう過ぎたことよ。気にしなさんな」

ことり「神様……」

ハターキ「それに、今となってはそう言えても、当時は言葉では表せないほどのストレスを抱えてたんだし、仕方がないわ」

ことり「先生……」

ことり「……ありがとうございますっ」

728: 2020/07/13(月) 00:35:30.63 ID:9N4Zt7qs
公野「で、梨子はなんで先生と?」

梨子「私は…昔、友達と一緒にとある件の情報収集をしていた時に急に拉致されて…」

公野「ダイヤと花丸とで穂乃果の情報を集めてたんでしょ?」

梨子「そ、そうです…よく知ってますね…」

梨子「それで……拉致されて……でも、ダイヤさんと花丸ちゃんがなんとか私だけでも……って、逃がしてくれて……」

梨子「途方に暮れていた時に“あいどる”の追っ手から逃げていたことりさんと出会ったんです…」

ことり「それから、梨子ちゃんと一緒に逃亡生活を続けて…もう限界……って、なった時に先生が拾ってくれたんです」

梨子「先生はいち早く“あいどる”が悪だと気づいていたんです」

公野「へぇ…」

729: 2020/07/13(月) 00:40:32.53 ID:9N4Zt7qs
公野「しかし、先生はよく“あいどる”に取り込まれませんでしたね」

ハターキ「だって見るからに胡散臭いでしょ」

ことり「そうですけど、実際問題…“あいどる”に心酔する人はたくさんいますよ?」

ハターキ「人間、不安な事が多いんだよ…何かに支えられていないと、酔っ払ってないと…やってられないのよ」

梨子「……つまり、先生は何かに酔っ払ってると?」

ハターキ「え?うん、梨子ちゃんと一緒」

梨子「私と一緒…?」

梨子「あっ…音楽…ですか?」

公野「なるほどねぇ…そう考えてるにもかかわらず、“あいどる”に勘付かれずに上手く取り入ってるって…」

公野「世渡り上手ですね、先生」

ハターキ「そうでしょ?という事で!酔っ払い繋がりでお酒飲んでもいいかな?」

ことり&梨子「ダメですっ!」

ハターキ「……ね?」

公野「ね…?とは…」

730: 2020/07/13(月) 00:45:09.02 ID:9N4Zt7qs
ハターキ「梨子ちゃんは作曲センスに長けてるし、ことりちゃんもデザイナーとしての実績がある」

ハターキ「有能な子たちなんだけど…ちょっと怖いところがあってねぇ…」

梨子「こわっ…!別に怖くなんて!先生のためを思って言ってるんです!」

公野「怖いですか?少なくとも、ことりは優しくないですか?」

ハターキ「そうなのよ。ことりちゃんは優しい方なんだけど…」

ハターキ「」チラッ

梨子「~~っ!なんで私を見るんですか~!」

ハターキ「だって…。ね~!」

ことり「あ、あははは…」

公野「ま、この後もお仕事があるんでしょ?ここはマネージャー達の言う事を聞いといた方がいいんじゃないですか?」

ハターキ「んー…そうね、仕方ないか…」

731: 2020/07/13(月) 00:52:41.33 ID:9N4Zt7qs
公野「ま、私も…先生にはお世話になってるから、あんまり強くは言えないんだけど」

