穂乃果(24)「ありがとうございました、またのお越しを~!」【長編SS】

AqoursーSS


524: 2020/07/07(火) 21:04:36.52 ID:UT7itLJ8
第6章「終わりの始まり」

~沼津~

秋穂「スー……」

秋穂「……ハー」

秋穂「ここにお母さんがいたんだ…」

秋穂「よし!早速、聞き込み開始だ!」

秋穂「あの、すいません!」

「なんだい?」

秋穂「えっと…この写真の女性を見たことありませんか?」

「いやぁ、知らないねぇ」

秋穂「そうですか…すいません、ありがとうございます」

秋穂「……あの!」

「なにかね?」

秋穂「この写真の女性を見たことありませんか?」

「いやぁ、ないねぇ」

秋穂「そうですか…」

秋穂「あの、すいません!ちょっとお聞きしても…」

526: 2020/07/07(火) 21:10:56.50 ID:UT7itLJ8




-5時間後-

秋穂「だーーーっっれも!知らないじゃん…」

秋穂「……お母さん、本当にここにいたのかな?」

秋穂「あと聞いてないのは…あそこの旅館くらいかな」

秋穂「……十千万」

ガララッ

秋穂「あの、ごめんください!」

タタタッ

志満「あら?どうなさいました?」

秋穂「すみませんお忙しい中…」

志満「いえいえ、お気になさらずに」

秋穂「あの、私…人を探してて…いろんな人に聞き込みさせてもらってるんです」

秋穂「この写真なんですけど」

志満「どれどれ?」スッ

志満「あら、すごく可愛い子ねぇ…」

秋穂「昔の写真なんですけど…何かご存知ないですか?」

527: 2020/07/07(火) 21:21:10.42 ID:UT7itLJ8
志満「うーん…ごめんなさい…ちょっとわからないわ…」

秋穂「そうですか…」

美渡「その子、数年前まで沼津にいたよね」

秋穂「え…」

志満「美渡…知ってるの?」

美渡「志満ねぇ、覚えてないの?ほら、あったじゃん数年前に町内会が急に言いだした謎の催し」

志満「あぁ…ダンスパーティー…そういえばそんなことあったわね…」

美渡「私たちも乗り気じゃなかったのに無理矢理オシャレさせられて行かされたじゃん」

美渡「その子、その時に見たよ」

秋穂「お母……その人は今も沼津に?」

美渡「いーや?数年前に出て行っちゃったよ」

秋穂「そう……ですか……」

秋穂「……お母さん」ポツリ…

志満「お母さん?」

528: 2020/07/07(火) 21:23:49.09 ID:UT7itLJ8
志満「………」チラッ

美渡「………」チラッ

志満「………」コクッ

美渡「………」コクッ

美渡「確かその時のパーティー、参加者全員、ビデオメッセージみたいなの撮ったよね」

秋穂「……!」

志満「そんなこともしたわね~」

秋穂「……あの、それって」

美渡「いいよ!私が町内会長に掛け合っといてあげるから」

秋穂「あっ…」

志満「……お母さんの事、何かわかるといいわね」

秋穂「あ、ありがとうございます…!」ペコリッ

529: 2020/07/07(火) 21:26:15.25 ID:UT7itLJ8
町内会長「何年前じゃったかなぁ…」

町内会長「町内会の人間が何に感化されたんか、突拍子もなくダンスパーティーやりたい言うてなぁ…」

秋穂「はぁ…」

町内会長「ただ、唐突すぎて人の集まりが悪うての」

町内会長「旅館の看板娘二人になんとか来てもらって華は出たもんの、いかんせん、こじんまりしてもうてな」

町内会長「そんな時、街でたまたま歩いてる女の子を見つけてな、可愛いと思うたから、それに強引に誘ったんじゃ」

町内会長「最初は乗り気じゃなかったみたいじゃが、ワシの押しに負けての。あははは!!」

秋穂「………」

町内会長「………本題に入るか」

町内会長「言ってたもんはこれじゃな」

秋穂「そうです…そのビデオ…」

町内会長「当時、集まった人間に沼津への思いを語って貰おうと思ったんじゃが…その子だけな…」

秋穂「…?」

町内会長「まぁ、再生してみぃ」

秋穂「は、はい…」

530: 2020/07/07(火) 21:28:49.79 ID:UT7itLJ8
ポチッ…

雪穂『………私が、こんなところに来ていいのか』

秋穂「……お母さんだ」

雪穂『姉は私のせいで死んだ』

秋穂「……え?」

雪穂『……娘には悲しい想いをさせた』

雪穂『私のワガママで日本を…世界を…地球を…混乱させてしまった』

雪穂『“あいどる”が支持される現状を作ったのは私……私が……』

雪穂『……虫のいい話と思われても仕方ない……私がそんな事を言う資格、ないのかもしれない……」

雪穂『でももし、このメッセージの意味がわかる人がいるなら……これを見てる時まだ“あいどる”が力を持っているなら……』

雪穂『誰か……誰か彼女たちを止めてください!』

雪穂『さもないと2035年に世界は終わってしまう…』

プツッ

秋穂「!?」

秋穂「…え?」

町内会長「切られたんじゃな、確か取り直しの分がもう一つあったと思うが」

531: 2020/07/07(火) 21:30:55.56 ID:UT7itLJ8
秋穂「(……穂乃果おばちゃんが死んだのはお母さんのせい……?)」

秋穂「(2035年に世界は終わる…?)」

町内会長「あった、つけるぞ」

秋穂「……お願いします」

ポチッ…

雪穂『……秋穂』

秋穂「!」

雪穂『秋穂……こんな事を私が言える立場じゃないのかもしれない……だけど』

雪穂『絶対……幸せになってね』

プツンッ

秋穂「……お母さん」

秋穂「……うん」

532: 2020/07/07(火) 21:35:41.39 ID:UT7itLJ8
秋穂「………」

町内会長「まぁ……茶でも飲めい」コトッ

秋穂「………」

町内会長「………」ズズッ

町内会長「思い出した事がある」

秋穂「……なんですか?」

町内会長「東京で巻き起こった、全身から血を出す病…」

町内会長「あれがこの沼津で起きた事があった」

秋穂「……沼津だけじゃない、それは全世界で」

町内会長「いや違うんじゃ。あの血の大晦日…東京大爆発が起きる前の話じゃ」

秋穂「……それって」

町内会長「日本で初めてあの病気が出たのは沼津なんじゃねぇか?」

秋穂「……そんな大事なこと、なんで知られてないんだろう?」

町内会長「……犠牲者が少なかったからな」

町内会長「なんてったって、沼津であの病気で死んだのは一人だけだ」

秋穂「一人?あの感染力で…なんでそんなに少ないんだろう…」

533: 2020/07/07(火) 21:39:12.18 ID:UT7itLJ8
町内会長「ビデオの娘のおかげだ」

町内会長「あの女医さんが止めたんじゃな…今になって思うと」

秋穂「……女医?」

町内会長「……結局、この病気が沼津で出たのを知ってる奴らは俺を含めてごく僅かだ」

町内会長「だがここで起きていた方が東京での被害を減らせたのかもな…」

秋穂「……ちょっと待って。女医ってなに?」

町内会長「……岸壁の上に病院がある」

町内会長「そこで働いてたんじゃよ」

秋穂「………」

町内会長「あの女医さんがいなくなって、廃墟になってるが…良ければ行ってみるといい」

町内会長「お前さんの知りたいこともわかるかもしれん」

秋穂「……どんな人だった?」

町内会長「……ふと現れて、いつの間にかいなくなった」

町内会長「なにか悩みを抱えているようじゃったが……」

534: 2020/07/07(火) 21:43:18.36 ID:UT7itLJ8




ギシッ…

町内会長「ここだ」

秋穂「……こんなところでお母さんは何を?」

秋穂「あっ…案内ありがとう」

町内会長「老人には少々堪えるな」

秋穂「ご、ごめんね…」

秋穂「……ねぇ、一ついい?」

町内会長「なんだ?」

秋穂「さっき、その女医さんが病を治めたって言ってたけど、ワクチンでも使ったのかな?」

秋穂「多分、病ってウィルス性のものだと思うんだけど…」

町内会長「ワクチン…まぁそうなんじゃないか」

秋穂「その段階でワクチンが完成してたなら、なんで2019年12月31日の血の大晦日で使わなかったのかな…?」

町内会長「……さぁな、その辺のことはワシにはよくわからん」

535: 2020/07/07(火) 21:45:30.68 ID:UT7itLJ8
~廃病院~

ガシャ…ガシャ…

秋穂「ひぇ~…ガラスの破片だらけ…」

秋穂「……」キョロキョロ

秋穂「……ん、ネームプレートに何か書いてある」

秋穂「文字が薄れててよく見えないや……え~っと」

【Dr.KOUS…】

秋穂「……この部屋ってもしかして」

ガチャ、キィー

536: 2020/07/07(火) 21:47:46.39 ID:UT7itLJ8
秋穂「……お母さんの部屋」

秋穂「……ここにお母さんがいたんだ」

スタスタ…パキッ!

