穂乃果(24)「ありがとうございました、またのお越しを~!」【長編SS】

AqoursーSS


262: 2020/08/13(木) 01:20:32.63 ID:pSCXbzM0
after episode(中)「僕たちはひとつの光」

~~~~~~~~~~~

-2018-

穂乃果「ふわぁ~~あ…」

秋穂「んぅ……うあっ……?」

穂乃果「お、起きた?秋穂」

秋穂「だぁー」

穂乃果「いやー、今日はすっごく暇だよ~、全然お客さん来ないや」

穂乃果「……そういえば」

穂乃果「昔……雪穂とお店番して、こんな風にだらけてたら……叱られたっけかな」

穂乃果「秋穂のママ、すっごく真面目だったんだよ?」

穂乃果「妹なのにしっかりしてて…姉の面目ないよ、へへ…」

穂乃果「ママ、ワガママなんてほとんど言ったことないんだよ?」

穂乃果「お店を継いだのも…結局は私の意思だし」

秋穂「うー」

穂乃果「……そうだねぇ、雪穂が唯一ついたワガママといえば……」

263: 2020/08/13(木) 01:26:09.97 ID:pSCXbzM0
ガラッ…

穂乃果「あっ!いらっしゃいませー!」

穂乃果「…って、自治会長さん?」

自治会長「…」

穂乃果「珍しいですね、穂むらに来るなんて!何にしますか?」

自治会長「……穂乃果ちゃんよ、今日は客として来たわけじゃないんだよ」

穂乃果「え?」

自治会長「あんたがこの店を継いで…もう2年ぐらいになるか?」

穂乃果「2年半ぐらい…ですかね!」

自治会長「うむ…そろそろ考えにゃいかんわね…」

穂乃果「考えるっ…?」

穂乃果「なにをですか??」

自治会長「結婚……跡取りだよ!」

穂乃果「……え?」ポカーン

穂乃果「……えぇっ!??」

264: 2020/08/13(木) 01:33:16.01 ID:pSCXbzM0
穂乃果「結婚って……私、まだ24なんですよ!?」

自治会長「あんたの母親はその時分にはあんたを産んでたよ、早いことありゃせん」

自治会長「わたしゃ、この辺りの子の縁組みを任されてもう40年になるんだよ」

穂乃果「たはは…任されてるって…だ、誰に…?」

バッ!

穂乃果「うっ…!」

自治会長「この写真の子どうだい?イケメンだよ!カッコいいよ!」

穂乃果「い、いや~…」

自治会長「悪いことは言わない!この子にしときな!」

ズイッッッ!!

穂乃果「ち、近い~…!」

自治会長「ほら、どうなんだい!?」

穂乃果「……き、気が向いたら」

自治会長「……あんた、本気で考えてないね」

穂乃果「」ギクッ

穂乃果「そ、そんなぁ~!」

穂乃果「た、確かに…カッコいいですね…!うん…カッコいい…」

自治会長「………」

265: 2020/08/13(木) 01:39:23.26 ID:pSCXbzM0
自治会長「本気で考えてるって言うんなら…」

自治会長「あんたが背負ってる、その子はなんとかしなくちゃあな」

秋穂「あだ?」

穂乃果「秋穂を…?なんとかって…?」

自治会長「そうだねぇ…あんたの母親が面倒みるか…最悪、託児所に預けるか」

穂乃果「っ!?」

穂乃果「そんなの!絶対に嫌です!」

自治会長「………」

穂乃果「……秋穂は私が育てます。雪穂が帰ってくるまで、私が育てます」

自治会長「何をそんなに意地張ることがあるのかねぇ…こんなにイケメンなのに…」

穂乃果「私、イケメンなんて興味ありません…!」

穂乃果「イケメンの人なんてこの世にたくさんいます…」

穂乃果「でも、秋穂はこの世に1人です…。秋穂を育てるのは私しかいません…!」

自治会長「………」

266: 2020/08/13(木) 01:47:19.45 ID:pSCXbzM0
自治会長「……はぁ、姉にこんな迷惑かけて」

穂乃果「迷惑…?」

自治会長「だいたい、非常識じゃないか…生まれたばっかりの子供ほっぽり出して」

自治会長「自分のお〇〇〇吸わせたくないのかねぇ…」

自治会長「……その子、疫病神じゃないのかい?」

穂乃果「疫病……神?」

自治会長「あんたらの父親が死んだのも……その子のせいなんじゃないのかい?」

穂乃果「そんな…!この子が生まれる前にお父さんは亡くなったんです!酷いこと言わないでください…!」

自治会長「実家に子供預けて…姉に結婚させ辛くして…」

自治会長「情けないねぇ…そんな子いなけりゃ、穂乃果ちゃんも結婚に前向きになったかもしれないのに」

自治会長「……そもそも、ほんとに雪穂ちゃんの子かい?その子……」

穂乃果「」ブチッ

自治会長「疑わしいねぇ…あんた達、なんか騙されてんじゃ…」

穂乃果「帰ってください」

自治会長「え?」

267: 2020/08/13(木) 01:58:12.55 ID:pSCXbzM0
穂乃果「雪穂はしっかりしてる子です…私なんかより…」

穂乃果「……そんな雪穂が私たちにこの子の面倒をみてって言った」

自治会長「…っ、しっかりしてる子がこんなワガママ言わないよ!!」

穂乃果「…確かに、ワガママなのかもしれない」

穂乃果「だけど…雪穂がワガママ言うなんて、後にも先にもこの子の事だけだと思うんです…」

自治会長「…せっかくあんた、ここいらじゃ人気あるのに…!」

自治会長「そんなこと言ってちゃ、一生独り身だよ!!」

穂乃果「ほっといてくださいッ!!」

自治会長「その調子じゃ10年後…いや、20年後だって結婚してないよ…」

穂乃果「45になる歳…?」

穂乃果「そんなの、独身なわけない…」

自治会長「……はぁ、それのせいで」

穂乃果「それとか言わないで」

自治会長「……?」

穂乃果「秋穂のこと物みたいに言わないでください」

穂乃果「……さっきも言ったはずです。この子は妹の子供」

穂乃果「……雪穂が帰ってくるまで、私が育てる」

自治会長「……!!」

自治会長「ったく!!話にならないよ!!勝手にしな!!」

自治会長「」ダダダダダダ!!

ガララッ…バタンッ…!!

268: 2020/08/13(木) 02:01:34.45 ID:pSCXbzM0
穂乃果「………」

秋穂「だぁ♪」

穂乃果「…!えへへ…」

穂乃果「怒らせちゃったね…」

秋穂「あだあだ」

穂乃果「……大丈夫。ママ……多分、もう少しで帰ってくるよ」

穂乃果「20年後か……その頃には、海未ちゃんやことりちゃんも結婚してるのかな……」

~~~~~~~~~~~




269: 2020/08/13(木) 02:05:47.32 ID:pSCXbzM0
希「ええんよ?どうしても嫌なら、無理にインタビューしなくても」パチッ

希「真姫だけは…インタビューに応じてくれなかった。スクールアイドルから離れれば、ただの多感な15歳」

真姫「なっ…なに勝手にナレーション被せてるのっ…!?」


(穂乃果)「懐かしい…あったなぁ、こんなこと…」

……~~~~

(穂乃果)「ん?話し声…?」

(穂乃果)「……向こうの方からかな」

(穂乃果)「」タッタッタッ

270: 2020/08/13(木) 02:13:07.85 ID:pSCXbzM0
(穂乃果)「」サササッ


「これ、使ってみて!笑かせられるよ~♪」

ことり「うわ~♪面白いねっ♪」

ことり「ありがとう!使ってみるっ♪」

ことり「」タッタッタッ


凛「かよちんは昔から、アイドル好きだったんだよねぇ~!」

希「それでスクールアイドルに?」

花陽「は、はい…ええっとぉ…プッ…プブフッ…」

真姫「ちょっと止めて!」

穂乃果「ん?いや~!緊張してるみたいだから、ほぐそうかなと思って!」

真姫「ことり先輩も!」

ことり「ガンバッテイルカネ」

真姫「まったく~!!」


(穂乃果)「あはは…」

ギュル!!!

(穂乃果)「…っ」

(穂乃果)「また、場面が変わる…?」

ギュルルル!!!

271: 2020/08/13(木) 02:20:48.20 ID:pSCXbzM0
(穂乃果)「……うぅ、今度はいつの場面?」

ナニソレナニソレ!

(穂乃果)「ん?」ヒョコ


「これのこと?これはシオデっていうんだよ」

穂乃果「へぇ~!なんだか、アスパラガスみたいだね~!」

「クスッ…それ、よく言われる!」

「……こいつの花言葉、味わい深いっていうんだよ」

穂乃果「味わい深い…?すごい…それ、花言葉があるんだ…!」

「でしょ?でさ、これってなんだか私たちみたいじゃない?」

穂乃果「へ?なにが?」

「味わい深い…花の色は地味でも…面白いってね」

「それとこいつ、もう一つ花言葉があるんだ」

穂乃果「おぉ~!詳しいね…!」

「うん…こいつの別名がさ…」

「花言葉も相まって、勝手に親近感覚えてる」

穂乃果「それでそれで!もう一つは?」

「もう一つはねぇ…」

「…あなたを離したくない」


(穂乃果)「………」

ギュル!!!

