【試される姉妹の絆系SS】彼方「近江家が住んでる団地が、ダムの底へ沈む事になったぜぇ……」【ラブライブ!虹ヶ咲】

はるかかなた SS


1: 2021/02/23(火) 09:26:33.92 ID:SFgjautn
no title

2: 2021/02/23(火) 09:27:03.16 ID:SFgjautn
遥「…………え??」?


(朝食の食パンを、ポ口りと落とす)


遥「ごめん、お姉ちゃん」

 「まだ寝起きだから、よく聞き取れなかった」

 「もう一度いって?」?

彼方「いや、だからぁ……」

  「この辺り一帯が、ダムの底に沈む事になったんだってぇ……」

遥「なんでまた、急に……」

彼方「東京オリンピックが絶望的になっちゃったから、都知事がヤケクソで作ったらしいよぉ~~」

遥「それじゃあ……お姉ちゃん」

 「私たちが住んでる、この団地も……」?

4: 2021/02/23(火) 09:27:50.04 ID:SFgjautn
彼方「残念だけど、お国の偉い人が決めた事だからねぇ~~」?

  「それでね?遥ちゃん」

  「私たちも、ここから立ち退かなきゃならなくなったんだなぁ~~」

遥「立ち退くって……簡単そうに言うけどさぁ」

 「頼れる人がいない私たち一家が、これから住む所なんて一体どこに……」?
(先の暮らしを悲観する遥に、牧歌的な彼方が––––)


彼方「フッフフゥ~~ン♪」

  「その点はぁ、ドント・ウォーリーだよぉ~~♪遥ちゃん」?

遥「え?」

5: 2021/02/23(火) 09:28:15.51 ID:SFgjautn
彼方「実は私たちが立ち退くにあたって、国からたぁ~~んまり補償金を貰ったのさぁ~~♪」?

  「こんな猫の額みたいな家なんかより、もぉ~~っと広いマンションが私たちを待ってるよぉ~~♪」

遥「ほ、ホントなの!?お姉ちゃん!!」?

彼方「それにぃ、まだまだお金が有り余ってるからぁ~~……」

  「彼方ちゃん……もう奨学金もいらないし、毎日バイトする必要もなくなったんだぁ~~♪」

  「遥ちゃんだって、もう将来の学費を心配する必要も無いんだよぉ?」

遥「」

 「それって、つまり……」

 「これからはもっと、お母さんやお姉ちゃんと一緒にいられる時間が増えるって事?」?

彼方「真っ暗闇な人生とも、これでおさらばだよぉ~~♪」

遥「ゆ、夢みたい……!!」?


(遥の杞憂は、降って湧いたマネーパワーが吹き飛ばしてしまった)

6: 2021/02/23(火) 09:28:38.91 ID:SFgjautn
(と––––)


ピンポーーーーン♪


彼方「おおっ、ナイスタイミングぅ」


(彼方が玄関のドアを開けると––––)


侑「おはよう!彼方さん!」?

彼方「やっほぉ~~☆」

侑「約束通り、引っ越しの手伝いに来たよ!」


(侑の後から、ニジガクメンバーがぞろぞろと近江家になだれ込む)

(ただし、果林だけはモデル撮影の仕事があるため、この場に姿を見せていない)

7: 2021/02/23(火) 09:29:03.33 ID:SFgjautn
遥「みなさん、どうして……?」?

歩夢「彼方さんから、引っ越しの話を聴いてね」

  「私たちで、全面的にバッグアップする事に決めたんだ」?

せつ菜「私達が来たからには、もう心配いりませんよ!!遥さん」

   「力仕事は私達に任せて、遥さんは一足先に新居で待っていて下さい!!」?

遥「み、みなさん……」


(同好会のみんなが、家財道具を屋外へ搬送する光景を見ながら––––)


遥「いい仲間を持ったね、お姉ちゃん……」☺

彼方「うんうん……」

  「人の引っ越しに骨を折ってくれるだなんて、ざらにはいないよぉ~~」

  「ダムが出来て、ホント万々歳だよぉ~~」?

8: 2021/02/23(火) 09:29:20.43 ID:SFgjautn
  \キャッキャ キャッキャ/
ノレcイ=ω=) ζ(*^ᴗ^*)ζ








遥「お姉ちゃん……!!」

 「お姉ちゃん!!!!」

彼方「…………んん??」

遥「起きてよ!!!!お姉ちゃん!!!!」

 「大変なんだよ!!!!」??

彼方「…………んあ~~っ??」?