秋穂「……!」

秋穂「……写真?」

秋穂「おばあちゃんとお母さんと穂乃果おばちゃん…」

秋穂「……音ノ木坂入学式の時の」

秋穂「……何か他にないかな?」

秋穂「引き出しとかに…」

ガラッ

秋穂「……!」

秋穂「これって…」スッ

秋穂「お母さんの……日記?」

537: 2020/07/07(火) 21:51:45.49 ID:UT7itLJ8
秋穂「………」パラッ

秋穂「……え?」

秋穂「」パラッ

秋穂「え、え……これって……」

秋穂「そんな…」ズルッ

バサッ…

秋穂「……嘘……でしょ……」

秋穂「お母さんが……?」

538: 2020/07/07(火) 21:54:14.05 ID:UT7itLJ8




~東京~

秋穂「」トボトボ

海未「秋穂」

秋穂「…!」

海未「…おかえりなさい」

秋穂「…ただいま」

海未「どうでした?お母さんの事、何かわかりましたか…?」

秋穂「……うん。……うん」

539: 2020/07/07(火) 21:57:12.35 ID:UT7itLJ8
秋穂「……これ」スッ

海未「…?これは?」

秋穂「お母さんの……日記……」

海未「雪穂の?」

秋穂「……読んでみて」

海未「………」パラッ

海未「……培養に成功」

秋穂「その裏のページ…」

海未「裏のページ?」

海未「……」パラッ

【全身から出血した猿A】

海未「…!?これは…」

秋穂「…………」

海未「」パラパラ…

【……私が30万人の都民を〇した】

海未「これは…まさか…雪穂が…?」

秋穂「そう……。お母さんが……あのウィルスを作った、張本人……」

540: 2020/07/07(火) 22:04:06.43 ID:UT7itLJ8




真姫「エリー…日本に行くのね」

絵里「えぇ、秋穂たちの事も気になるし」

真姫「でも……わざわざ密航する必要なんて」

絵里「仕方ないわよ、私は正規の船には乗れないんだから」

真姫「そうかもしれないけど…」

絵里「大丈夫よ、心配しないで。……ねぇ、真姫」

真姫「…?」

絵里「亜里沙を……よろしくね」

真姫「……えぇ、任せといて」

真姫「……雪穂ちゃん、亜里沙ちゃん、必ずみんなで一緒に帰るから」

絵里「うふっ…ハラショー…♪待ってるわね」

541: 2020/07/07(火) 22:08:38.61 ID:UT7itLJ8
曜「ルビィちゃん…本当にここに残るの?」

ルビィ「うん…花丸ちゃんやお姉ちゃんもいるし…」

真姫「それに、ちょうど私も助手が欲しかったのよね」

真姫「ま、利害の一致って感じかしら?」

ルビィ「は、はい!ルビィも真姫さんのお手伝いが出来るなんて光栄です…!」

真姫「うふっ…なら良かった♪」

ルビィ「えっと…果南ちゃんは飛行機で帰るんだよね?曜ちゃんは?」

曜「え?私?もちろん私は絵里さんと同じ船に乗るんだよっ!」

絵里「え!?曜…あなた、無理しなくてもいいのよ?」

曜「いえいえ無理なんて!私は生まれながらの船女ですから!」

曜「船があるなら乗り込むまで!ヨーソロー!」

真姫「う、うん…ま、まぁ気をつけてね…」

絵里「え、えぇ…」

542: 2020/07/07(火) 22:13:28.86 ID:UT7itLJ8
絵里「じゃあ、そろそろ行くわね」

真姫「本当に雪穂ちゃんと会っていかなくてもいいの?」

絵里「私が会ったところで…ね。真姫に任せるわ」

真姫「……わかったわ」

真姫「そっちも海未や希によろしくね」

絵里「えぇ、伝えとく」

曜「ルビィちゃん、体調とか気をつけてね!絶対にまた会おうね!」

ルビィ「うん!またみんな揃って!」

果南「そうだね、またみんなで!……ってあれ?」

曜「ん?どうしたの果南ちゃん?」

果南「いや……私、なんか、忘れてるような……」

絵里「忘れるくらいなら瑣末なことでしょう?さっ、行くわよ」

ルビィ「あっ…え、絵里さん!」

絵里「……?……なにかしら?」

ルビィ「あの……こ、ここまで本当にありがとうございました!」ペコッ

絵里「……ふふっ、ハラショー♪」

絵里「こちらこそ、ありがとう……」

真姫「……ウフッ」

真姫「またね」

544: 2020/07/07(火) 22:23:47.93 ID:UT7itLJ8




~神田明神~

希「これがその雪穂ちゃんの日記?」

海未「はい、かなり昔の事まで綴られていました」

希「……雪穂ちゃんがウィルスを」

海未「……しかし、詳しく読めば望んで作ったものではないという事も分かりました」

希「ウチらにとってはそれで良くても…秋穂ちゃんにとってはお母さんがウィルスを作ったっていう事実が辛いんよ」

海未「………」

希「今、秋穂ちゃんは?」

海未「……はい。すっかり寝込んでしまって、しばらく学校にも行けていません」

希「そっか……当然やね……だいぶショックを受けてるだろうし……」

545: 2020/07/07(火) 22:27:33.88 ID:UT7itLJ8
希「日記には他になんて?」

海未「……えっと、その///」

希「……?なに、どうしたん?」

海未「その……だから……雪穂と亜里……ゴニョゴニョ///」

希「……えぇ!?なんて!?」

海未「その…///」モジモジ

希「~~~っ!!」

希「もう~!海未ちゃん、早よ言ってよ!何をそんなに照れてるん!?」

海未「だ、だから!雪穂と亜里沙ちゃんは……その……恋人関係にあったらしいんです……!!!

希「………」ポカーン

希「……知ってるよ?」

海未「え?」

希「当時、気づいてなかったのって海未ちゃんだけちゃうかなぁ?」

海未「そ、そうだったんですか…」

546: 2020/07/07(火) 22:37:41.64 ID:UT7itLJ8
希「それで雪穂ちゃん達がどうしたの?」

海未「は、はい…日記によると雪穂と亜里沙ちゃんは自分たちの子供を設けたいと考えたようです」

海未「そうして、雪穂は木皿教授のご息女と細胞の研究を始めたそうです」

希「女性同士でも子供が作れるようにって?」

海未「そのようですね…。そして、この木皿教授のご息女こそが、穂乃果に秋穂を託したあの女性のようです」

希「あれ…?でも待ってよ、“あいどる”は秋穂ちゃんに自分はもう一人の母親だって言ったんやろ?」

海未「はい。それは恐らく事実だと思います…」

希「なら、“あいどる”は亜里沙ちゃんって事に…」

海未「いえ、重要なのはこの後なんです」

547: 2020/07/07(火) 22:46:45.78 ID:UT7itLJ8
海未「日記によると、雪穂たちの研究に目をつけた女性がいたそうです」

海未「恐らくこの人物こそが“あいどる”かと…」

海未「雪穂は…協力しなければ父親を〇害すると脅されたみたいです」

希「………」

海未「……そして、協力しなかったためにお父さんは〇された……と、雪穂は記しています」

希「雪穂ちゃんのお父さんって確か…膵臓癌で亡くなったんじゃ…?」

海未「そうです。ですが…それはあくまでも表向きの死因で、実際は何らかの方法で…〇害されたんでしょう…」

希「………」

548: 2020/07/07(火) 22:52:44.78 ID:UT7itLJ8
海未「そして別のページには、亜里沙の訃報を聞き、悲しみに明け暮れ、立ち直れなかった自分の前に現れた彼女に気を委ねてしまった…と、記されています」