ことり「お世話…?というと…?」

公野「歌詞ノートの横流しとか…ま、いろいろ」

公野「そんな事よりことり、あなたこれからどうするの?」

ことり「えっ…?」

公野「先生に付き添ってるだけでいいの?」

公野「世界の終わりを…このまま何もせずに待ってるだけでいいの?」

ことり「……私は」

公野「μ'sにしか、あいつは止められない」

梨子「……ことりさんにはトラウマがあります、ですから……」

ハターキ「トラウマなんて……そんなのみんなあるよ」

梨子「!」

ハターキ「みんなあるけど…どこかで割り切らないと前に進めないのよ」

梨子「……はい」

732: 2020/07/13(月) 00:56:17.69 ID:9N4Zt7qs
ことり「……神様はどうしたらいいと思いますか?」

公野「え…私?」

公野「……いいの?私に聞いて?」

ことり「え…?」

公野「……昔からいたでしょ」

公野「あんたの近くに、正しい答えを持った子が」

ことり「………」

ことり「海未ちゃんやみんなにばっかり頼っていられない……私も何かやらないと……って」

ことり「でも、私には……」

公野「……ことり、あんたの幼馴染は世界中から極悪人と呼ばれながら……みんなを守ろうとした」

ことり「……穂乃果ちゃん」

公野「あの子のやる事に付き合って、後悔した事ある?」

ことり「……ない。ないですっ!」

公野「……だよね」

733: 2020/07/13(月) 00:57:56.16 ID:9N4Zt7qs
公野「先生、ことりをお借りしてもいいですか?」

ハターキ「え?……えぇ、まぁ……仕方ないわね」

ハターキ「正直、ことりちゃんがいなくなると苦しいけど、そのぶん梨子ちゃんに頑張ってもらいましょう」

梨子「え…?」

ハターキ「いいわよね?」

梨子「は、はい!頑張ります…!」

公野「梨子は……近いうちに仲間に会えると思う」

梨子「……その前にまず、ダイヤさんと花丸ちゃんを……」

公野「……その2人も含めて会えるって、近々」

梨子「え…ほ、本当ですか?」

公野「うむ!私を信じなさい!」

735: 2020/07/13(月) 01:09:10.80 ID:9N4Zt7qs
ことり「あの…神様、私たちはこれから何をするんですか…?」

公野「“あいどる”を討つ!」

ことり「………」

公野「……ま、あんまり乗り気にはなれないよね」

ことり「いえ、そんな…」

公野「私は昔みたいにことりに笑って欲しいんだけどな」

ことり「……私にとって、穂乃果ちゃんは太陽みたいな存在だったんです」

公野「……太陽が無くなったら人間は生きれないもんね」

公野「そうだなぁ……うん、仕方ない」

公野「あのねことり」

ことり「なんですか…?」

公野「確証が持ててないから、言うか言わないか……迷ってたんだけど」

ことり「はい…」

公野「ことりのモチベーションを上げるために言う」

公野「……あのね」

ことり「は、はい…」

公野「穂乃果は」

743: 2020/07/14(火) 12:12:26.72 ID:elybUKfX




スタスタ

曜「絵里さん、タイ語まで喋れるなんてすごいですね」

絵里「軽くしかわからないけどね」

下っ端「」ピタッ

下っ端「ボスはここだ」

絵里「案内ありがとう。曜、行くわよ」

曜「私も入っていいんですか?」

絵里「別に入るくらいならいいわよ。行きましょ」

曜「なら…失礼します」

ガチャ

744: 2020/07/14(火) 12:14:31.14 ID:elybUKfX
絵里「チャンポン」

チャンポン「……ゼェゼェ」

チャンポン「……エリーチカ……か」

絵里「……老いたわね、チャンポン」

チャンポン「お前は……牙が抜けたな」

絵里「……えぇ、そうかもね」

チャンポン「かつては弾丸を当てることが出来なかった……あのエリーチカも……ハァハァ」

チャンポン「今では……ただの娘に成り下がったか……」

チャンポン「そんなお前では……ハァハァ……世界は救えんな……」

絵里「………」

745: 2020/07/14(火) 12:16:28.92 ID:elybUKfX
チャンポン「しかし……親友に再開した気分だよ……」

絵里「……私はそんな呑気なこと思えないわ」

チャンポン「ふふっ……釣れん……やつだな」

絵里「チャンポン、時間がないの」

チャンポン「……ある意味、私にも時間がない……」

チャンポン「もういつ…迎えが来ても…おかしくないのでね…ゼェゼェ」

チャンポン「だからこそ……お前に頼みたいことがある、エリーチカ……」

絵里「頼みたいこと?」

チャンポン「ハァハァ…あぁ…」

746: 2020/07/14(火) 12:21:02.19 ID:elybUKfX
チャンポン「私が……とある女の子のファンでね……」

チャンポン「昔のお前と同じだよ……。エリーチカ……」

チャンポン「肝が……据わった少女でね……」

絵里「………」

チャンポン「……聞けば彼女は……テ口りストホノカの姪っ子らしいじゃないか……」

絵里「………」

チャンポン「エリーチカ……お前が……止めてやれ……彼女……何をしでかすか……わからないぞ」

絵里「……チャンポン、彼女のアジトの場所を教えて」

チャンポン「……彼女は……アジトを転々としている」

チャンポン「だが……おそらく、今は……ここに……いるはずだ……」サッ

絵里「」スッ

747: 2020/07/14(火) 12:24:27.43 ID:elybUKfX
絵里「ここからそう遠くないわね」

チャンポン「……彼女は今、氷の女王と呼ばれている」

絵里「……らしいわね」

チャンポン「誰か……止めてやれ……今の彼女は……人の命はもちろん、自分の命さえ投げ出すことも厭わない……」

絵里「……何が彼女をそこまで変えてしまったの」

チャンポン「……心優しい少女だった」

チャンポン「ただ……変わらずにはいられなかったのだろう……強大な敵に立ち向かうためには……甘えた心は捨てなければいけなかったんだろう……」

絵里「………」

チャンポン「頼んだぞ……エリー……チ……カ……」

チャンポン「…」

チャンポン「」

絵里「……任せて」

748: 2020/07/14(火) 12:29:09.00 ID:elybUKfX
タッタッタッ

曜「絵里さん!これからどうするんですか?」

絵里「私は氷の女王のところに行くわ」

曜「なら、私も一緒に…」

絵里「いいえ、そこには私1人で行く」

絵里「曜、あなたは神田明神に行って希に海未と合流するよう言っておいて」

曜「わ、わかりました…!」

絵里「……お願いね」ダダッ

曜「」ピタッ

曜「絵里さーん!気をつけてくださいねー!」フリフリッ

絵里「えぇ!」

749: 2020/07/14(火) 12:33:11.35 ID:elybUKfX
ウーー!!ウーー!!

男A「侵入者!侵入者だ!」

男B「侵入者を取り押さえ !」

男C「うおおおおおぉ!!!」

絵里「」サッ

男C「うおっ!」ドサッ

絵里「……なによこれ。素敵な歓迎してくれるじゃない」

絵里「教えなさい!秋穂は……氷の女王はどこ?」

男D「黙れッ!」

男A「動くなッ!」

スチャッ スチャッ スチャッ スチャッ

絵里「………」

男A「動くなよ。そのまま手を上げろ」

絵里「……」サッ

750: 2020/07/14(火) 12:37:09.65 ID:elybUKfX
男A「名を名乗れ」

絵里「……氷の女王に、絵里が来たと伝えなさい」

男A「あ…?」

ザワッ…

男B「絵里……?」

男C「絵里ってあの…絢瀬絵里か…?」

ザワザワッ…

男A「……ッ!黙れッ!嘘をつくな!」

男E「そうだ……そうだ!デタラメを言うな!」

絵里「……はぁ。物分かりの悪い子たち……ね!」ダッ!