9: 2021/02/23(火) 09:29:54.55 ID:SFgjautn
~現実の朝、近江家・姉妹の部屋~
遥「このままじゃお姉ちゃん、溺れちゃうよぉ!!」

彼方「すやぁーーーー……」??

  「…………」

  「…………むにゃあ?」?


(必死の形相をした遥に揺さぶられ、彼方が目を覚ますと––––)


彼方「…………あれぇ?」


(彼方が寝ていた二段ベッドの下段付近は、すでに大量の水で水没していた)

10: 2021/02/23(火) 09:30:10.24 ID:SFgjautn
彼方「どうしたの?これ……」?

  「遥ちゃん、ひょっとしてトイレを詰まらせちゃった系?」

遥「寝ぼけてないで、早く家の中を見なよ!!」?


(遥に急かされた彼方が、ベッドから這い出てみると––––)

11: 2021/02/23(火) 09:30:24.43 ID:SFgjautn
no title

12: 2021/02/23(火) 09:30:41.48 ID:SFgjautn
遥「どういう事なの?お姉ちゃん」

 「さっきから、家中どこもかしこも水びだしだよ?」

 「台風とか、集中豪雨とかでもないのに……」?

彼方「ありゃりゃあ~~……」

  「こいつぁ~~弱ったなぁ~~……」?


(頭ポリポリ……)


彼方「水門が開くのは、正午前からだって言ってたハズなのになぁ~~」

  「後で文句を言って、補償金を上乗せして貰わなきゃ……」

遥「水……門?補償金??」?

 「さてはお姉ちゃん……なにか私に隠し事をしてるんじゃあ……」

彼方「あ、そうそう」

  「遥ちゃんにはまだ言ってなかったけど、実は……」?


~間~

13: 2021/02/23(火) 09:30:56.81 ID:SFgjautn
_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 何考えてるの!!??お姉ちゃん!!!! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

14: 2021/02/23(火) 09:31:34.81 ID:SFgjautn
彼方「ひぃっっっっ!!!!」??

遥「そんな大事な話を、どうして今の今まで黙ってたのぉ!!??」?

彼方「いや、だからさぁ~~」

  「今日は朝早く起きて、遥ちゃんに言うつもりだったんだよぉ~~?」

  「だけど、ほらぁ……」?
   ??
(指をクニクニ……)


彼方「昨日の夜さぁ……遥ちゃん、ベッドの中でオナニーしてたでしょ?」

遥「」?

彼方「おかげ様で二段ベッドのきしむ音がうるさくって、彼方ちゃん寝付けなくってさぁ~~……」

  「だから彼方ちゃんがお寝坊したのは、半分は遥ちゃんに責任があるんだよぉ?」

遥「~~~~~~~~~!!!!」?

15: 2021/02/23(火) 09:31:55.69 ID:SFgjautn
(ダムの事を黙っていた姉への憤りと、自家発電が姉にバレてた事への羞恥心がない交ぜとなり、遥の顔が真っ赤に茹であがる)


彼方「あららぁ?」

  「顔が赤いよ?風邪?」?

  「困るなぁ~~、引っ越し当日だというのにぃ……」

  「湯冷めならぬ、オナニー冷めでもしたのかい?」




遥「どこのっ!!」?

 「世界にっ!!」?

 「…………スゥーーーーッ」?

彼方「????」

遥「ダムの貯水開始日になって、引っ越しする家があるんだよぉぉぉぉ!!!!」


(彼方の耳キィーーーーン!!)

16: 2021/02/23(火) 09:32:17.83 ID:SFgjautn
彼方「うぉぉぉぉっ!!!!」??⚡⚡

  「彼方ちゃんの特待生脳みそがぁぁぁぁ!!」


遥「しかも、何!?補償金!?」

 「とどのつまり、札束でほっぺた叩かれて、この団地を売ったって事じゃん!!」?

彼方「ま、まぁ早い話が……」

遥「誰も計画に反対しなかったの!?」

彼方「冗談みたいな額面が踊る補償金を貰ったからねぇ~~」

  「鬼滅声優の彼方ちゃんでも、国家権力には勝てなかったんだなぁ~~」?

17: 2021/02/23(火) 09:32:35.87 ID:SFgjautn
遥「…………」

 「……信じられない」

彼方「ん?」?

遥「こんなみすぼらしい団地でも、私にとっては思い出が詰まっているのに……」

 「見損なったよ!!お姉ちゃん!!」?


(遥の怒りを和らげようと、彼方が語りかける)


彼方「あ、でもさぁ~~!!」?