希「……じゃあ、亜里沙ちゃんの不可解な死も、“あいどる”が一枚噛んでる可能性があるね」

海未「その後“あいどる”は次々とスクールアイドルを拉致し…更に、その子たちの監禁を始めたそうです…」

海未「これは穂乃果がヒデコから聞いたと言っていた、勧誘の事ではないでしょうか?」

希「“あいどる”はなんでそんな事を?」

海未「はい。次にこう記してあります」

海未「自身の卵子を精子へと変換させるために必要なプロセスであり、その適応者を探すため」

海未「この適応者とは…何のことなんでしょうか?」

希「……ウチらにはよくわからないね」

549: 2020/07/07(火) 22:57:09.06 ID:UT7itLJ8
海未「その後、二人の間に生まれた女の子に…秋穂と名付けた…」

海未「そして…しばらくしてから穂乃果に預ける決断をした、と」

希「なんで穂乃果ちゃんに預けようって思ったんだろう?」

海未「それは……“あいどる”は危険と判断したからでは?」

希「そんなの秋穂ちゃんが生まれる前からわかってることやんか」

希「日記にはなんて書いてあるの?」

海未「それが…所々ページが破られていてよくわからないんです」

希「ふーむ…」

海未「亜里沙ちゃんの事もあり、寂しさから正常な判断が出来なかったのではないでしょうか…?」

550: 2020/07/07(火) 23:02:22.90 ID:UT7itLJ8
海未「その後……木皿教授のご息女は“あいどる”に洗脳されたため、疎遠になったとも書いてあります」

海未「……そして……ある年、“あいどる”から出されたオーダーが……」

希「あの血の大晦日に使われたウィルスってわけやね…」

海未「……はい」

希「……やっぱり、雪穂ちゃんにしかわからない事が多すぎるね」

希「カードもわからないって言ってる」

海未「……そうですか」

希「……まぁ、ウチらが今やるべき事は秋穂ちゃんのケアだよ」

希「……色々あって、きっと疲れてると思うんよ」

希「穂乃果ちゃんがいなくなってから……ウチらはあの子に随分救われたからね……」

希「今度はウチらが支えになってあげないとね!」ニコッ

海未「希…。はい…そうですね」

551: 2020/07/07(火) 23:07:15.56 ID:UT7itLJ8




コンコンッ

海未「………」

コンコンッ

・・・シーン

海未「……秋穂?」

海未「入りますよ……?」

ガチャ

海未「……秋穂?いないんですか?」

・・・ガラーン

海未「あの子…いったいどこに…?」

552: 2020/07/08(水) 14:08:48.57 ID:g1jNtSQP
~ゲームセンター~

秋穂「!!!!!」

バチンッ!!!!!

ピーピー

カカリインヲオヨビクダサイ…

ザワザワ…

女客「えっ…壊れた?」

男客「パンチングマシンを壊すなんて…」

女客「最近の子はストレス溜まってるのねぇ…」

秋穂「はぁ……はぁ……」

不良1「ねぇねぇ!お姉ちゃん!」

秋穂「……ふん」プイッ

不良1「華奢なのに、すげぇ力してんねぇ、カッコよかったよ」

秋穂「……」キッ

不良1「うっ…」

不良2「まぁそうカリカリしなさんな!せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」

不良2「地元ここ?見ない顔だけど」

秋穂「………」スタスタ

不良3「帰んの?車あるから送ってくよ!」

秋穂「」ピタッ

秋穂「……乗せて帰ってよ」

不良3「!!!」

不良3「へへ、任せときな…」

553: 2020/07/08(水) 14:11:40.16 ID:g1jNtSQP
~車内~

不良2「大丈夫?狭かったら俺の膝の上にでも乗る?w」

秋穂「………」

不良2「……はっ」

不良3「ねぇ、さっきから窓の外ばっか見てるけど、面白い?」

秋穂「……あなた達と喋ってるよりかは」

不良3「」カチンッ

不良2「つか、さっきからなに聞いてんの?」

不良2「音楽プレーヤー?…古っ」

秋穂「触ったら承知しないから」

不良2「はは、機嫌悪いねぇ…」

秋穂「………」

554: 2020/07/08(水) 14:16:28.52 ID:g1jNtSQP
秋穂「………」





秋穂「ねぇねぇ、穂乃果おばちゃん」

穂乃果「……」ガチャ、ガチャ

秋穂「穂乃果おばちゃん!!」

穂乃果「ん?どうしたの秋穂?」

秋穂「穂乃果おばちゃんはなんで歌えるの?」

穂乃果「え…?」

秋穂「秋穂以外のお客さん、欲しくないの?」

穂乃果「たはは…そりゃまぁ、欲しいよ」

秋穂「なんで欲しいと思ってるのに…なんで辛いのに続けられるの…?」

穂乃果「……秋穂」

秋穂「…?なーに?」

555: 2020/07/08(水) 14:20:05.76 ID:g1jNtSQP
穂乃果「諦めないことが大切なんだよ?」

穂乃果「なんでも諦めずに最後までやり遂げる事が大切なの」

穂乃果「諦めずにやってたら、きっと何かが変わるから!」

秋穂「……そうなの?」

穂乃果「そうだよ~!だって、私たちがそうだったんだもん!!だから保証するよ!」

秋穂「えへへ…そっか!」

穂乃果「うん、そうだ!」

秋穂「そっかそっか!」

穂乃果「そうだそうだ!」

秋穂「クスッ…」

穂乃果「プッ…」

穂乃果&秋穂「あはははは…!」





秋穂「諦めずに……か」

秋穂「」ジワッ…

秋穂「穂乃果おばちゃん……私、もうダメだよ……」

556: 2020/07/08(水) 14:29:34.83 ID:g1jNtSQP
不良2「……寂しそうだね。これ、使ってみ」スッ

秋穂「なぁに…これ…?」

不良2「大丈夫。変なものじゃないよ?すげぇ気持ちよくなるから」

秋穂「………」

不良3「それ、カラフルで可愛いっしょ?」

不良3「嫌なこと全部忘れられるから」

秋穂「これを使えば、穂乃果おばちゃんに…会える…?」

不良1「あぁ…その穂乃果さんにもきっと…穂乃果…穂乃果…?」

不良1「いや待てよ…コイツどっかで見た事…」

秋穂「はぁはぁ…穂乃果…おばちゃん…私…!」

不良1「よく見れば……コイツ……あの高坂穂乃果に……なんか……雰囲気……」

不良達「…ッ!」ゾッ

キーッ!!

不良1「お、降りろ!」

秋穂「……っ!」ドサッ!