(穂乃果)「…!またか…」

ギュルルル!!!

272: 2020/08/13(木) 02:31:12.56 ID:pSCXbzM0
(穂乃果)「今度はどこ…?って、また学校…?」


絵里「……あら?」


(穂乃果)「ん?絵里ちゃんの声だ…行ってみよう…」タッタッタッ


絵里「綺麗な花…」

「絵里先輩…はい、綺麗ですよね」

絵里「水やり?感心ね」

「お花も、水がなくちゃ大変ですからね」

絵里「ウフッ…そうね」

穂乃果「なになにー!2人ともなにやってるの?」

ギュッ

絵里「わっ…!もう、穂乃果ぁ…」

絵里「水やりしてくれてるのよ」

穂乃果「おぉ~!綺麗だね~!」

「ねぇ…これ、Printempsに似合いそうじゃない?」

穂乃果「私たちに?」

「Printempsっていったらお花のイメージあるし」

穂乃果「確かに…。うん!じゃあ、次の衣装にどうかってことりちゃんに言ってみる!」

絵里「さっ…そろそろ練習に行きましょ」

穂乃果「はーい!…って、むぐっ…!?」

ズザザザ…

絵里「あっ、そういえば穂乃果」

絵里「……?穂乃果?」クルッ

・・・シーン

絵里「え…?もう、どこに行ったのかしら?」

273: 2020/08/13(木) 02:38:57.41 ID:pSCXbzM0
穂乃果「んぅ~…!んっ…!んぐぐぅ…!」

(穂乃果)「シーッ…!」

(穂乃果)「口から手をどけるからね、大きい声出さない?大丈夫?」

穂乃果「んっ…んっ!」コクコクッ

サッ…

穂乃果「ぷ…ぷはぁっ…!はぁ…はぁ…!」

穂乃果「な、なんですか…?お姉さん…ここでなにを…?」

(穂乃果)「いや…私、怪しい者じゃなくて…って言っても怪しいよね…うーん、まぁいいや…」

(穂乃果)「ねぇねぇ…ちょっと聞いてもいい?」

穂乃果「はい?なんですか?」

(穂乃果)「あなたの大切なものって…なにかな?」

穂乃果「大切なもの…?」

穂乃果「うーん…」

穂乃果「やっぱり学校かな!私たち、今、この学校を守ろうと必死なんです!」

穂乃果「あとはμ'sのみんな!…というより、友達みんな!!」

(穂乃果)「…そっか…だよね…」

穂乃果「どういうことですか?」

(穂乃果)「いや、なんでもないよ…」

274: 2020/08/13(木) 02:47:15.98 ID:pSCXbzM0
(穂乃果)「……大人だったら?」

穂乃果「え?」

(穂乃果)「もし、自分が大人…例えば、30年後の自分にとって大切なものってなんだと思う?」

穂乃果「なんでそんなことを…?」

(穂乃果)「お願い。聞かせてほしいんだ」

穂乃果「そうだなぁ…でも、やっぱり学校かなぁ…」

穂乃果「まだ、どうなるかはわからないけど…この学校を守れたら…きっと、私たちにとって…かけがえのないものになると思うから」

(穂乃果)「……うん、そうだよね」

穂乃果「それと~…」

(穂乃果)「それと?」

穂乃果「うーん……やっぱり友達!……って言いたいところだけど……」

穂乃果「やっぱり、その頃には…」

穂乃果「子供……になってるのかな……えへへ……なんて!」

(穂乃果)「……やっぱりか」

(穂乃果)「やっぱり……同じだ」

穂乃果「あの、なんでそんなこと聞くんですか?」

275: 2020/08/13(木) 02:54:38.34 ID:pSCXbzM0
絵里「穂乃果~!どこ~?」


(穂乃果)「絵里ちゃんが探してる…もう行かないと」

穂乃果「え?絵里ちゃんを知ってるの?」

(穂乃果)「うん、よーく……ね」

(穂乃果)「質問に答えてくれて、ありがと」

(穂乃果)「ほら、行っておいで」

穂乃果「はーい」

穂乃果「あっ…そうだ!お姉さんは結局、何者なの?」

(穂乃果)「私?私はただの…」

(穂乃果)「…μ'sのファンだよ」

穂乃果「えっ…!ほんと!?」

穂乃果「ほんとのほんとのほんとに!?」

(穂乃果)「うん!3人の頃から、ずっと応援してるよ」

穂乃果「~~~~っ!!」

穂乃果「わーい!!やったー!!こんな大人のお姉さんからも応援されてるんだ~!!」ピョーンピョーン

(穂乃果)「えへへ……」

(穂乃果)「……あなたさ」

穂乃果「……へ?」

(穂乃果)「……いや、なんでもないや」


絵里「穂乃果~?」


(穂乃果)「ほら、早くしないと…」

(穂乃果)「そうだ、絵里ちゃんに私のこと言っちゃダメだよ?私はあくまでも隠れファンだからね」

穂乃果「はーい!」ダダダッ!

バッ

エリチャーーン!!
ワッ!?ンモウ、ドコニイッテタノヨー
エヘヘーゴメーン♪


(穂乃果)「……子供……か」

276: 2020/08/13(木) 03:01:14.23 ID:pSCXbzM0




~音ノ木坂学院~

秋穂「………」

コツ…コツ…コツ

秋穂「……?」

千歌「やっ!」

秋穂「………」

千歌「……ツバサさんは?」

秋穂「……よくない」

秋穂「いくら貫通した弾とはいえ…銃で撃たれたんだもん…学校の設備なんかで…賄えるわけない…」

千歌「ツバサさん程の負傷者を病院は受け入れてくれないんだもんね……どこも手が足りないんだよ……」

千歌「でも、まさか搬送されるのが音ノ木坂学院だとはね」

秋穂「………」

千歌「……秋穂ちゃん、ご飯食べてる?」

千歌「なんだか、顔色が……」

秋穂「………」

277: 2020/08/13(木) 03:11:41.45 ID:pSCXbzM0
千歌「……なんで、ツバサさんの看病を?」

秋穂「……あの時、3年前……“あいどるランド”へ行った時にボーナスステージのゲームで見た“あいどる”の素顔……」

秋穂「あの時は思い出せなかったけど……」

秋穂「あれは…ツバサだった」

千歌「……でも、“あいどる”は死んだ」

秋穂「……私、何も知らないから」

千歌「え?」

秋穂「あんなに人が密集してた場所にウィルスをばら撒かれていたら…」

秋穂「…私のせいで、何十万人という人が死ぬところだった」

秋穂「アキバドームなら安全と思って、都民を集めたけど…もしも、絵里おばさん達が円盤を落とさなかったら……」

千歌「………」

秋穂「……ウィルスじゃなく、私がみんなを〇すところだった」

千歌「……秋穂ちゃん、そんなに気にしないで……?」

千歌「あそこにいる人たちは、ワクチンを打ってたんだし…」

秋穂「あの時点でみんなが打ってたわけじゃない…」

千歌「……っ」

千歌「…仕方ないよ…“あいどる”の考えてることなんて、誰にも分からないんだから…」

秋穂「………」

278: 2020/08/13(木) 03:23:33.47 ID:pSCXbzM0
秋穂「ところで、そっちはなんの用?」

秋穂「まさか、冷やかしってわけじゃないよね?」

千歌「あっ、うん!今度、AqoursとSaint Snowで、ここでライブをやることになったんだ!」

千歌「アキバドームでのライブ…なんだかんだで評判良かったみたいでね…」

千歌「だから、今日はライブの下見」

秋穂「……そっか」

千歌「いい学校だよね、音ノ木坂」

秋穂「……うん」

千歌「……聞いてもいい?」

秋穂「なに……?」

千歌「前から思ってたんだけど…なんで、秋穂ちゃんって音ノ木坂に行かなかったの?」

秋穂「………」

千歌「……ごめんね、変なこと聞いたよね」

秋穂「……行きたかったよ」

千歌「!」

279: 2020/08/13(木) 03:30:50.82 ID:pSCXbzM0
秋穂「……隣のクラスの高坂秋穂って知ってる?あぁ、この前はガラスぶち破ったらしいね……」