  「新しい住居として、マンションを買ったんだよぉ~~!?」

  「おまけにほら、遥ちゃんの学費だって……」

遥「そういう問題じゃないんだよ!!」⚡✊?

 「マンションだとかじゃなくて、お姉ちゃんのさもしい根性が嫌なんだよ!!」


(立ち退き問題で、姉妹間に摩擦が起こる)

18: 2021/02/23(火) 09:33:05.79 ID:SFgjautn
彼方(お……おかしい……)?

  (夢の中では、諸手を挙げて大賛成していた遥ちゃんが……)

  (夢と現実の間で、かなりの相違が見られる……)


(そうこうしてるウチにも、ジワリジワリと水位が上昇していく)


彼方「あ~~、遥ちゃん??」?

  「こんな事をしてる場合じゃないと、お姉ちゃんは思うんだよなぁ~~」

  「喧嘩は後回しにして、今はここから脱出する事を考えなきゃ……」

  「…………ねぇ?」??

遥「…………」

 「そうだね……」?

 「この事は後で、腹を割って話し合うとして……」

19: 2021/02/23(火) 09:33:38.06 ID:SFgjautn
彼方「それでねぇ?遥ちゃん」

  「これもまた、遥ちゃんには内緒だったんだけどぉ……」

  「実は今日、同好会のみんなが引っ越しの手伝いに来る予定だったんだぁ~~」?

遥「同好会の……みなさんが?」

 「誰がどう考えても無茶苦茶なスケジュールなのに、どうして……?」?

彼方「それがさぁ~~、これが傑作で……」??

  「飛ぶ鳥を落とす勢いな鬼滅声優の彼方ちゃんのお願いには、みんな面白いぐらいに言う事聞いてくれるんだぁ~~♪」

遥「」?

20: 2021/02/23(火) 09:34:13.06 ID:SFgjautn
彼方「ほらさぁ……」

  「このコロナ禍で、みんな仕事が激減してるでしょ?」

  「ここで彼方ちゃんに恩を売っておけば、おこぼれに与れるっていう……みんなのゲスな下心が見え見えだったよぉ~~♪」?


(身も蓋もない彼方の推理で、遥が頭を痛める)



遥「醜い……醜いよ」

 「お姉ちゃんに輪をかけて、なんとまぁ浅ましい人達なんだろう……」?

彼方「これが声優の世界の出世術って奴だよぉ~~」

21: 2021/02/23(火) 09:34:26.90 ID:SFgjautn
彼方「今ごろは彼方ちゃん達の救出に、動いてくれてるハズだよぉ~~」

遥「このさい、裏事情はどうあれ……」

 「私達は助かるんだね?信じていいんだよね?」

彼方「モチのロンだよぉ~~~~♪」


(しかし––––)


遥「…………あれ?」

22: 2021/02/23(火) 09:34:42.17 ID:SFgjautn
――   _      ̄ ̄ ─‐= ― _    ̄ ̄ ̄  __  - ニ    ――

 ̄  __  -  二 ――  __@    ̄ ̄  __     ―   ̄ ̄ __

─ニ─   ̄   __   ̄ ̄ ̄   二 ─   = ─二 ─ニ─‐  ̄_  __

   (遥の足下に、見覚えのある物体が漂着した)

23: 2021/02/23(火) 09:35:05.99 ID:SFgjautn
遥「これって……」?


(謎の物体を拾い上げ……)


遥「ねぇ?お姉ちゃん」

 「このピンク色の玉って、もしかして……」

彼方「!!!!」?


(彼方が見忘れるハズがない)


彼方「ま……」

  「間違いない……」

  「これは歩夢ちゃんの歩夢玉だよぉ……」


(さらに––––)

24: 2021/02/23(火) 09:35:38.36 ID:SFgjautn
遥「あ……」

 「なんか、いっぱい流れてくるよ」?

彼方「ホントだ……」

  「かすみちゃんのヘアピンに、しずくちゃんのリボン、それに璃奈ちゃんボード……」

  「侑ちゃんのニーソックスに、せつ菜ちゃんの眼鏡もある……」

遥「それじゃあこの、ヘラみたいなのは?」

彼方「それは多分、愛ちゃん愛用のもんじゃのコテ……」

遥「この、スイスの国旗が描かれたマシンガンは?」

彼方「エマちゃんのかなぁ……」

  「…………」

  「ハッ……!!」?
(これらのアイテムが導き出す結論に、彼方が青ざめる)

25: 2021/02/23(火) 09:35:56.07 ID:SFgjautn
彼方「みんなの私物が流れてきたって事は……」

  「すでにみんなは、敵の魔の手に落ちて……」

遥「!!??」

 「それじゃあ、助けは……?」?