男I「ッ!逃げた!」

男A「撃てぇ!!」

絵里「……っ、厄介ね」

「待って!!!」

男A「!?」クルッ

絵里「……この声」

ザッ…

秋穂「………」

絵里「はぁはぁ……秋穂……」

751: 2020/07/14(火) 12:40:56.72 ID:elybUKfX
~~~~~~~~~~~

男F「弾丸はそっちに置いとけ!」

男G「火薬はこんなもんか?」

ガヤガヤ…


絵里「……いっぱしのテロ集団ね」

秋穂「……」

絵里「……秋穂、あなた何をやってるの?」

秋穂「……」

絵里「……どこで武器を調達したの?」

秋穂「……小原家とで」

絵里「……まさかとは思っていたけど、本当にあなたがこんな事をするなんて……思ってもみなかったわ……」

秋穂「絵里おばさんこそ……生きてるとは思わなかった」

752: 2020/07/14(火) 12:44:04.83 ID:elybUKfX
絵里「えぇ、なんとか……東京に帰って来たのよ」

秋穂「あの大きな壁を越えて、東京に侵入した人がいるって……噂では聞いてたけど……絵里おばさんだったんだ」

絵里「……海未から聞いたわ。なぜ、花陽の一派から離れたの?」

秋穂「花陽おばさん達のやってる事は生温い」

秋穂「……不当に逮捕された人たちを1人1人逃がしたり、食力不足の街に物資を届けたり……」

秋穂「なんの意味があるの…それ?」

絵里「……私には、間違った事とは思えないけど」

秋穂「じゃあ聞くけど、絵里おばさん…それで何か変わるの…?世界は救える…?」

絵里「……そういう地道な活動が」

秋穂「助けた連中とその家族のお寒い再会劇なんていらない。見たくもない」

753: 2020/07/14(火) 12:49:06.10 ID:elybUKfX
絵里「あなたが穂乃果や雪穂ちゃんと会えないからって……そんなの、ただの妬みでしょ?」

秋穂「……っ!」

秋穂「……なにそれ?」

秋穂「なんなの……」ワナワナ

バンッ!

秋穂「喧嘩売りに来たなら帰ってよ!!」

絵里「……あなたが何をしようが、それはあなたの勝手」

絵里「ただ、そうやって人を蔑むのはよくないわ」

絵里「……自分の価値を落とすわよ」

秋穂「……だから、あんな御涙頂戴はもう見飽きたんだって」

秋穂「私には……メソメソしてる暇なんかないの」

絵里「………」

754: 2020/07/14(火) 12:52:01.99 ID:elybUKfX
絵里「……秋穂、本当に武装蜂起する気?」

秋穂「当たり前だよ。もう……止められない」

絵里「……なぜ、8月3日なの?」

秋穂「………」

絵里「………」

秋穂「……誕生日」

秋穂「穂乃果おばちゃんの……誕生日」

絵里「……そうでしょうね。でも、そんな事を穂乃果が望んでると思う?」

秋穂「絵里おばさん、説得しにきたの?」

秋穂「……そんなのいらない、時間の無駄だから帰って」

755: 2020/07/14(火) 12:55:52.41 ID:elybUKfX
絵里「……なぜもっと命を大切にしないの?」

秋穂「……我慢ならないじゃない」

秋穂「絵里おばさんも知ってるでしょ?2035年のあの“あいどる”の復活劇のあと…世界各国にウィルスがばら撒かれた…」

秋穂「その結果、世界で数十億という人が亡くなった……」

秋穂「……家族や恋人や友達を失った人たちが私の元に集まった」

秋穂「彼らは“あいどる”を倒すことだけを考えて生きてきたの」

秋穂「……そんな彼らを……親衛隊や“あいどる”は虫ケラのように〇した」

秋穂「……みんな、私をかばって」

秋穂「……私だけが生き残るなんて不公平。そうでしょ?」

絵里「………」

756: 2020/07/14(火) 12:59:09.92 ID:elybUKfX
秋穂「……中国マフィアは全滅。タイマフィアもチャンポンを残してほぼ壊滅……。みんな、私に協力して……死んだ」

秋穂「愛民党の本部を襲撃して……〇されたの」

絵里「……チャンポンも、ついさっき死んだわ」

秋穂「……!」

秋穂「……そう」

絵里「秋穂…。言っておくけど、本当にあなたが8月3日に武装蜂起を決行したら、間違いなく彼らの二の舞いになるわ」

秋穂「………」

絵里「………計画は中止しなさい」

757: 2020/07/14(火) 13:04:07.72 ID:elybUKfX
絵里「あなたの仲間は……あなたを慕って、信じて、一生懸命やってくれている」

絵里「そんな子達が…みんな死ぬのよ?」

秋穂「……合意の上」

絵里「……ッッ。いい加減にしなさいッ!」

秋穂「……っ、なんなの!?絵里おばさんに私の何がわかるっていうの!?」

絵里「……わかっているからこそ、なぜあなたがこんな行動に出るのか……理解出来ない」

秋穂「……うそ。なんにもわかってない。みんな、なにも……」

秋穂「あの小さくて愛らしかった高坂秋穂はもういない……どこにもいない」

秋穂「………私が愛した人はみんな死んだ」

絵里「………」

秋穂「」ツー

秋穂「!……グスッ」

秋穂「…っ」ゴシゴシッ

秋穂「……私はもう泣かない」

758: 2020/07/14(火) 13:06:44.14 ID:elybUKfX
絵里「……本当にそんな事をして、あなたを愛した人たちが喜ぶと思っているの?」

秋穂「……これはケジメなの」

絵里「……秋穂、もう一度言うわ。すぐに計画を中止しなさい。今すぐよ」

絵里「あなたがリーダーなら、みんなわかってくれるわ」

秋穂「……話、聞いてたでしょ?私がやらないと……」

絵里「絶対に死ぬわよ?」

秋穂「……知ってる、そんなの覚悟の上」

絵里「………」

秋穂「………」ブルブル…

絵里「……本当に決心がついてるの?」

秋穂「………」

絵里「……そうよね」

759: 2020/07/14(火) 13:09:49.01 ID:elybUKfX
絵里「……昔、命が危ないと思ったら、一目散に逃げろと言った子がいるわ」

秋穂「………」

絵里「……そう、あなたが大好きだった」

秋穂「穂乃果おばちゃんは死んだんだよ?」

絵里「……いえ、あの子は」

秋穂「やめて!もうたくさん…!」

絵里「………」

秋穂「そんな慰めは腐るほど聞いてきた!」

秋穂「……だって、本当に生きてるなら……私との約束を破ってるってことじゃん……」

絵里「……約束?」

秋穂「……絶対、帰ってくるって」

秋穂「穂乃果おばちゃんが嘘つくわけないもん……」

秋穂「……死んだの。穂乃果おばちゃんは……あの時、あの爆発で」

秋穂「……死んだから、もう帰ってこないの」

絵里「……っ」

760: 2020/07/14(火) 13:18:53.93 ID:elybUKfX
絵里「約束を破ったと決めつけるのは……まだ早いわ」

秋穂「………」

絵里「……秋穂、生きてるかもしれないというのは本当なの」

絵里「ラジオから穂乃果の曲が流れたの」

絵里「……あなたの音楽プレーヤーに入ってる、穂乃果の曲とは違うバージョンよ」

秋穂「……あり得ない。穂乃果おばちゃんが最後に歌った曲はこのプレーヤーの中のもの」

秋穂「これとバージョンが違うなんて事は絶対ない」

秋穂「……もし、本当にそうだとして。じゃあそれはいったい、いつ録音されたものだって言うの?」

絵里「血の大晦日の後よ」

秋穂「……もういい。そんな非現実的な話聞きたくない」

761: 2020/07/14(火) 13:22:19.07 ID:elybUKfX
