穂乃果(24)「ありがとうございました、またのお越しを~!」【長編SS】

AqoursーSS


257: 2020/07/01(水) 21:31:50.63 ID:8UWfS3nR
第4章「最後の希望」

-西暦2035年-

キーンコーンカーンコーン…ザワザワザワ

ガラッ

教師「はーい、席につけ、席に」

教師「はい、起立、気をつけ、礼」

「……Zzz」

教師「えーとだな、前回で中間の範囲は基本的に終わったので、今日は自習……」

男子生徒「マジかよ!!」

教師「にしようと思ったけど…やかましくなりそうだから先生の雑談タイムだ」

男子生徒「っちぇー」

「……Zzz」

教師「えー、今日は…」

先生「2019年の12月31日に起きた血の大晦日の話をしようと思う!」

「……っ!」ピクッ

258: 2020/07/01(水) 21:35:07.31 ID:8UWfS3nR
教師「先生はあの時、帰省してたからテレビでしか見てないんだけどなぁ」

教師「実家で紅白見てたら突然の臨時ニュースだ!」

教師「東京で大規模テロだってな」

教師「現場の状況を伝えようとしたリポーターは突然身体中から血吹き出して死ぬわ、もうこの世の終わりかと思ったよ」

「………」

教師「いや、終わるはずだった!」

教師「先生は今でもそう思うよ……終わらなかったのはやはり……我らが“あいどる”の存在が大きい!!」

「………っ」

教師「あの時“あいどる”が迅速にワクチンを精製して配付してなけりゃ、本当に世界は終わってた!」

教師「歴史的大悪党、ホノカによってな!」

「……っっ!!」ギリッ

バンッ!!

「先生、間違ってる!!!」

教師「ん……はぁ」

教師「まーた高坂かぁ…」

秋穂「またはこっちのセリフですっ!!」

259: 2020/07/01(水) 21:37:46.71 ID:8UWfS3nR
秋穂「見てください!この教科書を!」

教師「なんだよ、立派な教科書じゃないか」

秋穂「そうじゃなくて、この写真!!」

教師「あぁ、ホノカ一派がロボットを操縦して、東京を震撼させている真っ最中だ」

秋穂「……なんでそんな捉え方が出来るんですか?」

秋穂「どう見たってこのロボットに立ち向かおうとしてるでしょ!!」

秋穂「こんな所にいたら彼女たちの身が危ない!なのにロボットに向かっていってる!」

秋穂「それにこんな所にいてどうやってロボットを操縦するんですか!?」

教師「だーからぁ…リモコンで操作してたんだよ!!グワングワーン!!と」

秋穂「ありえないっ…先生、何年教師やってるんですか!?」

教師「な、なんだと…」

秋穂「この中で誰かリモコンを握ってますか!?操ってますか!?」

秋穂「ちゃんと見てくださいよっっ!!!」

260: 2020/07/01(水) 21:40:07.31 ID:8UWfS3nR
教師「オーケーオーケー、高坂の言い分はよーくわかったよ」

教師「俺も教師だ、生徒の思いを汲み取るのも仕事の範疇」

秋穂「………」

教師「だから特別課題だ☆」

教師「高坂、血の大晦日についてレポート書いてこい!」

秋穂「なっ…!」

ドッ!!
ハハハハハハハハ!!

男子生徒「とんだ災難だなぁ!」

女子生徒「そこまで噛み付く必要ないのにっ!」

男子生徒2「“あいどる”が世界を救ったという事実の何が不満なのか理解に苦しむなぁ…」

秋穂「……っ、バカ!!わからずや!!」

男子生徒「ま、穂乃果なんてウンコって書き流しときゃいいんだよ!!はははっ!!」

秋穂「!!!」ブチッ

秋穂「このっ!!」バキッ!

男子生徒「ごぶっ!!?」

バキッ!!!ドスッ!!!ドッドッドッ!!!

秋穂「この!この!何も知らないくせに!!!」バキッ

「うわっ…!だ、誰か高坂をトメロォォォ!!!」

教師「おい落ち着け!お前ら落ち着けぇぇ!!」

261: 2020/07/01(水) 21:43:06.81 ID:8UWfS3nR
~三森荘~

秋穂「とっ…」

ジャン…ジャン…ジャーン……

海未「……っ」

海未「ちゃんと聞きなさい…秋穂」

秋穂「うーん…なんかここの音がなぁ…チューニングおかしい?」

海未「秋穂…」

秋穂「あっそうだ!」

海未「……?」

ゴソゴソ

秋穂「ねぇねぇ!海未おばちゃん見て見て!これだよね!昔、穂乃果おばちゃんがよく食べてたってパン!パンマニアの人からゲットしたんだよ!」

秋穂「秋穂……」

秋穂「今は製造してないからさぁ~」

海未「……っ、秋穂!!」

秋穂「…!」ビクッ

海未「……聞きなさい」

秋穂「……だって私悪くないんだもん」

262: 2020/07/01(水) 21:48:23.47 ID:8UWfS3nR
海未「悪い悪くないの話じゃありませんよ…」

海未「いったいあと何度、学校から電話がかかってくるんですか?」

秋穂「だって!!あの無知な奴等が穂乃果おばちゃんを!!」

海未「……田舎にいるおばあちゃんだって、私と同居することを条件に東京にいる事を許してくれているんです」

海未「それをあなたは…私の家さえ飛び出して、こんなアパートに一人暮らしを…」

海未「…なにを考えているんですか?今まではおばあちゃんとの約束を守り、私の家で大人しくしていたでしょう?」

海未「……もし、あなたに何かあれば、私は穂乃果に合わす顔がありません」

秋穂「………」

秋穂「…海未おばちゃん変わった」

海未「………!」

秋穂「なんで…なんで戦うのをやめちゃったの!?」

海未「……うっ!!お、おばちゃんって言わないでください!!!」

ドンッ!!

秋穂「むっ…」

海未「うっ…」

チョットー!!!

271: 2020/07/02(木) 11:32:28.05 ID:4c9LRaIJ
~隣室~

十花「毎日毎日、ギターの音はするわ、大声で歌うわ、爆音で音楽流すわ…」

秋穂「…別にいいじゃん、そんなの」ボソボソ

グイッ

秋穂「ぬわっ…!」

ドスッ

海未「本当に申し訳ございません!!」

十花「…まぁ、土下座が誠意と僕は思わないな」

十花「というわけで…贖罪の意を込めて、これを…読みたまえ」

海未「……?これは……」

秋穂「この人ね、十花田輝って言って、小説家さんなんだよ、でもあんまり売れてないみたい」

十花「」キッ

秋穂「……っ!!たはは……」

海未「では、僭越ながら…読ませていただきます」

272: 2020/07/02(木) 11:34:59.52 ID:4c9LRaIJ
海未「……」ペラッ

秋穂「(うわぁ、分厚いなぁ…海未おばちゃん…これ全部読むつもりのかな?)」

秋穂「(しかもジャンルはラブコメ!?きつすぎるよ…)」

-1時間後-

十花「」ジー

海未「……」ペラッ

秋穂「ふわぁ…あぁ…やっと中盤…」

秋穂「(そんな真面目に読む必要ないのに…)」

秋穂「ねむっ……い……Zzz……」

バタッ…

273: 2020/07/02(木) 11:41:22.33 ID:4c9LRaIJ




秋穂「ん…」パチッ

秋穂「(……あれ?私、寝てた?)」

十花「さぁ、ど、どうだったかね?」

秋穂「(えっ…!海未おばちゃん…全部読んだんだ、私なんてつまらなくて寝ちゃったよ…)」

十花「若い頃から幾星霜、必死にプロットを考え、完成した作品なんだ、自信は正直…」

秋穂「(海未おばちゃんの事だから、破廉恥の一言で片付けちゃったりして…へへ、なんて…)」

海未「……あくまで私個人としての意見ですが」

海未「この作品からは、なんの熱意も気勢も伝わってきませんでした」

十花「!?」

秋穂「えっ…」

十花「ふ、ふふ……そんな精神論を……まぁ、素人には分からんよ」

海未「私は文学には精通していないので、文体や言い回しなどについては、なにも意見できません」

海未「ですが、私は……ただひたむきに頑張って……ただひたすら前を向いて……壁を超え、破り、壊し……夢を叶えた女性を知っています」

秋穂「…海未おばちゃん」

海未「この作品からは、そのようなものが感じられませんでした」

十花「………」

海未「……私が読みたいのは」

海未「……自らの命を投げ打ってでも大切な人を守ろうと全身全霊を尽くす人間の物語です」

274: 2020/07/02(木) 11:46:11.73 ID:4c9LRaIJ
十花「………」

海未「では、失礼いたしました」 ペコッ

バタンッ

秋穂「……海未おばちゃん」

海未「……まったく、人様の家で寝るんじゃありません……」

秋穂「あっ…た、たはは…ごめんなさい」

海未「では私も今日のところは帰ります。あまり隣人の方達に迷惑をかけないように」

秋穂「はーい…って、あっ!私もバイトの時間だ!」

秋穂「遅刻しちゃうよぉ…!じゃあね、海未おばちゃん!」

海未「…っ、だからおばちゃんって言わないでください!」

275: 2020/07/02(木) 11:50:52.40 ID:4c9LRaIJ
海未「では、気をつけて行くんですよ」

秋穂「あっ…ねぇ、海未おばちゃん」

海未「…?なにか?」

秋穂「海未おばちゃんも本当はさ…本当は…穂乃…」

秋穂「………」

海未「…?秋穂…?」

秋穂「いや、やっぱりなんでもないやっ!」

秋穂「いやぁ~!40歳の海未おばちゃんがラブコメの小説読んでるのってなんか、なんか笑えるね!」

海未「よ、40…!!秋穂ッ!!」

秋穂「えへへ!じゃあ行ってきまーす!」 ダッ

海未「…んもぅ!あの子だけは本当に…」

276: 2020/07/02(木) 11:53:57.06 ID:4c9LRaIJ




~とある監獄~

ガチャリ

酒井「元気か、9番」

ジャラ

絵里「……元気に見えるかしら?」

酒井「見える」

絵里「あらそう…じゃあ教えてあげる、元気じゃないわ。だからこの手錠外してくれない…?」

酒井「手錠はお前があんまり凶暴だから付けられたんだぜ、〇されないだけ我慢しろ」

絵里「……」

酒井「それと俺、少し外に出る事になった、仕事でね」

絵里「……」

酒井「……お前達の最後の希望」

絵里「……!」

酒井「神の子といえども、場合によっては“退部”させなければならない」

絵里「………」

酒井「じゃあ、元気でな」スタスタ

ガチャ、キーー、バタンッッ

絵里「……秋穂」

277: 2020/07/02(木) 11:56:22.77 ID:4c9LRaIJ




~裏路地~

秋穂「ふわぁ…ムニャムニャ…Zzz…」

陳「アキホ!アキホ!」

秋穂「え、は、はい!」ガタッ

陳「ナニネトルカ、コノバカタレガ!」

秋穂「す、すいません…ちょっと疲れてて」

秋穂「で、どうかしましたか?」

秋穂「…はっ!もしかしてお客さんっ!?はぅ~!何日ぶりの来店!?」

陳「イヤ、ゼンゼンマッタクキトラン」

秋穂「…………」

秋穂「うぅ…暇ですね…やっぱり場所がダメなのかな…」

278: 2020/07/02(木) 11:58:58.32 ID:4c9LRaIJ
陳「アキホ、マカナイダヨ」

秋穂「ありがとうございます!いただきます!」

秋穂「パクッ」

秋穂「う~ん!味抜群!陳さんの料理食べないのって人生の半分は損してるよね」

陳「ソレガダネアキホ、ワタシミセタタモウトオモウヨ」

秋穂「え?な、なんで…」

陳「オキャクコナケリャ、ミセシメルシカナイヨ」

秋穂「そ、そんな…もっと人通りがある場所にお店移しましょうよ!そしたらきっと!」

陳「ムリダネ、ワタシミタイナ、フホウタイザイシャガオモテデミセヒラケルホド、ヨノナカアマクナイ」

陳「ケイサツニショッピカレルヨ」

秋穂「……そんな」

279: 2020/07/02(木) 12:01:42.58 ID:4c9LRaIJ
秋穂「ここで働けなくなったら……私、アパート追い出される……それは困ります!」

秋穂「それに私ここが好きなんです…!」

陳「……シカタナイヨ、トオリデドンパチシテタラ、ソリャアヒトモヨリツカナイヨ」

秋穂「……!」ガタッ

陳「……?」

秋穂「そのドンパチやってる連中をどこかに追いやれば、お客さんも来てお店続けられるんですね!!」

陳「タブンネ」

秋穂「よし……!!じゃあ、行ってきます!!」

秋穂「」ダッ

陳「アッ、アキホ!!ケガスルデナイヨ!!」

280: 2020/07/02(木) 12:04:56.45 ID:4c9LRaIJ
バンッ!!バキュン!!!

ダダダダダダダッッ!!!!!

中国マフィア1「撃て撃てー!」

中国マフィア2「タイ野郎を一人残さずやれェェェ!!」

タイマフィア1「踏ん反り返ってるチャイニーズに目に物を見せてやれぇ!!」

バキュンバキュンッ!!