バララッ…

秋穂「あ…!」

不良1「やベェヤツ捕まえちまった…!出せ!」

不良2「で、でもクスリ渡したまんま…!」

不良1「いいから!早く出せ!」

不良3「あ、あぁ!」

キイイイィィ!!ブーン…

557: 2020/07/08(水) 14:32:59.01 ID:g1jNtSQP
ザワザワ…

通行人女「あ、あなた…大丈夫?」

秋穂「あれ…あれ?さっきのやつ…どこかにいっちゃった…」

通行人女「さっきのやつ?もしかして、これ…?」スッ

通行人男「え…お、おい…それってMDMAってやつじゃ…」

通行人女「えっ、なに…それ?」

通行人男「薬物だよ…!見た目はそんなだけど…かなり危険なやつ…!」

秋穂「か、返して…!」バッ

通行人女「ひっ…!」

秋穂「はぁ…はぁ…!これを使えばまた穂乃果おばちゃんに…会える…会える…!」ジワッ

秋穂「…っ、お母さん、お母さん…」ツー…

秋穂「うっ…やだ、やだよぉ…もう…」

通行人男「も…もう使っちまってんのか?情緒不安定というか…なんか危ないぞこの子…」

558: 2020/07/08(水) 14:38:48.76 ID:g1jNtSQP
通行人女「つ、通報した方がいい…?」

「ま、待ってください!」

通行人男「…!?」

千歌「その子は…私が預かります」

通行人男「あ、あんたは?」

千歌「私、こういうものです」スッ

通行人女「け、刑事さん?」

千歌「はい。ちょっと、通してもらえますか」

秋穂「はぁ…はぁ…」

千歌「秋穂ちゃん、ほら立って…」

秋穂「だ、誰?……誰ぇ」

千歌「千歌だよ…。とりあえず、ここじゃ人目があるから…」

559: 2020/07/08(水) 14:45:56.34 ID:g1jNtSQP
ピンポーン

千歌「誰かいないかな…?」

ガチャ

千歌「…あっ」

海未「どなたで……。ッ!!」

千歌「う、海未さ…!」

海未「秋穂…!」

秋穂「……スー」

千歌「あっ…疲れて、寝ちゃったみたいです」

海未「そうですか…。あの、失礼ですが…あなたは?」

千歌「けい…いや、秋穂ちゃんの友達です」

海未「…そうですか。この子…こんな時間まで、いったいどこに…」

千歌「ここから離れたところでちょっと…」

海未「えっ?まさか…そこから秋穂をおぶって、帰ってこられたんですか…?」

千歌「あ、はい!タクシー使おうにもお金がなかったので…あはは…」

海未「ほ、本当に申し訳ありません…」

千歌「い、いえいえ!そんな気にしないでください!じゃ、じゃあ私はこの辺で…」

海未「あ、あの…!」

千歌「…はいっ?」

海未「よければ、上がっていってください」

海未「お茶くらいしか出せませんが…」

560: 2020/07/08(水) 14:53:49.57 ID:g1jNtSQP
秋穂「……スー」

コトッ…

海未「……どうぞ」

千歌「あ、ありがとうございます!」

千歌「ズズッ……海未さんは、ずっと秋穂ちゃんの家に?」

海未「えぇ…。あまりにも帰りが遅いので、心配していたんです」

千歌「そうですか…」

千歌「……ちょうど私、ゲームセンターから男の人たちに連れられて出てきて、車に乗り込む秋穂ちゃんを見て……それで慌ててタクシーに乗って後をつけたんです」

海未「そんな事が……」

千歌「はい。中でなにがあったのかはわからないんですけど…」

561: 2020/07/08(水) 14:58:52.69 ID:g1jNtSQP
千歌「しばらく走った後、秋穂ちゃん…外に出されたんです。まるで、放り出されるみたいに…」