絵里「……穂乃果が生きていて、今のあなたを見たら、なんて言うと思う?」

秋穂「………」

絵里「今、自分のやっている事を穂乃果に…胸を張って話せる?」

秋穂「……穂乃果おばちゃんなら、わかってくれる」

絵里「本当にそう思うの?」

絵里「誰よりも仲間思いなあの子が…仲間もろとも死のうとしているあなたに、理解を示してくれると思うの?」

秋穂「………」

絵里「あの子が生きていたら…」

秋穂「……ッッ!」

秋穂「生きていたら生きていたらってうるさいよ!!もうッッ!!!」

絵里「……秋穂」

秋穂「はぁはぁ……生きていたら、来てくれる」

秋穂「……きっと、こんな状況なんてひっくり返して……私を助けてくれる」

762: 2020/07/14(火) 13:25:32.48 ID:elybUKfX
絵里「……きっと来てくれる」

秋穂「……まだ言うの?」

秋穂「はは…はははは…」

秋穂「……ッッ。来てくれるわけないじゃんッ!!」

秋穂「だって死んだんだもん!!!」

絵里「……秋穂」

秋穂「下手な希望持たせないで……!!」

絵里「………」

秋穂「………」

秋穂「………ごめんなさい」

秋穂「この絶望的な状況を打破出来るのは私じゃないんだよね……わかってるよ、そんなこと」

絵里「………(ここまで……この子を追い詰めてしまっていたのね……)」

絵里「………誰か」

絵里「……誰かラジオを待っていない!?」

「え……?」

秋穂「……絵里おばさん?」

763: 2020/07/14(火) 13:29:08.12 ID:elybUKfX
絵里「ラジオを誰か…!」

秋穂「何言ってるの絵里おばさん…?やめて!」

ザワザワッ…

秋穂「彼らは私の命令しか聞かない!」

男J「あの…」

絵里「!」

男J「この前、ガラクタの中から拾ってきたのならあるんですけど…」

絵里「貸して」

男J「は、はぁ…」

パシッ

絵里「………」

ピーギュルギュル…

秋穂「……何も放送なんかされてないよ」

絵里「黙ってなさいッ!!!」

秋穂「」ビクッ

764: 2020/07/14(火) 13:33:20.15 ID:elybUKfX
絵里「お願い穂乃果……秋穂を救ってあげて……」

ピーギュルギュル…

秋穂「……っ、あの人は死んだ!もういいから!」

絵里「………」

ピーギュルギュル

絵里「……電波が届かないのね」

絵里「どこか外に通じるところはない?」

男K「え…む、向こうのスペース…外に出れる場所がありますけど…」

絵里「…ッ!」ダッ

秋穂「まっ…待って絵里おばさん!外に出たら奴らがいるかもしれない!捕まっちゃう!」

絵里「」ダダダッ

秋穂「~~っ!」

秋穂「…!」ダダッ

765: 2020/07/14(火) 13:38:52.16 ID:elybUKfX
絵里「」ピタッ

絵里「ここなら…!」

バッ!

絵里「お願い穂乃果…!歌って…!」

絵里「穂乃果っっ!!」

・・・ピーギュルギュル……

絵里「………」

絵里「……ッ」ガクッ

秋穂「……」スタスタ

秋穂「……ありがとう、絵里おばさん……。でも、もういいよ」

男L「あの…」

男M「秋穂さん…」

秋穂「なに…?」

男N「なんか……聞こえないですか?」

秋穂「……え?」

絵里「……!」

ジー…

秋穂「……!?」

ジー…

セカイジュウガ…

秋穂「……!」

男達「ザワッザワッ…」

766: 2020/07/14(火) 13:43:26.77 ID:elybUKfX
「…世界中が家路を急ぐ」

絵里「……やった」

秋穂「これは……穂乃果おばちゃんの……?」

「そんな毎日が君の周りで」

「ずっとずっと続きますように…」

絵里「……そうよ。歌ってあげて、穂乃果」

「グータラ~スーダララ~…」

「グータラ~スーダララ~」

秋穂「……っ!」

秋穂「……なに……これ」

秋穂「グータラ…スーダラ…?」

秋穂「こんなフレーズ……聴いたことない……」

秋穂「絵里……おばさん、これって……?」

絵里「………」コクッ

秋穂「うそ……」

秋穂「穂乃果おばちゃんが………生きてる………?」

772: 2020/07/14(火) 23:51:43.60 ID:elybUKfX




千歌「ふわぁ…」

巡査「高海巡査長!」

千歌「ん……あぁ……巡査くん、おはよう~……」

巡査「いえ、ただいま昼であります!そして交代の時間であります!」

千歌「ん……もう、そんな時間かぁ……」

巡査「異常はなかったでありますか!?」

千歌「うん。なにもなかったから寝ちゃったんだよね…」

巡査「この北門検問所の警備を甘くみてはいけません!いつぞや北からテ口りストが来るか…!」

千歌「あはは…来るかなぁ…」

773: 2020/07/14(火) 23:55:18.77 ID:elybUKfX
千歌「……私ね、ここに来て2年経つけど」

千歌「向こうから人が来たのを見たことがないし、聞いたこともないよ」

巡査「北の人間は死に絶えたのでしょうか?」

千歌「……どうなのかな」

千歌「……素敵な所だったんだけどなぁ」

おじさん「千歌ちゃん」

千歌「あっ、おじさん!」

千歌「どうしたんですか?こんなところまで?」

おじさん「近くまで来たから、差し入れだ」

千歌「わ~!ありがとうございます!あとでいただきますね!」

千歌「今日も誰も来なくて、ほんとヒマなお仕事ですよ~」

おじさん「いや。なんか来たよ」

千歌「え?」


ブルルンーン…


千歌「……うそ!」

774: 2020/07/14(火) 23:59:22.33 ID:gQYOfkVS
千歌「は、初めて向こうから……北から人が来た……」

おじさん「え?」

千歌「あっ…い、今のはちがっ…!って、じゃなくて!」

タタタッ!

千歌「あ、あの止まってください!」

女性シンガー「!」

キィッ…

女性シンガー「ふぅ…」

千歌「……あ、あの」

女性シンガー「ん?」

千歌「え、えーっと……」

女性シンガー「あのさあのさ!ここって東京?」

千歌「え……あ、はい東京だす」

女性シンガー「だす?」

千歌「あっ…!す、すみません…初めてそっちから人が来て…ちょっと動揺しちゃって…!」

女性シンガー「……そっか」

女性シンガー「というか……。やーーーっと!東京だぁ~~!」

女性シンガー「1000キロだよ!?1000キロ!!」

775: 2020/07/15(水) 00:04:23.17 ID:8cFetg2y
おじさん「しかしすげぇな。ホンダのスーパーカブだ…。今時こんなのを乗ってるやつがいるとは」

千歌「す、スーパーカップ?」

おじさん「どこでこれを?」

女性シンガー「これですか?拾ったんです」

千歌「拾ったって…」

女性シンガー「うん。移動するためにね」

女性シンガー「…というかさ」

千歌「は、はい?」

女性シンガー「ここ、あんまり東京って感じしないね……。集落って感じ……」

千歌「集落……確かにそうかもしれないですね」

千歌「……2035年、“あいどる”はウィルスの蔓延を阻止するため……無差別に都民を放り出したんです」

女性シンガー「放り出したって…どういうこと?」

千歌「東京の周りに壁を築いて、隔離政策をとったんです」

女性シンガー「……ひどい」

千歌「ここは壁の向こう側に行けない人たちのコミュニティ。だから…ある意味、その通りなんです」

776: 2020/07/15(水) 00:07:32.96 ID:8cFetg2y
~~~~~~~~~~~