秋穂「うっ、こっちの方はこんなに酷かったんだ…」

サッ

秋穂「止めて!!」


中国マフィア3「なんだアイツは」


タイマフィア2「どうしますか?」

タイマフィア3「構わん、撃ち続けろ」

ダダダダダダダッッ


秋穂「」ムカッ


中国マフィア4「おかしい!弾があたらねぇ!」

カスッ…

秋穂「……ッ痛!」

秋穂「…ッッ!!いい加減にしなさいってば!!!」


中国マフィア「………」

タイマフィア「………」

・・・シーン

281: 2020/07/02(木) 12:09:57.33 ID:4c9LRaIJ
秋穂「ここはあんた達がドンパチするような場所じゃないの!」

秋穂「どのお店もあんた達のせいでお客さんが寄り付かなくてうんざりしてる!!」

中国マフィア「………」

秋穂「ここにいる、多くの人たちが戸籍や国籍を持たない人達なの!!そんな人達が唯一拠り所にしているところを、争いの場にしないで!!」

タイマフィア「………」

秋穂「もしなんか文句あるんだった、お互いのドン私のところに連れてきなさい!!」

秋穂「……ふんだっ!」スタスタスタ

282: 2020/07/02(木) 12:14:46.49 ID:4c9LRaIJ
スタスタスタ…

秋穂「………」クルッ

・・・シーン

秋穂「銃声が聞こえなくなった、分かってくれたかな…」

店主「いやぁ、お嬢ちゃん凄かったねぇ!」

秋穂「……!」

店主「あっ、いや…度胸あってカッコいいと思ったよ!今まであんな事言える人なんていなかったからさ!」

秋穂「(こんな所に和菓子屋があったんだ…)」

秋穂「…あの」

店主「ん、なんだい?」

秋穂「お邪魔してもいいですか…?」

店主「えっ、どうぞどうぞ!うちなんかで良ければ」

秋穂「ありがとうございます」

秋穂「……なんか懐かしい感じ」

店主「お嬢ちゃん、これ食べな…お金はいいから」

秋穂「えっ、でも…!」

店主「いいからいいから!お嬢ちゃんの度胸に賛辞を送って、ね」

秋穂「……すいません、いただきます!」

283: 2020/07/02(木) 12:20:20.09 ID:4c9LRaIJ
秋穂「ハムッ…」

秋穂「…っ!これは…!美味しいです…」

店主「そりゃあ良かった!」

秋穂「………」

秋穂「……昔、おばちゃんと食べてた和菓子とそっくりなんです」

店主「もしかして師匠の店かな」

秋穂「え…」

店主&秋穂「丈ムラ!」

秋穂「すごい、こんな偶然…」

秋穂「お師匠さんは、まだ元気に…?」

店主「……亡くなったよ、血の大晦日に」

秋穂「あっ…そう、ですか…」

秋穂「ごめんなさい…」

店主「いや、いいんだよ…。師匠、最後まで自分の店を置いて逃げようとはしなかったね…」

店主「しかし、師匠の顔に泥を塗っちゃったな…お客は来ないし、不甲斐ないよ…」

秋穂「それは、ドンパチしてた連中のせいですよ!きっとこれからはいっぱい来ます!絶対!」

284: 2020/07/02(木) 12:23:08.43 ID:4c9LRaIJ
店主「だといいんだけどねぇ」

タイマフィア首領「おい」

店主「うわっ、ひ、ひえっ…」

秋穂「……モグモグ」

タイマフィア首領「弾に当たらない女ってのはお前か?」

タイマフィア首領「私はタイマフィアのドン、チャンポンだ」

秋穂「……モグモグ」

チャンポン「なんだいその目は」

チャンポン「手打ちさせる為にボス呼んでこいって言ったのはお前さんじゃないのかい?」

秋穂「……えぇ」

チャンポン「……だが、私一人では手打ちもクソもない」

チャンポン「双方のボスが話し合って、初めて成立するもの……いや、来たようだな」

中国マフィア首領「これはこれは、タイのボスが直々に出てこられるとは珍しい」

285: 2020/07/02(木) 12:25:43.25 ID:4c9LRaIJ
中国マフィア首領「とっくに老衰でポックリ逝ったと思ってたよ」

チャンポン「」ギロッ

中国マフィア首領「…その目を見る限り、まだまだやれそうだね」

チャンポン「死ぬまでガキの喧嘩に付き合うのも悪くない」

中国マフィア首領「………」

チャンポン「………」

ジリッ…

秋穂「……いちご大福、生地固め、アンコ少なめ、片栗粉少なく、あとイチゴおまけして!!」

秋穂「この人たちにも同じのをっ!」

店主「えっ、あ…は、はいよ」

秋穂「あなた達も座りなさい、立ち食いはマナー違反なんだから!」

秋穂「海未おばちゃんに怒られても知らないよ!」

チャンポン「………」

中国マフィア首領「………」

スッ…ガタッ

286: 2020/07/02(木) 12:30:43.64 ID:4c9LRaIJ
モグモグ……

店主「………」

チャンポン「……お嬢ちゃん、私が昔まだタイにいた頃」

チャンポン「お嬢ちゃんと同じような、強い眼差しをした女と会ったことがある」

秋穂「……モグモグ 」

チャンポン「全く目障りな奴でね、ポッと現れたかと思ったら、次々と私の部下達をなぎ倒していったよ」

チャンポン「〇そうと思い、銃を撃った」

チャンポン「だが…不思議な事に弾が当たらんのだよ、お嬢ちゃんと同じようにな…」

チャンポン「後で調べるとその女は……エリーチカといい、俺たちのようなゴロツキを懲らしめていることを知った」

秋穂「………」

ガタッ

中国マフィア首領「ロシア人か?」

ガタッ

チャンポン「……さぁな」

ジリッ

秋穂「………」グイッ

中国マフィア首領&チャンポン「!」

秋穂「仲良くして!ほら、握手!」

チャンポン「…………」

中国マフィア首領「…………」

ガシッ

店主「……す、すごい」

287: 2020/07/02(木) 12:34:12.88 ID:4c9LRaIJ
-翌日- ~学校~

秋穂「ふわぁ~あ…ねむいっ…」

キーンコーンカーンコーン

ガラッ

先生「よーし、席つけ席」

サラッ…

「ザワザワ…」

先生「あー静かに、えー、見ての通り今日から新しい仲間が増える」

秋穂「……転校生?」

先生「んじゃ、チョーク渡すから自己紹介を」

「………」カッカッ…

パチンッ

果南「ま、松浦果南…です…!///」

果南「どうぞ…よ、よろしく…」

オーケッコウカワイクネ?
オトナビテルノニ ドコカハジライアルノガイイネ

秋穂「……んぅ?どこかで会ったことあるような」

果南「(くっ…///マリーめ…!)」

288: 2020/07/02(木) 12:38:12.82 ID:4c9LRaIJ




-数日前- ~理事長室~

果南「鞠莉、なんでこの学校なの?」

鞠莉「……ここが一番“あいどる”に関する情報を掴めそうだったからじゃない」

果南「……だからって鞠莉が理事長になる必要……」

鞠莉「別にお金の事なら心配ないよ、小原家の財力があればイージーなんだから!」

果南「そんなこと言ってるんじゃなくて!その、理事長になる必要性皆無っていうか…」

鞠莉「ホワット?何言ってるの果南、私が理事長にならないと入学手続きその他もろもろ面倒じゃない」

果南「入学手続き……?って、誰の……?」

鞠莉「え?」

果南「え?」





果南「ぐぅ…///」

先生「じゃあ松浦は……高坂の隣が空いてるからそこで」

果南「あっ、はい…」

果南「……はぁ」

289: 2020/07/02(木) 12:43:38.98 ID:4c9LRaIJ
果南「(あっ、そういえばマリーこんな事言ってたな…)」




鞠莉『果南!挙動不審じゃダメよ!怪しまれずに過ごすにはスマーイルを忘れずに!』




果南「(……わかったわよ)」

果南「よ、よろしくね!!」ニコッ

秋穂「えっ…あっ、よろしく」プイッ

果南「………(やっぱり、私のキャラじゃない!)」

秋穂「(絶対にどこかで会ったことあるんだけどなぁ…)」

秋穂&果南「……んぅ」

290: 2020/07/02(木) 12:48:43.13 ID:4c9LRaIJ
キーンコーンカーンコーン…

~理事長室~

バンッッッ!

鞠莉「ん?」

果南「はぁはぁ…!!」

鞠莉「OH、かなーん!どうだった、第二のスクールライフは?」

果南「どうもこうもないっての!!」

果南「私、あの子達より一回りも上なのに、制服着て…勉強して…なんかもう!なんかもう……///」

鞠莉「バレないか不安かって?大丈夫大丈夫!果南は全然若く見えるしビューティフルだよ?」

果南「……もうマリーが生徒役やってよ」

鞠莉「ダメダメ、私はもう理事長として認知されてるんだし、今更役を変更なんて無理」

鞠莉「それに果南、千歌ッチなんて全然慣れない職場で罵倒されながら、必死に頑張ってるんだよ?」

果南「…………」

鞠莉「Aqoursのみんなを助けるために」

果南「………わかったよ、頑張る」

鞠莉「流石果南、お利口さん!」

果南「でも、せめて理事長の権限で私服登校とかにしてくれない?」

鞠莉「それはダメ!果南の制服姿は私の目の保養にもなるから!」

果南「……やっぱり、一番損な役回りだよ」

291: 2020/07/02(木) 13:15:41.04 ID:4c9LRaIJ
-数週間後- ~警視庁~

「今宵、我々は長らく黙認してきた、各地域の裏通りにのさばる不法滞在者の一斉摘発に踏み切る!」


刑事1「なーにが黙認してただよ…大した手柄にならねぇから知らぬ存ぜぬで押し通してただけだろうが」ボソボソ

刑事2「聞けばスーザン裏通りのマフィアの抗争は鎮圧されたらしい」

刑事1「はーん…理由はそれか…恐れるものが居なくなったら、あとは不法滞在者のゴミ共を権力振りかざしてお縄につかせるだけだからな」

千歌「ふわぁ~…」

「高海刑事、少しは緊張しろおぉぉ!!!」

千歌「あぅっ…す、すみません!」

刑事1「本日1回目の高海の叱責」

刑事2「今日はまだ食らってなかったのに、惜しいな」

千歌「す、すみません…」

292: 2020/07/02(木) 13:21:20.71 ID:4c9LRaIJ
刑事1「しかし、よくこんな奴が刑事になれたなぁ」

刑事2「おいやめろ、即戦力の女デカだぜ?有能じゃなけりゃ女でこの部署にはこねぇよ」

刑事1「即戦力って…高海ってもう32とかだろ?」

千歌「うぅ…」

刑事2「この世界じゃ珍しくねぇよ、むしろ若い」

刑事1「……どうせコネだろ」

千歌「………」

刑事2「おい…んな言い方しなくてもいいだろ、今日はどうしたんだお前」

刑事1「はっ…そもそもいくら有能でも女を刑事にさせるってこと事態理解に苦しむね、上は何考えてんだか…」

刑事2「末端の俺らがそんな事言っても仕方ないんだよ、ほら行くぞ、高海も支度しろ」

千歌「は、はい!」

293: 2020/07/02(木) 13:33:45.91 ID:4c9LRaIJ
ウー…ウー…

刑事1「そもそもさぁ、高海って試験受けた?」

千歌「え…う、受けましたよ勿論!」

刑事1「にしてはアホすぎるような…」

刑事2「いい加減にしろ、しつこいぞ」

刑事2「仕事の話に戻す」

刑事2「今日のヤマはここだ」

千歌「珍宝侖…?中華料理屋さん?」

刑事2「あぁ、マフィアの抗争が落ち着いたから、この裏路地もかなり賑わってきた」

刑事2「その中で最も人が集まり、かつ法に触れるヤツらが通ってるのがここだ」

刑事2「今日はここに来店する奴ら全員しょっぴく」

千歌「あの、一ついいですか?」

刑事2「ん?なんだ?」

千歌「どうやって不法滞在者かどうか判断するんですか?もし関係ない人を誤認逮捕でもしちゃったら…」

刑事2「………」

刑事1「………ま、片っ端から逮捕していけ、みんな同じ穴の狢だ」

刑事2「………もし、正当な国民であったとしても、不法滞在という事実を知っていて、その連中を庇っているならソイツも共犯扱いだ」

千歌「…わかり…ました」

294: 2020/07/02(木) 13:39:05.14 ID:4c9LRaIJ
ザッ…ザッ…ザッ…

~珍宝侖~

ザワザワザワ

刑事1「よーし高海、先陣切れ」

千歌「えっ、わ、私!?む、無理ですよ!」

刑事1「いいから早く行けよ!!!」

刑事2「お前らうるさい!気づかれる!……あっ」

オカマ「あっ…」

刑事1「あっ…」

オカマ「………!」ダダダダダダダ


秋穂「あっ、いらっしゃい!久しぶりだね、どうしたの慌てて?」

オカマ「秋穂ちゃんヤバい!マジヤバい!外!外!」

秋穂「外?」

オカマ「警察……!めっちゃいるよ!!」

秋穂「え…!早く!裏口から逃げて!!」

バンッ

刑事1「おらおらぁ!!両手あげて大人しくしろぉ!」

295: 2020/07/02(木) 13:45:22.62 ID:4c9LRaIJ
カチャリ、カチャリ

秋穂「何してんのやめてっ!!」

秋穂「みんな何もしてないじゃない!!」

刑事1「うるせぇ!令状も出てんだよ」

珍「コノイソガシイトキニイッタイナンダ!?」

刑事1「店主だ、押さえ !!」

ガヤガヤガヤ、ザワザワザワ

ガチャリ!

