【SS】恋「はぁ～……今日も冷えますね……」 千砂都「あれ、恋ちゃん？」【ラブライブ！スーパースター!!】

恋「あっ千砂都さん、どうもこんばんは」

千砂都「うぃっすー、何してたの？」

恋「いえ、何というほどのものでもないのですが」

千砂都「ふーん、つまるところ野暮用ってやつですかな？」

恋「はい、そんなところです。千砂都さんは？」

千砂都「私も野暮用、それもさっき出来たばかりの」

恋「つまり家から出てきたばかりだと」

千砂都「まあそうとも言うね」

恋「お体には気を付けてくださいね、今日は冷えますから」

千砂都「ん、ありがと。でも心配いらないよ、すぐ帰るつもりだし……」

恋「……」ﾊｧｰ

千砂都「……」

千砂都「寒そうだね」

恋「え？」

千砂都「て」

恋「ああ、これですか。大丈夫ですよ、お気になさらず」

千砂都「大丈夫って、それもうボロボロだよ？ 色んなところ穴あいちゃってるし、しかも薄いし」

恋「いえ、まだ使えますから」

千砂都「風邪引いちゃうって」

恋「大袈裟ですよ」

千砂都「恋ちゃんが軽く見すぎなんだよ」

恋「そんなことありませんよ、ほら」ﾋﾗﾋﾗ

恋「はぁ～、あったかいあったかい」

千砂都「…………」

千砂都「意地っ張り」

恋「え？」

ﾆｷﾞｯ

恋「ちょっ」

千砂都「うわ冷たっ、思っていた以上に冷えてるねこれは」

恋「いえ、あの。千砂都さん」

千砂都「で、何が大袈裟なんだっけ？」

恋「……すみません」

千砂都「まあ事情は汲み取るけどさ。でもそれで身体壊したら元も子もないっていうか」

千砂都「みんなも心配するだろうし……と、いうわけで」ｺﾞｿｺﾞｿ

千砂都「はいどうぞ」ﾎﾟﾝ

恋「これは？」

千砂都「私の手袋、よかったら使って」

恋「手袋……二組も持っていたんですか？」

千砂都「まさか、そこまでするほどうっかり屋さんじゃないよ私は」

恋「それじゃあ今あるのは、この手袋一組だけということになりますが」

千砂都「うん」

恋「うんって…」

千砂都「だから、使っていいよそれ」

恋「なら千砂都さんはどうするんですか？ 無かったら困るでしょう」

千砂都「私のことは別にいいってば」

恋「千砂都さん……」

千砂都「ほんと、気にしなくていいから」

恋「いけません！」ｽﾞｲｯ

千砂都「わっ、急になに」

恋「やっぱり駄目です！ これでは千砂都さんが風邪をひいてしまいます！」

千砂都「いや大袈裟だよ」

恋「大袈裟？ 今大袈裟と言いましたか」

千砂都「そ、気にしすぎだってば」

恋「なるほど、大袈裟ですか。へぇー」ｼﾞｰｯ

千砂都「な、なに……？」

恋「先程その言葉に軽く見すぎだと言ったのはどこの誰でしたっけ」

千砂都「……あー、そういえば言ったような、言ってないような」

恋「千砂都さん？」

千砂都「はい、私が言いました」

恋「全く、すぐそうやってはぐらかそうとするんですから」ﾎﾞｿｯ

千砂都「何か言った？」

恋「いいえ別に」

千砂都「ふーん、そっか」

千砂都「……どっちが」ﾎﾞｿｯ

恋「何か言いましたか？」

千砂都「いやいや別に」

恋「なのでお気持ちは嬉しいのですが、これは千砂都さんにお返しいたします」

千砂都「待った待った、それだと私が手渡した意味ないでしょ」

恋「しかしですね」

千砂都「頑固だなあ、恋ちゃんは」

恋「……はい？」

千砂都「いいから使いなよって」

恋「いいえお返しします」

恋「千砂都さんはお節介が過ぎるようですから」

千砂都「……ん？」

千砂都・恋「…………」

千砂都「まあまあそんなに意固地にならずともさ。ね？」ｸﾞｸﾞｯ

恋「そうですよ、素直に受け取ればそれでいいんです」ｸﾞｸﾞｸﾞｯ

千砂都「恋ちゃんがね？」

恋「千砂都さんが、でしょう？」

千砂都・恋「…………」

千砂都・恋「あの(です)ねえ！！」

千砂都「私がいいって言ってるんだよ！？」

恋「渡された側が結構だと言ってるんです！」

千砂都「ちょっと失礼じゃない！？ そういうのって！」

恋「そちらこそ！ 少し強引すぎるのでは！？」

千砂都「そりゃ言っても聞かない我儘さんが相手だと、そうなるのも仕方ないんじゃない！？」

恋「ではこちらの物言いも許してくれますよね！？ 何せ相手は引き際を知らないんですから！」

千砂都「はあ！？ 何それ！ なんなのさっきから！」

千砂都「恋ちゃんがこんなに嫌な子だとは思わなかったよ！ 流石の私も！」

恋「私だって千砂都さんがここまで口の悪い人とは思いませんでしたよ！」

千砂都「あーもう本当嫌になる！ だいたい…」

恋「嫌になるのはこっちですよ！ そもそも…」

千砂都・恋「私は恋ちゃん(千砂都さん)のことがただ心配で！！」


千砂都・恋「……………………あ」

 