秋穂「……血の大晦日のことで……学校で揉めてたから……そんなヒソヒソ話はよくされてたし、友達はいなかったし、全然楽しくなんてなかった……」

秋穂「だから、どこに行ったって変わらなかったと思うけど……」

秋穂「だけど……」

秋穂「私だって…お母さんやおばちゃんみたいに音小、音中に通いたかった…」

秋穂「でも…もう、二つとも統廃合で廃校になっちゃったから…」

秋穂「だから、せめて高校だけは…音ノ木坂がよかった」

千歌「……なら、どうして?」

秋穂「……海未おばちゃんがダメだって」

千歌「………」

千歌「“あいどる”は音ノ木坂の卒業生らしいし……危険と思ったのかな……」

千歌「きっと、秋穂ちゃんのためを思ってのことだよ…」

280: 2020/08/13(木) 03:36:57.95 ID:pSCXbzM0
千歌「穂乃果さんは…?」

秋穂「知らない…」

千歌「あんなに会いたがってたのに…。一緒に暮らしてるのかと思ってたよ」

秋穂「私は会いたかったけど、穂乃果おばちゃんはそうでもなかったみたい…」

千歌「そんなこと…!穂乃果さん、よく言ってたよ?秋穂ちゃんとの約束を果たさなきゃ…って!」

千歌「ずっと、秋穂ちゃんのことを気にかけて…」

秋穂「あのフェスティバル」

千歌「えっ…?う、うん…」

秋穂「穂乃果おばちゃんを迎えるためにやったけど…結局、おばちゃん、あの曲をやらなかった…」

千歌「あぁ…あれはビックリしたよね」

秋穂「なんであの曲やらないの?って聞いたら…」

千歌「うん…」

秋穂「…なんにも答えてくれなかった」

秋穂「たぶん、おばちゃんの名前を勝手に使って…ヒーローみたいに祭り上げた私のやり方…おばちゃん、気に食わなかったんだと思う…」

千歌「い、いや……そんなこと……」

281: 2020/08/13(木) 03:44:44.53 ID:pSCXbzM0
千歌「……そんなに気にすることないよ」

千歌「ただの気まぐれだよ…たぶん…」

千歌「ほら!穂乃果さん言ってたし!」

千歌「このフェスを開催した理由は自分の歌を聴くためじゃなくて、みんなの命を守るために集めたんだって!」

秋穂「私のせいで…命を守るどころか、みんなを死なすところだったんだけどね…」

千歌「……あっ」

秋穂「ずっと、お母さんがいなかったから…穂乃果おばちゃんのこと、本当の母親みたいに思ってた」

秋穂「おばちゃんにおんぶしてもらって…手を繋いでもらって…お風呂に入れてもらって…おばちゃんの歌を聞いて育った」

秋穂「おばちゃんがいたからここまで頑張ってこられた…」

秋穂「でも…穂乃果おばちゃんからすれば…別に私は…本当の娘じゃないし…」

千歌「そんなこと…ないよ…ちゃんと話した方がいいと思うけど…」

282: 2020/08/13(木) 03:55:20.48 ID:pSCXbzM0
千歌「それに秋穂ちゃん…気に食わなかったって言ったけど、穂乃果さん…そんな風に怒る人じゃないよ」