珍「!?」

秋穂「ちょっと!!!珍さん何もしてないじゃない!!なんで逮捕されなきゃいけないの!?」

刑事1「うるせぇガキだな!!お前も逮捕だ!!」グイッ

秋穂「うっ……離して……よ!!」バキッッッ!!

刑事1「グ工ッッ…….!?」ズドンッ

刑事2「…!公務執行妨害!現行犯逮捕だ!!」

秋穂「…っ!?離して!!」

警察1「つぅ…こいつは没収だ!」スッ

秋穂「!!!」

秋穂「ふざけないで、返して!大切な帽子なんだから!!!」

刑事2「暴れるなッッ!!」

秋穂「返してよ!おばちゃんの帽子!!」

秋穂「……ッ!!弱いものイジメよ!警察なんてサイテー!!警察なんてだいっきらい!!!」


千歌「……あっ……え、えっと……」ポツーン

296: 2020/07/02(木) 13:53:29.45 ID:4c9LRaIJ
-数時間後- ~警視庁~

千歌「あれ!?」

刑事2「ん?どうかしたのか」

千歌「あの…さっきの女の子は?」

刑事2「女の子?」

刑事1「あいつだろ、俺をぶん殴った汚ねぇ帽子被ってた、あの」

刑事2「あぁ…高坂秋穂の事か、あの子なら取り調べ受けてそのまま帰ったぞ」

パサッ…

刑事2「……?どうした?」

千歌「……高……坂……?」

刑事2「……それがなんだ?」

千歌「あっ……いえ、その子の帽子とリボン返したくて……」

刑事1「けっ、わざわざ律儀に返さなくてもいいだろ……クソ、思い切りぶん殴りやがって……」

刑事2「あれはお前も高圧的すぎだ。高海、もう今日はいいから、上がれ」

千歌「あ、ありがとうございます!」ダッ

刑事1「………」

刑事1「それにしても、本作戦でも高海刑事はいいとこなしですな」

刑事1「なんであんなの置いてんだ?」

刑事2「……さぁな、俺にもわからん……ま、ムードメーカーってところだ」

刑事1「はっ…なってるか?」

298: 2020/07/02(木) 14:06:38.34 ID:4c9LRaIJ
秋穂「………」

秋穂「もう取り調べ受けて釈放されたよ?まだ何か用?」

千歌「あっ、えっと……そうじゃなくて」ゴソゴソ

千歌「これ……」スッ

秋穂「!」

千歌「リボンと帽子……ごめんね、先輩達手荒くて」

秋穂「別にいい……」パシッ

千歌「……さっきさ、それ取られる時かなり抵抗してたけど……大切な物なの……?」

秋穂「………おばちゃんの」

千歌「……もしかして、か、形見?」

秋穂「……ッッ!違う!!!」

千歌「!」ビクッ

秋穂「……違う」

秋穂「預けられてるだけだから……」

千歌「そ、そっか……ごめんね」

299: 2020/07/02(木) 14:11:45.22 ID:4c9LRaIJ
千歌「あの、一つ聞きたいんだけど」

秋穂「なに?」

千歌「あなたの苗字って高坂…だよね?」

秋穂「……それがどうしたの?」

千歌「あと、そのリボン…私、見覚えがあって」

秋穂「…………」

千歌「もしかして、さっき言ってたおばちゃんって…穂乃果さんの事なんじゃ…!」

秋穂「…………」

千歌「…………」

秋穂「……あなたもおばちゃんを悪者に仕立て上げようとしてるんだ」

千歌「え?」

秋穂「ッ、おばちゃんは無実ッ!」

300: 2020/07/02(木) 14:19:50.52 ID:4c9LRaIJ
千歌「じゃあ、やっぱり…あなたが穂乃果さんの姪っ子さんなんだね」

秋穂「……私から聞いたこと脚色して、またおばちゃんの悪評流すんでしょ」

千歌「………」

秋穂「……おばちゃんは……ただ、みんなを守ろうとしただけなのに……」

千歌「……違うよ」

秋穂「……!」

千歌「私は……穂乃果さんの……μ'sのファンだったから……あの事件が報道された時も信じ難かったよ」

千歌「今の時代、穂乃果さんを擁護しようものならすぐに」

秋穂「なんで……」

千歌「……え?」

秋穂「じゃあなんで警察なんてやってるの!?警察なんて今じゃ“あいどる”の犬じゃん!!」

千歌「……私、友達が行方不明でね」

秋穂「………」

千歌「色々調べていくうちに元凶はその“あいどる”にあるんじゃないかって……友達と話してたんだ」

301: 2020/07/02(木) 14:29:09.15 ID:4c9LRaIJ
千歌「この写真見て」スッ

秋穂「……これは?」

千歌「地元の石碑に刻まれた私の友達の名前」

秋穂「………なんで刻まれてるの?」

千歌「…………」

秋穂「……なんで?」

千歌「………死んだってことにされてるんだ」

秋穂「えっ…?」

千歌「でも死んでないよ……表向きは死んだ事にされてるけど……みんな絶対に死んでない」

千歌「きっと何か不都合があるからそうしてるだけなんだよ」

秋穂「………」

千歌「………敵を倒すにはまず敵を知ること」

千歌「そう教えてもらって、私は警察に潜入捜査してるんだ」

千歌「……まぁ、ダメダメで早くも怪しまれてるけどね……えへへ」

秋穂「………」

千歌「……私はあなたの力になる!!だから穂乃果さんの真実を教えて欲しい!」

千歌「ね!」

秋穂「……わかった、信じるよ」

千歌「……!!ありがと!!秋穂ちゃん!!」

302: 2020/07/02(木) 14:39:47.71 ID:4c9LRaIJ
千歌「私、口挟まずに聞くから!」

秋穂「…その前に」ゴソゴソ

千歌「ん?」

秋穂「これ」

千歌「これって、音楽プレーヤー…?」

秋穂「……それ、穂乃果おばちゃんが使ってたやつなんだ」

千歌「……えっ!!聞いてみてもいい?」

秋穂「…うん」

カチッ

『……えーっと……今日は2019年の12月31日、一曲歌いたいと思います!えーっと、あー……とりあえず録音します!!』

千歌「穂乃果さんの生声だ…す、すごい!」

秋穂「……ふふっ」

千歌「え…ど、どうしたの?」

秋穂「うーうん…なんでもない…。それより歌、始まるよ」

千歌「う、うん…!」

秋穂「………(穂乃果おばちゃんの、μ'sのファンか)」

303: 2020/07/02(木) 14:50:34.74 ID:4c9LRaIJ




秋穂「……穂乃果おばちゃんは嵌められたんだよ」

千歌「嵌められた…それって…?」

秋穂「16年前のお台場爆破、NY爆破、そして血の大晦日は知ってるよね?」

千歌「当然だよ!!当時大々的に報道されてたしね、正直……私はあんまり関心がなかったけど……」

秋穂「同時期に起きた他国のウィルス事件も……主謀者は全部“あいどる”だよ」

秋穂「穂乃果おばちゃんは……世界を救おうとしたのに、逆に世界を陥れようとした悪魔って事にされた……」

秋穂「“あいどる”のせいで…!!!」ギュッ

千歌「……胡散臭いとは思ってたけど、まさかそんなことまで」

千歌「でも…穂乃果さんが犯人じゃないって分かって良かったよ!」

秋穂「……本当に穂乃果おばちゃん、好きなんだね」

千歌「うん!………私の憧れなんだ」

千歌「昔……うーうん、今も追いかけ続けてる……一度でいいから会ってみたかったなぁ……」

秋穂「………あの慰霊碑見える?」

千歌「え…?う、うん、見えるよ」

秋穂「あそこが16年前、東京が大爆発した時の中心部……穂乃果おばちゃんが世界を救おうと戦った場所だよ」

千歌「……慰霊碑に名前は」

秋穂「……刻まれてないよ」

千歌「そっか…」

秋穂「…ねぇ!穂乃果おばちゃんの話、もっとしてあげよっか?」

千歌「え?ほ、ほんと!?」

秋穂「うんっ、おばちゃんのことホントに好きみたいだし特別に!」

千歌「うんうん!!大好きだよぉ~!お願い!」

秋穂「そうだね……まず穂乃果おばちゃんはね……」




304: 2020/07/02(木) 14:55:39.09 ID:4c9LRaIJ
-翌日- ~学校~

学年主任「……まずですねお母様、今日起こし頂いたのはやはり、秋穂さんの件についてなんですが」

海未「申し訳ありません…私、園田海未と申しまして、母親ではなくて…東京での身元引受け人なんです」

海未「唯一の肉親である祖母は今……田舎に疎開していまして」

学年主任「疎開……なるほど、ま……賢明でしょうな……。私も仕事柄、声を大にしては言えませんが都民が思ってるほどここは安全でもないし平和でもない……」

学年主任「いや、しかし失敬…お母様でいらっしゃらないとは…通りでお若いわけだ」

海未「……あの、それで用件とは」

学年主任「あぁ…失礼…先ほど申しました通り、今日は秋穂さんの件でお話させて頂きたくてですね」

海未「はい…」

学年主任「いやはや…あの子は中々優秀な子でして。成績もトップクラスですし、運動神経もいい…まさに才色兼備というやつですよ」

海未「…ありがとうございます」

学年主任「しかし…それはいいのですが」

305: 2020/07/02(木) 15:01:12.20 ID:4c9LRaIJ
学年主任「若干ではありますが、素行不良な面も目立つのです」

海未「……本当に申し訳ありません、私の監督不届きが招いた結果です」

学年主任「いやいや、顔をあげて下さい園田さん」

学年主任「いえね…他の教師はどうか知りませんが私はあの子がどうしても悪い子だとは思えないんです」

学年主任「私には孫がいますが、その孫とほぼ遜色ない接し方をしてきたつもりです」

学年主任「今までのイザコザも私なりに庇ってきました」

海未「はい、ありがとうございます…」

学年主任「しかし…警察が絡んでくると話が変わってくるんです…」

学年主任「学校というものはどうも警察に弱くてですね、今回の件は流石に私の手には負えないかもしれません…」

海未「……はい」

学年主任「公務員がなぜ同じ公務員にヘコヘコしてるのか理解に苦しみますよ、全く」

学年主任「…私も尽力はしますが、最悪数週間の停学は覚悟しておいてください…」

海未「本当に…申し訳ございません」

306: 2020/07/02(木) 15:13:14.66 ID:4c9LRaIJ
学年主任「それとですね園田さん、もう一つ」

海未「…はい」

学年主任「これは秋穂さんが過去、問題を起こした際に聴取したメモなんですが」

海未「………」

学年主任「見ての通り、どれもこれも血の大晦日に関連したことばかりなんです」

海未「………」

学年主任「発端は血の大晦日、口論で始まり、時には手が出たりなんてことも…」

学年主任「私は…彼女は優しい子だと思っています。しかし、この血の大晦日の事になると人が変わったように乱暴になり、冷静でいられなくなる」

学年主任「……園田さん、いったい彼女はなぜ血の大晦日についてあそこまで懐疑的なんですか?」

学年主任「血の大晦日当時、彼女はまだ2歳…いったいその時になにが?」

海未「……それは」

海未「お答えできません」

学年主任「…………」

学年主任「そうですか…わかりました、今日はお時間を取らせてしまい、すみませんでしたね」

海未「いえ、こちらこそ…秋穂には私から厳しく言っておきますので…」ペコリ

309: 2020/07/02(木) 23:38:38.12 ID:4c9LRaIJ
~三森荘~

海未「………」

ガチャ

海未「…っ!」

秋穂「あれ?海未おばちゃん?なにやってんの?こんなドアの前で」

海未「………おばちゃんって言わない」

秋穂「中入りなよ、お茶淹れるよ?あ、コーヒーの方がいい?」

海未「……秋穂」

秋穂「……ん?」

海未「……田舎に、おばあちゃんのところに帰ってあげたらどうですか?」

秋穂「」ピクッ

310: 2020/07/02(木) 23:43:52.11 ID:4c9LRaIJ
秋穂「……まぁ」

秋穂「確かに、最近おばあちゃんとも会ってないしね……孫の顔も見たいだろうし、そろそろ顔出した方がいいのかな~」

秋穂「祖父母は孫無しじゃ生きていけないって言うもんね!えへへへ…」

海未「………」ジッ…

秋穂「………」

海未「…秋穂」

秋穂「やだよっ!!ここにいる!!」

海未「一緒に住んであげれば、お婆ちゃんも安心してくれる…きっと喜んでくれます」

秋穂「そうかもしれないけど……私がいないと、穂乃果おばちゃんが帰ってきた時……」

海未「……穂乃果は帰ってきませんよ」

秋穂「…ッ!?」

海未「………」

秋穂「なんで……そんな事……海未おばちゃん……なんでなの……?海未おばちゃんだって……!」

秋穂「……ッ!」 ジワッ …

秋穂「もう知らないもんッッ!!」ダッ!!

ガチャン、バタンッ!