彼方「…………」


(沈痛な面持ちで、頭を振る彼方)


彼方「助けは…………来ない!!」?

遥「」?


(頼みの綱が切れてしまい、遥がパニックに陥る)

26: 2021/02/23(火) 09:36:19.20 ID:SFgjautn
遥「じょ、冗談じゃないよぉ!!!!」???

 「このまま私たちに、ダムの底で溺れ死ねっていうの!!??」


(我を忘れて、彼方の肩をポカポカ叩く)


彼方「いたたたた……」?

  「ちょ、ちょっとタンマだよタンマ!!」

  「まだ諦めるのは早いよぉ!!遥ちゃん」

  「奥の手がまだ残ってるんだからぁ!!」

遥「……奥の手?」?


(鈍痛で痺れた右手で、スマホを手に取り––––)

27: 2021/02/23(火) 09:36:38.48 ID:SFgjautn
遥「なにかあるの?この危機的状況を打開できる手段が……」?

彼方「まぁ、ね……」

  「今日は仕事らしいから、邪魔したくはなかったんだけど……」??


(背に腹は代えられないと、彼方が電話をかけた相手とは––––)


彼方「あ、もしもし?果林ちゃん?」

果林『どうしたのよぉ~?彼方』?

  『急に電話なんか寄こして……』

  『私、これから撮影に入るところなんだけど』

彼方「じ、実はさぁ~~……」?


~間~

28: 2021/02/23(火) 09:36:54.81 ID:SFgjautn
果林『ちょっ……マズいじゃない!!それ』?

彼方「彼方ちゃん、へその緒切って以来の大ピンチなんだよぉ~~」?

  「遥ちゃんにも、すごい叱られちゃって……」

果林『そ、それで……』

  『私にどうしろっていうのよ?』

彼方「そう!!そこなんだよ!!」?

  「果林ちゃんに電話したのは!!」

29: 2021/02/23(火) 09:37:26.25 ID:SFgjautn
no title

30: 2021/02/23(火) 09:37:46.40 ID:SFgjautn
果林『…………』

彼方「果林ちゃんが忙しいってのは、重々分かってるつもりだけど……」

  「こうするしか、もう私達が生き残る術が思いつかなくて……」?‍♀


(しばし、両者の間に沈黙が流れた末––––)


果林『わかったわ、彼方』?

  『仕事のスタッフには事情を話して、これから都庁へ行くわ』

彼方「ホントぉ~~??助かるよぉ~~!!」?

  「この埋め合わせは、後で何でもするからさぁ~~……」


(力強い果林の声が、彼方には神の声のように聞こえた)

31: 2021/02/23(火) 09:38:02.41 ID:SFgjautn
果林『都庁って、新宿だっけ?』

  『ひとっ走りで行って、小池百合子に掛け合ってくるわ』?

彼方「新宿……」

  「…………」

  「あ……」?


(その地名を聞いて、彼方は激しい不安にとらわれた)


彼方「あのぉ……果林ちゃん……」

果林『??』

彼方「そのぉ……大丈夫ぅ??」

  「新宿駅って、結構広いよぉ??」?

果林『…………何?』

  『新宿駅が何ですってぇ?』??

32: 2021/02/23(火) 09:38:21.41 ID:SFgjautn
彼方「だって、ほらぁ……」

  「果林ちゃんって……いささか土地勘が個性的だから……」

  「そのぉ……」?

果林『…………』

  『彼方』

  『わたしがいつまでも、地図が読めない女だと思わないで頂戴』?

彼方「いやぁ、そこまでストレートに言ったつもりじゃあ……」?


(大見得を切った果林の饒舌が止まらない)

33: 2021/02/23(火) 09:38:44.44 ID:SFgjautn
果林『いまの私にはね、頼もしい道しるべがあるのよ』

  『璃奈ちゃんが私のために開発してくれた、どんな方向音痴でも目的地にたどり着ける、夢のガジェット……』

  『『璃奈ちゃんマップ』という、力強い味方がね』

彼方「そ、そうなんだぁ……」

  「それは期待しちゃうなぁ~~……」?

果林『大船に乗ったつもりで、そこで待っていなさい』?


(怪気炎を上げつつ、果林が通話を切った)

34: 2021/02/23(火) 09:39:11.97 ID:SFgjautn
遥「なんて言ってた?果林さん」

彼方「これから都庁へ、談判しに行ってくれるって」

遥「それじゃあ、もうじき貯水は止まるんだね?」

彼方「う、うん……」?