千砂都「……あーっと、そういえば、最初はそうだったような気が……したような、しないような」

恋「……間違いなくそうだと思いますけど」

千砂都「…だよね」

恋「…はい」

千砂都・恋「……」

恋「すみません、その……気を遣ってくれたのに色々と失礼なことを」

千砂都「それを言うなら私だって、恋ちゃんに酷いこと言っちゃったし。お互い様だよ」

恋「ああ、それもそうですね」

千砂都「いやそんなにすんなり受け入れられるのも、ちょっとあれだけど」

恋「ふふっ……可笑しな人ですね、自分から言ったことなのに」

千砂都「恋ちゃんがおかしいんだって」

恋「あ、またそういうこと言います？」

千砂都「ちょっとは落ち着いたからいいかなって」

恋「ああ、それもそうですね」

千砂都「あははっ、ほらね」

恋「な、なにも笑うことないじゃないですか」

千砂都「ごめんごめん。で、どうしようかこの手袋」

恋「どうもなにも千砂都さんが……」

千砂都「それだとさっきと同じになっちゃうって」

恋「あ、そうですね……失念していました」

恋「たとえ心配でも、また千砂都さんを傷つけるようなことは言いたくありませんし……」

千砂都「……なんというか、こう……サラッと凄いこと言うね。恋ちゃん」

恋「え、もしかして私、また何か失礼なことを？」

千砂都「大丈夫、人によっては誤解を招くってだけだから」

恋「その言い方だと、問題があるようにしか聞こえないのですが」

千砂都「ないよ、全くもってないから、うん。ごめんね脱線させて話戻そうか恋ちゃん」

恋「急に早口になりましたね」

千砂都「気にしない、気にしない」

恋「はあ、よく分かりませんが千砂都さんがそこまで言うなら」

恋「しかし、実際どうすればいいのでしょうか」

千砂都「うーん……一応考えたんだけどさ、言ってみてもいい？」

恋「？ どうぞ」

千砂都「片方ずつ使うっていうのはどうかな？」

恋「それはつまり、二人とも片手側だけ使うということですか？」

千砂都「そう。私は右手側で、恋ちゃんは左手」

千砂都「これなら何も問題ないでしょ？」

恋「確かに均等にはなりますが、付けられないもう片方の手はどうしましょうか」

千砂都「……」

恋「ってこれ以上駄々をこねても仕方ありませんよね、ここはひとつ我慢ということで」

ｽｯ

千砂都「はい」

恋「はい？」

千砂都「空いてるほう、どうぞ使ってくださいませ。恋お嬢さま」

恋「……」

ﾆｷﾞｯ

千砂都「いやー実はこの後ちょうど買い物に行く予定でさ。新しい手袋の」

千砂都「だからどうってわけでもないけど、やっぱり一人で行くよりは二人のほうが楽しいかなと」

恋「ええ、わかっていますよ」

恋「片側だけだと手持ち無沙汰になってしまいますからね、仕方ありません」

千砂都「ほんとほんと、全く困っちゃうよね」ｷﾞｭｯ

恋「はい、本当に困ったものです」ｷﾞｭｯ

 

……


千砂都「──よかった、まだ置いてあって」