海未「秋穂っ…!」

ダダダダダダダ……

海未「……っ」

海未「……私だって、そんなこと思いたくないに決まってます……でも」

海未「……でも」

311: 2020/07/02(木) 23:52:07.56 ID:4c9LRaIJ
~公園~

キィコ…キィコ…

秋穂「………」





穂乃果「どう?秋穂、ブランコは!楽しい?」

秋穂「うん、すっごく!!」

穂乃果「よーし!じゃあ、次は立ち漕ぎだ!」





秋穂「……穂乃果おばちゃん」

「どうかしたん?」

秋穂「……!」クルッ

秋穂「希おばちゃん…?」

希「なんか、思いつめた顔してるよ?」

312: 2020/07/02(木) 23:56:37.41 ID:4c9LRaIJ
秋穂「…実は」

希「海未ちゃんと喧嘩でもした?」

秋穂「……うん、揉めちゃった」

希「よいしょ…。そっか、それで家飛び出して来ちゃったんやね」

秋穂「……うん」

秋穂「っていうかさ……希おばちゃん、久しぶりだね……元気だった?」

希「うちは元気だよ?神主さんが快く受け入れてくれて、また明神さんで働いて……細々と暮らしてるよ」

希「秋穂ちゃんは?」

秋穂「私は……まぁ、平気だよ」

希「…そう?」

秋穂「……うん」

秋穂「……海未おばちゃんはさ」

希「ん?」

秋穂「穂乃果おばちゃんのこと、なんとも思ってないのかな…」

希「えっ?」

313: 2020/07/03(金) 00:00:21.49 ID:Edb6uLkM
希「…急にどうしたん?ウチはそんな事ないと思うよ?」

秋穂「だってだって!穂乃果おばちゃんの事話すと……いつも興味なさげだし……挙げ句の果てに怒るし」

希「んー、秋穂ちゃんには、まだわからないのかもしれないね」

秋穂「どういうこと?」

希「大丈夫や。海未ちゃんは別に穂乃果ちゃんに対して関心なくなったわけじゃないよ」

秋穂「…………」

秋穂「絵里おばさんも…」

希「……うん」

秋穂「絵里おばさんも、にこおばちゃんも、凛おばちゃんも、花陽おばさんも、真姫おばさんも………穂乃果おばちゃんも………」

希「…………」

秋穂「みんなどこか行っちゃった…」

秋穂「希おばちゃんは悲しくないの?寂しくないの?辛くないの?」

希「……ウチは」

314: 2020/07/03(金) 00:07:04.81 ID:Edb6uLkM
希「平気だよ」

秋穂「えっ…な、なんで!なんで平気なの?」

希「んぅ?だって…みんな、絶対生きてるって確信してるから」

秋穂「……っ!」ブワッ

希「秋穂ちゃんもそう思うでs」

ダキッッ

希「!」

希「おっとっと…」

秋穂「うわあぁぁん……!だよね、だよね……!!死んでなんかないよね?」グスッ

希「……うん、少なくともウチはそう思ってるよ」

秋穂「海未おばちゃんにも、そうやって言ってほしかった……!!私にも……グスッ」

秋穂「希望が欲しかった……この真っ暗な闇から抜け出すための……光が欲しかったんだよぉ……!グスッ…」

希「うんうん…よしよし」ナデナデ

秋穂「グスッ…グスッ…エグッ…」

315: 2020/07/03(金) 00:12:59.46 ID:Edb6uLkM
ナデナデ

希「……落ち着いた?」

秋穂「……うん、ありがと……希おばちゃん」

希「……さっきの話」

秋穂「グスッ……うん……」

希「秋穂ちゃんと穂乃果ちゃんの2年の付き合いを安く見てるわけじゃない……これを頭に入れた上で聞いてほしいんやけど、大丈夫?」

秋穂「……うん」コクッ

希「よしよし、いい子さんやね」

秋穂「……えへへ」

希「……あのね、海未ちゃんは……穂乃果ちゃんの事を誰よりも心配してると思うよ」

秋穂「……うん」

希「あの二人は幼馴染やから、切っても切れない縁があるんよ……」

秋穂「なら……」

希「でも海未ちゃんだって弱音を吐けない…本音を曝け出すわけにはいかないんや」

秋穂「なんで…?」

希「そりゃあ…穂乃果ちゃんが忘れてった、大切な宝物を守るため」

秋穂「あっ…」

希「ずっと気を張ってる…」

希「だから、秋穂ちゃんの前では泣けないはずや?」

316: 2020/07/03(金) 00:17:00.55 ID:Edb6uLkM
希「2019年までで20年ぐらいの付き合いだったのかな?長い付き合い」

秋穂「……私の10倍だね」

希「あ」

希「秋穂ちゃん、今ちょっと卑屈になったやろ?」

秋穂「え?い、いや、な…なってない!なってない!」

希「ほんとぉ~?」

秋穂「うん、なってないよ…ただ、海未おばちゃんが凄く大きく見えてさ」

秋穂「なんか2年ぽっちの付き合いの私がへこんでるのって……バカみたいだなって」

ガシッッ!!!

秋穂「ひゃっ!///」

希「そういうのを卑屈になってるって言うんよー!ほーら往年のわしわしMAXよ~!」

秋穂「あ、あうぅぅ~…///」

希「……ふふふっ、穂乃果ちゃん譲りの中々な」

秋穂「ううっ…の、希おばちゃん…!」

希「だって~…秋穂ちゃんがウチの前置きを理解してなかったんやも~ん」

秋穂「む~ッ…!」

317: 2020/07/03(金) 00:23:27.25 ID:Edb6uLkM
希「今まで隣にいて当たり前だった人が急に居なくなる」

秋穂「………」

希「普通じゃいられないよ、そんなことあったら…」

希「ウチだってそう……口ではあぁ言ったものの、実際にはわかってるんだと思う、それを心の奥底にしまっているだけで……」

秋穂「………」

希「……秋穂ちゃん」

秋穂「…ん?」

希「16年前の事覚えてる?」

希「穂乃果ちゃんがお母さん達を疎開させた時の事」

秋穂「……その時の事は……とにかくおばちゃんと別れるのが悲しくて……あんまり、覚えてない」

希「無理もないよ、まだ小さかったしね」

希「……海未ちゃんから聞いたんやけどあの時、電車が発車した後に穂乃果ちゃん」

希「……自分にもしもの事があったら秋穂ちゃんは海未ちゃんに預けたい……って言ったんやって」

秋穂「…ほんと?」

希「うん、ほんとだよ」

希「海未ちゃんも……最初はその責任感から秋穂ちゃんを育ててたのかもしれない」

希「……でも、今は違うと思うよ?」

希「親以上の愛を持って……秋穂ちゃんと接してる、実は秋穂ちゃんも知らんぷりしてるだけで、本当はわかってるんとちゃう?」

秋穂「……私は」

希「……海未ちゃんもウチも……きっと絵里ち達も……秋穂ちゃんのことは希望と思ってる」

希「ウチ達の一縷の……最後の希望」

秋穂「私が……希望?」

318: 2020/07/03(金) 00:26:23.69 ID:Edb6uLkM
希「ねぇ、リボン、持ってる?」

秋穂「え…う、うん」ゴソゴソ

秋穂「これ…」

希「…懐かしいなぁ、穂乃果ちゃんの…」

希「貸して…ジッとしててね」

シュルル、キュッ

秋穂「希おばちゃん…」

希「帽子もいいけどリボンは付けないと映えないよ?」

秋穂「……うん、そうだよね」

希「それ、海未ちゃんに見せたら喜ぶよ~!」

秋穂「そう……かな?」

希「うん!きっと!」

319: 2020/07/03(金) 00:31:35.56 ID:Edb6uLkM
ジジジツ……パッ

秋穂「えへへ、似合ってる…かな?」


~~~~~~~~~~~

希「じゃ、そろそろ解散しよっか」

秋穂「あ、待って!希おばちゃん!」

希「また悩み事があったら連絡してきなよ」スッ

希「……でも、最も適当な相談相手は一番身近にいるって事、忘れたらあかんよ?」

秋穂「……大丈夫、わかってる」

希「よし!じゃあおやすみ、気をつけて帰るんよ?」

秋穂「希おばちゃんもね」

希「ちゃんと海未ちゃんと仲直りするんよ?」

秋穂「……うん、がんばる」

~~~~~~~~~~~


秋穂「……とは言っても、海未おばちゃんも流石に家に帰ってるだろうしなぁ」

秋穂「……こんな夜遅くに行っちゃ迷惑だし、明日にしよっか」

320: 2020/07/03(金) 00:34:47.58 ID:Edb6uLkM
秋穂「さてと…じゃあ、そろそろ帰ろっか」

秋穂「この前の公務執行妨害の件もあるし、補導とかされたら面倒くさいもんね」

秋穂「よっこいしょっと」

ザッ

秋穂「え?……!」

海未「………」

秋穂「あ、あれ……海未おばちゃん、今から帰るの……?」

秋穂「ちょっと遅くない…?」

海未「………ですか」

秋穂「え?」

海未「……ッッ!!何やっていたんですか!!」

秋穂「!!」ビクッ

海未「…………」

秋穂「………ごめん、なさ」

ダキッ!

秋穂「………っ!」

海未「どれだけ探したと思っているんですかっ…!」

秋穂「海未おばちゃん……ごめん……なさい、本当にごめん……」

海未「……許しません」

ギュッ…

321: 2020/07/03(金) 00:38:49.54 ID:Edb6uLkM
スタ…スタ…

秋穂「あ、あのさ…海未おばちゃん…」

海未「どうしました」

秋穂「…今日のこと、ホントにごめんね」

海未「…いえ、私も言いだすのが唐突でしたし、こちらにも落ち度はあります…。だから、もういいんですよ」

秋穂「そ、そっか……あ、ありがと……」

スタ…スタ…

秋穂「(…改まって言うと、なんか照れくさいなぁ…)」

ザッ、ドスッ!

秋穂「あぷっ!!?」

海未「え!?」

秋穂「イテテ……きゅ、急に止まらないでよ!」

海未「止まらないでって……何を言ってるんですか、もう着きましたよ」

秋穂「え?あっ…もう家か」

秋穂「たはは…ご、ごめん…!」

海未「もう…」

322: 2020/07/03(金) 00:43:44.87 ID:Edb6uLkM
海未「では…私はこれで」

秋穂「えっ…」

海未「明日も学校があるんですから、早く寝るんですよ?」

秋穂「待って!あ、あの海未おばちゃん…」

海未「…?まだ何か…?」

秋穂「え、えーと…その…今日だけでいいから…ちょっと、泊まっていってほしいなぁ…なんて…///」

海未「……あなたはもう高校生なんですよ?」

秋穂「うっ……知ってるよぉ」

海未「…フッ…冗談ですよ、早く上がりましょう」

秋穂「えっ…?あっ、ありがと!」

海未「……ですが、私が泊まる以上は夜更かし禁止です!」

秋穂「うぇぇ!?」

海未「当然です!さっき言ったでしょう!明日も学校があると!」

秋穂「ぐ、ぐぬぬぅ~!!(ぜ、絶対遅刻できないっ!)」

323: 2020/07/03(金) 12:03:12.92 ID:Edb6uLkM




ドサッ!!!

曜「いてっ……!!」

ルビィ「あうっ……!」

ガチャン…ガチャリ!!

曜「えぇ!?ちょ、ちょっと!!」

曜「~~!何さ~!!変な施設で目覚ましたと思ったら!!今度はこんな薄汚い牢屋なんかに連れてきてー!!」

曜「……ッッ!!ふーざーけーんーなー!!!!!」

ルビィ「よ、曜ちゃん、とりあえず落ち着いて…」

曜「……なんなのもう、早く千歌ちゃん達と会いたいね」

ルビィ「うん……でも、もうルビィは何が何だか……」

曜「あはは…私もだよ…」

324: 2020/07/03(金) 12:05:15.97 ID:Edb6uLkM
曜「…ここってご飯とかあるのかな?」

ルビィ「えっ!?そ、そんな……もしもこなかったらルビィ達……!」

曜「……餓死」

ルビィ「うひいぃ~!」

曜「いや、大丈夫だよ」

ルビィ「へ…?ほ、ホントに?」

曜「うん!」

ルビィ「なんで大丈夫ってわかるの?」

曜「え?うーん……なんとなく……だけど」

ルビィ「うひいぃ~!」

曜「ご、ごめんね!ルビィちゃん、適当言って!」

「くるわよ」

曜&ルビィ「!?」

「ありがたいことに…しっかりと三食、ね」

325: 2020/07/03(金) 12:07:33.37 ID:Edb6uLkM
曜「……今、前の部屋から」ボソボソ

ルビィ「声が聞こえたよね?」ボソボソ

ルビィ「それに日本語だったよ!」ボソボソ

曜「うん、しかもかなり流暢だった…って事は日本人?」

曜&ルビィ「・・・」

曜「あ、あの!」

・・・シーン

曜「あれ?」

キィー

曜「…?(扉が開く音?)」

・・・ドスッ!!!バキッ!!!