遥「あ~~、よかったぁ!!」?
(吉報を聞き、胸をなで下ろす遥)


遥「これで最悪の事態は、回避できそうだね」

 「果林さんみたいな頼れる女性って、わたし憧れちゃうなぁ~~」?

彼方「そ……そうですねぇ……」

  「あははははぁ……」?

  「…………」?

35: 2021/02/23(火) 09:39:28.08 ID:SFgjautn
no title
(二段ベッドの上段にて、肩を寄せ合い
吉報を待つ姉妹––––)

36: 2021/02/23(火) 09:39:44.80 ID:SFgjautn
                 
      ,''´ ̄`ヽ   
     @*八ゞ、)     
     ノ从ˆᴗˆハ   それから 
     (つ と)   数時間後––––   
     し─J             

37: 2021/02/23(火) 09:40:00.44 ID:SFgjautn
no title

38: 2021/02/23(火) 09:40:27.48 ID:SFgjautn
遥「…………」

 「水位……さっきよりも上がってきたね……」?

 「…………」


(と––––)


彼方「あ、もしもし~~?」??

  「ニッポン放送『テレフォン人生相談』でしょうか?」

  「わたくし、『ラブライブ!シリーズのANNゴールド』にも出演した事のある、近江彼方ですけどぉ~~」

  「……はいそうです、鬼滅声優の」

  「実は私が住んでるマンションが、今にもダムの底に沈みそうで困ってるんですよぉ~~……」

  「…………」

  「そんなぁ!!嘘じゃないですぅ~~!!」?

  「……あ、いや」

  「確かにマンションというのは嘘で、ホントは団地なんですけどぉ……」?

  「ダムの方は嘘じゃないんです!!信じて下さい……」??

39: 2021/02/23(火) 09:41:05.45 ID:SFgjautn
(遥、彼方のスマホを取り上げっ!!!!)
彼方「あっ!!」


(そのまま水の底へとぶん投げる!!!!)


遥「この非常事態に、ラジオの人生相談なんかアテにするなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」???

彼方「は、遥ちゃん??」


(涙目になりながら、彼方が妹の態度を訝しむ)


彼方「どうして今日は、そんなに彼方ちゃんに辛く当たるのぉ??」?

  「今の歳からそんなに癇癪おこしてたら、将来ジャンプアニメのヒロイン声優になれないよぉ??」

  「まさか、ツンデレ妹キャラに路線変更しろって、アミューズの人が運営に圧力をかけたんじゃあ……」

遥「お姉ちゃんの一挙手一投足が、そうさせてるんだよ!!!!」???

40: 2021/02/23(火) 09:41:30.16 ID:SFgjautn
(遥の怒りが、ここにきて爆発した)


遥「私、もう決めた!!」

 「このままお姉ちゃんに従ってたら、助かる命も助からないよ!!」

 「これからはもう、自分の命は自分で守っていくから、そのつもりで!!」?


(うろたえる彼方を尻目に、水中へ飛び込む遥)


彼方「ちょっ!!遥ちゃん!?」

  「どこへ行く気なのぉ~~!?」?

遥「ひとまず屋上へ逃げて、後の事を考えるつもり」

彼方「待ってよぉ!!遥ちゃ~~ん!!」

  「彼方ちゃん……浮き輪がないと泳げないんだよぉ~~!!」

  「いつからお姉ちゃんを置き去りにするような、薄情者になっちゃったのぉ~~!?」?

遥「今からそうなったんだよ!!!!」?


(姉の悲鳴を無視しつつ、遥はひとり近江家から脱出した)

41: 2021/02/23(火) 09:41:51.67 ID:SFgjautn
~団地・水没した通路~


遥(くっ……)?‍♀

 (着衣水泳だなんて、小学校の時の体験授業以来だけれど……)

 (服が重くて、泳ぎにくいよぉ……)

 (こんな事なら、家の中で助けを待ってた方がよかったかも……)?


(さりとて喧嘩した手前、いまさら姉の元へと引き返すのはバツが悪い)


遥(ったく……お姉ちゃんのバカッ……)?

 (私に何の相談もしないで、勝手に話を決めちゃって……)

 (歴代興行収入一位の女だったら、何をやっても許されるワケじゃあ……)


(と––––)

42: 2021/02/23(火) 09:42:17.46 ID:SFgjautn
♪ジャ~~~ジャン……

♪ジャ~~~ジャン……


(遥の後方に、なにやら黒光りする背びれが––––)


♪プロプロォ~~~ン……

♪プロプロォ~~~ン……


遥(…………?)