千歌「穂乃果さんが怒ってるところ、見たことある?」

秋穂「……ないけど」

千歌「ほらね!やっぱり…!」

秋穂「いや…?」

千歌「え?」

秋穂「一度だけある……縁談の」

千歌「縁談の?」

秋穂「穂むらまで来て、私のことなんて捨てて…早く結婚しろって言ってくる人がいた」

秋穂「お母さんのこと貶されて…穂乃果おばちゃん、すごく怒ってた…」

秋穂「あんなに怒ってるところ、他に見たことない…」

千歌「そんなの怒って当然だよ!……って、ん?」

千歌「穂むらにって……確か穂むらって2018年に全焼して……あれ?秋穂ちゃんがその話の時の歳って……」

秋穂「……0歳」

283: 2020/08/13(木) 04:05:06.60 ID:pSCXbzM0
千歌「お、覚えてるの…?」

千歌「……い、いやいや!何かの勘違いだよ!」

千歌「2歳以前の記憶は植え付けられた物だって、何かで見たことあるよ!」

千歌「誰かから聞いたんじゃないその話!?」

秋穂「聞いてないよ」

千歌「………」

秋穂「……私、すごく成長が早かったらしいの。異常な程」

秋穂「すぐにハイハイして、つかまり立ちして、立って、あっという間に喋ったって……おばあちゃん言ってた」

秋穂「今の話みたいに、0歳や1歳の時のことを覚えてることがあるの……2歳からはもう、完全に記憶してる」

秋穂「……3歳の時、あなた達に会ったのも覚えてる」

千歌「う、うそ!?」

千歌「いつ……?」

千歌「……あっ!!」

千歌「あの日…?東京に来た時…」

千歌「秋穂ちゃん、黄色いリボン握りしめてたよね?」

秋穂「……穂乃果おばちゃんの」

千歌「そっか、だからあの時…気になったんだ…」

千歌「今の子…穂乃果さんに似てるなって思ったんだ…私」

284: 2020/08/13(木) 04:14:18.66 ID:pSCXbzM0
千歌「でも、そんなのって…」

~~~~ッ!!!!!!

千歌「ん…?なんか騒がしい…?」

秋穂「……?」

ガラッ…

秋穂「なに…?」

にこ「ちょっと止まりなさいってばぁ!!!」

軍人達「」ズンッズンッズンッ

秋穂「にこおばちゃんっ!?」

秋穂「な、なにやって…」

にこ「あんたの様子を見に来たのよ…!そしたら、こいつらが…!」

中佐「国連軍総司令部の者だ」

千歌「なにがあったんですか?」

中佐「木皿教授に自白剤を使った結果、あのロボットに中性子爆弾が仕込まれていることがわかった」

にこ「………」

中佐「中性子爆弾のリモコンを探している」

中佐「ツバサに聞かなければならない。一刻を争う」

バッ!

秋穂「今のツバサは昏睡状態!起きないよ!」

中佐「自白剤がある」

秋穂「今のあの人に自白剤なんか使ったらどうなると思ってるの!?死んじゃうじゃない!!」

中佐「言ってる場合か…。今はツバサの命なんかよりも、地球全体の生命がかかっているんだぞ」

中佐「彼女に問い質せばならない」

285: 2020/08/13(木) 04:19:53.60 ID:pSCXbzM0
にこ「木皿教授が在り処を知ってるんじゃないの!?」

中佐「ダミーを教えられていたようだ」

中佐「愛民党内でも重要なポストについていた、ツバサに聞くしかない」

にこ「……あんじゅと英玲奈は?」

中佐「時間の無駄だったよ」

中佐「さぁ、入るぞ」

ザッザッザッ…

にこ「ちょっ…」

秋穂「まっ…!」

……ゴーーーーン!!!

秋穂「……!?」ビクッ

中佐「……?」

286: 2020/08/13(木) 04:23:13.82 ID:pSCXbzM0
秋穂「ここ……」

秋穂「……音ノ木坂学院」

中佐「はぁ??」

秋穂「…おばちゃんは?」

秋穂「今、穂乃果おばちゃんはどこ…?」

軍人「ホノカなら今…我々の捜査に協力してヴァーチャルリアリティゲームを…アトラクションの中に…」

にこ「え?」

秋穂「中性子爆弾のリモコンの場所がわかったの!」

秋穂「場所は……ここ」

秋穂「音ノ木坂学院!!」

287: 2020/08/13(木) 04:31:08.35 ID:pSCXbzM0
バシッ!

秋穂「…!?離してッ!!」

秋穂「おばちゃんに伝えないと!中性子爆弾のこと!」

秋穂「そのリモコンが学校にあること!」

秋穂「おばちゃんなら何かわかるはずなの!」

軍人「ミスホノカは今、軍の重要な機密任務に関わっていると言ってるだろうが!!」

中佐「……貴様、なぜ場所がわかった?」

秋穂「……わからない、急にわかったの」

秋穂「でも……間違いない、絶対にここにあるっ!!」

軍人達「………」

軍人「彼女、知っていますか?調査では“あいどる”の実子ではないかと言われています…」コショコショ

中佐「ほう…」

中佐「ふむ、なるほどな…」

中佐「無駄だ、悪魔の子。我々を欺こうとしてもそうはいかん」

中佐「貴様が知っているんだな?本当のリモコンの在り処を」

秋穂「…っ、だからここに!!」

中佐「身柄を拘束しろ」

ガシッ!!

秋穂「は、離して!おばちゃんに会わせて!!」

千歌「ちょ…ちょっと!痛っ…!」

にこ「あんた達、ま、待ちなさいよ!!」

中佐「連れて行け」

288: 2020/08/13(木) 04:41:54.02 ID:pSCXbzM0
スタスタ

真姫「学校に来るのも久しぶりね」

真姫「……お見舞いに来て、いきなり“あいどる”の正体を教え だなんて……」

希「流石にマズいよね」

絵里「……“あいどる”の正体、穂乃果は知ってるようなんだけど」

花陽「あ!3人とも~!!」

凛「大変だよぉ~!!早く早く!!」

花陽「ちょうどよかった!今、電話しようと思ってたんだ…」

真姫「花陽、凛、あなた達もツバサのお見舞い?」

凛「いや、あのね!凛たち…にこちゃんとかよちんの3人で秋穂ちゃんの顔を見に来たら!」

花陽「今、連合軍の人たちが中にどんどん入って行っちゃって…!!」

凛「それをにこちゃんが追っ掛けて行っちゃったの…!」

真姫「……何があったの?」

花陽「分からない…すごく慌ててたけど…」

希「軍の人たちはどこに行くって言ってたん?」

凛「保健室に…ツバサさんに用があるって…」

絵里「……まさか」

絵里「中性子爆弾のこと……?」

289: 2020/08/13(木) 04:47:55.59 ID:pSCXbzM0




(穂乃果)「今度は学校の屋上かぁ…」

(穂乃果)「…って、あれ?あそこで大の字になって寝てるのって…」


穂乃果「ダメだ~…もう~…!」


(穂乃果)「やっぱり私だった…」

ガチャリ

(穂乃果)「…っ!誰か来た…」スササッ


スタスタスタ

「」ザッ

穂乃果「…ん?」

「おーい!なにやってんだ~、サボり魔!」

穂乃果「えぇ…!サボってなんかないよ~!!」

「まったく…まだ、進路悩んでんの穂乃果ぐらいだよ」

穂乃果「だって……分からないんだもん……」

穂乃果「大学行った方がいいのかな…お店継いだ方がいいのかな…それとも別の道を探した方が…」

290: 2020/08/13(木) 04:57:21.42 ID:pSCXbzM0
「悩みすぎだって」

「……μ'sってさ、あれでよかったのかな」

「あんな風に終わって……」

穂乃果「え…?」

穂乃果「あはは…どうしたの急に?」

「いや、μ'sは今が最高!って終われたかもしれないけど、私たちはなんだか取り残された感じがして…」

「正直、モヤモヤしてるよ。熱が冷めないっていうかさ」

「本当に終わってよかったのか?って」

「SUNNY DAY SONGをやった意味も本当の…真のアイドルになればわかんのかね?」

穂乃果「真のアイドルって…私たち、別にそんなんじゃ…」

穂乃果「……正直、わかんないよ」

穂乃果「でも、あれでよかったんだって…後悔しないように生きたいな」

穂乃果「でも、最近またちょっと歌いたくなってきてるんだよね…えへへ…♪」

「なら、部活に顔出せばいいのに」

穂乃果「大学行くなら受験もあるしね」

穂乃果「それに、部活はもう凛ちゃんたちに任せてあるから。私たち3年生はたまにしか行かないようにしてるんだ」

「そっか…」

291: 2020/08/13(木) 05:04:48.92 ID:pSCXbzM0
「じゃあ、一緒にやろうよ!二人で曲作ってさ!!」

穂乃果「え?」

「あっ……いや、冗談」

穂乃果「うーうん……いいよ!それ、すっごくいい!」

「え?ほ、ほんとに?」

穂乃果「うん!一緒にやろっ!」

「……いいの?誰も見向きもしてくれないかもしれないよ?」

穂乃果「やりたいからやる!それでいいの!」

穂乃果「曲作りは…どっちがやろっか?」

穂乃果「私、出来るかなぁ…」

「いいよ、やってあげる」

穂乃果「ほんと!?」

「うん、そうだなぁ……」

「……グータラ~スーダララ~」

「……とか、どう?」

穂乃果「……プッ」

穂乃果「プハハ…な、なにそれ~!!」

「こらっ!笑うなよ~!」


(穂乃果)「………」

292: 2020/08/13(木) 05:12:11.50 ID:pSCXbzM0
ギュル!!!

ギュルルル!!!

穂乃果「今度はどこだろう…学校じゃない…?夜になっちゃったけど…」

ガシッ!

穂乃果「え!?」

山田「よーし、高坂!飲みに行くぞ~!!」

穂乃果「う…え、えぇ!?せ、先生!?」

穂乃果「な、なにやって…!」

山田「ヒッグ…いやぁ~!私、これに入ってる間に“あいどる”に〇されちゃってさぁ~!ここから出られなくなっちゃったのよ…!ヒッグ…」

穂乃果「……っ!??」

山田「元教え子と飲み明かすのも悪くないしな!!」

山田「さぁ、ついて来い!!!」

穂乃果「い、いや私!やることがあるのでぇ~!」