曜&ルビィ「……!!!」

「~~~~~!!!!! 」

「かはっっ……!!」

ルビィ「……~~!!」ブルブル…

曜「だ、大丈夫……大丈夫だからねルビィちゃん……」ポンポン

曜「(次は、私たちの番……なのかな……?)」バクバク

326: 2020/07/03(金) 12:09:35.38 ID:Edb6uLkM
ルビィ「はっ…はっ…こない…のかな?」

曜「大丈夫……みたいだね」

ルビィ「う、うん…」

曜「……あ、あの!すみません!」

・・・シーン

曜「……あ、あの」

・・・シーン

曜「おかしいな、連れて行かれちゃったのかな…」

ルビィ「いなくなっちゃった…?」

曜「うん、返事がない…」

曜「(……死んでないよね?)」

327: 2020/07/03(金) 12:15:38.64 ID:Edb6uLkM
-20分後-

曜「」ボー

「何?」

曜「えっ!?…あっ」

曜「(い、今なんだ…呼んでからの時差がすごいな)」

曜「あの!ここってどこなんでしょうか?というかここはなんなんですか…!?」

「プリズン」

曜「プリズンってことは…牢獄?」

ルビィ「ろ、牢獄って…ルビィ達、何も悪い事はしてないんです!」

「……達か、やっぱり二人いたのね」

「じゃあ、あと二週間ってところね」

曜「二週間…?二週間ってなんの事ですか?」

「〇されるまで」

曜&ルビィ「!!!!」

328: 2020/07/03(金) 12:19:47.77 ID:Edb6uLkM
ルビィ「こ、〇されって…」

ルビィ「うっ、あうぅ……」

ルビィ「」バタッ

曜「あっ!る、ルビィちゃん!!」

「その牢屋、今までも何人か入って来る子がいたわ」

「人は……余命が二週間とわかった時、何をするんでしょうね」

「教えて欲しい?」

曜「うっ…い、いえ…」ゾクッ

曜「…な、何か助かる方法はないんですか?」

・・・シーン

曜「(まただ……何で急に黙るんだろ……)」

・・・ザクッ

曜「……?なんの音?」

曜「ルビィちゃん…?」

ルビィ「ううっ……あうぅ……」グテッ

曜「違う、ルビィちゃんじゃない…」

ドンッッッ!!!

曜「うぇっ……!?」

モクモクモクッ……

曜「こほっ…げほっ…えぇ…?な、なに…?」

「……いいわ、助かる方法、教えてあげる」

曜「……あ、あなたが……前の部屋の?」

「その代わり、手伝いなさい」

曜「えぇと…あの、お名前は…」

「私?私は…そうね…」

絵里「9番よ」

329: 2020/07/03(金) 12:23:21.91 ID:Edb6uLkM
曜「9番って本名……なわけないですよね……あはは」

曜「それで、助かる方法って?」

絵里「脱獄するのよ」ガッガッ

曜「脱獄……」

絵里「向かいの牢獄からここに来るまで8年もかかったわ」

絵里「目と鼻の先……たかだか直線1mの距離で8年……」

曜「そんなに大変だったんなら、わざわざこの部屋に来る必要はなかったんじゃないんですか?」

絵里「いいえ、ここは構造上、最高の脱出ポイント……どうしても一度ここに来る必要があった」

絵里「……あなた達、ツイてるわよ?あと1日でも遅く投獄されていたら、私は一足先に脱獄して……あなた達は予定通り……〇されていた」

曜「」ブルッ

絵里「………」ガッガッ

曜「そ、それってスプーンですよね?まさかそれで掘り続けてきたんですか?」

絵里「……えぇ」

絵里「さっ、手伝ってくれんでしょ?私は掘り続けるから、あなたは看守が来ないか見張っておきなさい」

曜「あ、はい!」

330: 2020/07/03(金) 12:27:18.59 ID:Edb6uLkM
ガッガッ…ガッガッ

曜「……普通は無理ですよ」

絵里「………」ガッガッ

曜「そんな小さいスプーンで脱獄しようとするなんて……どんなに根気がある人でも、普通は諦めますよ」

絵里「………」ガッガッ

曜「…………」

絵里「あの子は最後まで諦めなかった」

曜「え?」

絵里「どんなに絶望的な状況でも、どんな困難が待ち受けていようと、成功する可能性がほとんど0に近くても、あの子は絶対に……諦めなかった」

ガッ!!ガッ!!

曜「………」

絵里「体育館…」

曜「……?」

絵里「例えば体育館でファーストライブをやって、お客さんが一人も来なかったら…普通、辞めると思わない?ガッガッ

曜「……あっ」

絵里「でも、あの子は決して諦めなかった」

曜「もしかして、あなたは……」

絵里「………」ガッガッ

曜「μ'sの……絢瀬絵里さん……?」

絵里「………」

絵里「…えぇ」ガッガッ

331: 2020/07/03(金) 12:29:46.48 ID:Edb6uLkM
曜「やっぱり…」

絵里「……心変わりしたかしら?犯罪者の片棒を担ぐのは嫌?」

絵里「嫌なら辞めてもいいわよ、私はあなたという障害物を乗り越えて、必ず脱獄してみせる」

曜「いいえ!逆に信頼出来ました!」

絵里「やっぱ……って、え?」

曜「正直、最初は不信感マックスだったんですけど……μ'sの絵里さんなら信用信頼、全面協力、圧倒的ヨーソローです!!」

絵里「……っ、ハラショー、気に入ったわ」

絵里「あなた、名前は?」

曜「渡辺曜です!ちなみにこっちでのびちゃってる子が黒澤ルビィちゃんです!」

絵里「曜、ルビィ……いいわ、やってやりましょう」

曜「はいっ!」

332: 2020/07/03(金) 12:32:10.20 ID:Edb6uLkM
ガッガッ、カッ!

絵里「!!」

曜「あっ!」

絵里「……ハラショー、こんなに早く通じるなんて」

絵里「よし、行くわよ」

曜「はい、あ…ルビィちゃん…」

絵里「……私が背負う義理はないんだけど」

曜「で、ですよね」

絵里「まぁ、いいわ……寄越しなさい」

曜「は、はい…なんか…ごめんなさい」

絵里「よいしょ……っと」

ルビィ「うっ……うぅ~……」

絵里「行くわよ、ついてきなさい」

曜「ヨーソロー!」

絵里「………(この子、緊張感のキの字もないわね…)」

333: 2020/07/03(金) 12:37:01.59 ID:Edb6uLkM
曜「なんかこういうダクトを通って脱出って、映画みたいでカッコいいですね」

絵里「……っ」

ズリ…ズリ…

曜「それにしても、真っ暗ですね…」

絵里「と…当然よ…ここはこの刑務所の最深部…ライトなんてないんだから…」

曜「ですね…」

絵里「……え、えぇ」

曜「絵里さん?なんか…震えてる…?」

曜「どうかしました?」

絵里「べ、別に…」

絵里「……ッ!!シッ!」 ピタッ

曜「え?」

絵里「見て、前方の下の方から、かすかに明かりが見えてるでしょ?」

曜「あっ、確かに…」

絵里「おそらく、管理室か警備室か何かね」

絵里「あの部屋から避難路に出て、そのあと海に出る」

曜「でも…話し声が聞こえる、人がいるって事ですよ」

曜「ここは遠回りしてでも安全なルートに行く方が得策じゃないですか?」

絵里「ダメよ、私たちに遠回りしてる時間なんてない」

絵里「今この瞬間に私たちが脱獄した事がバレて、警備に人を回されている可能性がある」

絵里「下の部屋のヤツらが談笑しているのを見ると、まだバレてはいないみたいだけど…」

絵里「一刻も早くこの刑務所から出るに越した事はないわ」

絵里「もし警備に人を回されたら詰みよ」

曜「そ、そうですよね…」

334: 2020/07/03(金) 12:46:00.74 ID:Edb6uLkM
~~~ペチャクチャペチャクチャ

絵里「……3人か」

絵里「私が先に降りてあいつらを仕留めるから、曜はここで待ってなさい」

曜「え、一人で大丈夫なんですか?」

絵里「大丈夫よ、隙を見て出るから」

~~~ペチャクチャ

絵里「(こっちには気づいてない……今ね)」

スッ…

ルビィ「うっ……あれ……ここは……曜ちゃん?」

絵里「!!?」

曜「あっ…!!」

ルビィ「って……え、えぇ!?みゅ、μ'sの絵里……さん……!?えっ……えっと!」

絵里「(……!!!んもぅ!なんて間の悪い子なの!)」

「誰かいるのか!?」

絵里「(気づかれた…!当然ね……)」

絵里「曜、ルビィ、そこで待ってなさいよ!」バッ


ルビィ「こ、これって…夢なのかな」

曜「夢じゃないよ…もう、ルビィちゃん起きるタイミング悪いよ~…」

ルビィ「あうっ…な、なんか…ごめんなさい…」

335: 2020/07/03(金) 12:49:08.12 ID:Edb6uLkM
スタッ

絵里「…っ!」キッッ!

看守1「き、貴様っ!」

警備員「コイツ、なんで……!!」

看守2「取り押さえ !」

ドスッ、バキッ、ドスドスドス!!!

看守&警備員「」


曜「す、すごっ…」

ルビィ「ほわぁ~…か、かっこいいなぁ~…///」

336: 2020/07/03(金) 12:51:49.47 ID:Edb6uLkM
曜「YOUっと!」スタッ

ルビィ「た、高いよぉ…」

曜「ルビィちゃん降りられる?」

ルビィ「こんなの…む、無理だよぉ…」

絵里「来なさい」

ルビィ「え?」

絵里「私が絶対に受け止めてあげるから、早く来なさい」スッ

ルビィ「は、はい!え、えっと…えいっ!」

ポフッ

絵里「……ね?思っていたよりも、怖くなかったでしょう?」

ルビィ「は、はい…///」

ルビィ「あ、あのなんでエリーチ……絵里さんが……」

曜「それは私が説明してあげるよ!」

絵里「曜、説明するのもいいけど、懐中電灯…そうね、あとビニール袋も探してちょうだい」

曜「よしきた!ヨーソロー!!」

337: 2020/07/03(金) 12:57:24.65 ID:Edb6uLkM
カクカクシカジカデ~

エェ!!!ルビィ、エリサンニオンブシテモラッテタノ!?


絵里「」キョロキョロ

絵里「……!」

絵里「この手紙…」

絵里「………」シャッ、ピラッ

絵里「………」


【前略、おばさん、お元気ですか。ここまでしらみ潰しに各地方の刑務所に手紙を書いていますが、果たしておばさんの元に届く日は来るのでしょうか。
届いたとしてもやはり、この手紙も検閲され、おばさんの目に通すことなく処分されてしまうのでしょうか。
……届いて欲しい、どうしたらいいか教えて欲しい。
私も成長して、色々行動できるようになりました……そのせいか警察にマークされつつあります。
私の友人が警察官が人を〇すところを見たと言うのです。やはり最早警察なんてあてになりません。
友人を助けたい…でも、どうすればいいかなんてわからない。
相談はする。だけど正直、海未おばちゃんにはこれ以上迷惑をかけられません。
……どうしたらいいんだろう、絵里おばさん。
・・・高坂 秋穂】