 (お姉ちゃん?)


(背後から聞こえる水切り音に、姉の面影を重ねる遥であったが––––)


♪デッデッデッデッデッデッデッデッ……

♪デッデッデッデッデッデッデッデッ……

43: 2021/02/23(火) 09:42:36.91 ID:SFgjautn
遥(なぁ~~んだぁ……)

 (お姉ちゃんったら、普通に泳げるじゃん)?


(後悔とプライドの折り合いがつけられそうで、遥は内心ホッとする)


遥(まぁ、確かにさっきは私も言い過ぎたよね……)

 (血を分けた妹として、許してやらなくも……)?


(と、遥が後ろを振り返ると––––)


♪デッデッデッデッデッデッデッデッ……

♪デッデッデッデッデッデッデッデッ……

44: 2021/02/23(火) 09:43:06.93 ID:SFgjautn
遥「」

 「え」?

 「どうして……」

 「ここ、海じゃないのに……」?
(遥が驚き戸惑うものの、鮫は待っていてはくれない)


♪プロプロォ~~~ン……

♪プロプロォ~~~ン……


遥「…………」

 「う」

 「うわああああああああ!!!!!!!!」?

 「た、助けてぇぇぇぇ!!!!お姉ちゃああああん!!!!」?‍♀????


(競泳選手かくやの泳ぎっぷりで、逃げようとする遥)

(だが海の王者である鮫の前では、稚技に等しい)

(そして––––)

45: 2021/02/23(火) 09:43:25.05 ID:SFgjautn
no title

46: 2021/02/23(火) 09:43:42.46 ID:SFgjautn
(鋭利に尖った鮫の牙が、今まさに遥を食いちぎらんとした!!!!)


遥「いやああああ!!!!!!!!」?


♪ジャン!!ジャン!!ジャン!!ジャン!!

♪ジャン!!ジャン!!ジャン!!ジャン!!

♪ジャン!!ジャン!!ジャン!!ジャン!!

♪ジャン!!ジャン!!ジャン!!ジャン!!




レーザー音「ビィーーーーッ!!!!」


ズドォォォォォォォォォ!!!!


鮫「ヒギャアアアアアアア…………」

47: 2021/02/23(火) 09:44:03.35 ID:SFgjautn
(間一髪––––)

(一筋に光るレーザービームが、遥を救った)


遥「…………え??」?


(血しぶきを派手に上げながら、鮫が轟沈していく)

(と––––)


彼方「ふぅ~~~~っ……」

  「危なかったぜぇ~~っ」?


(パワードスーツの左肩から露出していたレーザー砲が、カシャンとハッチの中へ折りたたまれる)

(そのパワードスーツの主・彼方が、遥の元へ飛行してくる)

48: 2021/02/23(火) 09:44:25.78 ID:SFgjautn
彼方「やっほぉ~~☆遥ちゃ~~ん」?

  「いつぞや璃奈ちゃんに作ってもらった『璃奈ちゃんスーツ』が役に立ったよぉ~~~~!!」


(思考が停止している遥を、水面から引き上げる)


遥「お……」

 「お姉ちゃあん……」?


(懐かしい姉の匂いで、正気に戻った遥が––––)


遥「あ……あのぉ……」

 「さっきは、そのぉ……」

 「…………」

 「…………ごめん、お姉ちゃん」?

49: 2021/02/23(火) 09:44:53.95 ID:SFgjautn
彼方「いいんだよぉ、遥ちゃん」

  「青春時代の過ちは、誰にだってあるもんだよぉ~~」☺
(遥の頭を、優しく撫でながら––––)


彼方「このまま遥ちゃんと一緒に、屋上へレッツラゴーだぜぇ~~♪」?

50: 2021/02/23(火) 09:45:11.43 ID:SFgjautn
        @cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ   それから
       ____(__つ旦 ___  どうしたの?
      / \    ̄ ̄ ̄__\____
     <\※ \____| |──────||
        ヽ\ ※ ※ ※| |≡≡≡≡≡≡||
   =D~~\`ー──- | |__| ̄||__.||
           ̄ ̄ ̄ ̄|\ _ |_||_ \
            =D~| .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
                \|         |
                   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

51: 2021/02/23(火) 09:45:28.58 ID:SFgjautn
~団地の屋上~
no title

52: 2021/02/23(火) 09:45:51.62 ID:SFgjautn
彼方「おぉ~~……」

  「見渡す限り、湖になっちゃってるよぉ~~」?