恋「よかったんですか？ 今買ったもの、こちらの手袋と同じ品物のように見えますけど」

千砂都「いいの、気に入ってるから」

恋「そういうことなら、まあ」

千砂都「というわけではい」ｶﾞｻｯ

恋「荷物持ちですか？ わかりました」

千砂都「いやそうじゃなくてね？」

恋「？ ではどういう……」

千砂都「プレゼントだってば、付き合ってくれたお礼」

恋「付き合う？」

千砂都「買い物。一緒に行ってくれたでしょ？」

恋「ですが……」

千砂都「ですが？ なにかな」

恋「……ありがとう、ございます」

千砂都「うん、今回は素直でよろしい」

恋「……ふふっ」

千砂都「どしたの？」

恋「お揃いですね、私たち」

千砂都「……あ本当だ、いやーすごい偶然」

恋「ええ本当に、でも仕方ありませんよね」

恋「だって私もこの手袋が気に入ってるんですから、偶然千砂都さんのものと被ってしまったとしても」

恋「それはもう仕方のないことです」

千砂都「そうそう、寧ろ合わせないほうが野暮ってもんだよね、こういうのは」

恋「同感ですね」

 

ｽﾀｽﾀ……


千砂都「さてと、それじゃあ買い物も終わったことだし」

恋「帰りますか？」

千砂都「ぼちぼち。恋ちゃんは？」

恋「私は……もう少しこのままでいたいです」

千砂都「……」

恋「駄目、でしょうか」

千砂都「いいよ、大丈夫。外だってまだこんなに……」

千砂都「こんなに……暗いけど明るいんだし、少しくらいのんびりしてもいいよね」

恋「はい」ﾆｺｯ

千砂都「よく分からないところで即答するよね、恋ちゃんって」

恋「そうでしょうか？」

千砂都「別にいいんだけどね、分からないってだけで嫌ってわけじゃないし」

恋「そんなものなんですか？」

千砂都「そんなものなんです」


ﾋｭｳｩｩ…


千砂都「風、吹いてきたね」

恋「はい」

恋「千砂都さん」

千砂都「んー？」

恋「寒くありませんか？」

千砂都「平気だよ」

千砂都「ていうか、逆にちょっと暑いくらい」

恋「奇遇ですね、私も少し暑いと思っていました」

千砂都「やっぱりそう思う？」

恋「はい、不思議ですよね」

千砂都「寒空なのにね」



恋「千砂都さん」

千砂都「なにー？」

恋「汗、大丈夫ですか？」

千砂都「うーん、そうだなあ……」

 
千砂都「まあ、手を離して拭くほどのものでもないかな」

恋「ですね」




千砂都「恋ちゃん」

恋「なんですか？」

千砂都「のど、渇かない？」

恋「すみません、実はちょっと心配だったんですよ。ちゃんと声が出ているかどうか」

千砂都「これだけ暑いとしょうがないよね、のどが渇いても」

恋「はい」

千砂都「なにか飲み物でも頼もっか」

恋「そうですね」

千砂都「すみませーん」


千砂都・恋「ホットココアお願いします」

 

終わりです、ありがとうございました。

照れ隠しの二人の可愛さよ
イラストも最高

イラストもあるのかよ　最高だわ
ありがとう

ちされんの可能性を信じろ