スタスタ

女性シンガー「いや~、ごめんね…。繁華街まで案内してだなんて」

千歌「いやいや!ちょうど私も仕事終わりだったので!全然、大丈夫です!」

穂乃果「そっか。優しいね」

千歌「…………」

千歌「……あの」

女性シンガー「ん?」

千歌「どこかで……お会いしたことありますか?」

女性シンガー「えっ…?私?」

千歌「はい…どこかで」

女性シンガー「あ~…そr」

おじさん「あれを見てみな」

女性シンガー「へ?」

777: 2020/07/15(水) 00:30:05.18 ID:8cFetg2y
女性シンガー「なんですかあれ?……畑?」

千歌「……墓地です」

女性シンガー「墓地……?」

おじさん「無断で壁の向こうに行こうとしたやつはな…みんな例外なく〇されるんだよ」

女性シンガー「……なるほどね」

千歌「ただ……この前、壁を超えて向こうに行った人がいたって……ん?」

ジロッ…

コソコソ…

ダレ…ダレ…?

女性シンガー「なんか……私、注目浴びてる?」

千歌「初めて見る人なので、みんなちょっと警戒心があるみたいですね…」

おじさん「初めて見るってより…ナリが悪いだろ」

女性シンガー「ナリ?」

おじさん「格好だよ。帽子被ってサングラスかけてギター背負ってるやつはそりゃあ不気味だ」

女性シンガー「そ、そうかなぁ」

おじさん「そうだ、怖い」

女性シンガー「うーむ……。よし!なら挨拶だ!」

千歌「え?」

778: 2020/07/15(水) 00:35:06.68 ID:8cFetg2y
女性シンガー「みなさ~ん!!!」

「!???」

女性シンガー「私、怪しいものじゃありません!」

おじさん「怪しいだろう…」

女性シンガー「とにかく、1曲歌うので聴いてください!」

ザワザワッ…

…パチ…パチパチ…

女性シンガー「スー…」

女性シンガー「……日が暮れてどこからか」

千歌「(……あれ?)」

女性シンガー「どれだけ歩いたら 家にたどり着けるかな…」

千歌「(この曲……どこかで……)」

女性シンガー「グータラ~ス~ダララ~♪」

ジャガジャガジャガジャン!

女性シンガー「ありがとうございます!」

住人1「い、いい……いい曲だねっ!」

女性シンガー「ほんとですか!?」

住人1「うん。でもちょっと臭うかな…あはは」

女性シンガー「え…?」

女性シンガー「あ、あぁ…!歌詞がですか?」

住人1「いや……身体かな……」

女性シンガー「……!?」

住人2「あ~…確かに…。風貌的に旅人…?みたいだし…まぁ、仕方ないけど…」

女性シンガー「~~っっ///」カァァ

おじさん「ワシの家で風呂、貸してやろう」

女性シンガー「あ、ありがとうございます…」ズーン

千歌「……あの声……いや、あの歌声……絶対に聞いたことがある」

千歌「……どこで」

千歌「・・・」

千歌「うわ~ん!なんで忘れてるんだよ千歌~!」

779: 2020/07/15(水) 00:38:21.35 ID:8cFetg2y
シャー…

千歌「あの!タオル、ここに置いておきますね」

女性シンガー『うんっ!ありがとね』

千歌「お風呂、いつぶりですか?」

女性シンガー『いつだろう…』

女性シンガー『ほんとにしばらくだなぁ…お風呂とか、そうも言ってられる状況じゃなかったし…』

千歌「……そうですか(絶対に知ってる声なんだけどなぁ……)」

ガラッ

千歌「!」

おじさん「しまったしまった!石鹸切らしてたんだ!」ダダッ

千歌「え!?」

おじさん「入るぞ!」

ガチャッ!

千歌「わ、わぁぁ!?おじさん何やってっ…!!」

780: 2020/07/15(水) 00:44:28.45 ID:8cFetg2y
女性シンガー「へ……え!?」

女性シンガー「う、うわぁ!?な、なにっ…!?」

おじさん「いや、石鹸切らしてて…」

グイッ!