海未「えっ…?」

海未「ま、まさか…何か酷いことをされたのでは!?」

千歌「あっ…いえ、そういう形跡はなかったんですけど…」

千歌「でも一歩間違えたらそれも……」

千歌「……車から降りた時の秋穂ちゃんはすごく混乱していて、私を認識する事も出来てませんでした」

千歌「……そして、手には薬物が……」

海未「……え?」

562: 2020/07/08(水) 15:07:52.78 ID:g1jNtSQP
海未「……秋穂が……そんなものを……?」

千歌「たぶん、無理やり持たされただけだと思うんです」

千歌「だから…怒らないであげてください」

海未「……」チラッ

秋穂「…スー…スー…」

海未「……」

千歌「この歳の女の子じゃ…受け止めきれない事がたくさんあって当然ですよね…」

海未「……そうですね」

千歌「ズズッ…」

千歌「……私、そろそろお暇しますね!」

海未「あっ…そ、そうですか…?あの、今日は本当にありがとうございました…」

千歌「いえいえ、当然の事をしたまでですから!」

千歌「それじゃあ…」ガチャ

海未「」ペコッ

バタンッ

海未「………」

秋穂「……スー」

海未「」ギュッ…

秋穂「……ん」

海未「……私では代わりにならないかもしれません……。でも、側にいますから」

秋穂「……っ、ん……」

海未「………穂乃果」

563: 2020/07/08(水) 15:13:21.76 ID:g1jNtSQP
-翌日- ~理事長室~

鞠莉「………」

果南「………」

曜「………」

鞠莉「まぁ…まずは曜の無事を喜ぶべきよね?」

果南「う、うん…」

鞠莉「でもね果南。私が果南をニューヨークに行かせたのは梨子の捜索で……ノー、怒るのはやめましょう……」

鞠莉「そもそも、あんなノーヒントで行かせた私にも責任はあるからね」

鞠莉「…それに、曜にルビィに花丸…それにダイヤが無事ってわかったんだから、結果オーライよね」

564: 2020/07/08(水) 15:18:21.57 ID:g1jNtSQP
曜「あのさ鞠莉ちゃん」

鞠莉「ワッツ?どうしたの、曜?」

曜「千歌ちゃんは?三人はずっと無事だったんだよね?」

鞠莉「……千歌ッチは今、大忙しだと思うよ」

果南「え、どうして?」

鞠莉「ムロタさんもそうだけど……警察がね」

鞠莉「近々“あいどる”が秋葉原でパレードを開くみたいデスからね」

果南「パレード?」

鞠莉「えぇ、視察も兼ねたね…」

鞠莉「かなり大規模に行うみたいだから…人も大勢集まるはず」

鞠莉「今はその護衛なりの準備で人員を割いてるらしいよ?」

565: 2020/07/08(水) 15:24:54.29 ID:g1jNtSQP




-パレード当日-

『ご覧ください!“あいどる”の勇姿を!』

『“あいどる”は徐行する車から、市民一人一人に目を向け手を振っています。現場は非常に和やかな雰囲気に包まれています!』

にこ「……こんなパレードをテレビ中継なんて、くだらないわね」

凛「……あれ~?ねぇ、にこちゃん、かよちん知らない?」

にこ「花陽?そう言えば見てないわね…」

にこ「……まさか、この秋葉原パレードに行ったんじゃ」

凛「凛たちに何も言わずにかよちんが一人で?」

凛「はは。ないにゃないにゃ~…」

凛「ん~どこ行ったんだろう~?」

にこ「…しかし…パレードねぇ…」

566: 2020/07/08(水) 15:35:27.86 ID:g1jNtSQP
『凄まじい“あいどる”コールが響き渡ります!』

『“あいどる”のこの後のご予定は……』

秋穂「……」ジッ

海未「さて…お昼ですし、何か作りましょうか」

海未「秋穂、何か食べたいものはありませんか?」

秋穂「……ねぇ、海未おばちゃん」

海未「はい?」

秋穂「パレード…行きたい…」

海未「……ッ!」

海未「………」

秋穂「……ダメだよね」

海未「……わかりました」

秋穂「だよね………え?」

秋穂「海未おばちゃん……いいの?」

海未「たまには太陽の光を浴びないといけませんからね。構いませんよ…」

海未「ただし!私も同伴しますからね」

秋穂「……うん、わかった」

567: 2020/07/08(水) 15:39:29.61 ID:g1jNtSQP




刑事2「高海」

千歌「………」

刑事2「高海…!」

千歌「えっ…?は、はい?」

刑事2「……お前なぁ」

千歌「す、すいません…」

刑事2「……まぁ、やる気が出ないのもわかるけどよ」

刑事2「このパレードの後、“あいどる”は各所の視察に行かれる。そして最後に神田明神へ参拝の予定だ」

千歌「神田明神…」

刑事2「もう明神が混雑してるらしい、行くぞ」

千歌「は、はい!」

568: 2020/07/08(水) 15:43:24.93 ID:g1jNtSQP




ルビィ「真姫さん!」

真姫「なに?今、手が離せないんだけど…」

ルビィ「見てくださいこれ!」

真姫「いや、だから……んもう!なによ?」

真姫「なにこれ……パレード?」

ルビィ「こっちでも日本のこと放送するんですね~…」

真姫「“あいどる”が出てると、どこもかしこも取り上げるのよ、バカみたいに…」

公野「本当にバカみたいだね」

真姫「ひゃっ…!」ビクッ

ルビィ「うゆっ…!」ビクッ

公野「そんなビックリしなくても…」

真姫「あなた…神出鬼没すぎよ」

公野「ごめんごめん!いやね、今日は真姫に見せたいものがあってさ」

569: 2020/07/08(水) 17:40:16.66 ID:g1jNtSQP
公野「ハターキとコンタクトが取れてね」

真姫「ハターキ?」

公野「知らないの?今度“あいどる”のテーマソングを手がける人」

真姫「それがどうしたのよ?」

公野「ほらこの前、ルビィの友達いたじゃない?」

真姫「ルビィの友達……誰だったかしら」

ルビィ「果南ちゃん!」

真姫「あぁ…で、それがなによ?」

公野「あの子、本当はハターキを探しにニューヨークに来てたんだよ」

ルビィ「あっ…果南ちゃんが最後に言ってた忘れてる事ってそれだったのかな…」

公野「でさ、気になったから私なりに調べてみたのハターキを」

公野「そしたらあの人面白くてさ……ぷぷ」

真姫「……あなた、冷やかしにきたの?」

公野「違う違う!ま、いいや…余計な話は置いといて、これ見てみなよ!」

570: 2020/07/08(水) 17:50:03.95 ID:g1jNtSQP
真姫「…これは?」

公野「歌詞ノート」

真姫「誰のよ?」

公野「……“あいどる”の」

真姫「……え!?」

公野「ハターキに貸してもらったの」

ルビィ「な、なんで、ハターキさんが…?」

公野「まぁ、情報提供…?あの人は完全な“あいどる”側じゃないからね」

真姫「……希望は悪の手で撃ち〇されるのよ」

ルビィ「え、真姫さん…?」

真姫「……歌詞よ」

公野「…それ、あの法則から考えてヤバくない?」

公野「“あいどる”は歌詞に忠実…」

真姫「……あっ」

ルビィ「……え?」

真姫「…っ、自作なんて、もうなんでもありじゃない…!!」

真姫「今日のパレード…マズいわ…」

真姫「秋穂が……〇される……」

571: 2020/07/08(水) 17:55:42.78 ID:g1jNtSQP




ワーワーワーワー!!!!!

アイドルー!!!!!

海未「どこに行っても人混みだらけですね…!」ギュウギュウ

海未「秋穂、大丈夫ですか…?」

海未「……秋穂?」

・・・

海未「い、いない…!」

海未「……っ!もう、あの子は!」

572: 2020/07/08(水) 17:59:28.06 ID:g1jNtSQP
千歌「あれ、先輩…?」

千歌「しまった…はぐれちゃった…」

千歌「あっ…テレビカメラ」

テレビリポーター「“あいどる”は今、世界で最も危険な道を進んで行きます!」

テレビリポーター「我らが愛する“あいどる”は世界の崩壊を唯一止めることができるお方です」

テレビリポーター「日本が世界に誇る“あいどる”が今ゆっくりと…そして堂々と国民に手を振っています!」

千歌「……こわいなぁ」


刑事1「」ニヤッ


千歌「!?」

千歌「あっ…あの人…!」

千歌「なんで、こんなところに…?」

千歌「……ッ!」タッタッタッ

573: 2020/07/08(水) 18:52:20.26 ID:g1jNtSQP
ギュウギュウ…!

秋穂「ん…!んぅ~…!」

スポンッ

秋穂「ぷはっ!」

秋穂「はぁはぁ…だいぶ人混みに流されちゃった…!」

秋穂「海未おばちゃんと…はぐれちゃった…」

秋穂「どうしよう…」

秋穂「というか、ここって…」

秋穂「神田明神じゃん…」

秋穂「そっか…今は下でパレードしてるから…まだここにはあんまり人が…」

秋穂「そうだ!せっかくだし、希おばちゃんに挨拶しとこ」

バンッッッ!

秋穂「!?」

「止まれ」

秋穂「あなた…」

刑事1「つぎは当てる」

秋穂「ブリトニーを〇した、あの…?」

574: 2020/07/08(水) 20:44:58.72 ID:g1jNtSQP
ザワザワッ…

「今…あいつ、撃った…?」

「銃、持ってる…?」

「いや、いやあああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

刑事2「全員伏せろ!」

刑事2「(あの野郎…ここで何を…!?)」


秋穂「なんでこんなところに…」

刑事1「“あいどる”がお前を“退部”させろってな」

秋穂「たいぶ…?」

秋穂「……私は“あいどる”に会って話をしないといけないの」

刑事1「それは無理な相談だ。何故ならお前は今ここで死ぬからな」

秋穂「………」

刑事1「おっと、逃げるなんて考えるなよ?」


ガラッ!

希「ちょっと!今のなんの音…」


刑事1「お前が逃げたら…こうだ」

バンッッッ!


バシュッッ…

希「がっ…!ッッ……!!!」ドサッ


秋穂「ッッ!!!!!」

秋穂「希おばちゃんッッ!!」

575: 2020/07/08(水) 20:56:28.64 ID:g1jNtSQP
秋穂「希おばちゃんになんてことするのよ!!」

刑事1「今のは参考だから足を狙ったんだ。感謝しろよ、死にゃしない」

秋穂「……!」ギリッ

刑事1「お前が逃げたらここにいる奴ら全員〇す」


希「……あ、秋穂ちゃん……ッ……い、いいから、早く逃げや……!」


秋穂「……撃てば」

刑事1「…!流石は運命の子、肝が座ってる」

刑事1「じゃ…」

ダダダ…

刑事1「あ?」

秋穂「!」

海未「秋穂っ!」ガバッ

秋穂「海未おばちゃん…!?あ、危ないから逃げて!」

刑事1「どけよババア…お前ごと撃つぞ?」

海未「撃つなら私を撃ってください!」

海未「私の……私たちの子に手は出させません……!」

秋穂「……海未おばちゃん」

刑事1「ふんっ。バカが。お前一人が庇ったくらいじゃ、どっちにしろ貫通して二人とも死ぬ」

576: 2020/07/08(水) 21:04:34.03 ID:g1jNtSQP
刑事1「だいたい…お前たちの子じゃないんだよ」

刑事1「神の子なんだよッ!」

秋穂「海未おばちゃん、私のことはいいから逃げて…」

海未「……っ」ギュッ

秋穂「……なんで」

刑事1「希望は悪の手で撃ち〇されるのよ」

秋穂「………」

刑事1「素敵な歌詞だ」ニコッ

刑事1「じゃあな」スッ

海未「!!」ギュッ!

秋穂「海未おばちゃん…」

刑事1「あははは!!」

秋穂「……くそぅ」

578: 2020/07/08(水) 22:36:56.01 ID:g1jNtSQP
希「……ッッ!」グッ


ブルン……

刑事1「……あ?」

ブルンブルンブルンブルンッ!!!!

刑事1「なんだ……この音?」

秋穂「……バイク?」

ブゥゥゥゥゥゥゥン!!!

ガンガンガンガンッ!!

刑事1「なに!?」

ブルンッ!

刑事1「あぶねぇっ!」サッ

キィィィィィ!

「…………」

刑事1「だ、誰だ!ヘルメットを取れ!ぶっ〇してやる」

「仲間を……」

「……秋穂を」

スッ…

刑事1「……ッ!お前は……!」

絵里「絶対、〇させやしないんだから」


希「絵里ち……」


秋穂「絵里…おばさん…」

579: 2020/07/08(水) 22:40:20.99 ID:g1jNtSQP
刑事1「ふんっ…」スチャッ

絵里「…………」

刑事1「死ね」

秋穂「…ッ!ダメ!!」

バンッッッ…!

絵里「……?」

秋穂「……え?」

刑事1「…………あ、れ…?」

刑事1「………俺が…希…望……で…お前……らが悪……だった……のか…?」

刑事1「ゴパッ…」

刑事1「」バタンッ

イヤ、イヤアアアアアアアアアア!!!!!!!!