山田「いいからいいから!!」

グイッ!!

穂乃果「え、えぇぇ~…!!?」

ズルズルズル……

293: 2020/08/13(木) 05:20:47.37 ID:pSCXbzM0




タッタッタッ…

にこ「はぁはぁ…秋穂は!?」

凛「車でAqoursの子と一緒に連れて行かれた…!」

にこ「なんで止めなかったのよ…!?」

真姫「エリーがよしなさいって」

にこ「…その絵里はどこ?」

希「車のトランクに忍び込んでたけど…」

にこ「……なら、秋穂たちのことは絵里に任せましょう」

にこ「秋穂、校内のどこかに中性子爆弾のリモコンがあるって言ってた!」

にこ「私たちはそれを探すわよ!」

花陽「ツバサさんは? 」

にこ「ここに残った軍の奴ら、急にツバサに手を出さなくなったの…だから出てきた」

希「なんで手を出さなくなったの?」

にこ「わからないわよ、そんなの…」

真姫「…向こうで何かあったのかもしれないわね」

294: 2020/08/13(木) 05:26:48.04 ID:pSCXbzM0
ブゥゥゥゥン…

秋穂「穂乃果おばちゃんのところに連れて行って!」ジタバタッ

中佐「大人しくしろ」

秋穂「国連軍じゃ中性子爆弾は処理できない!」

中佐「なぜそんなことがわかる?」

秋穂「穂乃果おばちゃんならどうすればいいのかわかる!だから…!」

中佐「また世界中を騙すのか?」

秋穂「え…?」

中佐「世界中が血の惨劇に見舞われた、“あいどる”のせいでな」

中佐「……デタラメを言うなよガキが。いや、“あいどる”の……悪魔の娘が」

スチャッ…

中佐「あ?」

千歌「秋穂ちゃんのこと、そんな風に言わないでください…!」

中佐「貴様、なぜそんなものを…」

千歌「一応…警察なので」

295: 2020/08/13(木) 05:33:38.69 ID:pSCXbzM0
千歌「車を止めてください!」

軍人「中佐…」

中佐「チッ…止めろ」

軍人「は、はい…」

キィィィ…

千歌「穂乃果さんのところに連れて行ってください!」

軍人「む、無理だ…」

ガチャリ

軍人「え?」

絵里「運転を変わりなさい」

ガシッ、バッ

軍人「ぐっ…!」ドサッ

軍人「ちょ…!ま、待て…!」

ブルルン…ブゥゥゥゥン!

秋穂「絵里おばさん…なんで…」

絵里「穂乃果はどこにいるの?」

千歌「“あいどるランド”です!」

絵里「…わかったわ」

296: 2020/08/13(木) 05:40:51.06 ID:pSCXbzM0
中佐「馬鹿な真似を……」

中佐「無理だ、“あいどるランド”に行ったところで入れやしない」

千歌「あなたが人質なら入れるはずです!」

絵里「……!」

キィィィ…!!!

千歌「…っ!!」グラッ

秋穂「…っ!!」グラッ

秋穂「ど、どうしたの?絵里おばさん!?」

絵里「……見てみなさい……もう、非常線を張られてるわ」

絵里「あなた、何か言ったでしょ?無線がどこかに?」

中佐「ふん、だから無理だと言ってるだろ」

絵里「ツバサに手を出さないよう、部下に伝えなさい、さもなくばあなたの命は……」

中佐「もう伝えてある」

絵里「そう……小心者なのね」

秋穂「……っ」

秋穂「おばちゃんッ……」

秋穂「どうしたら…どうしたらいいの?」

秋穂「穂乃果おばちゃんッ…!」

297: 2020/08/13(木) 05:51:02.87 ID:pSCXbzM0
中佐「諦めて投降しろ」

千歌「あなたが通せるよう言ってください!!」

中佐「目を覚ませ」

千歌「え…?」

中佐「こいつはあの“あいどる”の娘だぞ?」

中佐「そんな奴の言うことを信じてどうする?」

中佐「こんな悪魔の娘の戯言を…」

千歌「…っ、その言い方はやめてください!」

千歌「この子は…」

秋穂「ブツブツブツ…」

千歌「……?」

中佐「ほら…初まったぞ、忌まわしい悪魔の呪文が」

絵里「秋穂……」

秋穂「助けて…お願い…聞こえる…?」

秋穂「おばちゃん…おばちゃん…」

秋穂「穂乃果おばちゃんッ…!!」







穂乃果「……Zzz」

穂乃果「あっ…!!うわぁぁ!!」ガバッ

穂乃果「……あれ?今の夢?」

穂乃果「……って、ダメダメ!明日テストなんだよ~…!」バタッ

穂乃果「早く寝て、HR前に範囲詰め込まないとダメだから~~……!!」

326: 2020/08/22(土) 00:11:15.85 ID:3nuN5ONi




~バー~

山田「っはぁ~!!」

穂乃果「先生、もう、だいぶ酔っ払ってますよね…?」

山田「構わないって!どれだけ酔ってたって、どうせ死んでんだし!」

穂乃果「だけど…」

山田「ゴキュッ、ぷはぁ……なぁ、高坂」

穂乃果「はい?」

山田「お前、どこまで知ってるんだ?」

穂乃果「え…?」

山田「ここまで来たんだ……“あいどる”の正体はもう知ってるんだろ?」

穂乃果「………」

山田「どうなんだよ?」

穂乃果「……たぶん、本当のところ、何もわかってないんだと思います」

山田「……そうか」

327: 2020/08/22(土) 00:17:10.32 ID:3nuN5ONi
穂乃果「……なんで、彼女はツバサさんの顔に?」

山田「ん?……さぁな……似てたからじゃない」

穂乃果「………」

山田「……ってのは冗談で、多少は憧れがあったんじゃないの?」

穂乃果「憧れ…」

山田「そうさ…憧れ」

山田「と言っても、A-RISEに憧れたんじゃないのかもな」

穂乃果「どういうことですか?」

山田「……μ'sが憧れたA-RISEに憧れを抱いたんじゃないか?」

328: 2020/08/22(土) 00:23:34.70 ID:3nuN5ONi
山田「それより意外だな高坂」

穂乃果「え?」

山田「正直、私、怒られると思ってたよ」

山田「なんで“あいどる”の味方したのかって」

穂乃果「聞いちゃダメだと思って…」

山田「気にすんなよ。どうせ死んだ身なんだ、聞けよ」

穂乃果「……じゃあ、どうして」

山田「……お前らが空き教室をスクールアイドルの練習に使いたいって言ったことあったろ?」

穂乃果「あぁ…まだ3人の時ですね…」

山田「私、あの時、鼻で笑ったんだよな…」

山田「結局、あんた達はあんなにすごくなっちゃって…」

山田「だから…私、決めたの…生徒がやろうとしてることは、ちゃんと応援してやろうって」

穂乃果「………」

329: 2020/08/22(土) 00:30:28.65 ID:3nuN5ONi
山田「……2013年の夏頃だったかな」

山田「あいつは突然……私の前に現れた」

山田「サークル活動の手伝いをしてほしいって言われてな」

山田「どうしても…って言うから手伝ったんだ」

穂乃果「そのサークルが宗教団体としての始まりですか…?」

山田「そういうことだ。私もまんまとあいつの片棒を担いだってわけだな」

山田「そこから半年後か……高坂、お前の妹がとある研究を始める」

山田「絢瀬妹と子供を作ろうとしたんだよな」

穂乃果「……雪穂はそんなの素人です」

穂乃果「独学でなんて無理が……」

山田「だから、その分野に詳しい木皿教授の娘を知人に紹介してもらい、協力してもらった」

330: 2020/08/22(土) 00:38:29.27 ID:3nuN5ONi
山田「研究は順調だった…」

山田「だが、研究の最中、偶発的にとんでもないウィルスが出来てしまった」

山田「血の大晦日で使用された、あのウィルスだ」

山田「その時はまだ完成形とは程遠い代物だけどな」

山田「ウィルスの存在を嗅ぎつけた“あいどる”は、自分の部下を高坂妹に接触させた」

穂乃果「ウィルスを渡すようにって?」

山田「そうだ。だが、当然どこの馬の骨かもわからんやつに、そんなウィルスを渡せるはずがない」

山田「なぁ高坂、2015年の2月になにがあった?」

穂乃果「……お父さんが亡くなりました」

山田「その年の5月には?」

穂乃果「……亜里沙ちゃんが」

山田「そうだな」

山田「それ、どっちもあいつの仕業だ」

穂乃果「………」

331: 2020/08/22(土) 00:45:31.40 ID:3nuN5ONi
山田「まぁ、絢瀬妹を〇すことに異論を唱える奴もいたからな…」

山田「後々のことも考えて、絢瀬妹は裏では生かしていたんだが…」

山田「絢瀬妹を失ったことによって、目的まで失った高坂妹は悲惨だったなぁ…」

山田「さらりとあいつの物になった」

山田「それはそれは単純だったよ」

山田「2015年の9月、あいつは勧誘を始めた」

穂乃果「勧誘……それって確か、スクールアイドルを中心にしてましたよね?」

穂乃果「なんの理由があってなんですか…?」

山田「クローンを作るためだよ」

穂乃果「クローン…?」

山田「そう。お前たち、μ'sのな」

穂乃果「私たちの…?」

332: 2020/08/22(土) 00:56:00.85 ID:3nuN5ONi
山田「いろいろデータを取るために勧誘してたんだ…まぁ、拉致に近いけどな」

山田「あいつ、Aqoursとかいうグループに太鼓判を押してたな…μ'sに似てるって」

山田「9人だし、私たちもリストアップしてたんだ…まぁ、Aqoursに関してはもう少し後の話だけどな」

山田「勧誘を始めた同時期。NYの研究施設でウィルスの製造を開始した」

山田「高坂妹を先頭にしてな…」

山田「あの時の高坂妹は“あいどる”にゾッコン状態だったからな……自分がやってることに、なんの疑問も持ってなかった」

山田「ほぼ洗脳に近い状態だったからな…」

山田「まんまと絢瀬妹とするつもりだった方法で、あいつと子供まで作っちまった」

穂乃果「………」