絵里「……秋穂」

338: 2020/07/03(金) 13:01:17.54 ID:Edb6uLkM
曜「絵里さん、見つけましたよ!」

絵里「……」クシャ

絵里「そう、なら行くわよ」

タッタッタッタ

曜「でも…なんで海に出ないとダメなんですか?陸を行った方が、見つかったとしても小回りがきくんじゃ?」

ルビィ「た、確かに……それにもし海を行くとしたらルビィ……」

絵里「あなた達、ここが何なのか知らないで連れてこられたの?」

曜「え、刑務所ですよね…?」

絵里「そういうことじゃなくてよ」

絵里「……私も陸があるんなら陸を行きたい。でも、ここの周りには陸なんてないのよ」

曜「あっ…もしかしてここって、海に囲まれた島とか?」

絵里「違う…ここは船なのよ」

ルビィ「ふ、船…ですか?」

絵里「えぇ」

曜「でも絵里さん、長い間拘留されてたんですよね?」

曜「なんで船ってわかったんですか?」

絵里「ここは環境劣悪に加えて施設の老朽化、設計も杜撰だから頻繁に時化が起きては大きく揺れる」

絵里「まっ、そのおかげで脱獄出来るんだけど」

339: 2020/07/03(金) 13:06:59.85 ID:Edb6uLkM
スタ、スタ、スタ、スタ

曜「……どれだけ歩いたんだろう?ずっと下り続けてる、結構遠いんですね」

絵里「……ほんとにね」

ルビィ「船内にも車道ってあるんだね…」

絵里「」ピタッ

ボフッ

ルビィ「アウッ…!!」

ルビィ「ご、ごめんなさ……!あ……」

曜「絵里さん?急に止まってどうしたんですか……って」

絵里「………」

曜「こ、これは……」

ザパァ…

ルビィ「し、浸水してる…」

340: 2020/07/03(金) 13:10:07.89 ID:Edb6uLkM
絵里「……曜、ビニール袋を貸して」

曜「え、あ…はい」

絵里「」パシッ

カチカチッ

絵里「これで懐中電灯も半防水にはなるわ、よし…」

絵里「行くわよ、どっちにしたってこの船はもう終わり」

曜「え?」

ルビィ「行くって…こ、ここを行くんですか!?」

曜「この先どんどん水かさが増えていきますよ!」

絵里「…それがなに?」

曜「え…」

絵里「だから諦めろっていうの?」

曜「いや、ち、違うんです……ルビィちゃんは……あまり泳ぎが上手くなくて……どこかもわからない海のど真ん中で泳がせるなんて流石に……」

絵里「……あなたは?」

曜「私は…泳げます…」

絵里「そう…なら、あなただけ来なさい」

曜&ルビィ「!!!」

341: 2020/07/03(金) 13:14:58.48 ID:Edb6uLkM
曜「え、絵里さん?冗談ですよね…?」

絵里「……あなた達、何か勘違いしていない?」

絵里「私があなた達を連れてきたのは仕方なく……そう、脱出する最中で偶然出くわしたからなのよ」

絵里「仕方なくなの…」

絵里「……早く決めなさい、ついて来ることに関してはダメとは言わない」

曜「……私がルビィちゃんを担いで」

絵里「ダメよ、万が一の時あなたは絶対にその子を見捨てようとしない」

絵里「あなたが捕まると私が捕まるリスクも高くなる」

絵里「……取捨選択は重要よ、私にも最重視しているものがある」

絵里「……あなた達まで救うなんて、そんなおとぎ話はないわ」

絵里「私は誰も……誰一人だって救えなかったんだから……」


亜里沙『お姉ちゃん♪」

穂乃果『μ'sに入ってください!』

ミカ『絵里先輩!』


絵里「…………」

342: 2020/07/03(金) 13:24:16.15 ID:Edb6uLkM
絵里「……曜の気持ちは多分変わらない、あなたを置いては行かない」

絵里「もしあなたがここに残るなら、きっと曜も…」

曜「………」

絵里「……選びなさい、ここに残って大人しく〇されるか、不得意な事でも頑張って私たちと逃げるか」

絵里「……この船は沈没するわ、どっちにしても残ったら死ぬ、それまで奴らに何をされるかわかる?」

ルビィ「……え、えっと」

絵里「ここの奴らはクズよ、私の歳でも欲情して身体を求める…」

ルビィ「うっ……」

絵里「あなたはまだ若い、必ず迫られるわ」

ルビィ「る、ルビィは…」

ルビィ「(ルビィ…やれるのかな…途中でダメになったら二人に迷惑をかけるんじゃ…)」

ルビィ「(もし、やり遂げられなかったら…)」

ポンッ

ルビィ「……!」

絵里「……泳ぎが苦手なら、私が出来る限りのフォローをしてあげるわ」

ルビィ「……や」

絵里「私たちのリーダーは…最後までやり遂げたわよ?」

ルビィ「や、やります!行きます!」

曜「ルビィちゃん……!」

絵里「決まったわね、行くわよ……曜、私が先導するからあなたはルビィを見ててあげなさい……」

曜「あの…ルビィちゃん、大丈夫ですかね?」

絵里「泳ぎなんて気持ちの問題よ、今のあの子なら人並みに泳げるわ」

343: 2020/07/03(金) 13:27:14.49 ID:Edb6uLkM




-神田明神-

希「ふぅ…葉っぱさんがようけ落ちてて、掃除もやりがいがあるなぁ~」

希「」サッサッ

ザッ

希「…ん?」

希「おやおや、これは珍しい参拝者やね」

海未「……希」

希「久しぶりだね、海未ちゃん」

海未「希も…元気そうで何よりです」

344: 2020/07/03(金) 13:31:52.28 ID:Edb6uLkM
ズズッ…

希「……ふぅ、お茶がしみるね」

海未「……」ズズッ

コトッ

海未「……そうですね」

希「秋穂ちゃんに聞いたの?」

海未「はい…なるべくメンバーとは接触しないように、とは思っていたんですが…」

希「……ウチ達二人はもうほとんどマークされてない」

海未「未だに大晦日になると、あの時の特集番組が放送されますが……主犯格は穂乃果と絵里の二人になっています」

希「同じμ'sメンバー、ウチ達の事もきっと“あいどる”側に割れてるんだろうけどね」

海未「にも関わらず、私たちのことが大々的に報道されないのはやはり…」

希「秋穂ちゃんの存在やろうね。でも…ウチも海未ちゃんも秋穂ちゃんを盾にして身を潜めてたんじゃない」

海未「はい、それは…理解しているつもりです…」

345: 2020/07/03(金) 13:42:16.01 ID:Edb6uLkM
海未「少し前からボノカ一派という過激派集団が名を馳せているようですが……これは」

希「うん、ウチも噂には聞いてた……きっとμ'sの誰かが……」

海未「……絵里でしょうか?」

希「……絵里ちは今も収監されてるはず……たぶん絵里ちじゃない」

海未「となると…」

希「…何にしても、それなりの戦力があるみたいだし」

希「ボノカ一派に協力するのもありなんかもね」

海未「希…動くんですか?」

希「秋穂ちゃんやみんなに任せっぱなしって訳にはいかないやん。それに、もう秋穂ちゃんも自立できる歳なんやし」

海未「はい、そうですよね…」

希「ウチ達と一派、あとは……」

希「……絵里ちを」





ザパァ

絵里「……っ」

ルビィ「はぁはぁ……ひぃひぃ……ごめんなさい、ルビィはもうダメです……」ブクブク

曜「わわっ!ルビィちゃん!?」

絵里「……大丈夫そう?」

曜「いえ…これは…」

絵里「………そう」

346: 2020/07/03(金) 13:47:59.31 ID:Edb6uLkM
ガシッ

ルビィ「もう…はっ…はっ……体力の限界ですぅ…」

曜「私の感覚だと…もう2kmは泳いでますよ」

絵里「……それはマズイわね」

曜「はい、だから少し休憩して…」

絵里「いいえ…休憩は無しよ、一刻も早くこの冷たい海水から上がらないと命が危ないわ」

絵里「行くわよ」

曜「そ、そんな…待ってください!」

絵里「……あなたは何のために脱獄を?」

曜「え?そ、それは……みんなと会うためです」

絵里「私は……あの子の仇を取らないとダメなの」

絵里「こんな所で立ち止まってなんかいられない」

ジャプ…

曜「うぅ…」

ルビィ「はぁ……ふぅ……い、いいよ曜ちゃん……!ルビィは大丈夫だから!」

曜「ルビィちゃん…」

ルビィ「行きます!!」

絵里「……えぇ、行きましょう」

347: 2020/07/03(金) 13:53:45.32 ID:Edb6uLkM
ザプッ…ザパァ

曜「!!」

曜「足がつく…」

絵里「……そりゃあそうね、だってここで」

曜「え……?あっ……」

絵里「トンネルは陥落してる」

ルビィ「あっ……あぁ……花丸ちゃん、お姉ちゃん……みんな……」

曜「行き止まりって…どうするんですか、絵里さん…」

絵里「…………」

曜「……そんな」

絵里「……5分後に戻ってくる」

曜「え?」

絵里「下の避難用通路は無事かもしれない、懐中電灯で下を照らしてて」

ルビィ「それって…」

絵里「陥落箇所がここだけなら、下の避難路をくぐり抜けて向こうの道路に出られるかもしれない」

絵里「大口叩いた以上、あなた達は死なせないから…」

バシャン!!!

曜「!!絵里さん…!!」

348: 2020/07/03(金) 14:01:14.80 ID:Edb6uLkM
ルビィ「……うっ」ブルッ

曜「ルビィちゃん…大丈夫?」

ルビィ「う、うん…」

曜「身体が冷え切ってる……絵里さんの言う通りだ、休憩する時間なんてなかった……」

ルビィ「うん……だね……」

曜「私、絵里さんのこと、少し薄情だなって思ってたけど……考え違いだったのかも」

ルビィ「ルビィは最初からやっぱり優しい人だなって思ってたよ」

曜「え、そ、そうなの?ルビィちゃん、結構キツイ事言われてたから……てっきり、ショック受けてると思ってたよ」

ルビィ「確かにグサってくることもあるけど、それはルビィの事を本当に思ってくれてるから言ってるんだって思うの」

ルビィ「それにさっき、ルビィが降りられない時も優しく受け止めてくれたし……泳ぐことだって、絵里さんに後押しされなきゃ……ルビィ、残ってたかもしれない……」

曜「……そっか」

曜「理解してるつもりで、本当はなにも理解してないや、私……やっぱり……」

曜「バカ曜だ…」

349: 2020/07/03(金) 14:03:28.96 ID:Edb6uLkM
ルビィ「それにしても絵里さん…遅くないかな…」

曜「そうだね、ちょーっと遅いかもね…」

曜「(もう10分以上は潜ってる、普通に考えてこんなに長くは……)」

曜「……私ちょっと行ってくるよ」

ルビィ「あっ、ルビィも!!」

曜「うぇ!?だ、大丈夫?」

ルビィ「うん、少しでも絵里さんの役に立ちたいもん!」

曜「……わかった、行こう」

曜「ビニール袋に空気を入れて…と」

曜「ルビィちゃんは懐中電灯で前を照らしてて、私の手…離しちゃダメだからね?」

ルビィ「わ、わかった!」

350: 2020/07/03(金) 14:06:24.49 ID:Edb6uLkM
曜「スゥー…ハァー」

曜「よし!行くよ!ルビィちゃん!」

ルビィ「うん!」

ザパンッ!

ブクブクブグク…

曜「(ここを絵里さんは通ったんだ…)」

曜「(……やっぱり、μ'sのメンバーは大きく見えるや……千歌ちゃんが尊敬するのも頷ける)」

曜「(千歌ちゃんに会いたい…みんなに会いたい…)」

曜「(もう少しで…)」

グイッ

曜「!?」

曜「(や、ヤバイよ!何か引っかかった!)」

曜「……~~!!!」ゴボゴボゴボ…

ルビィ「(曜ちゃん!?)」

曜「(や、ヤバい……ルビィちゃんももう息が続かないはずだ……)」

曜「(先に行って!)」ブンブンッ

ルビィ「(え、先に行けってこと!?)」

ゴポゴポ

曜「(い、いいから!!!)」

ルビィ「(曜ちゃん…)」コクッ

351: 2020/07/03(金) 14:13:20.49 ID:Edb6uLkM
曜「(ダメだ…!!やっぱ…取れない!!)」

曜「ゴポォ…!!!」

曜「(もう…息が…)」

曜「カハッ……!!」

曜「(みんな……ごめん……)」

ゴポゴポゴポゴポ……







ザパッ!!!!

曜「プハッ!!」

曜「ゲホッ…ゲホッ…!ガハッ…!!」

絵里「……っ、待ってなさいって言ったでしょ!!」

曜「え、絵里さん……ごめんなさい」

絵里「……死なせないとも言ったでしょ?ルビィが私を呼んだのよ」

絵里「感謝しときなさい」

曜「ルビィちゃん…」

ルビィ「ごめんね曜ちゃん!ルビィに気を配ってたせいで…」

曜「いやぁ…私の不注意だよ…ごめん」

曜「絵里さん……本当にありがとうございます」

絵里「…もういいわよ、それよりあれを見てみなさい」

曜&ルビィ「え?……あっ!!」

絵里「光よ」

352: 2020/07/03(金) 14:16:40.90 ID:Edb6uLkM
曜「瓦礫ばっかりだ…」

絵里「たて穴ね…相当破壊されてるけど、多分トンネル内に空気を送る施設だったんでしょうね」

ルビィ「でも、外だ…!」

曜「私たち…!」

ルビィ「やっと自由に…!」

曜「なれるんだー!!」

ウオオオオォーーー!!!

絵里「」グイッ

曜&ルビィ「うわっ……!」

ドスンッ!!

曜&ルビィ「ぐえっ……!」

曜「え、絵里さん…?な、何を…あイテテ…」

絵里「今、地上に出るのは危ないわ。上を見てみなさい、私は久方ぶりに外に出るから光を直視出来ないの」

ルビィ「上…?」

曜「あっ」

ババババババババババ!!!!

絵里「……どう、ヘリが飛んでない?」

曜「は、はい……飛んでます……それも無数に……」

353: 2020/07/03(金) 14:21:57.93 ID:Edb6uLkM
絵里「しばらくはここに身を隠しておいた方がいいわね」

ルビィ「全部、る、ルビィ達を捜して…?」ヒヤッ

ルビィ「ルビィ達、そんなに悪い事したって思われてるの…?」

曜「イヤ…違うよルビィちゃん、このヘリは多分私たちを捜してるんじゃなくて…」

曜「……」チラッ

絵里「………」

絵里「その通りよ、このヘリが捜してるのはあなた達じゃない……私」

曜「絵里さん……μ'sの件は私たちもある程度知ってます、あれは全部真っ赤な嘘なんですよね?」

絵里「………」

曜「え、絵里さん…?」

ルビィ「μ'sは…絵里さんはいったい何をしたんですか…?」

絵里「………」

絵里「さぁ、本当に…」

絵里「……何をしたっていうんでしょうね」

356: 2020/07/04(土) 00:41:28.56 ID:VfFuUysO
・・・2019年の12月31日。あなた達がまだ学生だった頃、私たちは・・・世紀の大悪党に仕立て上げられようとしていた。

ザッ

穂乃果「行こうか・・・人類を・・・世界を救うために」

あの子はそう言って他のメンバーを鼓舞したわ。

空には何機ものヘリが、地上には何両もの戦車が、なす術もなく右往左往していた。

道路には無数の死体が転がり、中にはそれを見て嘔吐するメンバーもいた。

希「ロンドンにパリにニューヨークに北京、どこもウィルスで大パニックやって……」

真姫「世界中の反政府組織が手を組んだ同時多発テロで……」

海未「その元凶であり、すべての黒幕が……」

穂乃果「……私たち、μ'sって事かぁ」

穂乃果はどこか呆れにも似た表情を浮かべたあと、軽く笑ってみせた。

そしてその後、穂乃果は車に乗り込み、ロボットの元へと向かったわ。

357: 2020/07/04(土) 00:43:41.02 ID:VfFuUysO
海未「穂乃果、大丈夫でしょうか…」

絵里「穂乃果は何も考えずに動くから…不安はあるわね」

真姫「え?何言ってるの、そんなのエリーもよ」

絵里「フッ…私も?」

真姫「いつも誰かさんの思いつきで苦労させられるのは、この私なんだから」

凛「真姫ちゃんも自分一人でやろうとする所があるから…今回、無茶しそうで怖いにゃ」

真姫「い、今…私の事はいいでしょ!」

ことり「……クスッ、みんな変わってないね……よし!じゃあ絶対にこの後みんなで会おうね!」

「おーう!!!」

海未「では、行きましょうか」

358: 2020/07/04(土) 00:46:50.17 ID:VfFuUysO
絵里「………」

海未「……?」

海未「絵里…?みんな行ってしまいましたよ?私たちも…」

絵里「……えぇ」

海未「……絵里らしくないですね、怖気付いたんですか?」

絵里「……えぇ、怖いわ」

絵里「ことりがああ言った手前黙ってはいたけど…」

絵里「この戦い、誰かは絶対に死ぬ……それが怖い」

日々訓練を受けている自衛隊でも歯が立たないのに、ただの一般人のみんなが、この死地を乗り越えられるわけないと……私は思っていた。

海未「……それは、わからないじゃないですか」

海未も分かってはいたんでしょうけど、それを認めようとはしなかった。

絵里「それが私か、穂乃果か、にこか、凛か、誰かなんてのはわからない、もしかしたら全滅だってありえるもの…」

海未「………」

絵里「でも海未…あなただけは死んじゃダメ、深追いはしない事…あなたは秋穂ちゃんを…秋穂を守りなさい」

海未「!」

359: 2020/07/04(土) 00:54:43.79 ID:VfFuUysO
絵里「私たちに何かあったとしても、次代に繋ぐために……秋穂を……私たちの希望を守るのよ」