ニゲロニゲロ!!

絵里「……っ」ダッ

刑事1「」

絵里「……即死か」

絵里「……弾はまだあるわね」





酒井「」ニヤッ

酒井「ほら、拾えよ…拾えよ9番」

580: 2020/07/08(水) 22:43:31.27 ID:g1jNtSQP
絵里「」キチャ…

絵里「伏せときなさい、いいわね?」

秋穂「う、うん…」

絵里「海未、秋穂を…」

海未「絵里…。わかりました…」

絵里「頼んだわよ」

絵里「…希!」


希「へ…?ど、どうしたん!?」


絵里「それで、止血しなさい」ブンッ


希「…っと!」パシッ


絵里「………」

秋穂「絵里おばさん…」

絵里「…ここにいて」

秋穂「でも、私…」

絵里「ここにいるのよ」

秋穂「……わかった」

絵里「……」コクッ

海未「……」コクッ

絵里「」ダッ

581: 2020/07/08(水) 22:46:15.49 ID:g1jNtSQP
刑事2「落ち着け!落ち着いてこの場から離れろ!」

絵里「どきなさい」

刑事2「!?」

絵里「」スチャッ


「え…?い、いやああああああ!!!!!」

「あ、あれ…テ口りストの…!絢瀬絵里よ!!!!!」

「いやああああああぁぁぁぁ!!こ、〇される!!!!」

ドタバタ…


絵里「……みんな、お利口さんね」

刑事2「待て!」

絵里「……なに?」

刑事2「あいつは……死んだのか?」

絵里「えぇ…即死だったわ」

刑事2「……絢瀬絵里」

絵里「…あなた警察?なら、私のことよりも階段の整理をしといてちょうだい。もしもの時、あの子たちがすぐに逃げられるようにね」ダッ

刑事2「あっ!お、おい!!」

582: 2020/07/08(水) 22:48:35.03 ID:g1jNtSQP
ダダダッ

曜「絵里さん!」

絵里「どう曜?わかった?」

曜「はい!あそこです!あそこのビルの屋上から撃ったはずです!」

絵里「わかったわ、曜はここで見張りをお願い!」

曜「了解であります!」

絵里「……屋上ね」

絵里「」ダダダダダッ

…ガチャリ

583: 2020/07/08(水) 22:51:35.29 ID:g1jNtSQP
ヒュー…

酒井「………」

絵里「……あなた」

酒井「よう、9番」

絵里「……あなたが撃ったの?」

酒井「あぁ」

酒井「ん?……9番、お前……ちょっと変わったか」

絵里「………」

酒井「いや…変わったんじゃない…戻ったのか」

絵里「……秋穂たちを襲った彼は“あいどる”側なんでしょ?」

絵里「つまりあなたのお仲間のはず。なぜ撃ったの?」

584: 2020/07/08(水) 22:56:01.53 ID:g1jNtSQP
酒井「はっ…わからないのかよ9番…」

絵里「えぇ…さっぱりよ」

酒井「茶番なんだよ……このパレードも全部な」

酒井「あいつは神の子に歯向かって〇されるという役を演じてただけだよ、ノリノリでな」

酒井「ま、本人は知らなかったんだけどな」

絵里「………」

酒井「お前もまんまとのせられたんだよ9番」

絵里「なにが言いたいの…?」

酒井「パレードなら人も集まって、関心を持たせられる」

酒井「絶好の舞台なんだよ」

酒井「このパレードをキッカケに“あいどる”はなろうとしてるんだよ…」

絵里「……なにになろうとしてるのよ?」

酒井「本当の神にだよ…」

585: 2020/07/08(水) 23:00:01.31 ID:g1jNtSQP
絵里「……人では神になれないわ」

酒井「人知を超越した存在になれば…それは神となるんだ」

酒井「お前たちも不可能と思われた事を実現して伝説と呼ばれたんじゃないのか?」

絵里「………あなた、どこまで知ってるの?」

酒井「教えるもんか」

絵里「………」

酒井「神だとか、伝説だとか…そういう称号は自分で付けられるもんじゃないんだ。こればっかりはな」

酒井「具体的になにをすれば人々は彼女を神と認めてくれると思う?」

絵里「……全人類を洗脳でもする気?」

酒井「……死ぬんだよ」

絵里「どういうこと…?」

酒井「キリストの話、有名だろ?」

酒井「イエスは死んだ後、蘇り…神となった」

酒井「人は死んだ後に生き返ると…神とみなされるんだよ…」

絵里「……!」

絵里「……ッッ!」ダッ

ガチャリ、バタンッ…

酒井「ふっ…」

586: 2020/07/08(水) 23:01:45.39 ID:g1jNtSQP
ダダダッ

曜「ん?」

曜「え、絵里さん…?」

絵里「“あいどる”のところに行く。あなたは隠れてなさい」

曜「え、ど…どういうことですか!?」

絵里「“あいどる”が神になったら……世界は終わる」

絵里「……その前にあいつの正体を」ダッ

曜「ちょちょ…!絵里さんっっ!?」

587: 2020/07/08(水) 23:05:42.48 ID:g1jNtSQP
絵里「はっ…はっ…!早く、あいつを止めないと…」

絵里「……!?あれは……」


花陽「……」キョロキョロ

花陽「」サッ


絵里「花陽…?」

絵里「いや…今は…」

ワーワーワー!!!

絵里「“あいどる”…!」

ワー!!!

絵里「ッ…どいてください…!」

ワーワー!!!!

絵里「どいてください!」

アイドルー!!!!

絵里「……ッッ!」

絵里「どいてッッ!!!」

「え?い、いやああああぁぁぁ!!!!?」

「な、なに…今の声?だ、誰が…?」

588: 2020/07/08(水) 23:10:10.50 ID:g1jNtSQP
警察「貴様…!下がれ!“あいどる”に近づくな!」

SP「」バッ

絵里「………」

“あいどる”「やぁ、絵里ちゃん」

絵里「」バッ…

絵里「」スチャッ

イ、イヤアァァァァァ!!!!

テ、テロリスト…!!!

SP「」スチャッ SP「」スチャッ SP「」スチャッ

警察「発砲準備!!」

絵里「………」

589: 2020/07/08(水) 23:12:53.30 ID:g1jNtSQP
“あいどる”「いいんだ、彼女は私の友達だから」

“あいどる”「それに市民に銃を…ましてや女性に向けるなんていけないよ?」

SP「………」サッ

警察「待機せよ…」

絵里「……マスクを取るのよ」

絵里「あなたの正体は…あなたは誰?」

“あいどる”「マスクを取ったら…私もみんなの仲間かな?」

絵里「……私たちの時代はもう終わった。あの時の今に置いてきたのよ」

“あいどる”「……そっか」

590: 2020/07/08(水) 23:15:32.11 ID:g1jNtSQP
“あいどる”「そうやってあなた達はいつも、私を仲間はずれにする」

絵里「……何を言っているの?」

“あいどる”「そうだ、亜里沙ちゃん。生きていたんだね…おめでとう」

絵里「……ふざけないで。今はあなたが誰かを聞いてるの」

“あいどる”「……そっか、お礼はなしか」

絵里「あなたの何にお礼をしろっていうの?」

“あいどる”「亜里沙ちゃんが生きているのは私のおかげなのに」

絵里「……なんですって?」

591: 2020/07/08(水) 23:17:50.66 ID:g1jNtSQP
“あいどる”「どんなに活躍しても、どんなに頑張っても…それを認めてくれる人はいない」

絵里「………?」

“あいどる”「所詮その程度の存在なんだ」

“あいどる”「私のやる事は当たり前で…だから、お礼もないんだ」

“あいどる”「やっぱり、損な役回りだよね」

絵里「なんの話……?」

絵里「……あなたは誰なの」

絵里「……ッッ。あなたはいったい誰!?」スチャッ

ヒィィィ!!!

イヤアァァァ!!!