333: 2020/08/22(土) 01:07:59.08 ID:3nuN5ONi
穂乃果「雪穂は使われたんですか…?」

山田「え?」

穂乃果「だって…その方法がどんなのか知らないですけど…産むのは雪穂じゃなくても良かったってことですよね…?」

山田「……まぁ、そういうことになるな」

穂乃果「なんで……」

山田「……簡単な話だ。あいつは痛い思いをしてまで、子供なんてほしくなかったんだよ」

山田「……でもなぁ」

山田「高坂、お前の妹は違う」

穂乃果「……!」

山田「確かにあの時、高坂妹は洗脳された状態だったかもしれない」

山田「あいつは秋穂を愛してなんかいないが……でも、高坂妹は違う」

山田「あの2人は偽りの愛だったかもしれないけどな……高坂妹と秋穂の2人は違う」

山田「血の繋がった親子なんだ」

山田「……心配すんなよ。とてつもなく痛い思いをして産んだ我が子なんだ。愛おしいに決まってんだろ」

穂乃果「先生……」

334: 2020/08/22(土) 01:15:59.65 ID:3nuN5ONi
山田「……秋穂が産まれたのが2017年9月の話だ」

山田「だか、それから事態は急転する」

山田「あいつのサークル活動が高坂妹に見られちまった」

山田「不審に思われて後をつけられたんだろうな…」

山田「子供が出来て、親としての自覚が芽生えていた高坂妹は、既に洗脳が解けかかってた…」

山田「それに加えてあの不気味なサークルという名の宗教活動を見て、流石に目が覚めたんだろうな…」

山田「あいつも家に帰ったらもぬけの殻でビックリしただろうな…あはは…!」

山田「妻も娘もいないんだからな」

335: 2020/08/22(土) 01:26:53.73 ID:3nuN5ONi
山田「さて、今のが2017年12月の話だ」

山田「あいつから逃れるために、高坂妹が頼る場所…そんなの一つしかないよな?」

穂乃果「………」

山田「……お前のところに行っただろ?」

穂乃果「……確かに雪穂は来ました」

穂乃果「でも、秋穂はその後に預けられたんです。雪穂から直接では…」

穂乃果「……なんで、雪穂は自分で秋穂を預けなかったのかな……」

山田「そりゃあ、自分が洗脳されてたんだぜ?」

山田「姉のお前も“あいどる”に洗脳されてる可能性は否めない」

山田「だから念のために1人で…大丈夫か確かめに行ったんだろ」

山田「けど、お前は取り込まれていなかった」

山田「木皿教授の娘がお前に秋穂を託した後、2人はワクチン開発に着手した」

山田「これが2018年2月の話だ」

山田「だが……今度は2019年の1月に木皿教授の娘が“あいどる”に洗脳されてな」

穂乃果「じゃあ、ワクチンは出来なかったんですか?」

山田「いや……確かその後、高坂妹が1人で静岡の沼津に行って、作ってたはずだけど?」

336: 2020/08/22(土) 01:42:29.39 ID:3nuN5ONi
山田「熱心に作ってたけど…まぁ、1人じゃ限界があるからな」

山田「血の大晦日前に出来たワクチンも……木皿教授の娘を洗脳して、“あいどる”が握っちゃったし……」

山田「2035年に“あいどる”が復活した時も醜いもんだ……ワクチンの奪い合いだよ」

山田「全員に行き届かないからな…」

山田「さっきまで仲良くやってた連中が……次の瞬間にはワクチンを取り合って、目の色変えて〇し合いだよ」

山田「人間ってのは怖いね~…まさに地獄だったよ、ゴキュッ」

穂乃果「……先生」

山田「んっ?どうしたぁ?」

穂乃果「……その地獄を作ったのは誰のせいですか?」

山田「……私たちか?」

穂乃果「……いや、私のせいです」

山田「………」

穂乃果「……私、彼女と話をしないといけないんです」

山田「話をしないといけない……か」

山田「そうか……お前がここにいるからまさかとは思ってたけど……」

山田「……死んだんだな……あいつ」

穂乃果「………」コクッ

337: 2020/08/22(土) 01:51:27.77 ID:3nuN5ONi
山田「あいつがどこにいるのか分かってんのか?」

穂乃果「……はい、分かってます」

山田「……そうか」

山田「ふふ…あいつ、お前のこと犬だって言ってたぞ」

穂乃果「え…」

山田「くぅ~んって、お前が鳴くからな」

山田「……あっ」

穂乃果「……じゃあ、やっぱり“るどいあ”と名乗っていた時は別の……」

山田「ご名答~」

穂乃果「……私、血の大晦日で防護服を着てない彼女を見たんですけど、なんで感染しなかったんですか?」

山田「ありゃホログラムだ」

山田「なんだよ…そんなしょうもない事が聞きたいのか?」

穂乃果「………」

338: 2020/08/22(土) 02:06:29.73 ID:3nuN5ONi
穂乃果「……なんで先生はここに入ろうと思ったんですか?」

山田「ん?あぁ、あいつの大嘘を暴いてやろうと思ってな」

穂乃果「大嘘?」

山田「……私だけじゃない、世界中の人間全員についてる嘘だ」

山田「それを探ろうと、ここであいつの過去を見てたんだが、やってる最中に〇されちまった」

山田「もしかしたら世界を滅亡させる前に〇す……ある種のあいつの優しさなのかもな」

山田「……色々とツバサには協力してもらったから……もしかしたらツバサは酷い目みてるかも……。それは申し訳ないな」

穂乃果「………」

山田「……お前、やっぱり、約束してたな」

穂乃果「……え?」

山田「約束してたのに…高坂、あの時は受験に必死になっちゃっててな…」

穂乃果「………」

339: 2020/08/22(土) 02:13:30.69 ID:3nuN5ONi
山田「NYにアキバドームまで作って、それにμ'sのロゴまで刻印して…あの嘘はないよな」

穂乃果「なんで彼女はわざわざ歌詞を?」

山田「え?歌詞?」

穂乃果「最初はμ'sの歌詞を参考にしてたし…」

穂乃果「歌詞を書いてから犯行に移すなんて、まどろっこしいことしなくても…」

山田「…なに言ってんだよ高坂」

山田「お前が言ったんだろ?」

穂乃果「え?」

山田「……言葉にすればそれは叶う……って」

穂乃果「あっ……」

山田「言葉に出すことによって夢が叶ったμ's」

山田「言葉に出して自ら叶えたあいつ」

山田「……誰にも頼れなかったんだよな」

穂乃果「………」

340: 2020/08/22(土) 02:17:56.55 ID:3nuN5ONi
山田「私も最初のうちは、こんなことになるなんて思いもしなかったよ…」

山田「…自分が死ぬなんてことも」

山田「……LOVELESS WORLDの歌詞ってよく出来てるよな」

穂乃果「……え?」

山田「やっぱり園田ってすげぇよ…!センスあんのに…もう詞は書かねぇのかな?」

穂乃果「い、いや…どうなんだろう…」

山田「……まぁ、書かないか」

山田「だってμ'sは…」

山田「解散しちゃったんだもんな…」

穂乃果「………」

341: 2020/08/22(土) 02:24:26.14 ID:3nuN5ONi
山田「……あんたの姪っ子さ」

穂乃果「姪っ子…秋穂がどうかしたんですか?」

山田「何かおかしな事ないか?」

穂乃果「おかしな事って?」

山田「いや、高坂妹も妊娠中にわけわかんないやつ、たくさん服薬させられてたからさ…」

山田「娘になんか変な効果出てないかなって」

山田「あんた、何か心当たりないの?」

穂乃果「いや……あっ」

山田「おっ、あるんだ?」

穂乃果「はい……」

穂乃果「昔、穂むらに“あいどる”の信者達が押しかけてきたことがあって……」

穂乃果「その人たち、秋穂を拐おうとしたんです」

穂乃果「お母さんと私で必死に抵抗したら……火をつけてお店が炎上しちゃったんです……」

穂乃果「その時、泣きじゃくる秋穂が……9人を揃えないと……って言ったことがあるんです」

穂乃果「……まぁ、その時、秋穂は0歳だし、やっぱり何かの間違いだと思うんですけど……」

山田「ふ~ん…」

山田「何か他には?」

穂乃果「ん~……ないと思いますけど」

山田「……そうか」

342: 2020/08/22(土) 02:37:34.43 ID:3nuN5ONi
穂乃果「」クラッ

穂乃果「あ……れ……?飲み過ぎたのかな……」

穂乃果「な…ん…だ…か…眠く…」グテッ…

穂乃果「……Zzz」

山田「………」

山田「なぁ、高坂」

山田「私、たくさん許せない事しただろうけど…」

山田「最期にお前と飲めて良かったよ」

山田「……たまに思うんだよ」

山田「あの時、あんた達がμ'sなんて結成しなければ“あいどる”は生まれなかったんじゃないかって…」

山田「そうしたら、廃校は免れなかっただろうけど……私が死ぬこともなかった」

山田「……だけどな、やっぱり思うんだよ」

山田「……ずっと言えなかったけど」

穂乃果「……Zzz」

山田「………」

山田「……廃校を救ってくれて、ありがとうな」

穂乃果「……え、えへへ……Zzz」ニマッ…

山田「これは“あいどる”側の幹部としてじゃなく、昔の……教師・山田博子としての言葉」

山田「……お前の話を聞いてると、秋穂の力じゃダメそうなんだ」

山田「運命なのかな…」

山田「やっぱり、学校はあんたが守るしかなさそう」

山田「……頑張ってくれよ、高坂」

スゥゥゥゥ…

穂乃果「」ピクッ

穂乃果「せ……ん……せ……」

343: 2020/08/22(土) 02:43:22.21 ID:3nuN5ONi
チュン…チュン…

オキャクサマ…オキャクサマ…!

穂乃果「んぅ……?」ムクッ

穂乃果「今、何時ぃ……?」

マスター「もう朝ですよ」

穂乃果「あれ……私、寝ちゃってた?先生は?」

マスター「……消えました」

穂乃果「消えた…?帰ったってことですか?」