おじさん「うおっ!?」

千歌「お、おじさんなにやってるの!女性だよ!?」

おじさん「えっ…そ、そうなのか?もう俺も老眼でな…」

千歌「声でわかるよね!?」

おじさん「ま、まぁ…何も見てねぇから気にすんな!」

千歌「気にするよ!ほら、謝って!」

おじさん「め、面目ねぇ…」

女性シンガー「たはは…べ、別に大丈夫ですよ…」

女性シンガー「それにシャワーを貸してもらってるのは私なんだし…」

千歌「ほ、本当にすみま」パッ

千歌「………せ………ん………」

おじさん「……?どうした、千歌ちゃん?」

781: 2020/07/15(水) 00:47:03.18 ID:8cFetg2y
千歌「(そうだ。全部、繋がった)」

千歌「(あの曲……昔、秋穂ちゃんに聴かしてもらった……)」

千歌「(会ったことがあるって言ったけど……わからないはずだ……だって私が知ってるだけだもん)」

千歌「(サングラスで……何より、長髪になってたから気づかなかった……)」

千歌「……いや、でも」

キュッ…

千歌「!」

ガチャッ…

女性シンガー「はぁ~…さっぱりしたぁ…」フキフキッ

千歌「あの…」

女性シンガー「…ん?」

千歌「……」ゴクッ

千歌「穂乃果さん……ですよね……?」

782: 2020/07/15(水) 00:59:58.45 ID:8cFetg2y
女性シンガー「………」

千歌「………」

女性シンガー「」ニヤッ

千歌「……!」

女性シンガー「あのさ!」

千歌「は、はい!」

女性シンガー「さっき、あの壁を超えた人がいたって話してたよね?」

千歌「……は、はい」

女性シンガー「壁の向こうに行く方法ってさ…そんなのしかないの?」

女性シンガー「他になにかない?」

千歌「……えっとぉ」

女性シンガー「……あるんだ?」

千歌「……私もあんまり大きい声じゃ言えないんですけど」

女性シンガー「うんうんっ…!」

千歌「実は…」

コショコショ…

783: 2020/07/15(水) 01:03:18.97 ID:8cFetg2y
~~~~~~~~~~~

千歌「穂乃果さん…!早く読んでくださいよ…!」

千歌「穂乃果さんがここにいると…みんな物珍しさで来ちゃうんですよ…!」

千歌「ほら、もうこんなに野次馬が…!」

ザワザワッ ワイワイッ ガヤガヤッ

女性シンガー「……」ペラッ

十花「」ドキドキ

女性シンガー「……うん」

十花「!」

女性シンガー「面白いっ!!」

十花「あ…ありがとうございます!」

女性シンガー「大切な人を守ろうと一生懸命頑張った主人公がカッコよかったなぁ…」

十花「え、えへへ…昔は小説を書いていたんですけど…その小説がある女性から酷評されまして…」

女性シンガー「それで今は漫画家を?」

十花「え、えぇ…まぁ…絵を入れた方が面白いかと…」

女性シンガー「…そっか。うん、面白いね」

784: 2020/07/15(水) 01:06:40.26 ID:8cFetg2y
女性シンガー「ところでさ。あなたにお願いがあるんだけど」

十花「お願い?」

女性シンガー「ここから壁の向こう側に行くには関所のゲートを越える通行手形がいるらしいんだよねぇ」

十花「……はぁ。やっぱり、その話ですか……」

女性シンガー「本物は簡単には手に入らないって聞いたから」

十花「偽造手形は昔、何枚か頼まれて作ったけど……もう、やめました!」

女性シンガー「なんで?」

十花「怖いからですよ……!ゲートを潜る前に親衛隊から手形に対して入念なチェックが入るんです!」

女性シンガー「……ふ~ん」

十花「もし、偽造手形だってバレたら……あなたはもちろん……僕も〇されちゃいますよ!」

女性シンガー「そっかぁ……」

785: 2020/07/15(水) 01:10:24.90 ID:8cFetg2y
女性シンガー「ん~…でもさでもさ」

女性シンガー「あそこからチラ~…っと、通行手形っぽいものが見えるような…しかもたーくさん…」

十花「えっ…あっ、あれは!!」

女性シンガー「どれどれ~」スッ

十花「ちょ、ちょっと!勝手にやめてください!」

女性シンガー「ほら…。やっぱりこれ、偽造手形だよね?」

女性シンガー「描きかけのばっかり…。でも、あとちょっとで完成しそう…」

女性シンガー「これ…ついでにみんなの分も用意してあげてっ!」

キャー!!!!ワー!!!!ヤッタ!!!!

十花「」アゼン

786: 2020/07/15(水) 01:12:44.14 ID:8cFetg2y
女性シンガー「じゃあ、よろしくね」

十花「……絶対にバレますよ、〇されます」

女性シンガー「なるようになるって!」

女性シンガー「…じゃ、まかせ…」

バキューン!

千歌「……!?」

キャッ…キャーーー!!

千歌「な、なに!?」

巡査部長「なに?はこっちのセリフだ、高海」

千歌「ぶ、部長さん…」

巡査部長「どこだ?北からやってきた女ってのは」

千歌「えっ……えっと……」

住人3「か、彼女よ!」

千歌「えっ!ちょ、ちょっと!」

女性シンガー「………」

巡査部長「テメェか…」

787: 2020/07/15(水) 01:15:38.90 ID:8cFetg2y
巡査部長「」スタスタ

女性シンガー「……」

巡査部長「」スチャッ

千歌「部長さん!?なにやってるんですか!!」

巡査部長「なーに、少し話をするだけだ」

千歌「話し合いに銃はいらないですよっ!」

巡査部長「……高海ぃ。今まで北から来る奴なんていなかったから、お前は知らねぇだろうが」

巡査部長「基本的に向こうから来た奴は〇す決まりなんだよ」

千歌「そ、そんなの聞いたことないです…!」

巡査部長「そりゃあ今、俺が作ったからな」

千歌「え…」

女性シンガー「………」

巡査部長「なんとか言ってみろよ、人外」

女性シンガー「………」

巡査部長「……名前はなんだ?」

女性シンガー「………」

巡査部長「〇す」スチャッ

788: 2020/07/15(水) 01:19:15.82 ID:8cFetg2y
千歌「ま、待って!」バッ

巡査部長「んだよっ!邪魔だ!」

千歌「この人を撃たないで!」

巡査部長「……高海、お前も撃ち〇してやろうか?」

千歌「……ッ!」ブルッ…

千歌「……あ、秋穂ちゃんが言ってた事が本当なら」

女性シンガー「」ピクッ

女性シンガー「……秋穂?」ボソッ

巡査部長「……なんだよ」

千歌「こ、この人が…」

千歌「この人が救世主なんです!」

巡査部長「……くだらん」

巡査部長「高海…“あいどる”が暗〇されたのも、本を正せばお前たちの警備不足のせいなんだ」

巡査部長「本来は“退部”されてもおかしくないところを何故か左遷で済んだ」

巡査部長「……ふんっ。後ろ盾だけは強い小娘が偉そうに」

千歌「………」

巡査部長「あてにならん、お前の言う事など」

789: 2020/07/15(水) 01:21:38.25 ID:8cFetg2y
女性シンガー「」ズイッ

千歌「……!」

女性シンガー「この子のこと、酷く言わないでよ」

巡査部長「……あ?」

女性シンガー「あなたなんかにそんなこと言われる筋合いないはずだよ」

女性シンガー「すごくいい子なんだから」

巡査部長「……気味悪ぃな。死ね」スチャッ

女性シンガー「撃ちなよ」

巡査部長「!?」

千歌「えっ…」

女性シンガー「私はもう…銃なんて怖くない」

女性シンガー「本当に怖いのは……」

女性シンガー「………」

女性シンガー「……いいから、撃ってみなよ」

巡査部長「上等だこの野郎……なら、お望み通り〇してやるッッ!」

790: 2020/07/15(水) 01:23:41.37 ID:8cFetg2y
ポンッ

巡査部長「!?」

巡査部長「誰だ…!?」

ムロタ「その辺でやめときなよ。部長」ニコッ

千歌「ムロタさん!!」

巡査部長「ムロタ……!」

ムロタ「こんなに人が集まって……何があったかと思えば……」

ムロタ「勝手な行動はやめてくださいよ」

巡査部長「っ…離せっ!」ブンッ

ムロタ「この地区の責任者は俺のはず」

ムロタ「勝手に変なルールを作るのはやめてね」

巡査部長「……クソが」ダッ

ムロタ「……ふぅ」

女性シンガー「………」

791: 2020/07/15(水) 01:26:29.17 ID:8cFetg2y
千歌「ムロタさん!グッドタイミングでしたよ~!」

ムロタ「あぁ。千歌もよく怯まずに立ち向かったね」

千歌「あ、あはは…身体が勝手に…みたいな感じです!」

ムロタ「彼は本当に撃ちそうだったから…ヒヤヒヤしたよ」

女性シンガー「あの…あ、ありがとうございます」

ムロタ「おっ…君が噂の…」

ムロタ「いや、そんな事より…怪我は無い?」

女性シンガー「特に無いです…」

ムロタ「そっか…ならよかった」

ムロタ「じゃあ僕は十花さんに用があるからこの辺で…」

千歌「お疲れ様です!!」

792: 2020/07/15(水) 01:29:15.71 ID:8cFetg2y
十花「はぁ…」

ギシッ

十花「!」

ムロタ「どうも、十花さん」

十花「う、うぅ…ムロタくん…聞いてくれ!偽造手形を…!」

ムロタ「わかってます。早速、作業に入りましょう」

十花「え、知ってたの…?」

十花「というか僕、絵は描けないんだけど…」

ムロタ「あぁ…いや、十花さんは千歌たちに渡してくれるだけでいいんです!」

ムロタ「僕も表向きは警察官…。本来こんな事をしてはいけないので、絵を描いてるというダミー役がいるんです」

十花「……君は出来る人間だね」

ムロタ「いえ!漫画がウケているのも十花さんのシナリオあってこそですよ」

十花「……ありがとう」

ムロタ「えぇ……。んじゃ、描きますか……」

カリカリカリカリカリカリ!

十花「……相変わらず早いなぁ……」

793: 2020/07/15(水) 01:35:07.68 ID:8cFetg2y
バッ!

十花「出来たぞ!」

女性シンガー「……は、早いね」

十花「本当にな……」

千歌「……じ、自画自賛?」

ムロタ「おっ?おやおや…君たちも…通行手形を持っているのかい?」

十花「(白々しい…)」

女性シンガー「さっきの…」

ムロタ「いや~…ここの人たちみんな通行手形を持ってるんだ。不思議なこともあるもんだね」

女性シンガー「そうなんですか。なら早く関所に行けばいいのに」

十花「本当に死ぬかもしれないんだぞ。それでも行くのか?」

十花「奴らもバカじゃない、偽造手形なんて一発で…」

女性シンガー「……約束」

十花「え?」

女性シンガー「あの子と約束したから……」

十花「約束…?」

女性シンガー「絶対に……帰るって」

十花「……?」

794: 2020/07/15(水) 01:37:14.44 ID:8cFetg2y
~~~~~~~~~~~