絵里「いいわね?」

海未「……何が希望ですか……負ける事を前提にして話を進めないでください!!」

絵里「……海未、穂乃果から直々に言われたんでしょ?何かあったらあなたに預けたいって」

海未「それは……そうですが……」

海未「……絶対に死んではいけないのは私ではなく……穂乃果のはずです」

絵里「そうね、でも私たちが何か言って穂乃果が止まると思う?」

海未「……っ」

絵里「せめて私たちだけは落ち着いて行動しないとダメ」

絵里「………」

絵里「まぁいいわ、何にせよ……もしものことがあった場合はあなたが秋穂の面倒をみる事になる」

海未「………」

それが海未との最後の対話だった。
その後、凛とテレビ局に乗り込んだりもして、なんとかロボットを止めて穂乃果の危険を排除したかった・・・でも。
・・・止められなかった。





ルビィ「そんな、それってつまり……」

絵里「……さっきも言ったでしょ?私はあの子の仇を取らないといけないって」

曜「じゃあ……穂乃果さんは」

絵里「えぇ……あの子は……穂乃果は……」

絵里「………死んだ」

360: 2020/07/04(土) 01:04:20.83 ID:VfFuUysO




看守長「沿岸部150名、周辺海域40隻!魚1匹逃しはしない布陣を敷いておりますが未だに脱走者3名は発見出来ていません!」

所長「そうか…」

所長「…このまま見つけられないなら君は“退部”だな」

看守長「え…!?」

所長「被験体のガキ2人はともかく、9番に逃げられれば“あいどる”もきっとお冠だ」

看守長「」ゾッ

所長「……看守長、9番を取り逃がす……この事の重大さが理解できないわけではあるまい?」

看守長「は、はい…」

所長「だよな……発見に至りませんなんて答えは聞きたくない」

所長「未だかつて、海上から脱走して生存したヤツなどいない、早く……早くあの9番の死体をここに……!」

「それはダメだね」

所長「っ!!」

看守長「!?」

所長「……あ、“あいどる”」

“あいどる”「どうも所長さん、久しぶりですね」

361: 2020/07/04(土) 01:07:04.28 ID:VfFuUysO
“あいどる”「絵里ちゃんにはまだまだ沢山のエンターテイメントを提供してもらいたい」

所長「よ、よろしいのですか?」

“あいどる”「当然だよ。人を笑顔にするのがアイドルの仕事だからね」

“あいどる”「看守長、指揮系統は無視してもいい。船と捜索している人たちを撤退させて」

看守長「は、はい…!」ダッ

“あいどる”「……ふふ、流石絵里ちゃんだなぁ」

“あいどる”「では私はこれで」

所長「は、はい…!こんな所にまで足を運んでいただき、ありがとうございました!」

“あいどる”「うーうん、いいんだよ……あっ、いけない忘れるどころだった……所長」

所長「……?はい、何でしょう?」

“あいどる”「君は“退部”だから」

所長「え?」

ブチュッ

所長「ゴプッ…」

“あいどる”「」ピチャッ

所長「」バタッ

“あいどる”「あはは」

362: 2020/07/04(土) 01:08:55.21 ID:VfFuUysO
絵里「……話はこれまでよ」

曜「え、まだ全部は……」

絵里「続きなら後でしてあげるわ。見て、どういうわけか船やヘリが退散してる」

曜「あっ、ほんとだ…」

絵里「陽も落ちてきた今がチャンスだわ、陸を目指すのよ」

曜「わかりました…ルビィちゃん、もうひと頑張りだよ!」

ルビィ「うん、頑張る!」

絵里「私が先陣を切るわ」スッ

絵里「あまり音を立てないようにね」

ザパンッッッ…

曜「私たちも」

ルビィ「うん、行こう」

ザパンッッッ…

363: 2020/07/04(土) 01:13:36.63 ID:VfFuUysO
ジャプ…ジャプ…

曜「お~!ルビィちゃん、かなり泳ぎ上達したね……!!」

ルビィ「うん、高校生の時は泳げなくてもいいやと思ってたけど……今になって、なんかコツを掴んだみたいで……!」

絵里「はぁ……あなた達、少しは緊張感を持ちなさい」

ルビィ「あっ…ご、ごめんなさい…」

絵里「身体も疲弊してるし、これが罠の可能性もある、油断なんてでき……」

曜「……?絵里さん……?」

絵里「誰が……誰がこんなふざけたマネを……」

曜「え?」

絵里「勝手に日本の海域だと思ってたけど……あの街並み……ここは……」

絵里「ニューヨークだったのね……なのに……なんで」

絵里「なんで……アキバドームがあるのよ!」

曜&ルビィ「あっ……」

ルビィ「ん…?しかもあのアキバドーム…μ'sのロゴが刻印されてる…?」

曜「今、μ'sの名前を冒用するのなんて……一人しかいないんじゃ」

絵里「……何を考えてるの」

絵里「“あいどる”……!」

364: 2020/07/04(土) 01:15:31.60 ID:VfFuUysO




鞠莉「警官が人を〇した?」

千歌「うん、私の友達の友達が見たみたいで…」

鞠莉「そう……何か嫌な予感がする……。わかった、果南には私から警戒する様に言っておくわ……千歌ッチはムロタさんとコンタクトを」

千歌「……へ?」

鞠莉「へ?じゃないよ!だからムロタさんと」

千歌「えっと……ムロタさんって……誰だっけ……?」

鞠莉「………オーマイゴッート!私とした事が内通者の存在を言いそびれていましたぁ」

千歌「えぇ…!内通者なんていたの!?」」

鞠莉「私のパパと顔見知りでね、千歌ッチが警察に潜入出来てるのも彼のおかげと言っても過言じゃないよ」

千歌「ふぇ~…」

鞠莉「とにかく千歌ッチはムロタさんに相談よろしくね!」

365: 2020/07/04(土) 01:17:55.71 ID:VfFuUysO
-署内-

千歌「あの、すみません…ムロタって人は刑事課にいるんですか??」

受付「ムロタ?ムロタなんて人いたかしら……」

受付「あなた刑事課所属でしょ?見たことないの?」

千歌「す、すみません…ないです」

刑事2「ムロタさんなら、犬のとこにいるんじゃないか」

受付「あら、お疲れ様です」

千歌「先輩、お疲れ様です…犬って…?」

受付「警察犬の事よ、鑑識の人なんですか?」

刑事2「いいや刑事課の人間だよ?あの人はただ戯れたいだけ」

千歌「いいなぁ、私も警察犬と遊んでみたいです!」

刑事2「やめとけ、警察犬は利巧が故に知らない奴にはうんともすんとも言わないからな」

千歌「でも、ムロタさんも刑事課の人なんですよね?なのに犬に懐かれるんですか?」

刑事2「まっ、あの人は仕事せずにいつも犬と遊んでるし……下手すりゃ鑑識の人間より犬と触れ合ってるからな」

千歌「……(どんな人なんだろう?)」

366: 2020/07/04(土) 01:21:07.29 ID:VfFuUysO
コンコンッ、ガチャ

千歌「失礼しまーす…」

ムロタ「この寝顔……可愛すぎる」

千歌「あ、あのムロタさんですか?」

ムロタ「癒される……」

千歌「あ、あの!」

ムロタ「!……あぁ、なんだ千歌か」

千歌「あっ……しっ、知ってるんですか?」

ムロタ「当然。話はマリーから聞いてるよ……一応、今までも陰ながらサポートはしてきたつもりだよ」

千歌「そ、そうなんですか……あの、今日は折り入って相談が」

ムロタ「相談?何かな?」

千歌「その、えっとぉ……(あれ?なんて言えばいいんだろう)」

ムロタ「…わかってる。知り合いの子が警官が民間人を〇すところを見たから、情報提供をして欲しいんだよね」

千歌「え、あっ……そ、そうです!って、なんでそれを……?」

ムロタ「ふふ、その程度の事ぐらいとっくに調べがついてるよ」

千歌「す、すごい…」

ムロタ「……ただ、対価として君を描かせてもらう」

千歌「へ、描く?」

ムロタ「君はすごく絵になるから…!」

千歌「へ、へ?」

ムロタ「よし、座りたまえ」

367: 2020/07/04(土) 01:23:44.19 ID:VfFuUysO
サラサラサラ…

千歌「(うーん……なんかこういうのって、少し恥ずかしい気がぁ)」

ムロタ「………」サラサラ

ムロタ「よし出来た」

千歌「え、もうですか!?早い!!」

ムロタ「ん」ピラッ

千歌「?これは?」

ムロタ「この地区のマップ。それに赤丸で囲ってるところがあるよね?」

千歌「はい」

ムロタ「そこは人通りが少ない上にコンテナやらなんやらが沢山あるのでいざとなれば身を隠すことができる」

千歌「へぇ~…なるほどぉ、ここまで調べがついてるなんて…」

千歌「ありがとうございます!」

ムロタ「一つ忠告、もし、君の知り合いの友人の子がその〇害現場を目撃しているのが向こうにバレているなら…千歌、君はもっと慎重に動くべきだよ」

・・・シーン

ムロタ「って、いないし…」

ムロタ「善は急げか…大丈夫だと思いたいけどね」

368: 2020/07/04(土) 01:25:31.68 ID:VfFuUysO
千歌「はいこれ!」

スッ

秋穂「……これは?」

千歌「私の知り合いのすっごく優秀な人が作ってくれた安全なところリスト!」

秋穂「……ありがと、助かるよ」

千歌「困った時はお互い様だから!」

秋穂「……今もある場所に彼女を匿ってるんだけど……良かったら会う?」

千歌「え、いいの?」

秋穂「うん、でも移動する時は護衛お願いね?」

千歌「よーし!!任しといて!!」

369: 2020/07/04(土) 01:27:57.57 ID:VfFuUysO
~とある倉庫~

オカマ「あっ秋穂ちゃーん!」

秋穂「私がいない間、何もなかった?なんか変な事起きてない?」

オカマ「もうぜーんぜん……って、そっちの子は?」

千歌「あっ、私、高海千歌っていいます!あなたを守りに来ました!」

オカマ「あらやだ~、頼もしい子~、でも守ってほしいのは私じゃなくてあの子なのよ~」

千歌「あの子?」

オカマ「ブリトニーちゃん!出てらっしゃい、大丈夫だから」

ブリトニー「」ヒョイ

ブリトニー「ママ~!」

千歌「ママ?」

オカマ「あーこの子ね、未成年なのにウチのパブで働いてて引っかかちゃったのよ、新青少年保護条例に」

千歌「新青少年保護条例?」

秋穂「仮にも刑事でしょ?知っときなよ…」

千歌「うぐっ…ご、ごめん」

370: 2020/07/04(土) 01:31:14.27 ID:VfFuUysO
秋穂「これ、この人が用意してくれたの」スッ

オカマ「なにこれ?」

千歌「この区域の安全な場所をリストアップしたものです、しばらくここに隠れた方がいいかと!」

オカマ「あ~ら嬉しい!んー、でもね…」

ブリトニー「うん、ね?」

秋穂「……?なに?」

オカマ「お金溜まったから故郷に帰れる事になったのよ、ブリトニーちゃん」

秋穂「え!?な、なんで……!?お金がネックだって……」

オカマ「警察にありのまま話したら貸してくれたの」

秋穂「へ、警察……?なんで警察なんかに!?何から逃げてるのか分かってんの!?」

オカマ「警察に行ったのは私だし、戸籍もデタラメに名前も偽名、大丈夫よきっと」

ブリトニー「明日、日本を発つの!」

秋穂「信じらんない…。何でよりにもよって、警察なんかに…」

オカマ「あらやだ何言ってんのよ。秋穂ちゃんも警察の人と一緒じゃない」

秋穂「この人は!!……違うから……」

オカマ「何よ~それ~」

秋穂「…ッ!もういいもん!!」ダッ

千歌「あ、秋穂ちゃんッ!」

オカマ「ちょっと心配性すぎるのよね、あの子」

千歌「………」

371: 2020/07/04(土) 01:37:16.86 ID:VfFuUysO
-翌日- 放課後 ~学校~

秋穂「………」ボー

秋穂「……帰ろ」

ピンポンパンポーン

『高坂秋穂さん、至急理事長室までお越しください』プツッ

秋穂「………」





秋穂「まさかついに退学?これってやばいんじゃ…」

秋穂「もしそうなら…海未おばちゃんから…雷が落ちる?」

秋穂「」ゾッ

秋穂「はあ…」トボトボ

秋穂「ここだ…」

コンコン

「どうぞ~」

ガチャリ

秋穂「失礼します……」

秋穂「……何かご用ですか?」

鞠莉「ふーむ…この子が高坂秋穂…。あの高坂穂乃果の姪っ子ね」

千歌「うん、正真正銘…穂乃果さんの姪ちゃんだよ」

果南「(……全然知らなかった)」

秋穂「……松浦さんに刑事に……理事長」

秋穂「何の集まりですか?これ…」

鞠莉「うーんと、この集まりはね……何の集まりだろう?」

秋穂「……帰ります」

鞠莉「え、ちょっと!ストップ!!ストーップよ!!