マスター「いえ…言葉の通り、消えたんです…」

マスター「まるで、昇天するかのようにスーッと…」

穂乃果「え……」

マスター「私もそれを見て、夢かと思いましたが」

穂乃果「……そう……ですか」

穂乃果「……先生ッ」

352: 2020/08/25(火) 00:39:38.16 ID:BQ7/N7VO
ガサッ…

穂乃果「ん?」

穂乃果「ポケットに何か入ってる…?」

クシャッ

穂乃果「……手紙?」

穂乃果「いつの間にこんなの……」

クシャクシャ…

穂乃果「……中性子爆弾にリモコンなんてない。ロボットがスイッチを踏んだ時が世界の終わり」

穂乃果「……これって、先生から?」

穂乃果「スイッチ……」

ギュル!!

穂乃果「……っ!」

穂乃果「ぐぅっ…!またっ…!」

ギュルルル!!!

353: 2020/08/25(火) 00:48:39.49 ID:BQ7/N7VO
(穂乃果)「……っ」パチッ

(穂乃果)「ここは…」キョロキョロ

(穂乃果)「…音ノ木坂の校内?」

ザワザワッ…

(穂乃果)「…って、あっ…私、人目についちゃってる…!」


ことり「ほ、穂乃果ちゃぁん…ダメだよぉ…」

海未「よ、よしなさい…!行くんじゃありません…!穂乃果…!」

(穂乃果)「え……私のこと?」

穂乃果「海未ちゃんもことりちゃんも心配しすぎだよ~!」

穂乃果「平気平気!!」

穂乃果「だって私たち知り合いだし!そうですよね?お姉さんっ!」

(穂乃果)「あ、私……じゃなくて……穂乃果ちゃん」

(穂乃果)「どうしたの?私に何か用が?」

穂乃果「それがそれが!大変なんです!」

穂乃果「私、昨日は早起きして朝にテスト勉強するために早く寝たの!」

(穂乃果)「うん」

穂乃果「そしたら…夢の中に女の人が出てきて…」

(穂乃果)「女の人?」

穂乃果「うん!その人、秋穂っていう名前で!」

(穂乃果)「……!」

354: 2020/08/25(火) 00:55:08.54 ID:BQ7/N7VO
(穂乃果)「……秋穂?」

穂乃果「はい!その子、妹に似てて可愛いんですよ~!」

(穂乃果)「そ、それはそうとして、秋穂ってあの秋穂!?」

ガシッ

穂乃果「うぇぇ…!?ど、どの秋穂だか知らないよ~!」

穂乃果「と、とにかく!夢の中で私に言うんです!」

穂乃果「ホノカおばちゃんに伝えて!……って!」

(穂乃果)「……なんて?」

穂乃果「サングラスかけてキャップ被ったホノカって、お姉さんのことでしょ?」

(穂乃果)「いいから秋穂は何を伝えてって…!?」

ユッサユッサ!!

穂乃果「わっわっわっわっ!!」

穂乃果「え、え~と……中性子爆弾のリモコンは……」

(穂乃果)「………」

穂乃果「ここ……音ノ木坂学院にあるって……」

355: 2020/08/25(火) 01:10:56.32 ID:BQ7/N7VO




~園田家 道場~

ことり「……穂乃果ちゃん、大丈夫かな」

海未「……穂乃果の悪い癖ですね、みんなを振り回して……すぐに心配させて……」

ことり「あはは…振り回すかぁ…でも、そこが穂乃果ちゃんのいいところでもあるんだよね…♪」

ことり「……穂乃果ちゃん、困ったことがあったら相談してほしい……頼ってほしいな」

海未「そんなの出来っこありませんよ……思い立ったら、すぐに体が動く子なんですよ?」

海未「……本当にバカなんですから」

ことり「もうっ、海未ちゃん?それ、穂乃果ちゃんに言っちゃダメだよ?」

ことり「ふくれちゃうよ?」

海未「はぁ…わかっていますよ」

ガラッ!!

海未「…?」

軍人「園田海未さん!南ことりさん!」

軍人「あなた達の仲間が我が軍の中佐を人質に取り、車内に立て篭っています!説得にご協力願いたい!」

ことり「!?」

海未「ど、どういうことですか…?」

軍人「詳しい説明は現場に向かいながら!ですから同行を!」

海未「……わかりました。現場に連れて行ってください」

356: 2020/08/25(火) 01:21:25.59 ID:BQ7/N7VO




キィィン…

『君たちは包囲されている!直ちに投降しなさい!』

『君たちの要求を聞くために、いま交渉人がこちらに向かっている!』


千歌「要求…?交渉人…?」

千歌「私たちは、ただ穂乃果さんに会わせて欲しいだけです!!」

絵里「よしなさい、声を張り上げるだけ無駄よ」

千歌「だけど…」

絵里「国連軍は私たちのことを敵だと思ってる。何を言っても信用なんてしてもらえないわ…」

中佐「…ふんっ、当然だろうが。“あいどる”は全世界を欺いたんだ」

中佐「お前たちはその関係者だ。ましてやホノカなど、この件に関する中心人物、言わば重要参考人だ……信じるに値しない」

中佐「……その中でも特にこの、悪魔の娘はな」

千歌「そんな言い方……!」

秋穂「…っつ!」

秋穂「っはぁ…はぁ…通じた…」

絵里「…通じた?」

秋穂「うん……昔の穂乃果おばちゃんが……答えてくれた」

中佐「ほう、悪魔の儀式は済んだのか?」

スチャッ

中佐「!」

千歌「秋穂ちゃんは命をかけて、ずっと世界を救おうと頑張ってきた!」

千歌「今のだって…穂乃果さんに重要なことを伝えていただけです…!」

中佐「……盲目的な奴らは話にならんな」

357: 2020/08/25(火) 01:31:27.23 ID:BQ7/N7VO




(穂乃果)「…っ」ワナワナ

(穂乃果)「ダメ…そこに行ったら…」

穂乃果「そこって……お姉さん、もう来てるじゃん」

穂乃果「ここが学校だよ?」

ガシッ!!

穂乃果「ふ、ふぇっ!?」

(穂乃果)「ロボットは……ロボットはもう動き始めてるの!?」

穂乃果「ロボット…!?」

穂乃果「し、知らないよ~!!っていうか、なんのことかわかんないよ~!!」

(穂乃果)「とにかく、秋穂に伝えて!!」

穂乃果「へ、へ…?秋穂…?」

(穂乃果)「…っ、あなたに呼びかけてきた可愛い女の子!!」

穂乃果「い、いや…それはわかってるんだけど、どうやって伝えるのかなって…?」

穂乃果「夢の中で喋ったんだよ?」

(穂乃果)「……!!」

(穂乃果)「ね、寝るの…!!今すぐにッ…!」

穂乃果「えぇ~!?む、ムチャ言わないでよ~…!」

358: 2020/08/25(火) 01:40:02.70 ID:BQ7/N7VO




キィィン…

ことり『秋穂ちゃん…!私…!ことり…!』

ことり『どうしちゃったの…!?いったん落ち着いて話そう、ねっ…?』

パシッ

ことり「あっ…」

海未『秋穂!軍の方に迷惑をかけるんじゃありません!早く出てきなさい!』


…ガチャ

秋穂「違うの…!ことりおばちゃん、海未おばちゃん!」

秋穂「中性子爆弾のリモコンがどこにあるのかわかった!」


ことり「……!?どういうことっ…?」


秋穂「音ノ木坂学院なの!学校に中性子爆弾のスイッチがある!!」


海未「……学校に?」


ガチャ…

絵里「海未、ことり、国連軍は味方じゃないわよ」


海未「絵里…」


絵里「私たちのことなんて、これっぽっちも信用してないわ」

359: 2020/08/25(火) 01:46:26.06 ID:BQ7/N7VO
軍人「」スチャッ 軍人「」スチャッ 軍人「」スチャッ

絵里「……ね?」


海未「………」

ピー、ガガッ

軍人A「ん?はい、こちら……」

軍人A「はい…はい…はい…え?」

海未「……?」

軍人B「どうした?」

軍人A「び、ビルに突っ込んだまま放置されていたロボットが…再び動き始めたようです…」

軍人B「なにっ!?」


絵里「……秋穂の話は恐らく本当よ」


海未「……そのようですね」

360: 2020/08/25(火) 02:06:15.13 ID:BQ7/N7VO
秋穂「ことりおばちゃん!海未おばちゃん!一緒に音ノ木坂に行って、リモコンを探すの手伝って!」

ことり「う、うん…その方がいいみたいだね…!」

軍人B「ふんっ!行かすか!馬鹿どもが!」バッ

秋穂「……くっ」

バキッ!!

軍人「グエッ!!」

軍人「」バタンッ…

秋穂「……え?」

果南「……もう、千歌!何やってんの…!」

千歌「か、果南ちゃん!」

ダイヤ「ライブの下見に行ったきり帰ってこないと思えば…」

梨子「道草食ってちゃダメだよ?」

花丸「うぅ…まさか、こんな事になってるなんて思いもしなかったずら…」

善子「なんだか心躍るわねぇ…!こういうのぉ…!」ワクワク

ルビィ「善子ちゃん、楽しそうだね…」

曜「うふふふ…!助太刀いたす!」

千歌「みんな…!!」

鞠莉「おっと~!千歌ッチはそいつから銃口を離しちゃダメだよ?」

千歌「あっ…う、うん!」

グイッ…

中佐「ぐっ…!」

千歌「ここは私たちに任せて…行ってください!」

秋穂「うん…!ありがとう、お願いするね!」

絵里「行きましょう…!」

ダダダダッ…

軍人A「お、追え!」

鞠莉「おっと~!追ったらどうなるかわからないかな~?」

鞠莉「千歌ッチの銃があなた達の上官目掛けてファイヤ~!って、事になるよ…♪」

軍人達「……うぐっ」

361: 2020/08/25(火) 02:22:06.74 ID:BQ7/N7VO
タッタッタッ…

秋穂「はぁ…はぁ…」

海未「秋穂…?大丈夫ですか…?」

秋穂「だ、大丈夫…全然平気だよ…?」

ことり「なんだか秋穂ちゃん、顔色が悪いよ…?」

秋穂「だ、大丈夫だから…!私が足遅いだけだよ…!」

ことり「ほ、本当に?」

秋穂「ほんとほんと…!」

海未「本当じゃないでしょう…」

秋穂「…っ、はぁはぁ…」

海未「すぐにわかる嘘をつくんじゃありません……あなたの運動神経はずっと学年トップだったでしょう……」