ザッ…ザッ…

十花「け、結構歩きますね…ハァハァ」

おじさん「もう少しだ」

女性シンガー「……ふぅ」

千歌「バイク押すの大変そうですね…良かったら私が…」

「止まれ!」

千歌「!」

親衛隊「ここを通りたければ通行手形を出せ」

女性シンガー「」ゴソゴソッ

スッ

女性シンガー「はい」

親衛隊「……貴様、今いくつだ」

女性シンガー「……今、何年?」

親衛隊「……あいどる歴3年だ」

女性シンガー「……あいどる歴?……30歳ぐらいじゃないかな?」

千歌「」ズルッ

千歌「……(そ、それじゃ私より年下です……)」

795: 2020/07/15(水) 01:39:49.36 ID:8cFetg2y
親衛隊「……発砲準備」

スチャッ スチャッ スチャッ

十花「も、もうダメだ…!」

おじさん「〇されるっ…!」

女性シンガー「ちょっと待ってよ、ちゃんと確認してよ」

親衛隊「……結果は変わらんと思うが」

親衛隊「おい!確認しろ!」

親衛隊「今、部下に確認させている…せいぜい残りの人生を…」

「通せとのお達しです」

親衛隊「……!?」

十花&おじさん「!?」

千歌「……通っちゃった」

女性シンガー「大丈夫だったんでしょ?開けてよ」

親衛隊「……ゲ、ゲートオープン!!」

ガァーー…

女性シンガー「……んじゃ、私行くね」

796: 2020/07/15(水) 01:44:13.94 ID:8cFetg2y
十花「……い、行こう!私たちも……!」

おじさん「お、おう…!」

十花「よ、よし!行くぞみんなああぁ!!」

オーーーーウ!!!!!!

千歌「えっ……集落のみんな!?」

千歌「い、いつの間に来てたの!?」

ドサドサドサドサッッ!!