秋穂「っ…何なんですかいったい?」

鞠莉「はぁ…千歌ッチ、説明してあげて」

372: 2020/07/04(土) 01:41:34.75 ID:VfFuUysO




千歌「っていうわけなの」

秋穂「じゃあこの人たちがこの前あなたが言ってた残った友達?」

千歌「そう!スクールアイドルやってる時からの仲間だよ!」

秋穂「そうなんだ…。ん…?じゃあ松浦さんって…」

果南「」ギクッ

鞠莉「そっ。果南はとっくにアラサー♪所謂、お・ば・さ・ん♡」

鞠莉「おばさんなのに制服着て果南ったら、んもう~///」

果南「なっ!鞠莉がやれって…!」

秋穂「…なんでこの高校にいるの?」

鞠莉「ここは“あいどる”に近づける何かがあるの」

秋穂「……漠然としすぎじゃない?」

秋穂「そもそも、私があなた達と協力するメリットがない」

鞠莉「ふふっ、あなた…“あいどる”側からマークされつつあるんでしょ?」

秋穂「……たぶん」

鞠莉「使える駒は多い方がいい、それは私たちも同じ事」

鞠莉「昨日の敵は今日の友……なら逆もまた然りでしょ?昨日の友は今日の敵……」

秋穂「………」

秋穂「………わかったよ」

鞠莉「OK!じゃあ交渉成立って事ね!」

373: 2020/07/04(土) 01:45:06.34 ID:VfFuUysO
秋穂「ただひとつ条件」

鞠莉「……?なーに?」

秋穂「あなた達の職業柄、ただの高校生の私が接触してるのは…側から見てておかしい。だから松浦さんを貸して欲しいの」

秋穂「すぐにコンタクトが取れるように」

鞠莉「なーんだ!そんな事、どうぞどうぞご自由に!」

鞠莉「果南もいいよね?」

果南「え、まぁ…いいけど」

秋穂「ありがとう、じゃあ今日は帰るから」

秋穂「さよなら」ペコリ

鞠莉「チャオッ!」

バタンッ

鞠莉「……ふー」

千歌「どうだった?」

鞠莉「気難しそうな子かなぁ?それに割とナイーブそうだね」

千歌「……寂しいのかな」

鞠莉「どうだろうねぇ…私たちで穴埋め出来るような存在じゃないのは間違い無いね、あの人は」

鞠莉「それは千歌ッチが一番分かるでしょ?」

千歌「分かるけど…」

374: 2020/07/04(土) 01:47:57.34 ID:VfFuUysO
果南「ねぇ鞠莉、私、どれくらい彼女と一緒にいなきゃいけないのかな?」

鞠莉「んー、べったり…かな?」

果南「え…」

千歌「ってことは今からだね!」

鞠莉「ザッツライト!さっ、果南、行っておいで!」

果南「……やっぱり、一番損な役回りだ」

375: 2020/07/04(土) 01:49:41.33 ID:VfFuUysO
スタスタ

果南「…どこ行くの?」

秋穂「友達のところ、今日母国に帰るらしいから一応見送り…一応だよ」

果南「ふーん…」

果南「…こんな人気のない場所にいるの?」

秋穂「まだ日本から発ってなければ…」

・・・パーーーン!!

秋穂「!?」

果南「なに今の音…?」

秋穂「銃声……っ!」ダッ

果南「あっ、ちょっと!」ダッ

376: 2020/07/04(土) 01:52:12.24 ID:VfFuUysO
タッタッタッタッ、ザッ

秋穂「ッ!どうした……の……」

果南「…?なに?」

果南「…!!」

ブリトニー「」

オカマ「うっうっうぅ……」

秋穂「なに…なんで…?」

オカマ「あ、秋穂ちゃん…」

オカマ「い、今…ここから出ようとして…ブリトニーちゃんが立った瞬間…うっ…うぃ…」

秋穂「…瞬間、なに?」

オカマ「私が相談した警察官がやって来て…ブリトニーちゃんを銃で…〇したの…!!」

果南「……っ」

秋穂「その人の顔は…見たの?」

オカマ「携帯で写真撮ったわ……」ゴソゴソ

オカマ「これよ…!!」

秋穂「ん…」スッ

秋穂「!!!この人…」

果南「どうしたの?」

秋穂「……松浦さん、理事長達…まだいるかな」

果南「え、そりゃあね」

秋穂「戻ろう」ダッ

果南「えっ!?ちょ、ちょっと!!」

オカマ「あ、秋穂ちゃん!」

377: 2020/07/04(土) 01:56:25.47 ID:VfFuUysO
バンッ!!

千歌&鞠莉「んん??」

秋穂「はぁはぁ…はぁ…」

鞠莉「どうかした?秋穂ッチ」

秋穂「……今、ブリトニーが死んだ」

千歌「えっ…」

秋穂「警察官に〇されたの」

鞠莉「……その警察官のお顔は見たのかしら?」

秋穂「写真がある…これ…」

千歌「……!この人は」

秋穂「この人…あなたの上司だよね?珍さんのお店に来た時、私から穂乃果おばちゃんの帽子を取り上げた人だからハッキリと覚えてる」

千歌「そうだけど…先輩が…なんで…」

秋穂「二人が言ってた人を〇した警察官ってのも多分この人だと思う」

千歌「……」

鞠莉「……それで秋穂ッチ、それが私たちに関係あるのかしら?」

鞠莉「私たちが情報を漏らしたとでも?」

秋穂「……そうじゃない、そうじゃないけど手を組んだ以上は情報共有するべきでしょ?」

鞠莉「……なるほど。まったく、その通りだね…。そうですね、では私からも一つ情報を渡します」

378: 2020/07/04(土) 01:59:09.95 ID:VfFuUysO
果南「はっ…はっ…完全に歳だ…やっと着いた…」

鞠莉「この高校に“あいどるランド”への招待状が届いたの、それも秋穂ッチをわざわざご指名でね」

秋穂「“あいどるランド”?」

千歌「“あいどる”が作ったテーマパークだよ」

鞠莉「そう、表向きはね」

秋穂「表向き…どういうこと?」

鞠莉「裏ではあんな事やこんな事をやってるって口」

秋穂「……そんな所に馬鹿正直に行く必要が?」

鞠莉「当然、無理にとは言わない。だけど、ここには何か重要な事実が隠されてるはずなの、行ってくれると助かっちゃうんだけど」

鞠莉「果南もつけるから」

果南「えっ!?」

秋穂「……考えとくよ」

379: 2020/07/04(土) 02:01:31.21 ID:VfFuUysO
~三森荘~

ガチャ、バタン

秋穂「……はぁ」ドサッ

秋穂「……人が死んだのに、混乱もしない……私、おかしいのかな……」

秋穂「……“あいどるランド”」

スッ

秋穂「ネットの評価は…」

【“あいどる”の魅力を余す事なく教えてくれる世界一のテーマパークだ】

【バーチャル映像でのわかりやすい説明で、血の大晦日、ホノカ一派の残虐さがひしひし伝わってきた】

秋穂「……こんなんばっか、何も知らないくせに」

シャッシャッ

秋穂「……ん?」

秋穂「これって…」

【ゴミ清掃員?がすげぇデカイおにぎり食ってたのは笑った】

秋穂「……いや……まさか……ね」

秋穂「こんな所に行くなんて言ったら……海未おばちゃんは絶対に反対するよね……」

海未「私がどうかしましたか?」

秋穂「え……う、うわぁ……!!!??」

海未「な、なんですか…その化け物でも見るような反応は…」

380: 2020/07/04(土) 02:04:30.85 ID:VfFuUysO
秋穂「う、海未おばちゃん…。は、入るならノックしてよぉ…!」

海未「しましたよ…返事が無かった上にカギが空いているから何かあったのかと思い心配して…」

秋穂「し、したんだ…そっか」

海未「何かしていたんですか?」

秋穂「い、いや別に!」

秋穂「そ、それより海未おばちゃんは何の用?」

海未「あっ…晩ごはんを作りにきたんです。今日はアルバイトもないと聞いていたので」

秋穂「う、うん…ないよ」

海未「ではキッチンを借りますね」

秋穂「は、はーい…」

スタスタスタ…

秋穂「……やっぱ、言えないよ」ボソッ

381: 2020/07/04(土) 02:07:45.99 ID:VfFuUysO




ムロタ「そうか…死んでしまったんだね…」

鞠莉「ええ…秋穂ッチの勧めを受け無かったみたい」

千歌「ごめんなさい…私がもっと強く勧めとけば…」

ムロタ「本人たちが選んだ道だ、僕たちが後悔してもどうしようもない」

ムロタ「……話は変わるが穂乃果の姪に話はつけたかい?」

鞠莉「一応、話はしました。ただ悩んでるみたい」

ムロタ「身内に心配はかけたくない……その辺りの事で悩んでいるのかも」

千歌「……秋穂ちゃんが嫌って言うなら私が」

鞠莉「ダメだよ、千歌ッチは顔が割れてる。行くなら秋穂ッチ…もし千歌ッチが行くとしても、やっぱり秋穂ッチも同伴しないと」

ムロタ「“あいどる”の娘、このアドバンテージを活かさないわけはないからね」

ムロタ「それにあそこには…」

鞠莉「……?あそこにはなぁに?」

ムロタ「いや、なんでもない…まぁ最終的に彼女なら行く決断をしてくれるだろう…。もしダメだったなら、また僕に相談してくれ」

382: 2020/07/04(土) 02:11:07.71 ID:VfFuUysO
-翌日- ~学校~

秋穂「………」ボー

「おーい、高坂」

秋穂「…?」

教師「何を黄昏てんだ、教室閉めるから出ろ」

秋穂「……はい」ゴソッ

ガララ、ガチャン

秋穂「………」

教師「なぁ高坂、いったいいつになったら血の大晦日のレポート出す気だ?」

秋穂「………“あいどる”を誉めそやす文なんて書きたくないもん」

教師「まぁ…お前ならそう言うと思ったわ」

教師「だからもうレポートは書かなくていい、代わりに“あいどるランド”に研修行ってこい」

秋穂「……研修って何のためにですか?」

先生「いやなに…校外学習みたいなもんだ、これ行かないと進級出来ないと思っとけよ、ただでさえお前は単位ヤバいんだから」

先生「じゃあなっ!」

秋穂「……ちぇ、足元見て……私、そんなに休んでないよ」

秋穂「進級しないと海未おばちゃん怒るかな…?」

秋穂「…うん、怒るだろうな」

秋穂「くそぅ…」

383: 2020/07/04(土) 02:14:17.99 ID:VfFuUysO
コンコン

鞠莉「どうぞぉ~」

ガチャ

秋穂「理事長」

鞠莉「あら秋穂ッチ、どうするか決めたの?」

秋穂「決めたよ…。行く、確かめたい事もあるし」

秋穂「というか理事長…なんか根回しした?」

鞠莉「No!私はダーティーな事は好きじゃないの」

鞠莉「……でも良かった、果南にも連絡しとくね」

秋穂「……あのさ、一つお願いしたい事が」

鞠莉「んー?」

秋穂「私が行く事は内密にお願い、あんまり心配とかかけたくないからさ…」

鞠莉「……園田海未の事ですね?」

秋穂「」ギクッ

秋穂「まぁ…それはそうとして、出発とかはいつするの?」

鞠莉「一週間後の早朝にバスが出ます、団体ツアーですよ」

鞠莉「詳細は日を追って説明するから、今日は帰って結構よ」

秋穂「……わかった」

384: 2020/07/04(土) 02:16:18.90 ID:VfFuUysO
秋穂「」スタスタ

秋穂「……ん?」

千歌「あっ」

千歌「…やっ、今日はどうしたの?」

秋穂「“あいどるランド”…行くことを伝えに」

千歌「そ、そっか……気をつけてね」

秋穂「……うん」

千歌「……先輩、今日は署に来てなかったよ」

秋穂「……そうなんだ」

千歌「ごめんね…」

秋穂「何で謝るの?あなたが謝る必要なんて…ないよ…」

千歌「………」

秋穂「私、行くね…」

千歌「あっ…うん…」

秋穂「………」 スタスタ

秋穂「私が全部終わらせなきゃ……穂乃果おばちゃんの為にも……」

385: 2020/07/04(土) 02:18:55.51 ID:VfFuUysO
-1週間後-

トントン

秋穂「…よし、じゃあ行こっか」

大家「こんな朝早くからどこに行くんだい」

秋穂「あっ大家さん!おはようございます!えーと……ちょっとテーマパークに……」

大家「そうかい……ほら、掃除の邪魔だから退くんだよ」サッサッ

秋穂「あっと…すいません、それじゃ!」

秋穂「…………」

スタスタ……タッ…ダダダダ!

秋穂「やってみせる、私が…」


秋穂「私やる…やるったらやる!!」

第4章「最後の希望」-完-


タイトルとURLをコピーしました