秋穂「…っ。ほ、本当に平気だ…か…ら…」

秋穂「…ぅぁ」フッ…

海未「え?」

バタッ…!

秋穂「」

海未「秋穂!?」

ことり「秋穂ちゃん!?」

絵里「………」スタスタ

絵里「」スッ

絵里「……大丈夫よ。息も脈もある……疲れてるのね、気絶しただけだわ」

ことり「だけど…」

絵里「心配しないで。学校まで秋穂は私がおぶるわ、急ぎましょう」

海未「は、はい…」

362: 2020/08/25(火) 02:27:50.32 ID:BQ7/N7VO




(穂乃果)「早く秋穂に伝えて!!」

ユッサユッサ!!

穂乃果「ううぇぇ~!??」

バッ

海未「や、やめてくださいあなた!先程から黙って見ていれば……!」

海未「……って、え?」

海未「あなた、まさか……?」

(穂乃果)「流石海未ちゃん、勘がいいね…」

(穂乃果)「でも、今はそれどころじゃないんだ…」

(穂乃果)「……誰か、誰か!」

363: 2020/08/25(火) 02:35:08.16 ID:BQ7/N7VO
『そこにいるよ』

(穂乃果)「!?」ビクッ

『ほら、穂乃果の大切なもの』

『そこに2つもあるよ?』

『学校と秋穂……今度も守れる?』

『ふふふ……私もそこにいるからさ』

(穂乃果)「………」

穂乃果「……?お姉さん?」

(穂乃果)「今、喋った子ってどこに…」

穂乃果「喋ったって……誰がですか?」

(穂乃果)「え…?聞こえなかったの…?今…」

穂乃果「今…?」

(穂乃果)「……うーうん。それより、秋穂が学校にいる」

(穂乃果)「どうしよう…!!」

(穂乃果)「秋穂が…みんなが…!学校が踏み潰されたら、世界が終わっちゃう…!!」

364: 2020/08/25(火) 02:40:15.46 ID:BQ7/N7VO
(穂乃果)「ロボットが今、動きだしでもしたら…!」

ことり「ねぇ…穂乃果ちゃん…」

穂乃果「ん?」

(穂乃果)「え?」

ことり「気のせいかな…?何か遠くで、足音みたいな…」

穂乃果「足音…?」

海未「はい、地鳴りのような…」

穂乃果「……うーん、ここからは何も見えないけどなぁ~」

ことり「地震かなぁ…?」

(穂乃果)「……来たんだ」

穂乃果「へ?来た…?」

(穂乃果)「向こうではロボットが動き出して……音ノ木坂学院を目指してやって来てる」

穂乃果「向こう…?」

(穂乃果)「……っ」

(穂乃果)「私が……行かないと……」

365: 2020/08/25(火) 02:48:37.18 ID:BQ7/N7VO
穂乃果「……お姉さん?」

(穂乃果)「行かないと…ダメなんだ…」

(穂乃果)「……っ!どうやったらここから出られるの!?」

穂乃果「で、出る!?どういうこと!?」

(穂乃果)「ここから出るにはどうしたらいいの!?」

穂乃果「……よく分からないけど」

穂乃果「どこかへ行きたいなら」

穂乃果「Go!Go!!」

(穂乃果)「……?」

穂乃果「えへへ…勢いよく進むんだよ!!」

穂乃果「ほら!負けない Go!Go!!未来をつかまえたくて」

穂乃果「誰より Go!Go!!遠くへ飛んでみようか」

穂乃果「ね!飛べるよ!」

(穂乃果)「………」

穂乃果「いつだって飛べる!」

(穂乃果)「あっ……」

穂乃果「」ニコッ

(穂乃果)&穂乃果「あの頃のように」

366: 2020/08/25(火) 02:53:43.38 ID:BQ7/N7VO




ピピピピピピ

軍人1「血圧上昇!」

軍人2「脈拍も異常に上がっています!」

プロファイラー「いったいどうしたんだ!?」

軍人3「わ、わかりません!」

軍人4「あ…!あっ、あれ!」

プロファイラー「!?」


穂乃果「……!!!」ギチチチチ…

プロファイラー「!?」

プロファイラー「い、いけない!穂乃果さん!」

軍人1「ヘッドマウントディスプレイを外そうとしている!」

軍人2「正規の方法で終了しないと…脳に異常が…いや、命が危ない…!!」


穂乃果「ぐぅぅぅ…!!」

穂乃果「うううぅぅぅっっ…!!」

グイィィィ……!!!

367: 2020/08/25(火) 03:16:33.24 ID:BQ7/N7VO



「だって可能性感じたんだ」

「っていうかさ、音ノ木坂無くなっちゃうんでしょ?」

「今日から私たちは…μ'sだ!」

「大丈夫!次こそ出来る!」

「悔しいから秘密にしておきます…!」

「ずっと一緒にいようね…!」

「残念ながら、ウチができるのは誰かを支えてあげることだけ」

「スクールアイドル…辞めます」

「でも、この天気だから…すぐに消えちゃうわよ」

「今が最高…!」

「人間その気になれば…なんだって出来るよ!」

「穂乃果のことだから、すぐ飽きちゃうと思ってたんだけど」

「今日みんなを1番の笑顔にするわよ…!」

「学校を守るためにアイドルを始めて、その目的が達成出来たから辞めた、何も気にすることないじゃない」

「愛してるばんざーい!」

「今の私たちなら、きっとどこまでだって行ける!どんな夢だって叶えられる!伝えよう!スクールアイドルの素晴らしさを!」

「だから、μ'sのメンバーにしてください!」

「みんなが歌って、みんながセンター!」

368: 2020/08/25(火) 03:16:39.98 ID:BQ7/N7VO
「そして何より、負けたくないと思ってる」

「お願いだから、誰も死なないで…」

「私たちがサポートするよ!」

「私が大好きなスクールアイドル、μ'sに…私はいない」

「穂乃果おーばちゃん!!」

「大丈夫にゃ!」

「大会が終わったらμ'sは…おしまいにします…!」

「やり遂げたよ、最後まで」

「次のライブ!?ないないない!!絶対なーい!!」

「でもね、やっぱり無くなるのは寂しいの…」

「ラブライブのおかげでここまで来られたのは確かだけど、μ'sがそこまでする必要があるの?」

「やっぱり…スクールアイドルであることに…拘りたい…!」

「おばちゃんね、絶対に帰ってくる、約束する」

「一緒にやろうよ!曲作ってさ!約束だからね!」

「μ's ミュージックスタート!」

「なぜ?これ以上続けても、意味があるとは思えないけど?」



369: 2020/08/25(火) 03:24:36.52 ID:BQ7/N7VO
バッ!!

軍人1「あぁっ…!」

穂乃果「ゲホッゲホッ…!」

穂乃果「はぁ……はぁ……グハッ」

ポタッ…ポタッ…

プロファイラー「ほ、穂乃果さん…」

プロファイラー「きゅ、救護班を…!」

穂乃果「い、行かないと……」ヨロヨロ

プロファイラー「……なんということだ」

穂乃果「ゲホッ…ゲホゲホッ…!!」ヨロッ

軍人1「お、落ち着いてください!先に手当てを…」

穂乃果「はぁはぁ…ロボットが…動き始めたんでしょ…?」

軍人2「……あぁ、だが……なにも心配はいらない」

プロファイラー「……ロボットは我々が処理します」

穂乃果「ロボットがどこに向かってるのか知ってるの…?」

軍人2「……いや」

穂乃果「音ノ木坂学院に向かってる……そこに秋穂もいる……」

ササッ…

軍人3「……我々に任せてください」

穂乃果「はぁ…はぁ…どいてください…」

穂乃果「……学校は……私が」

穂乃果「私たちが……守る」

370: 2020/08/25(火) 03:32:41.37 ID:BQ7/N7VO
軍人4「あのロボットには原子力エネルギーが使用されています」

軍人4「しかし、今のところ放射能漏れは確認されていない」

軍人3「我々は今、あのロボットをどう破壊するか検討中で…」

穂乃果「ロボットは放置されていたところから動き始めたんですよね……」

穂乃果「まだ間に合う……どいてください」

プロファイラー「……穂乃果さん、あなたは今、軍の機密に関する重大な任務についているところで」

穂乃果「…っ!!どいてください…!!」

穂乃果「……この世が終わってしまうかもしれないんです」

穂乃果「……!」ツー

プロファイラー「鼻血が……」

軍人2「……そんな身体で何ができる?行ったところで……」

穂乃果「行かないとダメなんです……」

軍人1「……こいつをリタイアした時点で脳に損傷が行ってるはずだ。まず、学校まで辿り着けない……」

軍人3「そうだ、廃人になる可能性も……」

穂乃果「ブツブツ…」

軍人達「……?」

371: 2020/08/25(火) 03:42:39.78 ID:BQ7/N7VO
穂乃果「やりたいからです…今、私もっともっと歌いたい…踊りたいって思ってます…。きっと、海未ちゃんもことりちゃんもこんな気持ち初めてなんです。やって良かったって、本気で思えたんです…」

穂乃果「今はこの気持ちを信じたい、このまま誰も見向きもしてくれないかもしれない…応援なんて、全然してもらえないかもしれない…」

穂乃果「でも、一生懸命頑張って、私たちがとにかく頑張って、届けたい…今、私たちがここにいるこの思いを…」

軍人1「……やはり脳に異常が」

軍人2「意識が混濁しているな……」

軍人3「目的地まで行くのは……まず無理だろう」

穂乃果「……無理?」

軍人3「え?」

穂乃果「あはは……いつか私たち、ここを満員にしてみせます……」

穂乃果「………」

穂乃果「………」

軍人達「……?」

軍人4「気を失ったのか…?」

穂乃果「……私はもう逃げないって決めたから」

軍人達「……!」

穂乃果「だから……」

穂乃果「だから……!」

穂乃果「」キッ

穂乃果「無理なんて言わせないんだよっ…!!」

after episode(中)「僕たちはひとつの光」-完-


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