遥「街が……」

 「私たちが生まれ育った、この街が……」

 「たった半日で……ダムの底に……」?


(ビルディングの上半分のみが水面から芽吹いている異様な光景を見つつ、遥が感傷的になる)


遥「なんだか……淋しいな」

 「昨日まで、まったく気にも留めてなかった街並みが……」

 「もう、記憶の中だけにしかないなんて……」

53: 2021/02/23(火) 09:46:16.36 ID:SFgjautn
彼方「さぁ、遥ちゃん」?

  「こんな所で、おセンチになってる暇なんかないよぉ~~?」

  「はやく璃奈ちゃんスーツで、ダムの外へひとっ飛びするのさぁ~~~~♪」


(姉の呼びかけで現実に戻った遥は、あらためてパワードスーツ姿の姉を、まじまじと観察する)


遥「それにしても……」

 「すごいよねぇ……璃奈ちゃんスーツ」?

 「これがなかったら、今頃私は鮫のエサになってた所だったよ」

54: 2021/02/23(火) 09:46:47.48 ID:SFgjautn
彼方「あったりまえじゃ~~ん♪」?

  「天下無敵の璃奈ちゃんスーツに、出来ない事はないんだぜぇ~~?」

  「背中にある自爆ボタンを押さない限り、いまの彼方ちゃんは無敵なんだなぁ~~!!」

遥「フフッ……」☺

 「それじゃあ、天下無敵のお姉ちゃん?」

 「今すぐ安全な場所へ、私を連れてってくれませんか?」

彼方「おけまるだぜぇ~~~~☆」?

凛「ポチッとにゃ」?
(自爆ボタンON!!)

55: 2021/02/23(火) 09:47:02.82 ID:SFgjautn
璃奈ちゃんスーツ「ブーーーーッ!!!!!」

近江姉妹「!!!!!!!!」??

彼方「え!!??な、なんで!!??」

  「どうして自爆ボタンを押しちゃったのぉぉぉぉ!!??遥ちゃああああん!!??」?

遥「し、知らないっ!!!!」??

 「わたし、ボタンなんか押して……」


(カッッッッ!!!!!!!!)

56: 2021/02/23(火) 09:47:24.24 ID:SFgjautn
no title

57: 2021/02/23(火) 09:47:39.41 ID:SFgjautn
彼方「…………」

  「ゲホッ……ゲホッ……」

遥「お、お姉ちゃん……」?

58: 2021/02/23(火) 09:47:57.31 ID:SFgjautn
no title

59: 2021/02/23(火) 09:48:30.18 ID:SFgjautn
遥「一応聞くけど……」

 「璃奈ちゃんスーツは……」

彼方「…………」?
(無言で彼方が指差した方に、大破した璃奈ちゃんスーツの残骸が……)


遥「あぁ…………」


(ガックリと両膝が崩れ落ち––––)


遥「もう、おしまいだぁ……」?

 「私達、ここで団地と一緒に、ダムの藻屑に……」

 「…………」?

60: 2021/02/23(火) 09:48:48.58 ID:SFgjautn
彼方「…………」

  「遥ちゃん……」


(と––––)


彼方「ごめんね……」

  「ごめんねぇ……遥ちゃん……」?


(遥を強くハグして––––)


彼方「お姉ちゃんが、頼りないばっかりに……」?

遥「もういいよ……お姉ちゃん」

 「こうなる事は、きっと運命だったんだよ……」

 「お姉ちゃんと一緒なら私、怖くない……」

61: 2021/02/23(火) 09:49:05.58 ID:SFgjautn
彼方「うん……うん……」

  「こんど生まれ変わってくる時も、私たちは同じ姉妹……」

  「そのまた次の世でも、また同じ姉妹……」

  「彼方ちゃんと遥ちゃんは、永遠にして不滅の姉妹なんだなぁ~~」?

遥「そうだね……」

 「あの世で神様に会ったら、そうお願いするよ……」

近江姉妹「…………」

    「う」

    「うあああああああ……」??


(と––––)

62: 2021/02/23(火) 09:49:22.88 ID:SFgjautn
(バラバラバラバラ……)


近江姉妹「あぁぁぁん……」


(バラバラバラバラ……)


近江姉妹「…………」


(突如、けたたましい駆動音が、ふたりの悲劇に割り込んできた)


近江姉妹「え?」


(鳩豆顔な2人が、上空を見上げると––––)

63: 2021/02/23(火) 09:49:38.57 ID:SFgjautn
no title

64: 2021/02/23(火) 09:50:10.20 ID:SFgjautn
(車体に『ニッポン放送』と書かれた取材用のヘリコプターが、絶体絶命の2人の前に現れたのだ)
遥「へ、ヘリだ!!」?