592: 2020/07/08(水) 23:21:38.29 ID:g1jNtSQP
“あいどる”「私を覚えてないの?」

“あいどる”「私の顔がわからない?」

絵里「だから、マスクを…!」

“あいどる”「なら、穂乃果ちゃんの顔も覚えてない?」

絵里「……穂乃果?」

“あいどる”「そんなわけないよね、穂乃果ちゃんは覚えてるのに…私を覚えてないなんて」

絵里「……なにを?」

“あいどる”「これを見ても…わからない?」スッ

絵里「……花?」

“あいどる”「昔、たくさん見たでしょ?」

593: 2020/07/08(水) 23:29:51.82 ID:g1jNtSQP
絵里「……っ!」

絵里「いえ……そんなはずないわ……だって……」

絵里「いや、でも…」

絵里「あなた……まさか……」

“あいどる”「……」

バンッッッ!!

絵里「…っ!?」ビクッ

警察「ふ、伏せろ!!」

絵里「なに…?」

594: 2020/07/08(水) 23:34:21.31 ID:g1jNtSQP
“あいどる”「あ……」

SP「ッッ!!!」

“あいどる”「あ、れ……」バタンッ

絵里「あっ…」

「い、いやあああああああぁぁぁぁ!!!!!」

「誰が…誰が!??」

「逃げろ逃げろ!〇されるッ!!」

「“あいどる”うううぅぅ…!いやあああぁぁぁ死なないでぇぇぇぇ!!!」

絵里「いったい…どこから?」

「あぁぁ…!この人よ!!この人が撃ったのよ!!」

絵里「…!」クルッ

フミコ「……終わった」

絵里「フミコ……?」

595: 2020/07/08(水) 23:38:43.84 ID:g1jNtSQP
フミコ「終わりましたよ、絵里先輩」

絵里「フミコ…あなた、ここで何を…?」

フミコ「私が彼女の暴走を止めないと」

バンッッッ!

フミコ「私があ」プシャッッッ

絵里「!?」

フミコ「」

絵里「フミコッッ!!!」





酒井「ヘッドショット。よくも“あいどる”を」

酒井「“あいどる”…どうか、ご無事で…」

596: 2020/07/08(水) 23:47:24.34 ID:g1jNtSQP
曜「絵里さんっ!!」

絵里「曜…」

曜「狙われてます!逃げて!」

絵里「ッッ……フミコ……」

フミコ「」

絵里「くっ…!そこを開けなさい!」 スチャッ

「いやああああああぁぁぁぁぁ……!!!」

「こ、〇さないで……!!!」

絵里「ッ…行くわよ…」ダッ

曜「はい…!」ダッ

597: 2020/07/08(水) 23:52:46.31 ID:g1jNtSQP




『“あいどる”が何者かによって銃撃を受けました!』

『“あいどる”は病院へと運ばれ、かなりの重体と予想されます」

凛「今のって…絵里ちゃん…?」

にこ「あの子なにして!」

凛「ね、ねぇ!“あいどる”は?」

にこ「わからない…わからないけど…あれじゃ多分…」

凛「……“あいどる”がもし死んだら……世界は平和になるのかな……」

にこ「どうでしょうね…もしかしたら」

にこ「逆かもね…」

598: 2020/07/09(木) 00:08:14.19 ID:au0sXs95




ルビィ「ま、真姫さん…!テレビ…!」

真姫「見てるわよ…」

真姫「……ッ」

真姫「こんな終わり方って…」

公野「……本当にこれで終わりかな」

真姫「……どういうこと?」

公野「………」

真姫「……?」

ルビィ「絵里さんが“あいどる”を…?」

真姫「リアクションからして撃ったのはエリーじゃない…」

真姫「…っ、でも、こんなの…」

599: 2020/07/09(木) 00:12:08.67 ID:au0sXs95




鞠莉「このまま“あいどる”が死んだら……なにもわからずじまい」

果南「これじゃ、梨子ちゃんと善子ちゃんの行方が…」

鞠莉「うん…。それに…このまま“あいどる”が死んで、日本が…世界が良い方に進むとは…正直、思えない」

ガチャ!

千歌「はっ…はぁ…はぁ…」

果南「千歌…!」

鞠莉「千歌ッチ…持ち場、離れても良いの?」

千歌「はっ…はぁ…もう…持ち場もなにも…ないよっ…はぁ…」

600: 2020/07/09(木) 00:17:29.14 ID:au0sXs95
千歌「以前に話してた先輩は死体で発見されるし“あいどる”も…!」

果南「いや“あいどる”はまだ死んだわけじゃ…」

鞠莉「…いや…ダメだね…」

果南「え?」

『速報です!“あいどる”が逝去…“あいどる”がお亡くなりになられました…!」

果南「し、死んだの…?」

鞠莉「はぁ…」ギシッ

鞠莉「結局…“あいどる”の正体は…誰だったのかしら…」

601: 2020/07/09(木) 00:24:29.80 ID:au0sXs95
大切じゃない人が死んだ時の気持ちって不思議な感じで、泣くとか笑うとか…もう、そういう概念じゃないんだ。

じゃあ、どんな気持ちかっていうと。ただ、ジッと見つめて最期を見届けようとするの。

私は…家のテレビで海未おばちゃんと希おばちゃんの三人で、その人の最期を見届けようとした。

私は…何故だか震えて、そしたら海未おばちゃんがギュッて抱きしめてくれた。

落ち着いた。すごくすごく…安心した。

でも、私とは対照的に…抱きしめてくれた海未おばちゃんの身体は少しだけ…震えてた。

602: 2020/07/09(木) 00:28:10.69 ID:au0sXs95
私より長く生きてる人の勘だったのかな。今、考えると、海未おばちゃんはあの時、胸騒ぎしてたんだと思う。

アキバドームってさ、昔は野球とかする場所だったんだけど、今は歌手とかも使うの。

そのキッカケを作ったのは私の穂乃果おばちゃんがリーダーのμ's。

その場所が彼女の、葬儀場に決まった。

そして、その日を迎えた。

603: 2020/07/09(木) 00:31:13.84 ID:au0sXs95
「人類滅亡が近い今、我々は最も大切なお方を失ったのです」

「あなたは私たちにとって、いつまでも唯一無二の存在であり続けるだろう」

「この模様は全世界の国・地域で同時生中継されており、世界中が偉大な英雄の死を悼んでいることでしょう」


ツバサ「先生、まもなく開場します」

山田「今日だな」

ツバサ「……先生?」

山田「今日、μ'sの名前は」

山田「あなたのものになる」

山田「………“あいどる”」

“あいどる”「」

604: 2020/07/09(木) 00:36:19.09 ID:au0sXs95
『世界各国の首脳、各界の著名人、そして多数の一般人が“あいどる”の最期を見届けようと、このアキバドームにやってきました』