親衛隊「くっ…何だ今日は!」

親衛隊「な、並べ!並べぇ!」

千歌「……みんな、そんなに帰りたかったんだ」

千歌「…わ、私も…!」ダダダッ

797: 2020/07/15(水) 01:48:59.06 ID:8cFetg2y
~~~~~~~~~~~

千歌「」キョロキョロ

女性シンガー「………」

千歌「あっ!いたっ!」

千歌「穂乃果さ~ん!」

女性シンガー「………」

千歌「みんなゲート突破しました!」

千歌「みんな穂乃果さんの曲、歌ってましたよ!」

女性シンガー「……この」

千歌「はい…?」

女性シンガー「このデッカい建物ってなに?」

女性シンガー「スカイツリーより大きくない?」

千歌「あはは…それは流石に…」

千歌「この建物は関所を管理する役所です。当然ながら、私は入った事ないんですけど…」

女性シンガー「……へー」

女性シンガー「……私、ちょっと行ってくる」

女性シンガー「よいしょ」スタッ

千歌「えっ!?」

女性シンガー「」タッタッタッ

女性シンガー「あっ、バイク止めといてー!」

千歌「穂乃果さん!!なにされるかわかりませんよ!!おーーい!!」

千歌「……え、えぇ?」ポツーン

798: 2020/07/15(水) 01:51:20.50 ID:8cFetg2y
カンッ…カンッ…

女性シンガー「(人気が全くない……)」

女性シンガー「(……かなり登ったはずだけど)」

女性シンガー「………」





親衛隊「ご命令通りゲートを開け、あの女を中に入れ、警備員も退避させました!」

親衛隊「よろしいですね?」

ツバサ「あ~………」

ツバサ「う~ん、ありがと~……」

親衛隊「……失礼します」スタスタ

799: 2020/07/15(水) 01:54:57.93 ID:8cFetg2y
カンッ…カンッ…

女性シンガー「………」

ツバサ「よく……ここまで来たわね」

女性シンガー「…!」

女性シンガー「……」スタスタ

ツバサ「……あなたが誰か……当ててあげましょうか……?」

女性シンガー「……」

ツバサ「まさか、記憶を無くしてるなんて事はないわよね?」

ツバサ「……ね、高坂穂乃果さん」

女性シンガー「……」

800: 2020/07/15(水) 01:58:22.56 ID:8cFetg2y
女性シンガー「……私をわざと入れたんですね」

ツバサ「……えぇ」

ツバサ「本当は……本来ならこんなところにいるはずじゃなかった……」

ツバサ「山田先生は……“あいどる”に疎まれて……〇された」

ツバサ「先生は知りすぎたのね…」

ツバサ「……必然的に山田先生の派閥に属する私も……こんな閑散とした関所へと移動させられた……」

ツバサ「ははっ…一時でもアイドル界のトップに立った人間とは思えない扱いよねぇ~…」

女性シンガー「………」

ツバサ「あなた……“あいどる”が誰か知ってるの?」

女性シンガー「………」

ツバサ「……うふふっ……落ちたわね、あなたも……私も……」

801: 2020/07/15(水) 02:02:32.94 ID:8cFetg2y
ツバサ「……姪っ子ちゃんの片親が“あいどる”だって……あなたは知ってた?」

ツバサ「……2人の馴れ初め」

ツバサ「元はあなたの妹さんと絢瀬さんの妹で子供を作ろうとしていたそうよ」

女性シンガー「………」

ツバサ「そこに“あいどる”は目をつけた…」

ツバサ「だけど……あなたの妹はそれに応じなかった……」

ツバサ「結果…絢瀬さんの妹は失踪し、あなたのお父さんは腹いせに〇された…」

ツバサ「人は…失って出来た穴を…必ず何かで埋めようとする」

ツバサ「“あいどる”は上手く取り入った…持ち前の人心掌握術でね…」

ツバサ「ふふふ…それとも…あなたの妹が乗せられやすい性格だったのかしら…?」

女性シンガー「……」

802: 2020/07/15(水) 02:07:09.14 ID:8cFetg2y
ツバサ「……しかし、“あいどる”がここまでするとは思わなかったわ」

ツバサ「“あいどる”は御茶ノ水工科大学の木皿教授を拉致して巨大ロボットを作らせた」

ツバサ「……あなたは何故生きていると思う?」

女性シンガー「………」

ツバサ「あのロボットの操縦室で、あなたはダイナマイトを爆発させるつもりだった……」

ツバサ「実際、爆発した。そう思ってる?」

女性シンガー「………」

ツバサ「……ふふ」

ツバサ「あのダイナマイトは既に細工を施されていて、爆発しないようになっていたのよ」

ツバサ「もし、操縦室の中でダイナマイトが爆発していたら、あなたはあの時ちりになっているものね…?」

803: 2020/07/15(水) 02:13:05.47 ID:8cFetg2y
ツバサ「血の大晦日の大爆発はあなたのダイナマイトで起きたものじゃない」

ツバサ「個人が用意できるダイナマイトの量であんな大爆発が起きるわけがないものね」

ツバサ「爆発はあなたがいた操縦室の中ではなく…外で起こったもの」

ツバサ「操縦室がシェルターで頑丈に作られていてよかったわね」

ツバサ「……なんて。全て仕組まれていたのよ」

ツバサ「あの場に“あいどる”がいたの……」

ツバサ「あなたたちが今まさに…人類を救おうとしている時に紛れ込んでいたのよ…“あいどる”は」

ツバサ「“あいどる”はまんまと警察や自衛隊を欺き…ウィルスをばらまいてパニックにさせた…!」

ツバサ「2035年に自分の影武者を暗〇させた…」

ツバサ「世界中が注目するお葬式をアキバドームでして…そこで復活した」

ツバサ「彼女は悲劇の主人公……いや、神になった」

ツバサ「それからはもっと強力なウィルスを作って世界中の人間を〇した!」

ツバサ「そして世界大統領……彼女は暴走を続けている……」

女性シンガー「………」

804: 2020/07/15(水) 02:17:15.68 ID:8cFetg2y
ツバサ「……もうダメ、終わりよ」

ツバサ「彼女はやる事が無くなった……。もう後は本当に人類を滅ぼすしかやる事がない……」

ツバサ「お願い……“あいどる”を〇して」

ツバサ「〇してくれないなら……あなたを〇すわッッ!!」スチャッ

女性シンガー「……」

ツバサ「~~~!!」ブルブルッ…

女性シンガー「……」

女性シンガー「……本当に、落ちましたね……」

ツバサ「……は?」

女性シンガー「……全部他人のせいにして。それって人としてどうなのかなって……」

ツバサ「な、何よ……あなたに何が……あなたに何がわかるのッッ!!!」

女性シンガー「……本当に寂しいです」

805: 2020/07/15(水) 02:22:06.56 ID:8cFetg2y
女性シンガー「原因は本当に“あいどる”だけなんですか?」

女性シンガー「昔のツバサさんなら逃げずに立ち向かって…決して人に頼る事なく…自分でカタをつけてたはずです」

ツバサ「……!!」

女性シンガー「……本当に怖いものって何だと思いますか?」

ツバサ「……怖いもの?」

女性シンガー「銃ですか?ロボットですか?ウィルスですか?」

女性シンガー「……いや、違います」

女性シンガー「本当に怖いのは……逃げる事です」

ツバサ「逃げる事……?」

女性シンガー「今、向けられてる銃だって私…全然怖くなんてありません」

女性シンガー「……今のツバサさんは少し前の私と同じです」

女性シンガー「真実から目を背けて逃げちゃダメ…」

女性シンガー「……そうですよ」

女性シンガー「私は」

女性シンガー「」サッ

ツバサ「………」

穂乃果「高坂穂乃果です」

第7章「舞い戻る伝説」-完-

808: 2020/07/16(木) 07:15:25.37 ID:cUpy2si9
穂乃果達がこの時点で43とか?
秋穂がハタチだっけ

810: 2020/07/16(木) 17:38:43.20 ID:EUlGvAuK
>>808
(満年齢) 過去スレよりコピペ

高坂穂乃果(44)
南 ことり(44)
園田 海未(44)
西木野真姫(44)
星空  凛(43)
小泉 花陽(43)
矢澤 にこ(46)
東條  希(46)
絢瀬 絵里(45)

高海 千歌(35)
渡辺  曜(35)
桜内 梨子(34)
国木田花丸(33)
黒澤ルビィ(33)
津島 善子(34)
黒澤ダイヤ(35)
松浦 果南(35)
小原 鞠莉(36)

高坂 秋穂(20)
高坂 雪穂(42)
矢澤こころ(37)
矢澤ここあ(36)
矢澤虎太郎(33)
鹿角 聖良(35)
鹿角 理亞(33)
公   野(64)
ハターキ (51)
ム ロ タ(47)

“あいどる” (44)
綺羅ツバサ(46)
統堂英玲奈(46)
優木あんじゅ(46)


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