(ヘリを目の当たりにした遥の瞳に、生気が甦りはじめた)


遥「助けだよ!!お姉ちゃん!!助けが来たんだ!!」

 「でも、なんで……」

彼方「!!!!」

  「そっかあ!!!!」?

  「きっと、彼方ちゃんのテレフォン人生相談を聞いて…………!!!!」

  「あの時の電話が、役に立ったんだよぉ!!!!」

65: 2021/02/23(火) 09:50:27.16 ID:SFgjautn
(ヘリへ向かって両手を振り、助けを求める近江姉妹––––)


遥「おぉぉぉぉい!!!!」

 「助けて下さぁぁぁい!!!!」??

彼方「今度のミュージックソンには、いっぱい募金をしますからぁぁぁぁ!!!!」??

  「どうか、どうかお助けをぉぉぉぉ!!!!」


(2人が無事に救助されるのに、そう時間はかからなかった)

66: 2021/02/23(火) 09:50:46.83 ID:SFgjautn
~翌日・部室にて~


侑「ほんっっとゴメン!!彼方さん!!!!」?


(両手を合わせ、彼方に詫びを入れる侑)


侑「まさか、予定より早くダムの貯水が始まるとは思わなくて……」?

 「私達が団地についたときには、もう手遅れで……」

彼方「もぉ~~~~、いいよぉ……」☺

  「みんなは悪くないからさぁ~~……」

  「それもこれも、地元住民の反対の声を黙〇して、ダムを建設した役人達のせいなんだからぁ……」

璃奈「彼方さん……スゴイ」?

  「あれだけの目にあっても、目くじら立てないなんて……」

愛「やっぱ当たり役があると、声優って人に優しくなれるんだなぁ~~☆」?

67: 2021/02/23(火) 09:51:07.16 ID:SFgjautn
彼方「それでねぇ……みんな」

  「今度の休みに、新居祝いの引っ越しそばを打とうとおもうんだけどぉ……」

  「是非ともみんなに、食べに来てほしいんだぁ~~♪」

エマ「行く行くぅ~~~~!!」?

  「私、一度でいいから引っ越しそばを食べてみたかったんだぁ~~♡」

かすみ「もぉ~~っ、エマ先輩ったら!!」?

   「食べ物の事になると、誰よりも目が輝くんですからぁ……」

しずく「そんな事いうかすみさんだって、口からヨダレが……」?

かすみ「!!??」慌てて口元を拭う

しずく「ウソだよぉ~~~~☆」?

かすみ「もぉ~~っ!!しず子ぉ~~~~!!」

歩夢「ねぇねぇ!!」

  「私達も行こうよぉ!!侑ちゃん!!」?

侑「よぉ~~し!!」

 「今週末は、みんなで彼方さんの新居でパーティーだぁ~~~!!」?

68: 2021/02/23(火) 09:51:28.97 ID:SFgjautn
  _人人人人人人人人人人人_
  > オ~~~~ッ!!!! <
   ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

   @cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ ʃ V σ ᴗ σVʅ

   从cι˘σ ᴗ σ˘* Σミイ˶º ᴗº˶リ

   ζd∥òヮóリ 从˶σ_σ˵从 

 ⁄/*イ`^ᗜ^リ ,,(d!.•ヮ•..) ノレcイ´=ω=)


      ~おわり~

69: 2021/02/23(火) 09:52:09.70 ID:1/01Jmb8

滅茶苦茶笑った

70: 2021/02/23(火) 09:58:41.58 ID:pwL8cXZ6
怒濤の30分で草

72: 2021/02/23(火) 10:02:04.72 ID:jNSQRXZ5
凄まじかった
おつ

73: 2021/02/23(火) 10:30:03.81 ID:DDWXiG1G
辰巳の団地をダムにするのか…
埋立地なのに…

74: 2021/02/23(火) 10:31:14.21 ID:kny6dsUn
感動巨篇だった…乙

75: 2021/02/23(火) 10:33:54.06 ID:9ME/4+Ay
そして帰らぬ人となった果林先輩

80: 2021/02/23(火) 11:22:57.15 ID:jUJvAQkM
1人誰か忘れてるような…

85: 2021/02/23(火) 14:09:46.18 ID:QHer3/rS
未だに都庁にたどり着けてない人がいますね...

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1614039993/

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