秋穂「………」

海未「秋穂…何か、飲みますか…?」

秋穂「……いや」

秋穂「いらない……」

希「……秋穂ちゃん、寒いんやし……コーヒーでも飲んだら……?」

秋葉「……いい」

希「………」

海未「そう…ですか…」

『天にまします我らの父よ…』

秋穂「………」

605: 2020/07/09(木) 00:41:20.33 ID:au0sXs95




ガチャ

凛「ッ!」

花陽「…ただいま」

凛「かよちん!!もう、どこ行ってたの!?何日もいなかったから心配したんだよ!!」

花陽「う、うん…ごめんね」

にこ「花陽…“あいどる”が」

花陽「うん……らしいね」

花陽「もう、終わりでいいよね…私も…疲れた…」

凛「…?かよちん…?」

にこ「二人とも」

にこ「…始まるわよ」

『まもなく代表者による、スピーチが始まります』

606: 2020/07/09(木) 00:46:23.36 ID:au0sXs95
司会「全人類の唯一の希望である“あいどる”」

司会「あなたを欠いた、日本は、世界は、地球は…きっと不安定になってしまうでしょう」

司会「しかし、私たちはあなたの教えに従い、明るく笑顔で…どんな壁にぶつかろうと、いつまでも歩み続けます」

司会「2019年の12月31日に起きた、あの血の大晦日。ホノカ一派を退け、いち早くワクチンを作り上げた、あなたの活躍は、いつまでも語り継がれることでしょう」

司会「“あいどる”が夢にされていた世界同盟は…私たちで必ずや」

司会「それでは、“あいどる”と親交が深いアメリカ合衆国大統領より弔辞を頂きます」

607: 2020/07/09(木) 00:51:27.67 ID:au0sXs95




公野「私は神になる…」ブツブツ

公野「そして世界は血の海に…」ブツブツ

真姫「……さっきからなによ?ブツブツと……」

ルビィ「神様、怖い…」

公野「怖いって言われても…ノートに書いてあるんだもん」

真姫「ノートって歌詞ノート?別にもういらないでしょ…“あいどる”は死んだのよ…」

公野「死んだから悩んでるんだよ」

真姫「どういうこと?」

京極「なるほど…余ってしまったのですね」

真姫「京極くん…余ったって?」

608: 2020/07/09(木) 00:56:33.99 ID:au0sXs95
公野「そう、余っちゃったの」

真姫「だからそれどういう事よ!」

公野「ニブチンだねぇ…真姫も」

公野「この歌詞ノート、大体の事は“あいどる”によって実現されてる」

ルビィ「“あいどる”がこうなった以上…もう歌詞は増えないんだよね…」

公野「いや、そうじゃなくてさ…死んだのに歌詞が2曲分余ってんの」

真姫「……あ」

真姫「まさか…そんな事…」

公野「……おそらく、そのまさかだよ」

ルビィ「え?え?」

609: 2020/07/09(木) 01:01:53.65 ID:au0sXs95
京極「ゆゆしき問題ですね、これは…」

真姫「…どうすればいい…?」

公野「こんなの…どうしようもないよ…もう」

ルビィ「ま、真姫さん…」

真姫「…どうしたの?」

ルビィ「る、ルビィの見間違いかもしれないけど…い、今…なんか、動いたような…」

真姫「……?なにが……?」

ルビィ「……あいどる”が……」




610: 2020/07/09(木) 01:06:54.85 ID:au0sXs95
司会「以上、大統領の弔辞でした」

司会「続きまして、献花のお供えを」

大統領「」スッ

スタスタ

大統領「……“Idol”」

“あいどる”「」

大統領「……」

“あいどる”「」ピクッ

大統領「……?」

611: 2020/07/09(木) 01:12:00.23 ID:au0sXs95
“あいどる”「」ピクッ、ピクッ…

大統領「!?」

ザワザワザワザワ…

“あいどる”「」ガサッ…ゴソッ…

大統領「Oh my God…」

“あいどる”「」ムクッ

大統領「…It's a miracle」

“あいどる”「……」

“あいどる”「」コツコツ…

612: 2020/07/09(木) 01:17:02.69 ID:au0sXs95
“あいどる”「……」

“あいどる”「」サッ

……ワ

ワァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!

“あいどる”「………」

“あいどる”「………」スッ

ウオオオオォォォォォォォォォォ!!!

オォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!

キャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!!!!!!!

アアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!


酒井「すごい……奇跡だ」


ツバサ「彼女こそ、人類の希望…」

あんじゅ「アメージング!本当に蘇ったのね」

英玲奈「神だ…神になられたのだ」

山田「……ははは」

613: 2020/07/09(木) 01:22:22.22 ID:au0sXs95




秋穂「いや……。いや……いやっ……!」

海未「まさか…こんな事…」

希「う、嘘やん……」





凛「なんで…なんで生きてるの…!?」

にこ「わ、わからないわよ…!確かに…あの時…“あいどる”は…」

花陽「彼女は……本当の……神なのっ……?」





人々「アイドル!アイドル!アイドル!」

絵里「……っ」

絵里「やられたわね……」

曜「こんな…ありえないよ」

614: 2020/07/09(木) 01:27:28.65 ID:au0sXs95




果南「そんな……こんなことって……」

千歌「こ、これって現実…?」

鞠莉「……クリスチャンじゃなくても知ってる、有名な話がある」

千歌「鞠莉ちゃん…?」

鞠莉「キリストは死んだ3日後に生き返ったんだよ…」

鞠莉「最悪だよ…最悪の展開だよ…」

鞠莉「アイツを止められる人間はもう……」

鞠莉「いない……」

千歌「……ッ」

615: 2020/07/09(木) 01:32:30.79 ID:au0sXs95
千歌「……でも、穂乃果さんなら」

鞠莉「いない人間に頼っても仕方ないでしょ?」

鞠莉「バッドエンド……終わった。こうなるんだったらいっそのこと……」

果南「マリー……」

鞠莉「世界はあいつの手中に収められる……ほんっと……自分が無力で腹が立つ……」

果南「でも、なんで…ありえないよ、こんなの…」

千歌「……みんな」

616: 2020/07/09(木) 01:37:35.90 ID:au0sXs95
その日…世界中の人たちは「μ's」の名前が入った小旗を振りかざした。 “あいどる”のために。

おばちゃん達の存在なんて、最初からなかったみたいに。

あたかも、それは最初から“あいどる”のものだったみたいに。

もう止められない。

誰にも。

ごめんね、おばちゃん。私、守りきれなかった。

ごめんね、お母さん。私が楽にさせないといけないのに。

ごめんね、みんな…。

本当に、ごめんね…。

617: 2020/07/09(木) 01:42:36.85 ID:au0sXs95
-数日後- ~国会~

“あいどる”「随分…メンツが変わったね」

“あいどる”「あぁ…みんな“退部”しちゃったんだ」

“あいどる”「……さてと」

“あいどる”「確かあと、もう一つやりたい歌詞があったよね」

女「……あなた……誰?」

山田「」ピクッ

ツバサ「……」

“あいどる”「……君は木皿教授の娘さんだよね」

“あいどる”「会ったじゃないか、あの時」

女「………」

618: 2020/07/09(木) 01:47:45.63 ID:au0sXs95
“あいどる”「世界は血の海と化し…それは美しい虹を描くだろう」

“あいどる”「うん、我ながらいい歌詞」

“あいどる”「……じゃ」

“あいどる”「やろっか」





その日、世界各地にウィルスがばらまかれた。

何億という人が死んだ。でも。

それは…とてもとても、美しい虹を描いた。

そして世界は。

滅亡した。

619: 2020/07/09(木) 01:53:03.22 ID:au0sXs95




秋穂「……エッ、エッ」

海未「泣かないでください、秋穂……」ナデナデ

秋穂「エグッ……こんな時に穂乃果おばちゃんがいてくれたら……きっと、何かを変えてくれたのに……」

海未「秋穂……穂乃果は。もう、穂乃果は……」

希「秋穂ちゃん、みんないるから…。絵里ちも帰ってきた。きっとみんなでなら…なんとかなるから…」

620: 2020/07/09(木) 01:58:16.99 ID:au0sXs95
秋穂「グスッ…グスッ…やっぱり私は…穂乃果おばちゃんみたいに…誰も悲しませずに、みんなを笑顔にしながら頑張るなんて出来ないよ…」

秋穂「グスッ…私は、私のやり方で…」

海未「……秋穂?」


“あいどる”の復活と同時に西暦は終わった。
あいどる歴が始まり“あいどる”は各国から要請を受け、世界大統領に就任した。
μ'sも…Aqoursも…秋穂も…。“あいどる”の暴走を……止めることはできなかった……。

第6章「終わりの始まり」-完-

621: 2020/07/09(木) 02:03:51.02 ID:au0sXs95
~北海道~

ブゥーン…

「ふーんふーんふふふーん…」

「ふふふふーん…」

バス…バスッ

「あっ」

「……ありゃりゃ、またかー」

「大丈夫…!君ならいける、できるよ」

「やろうと思えば…なんだって出来るんだから!」

ブン…ブゥーン

「……よしよし!」

プスッ…

「あ、あれ…?」

プス…プスッ…

「…あちゃぁ…ガス欠だぁ…」


これは、あいどる暦2年の話。
彼女が東京に向かっている事をまだ、誰も知らない。

第6.5章「虹の向こう側」-完-


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